怪談
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DONEひふみと猫っぽちん?による怪談です。不穏なまま終わる怪談重視エンド。猫又パロがベースになっています。
猫に飼われるがテーマでした。
成就 独歩が「にゃー」と鳴いた。
ふつうの猫として生きてきた時間より、ひととして生きてきた時間のほうが長い独歩は、とっくのむかしに鳴き方を忘れている。起き抜けでぼんやりしながら歯をみがいていたから気のせいだったのかもしれない。「おはよぉ独歩ちん」。足もとをうろうろしている独歩に話しかけると、洗面台のふちに飛び乗ってきた。「すーぐ落っこちるんだから、あんまりあぶないことすんなよ」。顔のまわりを撫でながら言い聞かせたけれど、ごろごろ喉を鳴らすばっかりで返事のひとつもしやしない。ほんとうに分かっているんだろうか。やがて俺の手から離れた独歩は、じっと蛇口を見つめた。まるでみずを欲しがっているようだった。でも。「独歩ちん。いっつも自分で出してるじゃん」。独歩はふつうの猫にあらず。ひとのすがたでいなくたって、蛇口くらい自分でひねるし歯だってみがける。はみがきしながら首をかしげた俺を、独歩がふりむいた。ちいさな満月の眸のなかで、俺はなぜだか不安そうな顔をしている。なんだろう。胸のなかでわだかまる、このたとえようのない違和感は。すっきりしない気持ちを洗い流したくて蛇口をひねると、すかさず独歩がみずにくちをつけた。その様子をなんとなくながめているときだった。夢中になって目測を誤ったせいだろうか。流水を直接浴びた独歩が、とても嫌そうに前足で顔をこすったのだ。
2156ふつうの猫として生きてきた時間より、ひととして生きてきた時間のほうが長い独歩は、とっくのむかしに鳴き方を忘れている。起き抜けでぼんやりしながら歯をみがいていたから気のせいだったのかもしれない。「おはよぉ独歩ちん」。足もとをうろうろしている独歩に話しかけると、洗面台のふちに飛び乗ってきた。「すーぐ落っこちるんだから、あんまりあぶないことすんなよ」。顔のまわりを撫でながら言い聞かせたけれど、ごろごろ喉を鳴らすばっかりで返事のひとつもしやしない。ほんとうに分かっているんだろうか。やがて俺の手から離れた独歩は、じっと蛇口を見つめた。まるでみずを欲しがっているようだった。でも。「独歩ちん。いっつも自分で出してるじゃん」。独歩はふつうの猫にあらず。ひとのすがたでいなくたって、蛇口くらい自分でひねるし歯だってみがける。はみがきしながら首をかしげた俺を、独歩がふりむいた。ちいさな満月の眸のなかで、俺はなぜだか不安そうな顔をしている。なんだろう。胸のなかでわだかまる、このたとえようのない違和感は。すっきりしない気持ちを洗い流したくて蛇口をひねると、すかさず独歩がみずにくちをつけた。その様子をなんとなくながめているときだった。夢中になって目測を誤ったせいだろうか。流水を直接浴びた独歩が、とても嫌そうに前足で顔をこすったのだ。
黒猫さん
MOURNING幼ミスタのとある夏の話「夏の終わりのラクシ怪談ワンライ」
夏チリン…チリン…と軽い鈴のような音が、風が吹く度聞こえてくる。
その日は風は吹いてたが、暑くて、ミスタは手に持っていたタオルで汗を拭った。
部屋の中なのに暑くて、暑くて、仕方がない。
ぼんやりと小窓から青空を見れば、雲がゆっくり動いていた。
「暑いなぁ……」
ぽつりと呟く。
ミスタの言葉に返事はかえってこない。
ミスタは細くて日焼けなんかしたことないような右腕を真っ直ぐにゆっくり、ゆっくり肩まで上げる。
そして人差し指だけ真っ直ぐに伸ばして、指の先に視線を投げた。
「どうして俺を置いていったの?」
目の前にいたのは、顔に幾つものシワやシミを隠そうと化粧をした女。
母…と言うべきその存在に、ミスタは夕日と海を表現したような瞳を彼女に向けていた。
1013その日は風は吹いてたが、暑くて、ミスタは手に持っていたタオルで汗を拭った。
部屋の中なのに暑くて、暑くて、仕方がない。
ぼんやりと小窓から青空を見れば、雲がゆっくり動いていた。
「暑いなぁ……」
ぽつりと呟く。
ミスタの言葉に返事はかえってこない。
ミスタは細くて日焼けなんかしたことないような右腕を真っ直ぐにゆっくり、ゆっくり肩まで上げる。
そして人差し指だけ真っ直ぐに伸ばして、指の先に視線を投げた。
「どうして俺を置いていったの?」
目の前にいたのは、顔に幾つものシワやシミを隠そうと化粧をした女。
母…と言うべきその存在に、ミスタは夕日と海を表現したような瞳を彼女に向けていた。
黒猫さん
MOURNING「夏の終わりのラクシ怪談ワンライ」ミスタが夢で怖い目にあう話
貴方は夢ミスタは夢を見ていた。
しとしと雨が降っていてそれでもミスタは濡れたという感覚がなくて、服も乾いていたから。
ミスタは自分の中で「これは夢だ」と思いながら1人、雨降る街を歩いた。
こんなにもはっきりと見える夢は珍しいなと思い、なにか出来ないかと当たりを見渡せば、明るい黄色の傘が広がっているのが見えた。
人がいるなんて思わなくて、そっと近づくと、小さな男の子だった。
「ねぇ、君…!」
4~6歳ぐらいの子だろうか、まぁるいほっぺに赤が差していて可愛らしいと思いながら、ミスタが声をかける。
しかし、子供はびっくりしたのか慌てるように黄色の傘を広げたまま、同じ黄色の長靴で水たまりをバシャバシャと進みながら逃げていく。
1529しとしと雨が降っていてそれでもミスタは濡れたという感覚がなくて、服も乾いていたから。
ミスタは自分の中で「これは夢だ」と思いながら1人、雨降る街を歩いた。
こんなにもはっきりと見える夢は珍しいなと思い、なにか出来ないかと当たりを見渡せば、明るい黄色の傘が広がっているのが見えた。
人がいるなんて思わなくて、そっと近づくと、小さな男の子だった。
「ねぇ、君…!」
4~6歳ぐらいの子だろうか、まぁるいほっぺに赤が差していて可愛らしいと思いながら、ミスタが声をかける。
しかし、子供はびっくりしたのか慌てるように黄色の傘を広げたまま、同じ黄色の長靴で水たまりをバシャバシャと進みながら逃げていく。
ライト
MOURNING「夏の終わりのラクシ怪談ワンライ」和風ホラー、🦊しか出てこない
てつなぎ「鳥居を潜る時は、手を離しちゃいけないよ」
それは、ミスタが小さい時からの祖母の口癖だった。日課のように神社にお参りに行くおばあちゃんっ子のミスタと、それに嬉しそうに着いていく祖母。毎回鳥居を潜る度にそんなことを言われるものだから、ミスタはもう慣れたように祖母の手をぎゅうと握り締める。祖母の皺だらけの温かい手が、何よりも心地が良くて握っているのが好きであった。
「ねぇおばあちゃん。なんで手をはなしちゃいけないの?」
まだあどけない声でミスタが問う。祖母は、ミスタのまぁるい瞳を覗き込み、真剣な瞳で告げる。
「それはね──」
とある夏の日のこと。ミスタは、日課である朝のお参り……ではなく、夜の神社に祖母と一緒に訪れていた。今日は、年一度のお祭りの日。ミスタは、真新しい甚平を身に纏って石造りの階段を、てくてくと歩いていた。ミスタの右手は祖母の左手にしっかりと握られている。
3043それは、ミスタが小さい時からの祖母の口癖だった。日課のように神社にお参りに行くおばあちゃんっ子のミスタと、それに嬉しそうに着いていく祖母。毎回鳥居を潜る度にそんなことを言われるものだから、ミスタはもう慣れたように祖母の手をぎゅうと握り締める。祖母の皺だらけの温かい手が、何よりも心地が良くて握っているのが好きであった。
「ねぇおばあちゃん。なんで手をはなしちゃいけないの?」
まだあどけない声でミスタが問う。祖母は、ミスタのまぁるい瞳を覗き込み、真剣な瞳で告げる。
「それはね──」
とある夏の日のこと。ミスタは、日課である朝のお参り……ではなく、夜の神社に祖母と一緒に訪れていた。今日は、年一度のお祭りの日。ミスタは、真新しい甚平を身に纏って石造りの階段を、てくてくと歩いていた。ミスタの右手は祖母の左手にしっかりと握られている。
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DOODLE雨クリワンドロ8/20お題:怪談怪談番組見てるだけの雨クリ
シャワーを浴びた雨彦が自室に戻ると、室内には不気味な音楽とボソボソとした話し声が響いていた。音の出処はテレビからで、どうやら有名な語り部が怪談を語り聞かせる番組の放送中のようだ。
夏といえば定番だろうというように、この時期はこの手の番組が増える。雨彦は好んで見るわけではないので、実際に放送されているのを目にするのは随分と久しぶりのことだった。
部屋を見渡すと、クリスが一人ソファに座り、番組をじっと眺めている。
「こういう番組を見ているのは珍しいな」
「たまたまやっていたのですが、つい見入ってしまいました」
ちらりと雨彦の方を見たクリスは、再びテレビの方に意識を戻してしまう。
クリスがこういったものを好むという話は聞いたことがない。本当に珍しいこともあるものだ、と思いながら、雨彦はクリスの隣に腰掛けた。
1446夏といえば定番だろうというように、この時期はこの手の番組が増える。雨彦は好んで見るわけではないので、実際に放送されているのを目にするのは随分と久しぶりのことだった。
部屋を見渡すと、クリスが一人ソファに座り、番組をじっと眺めている。
「こういう番組を見ているのは珍しいな」
「たまたまやっていたのですが、つい見入ってしまいました」
ちらりと雨彦の方を見たクリスは、再びテレビの方に意識を戻してしまう。
クリスがこういったものを好むという話は聞いたことがない。本当に珍しいこともあるものだ、と思いながら、雨彦はクリスの隣に腰掛けた。
ぬのさと
DONE「なつはきぬ」(完了)と読みます。「なつはこぬ」(否定)ではありません。暑いので、ふんわり怪談風味で現代AUの忘羨です。
夏は来ぬ 夏の青空に浮かぶ真っ白な雲のように、白い日傘はまぶしかった。白いワンピースからのぞく、すんなりとした白い手足。長い黒髪をゆるく束ねる白いリボンが、黒髪とともに揺れた。
日傘がくるくると回る。
断崖になっている岬の端に立つ白い少女は、海からの突風に日傘を吹き飛ばされた。
「どうぞ。壊れていないよ」
魏無羨は風にあおられて足もとまで転がってきた日傘を、少女に手渡した。絹糸の黒髪が乱れ、白く長いリボンとからまっている。華奢な指がもつれた髪を押さえた。
「大丈夫? 手伝おうか?」
少女は顔を上げた。のばした魏無羨の手が止まった。
古びた硝子のような虹色を帯びた薄黄色の瞳に、つきりと魏無羨の胸が痛んだ。
「あの丘の上のお屋敷に静養に来ているんだってよ、もう何年も前から――」
2464日傘がくるくると回る。
断崖になっている岬の端に立つ白い少女は、海からの突風に日傘を吹き飛ばされた。
「どうぞ。壊れていないよ」
魏無羨は風にあおられて足もとまで転がってきた日傘を、少女に手渡した。絹糸の黒髪が乱れ、白く長いリボンとからまっている。華奢な指がもつれた髪を押さえた。
「大丈夫? 手伝おうか?」
少女は顔を上げた。のばした魏無羨の手が止まった。
古びた硝子のような虹色を帯びた薄黄色の瞳に、つきりと魏無羨の胸が痛んだ。
「あの丘の上のお屋敷に静養に来ているんだってよ、もう何年も前から――」
コノハ(happanical)
DONE怪談オールキャラのわちゃわちゃです。アニメの文化祭回のノリで書きました。
怪談ーーー戦いから数年後、一同はカールのハロウィンイベントで行う肝試しのトライアル要員として集められたーーー
カール近郊の森にて一同が注目するなか、コホン、と軽く咳払いをするとアバンが説明を始めた。
「えー、我がカール王国のハロウィンでは、肝試しが恒例となっています。今日はその予行演習なワケですが、クジで決まった男女のペアで、森の中を歩いてゴールまでたどりついてもらいます。」
「途中、モンスターに扮した人々が脅かしてくるので、びっくりしたらお菓子をあげてくださいね。」
…ごく普通の街の人々だから、絶対倒しちゃあダメですよ、とアバンは何名かに視線を送った。
「それでは皆さんお待ちかね、クジ引きタイムです!!」
1番手を引き当てたポップとエイミは、ランプひとつの灯りを頼りに砂利道を進んでいた。
3118カール近郊の森にて一同が注目するなか、コホン、と軽く咳払いをするとアバンが説明を始めた。
「えー、我がカール王国のハロウィンでは、肝試しが恒例となっています。今日はその予行演習なワケですが、クジで決まった男女のペアで、森の中を歩いてゴールまでたどりついてもらいます。」
「途中、モンスターに扮した人々が脅かしてくるので、びっくりしたらお菓子をあげてくださいね。」
…ごく普通の街の人々だから、絶対倒しちゃあダメですよ、とアバンは何名かに視線を送った。
「それでは皆さんお待ちかね、クジ引きタイムです!!」
1番手を引き当てたポップとエイミは、ランプひとつの灯りを頼りに砂利道を進んでいた。
時緒🍴自家通販実施中
TRAINING8/13ワンライお題【怪談・山】
山で不思議なおじいさんを見た狡噛さんが中国の故事を持ち出して色々喋るお話です。
月夜の壺 任務を終え、月が大きな夜中に、木々の連なる山の中をバンで移動していた時の話だ。
花城は珍しくアイマスクをして眠り入り、須郷は勤勉にもデバイスで報告書を書いていた。俺は愛用の銃の手入れをしていて、狡噛は古びた本を小さなライトで照らしながらゆったりと読んでいた。運転手はこちらには話しかけて来ず、俺たちの間に会話はなかった。ただ少しおかしいことに、狡噛はどういうわけか、ふとした瞬間からバンの窓の外を見つめて動かなくなってしまった。本のページをめくる手も止まり、彼は夜中の山の景色に釘付けになっているようだった。
「どうしたんだ?」
俺は不思議に思って、銃の手入れを中断し、恋人に話しかけた。すると彼は狸にでも化かされたかのように「壺を持った老人を見たんだ」と言い、何かを考えるそぶりを見せた。こんな夜中に、こんな山の中を壺を抱えてすごすごと歩く老人か。案外その壺の中には骨が入っていたりして、と、俺は安い怪談のような空想をして、きっとそれとは全く違う想像をしているだろう狡噛を見た。
2357花城は珍しくアイマスクをして眠り入り、須郷は勤勉にもデバイスで報告書を書いていた。俺は愛用の銃の手入れをしていて、狡噛は古びた本を小さなライトで照らしながらゆったりと読んでいた。運転手はこちらには話しかけて来ず、俺たちの間に会話はなかった。ただ少しおかしいことに、狡噛はどういうわけか、ふとした瞬間からバンの窓の外を見つめて動かなくなってしまった。本のページをめくる手も止まり、彼は夜中の山の景色に釘付けになっているようだった。
「どうしたんだ?」
俺は不思議に思って、銃の手入れを中断し、恋人に話しかけた。すると彼は狸にでも化かされたかのように「壺を持った老人を見たんだ」と言い、何かを考えるそぶりを見せた。こんな夜中に、こんな山の中を壺を抱えてすごすごと歩く老人か。案外その壺の中には骨が入っていたりして、と、俺は安い怪談のような空想をして、きっとそれとは全く違う想像をしているだろう狡噛を見た。
夢路(ゆめじ)
DONE禍話・怪談手帖ファンアート「クジラウタ」
1枚目は発売記念のリメイク版、2枚目は『生でマガマガ言わせて!』ライブ配信後にかぁなっきさんへDM送付した初期版です。
書籍版
https://magabanayosamu.booth.pm/items/4036002
電子版
https://magabanayosamu.booth.pm/items/3966358 2
フジサキタケト
DOODLE7月26日は幽霊の日でした!江戸の中村座で四代目・鶴屋南北作『東海道四谷怪談』が初演された日。お岩さんで有名な通称四谷怪談ですが、当時幽霊とは庶民の味方だったらしいです。平成の時代に地下鉄の四谷駅を通ると濡れた女性が座席に座っているって都市伝説あった気がしますが、噂だから出所はどこなのかわかりませぬfuji
DOODLE一方その頃女子部屋ではこの後なし崩しに肝試しとして庭に出たところ、酔い覚ましを口実に庭に出ていちゃついてたカイシュウと鉢合わせてちょっとした騒ぎになる
髪の長い白い影が!みたいなの
れんくんちゃんの話してる怪談はしろくろさんとこの幽霊話のつもりなので、どっちにしてもしゅうびなのです☺️
狭山くん
TRAINING2022-07-16/夏の空閑汐も折り返し!怪談話に弱い空閑とムードもクソもない汐見♂である。汐見♂がムードもクソもないのは通常運転ですね……文披31題・夏の空閑汐♂祭:Day16 錆びついた金属で作られた扉を開けば、ひどく耳障りな音が響いた。
「蝶番まで錆び切ってるじゃん、やっぱりやめとかない?」
「センセが言うには、三十年位開けてないらしいぞ。センセも中見たことないつってたし。仕事なんだから仕方ないだろ」
ひどくぎこちない動きで開かれた扉に呆れたように声を上げ眉を寄せる空閑に、汐見は苦笑混じりで言葉を返す。学校の敷地の端に作られた旧格納庫、今まで取り壊す話が何度か出ていたらしいその場所は遂に取り壊される事が決まったらしい。取り壊し前の備品確認に召集されたのが空閑と汐見であった。
中に入り照明のスイッチを押しても反応ひとつ返ってこない薄暗がりに遂にため息を吐き出した空閑は、吉嗣に渡されていた懐中電灯で中を照らす。その場所はがらんどうで、寒々とした空間になっていた。
1289「蝶番まで錆び切ってるじゃん、やっぱりやめとかない?」
「センセが言うには、三十年位開けてないらしいぞ。センセも中見たことないつってたし。仕事なんだから仕方ないだろ」
ひどくぎこちない動きで開かれた扉に呆れたように声を上げ眉を寄せる空閑に、汐見は苦笑混じりで言葉を返す。学校の敷地の端に作られた旧格納庫、今まで取り壊す話が何度か出ていたらしいその場所は遂に取り壊される事が決まったらしい。取り壊し前の備品確認に召集されたのが空閑と汐見であった。
中に入り照明のスイッチを押しても反応ひとつ返ってこない薄暗がりに遂にため息を吐き出した空閑は、吉嗣に渡されていた懐中電灯で中を照らす。その場所はがらんどうで、寒々とした空間になっていた。
yugetsu1341
PROGRESS怪談チャンネルやオカルト系番組を見ていて思いついた話。土佐三振りと審神者と補佐が令和で行われた呪物の展示会で、遡行軍が展示物奪取しようとしているからその防衛を任される話。短編のはずなのにいつも長くなるのなんでだろう(端折りが下手な人)呪物展防衛任務の話 時は令和。とある都会の一角に中規模のギャラリーがある。日頃は閑散としているのだが、ここ数日珍しく長蛇の列が出来ていた。開かれているのは動画サイトで人気の怪談師、オカルトコレクター、心霊研究家などが持ち寄った呪物の展覧会。実際に怪異や異変が起きた曰く付きの物や、存在そのものが呪いをかける為に作られた物、古今東西幸運や良縁が来るとあやかられている物など実に様々な物が展示されていた。
以前から動画サイトなどで実際に起きた出来事や、所持している呪物の解説などが専門チャンネルや番組で取り上げられており今回初登場の物など話題性に溢れたこの展示会は、オカルト、ホラー好きはもちろんのこと、民俗学、文化研究家の著名人やそれらを専攻している学生達、昨今そういった物をテーマに人気を博しているマンガや映画、小説といったエンターテインメントから入り、興味本位や怖いもの見たで来た一般の人など幅広かった。
4801以前から動画サイトなどで実際に起きた出来事や、所持している呪物の解説などが専門チャンネルや番組で取り上げられており今回初登場の物など話題性に溢れたこの展示会は、オカルト、ホラー好きはもちろんのこと、民俗学、文化研究家の著名人やそれらを専攻している学生達、昨今そういった物をテーマに人気を博しているマンガや映画、小説といったエンターテインメントから入り、興味本位や怖いもの見たで来た一般の人など幅広かった。
汎用斉藤
DONEワンドロ33回目。お題「怪談」「隠れる」
百物語とかもこの世界伝わってるんでしょうかね。多分絶対おかしい伝わりかたしてそう。
最初はコンサルが語り部だったのがそらまめに変わったのかな。
そらまめの語る怪談って何でしょうね。彼岸での出来事なのか、そらまめが聞いた他の現行人類の話とかもあるかもしれませんね……何でも知ってそうなとこあるそらまめさん、怖いなー怖いなー
rani_noab
PROGRESSカゝみさとあヤとと私の稲妻怪談導入2000字
暗い夜道を提灯の光が心もとなく照らしている。家のあかりもついていない丑三つ時に足音を立てるのも躊躇われて、知らず地面を踏みしめる足がゆっくりになる。砂利を踏む音でさえ響いているように聞こえて、良からぬものを呼び寄せそうだとどきりとする。
後ろを振り返るのも怖い。城下町こそ治安が良いが、こんな夜更けに女が一人で出歩いているのはどう考えても危険だ。
だが私にはどうしても確かめないとならないことがあった。
じゃないともう明日食べる飯がない。大切に食べてきた最後の白米はこの夜の進軍のために私の腹の中へと収まった。そう、元気な私は今だけの限定サービスなのだ。
つまり今夜、この夜!なんとしてもネタを取ってこないとならない。じゃないとせっかく城下町で一人暮らしを始めた意味がなくなる。だらだらとした起床も好きな時に好きに料理をして好きなだけ食べるのも夜更かししてお気に入りの作家の新刊を読みふけることもできなくなる。そんなことは嫌だ。人生の損失。
2235後ろを振り返るのも怖い。城下町こそ治安が良いが、こんな夜更けに女が一人で出歩いているのはどう考えても危険だ。
だが私にはどうしても確かめないとならないことがあった。
じゃないともう明日食べる飯がない。大切に食べてきた最後の白米はこの夜の進軍のために私の腹の中へと収まった。そう、元気な私は今だけの限定サービスなのだ。
つまり今夜、この夜!なんとしてもネタを取ってこないとならない。じゃないとせっかく城下町で一人暮らしを始めた意味がなくなる。だらだらとした起床も好きな時に好きに料理をして好きなだけ食べるのも夜更かししてお気に入りの作家の新刊を読みふけることもできなくなる。そんなことは嫌だ。人生の損失。
shiki_poi
DONEうっすらへし燭未満怪談風話です。[へし燭]せわやき その頃、本丸には短刀と打刀しかおらず、部隊編成どころか生活を回すのにも事欠く有り様だった。
したがって、出陣や内番を終えたあとも、出陣の報告をまとめたり今後の予定などを組むために、へし切長谷部の自室には夜更けまで明かりが点っていた。
とはいえ、長谷部も人の身で顕現しているからには、体力に限界もある。連日の夜更かしに、気づけば頭が傾いでいることもしばしばだ。
その夜もびくりと体が動いて居眠りから覚めた長谷部は、背中が暖かいことに気が付いた。手をやると、肩から羽織がかけられている。はて、誰かが気をきかせてくれたのかと思ったが、こんな深夜にこの本丸で起きているのは長谷部くらいだった。
そんなことが二度三度と続いた。
2144したがって、出陣や内番を終えたあとも、出陣の報告をまとめたり今後の予定などを組むために、へし切長谷部の自室には夜更けまで明かりが点っていた。
とはいえ、長谷部も人の身で顕現しているからには、体力に限界もある。連日の夜更かしに、気づけば頭が傾いでいることもしばしばだ。
その夜もびくりと体が動いて居眠りから覚めた長谷部は、背中が暖かいことに気が付いた。手をやると、肩から羽織がかけられている。はて、誰かが気をきかせてくれたのかと思ったが、こんな深夜にこの本丸で起きているのは長谷部くらいだった。
そんなことが二度三度と続いた。
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DONEたいへんうっすらとした、へし燭未満怪談風話です。[へし燭]おとない 長谷部の下宿は親族の持つ家の片隅にある離れで、さほど多くはない学校の友人たちもよく酒や肴を手に押し掛けてきては、ささやかな宴と洒落こんだ。
そのなかでも一際足繁く訪れるのが、光忠だった。
学部も違う光忠と知り合った経緯はすっかり覚えていないが、今や親友といってもよいほどだった。
皆で賑やかに宴を催すのも言うほど嫌いではなかったが、彼と二人で語り明かす夜は格別だ。長谷部が学んだばかりの事柄や興味を引かれた出来事を語ると、相槌を打っては楽しそうに聞いている。それを見ると、不思議と胸がぎゅうっとなるようだった。
ある日、郷里から幼馴染みがやってきた。
寺の次男坊で、仲が良いとは言えない男だが、家の使いで出てきたから泊めろという。
2324そのなかでも一際足繁く訪れるのが、光忠だった。
学部も違う光忠と知り合った経緯はすっかり覚えていないが、今や親友といってもよいほどだった。
皆で賑やかに宴を催すのも言うほど嫌いではなかったが、彼と二人で語り明かす夜は格別だ。長谷部が学んだばかりの事柄や興味を引かれた出来事を語ると、相槌を打っては楽しそうに聞いている。それを見ると、不思議と胸がぎゅうっとなるようだった。
ある日、郷里から幼馴染みがやってきた。
寺の次男坊で、仲が良いとは言えない男だが、家の使いで出てきたから泊めろという。
kuro_zumi
DONEおーいでてこーいを怪談にしたようなやつ。先生が殺されるハプニングが起きるので留意してね悪食の匣今日はね、先生を、殺しちゃった。
理由は……特になくて。ただあの先生ならあんまり抵抗しないで殺されてくれるかもって思って、実際そうだった。僕の背丈じゃ、最初は腹にしか刺せないから、まずは脇腹から刺して、先生が倒れたらあとはもう一生懸命、ぐさぐさやった。疲れちゃったけど、おかげで「これ」が手に入ったんだから、苦労の甲斐があったよね。
多目的室の掃除当番は楽でいい。何せ、教室と違ってそこまで汚れてないし、先生もいないから、さっさか掃いて適当に時間を潰しておしまい、でいい。僕はその日も掃除という名目の暇つぶしのために、掃除用具入れを開けて、「匣」を見つけた。
「なんだこれ? オルゴール?」
ホウキやちりとりと一緒に木箱が置かれていた。大きさは大体B5のノートと同じくらい。教科書なら5、6冊は入りそうな厚みがあった。
3083理由は……特になくて。ただあの先生ならあんまり抵抗しないで殺されてくれるかもって思って、実際そうだった。僕の背丈じゃ、最初は腹にしか刺せないから、まずは脇腹から刺して、先生が倒れたらあとはもう一生懸命、ぐさぐさやった。疲れちゃったけど、おかげで「これ」が手に入ったんだから、苦労の甲斐があったよね。
多目的室の掃除当番は楽でいい。何せ、教室と違ってそこまで汚れてないし、先生もいないから、さっさか掃いて適当に時間を潰しておしまい、でいい。僕はその日も掃除という名目の暇つぶしのために、掃除用具入れを開けて、「匣」を見つけた。
「なんだこれ? オルゴール?」
ホウキやちりとりと一緒に木箱が置かれていた。大きさは大体B5のノートと同じくらい。教科書なら5、6冊は入りそうな厚みがあった。