夜なのに外が明るい。それほどに大きな月がぽっかりと空に浮かんでいる。
「すごい月だねー」
独り言ともとれる感嘆に、隣りに佇む人は「そうだな」と短い同意を返す。月が綺麗ですね、なんて言い回しは有名すぎて、意味を知っているに違いないこの人には伝わりすぎるから言ってやらない。
窓を開けると秋の風が頬を撫でた。首から提げたスマホを空にかざす。
「写真か?」
「せっかくだからねー。上手に撮れたらSNSにでも上げようかなー」
画面越しに月を見上げる。四角く切り取られた夜空の中、輝くまあるい金色。
「ん…あれ?」
液晶に不意にノイズが走る。チカチカした点滅、動かしていないのにブレる画面、映された月は紅く色を変える。
「おっと…。こいつはまた俺のせいかもな」
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