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    liliput

    MAIKINGついったで話が出たのでかつてバレンタイン用にこねていた書きかけを晒します。続きができるかどうかは未定です。
    うさちょむ前提うさしい、しいなさんが🐰さんちで一緒にチョコレートを作るだけの話です。多分……
     ちらりと腕時計に目を走らせて時間通りであることを確認すると、しいなは深呼吸した。そして目の前のマンションの扉を見上げる。クラシックな雰囲気の品の良い低層集合住宅、いわゆるヴィンテージマンションと呼ばれるタイプのそれは、大きな都立公園の傍らの閑静な住宅地に佇んでいた。向こう十数年は絶対に価格が下がらないだろうそれは、銀行員が選ぶ物件としていかにもそれらしい。
     しいなは意を決してインターフォンを押した。すぐに柔らかな男性の声がはい、と聞こえ、エントランスの扉が開く。建物の奥の角、彼の部屋の扉を叩くと、いつもと変わらぬ柔和な笑顔がしいなを出迎えた。
     宇佐美銭丸、しいなの恐ろしい上司。

     いらっしゃい、上がってくださいという声に従い、しいなは宇佐美の後に続いた。穏やかな冬の陽が射す室内は機能的ながら質の良い調度でまとめられ、すっきりと片付いている。一人暮らしにはやや広すぎるが、来客が頻繁にあるなら必要な広さなのかもしれない、という程度のゆったりとした間取りである。いかにも宇佐美の部屋、という印象だ。しいなは素早く室内の隅に目を走らせ、半ば職業的な癖で値踏みし、そして宇佐美らしい丁寧な資産維持に密かに感服した。宇佐美はそんなしいなの視線など全く気付かぬ態度でしいなをダイニングに通すと、どうぞ座ってくださいと言ってキッチンに立った。
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    ar_rn_3150

    MAIKING小説家の蟻生(32)
    大学生の凛(19)
    が同じアパートに住んでいて隣人だったらいいな〜!蟻生くんに煙草吸ってほしいな〜!という願望です

    猫飼いは煙草を吸わないべきですが、BLはファンタジーなので許してください
    小説家隣人パロ その男は、まるで風景でも見るかのように俺を一瞥して通り過ぎたあと、ぎょっとした顔をして振り返った。頭のてっぺんから爪先までぐっしょりと濡れて、古びて少し傾いたアパートの外廊下に座り込んでいる人間を見たら誰でも驚くだろう。驚かせて申し訳ない、と思った。
     しかしそいつはその後、何事もなかったかのようにドアノブに手をかけると手前に引き、その隙間に薄い体を滑り込ませると静かに扉を閉めて姿を消した。それで俺はやっと、そいつがアパートの左隣の部屋に住む人間だったことを知る。
     数ヶ月、前引っ越しの挨拶をするために訪ねた時は留守にしていたそいつの顔を、俺はこれまで一度も見たことがなかった。ドアに鍵をかけていないのか。不用心な奴だ。こんなボロアパートの鍵などあってないようなものだが、なるほど。鍵をかけなければ俺は今こんな状況に陥っていないわけだから、あいつのやり方も道理にあっているのかもしれないと、冷えた体でぼんやりと考えながら今日の災難について思い返していた。
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    siiba_n

    MAIKING※書きかけで未完結。2021年に書いていたものです※
    捏造100%/なんでも許せる人向け/流血注意

    魔法使いによる襲撃を受けた魔法舎で、賢者は瀕死の重傷を負ってしまう。
    『道連れにしますね、晶』
    そう言ってミスラに意識を奪われ、目が覚めた時に賢者は北の国の雪原にたった一人取り残されていて──
    終焉がそこにはあった#1〜301

     短い人生の中で、一番大きな事故といえば思いつく限りで家の階段から落ちたことだった。まだ俺がよたよたと足取りもおぼつかない赤子の頃、母親が少し目を離したすきにごろごろと転げ落ちたらしい。当然のように俺はその事故を覚えていないが、額にはその時に切ったという傷跡が今でもうっすらと残っている。五ミリほどの裂傷は肌に馴染んでいるため今では気にすることもないが、思い出話として母親は時折口にした。「貴方はとってもお転婆だったのよ」と。果たして、お転婆の使い方としてあっているかどうかは疑問をもつところではあったが。
     バンジージャンプもスカイダイビングもしたことのない、落下初心者の俺には難易度の高い紐なしバンジーダイビング中、このまま死んでしまうのだろうかと、そんな取り留めのない記憶を思い出していた。
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    snow

    MAIKINGP5R明主の三学期後を本気出して考えた
    なんねんたっても これで終わるんだ、と一種満足感さえ得ていた意識がまた形をとる。自分が今どこにいるのか一瞬わからなくなる感覚。あのクソ忌々しく押しつけがましい『現実』とやらにまた戻ってしまったのか。けれど、それにしてはあたりの様子がおかしかった。人の気配がわかる半個室。目の前にはパソコンのモニターが光っている。どこかのネットカフェだろうここは、俺自身ではなかなか選ばないだろう場所だった。今度こそ誰かの策略ではないだろう。明智吾郎がここに存在させられる意味が分からないからだ。
    「たしか、あれから……」
     一月からこっち、悪夢みたいな現実では定かでなかった記憶。あの男が知らなかったのだろうそれがじわじわと蘇ってくる。
     獅堂のパレスで最後に言い残された再戦の約束。認めたくはないが、そのおかげでぎりぎり生還できたようなものだった。自分と同じ顔をした腹の立つ人形をぶっ殺して、あとはなりふり構わず全力で逃げ、しばらくパレスのセーフルームで体を休めて、現実へと戻る。獅堂の手がもう回ってしまっているだろうから、家に帰るわけにはいかなかった。身の安全を確保しようにも『改心』が果たされるまでは警察さえ危険だ。ありったけの現金をさっとかき集め、ほとぼりが冷めるまでネットカフェを転々として。そうして、今へと至る。
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