掌編
haru
DONE【Circle ~春夏秋冬】あなたにはかなわない2nd stage 展示小説。
夜ノ介くんとマリィ。二人がはばたき学園で出会って、積み重ねたひとコマを、季節ごとに切り取りました。書き溜めてたお話&書き下ろしの掌編集になります。
※マリィは小波美奈子
春 『ゆらす花風ひそやか仕返し』
夏 『透明傘』
秋 『まだ名前のない物語』
冬 『心の地図と映る色』 18
starareorangedr
INFO命のK譜 新刊サンプルです。漫画/コピー/A5/16頁/100円/全年齢
西城KAZUYA×高品龍一(K品)
龍一の苦悩後
web再録1ページあり Kの死を認められなかったのは本当はKAZUYAのせいもあるんじゃないの~~? という掌編。そういう思想で作っているので苦手な方はご注意ください 5
花咲流奈
DOODLE花暦13話『梅』を聞いて思い浮かんだ小ネタになります。きっと伽羅ちゃんはなんらかの任務で本丸には不在なんだろうな、と思った結果こうなりました。鶴丸を気遣う大倶利伽羅の気持ちと、それに応えた日向の掌編。CP要素はありませんが、くりつるの人間が書いているので微かに香るものはあるかもしれません。やさしい気持ち 刀剣男士たちが寝起きをするための棟、その一室から灯りが漏れているのを確認した日向は大急ぎで厨に向かい、残してあった汁物を温め直し、用意してあった握り飯に漬物を添えて戻る。
「……鶴丸、まだ起きてる?」
声を潜めて問いかけると、間もなく戸が開いた。
「日向じゃないか。こんな時間にどうしたんだい?」
夜も更けて、そろそろ日付が変わりそうな時間に訪れたのだから、その質問はもっともだ。
「夕餉、食いっぱぐれたでしょ。おにぎりと味噌汁だけだけど、何かお腹に入れてから寝た方がいいと思って」
今日一日、日向は注意深く鶴丸の動向を確認していた。実は夕餉だけでなく、昼餉も抜いていることは確認済みなのだ。
刀剣男士は食わなくても死にはしないが、空腹という感覚はあるのだから、任務中ならいざ知らず、本丸での日常でそれを誤魔化すのは難しい。
1486「……鶴丸、まだ起きてる?」
声を潜めて問いかけると、間もなく戸が開いた。
「日向じゃないか。こんな時間にどうしたんだい?」
夜も更けて、そろそろ日付が変わりそうな時間に訪れたのだから、その質問はもっともだ。
「夕餉、食いっぱぐれたでしょ。おにぎりと味噌汁だけだけど、何かお腹に入れてから寝た方がいいと思って」
今日一日、日向は注意深く鶴丸の動向を確認していた。実は夕餉だけでなく、昼餉も抜いていることは確認済みなのだ。
刀剣男士は食わなくても死にはしないが、空腹という感覚はあるのだから、任務中ならいざ知らず、本丸での日常でそれを誤魔化すのは難しい。
ゴジラ屋の山賊
MOURNING1000字未満の掌編です。まだ付き合ってないrong。
ごほうび「凪! 迎えに来た」
真夜中だった。頭上に月が出ていて、もう俺は眠たくって欠伸していたのだけれど、あいつの声でハッと目がさめてしまっていた。
真夜中に、玲王が会いに来てくれた。たったひとりで。どうせすぐ近くにSPがいるやもしれないと思っても、名前を呼ばれると全部なかったことになる。
「ずっと待ってたのか? そんなところで」
自室の窓で頬杖ついて、玲王の言う通り、俺はずっとこの瞬間を待っていた。たぶん来ないだろうな、サッカー関係ないし。一時間前から何度も思ったことが、あっという間に覆されていた。
だってあの御影玲王が、俺に会いに来た。
「レオ、こんな夜中に外出ていいの?」
「ったくお前が“連れ出して”って言ったんだろうに……。行くぞ、凪。起きてたご褒美に、とびきりのもの用意してあるから」
796真夜中だった。頭上に月が出ていて、もう俺は眠たくって欠伸していたのだけれど、あいつの声でハッと目がさめてしまっていた。
真夜中に、玲王が会いに来てくれた。たったひとりで。どうせすぐ近くにSPがいるやもしれないと思っても、名前を呼ばれると全部なかったことになる。
「ずっと待ってたのか? そんなところで」
自室の窓で頬杖ついて、玲王の言う通り、俺はずっとこの瞬間を待っていた。たぶん来ないだろうな、サッカー関係ないし。一時間前から何度も思ったことが、あっという間に覆されていた。
だってあの御影玲王が、俺に会いに来た。
「レオ、こんな夜中に外出ていいの?」
「ったくお前が“連れ出して”って言ったんだろうに……。行くぞ、凪。起きてたご褒美に、とびきりのもの用意してあるから」
みのむし96
PAST以前出した現代AU忘羨本「何度生まれ変わっても」(全文支部で公開中)の後日談掌編その②です。水族館に行く二人の話。わかりづらいですが藍湛視点です。これまでも、これからも 恋人の姿が見当たらない。
ガラスの向こうでは、悠々と多種多様な魚たちが泳いでいる。水槽のライトアップのためか館内は全体的に照明が抑えられており、かなり薄暗い。
慌てて辺りを見回すも、休日の水族館は老若男女でごった返しており、それらしき人影は見つけられない。
つい先ほどまで、「あれは何?」「あれは鮪」「じゃああれは?」「鯖だ」「なあ兄ちゃん、今夜は魚料理にしようよ」「……」とあまりにも色気のない会話をしていたというのに。
ほんの少し目を離した瞬間、人波に流されてしまったらしい。
過去、彼と離れ離れになっていたときのことがフラッシュバックし、思わず駆けだしかけるが、寸前で足を止める。今の自分たちには文明の利器がある。スマホを取り出し、微かに震える手で画面を開いて通話ボタンを押す。つながらない。顔から血の気が引くのを感じた。
1155ガラスの向こうでは、悠々と多種多様な魚たちが泳いでいる。水槽のライトアップのためか館内は全体的に照明が抑えられており、かなり薄暗い。
慌てて辺りを見回すも、休日の水族館は老若男女でごった返しており、それらしき人影は見つけられない。
つい先ほどまで、「あれは何?」「あれは鮪」「じゃああれは?」「鯖だ」「なあ兄ちゃん、今夜は魚料理にしようよ」「……」とあまりにも色気のない会話をしていたというのに。
ほんの少し目を離した瞬間、人波に流されてしまったらしい。
過去、彼と離れ離れになっていたときのことがフラッシュバックし、思わず駆けだしかけるが、寸前で足を止める。今の自分たちには文明の利器がある。スマホを取り出し、微かに震える手で画面を開いて通話ボタンを押す。つながらない。顔から血の気が引くのを感じた。
みのむし96
PAST以前作った現代AU忘羨本「何度生まれ変わっても」(支部にて全文公開中)の後日談掌編その①です。二人でゲーセンに行く話。きみの隣は譲れない「どっちがいい?」
自分の半身はあろうかという巨大な、白と黒の兎のぬいぐるみを差し出してみると、無口な恋人は首を傾げてみせた。
昼下がりの繁華街。若者でごった返すゲームセンターは落ち着いた場所を好む彼にとって、少々刺激が強すぎたらしい。目を白黒させる可愛い恋人に大笑いしながら対戦型のシューティングコーナーに連れ込んだ。結果、互いに熱くなってしまい、十勝十敗。健闘を称えあいつつ、火照った頬を冷ますため、休憩コーナーで炭酸飲料を飲み干した。学生時代以来だったようで、飲みなれないものに軽く咳き込む背中をぽんぽんと優しく叩いてやる。
「次は何する? やってみたいものとかあるか?」
思案気な顔で辺りを見回したのち、彼が指さしたのはクレーンゲームだった。どうやら釣り下がっている小さな兎のぬいぐるみが気になったらしい。
1048自分の半身はあろうかという巨大な、白と黒の兎のぬいぐるみを差し出してみると、無口な恋人は首を傾げてみせた。
昼下がりの繁華街。若者でごった返すゲームセンターは落ち着いた場所を好む彼にとって、少々刺激が強すぎたらしい。目を白黒させる可愛い恋人に大笑いしながら対戦型のシューティングコーナーに連れ込んだ。結果、互いに熱くなってしまい、十勝十敗。健闘を称えあいつつ、火照った頬を冷ますため、休憩コーナーで炭酸飲料を飲み干した。学生時代以来だったようで、飲みなれないものに軽く咳き込む背中をぽんぽんと優しく叩いてやる。
「次は何する? やってみたいものとかあるか?」
思案気な顔で辺りを見回したのち、彼が指さしたのはクレーンゲームだった。どうやら釣り下がっている小さな兎のぬいぐるみが気になったらしい。
phnoch
DONE小1しょたなかくん掌編集「たなかくんと!」より居候のイゾーが風邪をひき、たなかくんが拗ねる話です。
▼しょたなかくんシリーズの他の話はこちら▼
https://galleria.emotionflow.com/113773/656724.html
たなかくんとむやむやバカは風邪をひかないというのは、どうやら迷信だったらしい。さんざん雪遊びをした次の日、先生も新兵衛もぴんぴんしているのに、なぜか以蔵が熱を出した。
「こたつで寝るのがやっぱり良くないんじゃないか」
体温計を見ながら先生が言う。以蔵がカスカスの声でいや雪合戦のせいじゃろと口答えをする。こたつはベッドよりあったかいのに、どうして風邪をひくのだろう。よくわからないが、こたつが以蔵に占拠されなくなるなら良いことだ。
「こたつなんぞで寝ちょっでだ。はよ自分の家に帰れ」
「新兵衛、そういう言い方はやめなさい。病人だぞ」
新兵衛はきゅっと身をすくめた。先生と同じことを言ったつもりだったのに、叱られてしまった。悪いのは以蔵のはずなのに。先生と以蔵はそのまま、ホケンショウはあるのかとか何とかついていけない話を始めてしまって、新兵衛は唇をへの字にしたままランドセルを掴んで外へ飛び出した。玄関がバタンと閉まった瞬間、黄色い帽子を忘れたことに気がついたけれど、取りに戻る気にはなれなかった。
3262「こたつで寝るのがやっぱり良くないんじゃないか」
体温計を見ながら先生が言う。以蔵がカスカスの声でいや雪合戦のせいじゃろと口答えをする。こたつはベッドよりあったかいのに、どうして風邪をひくのだろう。よくわからないが、こたつが以蔵に占拠されなくなるなら良いことだ。
「こたつなんぞで寝ちょっでだ。はよ自分の家に帰れ」
「新兵衛、そういう言い方はやめなさい。病人だぞ」
新兵衛はきゅっと身をすくめた。先生と同じことを言ったつもりだったのに、叱られてしまった。悪いのは以蔵のはずなのに。先生と以蔵はそのまま、ホケンショウはあるのかとか何とかついていけない話を始めてしまって、新兵衛は唇をへの字にしたままランドセルを掴んで外へ飛び出した。玄関がバタンと閉まった瞬間、黄色い帽子を忘れたことに気がついたけれど、取りに戻る気にはなれなかった。
haru
DONE【Your Scent】柊夜ノ介×マリィ
ネタ帳を作ろうとして、メモしたすぐから書きたくなったので書いた掌編です⛄️
背中をつつつーとするやつ。
イチャコラやのマリは世界平和✨
『トゥーランドット』は『誰も寝てはならぬ』を歌ってるはず。
「夜ノ介くん」という名前を入れるか迷いましたが、もう夜ノ介くんでしかありえない!というような台詞を入れたのでいいにしてる。
𓆟ヤマダ𓆟
DONEジャンミカ書き殴りの一発屋です。はじめまして。テーマが「指輪」の掌編全6ページです。
原作軸で二人の娘視点かつミカサの葬式の話とかいうラブコメ要素カケラもない話かつ若干エレミカ要素もあるのでご注意ください。
指輪を巡ってミカサが珍しく心理戦でジャンに勝つ話です。 6
drasticparadigm
PAST先日参加させていただいた『呪(わら)う門には猫きたる』にて展示しておりました新作掌編をこちらにも置かせていただきます!いろいろあって同居している現パロぐだ♂リン設定です。 2
。(句点)
DONEリクエストで頂いたD.D.C.世界線医者組闇深捏造文です。先日のエスケプ短文と同じく三枚はまだ短め捏造色薄めです。が耐性がある方のみ……D.D.C.でも掌編書きたい〜🥲のんびり未来に期待追記
掌編を勢いで書き上げました!約900字の2枚、若干短文を元にして🐼さん視点で捏造100%です。本当に幻覚に耐性がある方のみ良ければどうぞ……刺さないでください…………🥲🙏 5
。(句点)
DONEリクエストで頂いたエスケプ世界線医者組闇深捏造文です。二枚は短いので捏造色薄めです。一応幻覚へのがある方のみどうぞ…🥲追記
掌編を勢いで書きました。約900字三枚、短文を元に👓視点で捏造100%です。本当に捏造に耐性がある方のみ良ければどうぞ…よろしくお願いします……🙏🥲
追記の追記
続きが書けました。約750字二枚。皆さんの想像した景色にあまり違わないものでありますように…🙏 7
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MOURNING今となっては解釈が変わっちゃったな、という五歌掌編(5はいない)そのときはどうぞよろしく「いいわよ、追いかけても」
「え、いいの?!」
心底嬉しそうな笑顔に、歌姫も苦笑いだ。自分の膝に頬杖をついて、男の顔を見上げる。
世界に必要な人間だ。おためごかしの、抽象的な話ではなくて、真実この世界に、人々に必要不可欠な人間だ。五条がいなければ倒せない呪霊、見つからない術式、助けられない人、喪われる命がごまんと増えるだろう。
でも、それでも。
歌姫を愛していると言う五条を、歌姫がいなくなったら生きていけないと嘯く五条を、置いていってしまうとき、彼自身が、一緒に行きたい、寂しいのだと頑是なく泣くのなら、その手を引いてあげよう、と思ってしまうのだ。ほかの誰が許さなくても、歌姫だけは、世界より五条を選ぶ。
だからね、硝子。
943「え、いいの?!」
心底嬉しそうな笑顔に、歌姫も苦笑いだ。自分の膝に頬杖をついて、男の顔を見上げる。
世界に必要な人間だ。おためごかしの、抽象的な話ではなくて、真実この世界に、人々に必要不可欠な人間だ。五条がいなければ倒せない呪霊、見つからない術式、助けられない人、喪われる命がごまんと増えるだろう。
でも、それでも。
歌姫を愛していると言う五条を、歌姫がいなくなったら生きていけないと嘯く五条を、置いていってしまうとき、彼自身が、一緒に行きたい、寂しいのだと頑是なく泣くのなら、その手を引いてあげよう、と思ってしまうのだ。ほかの誰が許さなくても、歌姫だけは、世界より五条を選ぶ。
だからね、硝子。
花咲流奈
PAST竜咲7で無料配布した『歌劇本丸備忘録〜すえひろがり編〜』からの再録です。いち兄視点でいち兄・鬼丸から見たくりつるの掌編になります。注意*あくまで『とある歌劇本丸』であり実在のミュ本丸とは一切関係ありません。
パス→竜咲7開催日(月日/数字4桁) 1798
ここあぱうだー
DONE【掌編】よくある話 男達は工事に取り組んでいた。
「俺、この工事が終わったら、今付き合っている彼女と結婚するんです!!」
若い男はこう言った。
しかし、願いが叶う事はなかった。
まもなくガスが暴発し、工事をしていた男たちはみんな死んでしまったのだから。
「工事に携わっていた者たちの名簿はどうしますか?」
「捨てろ。工事に関する他の証拠も、全部だ。跡形もなく捨てろ。」
事故は隠蔽された。
やがてこの地で、若い男と女の写真が入ったロケットペンダントが発見された。
235「俺、この工事が終わったら、今付き合っている彼女と結婚するんです!!」
若い男はこう言った。
しかし、願いが叶う事はなかった。
まもなくガスが暴発し、工事をしていた男たちはみんな死んでしまったのだから。
「工事に携わっていた者たちの名簿はどうしますか?」
「捨てろ。工事に関する他の証拠も、全部だ。跡形もなく捨てろ。」
事故は隠蔽された。
やがてこの地で、若い男と女の写真が入ったロケットペンダントが発見された。
ここあぱうだー
DOODLE【掌編】海の龍の御伽話 かつてこの地域には龍がいた。
そして、龍は剣士によって倒され、剣士によって喰われたのだそうだ。
話は変わりーーー昔、近所に少年がいた。
その少年は、「あなたの足は海のもの。分け与えるのよ。」と親に教えられていた。
成長し、男の子は親とともに海へ降りた。
その後しばらくは、海は荒れなかった。
しかししばらくして、また海は荒れ狂い、漁師たちは連れ去られる。
海からは、こんな声が聞こえるのだそうだ。
「あの者の肉は、龍の肉ではない。龍の肉を返せ……龍の肉を返せ……」
248そして、龍は剣士によって倒され、剣士によって喰われたのだそうだ。
話は変わりーーー昔、近所に少年がいた。
その少年は、「あなたの足は海のもの。分け与えるのよ。」と親に教えられていた。
成長し、男の子は親とともに海へ降りた。
その後しばらくは、海は荒れなかった。
しかししばらくして、また海は荒れ狂い、漁師たちは連れ去られる。
海からは、こんな声が聞こえるのだそうだ。
「あの者の肉は、龍の肉ではない。龍の肉を返せ……龍の肉を返せ……」
モチモチ
DONE2023年9月30日草間の日。野分お誕生日記念の掌編です。誓い 九月二十九日の夜。野分の部屋のカーテンの隙間から月明かりが漏れている。いつも俺、こと上條弘樹はこの時間、胸騒ぎに似た焦燥感を抱く。
野分は、今日は夜勤はないが明日が早番らしく、俺に忙しなくキスをして、おやすみなさいを言うと、俺を後ろから抱き込むような形で野分の部屋のベッドの上で眠ってしまった。
チクタクと時計の針が動いて、九月三十日になる。こんな台風の多い月に産まれた野分。何らかの理由があって、孤児院に捨てられた野分。きっと親も断腸の思いだっただろう。本当は自分で育てたかっただろう。なのに、野分を預ける事しかできなかった。けどな、今はその親に俺はありがとうと言いたい。その親のお陰で、今、こうして俺は野分と出会えているのだから。
480野分は、今日は夜勤はないが明日が早番らしく、俺に忙しなくキスをして、おやすみなさいを言うと、俺を後ろから抱き込むような形で野分の部屋のベッドの上で眠ってしまった。
チクタクと時計の針が動いて、九月三十日になる。こんな台風の多い月に産まれた野分。何らかの理由があって、孤児院に捨てられた野分。きっと親も断腸の思いだっただろう。本当は自分で育てたかっただろう。なのに、野分を預ける事しかできなかった。けどな、今はその親に俺はありがとうと言いたい。その親のお陰で、今、こうして俺は野分と出会えているのだから。
初春おもち
MOURNING灰七掌編小説です。試しに投稿してみます。お手て繋いで 二〇〇六年。任務を済ませたある夏の日の午後の事だった。蝉時雨の中、鳥居のある階段をのぼって高専に帰る道すがら、灰原が右手がむずむずすると言い出したのだ。ナタの入った黒い袋を右肩に担ぎ上げた七海が、灰原の拳を触る。
「呪霊にでもやられたのでしょうか。家入さんに診てもらいましょうか?」
そう言うのに、灰原は顔を赤くして、ただ。
「手のひらがむずむずする」
とだけ言う。グーにしている灰原の右手を開かせると、灰原の手のひらはしっとりと濡れて汗ばんでいる。
「たぶん、このむずむずは家入さんでは治せないと思う」
そう罰が悪そうに言う灰原に。
「じゃ、どうやって治せばいいんですか?」
と七海が不思議がる。
「それは僕の好きな人が手を握ってくれたら、治るんじゃないかな」
1517「呪霊にでもやられたのでしょうか。家入さんに診てもらいましょうか?」
そう言うのに、灰原は顔を赤くして、ただ。
「手のひらがむずむずする」
とだけ言う。グーにしている灰原の右手を開かせると、灰原の手のひらはしっとりと濡れて汗ばんでいる。
「たぶん、このむずむずは家入さんでは治せないと思う」
そう罰が悪そうに言う灰原に。
「じゃ、どうやって治せばいいんですか?」
と七海が不思議がる。
「それは僕の好きな人が手を握ってくれたら、治るんじゃないかな」
こぺりかん
PASTトレリドwebオンリー参加作品以前1日1トレリドで書いていた掌編から林さん(@nrchayashi )にコミカライズしていただきました!
小説の方も加筆修正しているので良ければこの機に読んでやってください。
べりーめりーまんなかバースデーとぅトレリド!
「あーあ。ボクは随分と厄介な男に捕まってしまったね」 それは2人で出掛けた帰り道のことだった。
色づいた街路樹を眺めながら、季節の新作について話していた。今年から新しく出したカボチャを使ったプディングの人気は上々だとか、ホリデーのために今年もいくつか試作品を考えているとか、そういう他愛もない話だ。
そうして穏やかに相槌を打っていたリドルが脈絡なく小さく笑いを漏らしたから、珍しいこともあるものだと思いながら戯れるように小突いた。
「ふふふ、大したことじゃないんだけどね? 休憩中に後輩達が話していたのを思い出して」
そう言ってリドルは楽しげに落ち葉を踏む。
ワインレッドの髪は銀杏並木によく映える。マジカメに上げこそしないが、そのリドルの横顔を写真に収めたくなるというのはなんとなく分かるな、とこの場にいない親友に賛同する。
2018色づいた街路樹を眺めながら、季節の新作について話していた。今年から新しく出したカボチャを使ったプディングの人気は上々だとか、ホリデーのために今年もいくつか試作品を考えているとか、そういう他愛もない話だ。
そうして穏やかに相槌を打っていたリドルが脈絡なく小さく笑いを漏らしたから、珍しいこともあるものだと思いながら戯れるように小突いた。
「ふふふ、大したことじゃないんだけどね? 休憩中に後輩達が話していたのを思い出して」
そう言ってリドルは楽しげに落ち葉を踏む。
ワインレッドの髪は銀杏並木によく映える。マジカメに上げこそしないが、そのリドルの横顔を写真に収めたくなるというのはなんとなく分かるな、とこの場にいない親友に賛同する。
はるち
DOODLE涙についてのいくつかの掌編詰め合わせ。なかない君と飛べない龍に泣いてはだめ。泣いたら人間になってしまう。動いたら人間になってしまう。見られるためだけの眼でものを見たら、朱いだけの唇で喋ったら、細いだけの足で歩いたら、からっぽなだけの心で考えたら、お人形には、二度と、戻れなくなってしまう。
引用:川野芽生「人形街」
「泣いている子供には、どう反応すればいいんだっけ?」
薄氷のように青い髪と薄桃色の瞳を持つ少年が、あどけなくそう問いかけたのは、重岳が少女を送り届けた後だった。
ロドスは広い。この艦にやってきてからしばらく経つ重岳でさえ、馴染みのないエリアに来れば案内なしでは歩けない。来てすぐの時は、姉妹たちの先導なしにはどこにも行けなかったものだ。
だから治療のためにここに来たという少女は、親とはぐれて、迷子になったのだという。
5552引用:川野芽生「人形街」
「泣いている子供には、どう反応すればいいんだっけ?」
薄氷のように青い髪と薄桃色の瞳を持つ少年が、あどけなくそう問いかけたのは、重岳が少女を送り届けた後だった。
ロドスは広い。この艦にやってきてからしばらく経つ重岳でさえ、馴染みのないエリアに来れば案内なしでは歩けない。来てすぐの時は、姉妹たちの先導なしにはどこにも行けなかったものだ。
だから治療のためにここに来たという少女は、親とはぐれて、迷子になったのだという。
mmmsssrrr0
DONE黒限(成長後)百年ぶりに情欲を催したので誰でもいいから見繕いにいくという无限に小黒が立候補する、だけの掌編。小黒が脳内でうるさい。
(黒限成長後)立候補「小黒、すこしいいか」
「はい」
小黒が背筋をしゃんと伸ばして返事をしたのは、師の声に緊張の色を聞き取ったからだった。
きっと、任務に関係する、それもいつもよりも難しくて重要な件についての話があるのだろう。そう思って振り返ったが、予想に反して无限はいつも任務におもむく時の格好ではなく、美しく装った姿をしていた。
暗緑の長衫の上に、えりにラインの入った深衣。普段から无限が好んで着ている服だが、髪は丁寧に結われ、わずかに、香油のにおいがする。
(デートだ)
小黒は直観し、すぐさま心の中でその考えを振り払った。
无限がデートだなんて、ありえない。六歳で无限の弟子となってから、小黒が大人になり、いっぱしの執行人としてひとかどの信頼を得た今に至るまで、无限には恋人の影など一切なかった。長くひそかにその座を狙っていた小黒にはわかる。
2167「はい」
小黒が背筋をしゃんと伸ばして返事をしたのは、師の声に緊張の色を聞き取ったからだった。
きっと、任務に関係する、それもいつもよりも難しくて重要な件についての話があるのだろう。そう思って振り返ったが、予想に反して无限はいつも任務におもむく時の格好ではなく、美しく装った姿をしていた。
暗緑の長衫の上に、えりにラインの入った深衣。普段から无限が好んで着ている服だが、髪は丁寧に結われ、わずかに、香油のにおいがする。
(デートだ)
小黒は直観し、すぐさま心の中でその考えを振り払った。
无限がデートだなんて、ありえない。六歳で无限の弟子となってから、小黒が大人になり、いっぱしの執行人としてひとかどの信頼を得た今に至るまで、无限には恋人の影など一切なかった。長くひそかにその座を狙っていた小黒にはわかる。
ereply
PAST2018年辺りに書いていたリュウラシさんの掌編です。スト5のB-Boyコスチュームのリュウさんとアレコスのラシード君、お揃いみたいで可愛い!
on fire / リュウラシ「その格好、あんたらしくないよなぁ」
初めて見た訳でもないのに、ラシードはリュウの出で立ちに視線をめぐらせて小さく笑う。
鉢巻の代わりに目深に被った赤いバケットハット。
白いブルゾンと揃いのデニムを纏って、胸に大袈裟な時計を下げ、足元には眩しいほど真っ赤なスニーカー。
拳にはグローブの代わりに「風林火山」を一文字ずつ刻んだ指輪が輝いている。
サングラスから覗く瞳だけはいつもと何ら変わりない。
質実剛健を絵に描いたような、普段の胴着姿とは正反対だ。
そうしてまじまじと見ていると、リュウは慣れない手付きでサングラスを外し、困ったように口を開いた。
「やっぱりおかしいか?」
「あぁ、いや、見馴れるとなかなか似合ってるよ。
2647初めて見た訳でもないのに、ラシードはリュウの出で立ちに視線をめぐらせて小さく笑う。
鉢巻の代わりに目深に被った赤いバケットハット。
白いブルゾンと揃いのデニムを纏って、胸に大袈裟な時計を下げ、足元には眩しいほど真っ赤なスニーカー。
拳にはグローブの代わりに「風林火山」を一文字ずつ刻んだ指輪が輝いている。
サングラスから覗く瞳だけはいつもと何ら変わりない。
質実剛健を絵に描いたような、普段の胴着姿とは正反対だ。
そうしてまじまじと見ていると、リュウは慣れない手付きでサングラスを外し、困ったように口を開いた。
「やっぱりおかしいか?」
「あぁ、いや、見馴れるとなかなか似合ってるよ。
greentea
DOODLERWRBの掌編(書き手はヘンアレ好きですが、どちらがという描写はありません)その手を離したくない 重力のように心が引っ張られて、一度キスをしてしまえば止まらなかった。答え合わせをしたいともう一度会って話すだけのつもりだったのに、体は正直なもので気がついたら何度も思い出していたあのリップにキスしていた。すり合わせたそこは柔らかくて、気持ちが良かった。
じかに肌に触れてペッティングもしていたのに、いざヘンリーから挿入を伴うセックスに誘われた時には動揺した。セックスは異性相手にはしても同性とは、あの記者ともそこまではしなかったからどっちがどうすればいいかまでは深く考えてなかった。
リードされるがままのセックスは気持ちが良くて、大変で、ヘンリーも気持ちが良いか気になって。僕が触れたヘンリーの肌はしっとりとしていて、そしてヘンリーの指が僕の身体に触れる度にびりびりと腰が痺れて。ゆったりと、そして必死にしたセックスは、ハートが満たされた。
815じかに肌に触れてペッティングもしていたのに、いざヘンリーから挿入を伴うセックスに誘われた時には動揺した。セックスは異性相手にはしても同性とは、あの記者ともそこまではしなかったからどっちがどうすればいいかまでは深く考えてなかった。
リードされるがままのセックスは気持ちが良くて、大変で、ヘンリーも気持ちが良いか気になって。僕が触れたヘンリーの肌はしっとりとしていて、そしてヘンリーの指が僕の身体に触れる度にびりびりと腰が痺れて。ゆったりと、そして必死にしたセックスは、ハートが満たされた。
weedspine
DOODLE許しにまつわる掌編その3。遺された子供二人。これにておしまい。わがままを言わせて書斎の扉をノックする音が響く。
バンジークスが入室を促すと、扉を開けて亜双義が入ってきた。
手に一冊の本を抱えている。
「こちら、お返しします。ありがとうございました」
部屋の奥、主人用のデスクに座るバンジークスの元までくると、その本を差し出し丁寧に礼を述べた。
「役に立っただろうか」
「ええ、とても。手書きの注釈は、貴公が?」
亜双義が検事を目指すと宣言した際、最初に渡されたのがこの本だった。
基礎となる知識が、比較的平易な言葉でまとめられている。
それでも出てくる専門用語や解釈の難しい一説などには必ず赤インキで注釈が添えられていた。
本文より分かりやすい解説であったり、凡例を用いて理解を促したり、
まるで暗い道の足元を照らすランタンのようなそれに導かれ、初歩を進み始めることができた。
1997バンジークスが入室を促すと、扉を開けて亜双義が入ってきた。
手に一冊の本を抱えている。
「こちら、お返しします。ありがとうございました」
部屋の奥、主人用のデスクに座るバンジークスの元までくると、その本を差し出し丁寧に礼を述べた。
「役に立っただろうか」
「ええ、とても。手書きの注釈は、貴公が?」
亜双義が検事を目指すと宣言した際、最初に渡されたのがこの本だった。
基礎となる知識が、比較的平易な言葉でまとめられている。
それでも出てくる専門用語や解釈の難しい一説などには必ず赤インキで注釈が添えられていた。
本文より分かりやすい解説であったり、凡例を用いて理解を促したり、
まるで暗い道の足元を照らすランタンのようなそれに導かれ、初歩を進み始めることができた。
weedspine
DOODLE許しにまつわる掌編その2。あの後、亜双義の処分ってどうなったんでしょうね?さいわい大英帝国の裁判所に、今日も木槌が鳴り響く。
検察席には亜双義が立ち、その補佐としてバンジークスが控えている。
審議は滞りなく進み、検察側の主張通りの罪状にて被告人は有罪となった。
これにて閉廷、という間際、被告人が叫んだ。
「なぜ私が、東洋の猿になど断罪されねばならんのだ!しかも前科者のくせに…」
憤るままの罵声が終わる前に、鋼鉄の踵が高らかに振り落とされたのは言うまでもない。
諸々の手続きを終え、二人は自分たちの執務室へと戻る。
検事局の廊下を進む間はお互い黙ったまま、すれ違った人々がみな関わり合いたくないと感じるような重い空気をまとっていた。
部屋に入り、鈍い音を立てて扉が閉まる。
それを待ちかねていたかのように、亜双義は笑い出した。
1484検察席には亜双義が立ち、その補佐としてバンジークスが控えている。
審議は滞りなく進み、検察側の主張通りの罪状にて被告人は有罪となった。
これにて閉廷、という間際、被告人が叫んだ。
「なぜ私が、東洋の猿になど断罪されねばならんのだ!しかも前科者のくせに…」
憤るままの罵声が終わる前に、鋼鉄の踵が高らかに振り落とされたのは言うまでもない。
諸々の手続きを終え、二人は自分たちの執務室へと戻る。
検事局の廊下を進む間はお互い黙ったまま、すれ違った人々がみな関わり合いたくないと感じるような重い空気をまとっていた。
部屋に入り、鈍い音を立てて扉が閉まる。
それを待ちかねていたかのように、亜双義は笑い出した。
weedspine
DOODLE亜双義が言った「許すことはできない」に触発されての掌編。汝、赦すなかれあなたがたが人を許すのは、許すほどのことが何もないからなのだ
G・K・チェスタトン マーン城の喪主 より
倫敦の街に鐘の音が降り注ぐ。
天を穿つような尖塔に挟まれた鐘楼は傾きかけた日差しをうけてまばゆい。
重厚で圧倒するような建築は、日本の神社仏閣とは規模が違う。
亜双義はこの国の教会を目にする度、自分が異教徒であることを痛感するのだった。
「人々は何を求めて教会に通うのだ?」
隣を行く師に問う。
本来、検事は事件の現場を調べる身ではない。
しかし異国の若人である亜双義が英国の裁判を扱うのに支障がないよう、
できるかぎりのものごとを実際に見せたいというバンジークスの思惑の元
2人は担当事件に関係する場所に赴くことが常であった。
1302G・K・チェスタトン マーン城の喪主 より
倫敦の街に鐘の音が降り注ぐ。
天を穿つような尖塔に挟まれた鐘楼は傾きかけた日差しをうけてまばゆい。
重厚で圧倒するような建築は、日本の神社仏閣とは規模が違う。
亜双義はこの国の教会を目にする度、自分が異教徒であることを痛感するのだった。
「人々は何を求めて教会に通うのだ?」
隣を行く師に問う。
本来、検事は事件の現場を調べる身ではない。
しかし異国の若人である亜双義が英国の裁判を扱うのに支障がないよう、
できるかぎりのものごとを実際に見せたいというバンジークスの思惑の元
2人は担当事件に関係する場所に赴くことが常であった。
むつはら
DOODLEイベント「誰の話を聞こうか?」に展示する140字のお題掌編4本です新風掌編4つ切ないやつと悲恋もあります
◇
予想通り新堂の第二ボタンはなくなっていた。というか全部のボタンがなくなっていた。追い剥ぎにあったみたいだと笑ったら、実際卒業式の女子なんて追い剥ぎと変わらないとため息をついていた。第二ボタンがもらえたら、言おうと思っていたのにな。結局告白どころかボタンちょうだいとも言えなかった。
/さようなら僕の青と春風
◇
君がパフェを頼むなら僕はこっちを頼もう。着いて来てもらった手前文句を言うこともできずにテーブルに届いたハート型のストローと淡いブルーのソーダ。当たり前のように奴の反対側の飲み口を顎で示され、遠慮がちに咥えれば風間もそれに続く。喉を焦がす炭酸が染み込む感覚を別の何かと間違えそうだ。
674◇
予想通り新堂の第二ボタンはなくなっていた。というか全部のボタンがなくなっていた。追い剥ぎにあったみたいだと笑ったら、実際卒業式の女子なんて追い剥ぎと変わらないとため息をついていた。第二ボタンがもらえたら、言おうと思っていたのにな。結局告白どころかボタンちょうだいとも言えなかった。
/さようなら僕の青と春風
◇
君がパフェを頼むなら僕はこっちを頼もう。着いて来てもらった手前文句を言うこともできずにテーブルに届いたハート型のストローと淡いブルーのソーダ。当たり前のように奴の反対側の飲み口を顎で示され、遠慮がちに咥えれば風間もそれに続く。喉を焦がす炭酸が染み込む感覚を別の何かと間違えそうだ。
ハスミ
DONE【乱寂/全年齢掌編】暗い。次の本か、その次あたりでらむだくんとクローンちゃんたちの臓器移植・売買ビジネスをふんわ~り扱った倫理ゼロの暗いおはなしを書きたいです。
これはそのおはなしに僅かに掠ってる全年齢の掌編、3200字くらい。書いてて楽しい。
20230801_乱寂掌編/テセウスの船は沈みゆくテセウスの船は沈みゆく
「――ああ、いた! 乱数くん、待ち合わせに遅くなってしまってごめんね、南口はふだんあまりつかわないから、」
「もーっ、寂雷おっそ! 遅すぎるから連れて行かれちゃったんだからねっ!」
「連れて行かれた、というのは?」
「寂雷が待ち合わせに遅れたから、僕が連れて行かれちゃったって意味だよんっ!」
「? きみはここにいるし、それはなにかで流行っている言い回しか何かかい」
「んー、やっぱまだぜんっぜん分かんないかあ。ま、それならべつにいーんじゃない、分かんないならそのまんまでいなよ。知らなくても済むことや、知らないほうがいいことばっかりで世界は回転し続けてるんだから。でも、いつか教えたげるね。いつか、のはなしだけど」
3207「――ああ、いた! 乱数くん、待ち合わせに遅くなってしまってごめんね、南口はふだんあまりつかわないから、」
「もーっ、寂雷おっそ! 遅すぎるから連れて行かれちゃったんだからねっ!」
「連れて行かれた、というのは?」
「寂雷が待ち合わせに遅れたから、僕が連れて行かれちゃったって意味だよんっ!」
「? きみはここにいるし、それはなにかで流行っている言い回しか何かかい」
「んー、やっぱまだぜんっぜん分かんないかあ。ま、それならべつにいーんじゃない、分かんないならそのまんまでいなよ。知らなくても済むことや、知らないほうがいいことばっかりで世界は回転し続けてるんだから。でも、いつか教えたげるね。いつか、のはなしだけど」