巨大な石の顔
DONEサンサーラシリーズ第一章。江澄はすごく心配しているけれど兄上には伝わらない話。天人五衰(二) 白木蓮こと藍曦臣は金麟台へ到着したその日から蓮池の写生に取りかかった。
金麟台の蓮池の蓮は、金凌の父親である金子軒が妻江厭離のために特別に品種改良したもので早朝から夜半まで花開くとかつて金光瑶が教えてくれた。藍曦臣はしかし陽が沈む前には町で取っている宿へ戻るつもりだった。
絵師の格好をしてはみたものの、手元にある色彩は墨だけで色を付ける気は今のところちっとも起きなかった。
阿瑶に何度か通されたことのある四阿に腰かけ、寒室に残っていた上等の紙に墨一色で濃淡をつけて蓮池を再現していく。
青々とした立ち葉と立ち葉の隙間から、蓮は茎をのばしてぽつぽつと咲き始めたが満開はまだ当分先になるだろう。池の底にある汚泥を映したかのような黒い水面にアメンボが波紋を描いている。まるで雨が降っているかのようだ。
5489金麟台の蓮池の蓮は、金凌の父親である金子軒が妻江厭離のために特別に品種改良したもので早朝から夜半まで花開くとかつて金光瑶が教えてくれた。藍曦臣はしかし陽が沈む前には町で取っている宿へ戻るつもりだった。
絵師の格好をしてはみたものの、手元にある色彩は墨だけで色を付ける気は今のところちっとも起きなかった。
阿瑶に何度か通されたことのある四阿に腰かけ、寒室に残っていた上等の紙に墨一色で濃淡をつけて蓮池を再現していく。
青々とした立ち葉と立ち葉の隙間から、蓮は茎をのばしてぽつぽつと咲き始めたが満開はまだ当分先になるだろう。池の底にある汚泥を映したかのような黒い水面にアメンボが波紋を描いている。まるで雨が降っているかのようだ。
巨大な石の顔
DONEサンサーラシリーズ第一章。閉関していた兄上が絵師に身をやつして金麟台へ行きます。天人五衰(一) 天人五衰とは、仏教用語で、六道最高位の天界にいる天人が、長寿の末に迎える死の直前に現れる五つの兆しのこと。
大般涅槃経においては、以下のものが「天人五衰」とされる、大の五衰と呼ばれるもの。
一.衣裳垢膩(えしょうこうじ):衣服(羽衣)が埃と垢で汚れて油染みる
二.頭上華萎(ずじょうかい):頭上の華鬘が萎える
三.身体臭穢(しんたいしゅうわい):身体が汚れて臭い出す
四.腋下汗出(えきげかんしゅつ):腋の下から汗が流れ出る
五.不楽本座(ふらくほんざ):自分の席に戻るのを嫌がり楽しみが味わえなくなる
出典元Wikipedia
幼い頃藍曦臣は母のことを、羽衣を奪われた天女のようだと思っていた。
天帝から受けた命を果たしに地上へ降り立ったところ羽衣を父に奪われてしまって、二度と生まれ育った天へ還れない。好きでもない男に閉じ込められその子どもを生まされた気の毒な美しい女性。そう信じていた。
9058大般涅槃経においては、以下のものが「天人五衰」とされる、大の五衰と呼ばれるもの。
一.衣裳垢膩(えしょうこうじ):衣服(羽衣)が埃と垢で汚れて油染みる
二.頭上華萎(ずじょうかい):頭上の華鬘が萎える
三.身体臭穢(しんたいしゅうわい):身体が汚れて臭い出す
四.腋下汗出(えきげかんしゅつ):腋の下から汗が流れ出る
五.不楽本座(ふらくほんざ):自分の席に戻るのを嫌がり楽しみが味わえなくなる
出典元Wikipedia
幼い頃藍曦臣は母のことを、羽衣を奪われた天女のようだと思っていた。
天帝から受けた命を果たしに地上へ降り立ったところ羽衣を父に奪われてしまって、二度と生まれ育った天へ還れない。好きでもない男に閉じ込められその子どもを生まされた気の毒な美しい女性。そう信じていた。
ushiai_41
DONE面倒くさい友人/疲れた阿澄が肉食いに清河に行く話/聶懐桑とのダチの関係※魂魄未視聴のため想像で補ってます。なんでも許せる人向け
清河のお肉 聶懐桑の知る江澄という男は、面倒くさい、を体現している。
本人に言ったことは無いし、言えば確実に紫電で打たれてしまうため今後も口に出さず胸に秘めておくつもりだが、おそらく十人に聞けば七人は頷くだろう。残りの三人は熱心な信者、もしくは江澄に懸想している者だ。
周りに厳しく、己にはもっと厳しい。
一人になりたがる癖に、寂しがり屋で意地っ張り。
かといって構いすぎると逆に距離を置かれて、ある程度心を開くが一線を超えると一瞬で遠い他人となる。
酒に酔えば自己否定ばかり、怪我をしても持ち前の修為の高さでなんとかしてしまい誰にも言わない。何故それを懐桑が知っているかは秘密だ、紫電で打たれるつもりはない。
素直じゃない、とても不器用、理想が高い、矜恃も高い、そのくせ自己評価が格段に低い。
3472本人に言ったことは無いし、言えば確実に紫電で打たれてしまうため今後も口に出さず胸に秘めておくつもりだが、おそらく十人に聞けば七人は頷くだろう。残りの三人は熱心な信者、もしくは江澄に懸想している者だ。
周りに厳しく、己にはもっと厳しい。
一人になりたがる癖に、寂しがり屋で意地っ張り。
かといって構いすぎると逆に距離を置かれて、ある程度心を開くが一線を超えると一瞬で遠い他人となる。
酒に酔えば自己否定ばかり、怪我をしても持ち前の修為の高さでなんとかしてしまい誰にも言わない。何故それを懐桑が知っているかは秘密だ、紫電で打たれるつもりはない。
素直じゃない、とても不器用、理想が高い、矜恃も高い、そのくせ自己評価が格段に低い。
Iz_Mas_x
DONE纏まった時間が取れないため、魏嬰ちゃん番外篇となります。今回は江澄視点でお送りいたします。
もう少し掘り下げたかったのですが、時間切れで残念無念。
献舎されて蘇った魏無羨が、何故か女性だった話 番外篇 江晩吟の憂鬱 大梵山で十三年振りに魏無羨に会った。奪舎してまで蘇り何をする積もりなのだと、怒りに駆られて紫電で打ち付けたが何も起こらなかった。奪舎ではないということは、まさか献舎なのだろうか。誰が何の目的で魏無羨を蘇らせたというのだ。
目の前の魏無羨は、江晩吟が知っていた前世の彼よりも五寸(約十五センチメートル)程背が低く、身体付きも随分と華奢になっている。彼が蓮花塢に連れて来られた頃を彷彿させる痩せぎす振りだ。纏っている[[rb:襤褸 > ボロ]]も、何処の世家のものか判別が付かない程酷いものだ。
恐らく虐待された怨みを晴らすべく、無上邪尊、あるいは魔道祖師と悪名高い魏無羨を献舎の相手に選んだのだろう。選りに選って何故、と江晩吟は忌々しげに舌打ちをした。誰よりも慈悲深い男だ、困っている者を助けない筈がない。
3068目の前の魏無羨は、江晩吟が知っていた前世の彼よりも五寸(約十五センチメートル)程背が低く、身体付きも随分と華奢になっている。彼が蓮花塢に連れて来られた頃を彷彿させる痩せぎす振りだ。纏っている[[rb:襤褸 > ボロ]]も、何処の世家のものか判別が付かない程酷いものだ。
恐らく虐待された怨みを晴らすべく、無上邪尊、あるいは魔道祖師と悪名高い魏無羨を献舎の相手に選んだのだろう。選りに選って何故、と江晩吟は忌々しげに舌打ちをした。誰よりも慈悲深い男だ、困っている者を助けない筈がない。
palalanpa
PROGRESS※無断転載、転用、引用などパクリに値する行為禁止※現代AU、リーマン同棲パロ曦澄。
あまりの忙しさに中々触れ合えない2人。江澄は前だけの自慰で満足出来ず、小さなプラグくらいならこっそり持っていても大丈夫ではーー!?と思ったのがきっかけの大人の玩具ネタ。
書き出したら長くなりそうなのでひとまずできたとこまで。 10747
だみぃにゃん
DOODLEちんじょれ江澄。蜜雪さんの素敵イラストにタグが付いてたからふらっと。
うっかりかいてた。
後悔先に立たず
どうして俺はこうなのか。
やつが藍忘機を庇った時も、蓮花塢が落ちた時も、金丹を失い絶望したときも
やつが温氏の残党を匿った時も、捨てろといった時も、姉を失い絶望したときも
本当は迷わず手を差し伸べられるあいつを尊敬していた。
本当は傍にいてくれることがとても心強かった。
本当はあいつも俺と同じくらい絶望しているとわかっていた。
どうして俺はこうなのか。
一緒に手を差し伸べたかった。
罵るよりも傍にいてくれと叫びたかった。
あいつの気持ちも慮るべきだった。
姐が父が、生前ずっと諭していてくれたのに。
俺はついぞ自分の口を塞ぐことが出来なかった。
あいつは俺のことを一番理解してくれているからと甘えてしまった。
728どうして俺はこうなのか。
やつが藍忘機を庇った時も、蓮花塢が落ちた時も、金丹を失い絶望したときも
やつが温氏の残党を匿った時も、捨てろといった時も、姉を失い絶望したときも
本当は迷わず手を差し伸べられるあいつを尊敬していた。
本当は傍にいてくれることがとても心強かった。
本当はあいつも俺と同じくらい絶望しているとわかっていた。
どうして俺はこうなのか。
一緒に手を差し伸べたかった。
罵るよりも傍にいてくれと叫びたかった。
あいつの気持ちも慮るべきだった。
姐が父が、生前ずっと諭していてくれたのに。
俺はついぞ自分の口を塞ぐことが出来なかった。
あいつは俺のことを一番理解してくれているからと甘えてしまった。
サハラ
DONE【魔道祖師 漫画①】アニメの江澄が、あまりにハードモードなので、少し救いがあったらなという想いをこめて、cqlのエピソードをガッチャンコしてしまった短い漫画です。
アニメのその後を捏造した金凌との話【漫画祖師 漫画②】と、対になっています。
差し支えなければ、そちらと合わせて見てやって下さい。
【注意】微グロ。死ネタ。あります。何でも許せる人向け
palalanpa
MOURNINGツイートしたhttps://twitter.com/palalanpa/status/1464799332482252802?s=21 の続き。澄、男の体のまま母乳が出ます。
曦、飲みます。でもセッはしません。
(授乳なんかしたことないし乳が出るとかよく分からんなと思う時は、女子が想像する男子の射〇と同じような感覚で想像するとよいかもしれませんな!ははははははは!!) 7320
winterland1234
1111江澄誕生日記念の小説(書きかけ)雨を司る鬼の呪いを受けた江澄とその呪いを分かち合う曦臣兄さんの話です。
江澄誕生日おめでとう小説(途中まで) 江晩吟こと江澄は雨の降り続ける蓮花塢の寝室で寝込んでいた。雲夢では雨がもう何十日と言っていいほど降り続けている。町の人々はこの季節になるとよく降る雨と思って最初は受け入れていた。だがそれが十何日と続いてくると流石の彼らも異変に気づき、川も増水して溢れた分が川の近くにある村々を水浸しにしていったのだ。
「これは流石におかしい」
そう考えたある村の人々が雲夢の仙家である江家に赴き、これは美雨鬼の仕業ではないか、調べてほしいと陳情した。
当主である江晩吟は最初こそは「違う」と言って彼らを帰らせたが、その数日後にその村の中で死者が出たのだと報告を受けた。その報告を聞いて部下の仙士たちを連れてその村にある堂へ向かった。もちろん美雨鬼を討伐するためだ。
2162「これは流石におかしい」
そう考えたある村の人々が雲夢の仙家である江家に赴き、これは美雨鬼の仕業ではないか、調べてほしいと陳情した。
当主である江晩吟は最初こそは「違う」と言って彼らを帰らせたが、その数日後にその村の中で死者が出たのだと報告を受けた。その報告を聞いて部下の仙士たちを連れてその村にある堂へ向かった。もちろん美雨鬼を討伐するためだ。
○いど○
SPOILER注意書き※プロフ一読お願いします
※4巻祠堂 ネタバレ有り
※某翻訳機ネタ ギャグ
※双傑/江澄/薄ら忘羨
あの時、みんな言葉の裏側に込められた想いが強すぎて、相手のことも自分のこともよく見えなくなっちゃってたのかなと。江澄の心の叫び、魏嬰自身も気が付いていない藍湛への想い、藍湛の表情の意味など何度読み返しても感情がぐちゃぐちゃになります。
パス:注意書きOKですか? yes/no 5
Nanakuart
PROGRESSyou ask for it, bottom #LXC first! #wip will post the complete thing later, maybe for #JC's birthday? #Xicheng紫雨(shigure)
SPOILER最終話のネタバレなので、未視聴の方の閲覧は推奨しません。アニメ完結編の最終話を観て、どうしようもなくやるせない気持ちになり、書くしかなかった…。
鈴を受け取って走り出した金凌って、つまりはそういうことでしょ????そうじゃなきゃやってられん…!!!!!という話。
江澄……😭😭😭 2603
chunyang_3
MEMOCQL話数ワンドロワンライ2回目(11~20話)。18話の江澄と汁物の思い出の話。魏無羨の話を聞きながら涙を流している江澄※画像で上げたものと基本的に同じですが、表現を手直ししています
忘れ難き味 ドンドンと扉を叩く音に、眠りについていた厭離は起こされた。
「姉上……!」
扉の向こうの姉に向かって江澄は声を上げた。父にも母にも言ったら絶対に怒られるに決まっていて怖くて言えないから、江澄には姉に頼る以外の道は無かった。厭離は一体何があったのだろうと思ったのか、急いで扉を開けてくれた。
「阿澄どうしたの?」
「姉上……姉上、どうしよう!」
厭離の顔を見た瞬間、堪えきれなくなり江澄はわんわんと声を上げて泣き出してしまった。
今日、父は江澄が妃妃や小愛と名前をつけて可愛がっていた犬達を知らぬ間に他所へあげてしまっていた。江澄がそのことを知ったのは彼女達がもうずっと遠くに行ってしまってからだ。そんなの絶対に納得がいかないし、悲しくて苦しくてどうして良いか分からないまま夜になってしまい、江澄は部屋でずっと泣き喚いていた。
2333「姉上……!」
扉の向こうの姉に向かって江澄は声を上げた。父にも母にも言ったら絶対に怒られるに決まっていて怖くて言えないから、江澄には姉に頼る以外の道は無かった。厭離は一体何があったのだろうと思ったのか、急いで扉を開けてくれた。
「阿澄どうしたの?」
「姉上……姉上、どうしよう!」
厭離の顔を見た瞬間、堪えきれなくなり江澄はわんわんと声を上げて泣き出してしまった。
今日、父は江澄が妃妃や小愛と名前をつけて可愛がっていた犬達を知らぬ間に他所へあげてしまっていた。江澄がそのことを知ったのは彼女達がもうずっと遠くに行ってしまってからだ。そんなの絶対に納得がいかないし、悲しくて苦しくてどうして良いか分からないまま夜になってしまい、江澄は部屋でずっと泣き喚いていた。
oio_oi3
DONE観音廟後、寒室で閉閑してる藍曦臣のところへ忘羨に頼まれて通っている江澄。藍曦臣は妹の話をし始め……カプ要素無しですが曦澄製造ラインです
出産についてデリケートな部分に触れています。何を読んでも大丈夫という方だけどうぞ。
この話にカプ要素はないですが曦澄製造ラインではあります。 5
chunyang_3
MEMO“君”がいない世界の江澄蓮の花の咲く音を聞くと悟りが開けるという話があるらしいんですが、蓮が開く時にポンという音がするというのは俗説らしい。
江澄の隣に金凌がいてくれて良かったなと思うばかり。
詠んだ短歌のイメージを短編にしました
君待ち/江澄「蓮花の咲きだす音の聞きたさに走る君の背まぼろしなりて」
ゆさゆさと肩を揺らされて、寝台でよく眠っていた江澄は何事かと寝返りを打とうとする。
「おい、江澄起きろ。行くぞ」
「なんだ?」
目を擦りながらゆっくりと目を開けるが、まだ夜は明けていないようで部屋は暗いままだ。
「こんな夜中になんだ」
「夜中じゃないよ、寅の刻(午前四時)だよ」
「なんでそんな時間にお前が起きてるんだ」
江澄が苛立たしげに声を上げると、魏嬰は人差し指を顔の前に立てながら、もう片方の手のひらで江澄の口を塞ぐ。
「しーっ! 大きい声を出したら師姉達が起きちゃうだろ」
たしかにこんな時辰に騒ぎ立てようものなら、父上や母上の耳に入ったら何を言われるか分からない。
3734ゆさゆさと肩を揺らされて、寝台でよく眠っていた江澄は何事かと寝返りを打とうとする。
「おい、江澄起きろ。行くぞ」
「なんだ?」
目を擦りながらゆっくりと目を開けるが、まだ夜は明けていないようで部屋は暗いままだ。
「こんな夜中になんだ」
「夜中じゃないよ、寅の刻(午前四時)だよ」
「なんでそんな時間にお前が起きてるんだ」
江澄が苛立たしげに声を上げると、魏嬰は人差し指を顔の前に立てながら、もう片方の手のひらで江澄の口を塞ぐ。
「しーっ! 大きい声を出したら師姉達が起きちゃうだろ」
たしかにこんな時辰に騒ぎ立てようものなら、父上や母上の耳に入ったら何を言われるか分からない。
chunyang_3
MEMOCQL短歌「君待ち」江澄、藍忘機、聶懐桑
“君”がいない世界の3人を詠んだ短歌3首
蓮の花が咲く時に音はしない
黄昏とは老いるほどの時間の経過
東の果ての扶桑に止まっているはずの9つの太陽を射ったのは射日の英雄羿である 3
紫雨(shigure)
MOURNING先週の凌澄のワンライ用に書いたものでしたが、江澄が可哀想なところで筆が止まって一時間経ってしまったので、とりあえず供養しておきます🙏💦金凌ちゃんがなんとかしてくれる展開を思いついたら加筆してあげます。
お題『西瓜』 蓮花塢の夏は蒸し暑い。
この時期、あちらこちらで蓮の花ひらく様はまるで仙郷のごとき美しさだが、水場が多いということは湿度も高くなるというわけで。蓮花塢の住人の関心は、このじっとりとした暑さをどのように凌ぐかということに向けられるのだ。
厳しく容赦のない宗主が率いる雲夢江氏の弟子たちも例外ではなく、その日は宗主の不在をいいことに、監督者の目を盗んで、修練場から抜け出した数人の少年たちが試剣堂でごろりと寝そべって、床板に涼を求めていた。
「お前たち! 何をやっている!」
「ひえっ!」
ふいに降ってわいた怒声に、少年たちは震えあがる。
苛烈な宗主が帰ってきたかと、顔を見られる前に別の扉から逃げ出そうと少年たちは考えたが、声が違うことに気が付いた一人が、好奇心から振り返った。
1373この時期、あちらこちらで蓮の花ひらく様はまるで仙郷のごとき美しさだが、水場が多いということは湿度も高くなるというわけで。蓮花塢の住人の関心は、このじっとりとした暑さをどのように凌ぐかということに向けられるのだ。
厳しく容赦のない宗主が率いる雲夢江氏の弟子たちも例外ではなく、その日は宗主の不在をいいことに、監督者の目を盗んで、修練場から抜け出した数人の少年たちが試剣堂でごろりと寝そべって、床板に涼を求めていた。
「お前たち! 何をやっている!」
「ひえっ!」
ふいに降ってわいた怒声に、少年たちは震えあがる。
苛烈な宗主が帰ってきたかと、顔を見られる前に別の扉から逃げ出そうと少年たちは考えたが、声が違うことに気が付いた一人が、好奇心から振り返った。
澪標(みおつくし)
DONEひとりで先にいってしまった江澄を、魏無羨が見送る話 ④※死ネタです
※魏無羨目線
※根底は曦澄だけど曦に妻子がいます(名前はありません)
※魏無羨がやっと江澄を理解する話でもある
※もうちょっと続く 6
澪標(みおつくし)
DONEひとりで先にいってしまった江澄を、魏無羨が見送る話 ③※死ネタです
※魏無羨目線
※根底に曦澄、しかしハッピーではいられなかった時空
※江澄の死に際の描写があります、痛そうなのが苦手な方はご注意を
※まだまだ続くよ 7
amaneazumaa
DONE双傑に夢を見すぎではとなりつつ夢は見たモン勝ちなので良いんだよとなりつつのとりあえず小説の体裁が完了。そのうち肉付けして校正してまとめてからpixivに上げます。上がる筈。
ともしびを手に 6腹もくちくなりさあ出発と、二人は銅陵を後にして西へと向かう。しかし星の巡りが悪いのか、銅陵を出てしばらくもしないところで、小さな荘が妖怪に襲われている場面に出くわした。
無視する訳には無論いかず、二人して荘に降りたって妖怪退治となった。
村に出た妖怪は欽原と呼ばれる蜂に似た妖怪で、刺されると鳥獣は死に木々は枯れる。さらには群れを作りその数も多いという妖怪である。
剣で一匹一匹を切り殺すのは面倒な欽原は、火を使って退治をする。蜂と同じような薄い羽を火で焼き、地面に落としてから始末をするのだ。手順さえ踏めば時間は掛かるが脅威ではそれ程でもない妖怪である。
退治の手法に倣い二人は符術で欽原の羽を焼いて回っていたのだが、一向に減らない数に魏無羨が悪い癖を出した。効率を上げるべく広範囲を焼いてやろうと、霊符をその場で書き変えたのだ。
4394無視する訳には無論いかず、二人して荘に降りたって妖怪退治となった。
村に出た妖怪は欽原と呼ばれる蜂に似た妖怪で、刺されると鳥獣は死に木々は枯れる。さらには群れを作りその数も多いという妖怪である。
剣で一匹一匹を切り殺すのは面倒な欽原は、火を使って退治をする。蜂と同じような薄い羽を火で焼き、地面に落としてから始末をするのだ。手順さえ踏めば時間は掛かるが脅威ではそれ程でもない妖怪である。
退治の手法に倣い二人は符術で欽原の羽を焼いて回っていたのだが、一向に減らない数に魏無羨が悪い癖を出した。効率を上げるべく広範囲を焼いてやろうと、霊符をその場で書き変えたのだ。
amaneazumaa
PROGRESS少年双傑話の続き。少年藍湛とニアミスしますが今回の話には関わらない。
ともしびを手に 5二人を最後に乗せて橋桁が外されると、夜明けと共に船が漕ぎ出された。未だ薄暗いにもかかわらず、力強く皖河を下っていく船の上は長江沿いの都邑へ向かう人と荷物で混み合っている。
人と荷物をかき分けながら船の端に高く積まれた荷物を見つけると、二人は並んで腰を下ろてし荷物に背中を預けた。
「これでしばらく、身体を休めることが出来るな」
魏無羨は大きく身体を伸ばす。すると今度は演技でなく大きなあくびが出た。
夜通し御剣の術で飛びっぱなしだったのだ。休息を取ったとはいえ気の休まらない山の中だったので、安全な場所で腰を下ろした事により疲労と空腹、ついでに眠気が一気に襲いかかってくる。
隣の江澄も疲れを隠せない顔で乾坤袋から、竹を切って作った水筒と饅頭を二つ取り出すと、一つを魏無羨に投げて寄越した。受け取ってもそもそと饅頭を囓り腹に収めたが、空腹よりも眠気が勝って、もう一つとは手が伸びない。代わりに懐から隠行符を取り出した。
3190人と荷物をかき分けながら船の端に高く積まれた荷物を見つけると、二人は並んで腰を下ろてし荷物に背中を預けた。
「これでしばらく、身体を休めることが出来るな」
魏無羨は大きく身体を伸ばす。すると今度は演技でなく大きなあくびが出た。
夜通し御剣の術で飛びっぱなしだったのだ。休息を取ったとはいえ気の休まらない山の中だったので、安全な場所で腰を下ろした事により疲労と空腹、ついでに眠気が一気に襲いかかってくる。
隣の江澄も疲れを隠せない顔で乾坤袋から、竹を切って作った水筒と饅頭を二つ取り出すと、一つを魏無羨に投げて寄越した。受け取ってもそもそと饅頭を囓り腹に収めたが、空腹よりも眠気が勝って、もう一つとは手が伸びない。代わりに懐から隠行符を取り出した。
amaneazumaa
PROGRESS少年双傑話の続き。少年時代の二人は地元じゃ負け知らずの悪童だと滅茶滅茶思っている。
責任感もまだあんまり無くて結丹したばかりで毎日が楽しくてしゃあない、眩いばかりの黄金時代をこの話は夢見てます。
ともしびを手に 4安慶に向かうべく結託をした二人は、段取りを詰めながら機会を待った。そして二ヶ月が過ぎた頃、江楓眠が清談会で不在の間に夜狩に出ることになった。
夜狩を願い出たのは雲夢の西に存在する木蘭山、その麓にある荘からであった。
山に住まう妖怪が、麓の荘まで降りてきて悪さをするので退治に赴いて欲しいと訴え出る話を江澄は聞きつけると、魏無羨と共に虞紫鳶へと妖怪退治に名乗りを上げた。
腕を上げたいと願い出る二人に虞紫鳶は、二十人の門弟を付けるならばと許可を与えた。
そして江澄が門弟を引き連れる形で蓮花塢を出発した一行は、日がある内に木欄山に到着すると、その日のうちに妖怪は見事退治されたのである。
だがその日のうちと言っても、退治を終えたのは夜もすっかり更けた刻限だ。蓮花塢に戻るのは翌日となり、その日は木欄山の荘に宿を取ることになった。
3139夜狩を願い出たのは雲夢の西に存在する木蘭山、その麓にある荘からであった。
山に住まう妖怪が、麓の荘まで降りてきて悪さをするので退治に赴いて欲しいと訴え出る話を江澄は聞きつけると、魏無羨と共に虞紫鳶へと妖怪退治に名乗りを上げた。
腕を上げたいと願い出る二人に虞紫鳶は、二十人の門弟を付けるならばと許可を与えた。
そして江澄が門弟を引き連れる形で蓮花塢を出発した一行は、日がある内に木欄山に到着すると、その日のうちに妖怪は見事退治されたのである。
だがその日のうちと言っても、退治を終えたのは夜もすっかり更けた刻限だ。蓮花塢に戻るのは翌日となり、その日は木欄山の荘に宿を取ることになった。
amaneazumaa
PROGRESS少年双傑話の続き。この話は夢と希望とねつ造に次ぐねつ造で出来ています。
ともしびを手に 3「長沢からの手紙だ」
手紙を取り上げた江楓眠は、それを魏無羨へと差し出した。思いも掛けぬ江楓眠の言葉に、魏無羨は瞳を丸くすると身体の動きを止める。
「……えぇ、と」
口も固まってしまい、常は過分に回る少年とは思えない、歯切れの悪い言葉しか出てこなかった。
長沢。魏長沢。知っている。
父の名前だ。
江家の家僕であり、江楓眠とは親しい間柄であったということは聞かされている。だから手紙の一つや二つ、残っていても何らおかしくは無いのだ。
しかし魏無羨は今まで父の残したものを、己という存在以外に知らなかった。それが江家に迎え入れられて数年経った今になって急に現れたものだがら、本来であれば喜ぶべき筈なのに酷く戸惑った。
「読んで……良いの?」
3151手紙を取り上げた江楓眠は、それを魏無羨へと差し出した。思いも掛けぬ江楓眠の言葉に、魏無羨は瞳を丸くすると身体の動きを止める。
「……えぇ、と」
口も固まってしまい、常は過分に回る少年とは思えない、歯切れの悪い言葉しか出てこなかった。
長沢。魏長沢。知っている。
父の名前だ。
江家の家僕であり、江楓眠とは親しい間柄であったということは聞かされている。だから手紙の一つや二つ、残っていても何らおかしくは無いのだ。
しかし魏無羨は今まで父の残したものを、己という存在以外に知らなかった。それが江家に迎え入れられて数年経った今になって急に現れたものだがら、本来であれば喜ぶべき筈なのに酷く戸惑った。
「読んで……良いの?」
amaneazumaa
PROGRESSちょっと出来たので上げ。まだ起なのと子ども双傑をわちゃわちゃさせてるのが楽しいのとで話は進まない。しかしこれは子ども双傑の話なのでヨシ。江おじさんも出てきますが、口調がいまいち分からないのでブレてる気がしてならない。
話題に出てくる少年神は哪吒。
ともしびを手に 2ならば早速ということで、昼餉で同じ卓についた江楓眠に江厭離が願い出ると、彼は鷹揚に頷いて宝物庫に入る許可を三人に与えた。
こうもすんなりと許可が与えられたのは、今日は朝からの用事があり、虞紫鳶が不在であった事がもっともの幸運だろう。
急ぎの仕事は無いからと江楓眠自身も三人に付き合い、四人は揃って宝物庫へと向かう。
江厭離が告げたとおり、外廷と内廷の境には宝物庫が一つあった。
法器を収める重要な倉なのになぜこんな場所にと魏無羨が問うと、怪異には法器が関わっていることが少なからずあり、この宝物庫はそうして押収した法器の中で、危険度が低い品の保管庫も兼ねていると江楓眠は応えた。
「最近は法器や呪符に随分と熱心だと聞いているから、ここの中の品なら持ち出してやれる物があるよ」
2933こうもすんなりと許可が与えられたのは、今日は朝からの用事があり、虞紫鳶が不在であった事がもっともの幸運だろう。
急ぎの仕事は無いからと江楓眠自身も三人に付き合い、四人は揃って宝物庫へと向かう。
江厭離が告げたとおり、外廷と内廷の境には宝物庫が一つあった。
法器を収める重要な倉なのになぜこんな場所にと魏無羨が問うと、怪異には法器が関わっていることが少なからずあり、この宝物庫はそうして押収した法器の中で、危険度が低い品の保管庫も兼ねていると江楓眠は応えた。
「最近は法器や呪符に随分と熱心だと聞いているから、ここの中の品なら持ち出してやれる物があるよ」