nezurisu
MOURNINGXにて「#曦澄ワンドロワンライ」タグで投稿させていただいたSSです。第104回 お題『たぬき』
X垢が凍結されてしまったのでこちらにこっそりポイさせていただきます。 4839
リンネ
DONE #曦澄ワンドロワンライお題「わがまま」お借りしました。
本編後密かに交流していた付き合っていない二人。
まだ知らぬ春の日居心地の良さに甘えてしまったのは、弱さなのだろう。
強くあろうとした。誰よりも強くならねばと、努力を重ねたつもりだった。
張りぼてなのだと知っていた、本当は。
「貴方は強いよ」
そう、渇望する言葉をくれたから。
縋ってしまったんだ。
いい加減に、手放さなければならないのだ。
この人の、傷は癒えた。
俺とは違う。
「藍曦臣」
「……何でしょう?」
穏やかな瞳が振り返る。
こうして、他に誰もいない場所でただ、刻が過ぎるのを待っていた。
「そろそろ、戻るべきだろう。宗主として」
「私は、まだ……」
睫毛が陰るのを、見て見ぬ振りをする。
「俺も、ここに来るのをやめる」
「何故ですか?不甲斐ない私に、嫌気が差しましたか?」
「あなたは不甲斐なくなどない!俺の方が」
1078強くあろうとした。誰よりも強くならねばと、努力を重ねたつもりだった。
張りぼてなのだと知っていた、本当は。
「貴方は強いよ」
そう、渇望する言葉をくれたから。
縋ってしまったんだ。
いい加減に、手放さなければならないのだ。
この人の、傷は癒えた。
俺とは違う。
「藍曦臣」
「……何でしょう?」
穏やかな瞳が振り返る。
こうして、他に誰もいない場所でただ、刻が過ぎるのを待っていた。
「そろそろ、戻るべきだろう。宗主として」
「私は、まだ……」
睫毛が陰るのを、見て見ぬ振りをする。
「俺も、ここに来るのをやめる」
「何故ですか?不甲斐ない私に、嫌気が差しましたか?」
「あなたは不甲斐なくなどない!俺の方が」
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REHABILI #曦澄ワンドロワンライ。お題「毒」です。開催ありがとうございます。ブラック案件が浮かんでしまいました…リハビリ中のため文章が支離滅裂ですみません。
第43回。お題「毒」毒でも盛っていっそ自分を殺してしまえたらいい。
殺せ…殺せ…と誰かが囁いている。
誰が囁いているのかは分からないが、目の前にいる奴を殺せというわけなのか。
閉関明けで情緒が定まらないまま、夜狩の応援に来たのだが、邪祟以外の奴を殺せ…と言われても誰を殺せばいいのやら。
目の前に居るのは…金凌。
なぜ金凌を殺さなければならない。
金凌を殺して咽び泣き怨みに怒り狂う三毒聖手をみたくはないのか。
人を二度と殺したくはない。
金光瑶を刺した時と同じ過ちは繰り返したくはない。
同じ過ちを繰り返すくらいだったら毒を盛って自害した方が良い。
生きていてもなにも感じることはないのだから。
朔月で邪祟を何体も切りつけていく。
その度に邪祟から呪文に呪われた様に、殺せと言われている。
757殺せ…殺せ…と誰かが囁いている。
誰が囁いているのかは分からないが、目の前にいる奴を殺せというわけなのか。
閉関明けで情緒が定まらないまま、夜狩の応援に来たのだが、邪祟以外の奴を殺せ…と言われても誰を殺せばいいのやら。
目の前に居るのは…金凌。
なぜ金凌を殺さなければならない。
金凌を殺して咽び泣き怨みに怒り狂う三毒聖手をみたくはないのか。
人を二度と殺したくはない。
金光瑶を刺した時と同じ過ちは繰り返したくはない。
同じ過ちを繰り返すくらいだったら毒を盛って自害した方が良い。
生きていてもなにも感じることはないのだから。
朔月で邪祟を何体も切りつけていく。
その度に邪祟から呪文に呪われた様に、殺せと言われている。
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DONE #曦澄ワンドロワンライ開催ありがとうございます。お題「誤解」お借りしました。
舞台俳優してる曦澄です。
ギャグにしようとは思ってた…
誤解「これも食え」
「いいの?」
「この仕事は身体が資本なんだ。野菜だけじゃなくて肉も食え。」
江澄は後輩である男の皿に牛肉のたたきをよそった。
後輩と言っても年齢は相手の方が上だが、芸歴は江澄の方がずっと長い。目の前の男、芸名『曦臣』は最近舞台俳優になった男で、江澄も出演する舞台の端役に起用された。見た目は文句なく一級品であり、台詞の覚えも早く演技の勘も良いのだが、仕草や間の取り方はまだ素人感が抜け切れていない。
しかし、今後もっと経験を積み演技力を磨いていけば良いライバルになるだろうと江澄は早い段階で意識していた。
もう一つ、江澄が曦臣を意識し個人的に食事に連れて行く程に目をかけているのには理由があった。
それは……
3014「いいの?」
「この仕事は身体が資本なんだ。野菜だけじゃなくて肉も食え。」
江澄は後輩である男の皿に牛肉のたたきをよそった。
後輩と言っても年齢は相手の方が上だが、芸歴は江澄の方がずっと長い。目の前の男、芸名『曦臣』は最近舞台俳優になった男で、江澄も出演する舞台の端役に起用された。見た目は文句なく一級品であり、台詞の覚えも早く演技の勘も良いのだが、仕草や間の取り方はまだ素人感が抜け切れていない。
しかし、今後もっと経験を積み演技力を磨いていけば良いライバルになるだろうと江澄は早い段階で意識していた。
もう一つ、江澄が曦臣を意識し個人的に食事に連れて行く程に目をかけているのには理由があった。
それは……
yuno
DONE #曦澄ワンドロワンライ のお題『秋の味覚』に挑戦。お芋の精ワールド。阿澄が藍渙にお嫁入りする話を童話風に書いてみました。2022/10/02 00:11 up
【曦澄】その後二人は末永く幸せに暮らしましたとさ「できた!」
こんがり焼き揚げられた丸いお芋に阿澄は目を輝かせた。
匂いも香ばしくてとても美味しそう。これなら小さかった阿澄のお芋もきっと美味しく食べられる。
父上や母上にも喜んでもらえるかしらと期待に満ち満ちた眼差しで振り向いた阿澄に応えるように藍渙も頷いた。
「いい匂いがしますよ。とても美味しそうです」
「ありがとう! 藍渙のおかげだ」
「ふふ、私は作り方を調べただけです。作ったのは阿澄ですよ」
貴方が頑張ったのだと目を細めれば、阿澄は嬉しそうに破顔した。
「味見をしよう? 一番は藍渙に食べてほしいんだ」
「それは光栄です。ではお先にひと口……」
はい、熱いから気をつけて。
そう言って阿澄が器用に菜箸でひとつ摘んで差し出す。藍渙はあーんと口を開けた。
4071こんがり焼き揚げられた丸いお芋に阿澄は目を輝かせた。
匂いも香ばしくてとても美味しそう。これなら小さかった阿澄のお芋もきっと美味しく食べられる。
父上や母上にも喜んでもらえるかしらと期待に満ち満ちた眼差しで振り向いた阿澄に応えるように藍渙も頷いた。
「いい匂いがしますよ。とても美味しそうです」
「ありがとう! 藍渙のおかげだ」
「ふふ、私は作り方を調べただけです。作ったのは阿澄ですよ」
貴方が頑張ったのだと目を細めれば、阿澄は嬉しそうに破顔した。
「味見をしよう? 一番は藍渙に食べてほしいんだ」
「それは光栄です。ではお先にひと口……」
はい、熱いから気をつけて。
そう言って阿澄が器用に菜箸でひとつ摘んで差し出す。藍渙はあーんと口を開けた。
遙直輝
DONE #曦澄ワンドロワンライお題「秋の味覚」お借りしました。相変わらずの遅刻、そしてタイムオーバー(1+2hくらい)。ワンとはなんだろう…すみません。出来上がってるふたり。ふわっと、ふわっとお読みくださいまし。 10
refrain0411
DONEワンドロワンライ開催ありがとうございます!今回も一時間みっちり使いました!
何故か『こんなことなら付き合わなければよかった』の完結後の番外編になりました。
大したネタバレはないですが、順序通り読みたい方は完結後支部にも投稿しますのでその時にお読みください!
※お互いの呼び方が変わっています…とだけ。 2324
yuno
DONE #曦澄ワンドロワンライ のお題『お月見、月餅』に挑戦。付き合いたての手探り時期。まだ遠慮気味な江澄と、関係をもっと深めていきたい兄上の駆け引き、みたいな。2022/09/11 23:37 up
【曦澄】願い『これから向かうよ』
そう伝令蝶が来た時にはまさかと思った。
互いに宗主である身、中秋節を共に過ごせないことは承知の上。そう江澄は思っていたが、藍曦臣は違ったらしい。
遅い時間になるけれど、必ず伺うよ。貴方と共に月を眺めたい。
先日の会合での別れ際に耳元に囁かれた言葉。だが、難しいだろう、無理はしなくていいと苦笑とともに躱してしまった言葉を思い出す。
想いを交わし、特別な仲になり。初めて迎える中秋節だった。
まだ三拝はしていないが、いずれは道侶として家族になりたい。そう告げられてはいる。
だが、今はまだその関係にはなく、そして中秋節は家族と過ごすものだ。
貴方は姑蘇で、私は雲夢で、同じ月を眺めよう。貴方の家族と門下を大事にするといいと、そう答えた江澄に、藍曦臣は困ったように眉を下げていた。
3865そう伝令蝶が来た時にはまさかと思った。
互いに宗主である身、中秋節を共に過ごせないことは承知の上。そう江澄は思っていたが、藍曦臣は違ったらしい。
遅い時間になるけれど、必ず伺うよ。貴方と共に月を眺めたい。
先日の会合での別れ際に耳元に囁かれた言葉。だが、難しいだろう、無理はしなくていいと苦笑とともに躱してしまった言葉を思い出す。
想いを交わし、特別な仲になり。初めて迎える中秋節だった。
まだ三拝はしていないが、いずれは道侶として家族になりたい。そう告げられてはいる。
だが、今はまだその関係にはなく、そして中秋節は家族と過ごすものだ。
貴方は姑蘇で、私は雲夢で、同じ月を眺めよう。貴方の家族と門下を大事にするといいと、そう答えた江澄に、藍曦臣は困ったように眉を下げていた。
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MOURNING遅刻しました。開催ありがとうございます。#曦澄ワンドロワンライ。第37回、お題「お月見、月餅」です。30分オーバーです。
温かい目で読んでいただけたら幸いです。
願い事。蓮花塢の畔で泳いだのはもう何十年前のことだろうか。
その頃は、魏無羨と師姉も一緒にいてくれた。
でも、父母は温氏の討伐に遭い、師姉も不夜天で魏無羨を助けるために我が命を落とし、魏無羨も亡くなってしまった。
あれから十三年の月日が流れ、魏無羨は、何者かから献舎され蘇った。
死んだ者が蘇ったのには驚かされたが、魏無羨が選んだのは藍忘機の隣だった。
藍忘機と魏無羨は道侶となり共に人生を歩むことを決めた。
ある日のこと。
雲深不知処に所用があり、江晩吟は藍啓仁のところを訪れており、帰宅する矢先に、会いたくなかった魏無羨とばったり会う。
「江澄、もうすぐで中秋節だよね?江澄は誰と過ごすの?」
「余計なお世話だ」
中秋節は家族や大事な人と過ごすのが風習とされている。
2015その頃は、魏無羨と師姉も一緒にいてくれた。
でも、父母は温氏の討伐に遭い、師姉も不夜天で魏無羨を助けるために我が命を落とし、魏無羨も亡くなってしまった。
あれから十三年の月日が流れ、魏無羨は、何者かから献舎され蘇った。
死んだ者が蘇ったのには驚かされたが、魏無羨が選んだのは藍忘機の隣だった。
藍忘機と魏無羨は道侶となり共に人生を歩むことを決めた。
ある日のこと。
雲深不知処に所用があり、江晩吟は藍啓仁のところを訪れており、帰宅する矢先に、会いたくなかった魏無羨とばったり会う。
「江澄、もうすぐで中秋節だよね?江澄は誰と過ごすの?」
「余計なお世話だ」
中秋節は家族や大事な人と過ごすのが風習とされている。
遙直輝
DONE #曦澄ワンドロワンライお題「お月見」「月餅」お借りしました。相変わらずの遅刻、そしてタイムオーバー(1+2hくらい)。ワンとは…すみません。出来上がって割とすぐなふたり。ふわっとお読みください。
【十六番目の夜に】 7
遙直輝
DONE #曦澄ワンドロワンライ 【声】原作軸曦澄「待ち合わせはいつもの場所で」
お題「声」にて初参加。そして遅刻。そしてタイムオーバー(1+1hくらい)。出来上がって久しいふたり。ふわっと読んでいただけたらありがてぇ。 8
refrain0411
DONEワンドロワンライ主催様ありがとうございます🥰今回はピッタリ一時間です!
ぎりぎりすぎて最後駆け足になりましたし、見直しできてないですがこれが私の一時間クオリティです! 1985
yuno
DONE #曦澄ワンドロワンライ のお題『手紙』に挑戦。筆蹟診断スキルを張り合う兄上です。愛しい人のことは自分が一番わかっていたいというやつです。2022/08/21 02:06 up
【曦澄】私がいちばん大人気ないとは思ったけれど、それでもどうしても譲れなかったのだと言ったなら。
貴方は笑うだろうか。
「宗主。藍宗主より贈り物が届いております」
「またか。最近多いな」
そうですね。あ、こちらは書簡です。
そう言って捧げ出されたものを受け取る。書簡と贈り物。
中を改めれば、疲れてはないかとこちらを労る言葉とともに、眠りが穏やかになるからと合わされた香が包まれていた。
「ふむ」
特に取り立てて用はなさそうな。落ち着いた頃に雲夢を訪れたいとは書かれてあるものの、まだ先の話、日取りも決まっていない話だ。
完全に私信の類の、江澄を労るためだけに送られたもの。
「宗主の働きすぎを心配なさっておいでなんですよ」
「そうだろうが、噂にも上がらぬことをどうやって勘づくんだ?」
3091貴方は笑うだろうか。
「宗主。藍宗主より贈り物が届いております」
「またか。最近多いな」
そうですね。あ、こちらは書簡です。
そう言って捧げ出されたものを受け取る。書簡と贈り物。
中を改めれば、疲れてはないかとこちらを労る言葉とともに、眠りが穏やかになるからと合わされた香が包まれていた。
「ふむ」
特に取り立てて用はなさそうな。落ち着いた頃に雲夢を訪れたいとは書かれてあるものの、まだ先の話、日取りも決まっていない話だ。
完全に私信の類の、江澄を労るためだけに送られたもの。
「宗主の働きすぎを心配なさっておいでなんですよ」
「そうだろうが、噂にも上がらぬことをどうやって勘づくんだ?」
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MOURNING曦澄ワンドロワンライ第三十五回。お題「手紙」です。投稿遅くなってすみません。タイム30分オーバーかな。 閉関中の藍曦臣へ江晩吟が宛てた手紙です。開催ありがとうございます。毎回読んでいただき感謝しています。
#曦澄ワンドロワンライ
文に託した四文字の言葉貴方は今も金光瑶がいない狭間で生きる気力を失ったかのように生きているのですか?
閉関中の藍曦臣に文を届けてほしいと、藍啓仁から文での依頼があった。
「元気ですか?体調はご無事ですか?」
そんな簡単で単調な言葉だけでは済まされない。
藍曦臣が心の中に背負った傷は深くて誰も癒すことができない。
との事で藍啓仁のお目にかかったのが江晩吟だった。
元気ですか?
貴方は今も哀しい表情をしているのですか?
その言葉を文に託す。
『体調はどうか?一日三食食べているのか?眠れているのか?』
誰でも書けるようなうわべだけの単調な文字を連ねても藍曦臣の心には届かない。
江晩吟が書きたい、藍曦臣の心の内を知りたいのはうわべだけの文字ではない。
1620閉関中の藍曦臣に文を届けてほしいと、藍啓仁から文での依頼があった。
「元気ですか?体調はご無事ですか?」
そんな簡単で単調な言葉だけでは済まされない。
藍曦臣が心の中に背負った傷は深くて誰も癒すことができない。
との事で藍啓仁のお目にかかったのが江晩吟だった。
元気ですか?
貴方は今も哀しい表情をしているのですか?
その言葉を文に託す。
『体調はどうか?一日三食食べているのか?眠れているのか?』
誰でも書けるようなうわべだけの単調な文字を連ねても藍曦臣の心には届かない。
江晩吟が書きたい、藍曦臣の心の内を知りたいのはうわべだけの文字ではない。
yuno
DONE #曦澄ワンドロワンライ の『犬』にて。江澄が新たな犬を飼うほのぼの話です。曦澄は遠距離婚の熟練夫夫みたいな感じ。兄上が策士っぽい。【曦澄】魚心あれば下心「あ、ああ~……」
ばっしゃーん!
景気のいい音と共に水飛沫が上がり、蓮花塢の蓮湖の中を一匹の犬が気持ちよさそうに泳いでいく。ばっちゃばっちゃと犬かきをして、実に楽しそうだ。
「全くいい身分だ、あいつめ」
「暑いですからね。あんなにふさふさの毛並みではたまらなかったのでしょう」
「そうは言うがな。ちょっと目を離すとすぐに湖に飛び込むんだ。乾いているときのほうが短くなってきたぞ」
「ふふ、まだ一歳になったばかりでしょう? 遊びたい盛りのようですね」
欄干をびしょ濡れにするから、足元に気をつけてくれ。滑るぞ。
手を取って誘導してくれる江澄に、大丈夫ですよと微笑む。
蓮の花の見頃に合わせて今年も蓮花塢にやってきた私に、江澄は甲斐甲斐しく世話を焼いてくれる。それが嬉しい。
2572ばっしゃーん!
景気のいい音と共に水飛沫が上がり、蓮花塢の蓮湖の中を一匹の犬が気持ちよさそうに泳いでいく。ばっちゃばっちゃと犬かきをして、実に楽しそうだ。
「全くいい身分だ、あいつめ」
「暑いですからね。あんなにふさふさの毛並みではたまらなかったのでしょう」
「そうは言うがな。ちょっと目を離すとすぐに湖に飛び込むんだ。乾いているときのほうが短くなってきたぞ」
「ふふ、まだ一歳になったばかりでしょう? 遊びたい盛りのようですね」
欄干をびしょ濡れにするから、足元に気をつけてくれ。滑るぞ。
手を取って誘導してくれる江澄に、大丈夫ですよと微笑む。
蓮の花の見頃に合わせて今年も蓮花塢にやってきた私に、江澄は甲斐甲斐しく世話を焼いてくれる。それが嬉しい。
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MOURNING曦澄ワンドロワンライ、開催、ありがとうございます。第34回、お題「犬」です。ポメガバースが書けなかったけど、読んでいただけたら幸いです。
犬になった藍曦臣江晩吟が不意打ちで邪祟の犬から腕を咬まれた影響で、庇った藍曦臣が犬になってしまった。
犬の姿で一匹で冷泉に入れずに、犬になった藍曦臣は藍忘機から抱えられて冷泉に入ることになった。
キャンキャンと喜びの鳴き声を出しながらバシャバシャと落ち着きがなく、冷泉の中を犬の姿で泳ぐ藍曦臣。
普段の藍曦臣とは似ても似つかないはしゃぐ犬の姿をみて、身代わりになった藍曦臣の犬の名を阿渙と呼ぶことに決めた江晩吟。
江晩吟も夜狩りの傷を癒す為に冷泉に浸かっている。
邪祟の犬は倒したものの、藍曦臣が犬になった以上、どうすることもできずに、藍忘機は悩んでいた。
犬が苦手な魏無羨は藍忘機に寄り付こうとしない。
「藍曦臣が人間に戻るまで蓮花塢で俺が犬の世話をする」
1575犬の姿で一匹で冷泉に入れずに、犬になった藍曦臣は藍忘機から抱えられて冷泉に入ることになった。
キャンキャンと喜びの鳴き声を出しながらバシャバシャと落ち着きがなく、冷泉の中を犬の姿で泳ぐ藍曦臣。
普段の藍曦臣とは似ても似つかないはしゃぐ犬の姿をみて、身代わりになった藍曦臣の犬の名を阿渙と呼ぶことに決めた江晩吟。
江晩吟も夜狩りの傷を癒す為に冷泉に浸かっている。
邪祟の犬は倒したものの、藍曦臣が犬になった以上、どうすることもできずに、藍忘機は悩んでいた。
犬が苦手な魏無羨は藍忘機に寄り付こうとしない。
「藍曦臣が人間に戻るまで蓮花塢で俺が犬の世話をする」
yuno
DONE #曦澄ワンドロワンライ の『旅』にて。仙門百家で慰安旅行に行こう的な四大世家宗主ほのぼの話にほんのちょっぴり曦澄添えみたいな、そんな感じです。【曦澄】仙門百家慰安旅行企画案外世俗的なこともやる修真界。人気投票ならばこれまでにもあった。例えば世家公子の風格容貌格付けとか。藍曦臣が長らく一位を独占していたあれだ。なお、若手修士とは何歳までを言うのかは謎である。
さて、四大世家の宗主が雁首揃えて、此度の格付けの集計作業を固唾を呑んで見守っている。特に江宗主と聶宗主の顔が真剣だ。なにせ開票は終盤に入り、江氏と聶氏の一騎打ちの様相を呈している。どちらが勝つのか、真剣な顔にもなるというもの。
忙しいはずの四大世家宗主が一同に介して見守っているそれは、風格容貌格付けなどという、一位を取ったら気分がいいというような暢気なものではない。
選ばれるのは一位のみ、それを決める投票だ。晴れて選ばれた仙門には大きな実入りが見込まれる。
3073さて、四大世家の宗主が雁首揃えて、此度の格付けの集計作業を固唾を呑んで見守っている。特に江宗主と聶宗主の顔が真剣だ。なにせ開票は終盤に入り、江氏と聶氏の一騎打ちの様相を呈している。どちらが勝つのか、真剣な顔にもなるというもの。
忙しいはずの四大世家宗主が一同に介して見守っているそれは、風格容貌格付けなどという、一位を取ったら気分がいいというような暢気なものではない。
選ばれるのは一位のみ、それを決める投票だ。晴れて選ばれた仙門には大きな実入りが見込まれる。
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MOURNING曦澄ワンドロワンライ。第三十三回。お題。旅。開催ありがとうございます。
過去と現世を行き来させてみました。
うまく伝わるといいなぁ…。
過去と現世の狭間で宗主の執務を全うし、余命も短くなった江晩吟は先立った藍曦臣の後を追うように息を引き取った。
蓮の花が咲き誇る暑くなりそうな早朝に江晩吟の命は終わりを迎えた。
二人が生まれ変わった現世では、海岸沿いの道路の急斜面の道を自転車で2人乗りをして藍曦臣が自転車を漕いでいる。
藍曦臣の腰に両腕を回し、しがみついている江晩吟は声を上げて高らかに笑っている。
江晩吟が現世でやってみたかった二人乗り自転車。
太陽が照りつける季節。生暖かい風が自転車で道を下るときに吹いて髪がなびく。
額と首に流れ出る汗をタオルで拭き取りながら海辺へ向かう。
車はレンタカーを借りて駐車場に停車しているが、江晩吟がレンタル自転車の借り出しを見つけて
1627蓮の花が咲き誇る暑くなりそうな早朝に江晩吟の命は終わりを迎えた。
二人が生まれ変わった現世では、海岸沿いの道路の急斜面の道を自転車で2人乗りをして藍曦臣が自転車を漕いでいる。
藍曦臣の腰に両腕を回し、しがみついている江晩吟は声を上げて高らかに笑っている。
江晩吟が現世でやってみたかった二人乗り自転車。
太陽が照りつける季節。生暖かい風が自転車で道を下るときに吹いて髪がなびく。
額と首に流れ出る汗をタオルで拭き取りながら海辺へ向かう。
車はレンタカーを借りて駐車場に停車しているが、江晩吟がレンタル自転車の借り出しを見つけて
yuno
TRAINING #曦澄ワンドロワンライ の『蓮花』にて。曦澄と叔父甥。現パロ。二人はスケーターで、あーりんは5歳設定でじうじうと二人暮らし。蓮花が絡むので、せっかくだから冒頭の書き出しとワンライ練習を兼ねてみました。投稿外タイムだと気付かずすみません。。この時点では二人とも無自覚未満状態です。冒頭なので。スケートはゆるふわです、間違いとかあっても半目で見てください。
【曦澄】蓮花を描く「阿凌、これからいくつか滑るから、どれがこの花のように見えるか教えてくれるか?」
「わかったー!」
スマホ画面に映し出された蓮の花を覗き込み、金凌は任せて! と張り切って頷く。
その頭を軽く撫でて、江澄はスケートリンクへと滑り出した。一度軽く周回し、足慣らしをしてからスピンへと入る。
初めは両腕を胸の前に組み合わせ、徐々に頭上に上げていくアップライトスピン。そこから更に腕を大きく広げて回転する。アップライトの逆戻りだ。
その次はレイバックスピン。大きく背を反らし両腕も伸ばす。手のひらを上にして、胸から腕がまっすぐの線になるように上体を維持しながら回転していく。
最後はシットスピン。足を組み替えて二度繰り返す。
3278「わかったー!」
スマホ画面に映し出された蓮の花を覗き込み、金凌は任せて! と張り切って頷く。
その頭を軽く撫でて、江澄はスケートリンクへと滑り出した。一度軽く周回し、足慣らしをしてからスピンへと入る。
初めは両腕を胸の前に組み合わせ、徐々に頭上に上げていくアップライトスピン。そこから更に腕を大きく広げて回転する。アップライトの逆戻りだ。
その次はレイバックスピン。大きく背を反らし両腕も伸ばす。手のひらを上にして、胸から腕がまっすぐの線になるように上体を維持しながら回転していく。
最後はシットスピン。足を組み替えて二度繰り返す。
yuno
DONE #曦澄ワンドロワンライ の『お題:蓮花』に参加しました。蓮湯やりたい!と不埒な欲望に素直になった兄上です。【曦澄】蓮の湯浪漫蓮の開花に誘われ蓮花塢を訪れた藍曦臣は、その見事な花の盛りに目を細めた。湖面に広がる美しい景色は何度見ても飽きない。
「どうだ? 今年も美しいだろう?」
「ええ。何度見ても感嘆致します。素晴らしい眺めですね」
青々とした葉の中で鮮やかに花開く蓮の美しさに圧倒される。まるでどこまでも広がっているかのような雄大さに時を忘れて見入ってしまう。
湖面の中を一艘の舟が葉をかき分けてゆっくりと進んでいくのが見えた。小さな漣が舟の軌跡を淡く残していく。その様さえ一服の画のようだった。
うっとりと蓮に見入る藍曦臣に江澄も満足げに頷く。
そうして二人で四阿で眺めること暫し。ねえ、晩吟と藍曦臣が口を開いた。
「ちょっと試してみたいことがあるのですが、良いかな?」
3130「どうだ? 今年も美しいだろう?」
「ええ。何度見ても感嘆致します。素晴らしい眺めですね」
青々とした葉の中で鮮やかに花開く蓮の美しさに圧倒される。まるでどこまでも広がっているかのような雄大さに時を忘れて見入ってしまう。
湖面の中を一艘の舟が葉をかき分けてゆっくりと進んでいくのが見えた。小さな漣が舟の軌跡を淡く残していく。その様さえ一服の画のようだった。
うっとりと蓮に見入る藍曦臣に江澄も満足げに頷く。
そうして二人で四阿で眺めること暫し。ねえ、晩吟と藍曦臣が口を開いた。
「ちょっと試してみたいことがあるのですが、良いかな?」
yuno
DONE #曦澄ワンドロワンライ の『お題:手』に参加しました。犬と戯れる江澄と、それをほのぼの見つめる藍曦臣と雲夢の民のお話です。【曦澄】お手を拝借「お手。そうだ、いい子だ。よしよし」
ご褒美だと言うようにわっしわっしと首元を撫で回す。褒められた犬は嬉しそうにハッハと舌を出しながらしっぽを振った。
本来のご主人そっちのけで嬉しそうにしっぽを振り、もう一回、もう一回とお手を繰り返す犬に、江澄も可愛いやつめと撫でくりまわした。
蓮の実のおやつももらって大興奮する犬に、こら、まだおすわりだと手のひらで示せば、言われた通り素直におすわりする。
「よく懐いていますね」
「私より宗主に従順なんですよ、こいつめ」
上下関係がよくわかっているんでさ。ちゃっかりした犬だと笑い飛ばす飼い主に、それは賢いと藍曦臣も破顔する。
「ほら、もう一回お手だ。待て、待て。一回伏せろ。待て。よーし、ご褒美だ」
2585ご褒美だと言うようにわっしわっしと首元を撫で回す。褒められた犬は嬉しそうにハッハと舌を出しながらしっぽを振った。
本来のご主人そっちのけで嬉しそうにしっぽを振り、もう一回、もう一回とお手を繰り返す犬に、江澄も可愛いやつめと撫でくりまわした。
蓮の実のおやつももらって大興奮する犬に、こら、まだおすわりだと手のひらで示せば、言われた通り素直におすわりする。
「よく懐いていますね」
「私より宗主に従順なんですよ、こいつめ」
上下関係がよくわかっているんでさ。ちゃっかりした犬だと笑い飛ばす飼い主に、それは賢いと藍曦臣も破顔する。
「ほら、もう一回お手だ。待て、待て。一回伏せろ。待て。よーし、ご褒美だ」
refrain0411
DONEワンドロワンライ 2回目の参加です。疲れていたので37分クオリティ…
金凌は出てるのに曦臣出ませんが曦澄です!
叔父甥な気もするけれど曦澄です!
これは曦澄です!!!
手江澄は蓮花塢に来ていた金凌の手を見て、思い出していた。そして、ぽつりと言葉をこぼす。
「阿凌の手は姉上の手の形に似ている。」
その言葉を口にしたつもりはなかった。
ああ、姉は亡くなったが姉が生きていた証がここにあったのかと。
「え?母上の手の形に?」
「ああ。」
姉が結婚する前はよく料理をしているのを横で見ていた。その料理をする手を思い出したのだ。思い出したきっかけは分からない。
「そうなんだ〜!」
幼すぎて記憶にない母とのつながりを知ることができ金凌は嬉しそうである。
「俺はこの手が好きだ。姉がよく蓮根と骨つき肉の汁物を作ってくれた、その時を思い出す。」
「そうなんだ!ねえ!叔父上!叔父上も作ってよ!作り方も教えて!俺も作れるようになりたい!」
1220「阿凌の手は姉上の手の形に似ている。」
その言葉を口にしたつもりはなかった。
ああ、姉は亡くなったが姉が生きていた証がここにあったのかと。
「え?母上の手の形に?」
「ああ。」
姉が結婚する前はよく料理をしているのを横で見ていた。その料理をする手を思い出したのだ。思い出したきっかけは分からない。
「そうなんだ〜!」
幼すぎて記憶にない母とのつながりを知ることができ金凌は嬉しそうである。
「俺はこの手が好きだ。姉がよく蓮根と骨つき肉の汁物を作ってくれた、その時を思い出す。」
「そうなんだ!ねえ!叔父上!叔父上も作ってよ!作り方も教えて!俺も作れるようになりたい!」
yuno
DONE #曦澄ワンドロワンライ の『失せ物』にて。曦澄と叔父甥。失くしたと落ち込むじうじうを兄上が慰めていたら、幼児が颯爽と解決する話です。現パロ設定。二人はスケーターで、あーりんは5歳設定でじうじうと二人暮らし。(スケーター要素はこの話にはありません)【曦澄】大事なものだから「……ない……!」
何度見てもない。慌てて周りに落ちていないか探してみたが、見つからない。
江澄は青ざめた。
「ど、どこに行ったんだ……っ」
おかしい。昨夜、明日はこれをつけるからと出しておいたはず。それから今まで、手に取ったりはしていなかったはずだ。
ベッドサイドチェストの上の、空っぽになっているジュエリー用のトレーを、江澄は信じられない思いで見つめた。
失くしてしまったのは藍渙からもらったアメジストのピアスとリングだ。誕生日祝いにと揃いで贈られたそれらは、控えめなサイズながらも美しく光る石のカットが気に入っていた。
とても精巧な技術で、石や台座の留具が滑らかな手触りに仕上げられており、阿凌が触っても怪我をしないのも良い。藍渙が自分たちのことを考えて選んでくれたのだとよくわかる。
2127何度見てもない。慌てて周りに落ちていないか探してみたが、見つからない。
江澄は青ざめた。
「ど、どこに行ったんだ……っ」
おかしい。昨夜、明日はこれをつけるからと出しておいたはず。それから今まで、手に取ったりはしていなかったはずだ。
ベッドサイドチェストの上の、空っぽになっているジュエリー用のトレーを、江澄は信じられない思いで見つめた。
失くしてしまったのは藍渙からもらったアメジストのピアスとリングだ。誕生日祝いにと揃いで贈られたそれらは、控えめなサイズながらも美しく光る石のカットが気に入っていた。
とても精巧な技術で、石や台座の留具が滑らかな手触りに仕上げられており、阿凌が触っても怪我をしないのも良い。藍渙が自分たちのことを考えて選んでくれたのだとよくわかる。
refrain0411
DONE魏無羨が居なくなって1年後くらい(藍忘機は面壁中。)曦臣→江澄の状態
初参加です。1時間でまとめるのって難しいですね…
何度も書きながら混乱して、お題に沿っているのかも怪しい気もする…💦
1時間で描いたり書いたりされる皆さんを今まで以上に尊敬しました。
誤字脱字もあるかと思いますが、とりあえずはこれが私の1時間の実力だと言うことで💦
失せ物江澄は夜狩に来ていた。今回は雲夢と姑蘇の丁度中間地点で邪祟が現れたため両家に夜狩の要請があった。
問題なく、夜狩は終わった。時々、鬼道を使う者と遭遇し奪舎されていないか紫電で確認するが、魏無羨の手がかりもなければ、奪舎されていた者もいなかった。
今回の夜狩ではそんな鬼道の使い手すら見つからなかった。
江澄と藍曦臣は宗主同士であり、夜狩の後に2人で話をしていた。
地元の住民が助かりましたと、仙師に贈り物をすることはよくあることだ。
今回はその贈り物が一風変わったものであった。
「仙師様は、おみくじというものを知っておるかい?」
「おみくじですか?」
藍曦臣がお婆さんに話しかけられている。
「占いみたいなものさ。これ、よく当たるんだよ。普段なら金を取っているんだが、仙師様達には助けられたからね、一つずつ持っていってくれ。私ゃ、他に食べ物や差し出す物が無いんで、貰ってくれるとこちらも嬉しいのさ。」
1944問題なく、夜狩は終わった。時々、鬼道を使う者と遭遇し奪舎されていないか紫電で確認するが、魏無羨の手がかりもなければ、奪舎されていた者もいなかった。
今回の夜狩ではそんな鬼道の使い手すら見つからなかった。
江澄と藍曦臣は宗主同士であり、夜狩の後に2人で話をしていた。
地元の住民が助かりましたと、仙師に贈り物をすることはよくあることだ。
今回はその贈り物が一風変わったものであった。
「仙師様は、おみくじというものを知っておるかい?」
「おみくじですか?」
藍曦臣がお婆さんに話しかけられている。
「占いみたいなものさ。これ、よく当たるんだよ。普段なら金を取っているんだが、仙師様達には助けられたからね、一つずつ持っていってくれ。私ゃ、他に食べ物や差し出す物が無いんで、貰ってくれるとこちらも嬉しいのさ。」
yuno
DONE #曦澄ワンドロワンライ 『嘘』にて。双傑がほのぼのお茶してます。夫が嘘をつかないっていいね、俺たちは幸せ者だなあってしみじみする話です。【曦澄】幸せなこと「嘘つき! 私を愛しているって言葉も全部嘘だったのね!」
ガシャーン。
卓上の茶器が床に落ちる。器は音を立てて割れたが、店員は片付けにも行けず、困ったように遠巻きにしているばかり。
だが、それもそうだろう。なにせ店内では今、男女の修羅場が絶賛展開中なのだった。
「もう何もかも信じられないわ! いったい私の他に何人の女に手を出していたの?!」
女の怒声が響く。金切り声のそれは店中に響いていた。間違いなく外にも聞こえているだろう。
江澄はその光景を苦虫を噛み潰したような顔で眺めていた。とりあえず五月蝿い。
「すげえなあ」
魏無羨は初めこそ野次馬根性を出してニヤニヤしていたが、口を開くたびに感情の高ぶりが増していく女の男を責め詰る言葉に苦い記憶を思い出したらしい。顔を引きつらせて乾いた笑いを浮かべるようになるまでそう時間はかからなかった。
2955ガシャーン。
卓上の茶器が床に落ちる。器は音を立てて割れたが、店員は片付けにも行けず、困ったように遠巻きにしているばかり。
だが、それもそうだろう。なにせ店内では今、男女の修羅場が絶賛展開中なのだった。
「もう何もかも信じられないわ! いったい私の他に何人の女に手を出していたの?!」
女の怒声が響く。金切り声のそれは店中に響いていた。間違いなく外にも聞こえているだろう。
江澄はその光景を苦虫を噛み潰したような顔で眺めていた。とりあえず五月蝿い。
「すげえなあ」
魏無羨は初めこそ野次馬根性を出してニヤニヤしていたが、口を開くたびに感情の高ぶりが増していく女の男を責め詰る言葉に苦い記憶を思い出したらしい。顔を引きつらせて乾いた笑いを浮かべるようになるまでそう時間はかからなかった。
yuno
DONE #曦澄ワンドロワンライ の『音』に参加しました。音というか韻です。江澄の字である江晩吟の音の響きが好きな藍曦臣のお話。お互いの名や字を褒め合ってます。大人な雰囲気を出したかった。終始ご機嫌な二人。【曦澄】耳に心地よく瞼の裏に鮮やかに「貴方の字が好きだ。晩吟」
江晩吟。音韻を噛みしめるように口にする。己の字をとても美しいもののようにこの人は言う。
「字面もすっきりしている。無駄がなくすらりとして美しい。まさに貴方のようだ」
「そうか?」
「うん。私は貴方を字で呼ぶのが好きだ。韻が美しい。呼ぶ声が耳に心地いい。自分の声だというのに不思議だね。貴方に字を贈った方は趣味が良い」
晩吟。晩吟。藍曦臣が繰り返し呼ぶ。柔らかな声だった。ゆったりと広がっていくような声。
ああ、確かに。呼ぶ声が心地良い。己の字がこんなにも広がりを持った音だったとは。
「貴方の字も良い響きをしている」
藍曦臣。曦臣。自分がこの人を呼ぶ時、以前は号を、今は専ら字で呼ぶ。閨では藍渙と呼ぶこともあるが。どちらも好きな響きだった。
1154江晩吟。音韻を噛みしめるように口にする。己の字をとても美しいもののようにこの人は言う。
「字面もすっきりしている。無駄がなくすらりとして美しい。まさに貴方のようだ」
「そうか?」
「うん。私は貴方を字で呼ぶのが好きだ。韻が美しい。呼ぶ声が耳に心地いい。自分の声だというのに不思議だね。貴方に字を贈った方は趣味が良い」
晩吟。晩吟。藍曦臣が繰り返し呼ぶ。柔らかな声だった。ゆったりと広がっていくような声。
ああ、確かに。呼ぶ声が心地良い。己の字がこんなにも広がりを持った音だったとは。
「貴方の字も良い響きをしている」
藍曦臣。曦臣。自分がこの人を呼ぶ時、以前は号を、今は専ら字で呼ぶ。閨では藍渙と呼ぶこともあるが。どちらも好きな響きだった。
pk_3630
DONE #曦澄ワンドロワンライ開催ありがとうございます。お題「音」お借りしました。
前世と現代の話です。前世での死の描写がありますが、ハピエンです。
音沢蕪君、危篤。
その知らせを受け、江澄は雲深不知処に急行した。
江澄が寒室に着いた頃にはすでに沢蕪君は意識がなく、そのまましばらくして身内や門弟に囲まれるなか息を引き取った。控えていた医師が脈を診てそっと首を横に振った瞬間、その場にいた者は皆涙した。
沢蕪君と称され、姑蘇藍氏だけでなく修真界を長年支え続けた偉大な仙師の死は覚悟していたここととはいえ、姑蘇藍氏の者達に大きな悲しみを残していった。
門弟だけでなく藍忘機や魏無羨も悲しみのままに泣いているなか、江澄だけが悲哀の世界から切り離されたように表情を変えなかった。息を引き取った沢蕪君を見つめながら、この後の葬儀のことや藍氏の新しい宗主就任について、江氏宗主である自分の役割などを考えていたのだ。
3515その知らせを受け、江澄は雲深不知処に急行した。
江澄が寒室に着いた頃にはすでに沢蕪君は意識がなく、そのまましばらくして身内や門弟に囲まれるなか息を引き取った。控えていた医師が脈を診てそっと首を横に振った瞬間、その場にいた者は皆涙した。
沢蕪君と称され、姑蘇藍氏だけでなく修真界を長年支え続けた偉大な仙師の死は覚悟していたここととはいえ、姑蘇藍氏の者達に大きな悲しみを残していった。
門弟だけでなく藍忘機や魏無羨も悲しみのままに泣いているなか、江澄だけが悲哀の世界から切り離されたように表情を変えなかった。息を引き取った沢蕪君を見つめながら、この後の葬儀のことや藍氏の新しい宗主就任について、江氏宗主である自分の役割などを考えていたのだ。