鴨緑
DOODLEアオ主ウェブオンリー「青き生命 神の知恵」の展示物『イコクのハレギに魅せられて あとなにも知らない二人』
モーショボーのお願いに、ナホビノが付き合う話
アオ主オンリー開催おめでとうございます
ゆるい感じのゆるい話ですが楽しんでいただけたら幸いです
たのしもうね、たのしむぞ 16
user_tenF
DOODLE既刊 緑萌えと同内容アオ主ワードパレット1 プリンシピオ
黎明に誰かの声を聞いた気がした。
砂塵を巻き上げながら、荒廃した魔界を駆ける。出会った当初は合一に戸惑いを見せていた少年は、驚くほどに適応を見せ、禁じられたナホビノの肉体を余さず活用している。
倒壊したビルを渡り、かつての栄華と共に崩れた鉄骨を巡り、乾いた砂塵を巻き上げる丘を抜けて、しなやかに生を謳歌する青い蹄のように駆ける。手に冷たく纏う神気の光刃で悪魔を切り裂き、祈るように雷撃を落とす。邪教の館で換装した写せ身の力で、炎や氷や破魔の力を繰る。
肉体の動きや力の扱いは私がサポートしているが、少年の意思もまた困惑から生存のための闘争へ向いたようだった。
神造魔人たる私にとって人間である少年は庇護の対象であるはずだが、それ以上に、自らの半身、知恵である彼を得難く思う。
25843黎明に誰かの声を聞いた気がした。
砂塵を巻き上げながら、荒廃した魔界を駆ける。出会った当初は合一に戸惑いを見せていた少年は、驚くほどに適応を見せ、禁じられたナホビノの肉体を余さず活用している。
倒壊したビルを渡り、かつての栄華と共に崩れた鉄骨を巡り、乾いた砂塵を巻き上げる丘を抜けて、しなやかに生を謳歌する青い蹄のように駆ける。手に冷たく纏う神気の光刃で悪魔を切り裂き、祈るように雷撃を落とす。邪教の館で換装した写せ身の力で、炎や氷や破魔の力を繰る。
肉体の動きや力の扱いは私がサポートしているが、少年の意思もまた困惑から生存のための闘争へ向いたようだった。
神造魔人たる私にとって人間である少年は庇護の対象であるはずだが、それ以上に、自らの半身、知恵である彼を得難く思う。
amaguriamami
PROGRESSアオ主の八重垣絵のメイキングです。せっかくなので下書きから載せてみました。少年の体があまり筋張ったり、硬そうにならないように気をつけて塗りました。(実際は痩せすぎ体型な気もするけど)ちょっとエロティックな透け具合を描くのが楽しかったです。 6
A_wa_K
DONE140文字SSのお題(https://shindanmaker.com/587150)様から。瞳は雄弁だ、ナホビノの金の双眸は静やかで美しいが、鋭利な刃物のようである。
「そうかホ?」
新入りの仲魔の意見に対し、ジャックフロストは首を傾げた。
「アッチ、見てみるホ」
促されるまま悪魔が視線を向けると、そこには。
「――アオガミ」
半身の名を紡ぐナホビノの瞳は、甘い蜂蜜のように揺らめいていた。
144「そうかホ?」
新入りの仲魔の意見に対し、ジャックフロストは首を傾げた。
「アッチ、見てみるホ」
促されるまま悪魔が視線を向けると、そこには。
「――アオガミ」
半身の名を紡ぐナホビノの瞳は、甘い蜂蜜のように揺らめいていた。
amaguriamami
DONE年末に妄想してたスサガミさんの八重垣敷地内にある温泉で、少年が湯浴みしてるんだけど、待ちきれなくて入ってきちゃうガミさん\(//∇//)\
透けてる浴衣を描くのが楽しかった〜 2
amaguriamami
MAIKINGお互い喰らうようなむっちゅ〜なアオ主の描きかけ\(//∇//)\並んでるだけでいいのになんでここまで妄想してしまうのかwww
普段より長期のメンテナンス後のむっちゅ〜
きっと見えないところでイチャイチャしてるだろ! 2
A_wa_K
DONE140文字SSのお題(https://shindanmaker.com/587150)様から。どんな私がお好みで?――どっちがタイプなの?
それは、少年がよく立ち寄っていた喫茶店で流れていた曲の一節であった。恋愛ソングとして流行っていたというのだから、聴いておいて損はないだろう。初めての恋人に対して、少年は躊躇いなく聞いてしまった。
「どちらが?」
数度の瞬き。それから。
「私は君を愛している。故に、どちらも好いていると断言する」
思案する間もなく、真摯な双眸と共に伝えられた告白を受け止めるしかない少年は、両耳を真っ赤に染めるのであった。
215それは、少年がよく立ち寄っていた喫茶店で流れていた曲の一節であった。恋愛ソングとして流行っていたというのだから、聴いておいて損はないだろう。初めての恋人に対して、少年は躊躇いなく聞いてしまった。
「どちらが?」
数度の瞬き。それから。
「私は君を愛している。故に、どちらも好いていると断言する」
思案する間もなく、真摯な双眸と共に伝えられた告白を受け止めるしかない少年は、両耳を真っ赤に染めるのであった。
A_wa_K
DONE2023/04/26に開催されるアオ主WEBオンリー「青き生命、神の知恵2」で公開するSSとなります。PWは「青き生命、神の知恵2」のスペースにてご確認下さい。
※後日、全体公開します。
幸せの温度「でっかいなぁ」
知ってたけど、という少年の朗らかな声が室内に響いた。
「大きいだろうか?」
「絶対に大きいよ。俺の二倍は太い。計ったことないし、今まで興味がなかったから平均値とかは知らなけど、絶対に大きい。オーダーメイドとかしないと入らないかも」
「それは、困る。君の手を煩わせてしまう」
「ごめん、ちょっと大げさだった。大きいけど、ネット通販とかも調べたらきっと見つかるよ」
「そうか。ならば、良いが」
「大丈夫だって」
少年の負担になるのではないか、と黄金の双眸を伏せるアオガミに向けて少年は笑いかける。にぎにぎと、アオガミの左手薬指を握りながら。
発端は、ふとしたきっかけであった。
ダアトにて金策として遺物を探している最中、偶然見つけたのは指輪であった。内側には二つのアルファベットが記載されており、慎ましく飾られた石がきらりとナホビノの掌の上で光った。
1373知ってたけど、という少年の朗らかな声が室内に響いた。
「大きいだろうか?」
「絶対に大きいよ。俺の二倍は太い。計ったことないし、今まで興味がなかったから平均値とかは知らなけど、絶対に大きい。オーダーメイドとかしないと入らないかも」
「それは、困る。君の手を煩わせてしまう」
「ごめん、ちょっと大げさだった。大きいけど、ネット通販とかも調べたらきっと見つかるよ」
「そうか。ならば、良いが」
「大丈夫だって」
少年の負担になるのではないか、と黄金の双眸を伏せるアオガミに向けて少年は笑いかける。にぎにぎと、アオガミの左手薬指を握りながら。
発端は、ふとしたきっかけであった。
ダアトにて金策として遺物を探している最中、偶然見つけたのは指輪であった。内側には二つのアルファベットが記載されており、慎ましく飾られた石がきらりとナホビノの掌の上で光った。
A_wa_K
DONEきよさん、お誕生日おめでとうございます!「思い合うあまりにすれ違うふたり」になってしまい、おめでとう感が非常にない点は申し訳ありませんでした…!
こころ「少年、私は君に不快な思いをさせてしまっただろうか?」
「え?」
――時が止まったように、とは正に今の瞬間に使われるのだろう。
アオガミの発言が一切理解出来ずに思考が停止する一方で、少年はそんなことを冷静に考えてしまっていた。
「……」
「待って。アオガミ、待って。アオガミ!」
数秒の沈黙を肯定に受け止められてしまったのだろう。少年から視線を逸らして目を伏せるアオガミ。そんな彼に少年は勢いよく抱きついた。何時にない少年の行動に驚き、小さく「少年」と呼ぶアオガミ。
「どうしてそうなるの!?寧ろ、俺が何かした!?」
少年の叫びが寮室内に響き渡る。
隣室にまで聞こえるだろう声量であった。しかし、遠慮をしている余裕など少年にはないのだ。
1865「え?」
――時が止まったように、とは正に今の瞬間に使われるのだろう。
アオガミの発言が一切理解出来ずに思考が停止する一方で、少年はそんなことを冷静に考えてしまっていた。
「……」
「待って。アオガミ、待って。アオガミ!」
数秒の沈黙を肯定に受け止められてしまったのだろう。少年から視線を逸らして目を伏せるアオガミ。そんな彼に少年は勢いよく抱きついた。何時にない少年の行動に驚き、小さく「少年」と呼ぶアオガミ。
「どうしてそうなるの!?寧ろ、俺が何かした!?」
少年の叫びが寮室内に響き渡る。
隣室にまで聞こえるだろう声量であった。しかし、遠慮をしている余裕など少年にはないのだ。
amaguriamami
PAST新たにポイピク再登録しました。過去の絵や、エチチ、ラクガキなど流していきます。2022 6月に描いたイラストです。誰かとアオ主を語りたくて、アオ主アカウントを始めて、すぐに描いたような…なんか懐かしいわ… 少年が全裸なんでポイピクへ〜\(//∇//)\
少しずつ増やしていきます。 2
A_wa_K
DONE手放す(誰かに渡す)のが面倒で、捨てずに残ってた第二ボタンをあおがみさんにあげる主の回思いの行き先「少年」
出逢って僅かだというのに、少年の耳に酷く馴染む静かな声。
何事かと両手にマグカップを持ちながら台所より現れた半身の視線を追うと、黄金の双眸が見つめるのは自身の手元であった。
「あっ」
右手首に視線を向け、少年自身も直ぐに気付いた。袖口のボタンがぶらりと糸に吊られて揺れているのである。
「気付かなかった」
「読書中にすまない。だが、室内ならまだしも、屋外で紛失しては面倒になるかと」
「ありがとう、アオガミ」
手にしていた文庫本を机の上に置き、少年は微笑む。ボタンについて声を掛けるまでに葛藤があったらしいアオガミの僅かに落ち込んだ表情。仲魔達は首を傾げるほんの小さな差異であるが、少年は見逃すことはない。
1875出逢って僅かだというのに、少年の耳に酷く馴染む静かな声。
何事かと両手にマグカップを持ちながら台所より現れた半身の視線を追うと、黄金の双眸が見つめるのは自身の手元であった。
「あっ」
右手首に視線を向け、少年自身も直ぐに気付いた。袖口のボタンがぶらりと糸に吊られて揺れているのである。
「気付かなかった」
「読書中にすまない。だが、室内ならまだしも、屋外で紛失しては面倒になるかと」
「ありがとう、アオガミ」
手にしていた文庫本を机の上に置き、少年は微笑む。ボタンについて声を掛けるまでに葛藤があったらしいアオガミの僅かに落ち込んだ表情。仲魔達は首を傾げるほんの小さな差異であるが、少年は見逃すことはない。
A_wa_K
DONE140文字SSのお題(https://shindanmaker.com/587150)様から。どんな言葉よりも少年の半身たる神造魔人は表情も言葉も堅い。
(稼働期間が短かったのも原因なのかな)
アオガミが【生まれた】年を少年は知らない。しかし、最長でも二年間である事は把握していた。
(でも、俺にそんなの関係ないけど)
カーテン越しに差し込む朝日に照らされる精悍な顔と、黄金の双眸。
少年の起床に併せてスリープモードを解除したアオガミの頬に触れ、少年は微笑むのであった。
「おはよう、アオガミ」
「おはよう、少年」
少年だけに向けられる僅かに細められたその瞳から、深い愛情を感じつつ。
237(稼働期間が短かったのも原因なのかな)
アオガミが【生まれた】年を少年は知らない。しかし、最長でも二年間である事は把握していた。
(でも、俺にそんなの関係ないけど)
カーテン越しに差し込む朝日に照らされる精悍な顔と、黄金の双眸。
少年の起床に併せてスリープモードを解除したアオガミの頬に触れ、少年は微笑むのであった。
「おはよう、アオガミ」
「おはよう、少年」
少年だけに向けられる僅かに細められたその瞳から、深い愛情を感じつつ。
A_wa_K
DONE140文字SSのお題(https://shindanmaker.com/587150)様から。生き方は似ているのです(アオガミって、好きな味とかあるのかな)
ふと、目に留まった小さな洋菓子店。苺やチョコのケーキを眺めつつ、ふと少年が隣に立つ半身を見上げると、黄金の双眸と視線が合った。
「少年」
「どうかした?」
「君は、どの味が好きなのだろうか?」
真摯な面持ちから告げられるその一言は、全く同じで。
「俺はね――」
次は、自分が問わねばと。
少年はケーキの一つを指さすのであった。
184ふと、目に留まった小さな洋菓子店。苺やチョコのケーキを眺めつつ、ふと少年が隣に立つ半身を見上げると、黄金の双眸と視線が合った。
「少年」
「どうかした?」
「君は、どの味が好きなのだろうか?」
真摯な面持ちから告げられるその一言は、全く同じで。
「俺はね――」
次は、自分が問わねばと。
少年はケーキの一つを指さすのであった。
A_wa_K
DONE140文字SSのお題(https://shindanmaker.com/587150)様から。自分だけ知ってればいい――彼は、刺激の強い食べ物が苦手らしい。
卓上に並ぶ二人分の白米にわかめの味噌汁、卵焼きと梅干し。
箸の扱いに不慣れながらも、躊躇うことなく梅干しを口に含んだアオガミの眉間に僅かに皺が寄った瞬間を目撃し、少年は思わず笑みをこぼしてしまった。
「少年、どうかしたか?」
「ふたりで食べるご飯は美味しいなって」
真実は伏せ、しかし嘘は吐かず。
そうか、と呟くアオガミの箸が砂糖を多めに入れた卵焼きに向かう様子を伺いつつ、少年はそうだよと頷くのであった。
224卓上に並ぶ二人分の白米にわかめの味噌汁、卵焼きと梅干し。
箸の扱いに不慣れながらも、躊躇うことなく梅干しを口に含んだアオガミの眉間に僅かに皺が寄った瞬間を目撃し、少年は思わず笑みをこぼしてしまった。
「少年、どうかしたか?」
「ふたりで食べるご飯は美味しいなって」
真実は伏せ、しかし嘘は吐かず。
そうか、と呟くアオガミの箸が砂糖を多めに入れた卵焼きに向かう様子を伺いつつ、少年はそうだよと頷くのであった。
A_wa_K
DONE140文字SSのお題(https://shindanmaker.com/587150)様から。どこか知らない場所へ「そんなこと思ったことない?」
人も疎らな始発の電車。
乗客の殆どが眠りに落ちている空間で、少年は隣に座る神造魔人に問いかけた。
「私は」
突然、夜明けと同時に目を覚まし、半身を電車へと誘った理由。
「君の隣ならば、何処でも」
少年の望みを肯定するのは簡単だ。けれども、彼には悔いのない選択をして欲しい。だからこそ、アオガミは答えた。己の本心を。
「そっか」
神造魔人の肩に触れる柔らかな黒髪。
――どうか、この時間が少しでも続くように。
告げた本心の裏にある欲望。少年の選択に影響を与えかねない己の心から目を逸らすように、アオガミは黄金の双眸を閉ざす。
次の駅まで、あと数分。
290人も疎らな始発の電車。
乗客の殆どが眠りに落ちている空間で、少年は隣に座る神造魔人に問いかけた。
「私は」
突然、夜明けと同時に目を覚まし、半身を電車へと誘った理由。
「君の隣ならば、何処でも」
少年の望みを肯定するのは簡単だ。けれども、彼には悔いのない選択をして欲しい。だからこそ、アオガミは答えた。己の本心を。
「そっか」
神造魔人の肩に触れる柔らかな黒髪。
――どうか、この時間が少しでも続くように。
告げた本心の裏にある欲望。少年の選択に影響を与えかねない己の心から目を逸らすように、アオガミは黄金の双眸を閉ざす。
次の駅まで、あと数分。
A_wa_K
DONE140文字SSのお題(https://shindanmaker.com/587150)様から。ゼロ距離告白『命の恩人を床に寝かせられない』
寝床は不要と繰り返すアオガミの意見を押し切ったのは、他ならぬ少年自身であり。
彼は、過去の己に恨みを向けていた。
「俺、アオガミが好きだよ」
今まで読んできた数多の物語達。あらゆるパターンで描かれていた告白のシチュエーションとしては、きっと下から数えた方が早い状況。小さな台所で洗った食器を布巾を持ったアオガミへと渡しながら、少年はぽろっと漏らしてしまったのだ。己の大切な心を。
「そうか」
皿を受け取りつつ、静かに頷くアオガミ。
――それで、全てが終わりだ。
何事もなかったかのように片付けを終え、いつものように少年は共同浴場で湯浴みをし、普段と変わらぬ就寝前の読書をし、昨日と同じくふたりは一つのベッドに身を横たえた。
1265寝床は不要と繰り返すアオガミの意見を押し切ったのは、他ならぬ少年自身であり。
彼は、過去の己に恨みを向けていた。
「俺、アオガミが好きだよ」
今まで読んできた数多の物語達。あらゆるパターンで描かれていた告白のシチュエーションとしては、きっと下から数えた方が早い状況。小さな台所で洗った食器を布巾を持ったアオガミへと渡しながら、少年はぽろっと漏らしてしまったのだ。己の大切な心を。
「そうか」
皿を受け取りつつ、静かに頷くアオガミ。
――それで、全てが終わりだ。
何事もなかったかのように片付けを終え、いつものように少年は共同浴場で湯浴みをし、普段と変わらぬ就寝前の読書をし、昨日と同じくふたりは一つのベッドに身を横たえた。
A_wa_K
DONE140文字SSのお題(https://shindanmaker.com/587150)様から。未送信メール アオガミに連絡先はない。
そもそも俺とアオガミの間に“連絡手段”は必要ない。それはとても、便利なのだけれども。
(直接言う、か)
手元にある携帯端末のメモアプリに打ち込んだ2文字の言葉。
今で読んできた本に書かれていた未送信メールや送れぬ手紙を積もらせる描写に今更ながらの感情移入をして、俺はアプリを閉じる。
「恋愛小説、もっと読んでおくべきだったかなぁ」
ーー後日。
「少年が突然、恋愛小説を多く読むようになった。……想い人が、出来たのだろうか」
無自覚なまま、鎮痛な面持ちで近辺報告をするアオガミを前に何と答えるべきか戸惑う越水という光景が生み出されるのであった。
291そもそも俺とアオガミの間に“連絡手段”は必要ない。それはとても、便利なのだけれども。
(直接言う、か)
手元にある携帯端末のメモアプリに打ち込んだ2文字の言葉。
今で読んできた本に書かれていた未送信メールや送れぬ手紙を積もらせる描写に今更ながらの感情移入をして、俺はアプリを閉じる。
「恋愛小説、もっと読んでおくべきだったかなぁ」
ーー後日。
「少年が突然、恋愛小説を多く読むようになった。……想い人が、出来たのだろうか」
無自覚なまま、鎮痛な面持ちで近辺報告をするアオガミを前に何と答えるべきか戸惑う越水という光景が生み出されるのであった。
A_wa_K
DONE140文字SSのお題(https://shindanmaker.com/587150)様から。なんだって知ってた アオガミは神造魔人である。
作られた"目的"を達成する為、彼には豊富な知識が与えられた。また、ベテル日本支部のデーターベースからいつでも必要な情報を得る事が出来ている。
――故に、アオガミはなんだって知っていたのだ。
「アオガミ」
隣を歩く少年が、アオガミの名を呼ぶ。
「なんだろうか、少年?」
「ちょっと、呼んでみたかっただけ」
「……そうか」
「うん」
僅かに頬を赤らめ、嬉しそうにアオガミの名を紡ぐ少年。十八年ぶりの覚醒の切っ掛けである、アオガミの知恵。
彼の一挙一動には不可解なものが多く、アオガミには説明が出来なかった。けれども、不快を覚えることは一切無い。寧ろ、アオガミは常に少年を視線で追うようになっていた。
488作られた"目的"を達成する為、彼には豊富な知識が与えられた。また、ベテル日本支部のデーターベースからいつでも必要な情報を得る事が出来ている。
――故に、アオガミはなんだって知っていたのだ。
「アオガミ」
隣を歩く少年が、アオガミの名を呼ぶ。
「なんだろうか、少年?」
「ちょっと、呼んでみたかっただけ」
「……そうか」
「うん」
僅かに頬を赤らめ、嬉しそうにアオガミの名を紡ぐ少年。十八年ぶりの覚醒の切っ掛けである、アオガミの知恵。
彼の一挙一動には不可解なものが多く、アオガミには説明が出来なかった。けれども、不快を覚えることは一切無い。寧ろ、アオガミは常に少年を視線で追うようになっていた。
A_wa_K
DONEきよさん(@kiyotkym)から拝借したお題『insomnia』から書いたアオ主です。insomnia ――少年には忘れられないモノがある。
一つの躰を無理矢理二つに分け隔てられた恐怖。"彼女"の心臓を貫いたときに触れた体温。それらは、常に少年に寄り添う情景だ。殊に夢の中では鮮明に再現され、その度に少年は息を飲みながら覚醒するのである。
カーテン越しに室内に差し込む光は淡い。大凡、午前5時手前だろうと少年は察せられるようになっていた。午前7時が起床時間であった少年には早い時間である。今日もまたダアトを駆け巡る予定であることを踏まえれば、体力の為にも再度睡眠を摂るべきだ。けれども、少年は眠れそうになかった。
(心臓が、酷く五月蠅い)
なんて傲慢な文句なのだろうと、少年は唇を噛みしめる。
935一つの躰を無理矢理二つに分け隔てられた恐怖。"彼女"の心臓を貫いたときに触れた体温。それらは、常に少年に寄り添う情景だ。殊に夢の中では鮮明に再現され、その度に少年は息を飲みながら覚醒するのである。
カーテン越しに室内に差し込む光は淡い。大凡、午前5時手前だろうと少年は察せられるようになっていた。午前7時が起床時間であった少年には早い時間である。今日もまたダアトを駆け巡る予定であることを踏まえれば、体力の為にも再度睡眠を摂るべきだ。けれども、少年は眠れそうになかった。
(心臓が、酷く五月蠅い)
なんて傲慢な文句なのだろうと、少年は唇を噛みしめる。
A_wa_K
DONE140文字SSのお題(https://shindanmaker.com/587150)様から。だいたいあいつのせい休息、食事、睡眠。
それらはアオガミにとって不要であり、非効率的な行為であった。
けれども、今は違う。
少年と会話を交え、読書を嗜む。半身と友に食事をし、睡眠の代用としてスリープモードに切り替える。
神造魔人たるアオガミには必要ない時間。だが――。
(不要と捉えていた頃の己には戻れそうにない)
隣で安らかな寝息を立てる少年の寝顔。半身を起こさぬように、アオガミはそっと彼の頬を撫でた。
――朝が来れば、少年が目を覚ます。
(こんなに、日が昇るのが待ち遠しいとは)
寝ぼけ眼で「おはよう」と朝の挨拶をする少年の姿を回想しつつ、アオガミは瞼を閉ざす。
少年と共に生きる、明日を迎える為に。
294それらはアオガミにとって不要であり、非効率的な行為であった。
けれども、今は違う。
少年と会話を交え、読書を嗜む。半身と友に食事をし、睡眠の代用としてスリープモードに切り替える。
神造魔人たるアオガミには必要ない時間。だが――。
(不要と捉えていた頃の己には戻れそうにない)
隣で安らかな寝息を立てる少年の寝顔。半身を起こさぬように、アオガミはそっと彼の頬を撫でた。
――朝が来れば、少年が目を覚ます。
(こんなに、日が昇るのが待ち遠しいとは)
寝ぼけ眼で「おはよう」と朝の挨拶をする少年の姿を回想しつつ、アオガミは瞼を閉ざす。
少年と共に生きる、明日を迎える為に。
A_wa_K
DONE140文字SSのお題(https://shindanmaker.com/587150)様から。僕の居場所自分の居場所というものを意識したことは無かった。
読書を楽しめるのならば、何処でも良い。人付き合いも、日常生活に支障が出なければ十分過ぎる。
――そうだったのに、今は。
「少年?」
眠いわけではない。なんとなく、俺は隣に座るアオガミに身を預ける。
アオガミからの疑問の視線を頭部に感じるが、俺が応じないと察したのだろう。アオガミは何も言わずに僅かに俺に身を寄せてくれた。
(アオガミの隣は、俺だけの)
――俺にとって、何よりの。
俺よりも冷たい彼の体温を絶対に忘れないと、目を伏せながら誓うのであった。
251読書を楽しめるのならば、何処でも良い。人付き合いも、日常生活に支障が出なければ十分過ぎる。
――そうだったのに、今は。
「少年?」
眠いわけではない。なんとなく、俺は隣に座るアオガミに身を預ける。
アオガミからの疑問の視線を頭部に感じるが、俺が応じないと察したのだろう。アオガミは何も言わずに僅かに俺に身を寄せてくれた。
(アオガミの隣は、俺だけの)
――俺にとって、何よりの。
俺よりも冷たい彼の体温を絶対に忘れないと、目を伏せながら誓うのであった。
A_wa_K
DONE主への溢れそうな欲を必死に耐えるあおがみさんと、それが嬉しい主の小噺。愛しき君へ 己の頬を濡らす、温かくも粘着性のある水滴。
それが己に覆い被さる男の口からこぼれ落ちた唾液であると理解しながらも、少年は嫌悪を一切抱かなかった。
「……少年」
床に仰向けになっている少年――否、己が押し倒した相手をアオガミは呼ぶ。しかし、それ以上に言葉は続かなかった。少年の両手首を握るアオガミの拘束が解かれることもなく、アオガミは必死に何かに耐えながら呻くばかりだ。半身の喉が上下に動き続ける様を少年は静かに見上げている。
突然の出来事であった。
学園の寮室にて、少年はいつものように読書に耽っていた。その最中、彼は本の頁で指先を切ってしまったのだ。
『――っ!』
『少年』
小さな呻き声であろうと、少年の半身たるアオガミは聞き逃さなかった。食後の珈琲を準備するために台所に立っていたアオガミが、即座に扉の向こうから現れたのである。
1282それが己に覆い被さる男の口からこぼれ落ちた唾液であると理解しながらも、少年は嫌悪を一切抱かなかった。
「……少年」
床に仰向けになっている少年――否、己が押し倒した相手をアオガミは呼ぶ。しかし、それ以上に言葉は続かなかった。少年の両手首を握るアオガミの拘束が解かれることもなく、アオガミは必死に何かに耐えながら呻くばかりだ。半身の喉が上下に動き続ける様を少年は静かに見上げている。
突然の出来事であった。
学園の寮室にて、少年はいつものように読書に耽っていた。その最中、彼は本の頁で指先を切ってしまったのだ。
『――っ!』
『少年』
小さな呻き声であろうと、少年の半身たるアオガミは聞き逃さなかった。食後の珈琲を準備するために台所に立っていたアオガミが、即座に扉の向こうから現れたのである。
A_wa_K
DONE140文字SSのお題(https://shindanmaker.com/587150)様から。美味しそうに見えた、なんて末期だ「少年、今の私にはメンテナンスが必要だ」
共同浴場から寮室に戻ったばかりの少年に告げられたのは、突然の申告。
「どこか悪いの!?」
頭上に被せていたタオルが床に落ちたことも気づかずに、少年は半身へと駆け寄る。湯上がりで火照っているせいか、触れた白銀の腕はいつもより冷たく感じるが、何かしらいつもと違う様子はアオガミにはない。
「駄目だ、少年」
「駄目?」
「私に、近づいては」
近づくなと言いつつ、アオガミの手が少年の両肩に乗せられた。
黄金の双眸に映るのは少年の姿だ。乾ききっていない濡れた髪を額に貼り付け、湯浴みにより普段より赤味が増した頬をしている半身の姿。
「アオガミ?」
「……」
「大丈夫?」
少年から差し向けられる眼差しは心配と、信頼に満ちている。
443共同浴場から寮室に戻ったばかりの少年に告げられたのは、突然の申告。
「どこか悪いの!?」
頭上に被せていたタオルが床に落ちたことも気づかずに、少年は半身へと駆け寄る。湯上がりで火照っているせいか、触れた白銀の腕はいつもより冷たく感じるが、何かしらいつもと違う様子はアオガミにはない。
「駄目だ、少年」
「駄目?」
「私に、近づいては」
近づくなと言いつつ、アオガミの手が少年の両肩に乗せられた。
黄金の双眸に映るのは少年の姿だ。乾ききっていない濡れた髪を額に貼り付け、湯浴みにより普段より赤味が増した頬をしている半身の姿。
「アオガミ?」
「……」
「大丈夫?」
少年から差し向けられる眼差しは心配と、信頼に満ちている。
A_wa_K
DONE140文字SSのお題(https://shindanmaker.com/587150)様から。うつくしい古傷少年はアオガミの左手に熱心に触れる。出会った時は間違いなく塗装が剥げていた指先。今では汚れ一つない、美しい白銀の指先。
「アオガミ」
半身を呼びつつ、少年はアオガミの指先に己の指を絡める。戸惑いも躊躇いもなくアオガミも応じ、肌色と白銀の指が絡まり合う。
――鈍色の輝き。
何時まで経っても鮮明に思い出せる、少年にとって掛け替えのない色。
記憶にだけ残された輝きを思い出しつつ、少年はアオガミの白い指先に唇を寄せるのであった。
「待っててくれて、ありがとう」
貴方に会えて本当に良かった、と。
245「アオガミ」
半身を呼びつつ、少年はアオガミの指先に己の指を絡める。戸惑いも躊躇いもなくアオガミも応じ、肌色と白銀の指が絡まり合う。
――鈍色の輝き。
何時まで経っても鮮明に思い出せる、少年にとって掛け替えのない色。
記憶にだけ残された輝きを思い出しつつ、少年はアオガミの白い指先に唇を寄せるのであった。
「待っててくれて、ありがとう」
貴方に会えて本当に良かった、と。
A_wa_K
DONE140文字SSのお題(https://shindanmaker.com/587150)様から。雨も、悪くない 少年は雨の日が嫌いであった。
雨中を歩けば濡れる事は避けられず、鞄にしまった本は心配であるし、外で読書も楽しめない。雨よりは晴れ。18年生きてきた中で変わらぬ価値観であったのだが。
「少年、どうかしたか?」
ざぁざぁと、ベテル日本支部のエントランスホールに響く外の雨の音。
アオガミが検索した結果、一時間以内で止むらしい雨音が途絶えるのをソファに座りながら待っていたふたり。無言で腕を組むアオガミと、読書に耽る少年。しかし、隣に座る半身からの視線に気づいたアオガミが問いかけると、視線がかち合った少年は慌てて首を振るのであった。
「何でも無いよ!」
「読書に集中できていないように見える。雨音が気になるだろうか?」
596雨中を歩けば濡れる事は避けられず、鞄にしまった本は心配であるし、外で読書も楽しめない。雨よりは晴れ。18年生きてきた中で変わらぬ価値観であったのだが。
「少年、どうかしたか?」
ざぁざぁと、ベテル日本支部のエントランスホールに響く外の雨の音。
アオガミが検索した結果、一時間以内で止むらしい雨音が途絶えるのをソファに座りながら待っていたふたり。無言で腕を組むアオガミと、読書に耽る少年。しかし、隣に座る半身からの視線に気づいたアオガミが問いかけると、視線がかち合った少年は慌てて首を振るのであった。
「何でも無いよ!」
「読書に集中できていないように見える。雨音が気になるだろうか?」
A_wa_K
DONEケーキの小噺、アオ主版。甘いモノ「アオガミ、本当に良いの?」
「ああ」
一切の躊躇いなく、首を縦に振る半身。
これ以上の問答は"譲って"くれたアオガミに対して失礼だと、少年は目前に配膳されたケーキにフォークを通すのであった。
人員不足の為、身の安全の為、職務の為。複数の理由が重なり、医科学研究所を住居としているベテル日本支部の職員達。殆ど外出が出来ない彼らを気遣ってか、研究員が誕生日を迎えると長官の越水ハヤオが誕生日用のホールケーキを用意てくれるのだという。自分達の上司の知らぬ一面を聞かされつつ、少年とアオガミはカットされたショートケーキを受け取っていた。
切り分け担当者は几帳面な人だったのであろう。少年には二切れの大きさは均等に見えた。上部に鎮座するチョコレートの飾り以外は。
1510「ああ」
一切の躊躇いなく、首を縦に振る半身。
これ以上の問答は"譲って"くれたアオガミに対して失礼だと、少年は目前に配膳されたケーキにフォークを通すのであった。
人員不足の為、身の安全の為、職務の為。複数の理由が重なり、医科学研究所を住居としているベテル日本支部の職員達。殆ど外出が出来ない彼らを気遣ってか、研究員が誕生日を迎えると長官の越水ハヤオが誕生日用のホールケーキを用意てくれるのだという。自分達の上司の知らぬ一面を聞かされつつ、少年とアオガミはカットされたショートケーキを受け取っていた。
切り分け担当者は几帳面な人だったのであろう。少年には二切れの大きさは均等に見えた。上部に鎮座するチョコレートの飾り以外は。
A_wa_K
DONE #青き生命神の知恵2WEBアンソロ のお題を拝借致しました。https://twitter.com/aokseimikmnoce2/status/1592481088748027904?s=20&t=wRv2YjYv8KwaEzX20WktQw
ある日の朝 その日は、一気に気温が下がった朝であった。
「少年、起床の時間だ」
アオガミが腕の中で縮こまる少年に呼びかけるのは、幾度目か。
ベッドの上、一枚の布団の中。アオガミに呼びかけられては都度返事をする少年であるが、彼が眼をしっかりと明ける気配はない。それどころか、じわじわとアオガミとの隙間を埋めていく。今ではぴったりと、アオガミの胸もとに両手を添えてくっついていた。
「アオガミ」
「何だろうか」
「さむいから、おきたくない」
呂律が回りきっていない少年からの懇願。無論、アオガミが既に察していた事実であった。
「ならば、直ぐに暖房をつけよう」
少年の体調を慮り、なるべく少年が外気に触れないように布団から出て行こうとするアオガミ。けれども、彼の行動は即座に止められるのであった。
776「少年、起床の時間だ」
アオガミが腕の中で縮こまる少年に呼びかけるのは、幾度目か。
ベッドの上、一枚の布団の中。アオガミに呼びかけられては都度返事をする少年であるが、彼が眼をしっかりと明ける気配はない。それどころか、じわじわとアオガミとの隙間を埋めていく。今ではぴったりと、アオガミの胸もとに両手を添えてくっついていた。
「アオガミ」
「何だろうか」
「さむいから、おきたくない」
呂律が回りきっていない少年からの懇願。無論、アオガミが既に察していた事実であった。
「ならば、直ぐに暖房をつけよう」
少年の体調を慮り、なるべく少年が外気に触れないように布団から出て行こうとするアオガミ。けれども、彼の行動は即座に止められるのであった。
A_wa_K
DONE140文字SSのお題(https://shindanmaker.com/587150)様から。こっちの台詞です「少年、私は君を好きになってしまった」
懺悔をする罪人のように両手で顔を塞ぎながらアオガミは吐き出した。そう、吐き出した。重い、重い告白であった。
「君を愛してしまったのだ」
――赦される筈がない。
神造魔人の己が感情を抱いてしまったことも、本人に告げてしまったことも。
罪を重ねる一方だと、アオガミが己を傷つけるかのように顔を覆う手に力を込めようとするが。
「アオガミ」
白銀の手に重なる柔らかな手。強く瞑った闇の向こうから聞こえてくる温かな声。
「アオガミ」
何度も名を繰り返して呼び、少年はそっとアオガミの手を顔から外させる。
天岩戸が如く頑丈かと思えた両手は、少年の前では全くの無意味であった。
「アオガミ」
576懺悔をする罪人のように両手で顔を塞ぎながらアオガミは吐き出した。そう、吐き出した。重い、重い告白であった。
「君を愛してしまったのだ」
――赦される筈がない。
神造魔人の己が感情を抱いてしまったことも、本人に告げてしまったことも。
罪を重ねる一方だと、アオガミが己を傷つけるかのように顔を覆う手に力を込めようとするが。
「アオガミ」
白銀の手に重なる柔らかな手。強く瞑った闇の向こうから聞こえてくる温かな声。
「アオガミ」
何度も名を繰り返して呼び、少年はそっとアオガミの手を顔から外させる。
天岩戸が如く頑丈かと思えた両手は、少年の前では全くの無意味であった。
「アオガミ」
A_wa_K
DONE140文字SSのお題(https://shindanmaker.com/587150)様から。日常崩壊寸前携帯端末のアラーム音で目覚める。
それが、少年にとっての《日常》であった。
「少年、起床の時間だ」
だが、今は違う。
優しく少年の肩に触れる大きな冷たい手。薄らと開いた彼の目に映るのは、鮮やかな青色
「あおがみ」
呂律が回りきらない状態で名を呼び、少年は再び目を瞑る。
それは彼らの間の合図でもあり、ベッドに片手をついたアオガミの体重により、ベッドが軋む音を立てた。
「……少年、朝だ」
「ん」
ふれ合った唇がそっと離れ、彼らの朝が始まる。
少年の平凡であった《日常》は、幸福を更新し続けていくのである。
252それが、少年にとっての《日常》であった。
「少年、起床の時間だ」
だが、今は違う。
優しく少年の肩に触れる大きな冷たい手。薄らと開いた彼の目に映るのは、鮮やかな青色
「あおがみ」
呂律が回りきらない状態で名を呼び、少年は再び目を瞑る。
それは彼らの間の合図でもあり、ベッドに片手をついたアオガミの体重により、ベッドが軋む音を立てた。
「……少年、朝だ」
「ん」
ふれ合った唇がそっと離れ、彼らの朝が始まる。
少年の平凡であった《日常》は、幸福を更新し続けていくのである。
A_wa_K
DONEしき茶さんのツイート(https://twitter.com/shikitaeMega/status/1587305640531472384?s=20&t=VGBQbh0daZt-2aF86TFQKQ)を拝借して書かせて頂きました。瞳に映すモノ ――目を奪われる。
フィクション、ノンフィクションを問わずにあらゆる創作物で一度は触れる典型的な表現であるが、現実世界では滅多に遭遇するシチュエーションではない。改め、現実世界で遭遇するシチュエーションではない筈だ。
目の前を通り過ぎた生徒に"目を奪われ"ながら、そんな事を生徒は考えるのであった。
場所は縄印学園の校門。部活の交流試合や文化祭といったイベントがない限り近寄らない、他校の目と鼻の先。待ち合わせた友人が約束の時間を過ぎても敷地内から出てこない状況の中で苛々が募り、生徒が手元のスマートフォンから目線を上に上げた瞬間である。
視界に映り込んできた横顔。
不自然さが一切なく、しかしマスカラを使用していないと主張されれば異議を唱えたくなるほどに長い睫。歩く振動と、微かに吹く晩春の風によってさらさらと揺れる漆黒の髪。睫と髪が一層映える頬は白色と表現出来るが、血色は良く、きめ細やかな肌であることが遠目でも把握出来る。
3083フィクション、ノンフィクションを問わずにあらゆる創作物で一度は触れる典型的な表現であるが、現実世界では滅多に遭遇するシチュエーションではない。改め、現実世界で遭遇するシチュエーションではない筈だ。
目の前を通り過ぎた生徒に"目を奪われ"ながら、そんな事を生徒は考えるのであった。
場所は縄印学園の校門。部活の交流試合や文化祭といったイベントがない限り近寄らない、他校の目と鼻の先。待ち合わせた友人が約束の時間を過ぎても敷地内から出てこない状況の中で苛々が募り、生徒が手元のスマートフォンから目線を上に上げた瞬間である。
視界に映り込んできた横顔。
不自然さが一切なく、しかしマスカラを使用していないと主張されれば異議を唱えたくなるほどに長い睫。歩く振動と、微かに吹く晩春の風によってさらさらと揺れる漆黒の髪。睫と髪が一層映える頬は白色と表現出来るが、血色は良く、きめ細やかな肌であることが遠目でも把握出来る。
A_wa_K
DONE140文字SSのお題(https://shindanmaker.com/587150)様から。愛されてるのに、気付いてよ「アオガミは絶対に気づいてない」
――こんなに愛してるのに。
何度目か分からない愚痴を受け流しつつ、少年に抱きつかれたジャックフロストは遠くを見つめた。
雪の妖精の視線の先に立つのは他の仲魔達と会話を交わす神造魔人の姿。彼は真面目に今後の予定を話し合っている。けれども、視線は確かに少年とジャックフロストを捉えており、その視線は回数が増す毎に強くなっていた。
「……気づいてないのはどっちホ」
「ジャック、何か言った?」
「何でもないホ」
敢えて少年を抱き返しながら、ジャックフロストは答えるのであった。
252――こんなに愛してるのに。
何度目か分からない愚痴を受け流しつつ、少年に抱きつかれたジャックフロストは遠くを見つめた。
雪の妖精の視線の先に立つのは他の仲魔達と会話を交わす神造魔人の姿。彼は真面目に今後の予定を話し合っている。けれども、視線は確かに少年とジャックフロストを捉えており、その視線は回数が増す毎に強くなっていた。
「……気づいてないのはどっちホ」
「ジャック、何か言った?」
「何でもないホ」
敢えて少年を抱き返しながら、ジャックフロストは答えるのであった。
A_wa_K
DONE140文字SSのお題(https://shindanmaker.com/587150)様から。だれにもおしえてあげないよ。 ベテルの研究者達よりもアオガミを知る者はいないだろうと、少年は冷静に理解していた。
知恵であるというのに立ち会いを許可されないメンテナンス。いつの間にか治っていた指先の塗装。アオガミが生まれた時の事。きっと、彼らは自分が知らないアオガミについて沢山の事を知っているのだろうと、少年は理解していた。嫉妬を抱きながら。
(でも)
己の頬を撫でる大きな白銀の手に、少年は自身の手を重ねる。
ただ触れるのではない。躊躇いながらも、のばしてくれた手。優しくなでる冷たい指先。
(この感覚を知っているのは、俺だけだ)
アオガミの掌に唇を触れさせながら、少年はそっと微笑むのであった。
***
アオガミは少年について詳細を教えられていた。
617知恵であるというのに立ち会いを許可されないメンテナンス。いつの間にか治っていた指先の塗装。アオガミが生まれた時の事。きっと、彼らは自分が知らないアオガミについて沢山の事を知っているのだろうと、少年は理解していた。嫉妬を抱きながら。
(でも)
己の頬を撫でる大きな白銀の手に、少年は自身の手を重ねる。
ただ触れるのではない。躊躇いながらも、のばしてくれた手。優しくなでる冷たい指先。
(この感覚を知っているのは、俺だけだ)
アオガミの掌に唇を触れさせながら、少年はそっと微笑むのであった。
***
アオガミは少年について詳細を教えられていた。
A_wa_K
DONE140文字SSのお題(https://shindanmaker.com/587150)様から。酔っぱらいの戯言『……』
カンダの社を拠点とする国津神達の誘いを断り切れず、酒を数杯嗜み、穏やかに彼らと別れの挨拶を交わしていこう、アオガミは沈黙を保っていた。
「アオガミ、大丈夫?」
当然ながらアルコール飲料を口にした経験のないナホビノ――もとい、少年には飲酒による影響が一切出ていない。生命であるアオガミに影響が偏ったか、もしくは彼が引き受けてくれたのではないかとナホビノが声を掛ければ、アオガミは普段より小さな声で大丈夫と応対をするのであった。
『問題無い』
「本当に?」
『ああ。油断すると、君へ愛してると連呼してしまいそうなので口を閉ざしているだけだ』
――故に、問題無い。
再び彼らの間に沈黙が落ちる。
「~~~~~~!」
白い頬を真っ赤に染めているナホビノを残して。
332カンダの社を拠点とする国津神達の誘いを断り切れず、酒を数杯嗜み、穏やかに彼らと別れの挨拶を交わしていこう、アオガミは沈黙を保っていた。
「アオガミ、大丈夫?」
当然ながらアルコール飲料を口にした経験のないナホビノ――もとい、少年には飲酒による影響が一切出ていない。生命であるアオガミに影響が偏ったか、もしくは彼が引き受けてくれたのではないかとナホビノが声を掛ければ、アオガミは普段より小さな声で大丈夫と応対をするのであった。
『問題無い』
「本当に?」
『ああ。油断すると、君へ愛してると連呼してしまいそうなので口を閉ざしているだけだ』
――故に、問題無い。
再び彼らの間に沈黙が落ちる。
「~~~~~~!」
白い頬を真っ赤に染めているナホビノを残して。
A_wa_K
DONE140文字SSのお題(https://shindanmaker.com/587150)様から。酔っぱらいの戯言「……」
カンダの社を拠点とする国津神達の誘いを断り切れず、酒を数杯嗜み、穏やかに彼らと別れの挨拶を交わして以降、ナホビノは沈黙を保っていた。
『少年、もしや具合が悪いのでは?』
「大丈夫」
アオガミへの返答も素っ気ない。
戸惑う半身への申し訳なさは積もりつつ、しかしナホビノは口を開く訳にはいかない状態に陥っていたのである。
(酔っ払った勢いで……なんて、嫌だよ)
――好き、大好き、愛してる。
常より心中で肥大化する恋情を何度も飲み込みながら、彼は龍脈に望みを掛けて進むのであった。
248カンダの社を拠点とする国津神達の誘いを断り切れず、酒を数杯嗜み、穏やかに彼らと別れの挨拶を交わして以降、ナホビノは沈黙を保っていた。
『少年、もしや具合が悪いのでは?』
「大丈夫」
アオガミへの返答も素っ気ない。
戸惑う半身への申し訳なさは積もりつつ、しかしナホビノは口を開く訳にはいかない状態に陥っていたのである。
(酔っ払った勢いで……なんて、嫌だよ)
――好き、大好き、愛してる。
常より心中で肥大化する恋情を何度も飲み込みながら、彼は龍脈に望みを掛けて進むのであった。
A_wa_K
DONE140文字SSのお題(https://shindanmaker.com/587150)様から。目を奪われる 「少年!」
半身の叫び声に驚くと同時に、少年の体が宙に浮く。
彼はアオガミによって横抱き――所謂、姫抱きをされていた。
「少年、もう少しで階段から落下するところだった」
少年が慌てて視線を前に向けると、そこには階段があった。
「余所見は危険だ」
"その"原因に指摘され、少年は素直に頷くのであった。
150半身の叫び声に驚くと同時に、少年の体が宙に浮く。
彼はアオガミによって横抱き――所謂、姫抱きをされていた。
「少年、もう少しで階段から落下するところだった」
少年が慌てて視線を前に向けると、そこには階段があった。
「余所見は危険だ」
"その"原因に指摘され、少年は素直に頷くのであった。
A_wa_K
DONE140文字SSのお題(https://shindanmaker.com/587150)様から。世界の終わりは、幸せで 共有浴場で体を清め、読書を嗜み、眠気を覚えたら部屋の電気を消し、ベッドの上に横たわる。
学生寮に越して以来、変わらぬ少年の日常であった。
けれども、変わったのは。
「少年、先に」
「うん」
眠りに引きずられつつある少年は電気を消さずにベッドに身を横たえ、少年が布団を肩まで掛ける姿を確認してアオガミが電気を消す。
暗い室内で輝く、赤色の光。命の、光。
「アオガミ」
肩まで掛けていた布団をめくり、少年は半身の名を呼ぶ。
誘われたアオガミはといえば躊躇うことなく歩みを進め、ギシリとベッドが軋む音を僅かに立てながら少年の隣に身を滑り込ませるのであった。
「少年、明日は何時に起床を?」
「八時でいいかな。明日の予定もダアトにしかないし」
532学生寮に越して以来、変わらぬ少年の日常であった。
けれども、変わったのは。
「少年、先に」
「うん」
眠りに引きずられつつある少年は電気を消さずにベッドに身を横たえ、少年が布団を肩まで掛ける姿を確認してアオガミが電気を消す。
暗い室内で輝く、赤色の光。命の、光。
「アオガミ」
肩まで掛けていた布団をめくり、少年は半身の名を呼ぶ。
誘われたアオガミはといえば躊躇うことなく歩みを進め、ギシリとベッドが軋む音を僅かに立てながら少年の隣に身を滑り込ませるのであった。
「少年、明日は何時に起床を?」
「八時でいいかな。明日の予定もダアトにしかないし」
A_wa_K
DONE140文字SSのお題(https://shindanmaker.com/587150)様から。幸せの終わり ふと、少年は目を覚ました。
彼の目に映るのは目を閉ざしたままの半身の顔。カーテン越しに室内に陽の光は差し込んでいるものの、少年はアラーム音を聞いていない。そもそも、アオガミがスリープ状態を維持しているのが目覚めの時間にはまだ早い証明である。
「……」
チャンスだと、少年は思った。
布団の中で体を動かし、彼は両腕をアオガミの胸もとへと寄せた。ふたりの距離は殆ど零となり、少年は小さく息を吐いて目をつぶる。
(アラームが鳴らなければ良いのに)
そうすれば、ずっとふたりでくっついていられるにと。
「……」
半身に身を寄せた故に、少年は気づかなかった。
開かれた黄金の双眸が静かに少年の様子を捉えていた事に。
そして、あっさりと再び眠りの世界に足を踏み込んだ少年が気づけるわけがなかった。
407彼の目に映るのは目を閉ざしたままの半身の顔。カーテン越しに室内に陽の光は差し込んでいるものの、少年はアラーム音を聞いていない。そもそも、アオガミがスリープ状態を維持しているのが目覚めの時間にはまだ早い証明である。
「……」
チャンスだと、少年は思った。
布団の中で体を動かし、彼は両腕をアオガミの胸もとへと寄せた。ふたりの距離は殆ど零となり、少年は小さく息を吐いて目をつぶる。
(アラームが鳴らなければ良いのに)
そうすれば、ずっとふたりでくっついていられるにと。
「……」
半身に身を寄せた故に、少年は気づかなかった。
開かれた黄金の双眸が静かに少年の様子を捉えていた事に。
そして、あっさりと再び眠りの世界に足を踏み込んだ少年が気づけるわけがなかった。
A_wa_K
DONE140文字SSのお題(https://shindanmaker.com/587150)様から。グラスにうつった真実本屋の一角にて、本棚と併設された雑貨売り場。
そこで少年が手に取ったのは青いグラスであった。とても深い、深い青色。
少年が好む色は主に黒と白だ。青色を選ぶとしても、彩度が高い色を手に取る事も無かっただろう。
「少年?」
視線を向けた先で青髪の半身が首を傾げる。
「何でも無いよ」
――どうやら、自分は影響を受けやすかったらしい。
新しい自分の一面を知りつつ、彼はグラスを手放さずにレジへと足を向けるのであった。
205そこで少年が手に取ったのは青いグラスであった。とても深い、深い青色。
少年が好む色は主に黒と白だ。青色を選ぶとしても、彩度が高い色を手に取る事も無かっただろう。
「少年?」
視線を向けた先で青髪の半身が首を傾げる。
「何でも無いよ」
――どうやら、自分は影響を受けやすかったらしい。
新しい自分の一面を知りつつ、彼はグラスを手放さずにレジへと足を向けるのであった。
A_wa_K
DONE140文字SSのお題(https://shindanmaker.com/587150)様から。なんで、わたしだけ アオガミは常に少年の側に居る。それは、ダアトに限らず東京でも――学校でもそうだ。
付かず離れず、少年を守る。それがアオガミの使命であり、彼自身の望みであるから。
そんな、ある日のこと。
「……」
下校の時刻、眼鏡を掛けた生徒に呼び止められ、少年は彼と会話を交わしていた。傍に居るが故に聞こえてくる内容はここ最近の犯人不明の凶悪事件の話。先輩も気をつけて下さいね、と生徒に声を掛けられて少年は僅かに微笑みを浮かべて頷いた。
「……?」
その瞬間、アオガミは痛みを感じた。
具体的に何処が痛むと進言する事は出来ない痛みだ。
しかし、どうにも少年が眼鏡の生徒と会話を交わしている様子を見続ける事が出来ず、アオガミは僅かに視線を逸らす。
943付かず離れず、少年を守る。それがアオガミの使命であり、彼自身の望みであるから。
そんな、ある日のこと。
「……」
下校の時刻、眼鏡を掛けた生徒に呼び止められ、少年は彼と会話を交わしていた。傍に居るが故に聞こえてくる内容はここ最近の犯人不明の凶悪事件の話。先輩も気をつけて下さいね、と生徒に声を掛けられて少年は僅かに微笑みを浮かべて頷いた。
「……?」
その瞬間、アオガミは痛みを感じた。
具体的に何処が痛むと進言する事は出来ない痛みだ。
しかし、どうにも少年が眼鏡の生徒と会話を交わしている様子を見続ける事が出来ず、アオガミは僅かに視線を逸らす。
A_wa_K
DONE140文字SSのお題(https://shindanmaker.com/587150)様から。おいしいごはんになれるといいけど ――こんなこと、誰よりもアオガミが望んでいない。
半身を理解しているからこそ、少年はせめてもと願うのであった。
「美味しいと良いんだけど」
緊張からか、心中だけでなく音として零れ落ちてしまった言葉。
しまったと息を飲む少年の視界に映り込むのは、彼の首元へと顔を寄せている青い髪。その向こうにから見つめてくる黄金の瞳だ。
「少年」
名を呼ばれると同時に首筋に触れる呼気。堪らずに少年が身を震わせると、アオガミはそっと優しく彼の背を撫でる。
「君が美味しくないなど」
――ありえない。
優しくも、熱が篭もった言葉を紡ぎながら。
「えっ?」
どういう意味だと問う間もなく、首筋に痛みが走る。
ここは現世ではなく、ダアト。少年の首筋からアオガミが摂取し損ねた血が僅かに伝い、瞬時にマガツヒと化して宙を舞う。
457半身を理解しているからこそ、少年はせめてもと願うのであった。
「美味しいと良いんだけど」
緊張からか、心中だけでなく音として零れ落ちてしまった言葉。
しまったと息を飲む少年の視界に映り込むのは、彼の首元へと顔を寄せている青い髪。その向こうにから見つめてくる黄金の瞳だ。
「少年」
名を呼ばれると同時に首筋に触れる呼気。堪らずに少年が身を震わせると、アオガミはそっと優しく彼の背を撫でる。
「君が美味しくないなど」
――ありえない。
優しくも、熱が篭もった言葉を紡ぎながら。
「えっ?」
どういう意味だと問う間もなく、首筋に痛みが走る。
ここは現世ではなく、ダアト。少年の首筋からアオガミが摂取し損ねた血が僅かに伝い、瞬時にマガツヒと化して宙を舞う。
A_wa_K
DONE140文字SSのお題(https://shindanmaker.com/587150)様から。お仕置き「アオガミ」
少年の声は明確な怒気に満ちていた。
彼が怒る理由は理解しつつ、己の行動を詫びるつもりは一切無いアオガミは口を閉ざして少年を見下ろす。如何なる説教も受ける覚悟だと。
「アオガミ」
声音は変わらない少年に右手で屈むように促され、腰を折ったアオガミを襲ったのは。
「!?」
「……今日は、これで勘弁してあげる」
助けてくれてありがとう、と少年はアオガミの唇を指先でなぞった。
少年の唇は彼の指先よりも柔らかい事実をアオガミが知った日の話である。
226少年の声は明確な怒気に満ちていた。
彼が怒る理由は理解しつつ、己の行動を詫びるつもりは一切無いアオガミは口を閉ざして少年を見下ろす。如何なる説教も受ける覚悟だと。
「アオガミ」
声音は変わらない少年に右手で屈むように促され、腰を折ったアオガミを襲ったのは。
「!?」
「……今日は、これで勘弁してあげる」
助けてくれてありがとう、と少年はアオガミの唇を指先でなぞった。
少年の唇は彼の指先よりも柔らかい事実をアオガミが知った日の話である。
A_wa_K
DONE【創作お題】RTされたら指定された受けの台詞を使ってCPの作品を描(書)きましょう(https://shindanmaker.com/580294)様から:お題「あなたは3RTされたら「俺は少しでも…あなたの支えになれてるかな?」の台詞を使って粟子宅のアオ主を描(書)きましょう。」ふたりであるから「俺は少しでも……アオガミの支えになれてるかな?」
先ほどまでの激戦の名残もなく、静かな丘の上。
唯一残ったナホビノが――知恵の少年は、青色の髪を揺蕩わせながらぽつりと呟いた。荒野を抜ける風の音にかき消されそうな小さな声。傍らに立っている相手が居ても届かないだろう程に微かな声。
故に、半身たるアオガミは気づくことが出来た。彼らは今、一つなのだから。
『少年、何を』
「俺よりもアオガミに相応しい知恵がいるじゃないかなって」
堰を切ったようにあふれ出すか細い声。己の口から吐き出される言葉にアオガミ以上に驚いているのはナホビノ自身であった。こんな事を言いたかったわけではないのにと。
(でも)
それでも、と。
1504先ほどまでの激戦の名残もなく、静かな丘の上。
唯一残ったナホビノが――知恵の少年は、青色の髪を揺蕩わせながらぽつりと呟いた。荒野を抜ける風の音にかき消されそうな小さな声。傍らに立っている相手が居ても届かないだろう程に微かな声。
故に、半身たるアオガミは気づくことが出来た。彼らは今、一つなのだから。
『少年、何を』
「俺よりもアオガミに相応しい知恵がいるじゃないかなって」
堰を切ったようにあふれ出すか細い声。己の口から吐き出される言葉にアオガミ以上に驚いているのはナホビノ自身であった。こんな事を言いたかったわけではないのにと。
(でも)
それでも、と。