唯一の宣言 俺は果たして、何か怒らせる様なことを言ったのだろうか。こうして卓を挟み会話が出来ることに喜びを感じ、口にした直後から急に法正殿の眉が上がり睨みつけられてしまう。
「……貴方は本当に、出逢った頃から綺麗事で生きていますね……馬超殿」
解らん、見当が付かない。高校を卒業し進路を違え、離れることが多かった俺達が漸く共に過ごせる新居だ。この機会に薬指で光る白銀を掲げ、偽り無く伝えただけではないか。
「改めて言いますが、俺は徹底的な報復と報恩に生きる悪党なのはご存知でしょう」
肩先までの黒髪を揺らし、苛立った様な低音を響かせる。昔から変わらず、凛と美しい人だ。報いに生きている純真な人間と知ってはいても、本人や周りが悪党と呼ぶのは未だ理解出来ずにいた。
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