Recent Search
    Create an account to secretly follow the author.
    Sign Up, Sign In

    巨人

    niesugiyasio

    PAST原作軸エルリ連作短編集『花』から再録15『空』
    終尾の巨人の骨から姿を表したジーク。
    体が軽い。解放されたみたいだ。俺はこれまで何かに囚われていたのか? 空はこんなに青かっただろうか?
    殺されてやるよ、リヴァイ。
    意図はきっと伝わっただろう。
    地鳴らしは、止めなくてはならない。もとより望んだことはなく、地鳴らしは威嚇の手段のつもりだった。媒介となる王家の血を引く巨人がいなくなれば、行進は止まるはずだ。これは俺にしかできないことだ。
    エレン、とんだことをやらかしてくれたもんだ。すっかり信じ切っていたよ。俺も甘いな。
    また生まれてきたら、何よりクサヴァーさんとキャッチボールをしたいけれど、エレンとも遊びたいな。子どもの頃、弟が欲しかったんだよ。もし弟ができたら、いっぱい一緒に遊ぶんだ。おじいちゃんとおばあちゃんが俺達を可愛がってくれる。そんなことを思っていた。これ以上エレンに人殺しをさせたくないよ。俺も、親父も、お袋も、クサヴァーさんも、生まれてこなきゃよかったのにって思う。だけどエレン、お前が生まれてきてくれて良かったなって思うんだ。いい友達を持ったね。きっとお前がいい子だからだろう。お前のことを、ものすごく好きみたいな女の子がいるという話だったよな。ちゃんと紹介して貰わず終いだ。残念だな。
    677

    niesugiyasio

    PAST原作軸エルリ連作短編集『花』から再録⑩『善』
    巨人化のおそれに直面するナイル。
    ナイルは左腕に巻かれた黒い布を見る。ジークの脊髄液入りワインを飲んだ印だ。ジークの「叫び」により巨人化する。知らされる前のことだが、一瞬全身が痺れた。どこかで「叫び」があったということだ。ただ距離が離れていたため、シガンシナにいるナイル達にはその力は及ばなかった。ではどこでジークは叫んだのか。勾留地に決まっている。具体的な場所は知らないが、リヴァイと三十人の兵士が監視している。では、リヴァイと三十人の兵士が巨人化してしまったということか? まさか、あのリヴァイに限って——。ナイルは信じまいとする。
    ジークについて、リヴァイと話したことがあった。三年ほど前のことになる。調査兵団に鹵獲されたマーレの艦船の乗組員の一部が反マーレ派義勇兵を名乗り、エルディア人の解放を目的としてパラディ島との提携を求めてきた。首領は獣の巨人ジーク・イェーガー。ジークをパラディ島に受け入れ、腹違いの弟エレン・イェーガーに会わせろという。ジークには秘策があり、そのためには王家の血を引く巨人と始祖を有する巨人が揃わねばならないというのだ。調査兵団はジークの要求を呑む方向性で話を進めたがっているように見えた。
    3548

    いろは

    TRAINING進撃の巨人ライナー・ブラウンの夢です。
    その後の妄想です。ライナーを前にすると語彙も思考も護身も何もかもポンコツになる元兵士の夢主。
    ライナー最後は持ち直したのかなーと思いながら書きました。不備などあると思います。夢主が退団した時期とか。考えてなかったです…。書いてみたらわからないことたくさん出てきました。

    夢主宅の玄関は海外仕様の内側に開く扉をイメージしてます。兵舎ではなく一般宅です。
    玉砕アルコールで熱くなった体を冷ますため立ち上がり窓を開ける。窓枠にもたれ掛かり夜風に吹かれて瞼を下ろすと自然とため息が出た。ひんやりとした風が心地良く感じるくらいにはアルコールが回っている。その心地良さに身を任せ目を閉じたまま暫く瞑想した。想いの人を思い浮かべる。もう数年、感覚的にはもっと会えていない気がする。寂しい。大変そうなのにいつも笑ってるとか、服の上からでも分かるほどの鍛え上げられた肉体とか、あの手はいつも温かくて、大きくて、触れたらおかしく――
    「風邪引くぞ」
    突然聞こえた声に体が跳ね目を見開いた。窓から身を乗り出せば、落ちるぞと笑った想いの人。
    「え?あ、……え?」
    「なんだよ、変なことでも考えてたのか」
    2021