映画のエンドロールが流れ始めたところで、扶揺はそそくさとノートパソコンの画面を閉じた。南風に勧められて見てみたが、やたらうるさい映画だった。だが途中で止めるのも癪で、結局最後まで見てしまった。
大きく欠伸をしながらヘッドホンを外すと、映画の世界から突然現実の世界に戻る。だが、目の前の壁は自分の部屋の壁ではない。
扶揺のアパートの部屋のエアコンが突然動かなくなったのが数週間前。この暑さにエアコンなしの部屋ではよく眠れず、寝不足顔を慕情に見つかり、半ば強制的に彼の家に来るよう言われた。ホテルの部屋に泊まれと言うでもなく、自分の家に上げてくれたことに驚きつつも、感謝の気持ちしかなかった。
いや、正直に言えば、あのエアコンに感謝したいくらいだった。
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