幕間の楓恒⑪公共の場というものは総じて色々な者が使う場所である。丹恒が寝所代わりにしている資料室も公共の場であることには変わりはない。一つだけ一般的な場と違いがあるとすれば、いつだったかこの部屋に鍵がつくようになったことだろう。
これは丹楓が、二人で居るのだから鍵の一つはあった方が良いとパムに掛け合った結果である。丹恒としても、私的なことをしている時は鍵があっても良いとは思っていたがそれを言えば部屋を使えと反論されるだろうこともわかっていてパムには言えなかった。
現状、丹恒の兄のようなものと認識され部屋のない丹楓がパムに言ったからこそ資料室と言う場に鍵がつくようになったのだ。
鍵について思い返しながら、丹恒は見るも無残な姿になった資料室の鍵へ手を伸ばす。丹楓と部屋が壊れる程の喧嘩をしたわけでも、星がバットを振り回して壊れたわけでも、老朽化のせいでもない。
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