そのこ
낙서最近いっしょに酒が飲めないビクフリ? ビクフリ未満の不満の話。一緒に飲みたいなあと思っているのはお互いさま、的な。2025-05-30
軍を立ち上げてから組み上げてきたシステムがうまく回り始めたのと、マチルダが加わったことで単純な人手が増えたこと。その二つを大きな要因として、俺たちの殺人的な仕事量はなんとか手に負えるぐらいになっていた。飯はちゃんとそれっぽい時間に大概食えるし、風呂も冷める前にゆっくりとは入れる日がたまにある。
だが不満がなくなったわけではない。
たとえば、しばらくフリックと二人で酒を飲んでいないとか。
歩兵部隊の訓練を終え、飯と風呂の前に自室まで戻ろうと兵舎に足を踏み入れたところでマチルダのトップ二人と立ち話をするフリックを見かけた。二日程前から部屋に戻ってこなかったから、どうせマチルダとの本格的な合同訓練にでも出ているんだろう、と踏んでいたが、それはまさしくその通りだったようだ。
1720軍を立ち上げてから組み上げてきたシステムがうまく回り始めたのと、マチルダが加わったことで単純な人手が増えたこと。その二つを大きな要因として、俺たちの殺人的な仕事量はなんとか手に負えるぐらいになっていた。飯はちゃんとそれっぽい時間に大概食えるし、風呂も冷める前にゆっくりとは入れる日がたまにある。
だが不満がなくなったわけではない。
たとえば、しばらくフリックと二人で酒を飲んでいないとか。
歩兵部隊の訓練を終え、飯と風呂の前に自室まで戻ろうと兵舎に足を踏み入れたところでマチルダのトップ二人と立ち話をするフリックを見かけた。二日程前から部屋に戻ってこなかったから、どうせマチルダとの本格的な合同訓練にでも出ているんだろう、と踏んでいたが、それはまさしくその通りだったようだ。
そのこ
낙서昨日のの若干続き。ビクフリ。導入シーン。なんか、もう少し色っぽくできたな。精進します。2025-05-27
城の外に設置された兵舎で部下と話していると、ふいに皆がざわめいた。何人かが軽く手を上げ、おかえりなさいと口にする。振り返れば、一週間程いなかったフリックが兵舎に入ってくるところだった。夕日が後ろから照らして表情こそよく見えないが、旅塵にまみれていても怪我なんかはしていないようだ。
「おう、お帰り」
「ただいま」
なんの衒いもなく言って、返されれば少し面映ゆくさえ思う。
交わした言葉はそれだけで、副官連中がいなかったにどうしてもたまる仕事を抱えてやいのやいの言い始めるから一歩身を引くことにする。まだ仕事が残っているのはこっちも同じだ。
とはいえそこまで戦況が切迫していない状態ならば夕飯は普通に取れるし、風呂も冷めない内に入ることが出来るのはありがたい話だ。夕涼みをするにはちょうどいい気温で、部屋にそのまま帰るのは少し惜しい気分だ。
2857城の外に設置された兵舎で部下と話していると、ふいに皆がざわめいた。何人かが軽く手を上げ、おかえりなさいと口にする。振り返れば、一週間程いなかったフリックが兵舎に入ってくるところだった。夕日が後ろから照らして表情こそよく見えないが、旅塵にまみれていても怪我なんかはしていないようだ。
「おう、お帰り」
「ただいま」
なんの衒いもなく言って、返されれば少し面映ゆくさえ思う。
交わした言葉はそれだけで、副官連中がいなかったにどうしてもたまる仕事を抱えてやいのやいの言い始めるから一歩身を引くことにする。まだ仕事が残っているのはこっちも同じだ。
とはいえそこまで戦況が切迫していない状態ならば夕飯は普通に取れるし、風呂も冷めない内に入ることが出来るのはありがたい話だ。夕涼みをするにはちょうどいい気温で、部屋にそのまま帰るのは少し惜しい気分だ。
そのこ
낙서ビクフリ。ちょっかいかけるビクトールさんとからかわれるフリックのやつ。2025-05-26
「いつ帰ってくるんだ?」
自分はまだベッドに転がったまま、身支度をするフリックに聞いた。そこここに薄い傷跡が残る肌が、洗いざらしの服に隠されていく。何にも残ってねえなあ。ベッドを共にしたのはもう何週間も前の話で、それに普段から不満を抱えているというわけでもないのだが。
「一週間ぐらいかかるから……」
日付を聞いて、なんだか本当に、心の底から困ってしまった。
行先も教えてくれない軍師の任務だ。どうせ厄介ごとなんだろう。人が動き出すような時間にしれっといなくなって、さくっと帰ってくる。まったく良いように使ってくれるもんだ。
手際よく荷物をまとめ、昨日書いたらしき引継ぎの書類の確認をする。シャツから伸びる細い首筋とか、適当にまくった袖から見える腕とかそういうの。
1683「いつ帰ってくるんだ?」
自分はまだベッドに転がったまま、身支度をするフリックに聞いた。そこここに薄い傷跡が残る肌が、洗いざらしの服に隠されていく。何にも残ってねえなあ。ベッドを共にしたのはもう何週間も前の話で、それに普段から不満を抱えているというわけでもないのだが。
「一週間ぐらいかかるから……」
日付を聞いて、なんだか本当に、心の底から困ってしまった。
行先も教えてくれない軍師の任務だ。どうせ厄介ごとなんだろう。人が動き出すような時間にしれっといなくなって、さくっと帰ってくる。まったく良いように使ってくれるもんだ。
手際よく荷物をまとめ、昨日書いたらしき引継ぎの書類の確認をする。シャツから伸びる細い首筋とか、適当にまくった袖から見える腕とかそういうの。
そのこ
낙서ちょっと酔ったフリックとビクトール。ビクフリというか、片思いというか。2025-05-25
疲れているからここまでにしとこう。そう言うのを見誤る時がある。良い時か、悪い時かはそれぞれだが、今日は機嫌よく飲んでて、部屋に帰りがたくて見誤ったパターンだ。
すぎたな、と思うのは見慣れた俺ぐらいで、他の奴らにしてみたらそんなに変わらなく見えていただろう。それでも、皆に向ける視線とか、そういうのがいつもよりも柔らかくてよく笑う。楽しそうだから、それは別に良いんだけども。
まだ飲むのだ、という部隊の連中を残して二人で帰路についた。常夜灯がいつもは通らない道を照らしている。まだ整わない石畳の上を、フリックと二人じゃりじゃり言わせながら歩くのはなんだか久しぶりだった。
歩く姿を後ろから眺めながらついていく。上機嫌なのは後ろ姿からでも見て取れた。あっちへ一歩踏み出し、向こうへ進み、時折立ち止まって俺が追いつくのを待っている。追いついた俺に、笑いかける顔は緩んでただ柔らかくて、いやまったくの上機嫌。あんまりふりまかねえほうが良いと思うがね、こういう顔はよ。
1768疲れているからここまでにしとこう。そう言うのを見誤る時がある。良い時か、悪い時かはそれぞれだが、今日は機嫌よく飲んでて、部屋に帰りがたくて見誤ったパターンだ。
すぎたな、と思うのは見慣れた俺ぐらいで、他の奴らにしてみたらそんなに変わらなく見えていただろう。それでも、皆に向ける視線とか、そういうのがいつもよりも柔らかくてよく笑う。楽しそうだから、それは別に良いんだけども。
まだ飲むのだ、という部隊の連中を残して二人で帰路についた。常夜灯がいつもは通らない道を照らしている。まだ整わない石畳の上を、フリックと二人じゃりじゃり言わせながら歩くのはなんだか久しぶりだった。
歩く姿を後ろから眺めながらついていく。上機嫌なのは後ろ姿からでも見て取れた。あっちへ一歩踏み出し、向こうへ進み、時折立ち止まって俺が追いつくのを待っている。追いついた俺に、笑いかける顔は緩んでただ柔らかくて、いやまったくの上機嫌。あんまりふりまかねえほうが良いと思うがね、こういう顔はよ。
そのこ
낙서ちょっと酔ったフリックとビクトール。ビクフリというか、片思いというか。2025-05-25
疲れているからここまでにしとこう。そう言うのを見誤る時がある。良い時か、悪い時かはそれぞれだが、今日は機嫌よく飲んでて、部屋に帰りがたくて見誤ったパターンだ。
すぎたな、と思うのは見慣れた俺ぐらいで、他の奴らにしてみたらそんなに変わらなく見えていただろう。それでも、皆に向ける視線とか、そういうのがいつもよりも柔らかくてよく笑う。楽しそうだから、それは別に良いんだけども。
まだ飲むのだ、という部隊の連中を残して二人で帰路についた。常夜灯がいつもは通らない道を照らしている。まだ整わない石畳の上を、フリックと二人じゃりじゃり言わせながら歩くのはなんだか久しぶりだった。
歩く姿を後ろから眺めながらついていく。上機嫌なのは後ろ姿からでも見て取れた。あっちへ一歩踏み出し、向こうへ進み、時折立ち止まって俺が追いつくのを待っている。追いついた俺に、笑いかける顔は緩んでただ柔らかくて、いやまったくの上機嫌。あんまりふりまかねえほうが良いと思うがね、こういう顔はよ。
1768疲れているからここまでにしとこう。そう言うのを見誤る時がある。良い時か、悪い時かはそれぞれだが、今日は機嫌よく飲んでて、部屋に帰りがたくて見誤ったパターンだ。
すぎたな、と思うのは見慣れた俺ぐらいで、他の奴らにしてみたらそんなに変わらなく見えていただろう。それでも、皆に向ける視線とか、そういうのがいつもよりも柔らかくてよく笑う。楽しそうだから、それは別に良いんだけども。
まだ飲むのだ、という部隊の連中を残して二人で帰路についた。常夜灯がいつもは通らない道を照らしている。まだ整わない石畳の上を、フリックと二人じゃりじゃり言わせながら歩くのはなんだか久しぶりだった。
歩く姿を後ろから眺めながらついていく。上機嫌なのは後ろ姿からでも見て取れた。あっちへ一歩踏み出し、向こうへ進み、時折立ち止まって俺が追いつくのを待っている。追いついた俺に、笑いかける顔は緩んでただ柔らかくて、いやまったくの上機嫌。あんまりふりまかねえほうが良いと思うがね、こういう顔はよ。
そのこ
낙서兄さまネタを気にかけてもらってたのでもう一回書いた。ありがたありがた。ビクフリです。ほんとか?
2025-05-24
そりゃま戦士の村の特産は傭兵なんだから、こうやって渡り歩いてりゃ会うことはある。フリックが時々情報をもらったり流したりしてたのも知っている。そうやってゆるく繋がっていることはあいつらなりの処世術の一つなんだろう。
今だってあいつの部隊にも何人か所属している。弓騎兵なんて急ごしらえで作れるものじゃないんだから、金で雇えるんならありがたいぐらいなんだろうけど、なんとなくもやつくのはあれだ。距離感がよく分かんねえからだ。
聞いた話によれば、戦士の村は年が上のやつが順々に年下のやつの面倒を見ていくシステムらしい。親元から離れて、子供らと数人の大人で一緒に生活をする。だからどうしたってその中のつながりは深くなる。それは、分かる。フリックとあいつらもそういう仲で、小さいころからの付き合いだ、と言われりゃ俺だって邪険には出来ねえよ。する気もない。
1738そりゃま戦士の村の特産は傭兵なんだから、こうやって渡り歩いてりゃ会うことはある。フリックが時々情報をもらったり流したりしてたのも知っている。そうやってゆるく繋がっていることはあいつらなりの処世術の一つなんだろう。
今だってあいつの部隊にも何人か所属している。弓騎兵なんて急ごしらえで作れるものじゃないんだから、金で雇えるんならありがたいぐらいなんだろうけど、なんとなくもやつくのはあれだ。距離感がよく分かんねえからだ。
聞いた話によれば、戦士の村は年が上のやつが順々に年下のやつの面倒を見ていくシステムらしい。親元から離れて、子供らと数人の大人で一緒に生活をする。だからどうしたってその中のつながりは深くなる。それは、分かる。フリックとあいつらもそういう仲で、小さいころからの付き合いだ、と言われりゃ俺だって邪険には出来ねえよ。する気もない。
そのこ
낙서ニナちゃんにとって伝えることで得られる安心感があるからフリックに「好きです」っていうし、ビクトールさんは伝えない事で心地よい距離を保っているみたいな。2025-05-23
グリンヒルからニナが来てからというもの、フリックの心労に割と大きめのものが加わったなという印象がある。元々女と子供が苦手な奴だ。その両方となるとまあ大変だよな。だからと言って、邪険にしきるわけじゃないのも正直よく分からない。手を引かれればついていくし、あとで本当に憔悴した顔で部屋に帰ってくる割にはきっぱりと断ろうとはしない。
それはそれで良くないと思うんだよな。期待を持たせてるだけじゃねえのか。
「俺もそう思う」
「そう思うんなら是正しろよ。何考えてんだ」
小さな卓の上で行儀悪く頬杖をついたフリックは、少しだけ眉を寄せて目を閉じた。苦虫と一緒にナッツをかみ砕き、言う。
「ニナ、賢いなと思うのはさ」
1460グリンヒルからニナが来てからというもの、フリックの心労に割と大きめのものが加わったなという印象がある。元々女と子供が苦手な奴だ。その両方となるとまあ大変だよな。だからと言って、邪険にしきるわけじゃないのも正直よく分からない。手を引かれればついていくし、あとで本当に憔悴した顔で部屋に帰ってくる割にはきっぱりと断ろうとはしない。
それはそれで良くないと思うんだよな。期待を持たせてるだけじゃねえのか。
「俺もそう思う」
「そう思うんなら是正しろよ。何考えてんだ」
小さな卓の上で行儀悪く頬杖をついたフリックは、少しだけ眉を寄せて目を閉じた。苦虫と一緒にナッツをかみ砕き、言う。
「ニナ、賢いなと思うのはさ」
そのこ
낙서砂漠越え。いつかくっつくだろう世界線のビクフリ。2025-05-21
砂礫の上を馬が馬車を引いてざくざくと歩く。時折岩を噛んで大きく揺れるが、それ以外に大した変化もない。砂と岩と枯れた木々。岩に張り付いた苔と高く晴れた空だけが色を持つ世界だ。
ジョウストンとトランを結ぶさびれた街道の一つを行く隊商に拾ってもらったのは僥倖だった。護衛を雇って道々の街をめぐりながら、ジョウストンへ帰るのだという。そこに俺ともう一人乗せてもらって砂漠の旅の空だ。腹に開いた穴がようやく塞がっただけのフリックに、この砂漠を歩いて超える体力があるとは到底思えなかった。
今だって、ぼんやりと剣を抱えてどこか遠くを見ている。まあ何も見てはいないんだろうな。ちょっと熱でも出してそうで怖い。そんな怖い人間を抱えて、砂漠を渡ろうなんてやっぱり無謀なんだよな。
1425砂礫の上を馬が馬車を引いてざくざくと歩く。時折岩を噛んで大きく揺れるが、それ以外に大した変化もない。砂と岩と枯れた木々。岩に張り付いた苔と高く晴れた空だけが色を持つ世界だ。
ジョウストンとトランを結ぶさびれた街道の一つを行く隊商に拾ってもらったのは僥倖だった。護衛を雇って道々の街をめぐりながら、ジョウストンへ帰るのだという。そこに俺ともう一人乗せてもらって砂漠の旅の空だ。腹に開いた穴がようやく塞がっただけのフリックに、この砂漠を歩いて超える体力があるとは到底思えなかった。
今だって、ぼんやりと剣を抱えてどこか遠くを見ている。まあ何も見てはいないんだろうな。ちょっと熱でも出してそうで怖い。そんな怖い人間を抱えて、砂漠を渡ろうなんてやっぱり無謀なんだよな。
そのこ
낙서手癖で書いたビクフリ。手癖手癖。寝てるところを起こしてまで甘えるのとそれを受け入れるのは甘やかしだよねって。2025-05-19
ぺちぺちと頬を叩かれた。目を開ければ、細いとはいえランプの明かりが飛び込んできて目がくらむ。狭い、いつもの部屋に小さなランプ。枕元にはここのもう一人の主の姿。今日は帰る予定じゃなかったはずだが。
「……どうした」
ランプの光を背にしたビクトールは真っ黒だ。土と埃と汗と、かすかに血の匂いがする。ハイランドと小競り合いになったのは報告を受けていたが、お互いに適当にやりあってそのまま収束したらしい。帰ってきたのならば、詳細な報告が上がってくるだろう。
帰ってくるなら明日、明るくなってからにすれば良いものを。なにか喫緊の報告があるのなら、こんなところにおらずに軍師に報告へ行くはずだ。
1186ぺちぺちと頬を叩かれた。目を開ければ、細いとはいえランプの明かりが飛び込んできて目がくらむ。狭い、いつもの部屋に小さなランプ。枕元にはここのもう一人の主の姿。今日は帰る予定じゃなかったはずだが。
「……どうした」
ランプの光を背にしたビクトールは真っ黒だ。土と埃と汗と、かすかに血の匂いがする。ハイランドと小競り合いになったのは報告を受けていたが、お互いに適当にやりあってそのまま収束したらしい。帰ってきたのならば、詳細な報告が上がってくるだろう。
帰ってくるなら明日、明るくなってからにすれば良いものを。なにか喫緊の報告があるのなら、こんなところにおらずに軍師に報告へ行くはずだ。
そのこ
낙서SPを想定して書いたビクフリ。私もちょっかい出すやつ書きたかった。なんか無遠慮に撫でまわしたく何かがSPのあれにはある。2025-05-17
剣の腕は聞いていたし、実際自分の目で見てみてもその噂よりも使えるなという印象はあった。ただ年齢や外見に似合わない実力に自信過剰なのもまた事実で、それが鼻に着くというのはある。
ありはする。だけどこれは多分、もう少し単純な感情だ。
解放軍とかいうお尋ね者だって、別にいつだって地下でこそこそ隠れているわけではない。レナンカンプは大きな町だ。市が幾つも立って、酒場の数も大きいのから小さいのまでより取り見取り。それらを楽しむ人間すべてに目を光らせるなんて、帝国にだって出来るもんじゃない。
食事と酒はゆっくりと楽しめる。つまり、いくらでもからかい様があるという事だ。
隣に座っていたハンフリーが退いた隙にフリックの隣に腰をおろす。向かいでこんな場末の酒場でさえ品の良さを保ったままのオデッサがにこりと微笑んでくれるが、隣の奴は残念なことに、当然至極嫌な顔をした。少しも隠さないその感情に、ちょっと心配が優るぐらいだ。
2229剣の腕は聞いていたし、実際自分の目で見てみてもその噂よりも使えるなという印象はあった。ただ年齢や外見に似合わない実力に自信過剰なのもまた事実で、それが鼻に着くというのはある。
ありはする。だけどこれは多分、もう少し単純な感情だ。
解放軍とかいうお尋ね者だって、別にいつだって地下でこそこそ隠れているわけではない。レナンカンプは大きな町だ。市が幾つも立って、酒場の数も大きいのから小さいのまでより取り見取り。それらを楽しむ人間すべてに目を光らせるなんて、帝国にだって出来るもんじゃない。
食事と酒はゆっくりと楽しめる。つまり、いくらでもからかい様があるという事だ。
隣に座っていたハンフリーが退いた隙にフリックの隣に腰をおろす。向かいでこんな場末の酒場でさえ品の良さを保ったままのオデッサがにこりと微笑んでくれるが、隣の奴は残念なことに、当然至極嫌な顔をした。少しも隠さないその感情に、ちょっと心配が優るぐらいだ。
そのこ
낙서イチャついてるだけのビクフリ。きゃっきゃ。ビクトールさん、髪が長かった時期があるのはあんまり想像してなかったな。いいんですねそんな私に都合のいいことあって。2025-05-16
風呂から帰ってきたビクトールがそのまま戸棚に直行して中をかき回している。何をしているのか、と明かりをもって近寄れば、ちょうど爪の手入れ用具が入ったおばこを取り出すところだった。
ビクトールは今日の午後まで数日かけての野戦訓練に出かけていた。風呂に入って全身綺麗にしたとはいえ、流石に爪の先までは完璧に泥を落とすとまでは行かなかったようだ。
「おつかれ」
「つかれたぜ。ギルバートのやつと賭けをしたんだけどよ」
卓の上に戻した明かりのそばに肘をつき、ビクトールはしゃべりながら小箱から取り出した小刀を爪に当てた。安定しない卓を動かさないよう、俺ももう一つの椅子に座りなおし促すように一つ頷く。
1272風呂から帰ってきたビクトールがそのまま戸棚に直行して中をかき回している。何をしているのか、と明かりをもって近寄れば、ちょうど爪の手入れ用具が入ったおばこを取り出すところだった。
ビクトールは今日の午後まで数日かけての野戦訓練に出かけていた。風呂に入って全身綺麗にしたとはいえ、流石に爪の先までは完璧に泥を落とすとまでは行かなかったようだ。
「おつかれ」
「つかれたぜ。ギルバートのやつと賭けをしたんだけどよ」
卓の上に戻した明かりのそばに肘をつき、ビクトールはしゃべりながら小箱から取り出した小刀を爪に当てた。安定しない卓を動かさないよう、俺ももう一つの椅子に座りなおし促すように一つ頷く。
そのこ
낙서グリンヒルに行く前、なんかちょっとビクトールさんが嫌そうだから……ビクフリです。ちゃんと。2025-05-13
占領された街に侵入して、市長代行を助け出せ。まあ無理難題を押し付けてくるもんだ。テレーズ市長代行をタイラギが助け出したという物語が大切な事は理解する。だが実際に敵地で動くのはあの子たちじゃなくて、今手慣れた様子で荷づくりをするこいつだ。
明日の朝には城を出て、しばらくは帰ってこない。帰ってくるかも分からない。
思えば、生死も分からない状態で離れるのは本当に久しぶりだ。それこそ、解放戦争の時ぐらいじゃないか。
自分のベッドに座り込んで、荷づくりを進める背中を見つめる自分の顔が不機嫌にゆがんでいるなんて分かっていた。仕方のない事だってのは分かっている。タイラギたちを守れて、敵地で単独で動ける人間なんて俺かこいつぐらい。目立たない、まで条件を絞れば、シュウがこいつを指名する理由だって納得が出来る。
1423占領された街に侵入して、市長代行を助け出せ。まあ無理難題を押し付けてくるもんだ。テレーズ市長代行をタイラギが助け出したという物語が大切な事は理解する。だが実際に敵地で動くのはあの子たちじゃなくて、今手慣れた様子で荷づくりをするこいつだ。
明日の朝には城を出て、しばらくは帰ってこない。帰ってくるかも分からない。
思えば、生死も分からない状態で離れるのは本当に久しぶりだ。それこそ、解放戦争の時ぐらいじゃないか。
自分のベッドに座り込んで、荷づくりを進める背中を見つめる自分の顔が不機嫌にゆがんでいるなんて分かっていた。仕方のない事だってのは分かっている。タイラギたちを守れて、敵地で単独で動ける人間なんて俺かこいつぐらい。目立たない、まで条件を絞れば、シュウがこいつを指名する理由だって納得が出来る。
そのこ
낙서ヒックスとビクトールでフリックの話。気持ちだけビクフリです。フリック、村に帰ったほうがいいと私はおもう・2025-05-11
少し年齢が違うから直接話した事はあんまりないけど、すぐに手柄を立てて帰ってくるだろうと期待されていた事は知っている。それが待てど暮らせど帰ってこなくて、フリックさんと同期の人たちが心配していた。大人たちはなんとなく諦めていたんだと思う
帰ってこない人は案外いる。外が性にあったのか、それとも死んでしまったのか。時々、粛清される人もいる。僕らには包み隠さず教えられる。反面教師という奴なんだろう。
僕らが持っている力を正しく使え。正しさは村で教えられる。僕にとっては、村の正しさは外の正しさとそんなに違っているようには思えなくてありがたかった。
帰ってこない人はいる。帰ってこない人は大体死んでいるか、そう宣言した人だ。生きているのに、なぜか帰ってこない人は案外いない。立てるべき手柄、実際そんなに大したものじゃないんだ。テンガアールはなんだかそれに納得していないみたいだけど。
1929少し年齢が違うから直接話した事はあんまりないけど、すぐに手柄を立てて帰ってくるだろうと期待されていた事は知っている。それが待てど暮らせど帰ってこなくて、フリックさんと同期の人たちが心配していた。大人たちはなんとなく諦めていたんだと思う
帰ってこない人は案外いる。外が性にあったのか、それとも死んでしまったのか。時々、粛清される人もいる。僕らには包み隠さず教えられる。反面教師という奴なんだろう。
僕らが持っている力を正しく使え。正しさは村で教えられる。僕にとっては、村の正しさは外の正しさとそんなに違っているようには思えなくてありがたかった。
帰ってこない人はいる。帰ってこない人は大体死んでいるか、そう宣言した人だ。生きているのに、なぜか帰ってこない人は案外いない。立てるべき手柄、実際そんなに大したものじゃないんだ。テンガアールはなんだかそれに納得していないみたいだけど。
そのこ
낙서光る玉、サンキャッチャー説。気持ちだけビクフリです。2025-05-09
「見ろビクトール」
横合いから差し出された手にはあわい緑色の玉が握られている。窓から差し込む日差しを反射して、茶色い毛におおわれた掌の中がきらきらと七色に光っていた。
何が書いてあるのかを必死に読み解いている書類にも、その光はゆらゆら落ちている。赤、青、緑。光を分解しているのだと誰かが言っていた。
「なんだこりゃ」
「光る玉だ。サウスウィンドウの交易所にフリックと行ってな」
ああ。数日前からフリックが城を離れているのはそんな理由だったはずだ。ノースウィンドウとサウスウィンドウをつなぐ補給路の構築の一環として、サウスウィンドウの商人ギルドへの交渉に出向く軍師の護衛だ。
ゲンゲンも連れて行ったのは、ギルドの有力者にコボルトが一人いるから。とかそんな理由だったはず。当の本人は、出自を利用されたことなど露知らず、ご機嫌で笑っている。
1520「見ろビクトール」
横合いから差し出された手にはあわい緑色の玉が握られている。窓から差し込む日差しを反射して、茶色い毛におおわれた掌の中がきらきらと七色に光っていた。
何が書いてあるのかを必死に読み解いている書類にも、その光はゆらゆら落ちている。赤、青、緑。光を分解しているのだと誰かが言っていた。
「なんだこりゃ」
「光る玉だ。サウスウィンドウの交易所にフリックと行ってな」
ああ。数日前からフリックが城を離れているのはそんな理由だったはずだ。ノースウィンドウとサウスウィンドウをつなぐ補給路の構築の一環として、サウスウィンドウの商人ギルドへの交渉に出向く軍師の護衛だ。
ゲンゲンも連れて行ったのは、ギルドの有力者にコボルトが一人いるから。とかそんな理由だったはず。当の本人は、出自を利用されたことなど露知らず、ご機嫌で笑っている。
そのこ
낙서砂漠越えからミューズに向かう直前。アナベルとビクトール。ビクフリの一形態なのでアナベルが常にフラれていてちょっとどうなんでしょうね。2025-05-02
「本当に帰ってきたんだねえ」
珍しく酔っぱらったアナベルが繰り返す。小さな酒場のカウンター、人の声がまるで波音のように揺蕩ういい店だ。隣に座ったアナベルは、柔らかい手でビクトールの肩を抱いた。女にしては大きな掌で優しく引き寄せられる。
「本当にねえ」
「そんなにか」
1年ほど前、一旦挨拶には寄ったが、その時にはノースウィンドウに帰ったと嘘をついた後ろめたさもあり、どこかよそよそしかったと自分でも思っている。それ以前と言えばデュナンでネクロードの手がかりがまったくつかめないことに業を煮やした自分がもう帰らぬ、と言った時だ。
アナベルは反対しなかった。しても無駄だと悟っていたのだ。忘れてしまえという事も出来ず、かといって代われるはずもない。ビクトールを見送ることしか出来なかったアナベルの、深い悲しみの目をどうしていままで忘れていられたのだろう。
1576「本当に帰ってきたんだねえ」
珍しく酔っぱらったアナベルが繰り返す。小さな酒場のカウンター、人の声がまるで波音のように揺蕩ういい店だ。隣に座ったアナベルは、柔らかい手でビクトールの肩を抱いた。女にしては大きな掌で優しく引き寄せられる。
「本当にねえ」
「そんなにか」
1年ほど前、一旦挨拶には寄ったが、その時にはノースウィンドウに帰ったと嘘をついた後ろめたさもあり、どこかよそよそしかったと自分でも思っている。それ以前と言えばデュナンでネクロードの手がかりがまったくつかめないことに業を煮やした自分がもう帰らぬ、と言った時だ。
アナベルは反対しなかった。しても無駄だと悟っていたのだ。忘れてしまえという事も出来ず、かといって代われるはずもない。ビクトールを見送ることしか出来なかったアナベルの、深い悲しみの目をどうしていままで忘れていられたのだろう。
そのこ
낙서砂漠越え後、ノースウィンドウに帰郷した後。フリック。ビクフリが大前提。ビクトールさんの執着をこう、こうね。気が付いてるような。ないような。
2025-05-01
首筋に傷がある。ビクトールのやつ、思い切りかみつきやがって。明らかに人の歯型の傷を人目に晒すことは出来なくて、手持ちの中でも襟の高い服を選ぶ羽目になる。本格的に暑くなる前に消えれば良いんだが。
帰りたいと望みながらも、恐ろしくて帰れない。そんな故郷への旅路に付き合った。10年たった町は朽ちて枯れ、人っ子一人いやしない。それが事実だった。皆が生き返ることはないし、かといってまったくもって姿を変えているわけでもない。10年が10年として振りつもった景色を、ビクトールがどう思ったのか。
襟元を引っ張りながら部屋を出た。今日は一人だ。ビクトールはと言えば、何やらミューズから客人が来るとか何とかで、朝から出かけている。うれしそうな声をしていたからきっと仲のいい友人とかなんだろう。敵も多いが、同じぐらいかそれ以上に好かれている奴だ。
1534首筋に傷がある。ビクトールのやつ、思い切りかみつきやがって。明らかに人の歯型の傷を人目に晒すことは出来なくて、手持ちの中でも襟の高い服を選ぶ羽目になる。本格的に暑くなる前に消えれば良いんだが。
帰りたいと望みながらも、恐ろしくて帰れない。そんな故郷への旅路に付き合った。10年たった町は朽ちて枯れ、人っ子一人いやしない。それが事実だった。皆が生き返ることはないし、かといってまったくもって姿を変えているわけでもない。10年が10年として振りつもった景色を、ビクトールがどう思ったのか。
襟元を引っ張りながら部屋を出た。今日は一人だ。ビクトールはと言えば、何やらミューズから客人が来るとか何とかで、朝から出かけている。うれしそうな声をしていたからきっと仲のいい友人とかなんだろう。敵も多いが、同じぐらいかそれ以上に好かれている奴だ。
そのこ
낙서砂漠越え直後。ノースウィンドウに戻ったりするビクフリ続き。横書きが読みづらいとか聞いたので縦書きにしてみますけど、変わるのかな。
ノースウィンドウは数日前のままだ。多分この10年間、ずっとこのままだった。風が吹いて、雨が降って、そのせいで建物が少しずつ朽ちたとしても、それでも何も変わらない。俺とフリックは花を抱えて故郷を再び訪れていた。
フリックの手首にくっきりと痣が残っている。先日、やっとの事で帰ったノースウィンドウで俺が力任せにつかみ続けたからだ。あれから数日経って、赤黒かった痣は黄色の斑も加わって痛々しい事この上ない。
夏に向かう季節だ。細長い腕の先端にそういう痣があるとやたらと目立った。はっきりと手の形をしていればなおさらだ。悪い化け物にでもかどわかされたみたいだな、と何度も思い、それが半分ぐらいは本当だと考えると頭を抱えるしかないのだ。
1330フリックの手首にくっきりと痣が残っている。先日、やっとの事で帰ったノースウィンドウで俺が力任せにつかみ続けたからだ。あれから数日経って、赤黒かった痣は黄色の斑も加わって痛々しい事この上ない。
夏に向かう季節だ。細長い腕の先端にそういう痣があるとやたらと目立った。はっきりと手の形をしていればなおさらだ。悪い化け物にでもかどわかされたみたいだな、と何度も思い、それが半分ぐらいは本当だと考えると頭を抱えるしかないのだ。
ぎのォ
낙서酔い潰れて寝ちゃったフリックから寝言でオデッサの名前が出ることはあるじゃろ~の妄想。色々なことを飲み込んでるんだろうけど、そんなときビクトールは無理に踏み込むこともなく優しく寝かし付けてあげてくれっていう…(ろくろ)穏やかな夢を見ておくれ腐れ縁… 4そのこ
낙서砂漠越え直後。ノースウィンドウに帰るビクトールさんとフリック。手ぇつなぐのはカプだと言われればカプなんじゃないか。ビクフリです。2025-04-28
戻りたくなかったというのは事実で、戻りたかったというのも同じぐらい本当なんだと思う。
町はビクトールが言ったように崩れていた。屋根は落ち、草木が壁を浸食し、石畳はだいぶん土をかぶっている。そこここに突き刺さった、墓とも何とも言い難い粗末な板切れの下には一体誰が埋まっているんだろう。
なるほど確かにこれは忌地だ。さっきまで高く鳴いていた鳥もどこかへ行って、風の音しか聞こえない。ざわざわと木の葉と枝がこすれて音を立てるのに、しんと静かだ。朽ちたドアの向こうには朽ちた家がある。乱雑に転がされたいすと桶が床に転がって揺れている。
入口から大きな通りがあって、左右に朽ちた建物が並んでいる。擦り切れた布や地面に落ちた看板の成れの果てから察するに、ここが目抜き通りだったんだろう。
2522戻りたくなかったというのは事実で、戻りたかったというのも同じぐらい本当なんだと思う。
町はビクトールが言ったように崩れていた。屋根は落ち、草木が壁を浸食し、石畳はだいぶん土をかぶっている。そこここに突き刺さった、墓とも何とも言い難い粗末な板切れの下には一体誰が埋まっているんだろう。
なるほど確かにこれは忌地だ。さっきまで高く鳴いていた鳥もどこかへ行って、風の音しか聞こえない。ざわざわと木の葉と枝がこすれて音を立てるのに、しんと静かだ。朽ちたドアの向こうには朽ちた家がある。乱雑に転がされたいすと桶が床に転がって揺れている。
入口から大きな通りがあって、左右に朽ちた建物が並んでいる。擦り切れた布や地面に落ちた看板の成れの果てから察するに、ここが目抜き通りだったんだろう。
そのこ
낙서ビクトールさん、ノースウィンドウに帰る。フリックと帰ったのはなんかそりゃあそうよな、と思うんですけど、同時にフリックには話しててほしくないという願望。2025-04-27
遠くに街が見えてくる。目的地だ。岬から広がるように町があって、昔はトゥリバーからのサウスウィンドウをつなぐ交易路としてそこそこ栄えていた。10年前のあの日、何にも分からない内に全部が壊れた。
生き残ったのは俺ぐらいで、俺もまたあの村に居続ける事を選ばなかった。もし、吸血鬼があの災禍を成したのだと知らなければ、一人で村に残ったかもしれないが、それも全部たらればの話だ。
天気はとてもいい。空が高くて鳥が鳴く。最後に立ち寄った村で聞いた話によれば、野盗の類が住みつくことも特になく、ただそのまま朽ちていっているらしい。だってあんな事があった土地だろう、と眉を寄せる村人に俺は曖昧な笑みを見せた。
1351遠くに街が見えてくる。目的地だ。岬から広がるように町があって、昔はトゥリバーからのサウスウィンドウをつなぐ交易路としてそこそこ栄えていた。10年前のあの日、何にも分からない内に全部が壊れた。
生き残ったのは俺ぐらいで、俺もまたあの村に居続ける事を選ばなかった。もし、吸血鬼があの災禍を成したのだと知らなければ、一人で村に残ったかもしれないが、それも全部たらればの話だ。
天気はとてもいい。空が高くて鳥が鳴く。最後に立ち寄った村で聞いた話によれば、野盗の類が住みつくことも特になく、ただそのまま朽ちていっているらしい。だってあんな事があった土地だろう、と眉を寄せる村人に俺は曖昧な笑みを見せた。
そのこ
낙서砂漠越え直後。フリックとビクトール。ビクトールさん、1で帰るって言ってモラビアで捕まってますけど、ウォーレンの所にいたのが行きか帰りか不透明なのおもしろいよな。2025-04-26
「ちょっと付き合ってくんねえか?」
仕事がない時なら日がな一日一緒にいると言うのに、改まってなんだ。そう言おうとしてやめたのは何やらひどく追い詰められたような目をビクトールがしていたからだ。似合わぬしわを眉間に寄せて、伺うように俺を見ている。
読んでいた本を閉じ、椅子に座り直す。その間に、ビクトールも寝台に腰を掛けた。外からはサウスウィンドウの市場ののどかな客引きの声がして、柔らかな午後の光が差し込んできている。つい先日まで過酷な砂漠にいたなんてまるで夢のような、穏やかな日だ。
寝台に座り込んだまま、ビクトールは黙り込んだ。組んだ指先をより合わせる仕草は、まるで叱られる子供のようだ。素面では話しづらい事なのだろうか。だったら夜にでも話せば良いものを。
2218「ちょっと付き合ってくんねえか?」
仕事がない時なら日がな一日一緒にいると言うのに、改まってなんだ。そう言おうとしてやめたのは何やらひどく追い詰められたような目をビクトールがしていたからだ。似合わぬしわを眉間に寄せて、伺うように俺を見ている。
読んでいた本を閉じ、椅子に座り直す。その間に、ビクトールも寝台に腰を掛けた。外からはサウスウィンドウの市場ののどかな客引きの声がして、柔らかな午後の光が差し込んできている。つい先日まで過酷な砂漠にいたなんてまるで夢のような、穏やかな日だ。
寝台に座り込んだまま、ビクトールは黙り込んだ。組んだ指先をより合わせる仕草は、まるで叱られる子供のようだ。素面では話しづらい事なのだろうか。だったら夜にでも話せば良いものを。
tenmusu224
낙서おでこごっつんこなだけのビクフリこっちに置くほどのものでもない気も…すみません〜💦
描きたいイメージがあったのですが上手くいかずお蔵入りしてた絵を少し修正しました
20250426
そのこ
낙서ネクロードが逃げた後、フリックとビクトールさん。ビクフリの文脈です。オリジナルだと頬に触れてる感じあったけど、触れて無さそうってのはなかなか雰囲気変わるなって。
2025-04-25
よせばいいのに土塊を触った。ついさっきまでは失われた人の形をしてたはずなのに、化け物に踏まれて、もう散々。胸の悪くなるような腐った土のにおいと、崩れてなお残る見開いた眼を閉じてやりたかった。
あの時も、助けを請われた。ディジーはまだ生きていて、ビクトールの名前を呼んだ。もう声もあんまり覚えていない。だけれど、大きな青い目が恐怖にゆがんでいたのは脳裏に焼きついている。さっきも同じ目をしていた。その目のまま、土塊はただぐずりと溶けていた。
土とも人の肉ともつかない塊が指に絡みついたのか、それとも沈み込んだのか。手袋越しでさえ異様な感触だった。冷たく、湿り気を帯び、錯覚のように熱がある。人間のものではない。断じて、あれは人間ではなかった。
2287よせばいいのに土塊を触った。ついさっきまでは失われた人の形をしてたはずなのに、化け物に踏まれて、もう散々。胸の悪くなるような腐った土のにおいと、崩れてなお残る見開いた眼を閉じてやりたかった。
あの時も、助けを請われた。ディジーはまだ生きていて、ビクトールの名前を呼んだ。もう声もあんまり覚えていない。だけれど、大きな青い目が恐怖にゆがんでいたのは脳裏に焼きついている。さっきも同じ目をしていた。その目のまま、土塊はただぐずりと溶けていた。
土とも人の肉ともつかない塊が指に絡みついたのか、それとも沈み込んだのか。手袋越しでさえ異様な感触だった。冷たく、湿り気を帯び、錯覚のように熱がある。人間のものではない。断じて、あれは人間ではなかった。
そのこ
낙서アナベルとフリック。アナベルさん、ビクトールはもう二度と隣に誰かを置かないと思ってたのにフリックがいてビビったろうな。これはビクフリの文脈です。2025-04-24
定例の報告会の後、少し時間が余ってしまった。次の予定まで、アナベル自身も時間があったし、今日は一人で来たフリックもまたすぐに帰らねばならぬ事もないらしい。茶を淹れてしゃべるといっても、お互いにどうしても共通の知人の話になる。
フリックはどうやら昔の話を殆ど聞いていないらしい。ただ故郷を滅ぼされ、誰にも頼らずに復讐の旅に出た。どうして誰も頼らなかったのか、忘れてしまうことは出来なかったのか。
10年前のビクトールが、どれだけ暗い目をしていたか。
「解放軍の頃はそりゃあ信用できない顔してたけどな」
「でもするっと懐にはいるんだろう」
「そう。だからこそ俺は嫌いだったけどな」
笑うフリックの表情はどこか甘さが勝つ。容貌のやわらかさと言うよりも、ビクトールに向ける感情に、言葉ほどのとげのなさから来る甘さなのだろう。もう帰ってこないと思っていたビクトールが、隣国からたった一人連れ帰ってきた男は、その事実の重さと甘さには何も気づいていないようだった。
1341定例の報告会の後、少し時間が余ってしまった。次の予定まで、アナベル自身も時間があったし、今日は一人で来たフリックもまたすぐに帰らねばならぬ事もないらしい。茶を淹れてしゃべるといっても、お互いにどうしても共通の知人の話になる。
フリックはどうやら昔の話を殆ど聞いていないらしい。ただ故郷を滅ぼされ、誰にも頼らずに復讐の旅に出た。どうして誰も頼らなかったのか、忘れてしまうことは出来なかったのか。
10年前のビクトールが、どれだけ暗い目をしていたか。
「解放軍の頃はそりゃあ信用できない顔してたけどな」
「でもするっと懐にはいるんだろう」
「そう。だからこそ俺は嫌いだったけどな」
笑うフリックの表情はどこか甘さが勝つ。容貌のやわらかさと言うよりも、ビクトールに向ける感情に、言葉ほどのとげのなさから来る甘さなのだろう。もう帰ってこないと思っていたビクトールが、隣国からたった一人連れ帰ってきた男は、その事実の重さと甘さには何も気づいていないようだった。
そのこ
낙서これはビクフリのつもりで書いている。フリック、すごいちゃんと美形扱いされてて笑っちゃった。2025-04-18
「アナベル様が雇った傭兵の中に、なんかすごくきれいな人いない?」
「いた。明るい色の髪した人でしょ」
市庁舎ですれ違った役人がそんなことを言っているのが聞こえた。思わず振り返っても、彼女たちはこちらに気づきもせずに噂話をしながら歩いていく。呼び止める理由もなく、ビクトールは頭をかきながら連れが待つ入口ホールへ向かう事にした。
アナベルに傭兵を取りまとめてくれと言われてひと月程。渋ってはいたが、一度動き出せば早いものだ。報酬が決まり、仕事内容が詰められ、居つくべき場所が定まる。ミューズの酒場でいつまでも日雇いのような仕事をし続ける日々は終わりだ。
数日後にはミューズを発つ。あとここでやるべきは少々の書類仕事ぐらい。その少々も、ざっくりと目を通してフリックに押し付けた。アナベルに挨拶をしている間に読んでくれているだろう。
1441「アナベル様が雇った傭兵の中に、なんかすごくきれいな人いない?」
「いた。明るい色の髪した人でしょ」
市庁舎ですれ違った役人がそんなことを言っているのが聞こえた。思わず振り返っても、彼女たちはこちらに気づきもせずに噂話をしながら歩いていく。呼び止める理由もなく、ビクトールは頭をかきながら連れが待つ入口ホールへ向かう事にした。
アナベルに傭兵を取りまとめてくれと言われてひと月程。渋ってはいたが、一度動き出せば早いものだ。報酬が決まり、仕事内容が詰められ、居つくべき場所が定まる。ミューズの酒場でいつまでも日雇いのような仕事をし続ける日々は終わりだ。
数日後にはミューズを発つ。あとここでやるべきは少々の書類仕事ぐらい。その少々も、ざっくりと目を通してフリックに押し付けた。アナベルに挨拶をしている間に読んでくれているだろう。
そのこ
낙서たまにはちゃんとビクフリぽいのも書かないと忘れちゃうからなオデッサがいることが大前提になってるほうが好きなんだよね自分は。
2025/03/19
情けない事に夢見はあまり良くないほうだ。悪いものに追いかけられるし、家族は真っ赤な目で腐った腕で俺に縋りついてくる。どうして見捨てた、どうして殺した。どうしてお前ばかりが生きている。
ただ俺はこれが夢だともうとっくに知っている。目を覚ます方法は分からないから、泣きわめく姉と弟を抱きしめ、その臭気に顔を歪めてため息なんかをつきながら、目が覚めるのを待つばかり。
そうしてふと気が付くのだ。髪を撫でる掌の感触とあることと自分の名前をささやく柔らかな声音に現実味があることを。
目を開けてみれば朝というには暗かった。外からは雨の音がする。ぱたぱたぽつぽつ。時折ざあ、と風が大きくリズムを崩す。起きるにはまだ少し早そうだ。
1351情けない事に夢見はあまり良くないほうだ。悪いものに追いかけられるし、家族は真っ赤な目で腐った腕で俺に縋りついてくる。どうして見捨てた、どうして殺した。どうしてお前ばかりが生きている。
ただ俺はこれが夢だともうとっくに知っている。目を覚ます方法は分からないから、泣きわめく姉と弟を抱きしめ、その臭気に顔を歪めてため息なんかをつきながら、目が覚めるのを待つばかり。
そうしてふと気が付くのだ。髪を撫でる掌の感触とあることと自分の名前をささやく柔らかな声音に現実味があることを。
目を開けてみれば朝というには暗かった。外からは雨の音がする。ぱたぱたぽつぽつ。時折ざあ、と風が大きくリズムを崩す。起きるにはまだ少し早そうだ。
tenmusu224
완료ビクフリ!肌色あり?一応ワンクッションふとましくしすぎたかも?時すでに遅し…😇
(りゅーさんが素敵なスタンプをデザインしてくださったので早速差し替えてみました!ありがとうございますっ♡)
ogata
과거なつかしいビクフリ。優しい歌「おーい。開けてくれー」
部屋の外から熊の声がする。
「ああ、帰ってたのか」
部屋のドアを開けてやると、ビクトールがずかずかと入ってきた。
何やら色々と抱えている。よく見ると、今しがた自分が望んでいたものであることに気づいた。
「ほらよ、土産だ」
右手に持っていた酒瓶3本のうち1本をこちらに寄越した。風呂に入ってきたばかりらしいビクトールは、タオルを首から下げて機嫌よく鼻歌を歌いながら寝台に腰掛けた。
手渡された酒瓶を覗き込んで驚く。
「どうしたんだよこれ。何か高そうじゃないか。蒸留酒……カナカンか?」
ビクトールがにやりと笑った。
「今日の任務の帰りに、リュウが交易でボロ儲けしてな。その場にいた奴全員に特別報償が出たんで貰ってきたんだ」
4153部屋の外から熊の声がする。
「ああ、帰ってたのか」
部屋のドアを開けてやると、ビクトールがずかずかと入ってきた。
何やら色々と抱えている。よく見ると、今しがた自分が望んでいたものであることに気づいた。
「ほらよ、土産だ」
右手に持っていた酒瓶3本のうち1本をこちらに寄越した。風呂に入ってきたばかりらしいビクトールは、タオルを首から下げて機嫌よく鼻歌を歌いながら寝台に腰掛けた。
手渡された酒瓶を覗き込んで驚く。
「どうしたんだよこれ。何か高そうじゃないか。蒸留酒……カナカンか?」
ビクトールがにやりと笑った。
「今日の任務の帰りに、リュウが交易でボロ儲けしてな。その場にいた奴全員に特別報償が出たんで貰ってきたんだ」
ogata
과거サルベージビクフリ。よいゆめを こいつはいつもほとんど一直線上に足を踏み出すような歩き方をする。
戦闘時ですら、その動きの大きさに比べて不思議なくらいに足音が小さい。
青年の鍛え抜いた身体は、アルコールが入った時でさえ気の抜けた歩き方をすることを許さないのだ。
それはこの男が特殊な訓練を受けていることを意味するものであり、フリックの足付きを見るたび、我流で戦闘を身につけてきた自分との違いを改めて感じる。
だから部屋に戻って来るまでのフリックの足取りは、まったくしっかりとしたものだった。
そういうところは、多少飲んだぐらいでは全然変わらない。
酒場から部屋に戻って、あとはもう寝るだけだなとシャツを脱いでいると、フリックがじっとこちらを注視していたことに気がついた。
3093戦闘時ですら、その動きの大きさに比べて不思議なくらいに足音が小さい。
青年の鍛え抜いた身体は、アルコールが入った時でさえ気の抜けた歩き方をすることを許さないのだ。
それはこの男が特殊な訓練を受けていることを意味するものであり、フリックの足付きを見るたび、我流で戦闘を身につけてきた自分との違いを改めて感じる。
だから部屋に戻って来るまでのフリックの足取りは、まったくしっかりとしたものだった。
そういうところは、多少飲んだぐらいでは全然変わらない。
酒場から部屋に戻って、あとはもう寝るだけだなとシャツを脱いでいると、フリックがじっとこちらを注視していたことに気がついた。