作家
たまごやき@推し活
PAST現パロアンぐだ♀、転生後童話作家とぐだち2020.6
たった三文字の一悶着 ほぼ書庫と化した自室に用意されたささやかなソファとテーブル。安いコーヒーと菓子を広げれば手軽な休息セットのできあがり。どこからともなくやってきた彼女はついさっきまで喧しく囀っていたが今は夢の中。こうも無防備に眠るものなのか。今俺の膝を陣取っている猫の方がよほど警戒心が強いだろう。
単純に無防備さは『相手による』のだろうと思うが、それはそれで腹が立つ。いくら俺がこいつの趣味嗜好性癖に刺さらないのだとしても、目の前で眠って安全かどうかくらいは考えてほしいものだ。
「すー……」
「……間抜け面」
まぁ、考えた上でこうなのだろう。安全圏内、オールグリーン。実際、日常的に目の前でこうも無防備に眠りこける彼女の髪の毛、爪の一本たりとも触れたことがない。撫でをせがんでくる猫に応えてやりながら、ため息をつく。猫であればこんな風に触れるのは造作もない。ごろごろと喉を鳴らして機嫌が良さそうな様を見ながら、懐かれているのは分かっていても人と動物ではこうも違うかと思う。
1714単純に無防備さは『相手による』のだろうと思うが、それはそれで腹が立つ。いくら俺がこいつの趣味嗜好性癖に刺さらないのだとしても、目の前で眠って安全かどうかくらいは考えてほしいものだ。
「すー……」
「……間抜け面」
まぁ、考えた上でこうなのだろう。安全圏内、オールグリーン。実際、日常的に目の前でこうも無防備に眠りこける彼女の髪の毛、爪の一本たりとも触れたことがない。撫でをせがんでくる猫に応えてやりながら、ため息をつく。猫であればこんな風に触れるのは造作もない。ごろごろと喉を鳴らして機嫌が良さそうな様を見ながら、懐かれているのは分かっていても人と動物ではこうも違うかと思う。
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PROGRESS大正ロマンパロアンぐだ♀、書生童話作家×お嬢さんのぐだち2020.8
機密保持特別契約「失礼いたします。夕餉の支度が整いましたよ」
「もうそんな時間か……ありがとう、お嬢さん」
「いえ……冷める前にいらしてくださいな」
地方の権力者とも言える藤丸家は今、一人の書生を受け入れている。すっと背筋を伸ばすと父の身長など悠々と超えてしまうような長身、細くて浮世離れした体格。少し話せば穏やかで知性があるとすぐに分かる、頭の良いお方だ。
学生として勉学に励むだけではなく、書生として家の雑務を手伝ってくれている。それがここに居候する条件なのだから、仕事のようなものではある。けれど、物腰は丁寧なのにどこかよそよそしい彼の態度はとっつきづらくて、同じ家で過ごしているのに何だか息が詰まる。
「ふう……もう長くこの家にいるのに、話しかけづらいなぁ」
3291「もうそんな時間か……ありがとう、お嬢さん」
「いえ……冷める前にいらしてくださいな」
地方の権力者とも言える藤丸家は今、一人の書生を受け入れている。すっと背筋を伸ばすと父の身長など悠々と超えてしまうような長身、細くて浮世離れした体格。少し話せば穏やかで知性があるとすぐに分かる、頭の良いお方だ。
学生として勉学に励むだけではなく、書生として家の雑務を手伝ってくれている。それがここに居候する条件なのだから、仕事のようなものではある。けれど、物腰は丁寧なのにどこかよそよそしい彼の態度はとっつきづらくて、同じ家で過ごしているのに何だか息が詰まる。
「ふう……もう長くこの家にいるのに、話しかけづらいなぁ」
たまごやき@推し活
PROGRESS現パロアンぐだ♀、となりんちの童話作家2022.10
閉まるドアにご注意ください 夕方、ちょっと遅めの講義の帰りに電車に乗る。とてつもない人の波に呑まれながら、当然席に座れるわけもなく、押し潰されそうになりながら家へと帰る。
(帰宅ラッシュ、いつもは時間被らないのに)
家はまだ遠い。住まいは大学から少し遠いけど綺麗なマンション。一限からだとちょっと辛い時もあるけど、騒音もなくて気に入っている。
ずっと車内の片隅で吊り革にすら掴まれずに脚を突っ張っている。どうにか扉のすぐ近くに立つことができたからまだ耐えられそう。
「…………?」
まだ人混みの多い車内でふと背後に強い違和感。混んでいるからだろうか、背後に立っている人が妙に近く感じる。ずっと続けば気になるのは当然だ。……満員電車ってこういうもの?
1401(帰宅ラッシュ、いつもは時間被らないのに)
家はまだ遠い。住まいは大学から少し遠いけど綺麗なマンション。一限からだとちょっと辛い時もあるけど、騒音もなくて気に入っている。
ずっと車内の片隅で吊り革にすら掴まれずに脚を突っ張っている。どうにか扉のすぐ近くに立つことができたからまだ耐えられそう。
「…………?」
まだ人混みの多い車内でふと背後に強い違和感。混んでいるからだろうか、背後に立っている人が妙に近く感じる。ずっと続けば気になるのは当然だ。……満員電車ってこういうもの?
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PROGRESS現パロアンぐだ♀、童話作家(猫)×社会人ぐだち2023.2
秋の雨が降れば 最近は暑かった夏もようやく終わり、過ごしやすい気温になってきた。秋の長雨の中、少し冷えるような感覚。あまり湿度が高くなると髪がうねって困る。
家への近道のために公園の中を横切る。早く帰ってシャワーを浴びたい。心の中でああだこうだと雨に文句を言いながら歩く。
……ふと視界に入る、公園のベンチ。誰かが寝転がっている。
公園のベンチに寝転がる人間とは大体目を合わせない方がいい。今までの人生で学習したことだ。
パーカー、スウェット、サンダル。一人暮らしの人間が深夜適当にコンビニに行くときの格好。けれど、明らかに小柄な体躯が見えたものだから。何か、そう……例えば警察に通報が必要な事態なのかと思って目を逸らすのが遅れた。
804家への近道のために公園の中を横切る。早く帰ってシャワーを浴びたい。心の中でああだこうだと雨に文句を言いながら歩く。
……ふと視界に入る、公園のベンチ。誰かが寝転がっている。
公園のベンチに寝転がる人間とは大体目を合わせない方がいい。今までの人生で学習したことだ。
パーカー、スウェット、サンダル。一人暮らしの人間が深夜適当にコンビニに行くときの格好。けれど、明らかに小柄な体躯が見えたものだから。何か、そう……例えば警察に通報が必要な事態なのかと思って目を逸らすのが遅れた。
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PASTカルデアアンぐだ♀、付き合ってる時空童話作家すっぴん派なんじゃないかと勝手に思ってる時空
2019.12
紅を差すのは頬だけに 己の美しさに自信を持つサーヴァントが多々いるこのカルデアでは、質の良い化粧品が豊富に揃う。わたしではさっぱりわからない何とかのブランドのファンデがどうのこうの、アイシャドウが、ルージュが。そんな会話を聞くことも珍しくない。昼食後の食堂で賑やかな話題が広がる。わたしにはあんまり縁のない、アイテム。
「マスター、ちょっと顔を貸してほしいのだけれど」
……わたしは一体どこの校舎裏に呼び出されるんだろう。
勝手にベッドの上でくつろいでいると、部屋の主がくたびれた顔で帰ってきた。こちらには目もくれず、ふらふらとベッドに倒れ込んでくる。
「皮膚が息してない……」
「皮膚呼吸など元々していないだろうが」
1477「マスター、ちょっと顔を貸してほしいのだけれど」
……わたしは一体どこの校舎裏に呼び出されるんだろう。
勝手にベッドの上でくつろいでいると、部屋の主がくたびれた顔で帰ってきた。こちらには目もくれず、ふらふらとベッドに倒れ込んでくる。
「皮膚が息してない……」
「皮膚呼吸など元々していないだろうが」
たまごやき@推し活
PROGRESS異世界パロアンぐだ♀、家庭教師童話作家×お嬢様のぐだち私の性癖「ピアノが弾ける男」「家庭教師」「世間知らずのお嬢様」全部無造作すし詰め
多様な世界観への理解に造詣が広い人向け、ピアノが弾ける男はいつの時代も魅力五割増し。
レンアイケッコン、はじめました! 貴族は生まれた時から結婚相手が決まっている。
わたしの婚姻は三ヶ月後、式の打ち合わせまでは顔を合わせることもない。「お嬢様」はそんな環境に疑問を持たないように、世間知らずに育てられる。テレビ、本、服…勉強ではなく娯楽に当てはまる類の全てに触れないようにして結婚までを過ごす。まるで生かされているだけの人形。それが昔から気に入らなかった。
外へ出たい。例えばそう、顔も知らない婚約者じゃなくて好きな人と結婚できる空間に私も生きたい。そんな不満をぶつけるようにピアノの鍵盤を叩く。
「下手くそ」
人を小馬鹿にする態度がサマになる私の家庭教師。こんな悪い顔が格好良いで済むなんてずるい大人だ。
2280わたしの婚姻は三ヶ月後、式の打ち合わせまでは顔を合わせることもない。「お嬢様」はそんな環境に疑問を持たないように、世間知らずに育てられる。テレビ、本、服…勉強ではなく娯楽に当てはまる類の全てに触れないようにして結婚までを過ごす。まるで生かされているだけの人形。それが昔から気に入らなかった。
外へ出たい。例えばそう、顔も知らない婚約者じゃなくて好きな人と結婚できる空間に私も生きたい。そんな不満をぶつけるようにピアノの鍵盤を叩く。
「下手くそ」
人を小馬鹿にする態度がサマになる私の家庭教師。こんな悪い顔が格好良いで済むなんてずるい大人だ。
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PROGRESS現パロアンぐだ♀、ブラックリーマン童話作家×お惣菜屋さんのぐだち2020.9
お惣菜のふじまるの彼女 ブラック企業。
劣悪な労働条件や就業環境の中で従業員に過重な負担を強いる企業のこと。無論、長時間労働や過剰なノルマの常態化など日常茶飯事で云々以下省略。ーー平たく言えば、それは今俺が置かれている環境のことを言う。
やれどもやれども終わらない仕事の山、残業どころか朝も始発で電車に揺られて、タイムカードだけが定時を刻んでいる。俺は企業に勤めて金を稼ぎながら執筆をしているが、こんな企業では執筆は滞るばかり。執筆が軌道に乗ったら会社を辞めてそれ一本で暮らしたい。とは言えまず先立つものがなければここを辞めるわけにもいかない、負のスパイラル。日々の食事ですらままならない、第一こんな都会じゃヘタクソな自炊よりもコンビニのカップ麺の方が安上がりだ。
7834劣悪な労働条件や就業環境の中で従業員に過重な負担を強いる企業のこと。無論、長時間労働や過剰なノルマの常態化など日常茶飯事で云々以下省略。ーー平たく言えば、それは今俺が置かれている環境のことを言う。
やれどもやれども終わらない仕事の山、残業どころか朝も始発で電車に揺られて、タイムカードだけが定時を刻んでいる。俺は企業に勤めて金を稼ぎながら執筆をしているが、こんな企業では執筆は滞るばかり。執筆が軌道に乗ったら会社を辞めてそれ一本で暮らしたい。とは言えまず先立つものがなければここを辞めるわけにもいかない、負のスパイラル。日々の食事ですらままならない、第一こんな都会じゃヘタクソな自炊よりもコンビニのカップ麺の方が安上がりだ。
たまごやき@推し活
PAST現パロアンぐだ♀、学生童話作家と親戚のぐだち2020.7
人生一回目のモテ期について「彼女はいないの? それなら紹介したい人がいてね……」
「結構だ。見合いをするつもりはない」
またコレか。親戚の集まりなんぞ、寿司が出るからといって出席するものではない。レポートで忙しいと適当にごまかしてしまえば良かった。そもそも俺はまだ結婚に焦るような歳じゃあない。
さらに俺には都合の悪いことに、無駄に多い親戚の中には歳の離れた小さな子供が多いのだ。近寄っては来ないものの、遠くからそれとなく観察されるのは気に食わない。ついでに遠くからでも喧しく泣き叫ぶ子供の多さときたら、もう勘弁してくれと言いたくなる。
夏の暑さと窮屈なスーツのせいもあり、苛つきに襲われる。早く終わってくれ。一人暮らしを初めて正解だった。自分の家に一人の方がどれほど過ごしやすいか。
1522「結構だ。見合いをするつもりはない」
またコレか。親戚の集まりなんぞ、寿司が出るからといって出席するものではない。レポートで忙しいと適当にごまかしてしまえば良かった。そもそも俺はまだ結婚に焦るような歳じゃあない。
さらに俺には都合の悪いことに、無駄に多い親戚の中には歳の離れた小さな子供が多いのだ。近寄っては来ないものの、遠くからそれとなく観察されるのは気に食わない。ついでに遠くからでも喧しく泣き叫ぶ子供の多さときたら、もう勘弁してくれと言いたくなる。
夏の暑さと窮屈なスーツのせいもあり、苛つきに襲われる。早く終わってくれ。一人暮らしを初めて正解だった。自分の家に一人の方がどれほど過ごしやすいか。
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PROGRESS現パロアンぐだ♀、歳下童話作家×歳上ぐだち転生譚2050.4
歳上の男の子 高校の正門前には少し不似合いな、門より低い背丈。私の可愛い弟分はいつも放課後になるとそこで待っている。
「また来てたの? 遅くなるかもしれな言っていったのに」
「俺がここに来たらお前は早く帰れるだろう?」
今ではすっかり校門の前で待つ彼の姿は名物になってしまった。有名になったせいで芋づる式に私も目立ってしまう。校門の前に青い髪を見かけた人たちがわたしに声をかけてくるようになってしまった。この将来有望そうな可愛らしい見た目の彼は学園の女の子達に気に入られているのだ。「あんまり待たせたら可哀想だよ」だなんて何回聞いたか分からない。
「もう、こんなに毎日来たら私がショタコンだと思われるでしょ!」
「何を言ってる。俺の方が実質年上だ。しかも五歳しか離れてない! 同じ、この世界に生きる人間だ」
3355「また来てたの? 遅くなるかもしれな言っていったのに」
「俺がここに来たらお前は早く帰れるだろう?」
今ではすっかり校門の前で待つ彼の姿は名物になってしまった。有名になったせいで芋づる式に私も目立ってしまう。校門の前に青い髪を見かけた人たちがわたしに声をかけてくるようになってしまった。この将来有望そうな可愛らしい見た目の彼は学園の女の子達に気に入られているのだ。「あんまり待たせたら可哀想だよ」だなんて何回聞いたか分からない。
「もう、こんなに毎日来たら私がショタコンだと思われるでしょ!」
「何を言ってる。俺の方が実質年上だ。しかも五歳しか離れてない! 同じ、この世界に生きる人間だ」
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PASTカルデアアンぐだ♀、童話作家分身事変2020.9
天使と悪魔も瓜二つ「立香、俺は明日出撃はしないぞ。この部屋のベッドを借りて昼までのんびりする。構わないだろう?」
「馬鹿なことを言うな! お前にはあてがわれた部屋がある。マスター、お前もこいつに乗せられるなよ」
「男と同衾する趣味はない! あの部屋にはベッドは一つだけだろう。ただでさえ狭いベッドですし詰めになれというのか?」
「そんなに嫌ならお前はソファでも使え! 大体この部屋にもベッドは一つだけだ、マスターを抱き枕にでもするつもりか」
右から、左から、喧しく同じ声が響いている。
正確に言うと声の調子は右からの方が少し甘えた感じで、左からの方が少し事務的な感じだ。わたしを真ん中において言い合いをしているのは、もとは一人のサーヴァント……。
4585「馬鹿なことを言うな! お前にはあてがわれた部屋がある。マスター、お前もこいつに乗せられるなよ」
「男と同衾する趣味はない! あの部屋にはベッドは一つだけだろう。ただでさえ狭いベッドですし詰めになれというのか?」
「そんなに嫌ならお前はソファでも使え! 大体この部屋にもベッドは一つだけだ、マスターを抱き枕にでもするつもりか」
右から、左から、喧しく同じ声が響いている。
正確に言うと声の調子は右からの方が少し甘えた感じで、左からの方が少し事務的な感じだ。わたしを真ん中において言い合いをしているのは、もとは一人のサーヴァント……。
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PASTカルデアアンぐだ♀童話作家モーション改修と物語の使役のこと考えてる
夢の灯りを消さないで サーヴァントの自分が使える力は生前に書いた物語に由来する。生き物に限らない。――ちっぽけなマッチ一本とて、相手を惑わすアイテムだ。
「しつこい、俺は魔術師ではないと言っているだろう」
「そう言わずに! 私にも効くのか知りたいの」
彼女がせがんでいるのは『マッチ』一本の奇跡。都合の良い幻覚を見せる小さな灯り。作家に依頼するものではないだろう。だがしつこく頼まれると、さっさと願いを叶えて終わらせたい気持ちの方が強い。
「……仕方のないやつだ」
それにいざ彼女にねだられるとそう悪い気はしない。魔力を込めたマッチを一本、彼女の前で取り出す。
「何が見えるのかな……豪華な料理とか?」
「灯りはお前の心を映す鏡だ。ただ欲望を忠実に反映するだろうよ。叶わない夢を目の前に焼き付けるだけだ」
1807「しつこい、俺は魔術師ではないと言っているだろう」
「そう言わずに! 私にも効くのか知りたいの」
彼女がせがんでいるのは『マッチ』一本の奇跡。都合の良い幻覚を見せる小さな灯り。作家に依頼するものではないだろう。だがしつこく頼まれると、さっさと願いを叶えて終わらせたい気持ちの方が強い。
「……仕方のないやつだ」
それにいざ彼女にねだられるとそう悪い気はしない。魔力を込めたマッチを一本、彼女の前で取り出す。
「何が見えるのかな……豪華な料理とか?」
「灯りはお前の心を映す鏡だ。ただ欲望を忠実に反映するだろうよ。叶わない夢を目の前に焼き付けるだけだ」
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PAST現パロアンぐだ♀、付き合ってる時空冬の風物詩中華まんの半分こ
多分居候童話作家×実家暮らし(親は今海外勤務)ぐだち
2020.1
来年もきっと手袋を買わない コンビニの中華まんは冬になると無性に食べたくなって、つい買ってしまう。
でも夕飯の前だから買うのは一個だけ。
「また買ったのか?そろそろ店員に顔を覚えられる。面倒だから店を変えるぞ」
「じゃあ、明日は駅の向こう側のコンビニにしよう」
「わざわざ遠回りするのか?……まぁいい。いつもありがとうございます、なんて聞かなくて済むからな」
わたしにはよくわからないけど、彼はコンビニの店員に顔を覚えられるのが嫌らしい。
買った中華まんを半分こして食べながら歩く。でも半分にした中華まんはすぐになくなってしまって、温められていた手もすぐ冷えてしまう。
「最近寒くなってきたね。手が冷たくなっちゃった」
「こんなに冷えるのに手袋を買っておかないお前が悪い」
839でも夕飯の前だから買うのは一個だけ。
「また買ったのか?そろそろ店員に顔を覚えられる。面倒だから店を変えるぞ」
「じゃあ、明日は駅の向こう側のコンビニにしよう」
「わざわざ遠回りするのか?……まぁいい。いつもありがとうございます、なんて聞かなくて済むからな」
わたしにはよくわからないけど、彼はコンビニの店員に顔を覚えられるのが嫌らしい。
買った中華まんを半分こして食べながら歩く。でも半分にした中華まんはすぐになくなってしまって、温められていた手もすぐ冷えてしまう。
「最近寒くなってきたね。手が冷たくなっちゃった」
「こんなに冷えるのに手袋を買っておかないお前が悪い」
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PAST現パロアンぐだ♀、健康ランド常連童話作家×バイトのぐだちこの冬私の脳内で発売するはずの健康ランド乙女ゲーの話
みんなの好感度を教えてくれるお助けキャラの童話作家、
全員の√をクリアしないと童話作家√は出現しない
遅れてやってくる真打隠し攻略キャラ童話作家
2020.1
すぺしゃる☆りらくぜーしょん――恋の温泉ハプニング――「採用だ!この大アマゾネス温泉物語でイニシアティブを握り続けろ!」
ここは大アマゾネス温泉物語……またの名を、健康ランドとも言う。
人手不足だか何だかですぐに採用が決まったアルバイト。バイトを始めてすぐに知識として叩き込まれたのは数名の常連客についてだった。
「一週間のうち半分くらいはここにきてる客なんで、顔とか覚えておいた方がいいッスよ」
先輩についてまわって仕事を覚えるとき、そう言われて覚えようとした顔の中でも一際気になる人物。
(あっ、今日もあの人来てる)
青い髪、わたしよりも小さな背丈の小柄な人影。先輩によると、時々零時を越して朝までここにいることもあるみたいだ。
零時を過ぎて新しく料金を回収するときに保護者確認をする必要はないと念入りに先輩に言われている。……何かトラブルでもあったんだろうか。
2463ここは大アマゾネス温泉物語……またの名を、健康ランドとも言う。
人手不足だか何だかですぐに採用が決まったアルバイト。バイトを始めてすぐに知識として叩き込まれたのは数名の常連客についてだった。
「一週間のうち半分くらいはここにきてる客なんで、顔とか覚えておいた方がいいッスよ」
先輩についてまわって仕事を覚えるとき、そう言われて覚えようとした顔の中でも一際気になる人物。
(あっ、今日もあの人来てる)
青い髪、わたしよりも小さな背丈の小柄な人影。先輩によると、時々零時を越して朝までここにいることもあるみたいだ。
零時を過ぎて新しく料金を回収するときに保護者確認をする必要はないと念入りに先輩に言われている。……何かトラブルでもあったんだろうか。
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PASTカルデアアンぐだ♀、恒常童話作家と青年実験実装時空2022.6
あともう一枚、もう一分 カルデアに、二人目のハンス・クリスチャン・アンデルセンが召喚された。
微小特異点で縁を結んだことがきっかけとなったのだろうか。召喚された当人はわたしと会った記憶など持っていなかった。
彼とはじめまして、これからよろしくと挨拶を交わして数日。カルデアではちょっとした問題が起きていた。
自室でのんびり休んでいるところに付き合いの長い方のアンデルセンがやってきた。いつものことだ。気まぐれな猫のように勝手にわたしのベッドに横になってくつろぎ始める。
ところが、機嫌の良かった彼がテーブルの上を見た途端に雰囲気を変えた。目線の先にはクッキーの缶。
「……これはどうしたんだ、マスター」
「あぁ、それ? それはもう一人のアンデルセンがくれたやつだよ。すごく美味しいの」
2514微小特異点で縁を結んだことがきっかけとなったのだろうか。召喚された当人はわたしと会った記憶など持っていなかった。
彼とはじめまして、これからよろしくと挨拶を交わして数日。カルデアではちょっとした問題が起きていた。
自室でのんびり休んでいるところに付き合いの長い方のアンデルセンがやってきた。いつものことだ。気まぐれな猫のように勝手にわたしのベッドに横になってくつろぎ始める。
ところが、機嫌の良かった彼がテーブルの上を見た途端に雰囲気を変えた。目線の先にはクッキーの缶。
「……これはどうしたんだ、マスター」
「あぁ、それ? それはもう一人のアンデルセンがくれたやつだよ。すごく美味しいの」
たまごやき@推し活
PROGRESSカルデア時空アンぐだ♀、霊基調整童話作家(大)×マスターぐだちの特異点攻略疑似夫婦生活2022.3
模倣家族集団幻想〜藤丸家〜「アンデルセン、潜入チームを頼めるかな?」
声をかけられたのは木陰で休息をとっていた時だった。
俺達は特異点の問題を解決するため、一軒家に潜入することになった。サーヴァントであるのを偽り、あたかも生身の人間が暮らしているように装う案。
マスターを中心に、ここに越してきた普通の家族と見せかけて現地の人間に怪しまれないように振る舞う。外に偵察や調査に出る別働隊とは別に情報をまとめて対策を練るチームを作ることになったのだ。
一時的ではあるもののマスターの擬似的な家族として街への潜入を頼まれるのは、そう体験することのない貴重なサンプルケースだろう。
「仕方ない、別働隊として外で肉体労働をさせられるよりはマシだ、引き受けてやる」
3030声をかけられたのは木陰で休息をとっていた時だった。
俺達は特異点の問題を解決するため、一軒家に潜入することになった。サーヴァントであるのを偽り、あたかも生身の人間が暮らしているように装う案。
マスターを中心に、ここに越してきた普通の家族と見せかけて現地の人間に怪しまれないように振る舞う。外に偵察や調査に出る別働隊とは別に情報をまとめて対策を練るチームを作ることになったのだ。
一時的ではあるもののマスターの擬似的な家族として街への潜入を頼まれるのは、そう体験することのない貴重なサンプルケースだろう。
「仕方ない、別働隊として外で肉体労働をさせられるよりはマシだ、引き受けてやる」
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PAST現パロアンぐだ♀、竹中先生童話作家×学生ぐだち同居生活2021.2
おはようからおやすみまでの独占権「――なら、僕のところに住めばいいだろう」
提案は疾しい打算よりも先に、彼女の生活を保護するために口に出したのだと一言だけ言い訳をしたい。
まだ雪も降り止まない寒い冬のある日。年頃の女がひとり、僕のところに転がり込んできたのはつい最近のことだ。
「アンデルセン、これから洗濯するから洗濯物全部出してね」
「君の仕事は料理と掃除だけだと何度も言っているだろう。洗濯は担当の範囲外だ」
「えっ、でも一緒に洗った方が早いよ」
「いいから。自分の分だけ勝手に洗いなさい」
少し不満そうに諦める彼女を見送る。
ああそういえば部屋の洗濯カゴの中身が増えてきたなと思い出し、それはまぁ明日の夜にでも洗濯すればいいだろうと思い直す。
1535提案は疾しい打算よりも先に、彼女の生活を保護するために口に出したのだと一言だけ言い訳をしたい。
まだ雪も降り止まない寒い冬のある日。年頃の女がひとり、僕のところに転がり込んできたのはつい最近のことだ。
「アンデルセン、これから洗濯するから洗濯物全部出してね」
「君の仕事は料理と掃除だけだと何度も言っているだろう。洗濯は担当の範囲外だ」
「えっ、でも一緒に洗った方が早いよ」
「いいから。自分の分だけ勝手に洗いなさい」
少し不満そうに諦める彼女を見送る。
ああそういえば部屋の洗濯カゴの中身が増えてきたなと思い出し、それはまぁ明日の夜にでも洗濯すればいいだろうと思い直す。
たまごやき@推し活
PASTカルデアアンぐだ♀、付き合ってる時空ぐいぐいきたりこなかったりする童話作家の手指の色香について考えてる
2021.5
水面下の恋人らしさ「アンデルセンと手を繋ぎたい」
「やめておけ。引率の保護者になりたいのか?」
「引率って……恋人なのに!」
そっけない。部屋に二人きり、隣に座っている今しかないと思ったのに。
「実状はどうあれ世間の評価ではせいぜい良くて姉弟といったところだ」
「評価とか別に気にしないのに」
彼は普段、「批評は飯のタネ」とか言ってるくせにこんな時ばかり世間体の話をするのだ。
「馬鹿を言うな。少しは気にしろ」
「脱稿後に脱ぎ散らかす人に言われても」
「お前、今日はやけにこだわるな」
「だって! あの、わたし達付き合い始めて結構、長くなるし……」
お付き合いを始めて三ヶ月以上経っている。そんなに経てば色々、少なくとも手を繋ぐくらいみんなする。……多分そうに違いないのだ。
1594「やめておけ。引率の保護者になりたいのか?」
「引率って……恋人なのに!」
そっけない。部屋に二人きり、隣に座っている今しかないと思ったのに。
「実状はどうあれ世間の評価ではせいぜい良くて姉弟といったところだ」
「評価とか別に気にしないのに」
彼は普段、「批評は飯のタネ」とか言ってるくせにこんな時ばかり世間体の話をするのだ。
「馬鹿を言うな。少しは気にしろ」
「脱稿後に脱ぎ散らかす人に言われても」
「お前、今日はやけにこだわるな」
「だって! あの、わたし達付き合い始めて結構、長くなるし……」
お付き合いを始めて三ヶ月以上経っている。そんなに経てば色々、少なくとも手を繋ぐくらいみんなする。……多分そうに違いないのだ。
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PROGRESS異世界パロアンぐだ♀、童話作家(神)と生贄ぐだちの生活2021.10
神のまします社にて ――農作物が不作の年、雨乞いの儀式も豊作の儀式も効果が出ない年。
そんな時、周囲の村の中から若い娘が神様の生贄に捧げられる。生贄が神様に気に入られれば来年は豊かな暮らしが約束されるのだ。
辺境の村にはよくある習慣。今回はついにこの村から生贄を出すことになったらしい。
この村の子どもはわたしと、もう一人しかいないのだ。今回白羽の矢が立ったのは友達の方だった。……けれどわたしは大事な友達が神様のところに連れて行かれるのが嫌で、生贄に志願した。
「私の代わりに行くだなんて先輩、そんな……!」
「大丈夫だよ、きっと神様を説得して帰ってくるからね。豊作になるようにちゃんとお願いもするし」
彼女を安心させるのが半分、残りの半分は何とかやらなければ、という気持ちだった。
2574そんな時、周囲の村の中から若い娘が神様の生贄に捧げられる。生贄が神様に気に入られれば来年は豊かな暮らしが約束されるのだ。
辺境の村にはよくある習慣。今回はついにこの村から生贄を出すことになったらしい。
この村の子どもはわたしと、もう一人しかいないのだ。今回白羽の矢が立ったのは友達の方だった。……けれどわたしは大事な友達が神様のところに連れて行かれるのが嫌で、生贄に志願した。
「私の代わりに行くだなんて先輩、そんな……!」
「大丈夫だよ、きっと神様を説得して帰ってくるからね。豊作になるようにちゃんとお願いもするし」
彼女を安心させるのが半分、残りの半分は何とかやらなければ、という気持ちだった。
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PROGRESS異世界パロアンぐだ♀、ミニマム童話作家(妖)とぐだち2020.11
妖怪クッキー攫い 綺麗な一軒家が安い価格で売られていたら事故物件かもしれない。それでも月々の支払いが賃貸マンションより安いと分かってしまって、両親が契約をした。安くて、新しくて広めの自慢の我が家。駅から近くて、それでいて閑静な住宅街の一角、藤丸家。引越して二週間……どうもこの家には、『何か』が住んでいる。
家には私しかいないはずの時間に、上の階から物音がするのだ。キッチンの食べ物が気がつくと減っている。
その『何か』は明らかに生き物だ。曰く付きの物件の中でも幽霊なんかよりずっと怖い。……ただのネズミかもしれないけど。
ネズミを捕獲するための罠を仕掛けても、罠を避けるようにして食べ物を取られてしまう。毒の混ざった餌は放置される。ネズミだとしたらかなり賢い。姿を一度も見せたことのない謎の賢い生き物がこの家のどこかにいる。両親に言っても、気のせいだろうと取り合ってくれない。2人は不思議な物音も、減っているキッチンの食べ物にも何故だか気がついていないのだ。……私はと言うと、だんだんとこの謎の生き物に対する恐怖や不信感よりも好奇心が湧いてきて。
1888家には私しかいないはずの時間に、上の階から物音がするのだ。キッチンの食べ物が気がつくと減っている。
その『何か』は明らかに生き物だ。曰く付きの物件の中でも幽霊なんかよりずっと怖い。……ただのネズミかもしれないけど。
ネズミを捕獲するための罠を仕掛けても、罠を避けるようにして食べ物を取られてしまう。毒の混ざった餌は放置される。ネズミだとしたらかなり賢い。姿を一度も見せたことのない謎の賢い生き物がこの家のどこかにいる。両親に言っても、気のせいだろうと取り合ってくれない。2人は不思議な物音も、減っているキッチンの食べ物にも何故だか気がついていないのだ。……私はと言うと、だんだんとこの謎の生き物に対する恐怖や不信感よりも好奇心が湧いてきて。
9same_TRPG
DONECoCTRPG「旅館の捕食者」探索者名前:馬坂 鹿之助
特徴:INT8のカネモチ・スランプ中のホラー作家
入れたかった要素:「靴紐が縦」「横シマ柄に縦シマ柄とか、タンクトップ+毛皮みたいな絶望的センス」「個性的なTシャツ(ロケット噴射するロケット鉛筆)」「常に録音している」「ひとめで馬鹿とわかる馬鹿」
初の高ロストシナリオ、幼馴染ふたりと頑張って生き残ってきます!!
33chop
TRAININGここ最近の、火アリマンガ詰め合わせです。デジタルお絵描きの自主練で、ちまちま描いています。
大好きな火アリ作家さんのファンアートも混じってます。
ミステリ復活楽しいです。 10
hiyoko_2piyo
DOODLEおう恋愛へっぽこ達、今日も元気に顔赤らめてな!登場:カインさん(お借りしました)、セレネ、ちょいと傭兵月の子(お借りしました)、作家、助手ちゃんと魂の助手駄犬も借りました!オチなんぞない 3768
照清怜
DOODLE其实我也是毛球⭕️单人向乙女
⭕️作者编辑pa
⭕️作家Ike×编辑你
⭕️有同期客串
【Ike乙女】1、
Luxiem咖啡厅内,作家Ike Eveland的新书签售会正如约举办。
你拿着签售会门票,走了进去。
2、
Ike Eveland。
小说界冉冉升起的一颗新星,凭借着中篇小说一炮而红,后出版了、《Lolita》等作品。
本人以瑞典人的慵懒为借口,作品出的慢,但是每一部都值得等待,无论是恐怖类还是恋爱类,他的每部作品都能戳到人的心坎里。
虽是作家,但是网络冲浪速度不亚于任何人,还是个深度二次元。
会经常回复粉丝留言,曾经因为有粉丝送了Miku的手办作为签售会礼物,激动的当下给了那位粉丝五本亲签+一本特签+哼歌两句,甚至因此#Ike Miku#这个话题都冲上了热搜。
4710Luxiem咖啡厅内,作家Ike Eveland的新书签售会正如约举办。
你拿着签售会门票,走了进去。
2、
Ike Eveland。
小说界冉冉升起的一颗新星,凭借着中篇小说一炮而红,后出版了、《Lolita》等作品。
本人以瑞典人的慵懒为借口,作品出的慢,但是每一部都值得等待,无论是恐怖类还是恋爱类,他的每部作品都能戳到人的心坎里。
虽是作家,但是网络冲浪速度不亚于任何人,还是个深度二次元。
会经常回复粉丝留言,曾经因为有粉丝送了Miku的手办作为签售会礼物,激动的当下给了那位粉丝五本亲签+一本特签+哼歌两句,甚至因此#Ike Miku#这个话题都冲上了热搜。
なまたまご
TRAININGラノベ作家大倶利伽羅さんと家事代行にょたんばちゃん⑦ドキドキ一緒にお風呂編前半です!ちょっとだけ雰囲気えっち。注:大倶利伽羅さんがダサい
この話はますおさん考案の設定を元にした三次創作です。エピソードのネタは小ゆずさんより頂きました。 3173
y_ktrh48
MENUONRY YOU! のお品書きです。ーーーーーーーーーーーーーーー
・アイドルパロ本(雑誌風)
・学生百合本(小説)
・メイド本(漫画)
・作家作品パロ(画集)
・バブ(漫画)
・ご飯もの(レシピ本)
・ギャグ(漫画)
・ぬいぐるみ
ーーーーーーーーーーーーーーー
他合同誌寄稿。 8
hoshi09250805
PROGRESS【3ヶ月上達法再び始めました。参考作家→さいとうなおきさん 1巡目】〇二次創作・白坂小梅(デレマス) 〇想定した仕事→某TGCのSR
イラストはカラーラフと形を整えたもの。
※闘病しながらなのでペースはゆっくりとなります。 2
らずり
PAST●皇 奇譚(スメラギ・キタン)▷同居人/HO1
地道に取材して足で稼いでる実録サスペンス作家。
依頼解決のためなら靴でも舐める覚悟だが、代わりに依頼人には自分の創作物のエッセンスになることを了承してもらっている。
家ではすっぴんグレースウェット。厚化粧が落ちるので日傘を手放せない。
読者である犬甘をそばに置くのは預かり保育のつもり。見た目よりも随分普通の人である。 15
なまたまご
TRAININGラノベ作家大倶利伽羅さんと家事代行にょたんばちゃん⑥恐怖の看病編後半です!注:大倶利伽羅さんがダサい
この話はますおさん考案の設定を元にした三次創作です。
薬がよく効いたらしい。お陰で今日も一日の大半を眠って過ごしてしまった。病で床に伏せている時というのは、大抵そういうものであろうが。
身体を起こして窓に目をやると、既にカーテンが引かれていた。外はもう暗くなっているだろう。悪寒はすっかりと身を潜めていたが、その代わりに身体が煮えるような熱が俺を蝕んでいた。ぼうっとしたまま微睡に頭を頷かせていると、あの麦色のアホ毛が揺れる音が近づいてきた。
「おはようカラチャン先生。夕飯は食えそうか。」
痛む頭を無意味に摩る。山姥切は俺の布団の側まで来ると、まるで女中のようにしとやかに控えた。先程まで洗濯物を畳んでいたらしい。右手には俺のTシャツがあった。
「……いや。食欲がない。」
5942身体を起こして窓に目をやると、既にカーテンが引かれていた。外はもう暗くなっているだろう。悪寒はすっかりと身を潜めていたが、その代わりに身体が煮えるような熱が俺を蝕んでいた。ぼうっとしたまま微睡に頭を頷かせていると、あの麦色のアホ毛が揺れる音が近づいてきた。
「おはようカラチャン先生。夕飯は食えそうか。」
痛む頭を無意味に摩る。山姥切は俺の布団の側まで来ると、まるで女中のようにしとやかに控えた。先程まで洗濯物を畳んでいたらしい。右手には俺のTシャツがあった。
「……いや。食欲がない。」
なまたまご
TRAININGラノベ作家大倶利伽羅さんと家事代行にょたんばちゃん⑤恐怖の看病編前半です!注:大倶利伽羅さんがダサい
この話はますおさん考案の設定を元にした三次創作です。
大切なものは失ってからその大切さがわかる。俺は今までに彼女を二人失ったが、二度目ともその実感はわかなかった。だが今の俺はこの陳腐な言葉を理解できる。悪寒のない背中はどんなに快適で、頭痛のない頭はどんなに晴れやかだったろう。俺は布団の中で蓑虫のようになって、関節の痛みとシベリアにいるかのような悪寒に顔を顰めた。
異変が起きたのは突然だった。蟹汁の蟹を山姥切に多めに食わせ、定時より前に帰らせた後、まずやってきたのは頭痛だ。俺はそれについては不思議に思わなかった。普段の不摂生に加えて、運動不足の身体での全力疾走、雨で冷えた身体。不調を来さないはずがない。しかしいつもより早く就寝すれば支障はないと思っていた。翌朝には快適に目覚め、朝日を浴びて鳥の囀りを耳にしながら珈琲を入れる。しかし俺のその予想は大きく外れた。それはまるで、夏の台風の進路図のようにだ。なぜなら俺は蟹汁を食った日に床に伏せ、それから今日まで、つまり丸二日も寝込んでいるのである。
2544異変が起きたのは突然だった。蟹汁の蟹を山姥切に多めに食わせ、定時より前に帰らせた後、まずやってきたのは頭痛だ。俺はそれについては不思議に思わなかった。普段の不摂生に加えて、運動不足の身体での全力疾走、雨で冷えた身体。不調を来さないはずがない。しかしいつもより早く就寝すれば支障はないと思っていた。翌朝には快適に目覚め、朝日を浴びて鳥の囀りを耳にしながら珈琲を入れる。しかし俺のその予想は大きく外れた。それはまるで、夏の台風の進路図のようにだ。なぜなら俺は蟹汁を食った日に床に伏せ、それから今日まで、つまり丸二日も寝込んでいるのである。
なまたまご
TRAININGラノベ作家大倶利伽羅さんと家事代行にょたんばちゃん③小さな絆芽生え編前半です!注:大倶利伽羅さんがダサい
この話はますおさん考案の設定を元にした三次創作です。エピソードの案は小ゆずさんより頂きました。
心頭滅却すれば火もまた涼し、よく聞く言葉だがあれは嘘だ。人は火に触れれば焼け死ぬ、涼しい訳がないだろう。あれは単なるものの例えで、そんな馬鹿な指摘をする方が馬鹿だ。それは分かっている。俺は湯船の中で茹だる身体に、溜息を吐いた。それでもまだ足りず、湯船の中へと頭を沈める。ちょうど地獄の釜のようにぶくぶくと泡を立たせる。堪らなくなって顔を上げたが、状況は以前として変わらない。俺の脳裏からミニスカメイドの白桃如き尻が離れなかった。どこからどうはみ出しているのか、むちむちと音を立ててパンツのクロッチから恥じらいもなくはみ出している肉。それらはまるで競い合うようにむちむちと自分の居場所を取り合っていた。俺は馬鹿げたことに、その肉と下着の間に指を入れてみたい、と一瞬でも思ってしまった。その柔らかさや温度に興味を持ってしまった。その時のそれが性欲であると、その時はすぐに気づかなかったが、恐らく、いや…当然これは性欲に当るだろう。叶うことなら、それはただ単に純粋に気になっただけで、決して性欲ではないと主張したい。
6318なまたまご
TRAININGラノベ作家大倶利伽羅さんと家事代行にょたんばちゃん②メイド襲来編です。注:大倶利伽羅さんがダサい、結構喋る。
この話の元ネタはますおさんによるものです!
山姥切国広という女は、大食らいだった。金がない、と言っていたからよほど切り詰めた生活でもしているんだろう。コンビニでおにぎりを買ってやって、それを食べた後にも関わらず、あまりに食いっぷりがいいから、俺は無意識に何度も追加注文をした。焼売、八宝菜、フカヒレのスープ、エビチリ、小龍包。色取り取りの料理が白米と共に山姥切へ吸い込まれていく様は鮮やかで、翌日の朝でも鮮明に思い出される。
俺は目をまだ寝ぼけている目を細めながら、フライパンの上の卵を裏返した。朝食には卵焼き、と決めている。実際にはもう11時をすぎているから、昼飯と言った方が正しいだろう。洒落た言葉で言うなら、ブランチと言う奴か。表層だけ撫でたような気取った物事は性に合わない。砂糖と醤油が合わさった柔らかな匂いを胸いっぱいに吸い込み、俺は微睡むような心地に浸った。幸せにもし匂いがあるなら、多分こんな匂いだろうなと幼い頃に思ったことがある。それこそ山姥切は、料理を一口ごとにさぞ美味そうに、幸せそうに食うから、思わずつられて笑みが浮かんでしまった。しかし最後にデザートの杏仁豆腐を注文した頃には、手元に500円玉が二つ残るだけで、俺はそれを少し不憫に思った。山姥切の手元に少しでも多く金が残るようにしてやるつもりだったのだ。けれど会計の時に残金を見た山姥切は特に悲しそうな素振りは見せなかった。俺は安アパートに住んでいるが、金に余程困っている、という訳ではない。だから、俺の金で鶴丸の手当ての補填をしようと思ったのだが山姥切はそれに首を横に振るばかりだった。本人がいいと言うのだから、俺が押し切るのもおかしな話だ。それ故に俺は金のことはそれで終わりにして、あいつをあいつのアパート先まで送った。しかしそれで本当によかったのか、未だにはっきりとしない。
5759俺は目をまだ寝ぼけている目を細めながら、フライパンの上の卵を裏返した。朝食には卵焼き、と決めている。実際にはもう11時をすぎているから、昼飯と言った方が正しいだろう。洒落た言葉で言うなら、ブランチと言う奴か。表層だけ撫でたような気取った物事は性に合わない。砂糖と醤油が合わさった柔らかな匂いを胸いっぱいに吸い込み、俺は微睡むような心地に浸った。幸せにもし匂いがあるなら、多分こんな匂いだろうなと幼い頃に思ったことがある。それこそ山姥切は、料理を一口ごとにさぞ美味そうに、幸せそうに食うから、思わずつられて笑みが浮かんでしまった。しかし最後にデザートの杏仁豆腐を注文した頃には、手元に500円玉が二つ残るだけで、俺はそれを少し不憫に思った。山姥切の手元に少しでも多く金が残るようにしてやるつもりだったのだ。けれど会計の時に残金を見た山姥切は特に悲しそうな素振りは見せなかった。俺は安アパートに住んでいるが、金に余程困っている、という訳ではない。だから、俺の金で鶴丸の手当ての補填をしようと思ったのだが山姥切はそれに首を横に振るばかりだった。本人がいいと言うのだから、俺が押し切るのもおかしな話だ。それ故に俺は金のことはそれで終わりにして、あいつをあいつのアパート先まで送った。しかしそれで本当によかったのか、未だにはっきりとしない。
すずめ
TRAINING榊春。芍薬の蕾に榊さんを重ねて見る春海さん。榊さんが作家になった世界線。芍薬 庭の芍薬が、蕾をつけた。
「一十さんの庭は、いつでも花見ができますね」
縁側に胡坐をかいた八色さんが、その蕾を見つけて口元をほころばせる。先週までは、どこからともなく桜の花びらが風に乗って運ばれてきた。その前は背の低い木瓜が、さらにその前は盆栽の梅が冬の庭を彩っていた。板戸の一部を外して植えた山茶花の生垣も、色を添えてくれた。
「ええ。朝起きた時、眺めて楽しい庭にしたくて」
彼に湯呑を渡して、自分も隣へ座る。休みの日、彼と昼からのんびり過ごせるのは久しぶりだ。つい先日まで、新しい作品を書き続けて、直しの作業に追われていた。それが昨日、ようやっと書き上がり、出版社の彼の担当から問題なしと電話があった。
2411「一十さんの庭は、いつでも花見ができますね」
縁側に胡坐をかいた八色さんが、その蕾を見つけて口元をほころばせる。先週までは、どこからともなく桜の花びらが風に乗って運ばれてきた。その前は背の低い木瓜が、さらにその前は盆栽の梅が冬の庭を彩っていた。板戸の一部を外して植えた山茶花の生垣も、色を添えてくれた。
「ええ。朝起きた時、眺めて楽しい庭にしたくて」
彼に湯呑を渡して、自分も隣へ座る。休みの日、彼と昼からのんびり過ごせるのは久しぶりだ。つい先日まで、新しい作品を書き続けて、直しの作業に追われていた。それが昨日、ようやっと書き上がり、出版社の彼の担当から問題なしと電話があった。
なまたまご
TRAININGラノベ作家からさんと家事代行にょたんばちゃんの話①出会い編です!このくりんば♀の話の元ネタはますおさんによるものです!先程のツイートに3000字ほど加筆しました!
注:からさんがあまりかっこよくない。
俺の名は大倶利伽羅広光。随分厳つい名前をしているが、本名だ。職業はラノベ作家をしている。ペンネームにはうってつけの名前だから、そのまま使おうとしたら編集に止められた。俺の執筆する話は基本的に可愛らしい少女に冴えない主人公が囲まれ、大した理由はないが何故かちやほやされるといったものだ。しかしそれに対してペンネームが俺の本名だと少々ゴツいのでそぐわない、ということらしい。どうせ読者が気にしているのは本の中身だけだ、更に言ってしまえば中身もさほど気にされていない。あいつらが見たいのは、可愛いらしい少女と自分がまるで恋愛をしているように感じられる描写だけだ。俺の名前などどうでもいいだろうと思ったのだが、編集に言わせると執筆者のイメージも作品に関わる云々だそうだ。まあ、いい。そういう訳で俺のペンネームは相州広光というあっさりした名前になっている。
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