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DONE1月18日〜19日に開催されるパバステでお出しする予定の朱玄SSの1話を先出しします。芸術学部🔥×法学部❄️です。
書いている人はどちらの学部にも在籍経験がないので、ファンタジーだと割り切りをお願いします。
いつか恋を描く日 生徒たちで賑わうキャンパスの中を泳ぐ様に次の講義のため別棟へ向かう玄武は不意に手を引かれた。後ろを振り返ると赤毛を逆立てた見知らぬ生徒が輝く瞳で自分を見ている。
何の用だ、と問うより先に引かれた手をギュッと痛いくらいに強く握られた。
「お願いだ!ヌードモデルになってくれ!」
この広いキャンパス全体に聞こえそうな程のよく通る大きな声でとんでもない頼み事をされた玄武は恥ずかしさに我を忘れ彼を殴って逃げ出した。
ずっと綺麗な人だと思っていた。
垂れ目がちの灰色の瞳は真っ直ぐに前を向いており、長い手足は細くて白くて、それでいて筋肉が均等についている。
本棚から本を取り出す所作も無駄がなく、彼に選んでもらえる本が羨ましいと思った。
3569何の用だ、と問うより先に引かれた手をギュッと痛いくらいに強く握られた。
「お願いだ!ヌードモデルになってくれ!」
この広いキャンパス全体に聞こえそうな程のよく通る大きな声でとんでもない頼み事をされた玄武は恥ずかしさに我を忘れ彼を殴って逃げ出した。
ずっと綺麗な人だと思っていた。
垂れ目がちの灰色の瞳は真っ直ぐに前を向いており、長い手足は細くて白くて、それでいて筋肉が均等についている。
本棚から本を取り出す所作も無駄がなく、彼に選んでもらえる本が羨ましいと思った。
one_Papico
MAIKING射すくめる眼光🐯🔥×爽秋を彩る経験🍁❄️の朱玄パロ屏風の中の虎部屋に腰掛けて遠目に部屋を彩る屏風を眺めてみたものの別段変わったところはないように見える。
記憶力はいい方ではあると思うのだが寸分違わずその日のままを覚えていられるわけではない。
日頃から仕事で部屋には立ち入っているものの、思えばこいつを迎え入れたあの日以来、じっくりと見るほどの時間はとっていなかった。
絵の一部が剥がれてきている可能性もあるだろうし、気に入って置いたものだ。ちょうどいい機会だと座った姿勢のまま畳の上を膝で擦って屏風の隅に描かれた虎へと近寄った。
……この虎はこんなに大きかったか。
「屏風の虎が動く」という言葉が玄武の脳裏に浮かんだ。
大きくなっているんじゃなく、遠近法か。だんだんとそこから外に出ようと近づいていっているんじゃないか。
3586記憶力はいい方ではあると思うのだが寸分違わずその日のままを覚えていられるわけではない。
日頃から仕事で部屋には立ち入っているものの、思えばこいつを迎え入れたあの日以来、じっくりと見るほどの時間はとっていなかった。
絵の一部が剥がれてきている可能性もあるだろうし、気に入って置いたものだ。ちょうどいい機会だと座った姿勢のまま畳の上を膝で擦って屏風の隅に描かれた虎へと近寄った。
……この虎はこんなに大きかったか。
「屏風の虎が動く」という言葉が玄武の脳裏に浮かんだ。
大きくなっているんじゃなく、遠近法か。だんだんとそこから外に出ようと近づいていっているんじゃないか。
one_Papico
MAIKING射すくめる眼光🐯🔥×爽秋を彩る経験🍁❄️エムステ 朱玄パロ
まだ🐯出てない
屏風の虎射すくめる眼光×爽秋を彩る経験 1
恋人同士、家族、それからひとり旅。
少人数経営、一度に入れる客もそう多くないその宿は、立地は少し不便だが、羽を伸ばしてゆっくり過ごすのに最適。
秋口には美しい紅葉が見られる山々に囲まれた落ち着いた土地柄に、一部では仲居が総じて見目麗しい男であるなどという俗っぽい噂も含めてひそかに人気の宿屋があった。
さほど大きくないその宿には日々、様々な客が宿泊し、それぞれがどこか満ち足りた様子で宿を後にする。
シーズンオフになり落ち着いた春先からある問題が浮上したことで、宿の経営陣は顔を突き合わせていた。
「屏風の中の虎が動いた?」
玄武が眉をひそめて聞き返すとみのりはうなずいてから話を続けた。
2141恋人同士、家族、それからひとり旅。
少人数経営、一度に入れる客もそう多くないその宿は、立地は少し不便だが、羽を伸ばしてゆっくり過ごすのに最適。
秋口には美しい紅葉が見られる山々に囲まれた落ち着いた土地柄に、一部では仲居が総じて見目麗しい男であるなどという俗っぽい噂も含めてひそかに人気の宿屋があった。
さほど大きくないその宿には日々、様々な客が宿泊し、それぞれがどこか満ち足りた様子で宿を後にする。
シーズンオフになり落ち着いた春先からある問題が浮上したことで、宿の経営陣は顔を突き合わせていた。
「屏風の中の虎が動いた?」
玄武が眉をひそめて聞き返すとみのりはうなずいてから話を続けた。
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DONE昼夜朱玄。pixivにあげているSSと同じ捏造設定で書いています。出会って間もない頃の昼夜です。昼夜はなんぼあってもええですからね!昼と夜の境界線にて昼の世界は今日も陽が高く照りつけ、地面に落ちる影の色すらも白く薄くなっていた。
「あっちぃ…」
ここの世界の住民とはいえど暑いものは暑い。スザクは手の甲で汗を拭い、デスクに散らばる書類に目を通す。しかし、その内容は頭に一向に入ってこない。
それは暑さのせいではなく、あと少ししたら来訪する客人のせいだ。
少し前に初めて出会った別の世界、自分達の世界を反転させたような夜の世界。
そこで神官を務めるゲンブがやってくる。そのことがスザクを上の空にしているのだ。
夜の世界の住民は友好的で皆優しい。その証拠にすっかり仲良くなれたしお互いの世界の住民にも、相手のことを知って欲しいと意気投合してどうにか交流し続けたいと考えてくれている。
5204「あっちぃ…」
ここの世界の住民とはいえど暑いものは暑い。スザクは手の甲で汗を拭い、デスクに散らばる書類に目を通す。しかし、その内容は頭に一向に入ってこない。
それは暑さのせいではなく、あと少ししたら来訪する客人のせいだ。
少し前に初めて出会った別の世界、自分達の世界を反転させたような夜の世界。
そこで神官を務めるゲンブがやってくる。そのことがスザクを上の空にしているのだ。
夜の世界の住民は友好的で皆優しい。その証拠にすっかり仲良くなれたしお互いの世界の住民にも、相手のことを知って欲しいと意気投合してどうにか交流し続けたいと考えてくれている。
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DOODLE朱玄♀ げ…ちゃんに悪の女幹部の役が来たよって話。触りたいなら…職員室に用があると言う朱雀と一旦別れて玄武が事務所に行くと、珍しくプロデューサーと事務員の賢以外にはいなかった。各ユニットの予定が書かれてたホワイトボードを見ると皆何かと仕事やレッスンで外に出ているようだ。
「番長さん、賢アニさん、おはよう」
そう挨拶をすると2人は何故か自分が来るのを待っていたかのように目を輝かせて、ドドッとこちらに駆け寄ってきた。
「玄武、よく来たな!」
「待ってましたよ!」
何をそんなに喜んでいると言うのか。不思議に思っていると賢がまだ送り状が貼られてガムテープで口も閉められている段ボールを差し出した。
「玄武さん!まだ仮ですが衣装が届いたので早速着てみて下さい!あと台本も来たんですよ!」
2049「番長さん、賢アニさん、おはよう」
そう挨拶をすると2人は何故か自分が来るのを待っていたかのように目を輝かせて、ドドッとこちらに駆け寄ってきた。
「玄武、よく来たな!」
「待ってましたよ!」
何をそんなに喜んでいると言うのか。不思議に思っていると賢がまだ送り状が貼られてガムテープで口も閉められている段ボールを差し出した。
「玄武さん!まだ仮ですが衣装が届いたので早速着てみて下さい!あと台本も来たんですよ!」
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DOODLEポメ速があまりに可愛くて大好きなので、勝手に書かせて頂きました。CP要素はほぼ無いです。ポメちゃん…理由あってポメラニアン!何が起きたのか皆目見当もつかない。今、朱雀にわかるのは明らかに等身が縮んだということだ。何が起きたんだ?そう呟いた時
「ワンッ」
何処かで犬が鳴いた。
この事務所に猫はいるが、にゃこは「ワン」とは鳴かない。不思議に思いつつ、もしかするとにゃこが鳴いたのかと思い、にゃこを呼んだ。
「クゥン」
何処かでまた犬が鳴いた。
おかしい。何が起きているんだ。
何一つ分からないまま、とりあえず等身が縮んだ今の自分を確認しようと、事務所の角に置かれた姿見へ駆け寄った。姿見は一向に自分を映さず、赤毛の子犬を映している。なんだドッキリか?そう思わず声に出すと、姿見の犬は「キャンキャン」と鳴いた。
朱雀が恐る恐る右に行くと、赤毛の子犬もゆっくりと右に、駆け足で左に行くと左にぽてぽてと跳ねるように移動する。
2520「ワンッ」
何処かで犬が鳴いた。
この事務所に猫はいるが、にゃこは「ワン」とは鳴かない。不思議に思いつつ、もしかするとにゃこが鳴いたのかと思い、にゃこを呼んだ。
「クゥン」
何処かでまた犬が鳴いた。
おかしい。何が起きているんだ。
何一つ分からないまま、とりあえず等身が縮んだ今の自分を確認しようと、事務所の角に置かれた姿見へ駆け寄った。姿見は一向に自分を映さず、赤毛の子犬を映している。なんだドッキリか?そう思わず声に出すと、姿見の犬は「キャンキャン」と鳴いた。
朱雀が恐る恐る右に行くと、赤毛の子犬もゆっくりと右に、駆け足で左に行くと左にぽてぽてと跳ねるように移動する。
keram00s_05
DOODLEシャチ×飼育員の朱玄です。シャチとか水族館とかは結構ガバガバなので、細かい所は気にしないで読んで頂ければと思います。シャチは人との恋を夢みるのかショーを終えたプールで玄武は相棒とも言えるイルカ達に魚を与えていた。
「今日もお疲れ様。見に来てくれた人達は皆、お前たちがジャンプすると、喜色満面、大喜びだったぞ」
イルカ達に観客の喜んでいた様を伝えると、彼らも嬉しそうにキューキューと音を鳴らした。一番若いイルカが玄武に撫でてくれと、甘えるように顔を水面から出したので、撫でてやっていると、隣でザバッと大量の水飛沫と共にイルカ達とは比べ物にならない大きさの顔が玄武に迫った。
「コイツ達が怯えるからやめてくれって言ってるだろ、朱雀」
プールサイドに上体を乗せた時の衝撃で大量に水を浴びた玄武はびしょ濡れの髪をかき上げながら、犯人であるシャチの朱雀を睨む。
しかし、朱雀はキュイキュイと鳴いて玄武に甘えようと顔を近づける。
5687「今日もお疲れ様。見に来てくれた人達は皆、お前たちがジャンプすると、喜色満面、大喜びだったぞ」
イルカ達に観客の喜んでいた様を伝えると、彼らも嬉しそうにキューキューと音を鳴らした。一番若いイルカが玄武に撫でてくれと、甘えるように顔を水面から出したので、撫でてやっていると、隣でザバッと大量の水飛沫と共にイルカ達とは比べ物にならない大きさの顔が玄武に迫った。
「コイツ達が怯えるからやめてくれって言ってるだろ、朱雀」
プールサイドに上体を乗せた時の衝撃で大量に水を浴びた玄武はびしょ濡れの髪をかき上げながら、犯人であるシャチの朱雀を睨む。
しかし、朱雀はキュイキュイと鳴いて玄武に甘えようと顔を近づける。
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DOODLE理想の社長×社長夫人朱玄を求め我々はジャングルの奥地へと足を踏み入れたり入れなかったりした結果、モブに全てを託しました。社長夫人を推してるモブ社員の話ホテルの大広間を借りた社の創立記念のパーティーは、今年は大きな節目だと言うこともあり一層華やかだった。自分達平社員もなんならその家族も参加して欲しいという豪快な社長の要望により、気怠い社内行事という雰囲気は無く皆着飾って楽しくこのひと時を過ごしているように見えた。彼女もいない独り身の自分はただひたすらに自分では買おうとも思わない高い酒とビュッフェを食べては同じような境遇の同僚たちとそれなりに楽しんでいた。
もちろん肩身が狭い、そもそも騒がしい所が苦手などの理由で参加しない同僚とかもいるのだが、自分にはある目的があるからこういう社内の催しには出るようにしている。
「藻部、食べてるな」
「はい、明日は何も食べなくて良いくらい食べて帰ります」
2262もちろん肩身が狭い、そもそも騒がしい所が苦手などの理由で参加しない同僚とかもいるのだが、自分にはある目的があるからこういう社内の催しには出るようにしている。
「藻部、食べてるな」
「はい、明日は何も食べなくて良いくらい食べて帰ります」
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MOURNINGバイクショップ店員×看護師の朱玄です。まだ懲りずに書いてます。時系列としては3/5の手前くらいだと思っていてください。ご査収ください。一年よりも長い夜の話安いアパートの古い階段を音を鳴らして上がり、鍵を開けて誰もいない暗い家の玄関に明かりをつける。
「ただいまー」
そう言うとオレの背負っているキャリーバッグからにゃこがにゃおと返した。キャリーバッグを床に置きチャックを開けると、にゃこ、もといにゃん喜威がぴょんと飛び出る。
「お前もお疲れさん」
にゃこは俺の言葉にお前もな、と言うようにまた短く鳴いて、とてとてと暗い部屋の奥へ1人先に行ってしまった。留守中に異変がなかったかを調べるのはにゃこの仕事だ。オレは部屋の明かりをつけて部屋着を引っ掴んでユニットバスに行った。いつも通りざっと汗を流し髪と体を洗い、泡を落とそうとしてシャワーを手に取りオレははたと気付いた。
5365「ただいまー」
そう言うとオレの背負っているキャリーバッグからにゃこがにゃおと返した。キャリーバッグを床に置きチャックを開けると、にゃこ、もといにゃん喜威がぴょんと飛び出る。
「お前もお疲れさん」
にゃこは俺の言葉にお前もな、と言うようにまた短く鳴いて、とてとてと暗い部屋の奥へ1人先に行ってしまった。留守中に異変がなかったかを調べるのはにゃこの仕事だ。オレは部屋の明かりをつけて部屋着を引っ掴んでユニットバスに行った。いつも通りざっと汗を流し髪と体を洗い、泡を落とそうとしてシャワーを手に取りオレははたと気付いた。
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DONE(5/5)2人が大人になってから出会って、最初だけさん付けで呼び合うの見て~採血して~って思いながら書いたバイクショップ店員×看護師の朱玄です。ちんたら投下してましたがこれでおしまいです。お付き合いくださりありがとうございました。 1935keram00s_05
DONE(4/5)2人が大人になってから出会って、最初だけさん付けで呼び合うの見て~採血して~って思いながら書いたバイクショップ店員×看護師の朱玄です。ここから2人の視点が入り混じります。一年後は遠すぎるから玄武さんはやっぱり綺麗だ。
オレなら服に着られてしまいそうな紺のジャケットをさらりと着こなしているし、ネックレスと時計はシルバーで統一されていてジャケットとも相性はバッチリだ。あと、近付くと凄く良い香りがして店に着くまでオレはガチガチに緊張してしまっていた。今は少し落ち着いたが、メニューを覗き込むその目の長い睫毛にオレはまたドキリとした。
緊張とドキドキの連続だからビールが来る頃にはすっかり喉が渇いていて、乾杯するなりオレは思い切りあおってしまった。職場の飲み会ではないとは分かっていたし、玄武さんの手前だから大人の男らしい落ち着いた飲み方をするはずだった。
さすがに引かれたかもな、と思って彼をチラリと見ると、玄武さんは静かに一口だけ飲んだ。そして、目が合い微笑んだ。
1598オレなら服に着られてしまいそうな紺のジャケットをさらりと着こなしているし、ネックレスと時計はシルバーで統一されていてジャケットとも相性はバッチリだ。あと、近付くと凄く良い香りがして店に着くまでオレはガチガチに緊張してしまっていた。今は少し落ち着いたが、メニューを覗き込むその目の長い睫毛にオレはまたドキリとした。
緊張とドキドキの連続だからビールが来る頃にはすっかり喉が渇いていて、乾杯するなりオレは思い切りあおってしまった。職場の飲み会ではないとは分かっていたし、玄武さんの手前だから大人の男らしい落ち着いた飲み方をするはずだった。
さすがに引かれたかもな、と思って彼をチラリと見ると、玄武さんは静かに一口だけ飲んだ。そして、目が合い微笑んだ。
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DONE(3/5)2人が大人になってから出会って、最初だけさん付けで呼び合うの見て~採血して~って思いながら書いたバイクショップ店員×看護師の朱玄です。書き足しながらなのでちゃんとまとまってなくて申し訳ないです。「##採血」でまとめます一年も待てないから待ち合わせの駅に着いた俺は時計を確認する。人と待ち合わせするときは集合時間より早く着くようにしているが、今日はより早く着いてしまった。往来の邪魔にならないようにロータリーの樹を囲う柵に軽く体重を預けて本を広げる。
…全然内容が入ってこない。
絶対に実る訳がないと諦めかけていた片想いの相手と飲みに行けるとはいえど、これではまるで初めてデートするガキのようだ。会いたいのに逃げ出したくて、ソワソワしてしまう。
いつも会うときは検査着かバイクショップの店名が入った制服代わりのツナギ姿のどちらかだから彼の私服を見るのは初めてだ。どんな私服を着ているのだろうと思いかけて、そもそも今日の自分の格好は浮いてないだろうかと気になり始める。新しく買ったジャケットを着てきたがあくまでも友人と遊びに行くだけと言えるような服装にしたつもりだ。
1606…全然内容が入ってこない。
絶対に実る訳がないと諦めかけていた片想いの相手と飲みに行けるとはいえど、これではまるで初めてデートするガキのようだ。会いたいのに逃げ出したくて、ソワソワしてしまう。
いつも会うときは検査着かバイクショップの店名が入った制服代わりのツナギ姿のどちらかだから彼の私服を見るのは初めてだ。どんな私服を着ているのだろうと思いかけて、そもそも今日の自分の格好は浮いてないだろうかと気になり始める。新しく買ったジャケットを着てきたがあくまでも友人と遊びに行くだけと言えるような服装にしたつもりだ。
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DONE(2/5)2人が大人になってから出会って、最初だけさん付けで呼び合うの見て~採血して~って思いながら書いたバイクショップ店員×看護師の朱玄です。個人的な趣味です…くんに顎髭があります。ご査収ください。(2/3) 「##採血」でまとめますまた会うのは一年後その人とは年に一回だけ会える
「お願いします」
そう言いながら出された受診票を受け取り俺はホッとしてしまった。
良かった。今年も来てくれた、と。
彼はこの病院がある町のバイクショップの店員で、毎年一度こうして健康診断に来る。
「紅井朱雀さんですね。どうぞ座ってください」
俺は受診票から顔を上げて本人かを確認するふりをして彼を見る。本当は名前も顔もすでに覚えている。赤い髪に男らしさの溢れる精悍な顔立ち、色気のある顎髭。力仕事が多いことが容易に分かる筋肉のついた逞しい体。
「両腕を見せていただけますか?」
俺が声をかけると、彼は腕を俺の前に差し出してくれる。所々に傷はあるけど色気のある太さの腕にうっとりしてしまう。
1958「お願いします」
そう言いながら出された受診票を受け取り俺はホッとしてしまった。
良かった。今年も来てくれた、と。
彼はこの病院がある町のバイクショップの店員で、毎年一度こうして健康診断に来る。
「紅井朱雀さんですね。どうぞ座ってください」
俺は受診票から顔を上げて本人かを確認するふりをして彼を見る。本当は名前も顔もすでに覚えている。赤い髪に男らしさの溢れる精悍な顔立ち、色気のある顎髭。力仕事が多いことが容易に分かる筋肉のついた逞しい体。
「両腕を見せていただけますか?」
俺が声をかけると、彼は腕を俺の前に差し出してくれる。所々に傷はあるけど色気のある太さの腕にうっとりしてしまう。
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DONE2人が大人になってから出会って、最初だけさん付けで呼び合うの見て~採血して~って思いながら書いたバイクショップ店員×看護師の朱玄です。個人的な趣味です…くんに顎髭があります。ご査収ください。(1/3)次会うのは一年後その人とは年に一回だけ会える。
オレの腕を触る細い指がすすと動いて血の流れを調べる。
年に一回会えるのはこの病院で、オレは安いスチール椅子に座って彼に腕を見せている。
長身の彼は腰をかがめて指を動かし血管の太さやら何やらを見ているのも毎年同じだ。
オールバックの黒い髪、額に傷跡があり、垂れ目がちな灰色の瞳、そして眼鏡をかけている。あ、眼鏡、変えたんだ。去年は黒縁だったのに、アンダーリムになってる。
細身で背が高くて、顔が整っている彼を見た時モデルかと思ったが、ここは病院。そして首にかけられた名札、彼が身に纏うのは清潔感のある紺色の看護師服。
そうモデルではなく、彼はここの看護師だ。
彼はこの病院で勤務する看護師で、勤め先の健康診断の採血のときだけ会える。いや、本当はオレが風邪をひいた時や怪我をした時にはここの病院に必ず来ているのだけれども。勤めているバイクショップからも住んでいるアパートからも近いからと言い訳して、忙しそうに働く彼が廊下を横切る姿や、病院が嫌だと泣く子供に優しく声をかけているのを遠くから見ているだけだ。
1196オレの腕を触る細い指がすすと動いて血の流れを調べる。
年に一回会えるのはこの病院で、オレは安いスチール椅子に座って彼に腕を見せている。
長身の彼は腰をかがめて指を動かし血管の太さやら何やらを見ているのも毎年同じだ。
オールバックの黒い髪、額に傷跡があり、垂れ目がちな灰色の瞳、そして眼鏡をかけている。あ、眼鏡、変えたんだ。去年は黒縁だったのに、アンダーリムになってる。
細身で背が高くて、顔が整っている彼を見た時モデルかと思ったが、ここは病院。そして首にかけられた名札、彼が身に纏うのは清潔感のある紺色の看護師服。
そうモデルではなく、彼はここの看護師だ。
彼はこの病院で勤務する看護師で、勤め先の健康診断の採血のときだけ会える。いや、本当はオレが風邪をひいた時や怪我をした時にはここの病院に必ず来ているのだけれども。勤めているバイクショップからも住んでいるアパートからも近いからと言い訳して、忙しそうに働く彼が廊下を横切る姿や、病院が嫌だと泣く子供に優しく声をかけているのを遠くから見ているだけだ。
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DONE「神秘のAquarium」ガシャで突如として生まれた人魚野くん(頭領)に狂った末に出来上がったもの。ショタ貴族×人魚野くんという派生朱玄。愛と海の境界線あの日、俺は海の中に水面を明るく照らす陽の光が落ちてきたのだと思った。
オレの誕生日になると親父は全国各地の商人を集めて、誕生日プレゼントを持ってこさせ、オレがその場で一番気に入ったものを買ってくれる。今年はオレが10歳だからか、例年になく豪勢だった。可愛くて珍しい動物に始まり、色とりどりの宝石、見たことも着方も分からない洋服、そして、綺麗な女性たち。
椅子に座ったオレの目の前で商人達はこれはどうだと意気込んで、商品を差し出してくる。オレは膝の上にいる親友のにゃことああでもないこうでもない、これはどうか、あっちの方が好きかと話し合っていた。
にゃこは偉大な海賊が残した宝の地図か、未知の技術が記録されている金属の円盤が良いのではないかと言うが、オレは正直どちらもとても欲しいとまではいかなかった。というよりも、どんなに珍しい物であろうと毎年毎年たくさん見せられると目新しさが無くなって飽きてしまう。現に去年は「これで良いかな」という気持ちでプレゼントをもらった。
2653オレの誕生日になると親父は全国各地の商人を集めて、誕生日プレゼントを持ってこさせ、オレがその場で一番気に入ったものを買ってくれる。今年はオレが10歳だからか、例年になく豪勢だった。可愛くて珍しい動物に始まり、色とりどりの宝石、見たことも着方も分からない洋服、そして、綺麗な女性たち。
椅子に座ったオレの目の前で商人達はこれはどうだと意気込んで、商品を差し出してくる。オレは膝の上にいる親友のにゃことああでもないこうでもない、これはどうか、あっちの方が好きかと話し合っていた。
にゃこは偉大な海賊が残した宝の地図か、未知の技術が記録されている金属の円盤が良いのではないかと言うが、オレは正直どちらもとても欲しいとまではいかなかった。というよりも、どんなに珍しい物であろうと毎年毎年たくさん見せられると目新しさが無くなって飽きてしまう。現に去年は「これで良いかな」という気持ちでプレゼントをもらった。
Yugones_khk
DONE【サンプル】9/18ミラフェス27
東6ラ09a 業務用羊羹
新刊 「おはよう、太陽様」
A5/64p
知らないことを信じる話
※pixivで公開中の「おはよう、太陽様」を一部加筆修正・後編を追加して製本したものです
※登場人物の獣化表現があります
※薄ぼんやりと宗教的な表現があります
※軽度の暴力表現を含みます 7
keram00s_05
MOURNING兎す×げです。レ…の人に飼われているっていう設定の徹頭徹尾兎です。また一部本来と異なる呼び方をしています。兎ムズカシイ…兎の登り坂起きる時間が近くなり半覚醒した俺の耳はとんとんと頭近くで蠢く小さな足音を拾う。少し跳ねては立ち止まりまた少し跳ねて俺に近づく。起きなくてはなと思っていると、俺の胸は押されるような少しの圧迫感を覚えた。
「おはよう、黒野」
俺の胸に登って見下ろしている黒兎に挨拶すると、黒兎の黒野は鼻をひくひく動かした。
黒野は半年前ほどに保護した黒兎だ。雨の日にカラスに虐められているところを助けて、そのまま成り行きで面倒を見ることになった。
黒野に起こされた俺はお望み通り餌皿にウサギ用の餌を入れる。
「ほら、餌だぞ」
黒野は普通の兎よりやや大きめの部類に入るが、大人しく物覚えの良い手のかからない兎だ。あまり俺に構うことを催促しないし、最初こそ滅茶苦茶に暴れられたが今では抱き上げても大人しくしてくれる。
6871「おはよう、黒野」
俺の胸に登って見下ろしている黒兎に挨拶すると、黒兎の黒野は鼻をひくひく動かした。
黒野は半年前ほどに保護した黒兎だ。雨の日にカラスに虐められているところを助けて、そのまま成り行きで面倒を見ることになった。
黒野に起こされた俺はお望み通り餌皿にウサギ用の餌を入れる。
「ほら、餌だぞ」
黒野は普通の兎よりやや大きめの部類に入るが、大人しく物覚えの良い手のかからない兎だ。あまり俺に構うことを催促しないし、最初こそ滅茶苦茶に暴れられたが今では抱き上げても大人しくしてくれる。
keram00s_05
MOURNING誕生日に公開したショタおに朱玄の没案(※途中で終わります)です。完成した内容と大きく異なっており、この文章内でも矛盾が生じていますが、「所詮お焚き上げ」の精神で見逃してください。 9964エヌ原
DONEスチパン時空朱玄の3話目の前半。相変わらず酒とか煙草とか違法薬物がある酩酊(上) その夜紅井は静まった庁内でひとりで仕事を片付けていた。例の爆発騒ぎから一週間。黒野の要請に応えて庁内のかなりの人数を動かした紅井は、薬物流通の大元を断てたと、本来黒野が受け取るべきのぶんの賞賛と、相応の紙仕事を受け取った。昼間は別の仕事で外を駆けずり回っているので、自然と机に向かうのは夜になる。冷え込む時期ではないからいいものの、机の下の足はじわじわ冷えて固まりつつある。紅井は行儀の悪さは承知で靴紐を解き、足をブーツから引っこ抜く。強張った指を動かしてほぐしながら、空いた左手でくるぶしの辺りをさする。質の悪い綿の靴下が摩擦でじんわり温まってようやく人心地がつく。
黒野が決めた解決法は衛生局にも消防庁にも良くは思われない筋書きで、その煽りをモロに受けたのが紅井だ。日々損壊した建物の賠償をどうするだ、煤煙で真っ黒になった周囲の清掃をどうするだ、おおよそ警察官とは思えない書類に向き合い、相棒が起こした爆発をヤクの売人どものせいにする物語を書き続けている。齟齬があれば上長からすぐに書き直しを命じられるので、今書いている書類ももう三度目になる。冒頭は諳んじられるくらいには書き飽きた。紅井はがりがりとペン先で紙の表面を削りながら書き進める。容疑者乙は、爆発物を、捜査の妨害のために、倉庫に保管しており。時計がぼーんと半時を知らせて、凝り固まった肩に手をやりながら仰ぎ見ると二二時半を回っている。朝から歩き通し、昼飯もろくに食わずにこの時間まで粘った。集中力が全身から失せるのを感じ、今日はもう無理だと自分に言い訳をする。書き途中の文章を句点まで終えて、紅井はペン先を拭った。
6982黒野が決めた解決法は衛生局にも消防庁にも良くは思われない筋書きで、その煽りをモロに受けたのが紅井だ。日々損壊した建物の賠償をどうするだ、煤煙で真っ黒になった周囲の清掃をどうするだ、おおよそ警察官とは思えない書類に向き合い、相棒が起こした爆発をヤクの売人どものせいにする物語を書き続けている。齟齬があれば上長からすぐに書き直しを命じられるので、今書いている書類ももう三度目になる。冒頭は諳んじられるくらいには書き飽きた。紅井はがりがりとペン先で紙の表面を削りながら書き進める。容疑者乙は、爆発物を、捜査の妨害のために、倉庫に保管しており。時計がぼーんと半時を知らせて、凝り固まった肩に手をやりながら仰ぎ見ると二二時半を回っている。朝から歩き通し、昼飯もろくに食わずにこの時間まで粘った。集中力が全身から失せるのを感じ、今日はもう無理だと自分に言い訳をする。書き途中の文章を句点まで終えて、紅井はペン先を拭った。
エヌ原
DONEスチパン時空の未成立朱玄のクリスマス話ハッピー・ホリデイズ・フォー・ユー 紅井が捜査報告書を書き終えたのは二三時を回ったころだった。その日起きた面倒なもめ事――つまり被害者が延べ五人、加害者が延べ六人、参加者は全部で七人という金銭トラブルについて文章で表現するには、紅井の能力はまったく不適当だった。課長からまったく意味が分からん、書き直せ、再提出、せめて通じる言葉で書け、ありとあらゆる表現で罵られしまいには呆れられ、それでもこの時間まで提出に付き合ってくれたのだから課長も決して悪人ではない。
こういう時に限って黒野を捕まえられなかったこと、自分の文書作成能力が異動後まったく成長していないこと、なにより晩飯を、クリスマス・イブの晩餐を食いはぐれたことが重なって紅井はひどく滅入っていた。今日は寮の貧相な食卓にも、ガチョウの丸焼きとミートプディング、それに好物のバターたっぷりのマッシュポテトとケーキ、悪くてもジンジャーブレッドが添えられていたはずなのだ。それを丸ごと食い損ねた。今から食堂に行ってもせいぜいスープと冷えた肉が残っている程度だろう。
1886こういう時に限って黒野を捕まえられなかったこと、自分の文書作成能力が異動後まったく成長していないこと、なにより晩飯を、クリスマス・イブの晩餐を食いはぐれたことが重なって紅井はひどく滅入っていた。今日は寮の貧相な食卓にも、ガチョウの丸焼きとミートプディング、それに好物のバターたっぷりのマッシュポテトとケーキ、悪くてもジンジャーブレッドが添えられていたはずなのだ。それを丸ごと食い損ねた。今から食堂に行ってもせいぜいスープと冷えた肉が残っている程度だろう。
エヌ原
DONE成立してる315時空の朱玄聖ヴァレンティヌスの祝福 朱雀は憂鬱な気持ちで眼を開ける。静まった二月の朝はキンと冷えていて本当なら気持ちの良い目覚めのはずだ。布団の中にしまいこんでいた手を出すと寒さに肌が総毛立つ。この澄んだ温度の中でする筋トレが朱雀は好きだった。だが今日は話は別だ。待ち構えるものを考えるほどベッドから降りるのが億劫で寝返りを打つと足が掛け布団から飛び出したので、慌てて膝を曲げて温もりの中にしまい込む。蹴り溜めた毛布が足首に絡んでその中にいたらしいにゃこが抗議の声を上げる。朱雀は情けない気持ちになって、枕元に置いた携帯に手を伸ばす。
二月十四日。バレンタインデー。少し前までは自分と無縁だったイベントは今や恐怖の対象だ。事務所にはすでにダンボール数箱ものチョコレートが届いている。先月末のサイン会でもたくさんの可愛らしい紙袋を差し入れてもらった。プロデューサーからはチョコレートは校外では絶対に受け取るなと釘を刺されているが、英雄や誠司に道で急に女にチョコを突きつけられる恐ろしさを滔々と語られた後ではあまり意味がない。少し前には冬馬からデビューすると高校ですら大変な目にあうのだと脅された。ガチ恋と呼びなされる女たちの良識に期待するなと真顔で言う彼の顔は間違いなく歴戦の勇士のそれだった。だから朱雀は昨日の夜起きたら十五日になっているように祈ったのだが、残念ながらそんな幸運には恵まれなかった。
4723二月十四日。バレンタインデー。少し前までは自分と無縁だったイベントは今や恐怖の対象だ。事務所にはすでにダンボール数箱ものチョコレートが届いている。先月末のサイン会でもたくさんの可愛らしい紙袋を差し入れてもらった。プロデューサーからはチョコレートは校外では絶対に受け取るなと釘を刺されているが、英雄や誠司に道で急に女にチョコを突きつけられる恐ろしさを滔々と語られた後ではあまり意味がない。少し前には冬馬からデビューすると高校ですら大変な目にあうのだと脅された。ガチ恋と呼びなされる女たちの良識に期待するなと真顔で言う彼の顔は間違いなく歴戦の勇士のそれだった。だから朱雀は昨日の夜起きたら十五日になっているように祈ったのだが、残念ながらそんな幸運には恵まれなかった。
エヌ原
DONEスチパン朱玄の2話目です。薬物と煙草と酒が出てくるがスチパン時空なので合法です。騒乱 その日紅井は黒野から晩飯の誘いを受けた。
先の義賊団の事件ののち、黒野は紅井に対する態度を少し変えた。時折紅井を外食に誘い、定例会議の後にはふたりで朝食を摂るようになった。当初は猫柳と繋がっていたことが露見したかと怯え、あるいは自分の不満が丸見えだったかと恥じたが、どちらでもないようだった。
次第に紅井は黒野の教育が第二段階に入ったことを察した。というのも黒野が選ぶ店はいつも雑然としていて、この帝都では珍しく様々な階級の人間が出入りしている。そこで黒野が拾おうとしている情報がなんなのか、紅井は彼の目端のひとつひとつに気を配るようになった。黒野は時折その視線に気づいて笑った。少なくとも紅井にはそう見えた。だからこの日々与えられる機会は、奢りだということを差し引いても、紅井にとって本当に嬉しい時間だった。
16661先の義賊団の事件ののち、黒野は紅井に対する態度を少し変えた。時折紅井を外食に誘い、定例会議の後にはふたりで朝食を摂るようになった。当初は猫柳と繋がっていたことが露見したかと怯え、あるいは自分の不満が丸見えだったかと恥じたが、どちらでもないようだった。
次第に紅井は黒野の教育が第二段階に入ったことを察した。というのも黒野が選ぶ店はいつも雑然としていて、この帝都では珍しく様々な階級の人間が出入りしている。そこで黒野が拾おうとしている情報がなんなのか、紅井は彼の目端のひとつひとつに気を配るようになった。黒野は時折その視線に気づいて笑った。少なくとも紅井にはそう見えた。だからこの日々与えられる機会は、奢りだということを差し引いても、紅井にとって本当に嬉しい時間だった。
エヌ原
DONEスチパン朱玄の1話目。にゃんす出てきます幻燈 黒野が長い脚で蹴り立てた扉は、蝶番を吹っ飛ばして倒れ、その衝撃で埃が朦々と舞い上がった。焦げたような粘膜を焼く臭いに紅井は顔を顰める。
埃の嵐が収まり懐中燈が照らしだしたのは、とても玄関とは思えない光景だった。趣味の統一されない高級そうな家具が所狭しと肩を並べ、合間合間に蚤の市で見るようなガラクタやグシャグシャに丸められた油紙がねじ込まれている。天井からぶら下がるのは照明器具や鳥の剥製、双翼機の模型だ。全てが過剰で空間に隙間がない。ただ一筋だけ、奥へと誘いこむ通路が獣道のように空いていた。
紅井は黒野の背後から回り込んで部屋に足を踏み入れる。獣道から一歩はずれて、油分と埃で黒ずんだビロード張りのソファと低い机の合間に脚をひねり入れると、少し離れたところでなにかが崩落する音が響く。続いて朱雀、と咎めるように名を呼ばれ、紅井は大人しく身を引く。コートと手袋は見事に汚れ、足元には靴底の跡がクッキリと残っていた。少なくとも数週間、獣道以外は使われていない。
9905埃の嵐が収まり懐中燈が照らしだしたのは、とても玄関とは思えない光景だった。趣味の統一されない高級そうな家具が所狭しと肩を並べ、合間合間に蚤の市で見るようなガラクタやグシャグシャに丸められた油紙がねじ込まれている。天井からぶら下がるのは照明器具や鳥の剥製、双翼機の模型だ。全てが過剰で空間に隙間がない。ただ一筋だけ、奥へと誘いこむ通路が獣道のように空いていた。
紅井は黒野の背後から回り込んで部屋に足を踏み入れる。獣道から一歩はずれて、油分と埃で黒ずんだビロード張りのソファと低い机の合間に脚をひねり入れると、少し離れたところでなにかが崩落する音が響く。続いて朱雀、と咎めるように名を呼ばれ、紅井は大人しく身を引く。コートと手袋は見事に汚れ、足元には靴底の跡がクッキリと残っていた。少なくとも数週間、獣道以外は使われていない。
エヌ原
DONEツイッターで5億回くらいしてる朱雀くんがアコギを弾く話完全ではないハーモニー その日曜日の午後、朱雀はギターを背負って玄武の部屋を訪れた。まずは駆けつけ一杯とソーダを出すと、朱雀はあっという間にグラスを空にした。おかわりを注ぐとそれも飲み干して、ふは、と大きく肩で息を吐いた。
秋の休日にぽんと生まれたオフに、朱雀はギターの練習をしたいと言い出した。番組の企画でエレキギターを借り受け、名前までつけて愛でたのち、朱雀はそのストラトキャスターを事務所に前借りした金で買い取った。しばらくして、ロケで訪れた御茶ノ水の楽器店で、今度はアコースティックギターが安売りされていた。同行していたエンジニアがお値打ち品だというので、朱雀はそれを取り置きして、翌週末に母親を拝み倒して手に入れた一万円札三枚をを握りしめて玄武と一緒に買いに行った。
2945秋の休日にぽんと生まれたオフに、朱雀はギターの練習をしたいと言い出した。番組の企画でエレキギターを借り受け、名前までつけて愛でたのち、朱雀はそのストラトキャスターを事務所に前借りした金で買い取った。しばらくして、ロケで訪れた御茶ノ水の楽器店で、今度はアコースティックギターが安売りされていた。同行していたエンジニアがお値打ち品だというので、朱雀はそれを取り置きして、翌週末に母親を拝み倒して手に入れた一万円札三枚をを握りしめて玄武と一緒に買いに行った。
エヌ原
DONE童貞の朱雀くんにキレた玄武くんがベロチューをかます居待月 黒野玄武が相棒と交際を始めたのは一ヶ月半前だ。張本人の家で、ちゃぶ台にもたれながら漫然とWWEの録画を見ている最中に、急に惚れたと言われた。黒野の側はといえば、かれこれ一年この問題と向き合った結果、言葉にして感情の輪郭を顕にしてしまえばもはや息の根を止めるしかないと深く考えるのをやめた矢先のことだった。だからつい簡単に俺もだと応えてしまい、そのまました口付けが互いのファーストキスになった。
その日から三週間、紅井朱雀は見事に挙動不審になった。声をかければ返事は裏返り、レッスン中に指先が触れるだけで足をもつれさせて転倒し、事務所のコーヒーカップを都合四つ割った。備品に回せる金はねえんだよと怒鳴るプロデューサーとアスクルでプラスチックのマグを頼む山村を見て、黒野は本件について紅井と話し合う必要を強く感じた。
4505その日から三週間、紅井朱雀は見事に挙動不審になった。声をかければ返事は裏返り、レッスン中に指先が触れるだけで足をもつれさせて転倒し、事務所のコーヒーカップを都合四つ割った。備品に回せる金はねえんだよと怒鳴るプロデューサーとアスクルでプラスチックのマグを頼む山村を見て、黒野は本件について紅井と話し合う必要を強く感じた。
エヌ原
DONE朱玄闇鍋小説(http://fire.nazo.cc/mnp/)に出したやつ蝉しぐれ東と西では鳴く蝉が違うという。玄武は自然の変化にはうといほうでそれには気づかなかったが、横浜に引っ越してきてアオスジアゲハが少ないことには驚いた。ユズやカラタチや夏みかんの樹にあつまるのはもっぱらナミアゲハで、あの翅に人工塗料のような青水色が走るアゲハはめったに見ない。それを朱雀に言ったら、朱雀は北海道のアゲハは真っ黒なのだと言った。
「夏によお、植え込みとかにすげー集まるんだよ。20とか30、それくらいいる。マジで真っ黒で、普通のちょうちょみてえな模様とかねえんだ。あとでけえ。ガキのころとか、襲われるみてえで怖かったぜ」
ヒッチコックの「鳥」みたいだと言うとその本は読んだことねえ、と返ってくる。一度名画を徹底的に見せる会でも開くべきか、と思いながら真っ黒な蝶たちに襲われるちいさいあかいすざくを想像すると口角が自然と上がる。
4213「夏によお、植え込みとかにすげー集まるんだよ。20とか30、それくらいいる。マジで真っ黒で、普通のちょうちょみてえな模様とかねえんだ。あとでけえ。ガキのころとか、襲われるみてえで怖かったぜ」
ヒッチコックの「鳥」みたいだと言うとその本は読んだことねえ、と返ってくる。一度名画を徹底的に見せる会でも開くべきか、と思いながら真っ黒な蝶たちに襲われるちいさいあかいすざくを想像すると口角が自然と上がる。