せめてぬいぐるみは片付けろ「なぁ、ブラッド。本当にこれでいいのか?」
振り返ったアキラが、背後でリボンを結び終えた男に問う。
「待て、少し歪んでいる。……これで問題ないだろう」
満足そうな言葉と共に小さく吐かれた吐息に、思わずため息が落ちた。
番組の企画として、子供たちにぬいぐるみをプレゼントすることになったのはいいものの、何故自分がブラッドのぬいぐるみを抱えているのか。
大小様々なそれを落とさぬようリボンで縛られ、一際大きい恋人のぬいぐるみを抱え直す。一メートル以上あるせいで腕に沈む胴体を脇から持ち上げるようにして支えながら、もう一度振り返る。
「これで街中歩くの、流石に恥ずかしいンだけど」
「タワーから目的地までの様子も撮るらしい。親しみを感じられる良い企画だと思うが」
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