sayuta38
DONEしょしょドロライ17回目「かくしごと」
魈が二日酔いで嘔吐してるところに通りすがる鍾離の話
かくしごと「う、ぐ……ぉぇ……」
魈は川に顔面を突っ込んで水を飲んだことはある。しかし今は、川べりに手をつき、自分の意思では止められない程の嘔吐感に呻いていた。出るものはもうないと思うのだが、胃液が逆流してきそうな気がしてならない。吐きすぎて手が痺れ、目の前の景色がぐるぐる回っている。水を飲みたいが、また吐いてしまいそうだ。
己が何故こんな目に合っているのか、理由はわかる。昨日ウェンティと酒を飲んだからだ。甘くて飲みやすいと注がれた酒は、確かに葡萄の良い香りがして甘めで飲みやすい酒だったのだが、少々強めの酒だったらしい。酒を酌み交わし、途中でほろ酔い気分のウェンティが演奏をし始め、それに耳を傾け安らかな気持ちになっていた。そこまでは良かったのだが、たまには何もかも忘れちゃおう! というウェンティの申し出を断りきれず、勧められるまま酒を飲んだ結果がこれである。ちなみにまだウェンティは望舒旅館で眠っているようだった。
2922魈は川に顔面を突っ込んで水を飲んだことはある。しかし今は、川べりに手をつき、自分の意思では止められない程の嘔吐感に呻いていた。出るものはもうないと思うのだが、胃液が逆流してきそうな気がしてならない。吐きすぎて手が痺れ、目の前の景色がぐるぐる回っている。水を飲みたいが、また吐いてしまいそうだ。
己が何故こんな目に合っているのか、理由はわかる。昨日ウェンティと酒を飲んだからだ。甘くて飲みやすいと注がれた酒は、確かに葡萄の良い香りがして甘めで飲みやすい酒だったのだが、少々強めの酒だったらしい。酒を酌み交わし、途中でほろ酔い気分のウェンティが演奏をし始め、それに耳を傾け安らかな気持ちになっていた。そこまでは良かったのだが、たまには何もかも忘れちゃおう! というウェンティの申し出を断りきれず、勧められるまま酒を飲んだ結果がこれである。ちなみにまだウェンティは望舒旅館で眠っているようだった。
sayuta38
DONEしょしょドロライ16回目「雨」雨の日 例えば雲一つない空から太陽の光が己に向かってどれだけ降り注いでいようとも、はたまた、分厚い雲に覆われ昼なのか夜なのか判別できない程の暗闇の中で、痛い程の大粒の雨に打たれていようとも、降魔を休むという選択肢はない。
天気など気にしない。それは魔物も己も同じだ。いざ戦闘になれば、どちらが悪鬼なのかもわからないと言えるだろう。
今日は雨だった。視界は悪いが気配は追える。こういう時は方士もあまり見かけないゆえ、魈の役割、己の意味を今一度胸に刻みつつ、いつもと同じように空へと飛び立った。
雨だからといって利点がない訳ではない。凡人が出歩いていることが少ないので戦いやすい。泥を蹴れば目潰しにもなる。欠点と言えば、水分を吸って、いくらか衣服が重たく感じるくらいだろうか。
2306天気など気にしない。それは魔物も己も同じだ。いざ戦闘になれば、どちらが悪鬼なのかもわからないと言えるだろう。
今日は雨だった。視界は悪いが気配は追える。こういう時は方士もあまり見かけないゆえ、魈の役割、己の意味を今一度胸に刻みつつ、いつもと同じように空へと飛び立った。
雨だからといって利点がない訳ではない。凡人が出歩いていることが少ないので戦いやすい。泥を蹴れば目潰しにもなる。欠点と言えば、水分を吸って、いくらか衣服が重たく感じるくらいだろうか。
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DONEしょしょドロライ16回目「おかえり、ただいま」鍾離がプロポーズして断られる話
いつかはおかえりも、ただいまも「魈、俺と伴侶の契りを交わしてくれないか」
「……鍾離様、それは我に向けて言ったのですか?」
「この場にお前以外の奴がいると思うか?」
「いえ……」
魈は困惑していた。伴侶の契りとは何だと一瞬の内に脳内でよくよく考えたが、伴侶は伴侶でしかなくそれ以上でも以下でもない。
「無理にとは言わない。嫌ならきっぱり断ってくれ。そうすれば俺も諦めがつく」
「嫌では、ありませんが……」
無理ではない。嫌でもない。鍾離が魈に対して、遠慮など一切しなくていいとは思っている。先日恋仲になって欲しいと言われた時も、自分で良ければと引き受けたのは記憶に新しい。
「答えは今日出さなくてもいい。だが俺の気持ちを知っていて欲しかった」
恋仲であれば、鍾離の気が済んだ後に解消されることもあるだろう。しかし伴侶となれば話は別だ。鍾離の伴侶が自分などに務まるだろうか。もちろんずっと敬愛していたのは確かである。しかし、鍾離に対する自分の気持ちなど、考えたことがなかったのだ。
1309「……鍾離様、それは我に向けて言ったのですか?」
「この場にお前以外の奴がいると思うか?」
「いえ……」
魈は困惑していた。伴侶の契りとは何だと一瞬の内に脳内でよくよく考えたが、伴侶は伴侶でしかなくそれ以上でも以下でもない。
「無理にとは言わない。嫌ならきっぱり断ってくれ。そうすれば俺も諦めがつく」
「嫌では、ありませんが……」
無理ではない。嫌でもない。鍾離が魈に対して、遠慮など一切しなくていいとは思っている。先日恋仲になって欲しいと言われた時も、自分で良ければと引き受けたのは記憶に新しい。
「答えは今日出さなくてもいい。だが俺の気持ちを知っていて欲しかった」
恋仲であれば、鍾離の気が済んだ後に解消されることもあるだろう。しかし伴侶となれば話は別だ。鍾離の伴侶が自分などに務まるだろうか。もちろんずっと敬愛していたのは確かである。しかし、鍾離に対する自分の気持ちなど、考えたことがなかったのだ。
sayuta38
DONEモラ魈「ひとやすみ」龍の姿に寄り添う魈くんの話
ひとやすみ「モラクス様!」
『魈か』
魔神戦争の真っ只中、引きずったような血の跡を辿っていくと、そこにはモラクスが体躯を丸め、寝そべっていた。人の形を取っていない、魈の何倍も大きさのある龍の姿だ。遺跡の影に隠れるようにしてじっとしているが、大きすぎて隠れられているかは怪しいところだった。
『柄にもなく油断したが、休めば直に治る』
「しかし……出血している傷を見ます」
魈はモラクスに近付き、身体の中心に足を踏み入れ地面に膝をつく。血に染まっている鱗部分に魈はそっと手を触れた。傷を癒やすならば他の仙人の方が適任だ。しかし、自分が今ここを離れるという選択肢はなかった。
「出血量の割には傷はそこまで深くないようです。確かに直に治るかと。毒などは盛られていませんか?」
1685『魈か』
魔神戦争の真っ只中、引きずったような血の跡を辿っていくと、そこにはモラクスが体躯を丸め、寝そべっていた。人の形を取っていない、魈の何倍も大きさのある龍の姿だ。遺跡の影に隠れるようにしてじっとしているが、大きすぎて隠れられているかは怪しいところだった。
『柄にもなく油断したが、休めば直に治る』
「しかし……出血している傷を見ます」
魈はモラクスに近付き、身体の中心に足を踏み入れ地面に膝をつく。血に染まっている鱗部分に魈はそっと手を触れた。傷を癒やすならば他の仙人の方が適任だ。しかし、自分が今ここを離れるという選択肢はなかった。
「出血量の割には傷はそこまで深くないようです。確かに直に治るかと。毒などは盛られていませんか?」
つつ(しょしょ垢)
DONE青空300文字チャレンジに失敗した鍾魈。支部に投げるほどでもなければここに投げればいいじゃない。名付けって、強いよねぇ…。
命名ふらりと昼時の望舒旅館に現れ昼餉を共にしようと誘われれば断ることなどできるはずもなく、杏仁豆腐と閑雲から預かってきたという豆腐布顛というおよそ凡人の昼餉とは思えないものが目の前にある。対する鍾離の前には旅館特製の日替わり昼食が並んでいた。
それでも同席しているという喜びと緊張を飲み込んでいると、
「名付けを頼まれた」
不意に鍾離が話題を振ってきた。いつもことなので、一拍置いて続きを促すような視線を送る。いつものようにその視線に動揺が見えていることに鍾離はわずかに苦笑する。
「三杯酔で何度か同席したことがあるという程度の、所謂顔見知りだな。もうすぐ子どもが生まれるから、名前をつけて欲しいと頼まれたんだ」
博覧強記の往生堂の客卿としても広く知られている鍾離に肖りたいと願う凡人の気持ちはよく分かる。しかしその正体は魔神戦争を勝ち抜いた岩の魔神モラクスであり、璃月を築いた岩王帝君その人なのだ。
799それでも同席しているという喜びと緊張を飲み込んでいると、
「名付けを頼まれた」
不意に鍾離が話題を振ってきた。いつもことなので、一拍置いて続きを促すような視線を送る。いつものようにその視線に動揺が見えていることに鍾離はわずかに苦笑する。
「三杯酔で何度か同席したことがあるという程度の、所謂顔見知りだな。もうすぐ子どもが生まれるから、名前をつけて欲しいと頼まれたんだ」
博覧強記の往生堂の客卿としても広く知られている鍾離に肖りたいと願う凡人の気持ちはよく分かる。しかしその正体は魔神戦争を勝ち抜いた岩の魔神モラクスであり、璃月を築いた岩王帝君その人なのだ。
sayuta38
DONEしょしょドロライ15回目14回目のお題「大人/子供」
大人と子供「子供を、五歳くらいの男の子を見ませんでしたか?」
「いや、見ていないが……」
高校からの帰り道のことだった。帰路につく途中にある公園の前で魈は女性に声を掛けられたのだ。事情を尋ねる前に、公園で遊んでいたのに目を離した隙に子供が居なくなってしまったと言っていて、この辺りを必死で探しているとのことだった。
(この女……)
話半分に女性の瞳を見る。自分と同じような、それでいて少しだけ石珀色によく似た瞳を持つ女性だった。
「……少し、探すのを手伝おう。その者の特徴は?」
「! ありがとうございます」
いなくなった男児の特徴を訪ねた。茶髪で、母親と同じ石珀色の瞳をしているとのこと。公園に来ても、大体遊具で遊ぶ訳ではなく草花や虫をじっと観察している事が多いと教えてもらった。
2605「いや、見ていないが……」
高校からの帰り道のことだった。帰路につく途中にある公園の前で魈は女性に声を掛けられたのだ。事情を尋ねる前に、公園で遊んでいたのに目を離した隙に子供が居なくなってしまったと言っていて、この辺りを必死で探しているとのことだった。
(この女……)
話半分に女性の瞳を見る。自分と同じような、それでいて少しだけ石珀色によく似た瞳を持つ女性だった。
「……少し、探すのを手伝おう。その者の特徴は?」
「! ありがとうございます」
いなくなった男児の特徴を訪ねた。茶髪で、母親と同じ石珀色の瞳をしているとのこと。公園に来ても、大体遊具で遊ぶ訳ではなく草花や虫をじっと観察している事が多いと教えてもらった。
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DOODLEしょしょでめいど(途中まで)メイドの日「魈……俺は今、問題を抱えている」
「鍾離様が問題を……? それは、一体どのようなことでしょうか」
いつになく神妙な面持ちで鍾離は椅子に腰掛けていた。テーブルに肘をつき手を組む様は、今から巧妙な策でも発表する、かの岩神のようだった。
望舒旅館、魈が寝泊まりしている部屋に鍾離は来ていた。ひとまず話を聞こうと茶を入れ鍾離に出し、魈も向かいに座った。
「忙しさのあまり、家が散らかってしまっている」
「……ここへ来られる回数を減らしてはいかがでしょうか」
そう日が経たないうちに、なんでもない話をしに鍾離は望舒旅館へ訪れている気がしていた。特に用はないと言っているので、その時間を使って片付けをすれば良いと思ったのだ。
1680「鍾離様が問題を……? それは、一体どのようなことでしょうか」
いつになく神妙な面持ちで鍾離は椅子に腰掛けていた。テーブルに肘をつき手を組む様は、今から巧妙な策でも発表する、かの岩神のようだった。
望舒旅館、魈が寝泊まりしている部屋に鍾離は来ていた。ひとまず話を聞こうと茶を入れ鍾離に出し、魈も向かいに座った。
「忙しさのあまり、家が散らかってしまっている」
「……ここへ来られる回数を減らしてはいかがでしょうか」
そう日が経たないうちに、なんでもない話をしに鍾離は望舒旅館へ訪れている気がしていた。特に用はないと言っているので、その時間を使って片付けをすれば良いと思ったのだ。
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DONE『デスコミュニケーション・カンバセーション』――きっと『あなた』が、隣に居るからだ。
現パロな鍾魈。先生と生徒な二人の話。
・注意事項
現パロ(パラレル/並行世界)なので苦手な方はご注意ください。
鍾魈版週ドロライ企画に投稿したものです。
第14回お題【③大人と子ども】
■表紙は「装丁カフェ様」を利用させて頂きました。
(https://pirirara.com/) 6
sayuta38
DONEしょしょドロライ14回目かくれんぼ/おにごっこ/おとな/こども
かくれんぼ「子供を……小さな夜叉を見掛けませんでしたか……?」
たまたま森を散策していた時のことである。
風に揺れる木々の音や鳥のさえずりが聞こえ、魔神の影もない静寂さを気に入ってたまに訪れている森でのことだった。
いつもは人影もないのだが、 この日は急ぎ走る仙人や、空を飛ぶ仙鳥の姿を度々見掛けた。どうやら遊びの途中で子供の夜叉が姿を消したらしい。気配を感じることも出来ず、魔神に囚われてしまったのではないかと集落総出で捜索しているとのことだった。
魔神である俺にすら話し掛けてくるくらいだ。余程切羽詰まっているのだろう。しかし小さな夜叉は道中見掛けなかったので、見掛けたら集落に返す旨を伝えておいた。
「夜叉か」
2344たまたま森を散策していた時のことである。
風に揺れる木々の音や鳥のさえずりが聞こえ、魔神の影もない静寂さを気に入ってたまに訪れている森でのことだった。
いつもは人影もないのだが、 この日は急ぎ走る仙人や、空を飛ぶ仙鳥の姿を度々見掛けた。どうやら遊びの途中で子供の夜叉が姿を消したらしい。気配を感じることも出来ず、魔神に囚われてしまったのではないかと集落総出で捜索しているとのことだった。
魔神である俺にすら話し掛けてくるくらいだ。余程切羽詰まっているのだろう。しかし小さな夜叉は道中見掛けなかったので、見掛けたら集落に返す旨を伝えておいた。
「夜叉か」
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DONE『残花、一輪』「あぁ。……来ていたのか」
寝ている鍾離の元に訪れた、小鳥の話。
登場人物⇒鍾離、小鳥(魈)
・注意事項
魈が小鳥になれる設定がついています。
鍾魈版週ドロライ企画に投稿したものです。
第13回お題【③名残の花】
■表紙は「装丁カフェ様」を利用させて頂きました。
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sayuta38
DONE鍾魈短文「ゆめ」気づいたら鍾離の家で寝ていた魈の話
ゆめ それが十分程度の睡眠であろうとも、休める時に小刻みに睡眠をとっているので日中眠くて仕方がないということはない。
そもそも仙人ゆえ、睡眠などあまり取らずとも平気なのだ。
……そのはずではあるのだが、業障の影響か、たまに自分が知らぬ間に落ちている時がある。草むらの上、岩の影、木の下……はっと目を覚ますと、自分の思っている場所ではない所にいることがある。
そう、例えば。
「目が覚めたか……?」
「う……」
薄ら瞼を開けた時、心配そうに揺れる石珀色の瞳に覗かれていることがある。気付いた瞬間に一秒と経たずに起き上がろうとするのだが、こういう時は大抵、逃げられないようにがっしりと抱き留められている事が多い。
「し、鍾離様……」
2314そもそも仙人ゆえ、睡眠などあまり取らずとも平気なのだ。
……そのはずではあるのだが、業障の影響か、たまに自分が知らぬ間に落ちている時がある。草むらの上、岩の影、木の下……はっと目を覚ますと、自分の思っている場所ではない所にいることがある。
そう、例えば。
「目が覚めたか……?」
「う……」
薄ら瞼を開けた時、心配そうに揺れる石珀色の瞳に覗かれていることがある。気付いた瞬間に一秒と経たずに起き上がろうとするのだが、こういう時は大抵、逃げられないようにがっしりと抱き留められている事が多い。
「し、鍾離様……」
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DONE『尋夢』『そしてこれからは、その腕に。どうかたくさんの幸福を』
魈の誕生日と『嘘』に纏わる話。
登場人物⇒鍾離、魈、旅人、パイモン、伐難、応達
・注意事項
捏造解釈設定が多々あります。
鍾魈版週ドロライ企画に間に合わなかったものです。
第12回お題【魈の誕生日+嘘】
■表紙は「装丁カフェ様」を利用させて頂きました。
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DONEしょしょドロライ13回目「遠出」疲れたから遠出しようとする鍾離先生の話
遠出「少し、遠出しようと思うのだが、お前も共にどうだ?」
「我には……降魔があります故……その……」
いつものように、望舒旅館で共に茶を飲んでいた時であった。鍾離から誘いを受けたのだ。一体どこへ行こうというのだろう。璃月港や沈玉の谷では遠出というかは微妙なところだ。モンドは遠出に値するだろうか。あまり遠くでなければ共に行くこともできるかもしれないが、行けない可能性の方が高いと思った。
「そうか」
鍾離は目を伏せ、茶を眺めていた。しばしの沈黙が訪れる。ふぅ。と鍾離が息を吐いて茶を一口飲んだ。気落ちされてしまったのかもしれない。
「そ、その……行先によっては……可能かと」
おずおずと全く無理ではない旨を伝えると、じっと石珀色の瞳に見つめられた。
2299「我には……降魔があります故……その……」
いつものように、望舒旅館で共に茶を飲んでいた時であった。鍾離から誘いを受けたのだ。一体どこへ行こうというのだろう。璃月港や沈玉の谷では遠出というかは微妙なところだ。モンドは遠出に値するだろうか。あまり遠くでなければ共に行くこともできるかもしれないが、行けない可能性の方が高いと思った。
「そうか」
鍾離は目を伏せ、茶を眺めていた。しばしの沈黙が訪れる。ふぅ。と鍾離が息を吐いて茶を一口飲んだ。気落ちされてしまったのかもしれない。
「そ、その……行先によっては……可能かと」
おずおずと全く無理ではない旨を伝えると、じっと石珀色の瞳に見つめられた。
つつ(しょしょ垢)
DONEある方の蜜柑話(ある方にしかわからない)のリプを見て、触発されて作った話。たまひよ話が好きな方におすすめ。
迷子 遠くから幼子が泣く声がした。
正確には鳴き声というべきかもしれない。ヒトのそれと雛鳥のそれが絶妙に混ざり合った音だ。
本来このような街中ではまず聞こえることのない、鍾離自身数百年と立ち会っていない…仙鳥の雛鳥独特の鳴き声にまさかと背筋が泡立つ心地がした。
「あ、しょぉぉぉぉりぃぃぃぃぃーーーー」
鳴き声を上回る友人の相棒…パイモンの絶叫に通りすがりの人々さえも振り返る。その後ろをぱたぱたと…予測に違わず子どもを抱えた旅人が姿を見せた。
「パイモン、それに旅人…それから……」
自然と鍾離の視線が旅人の腕の中へと移る。
いまだ鳴き止まぬ稚児は手足と、そして羽をばたつかせて旅人の腕の中から抜け出す勢いだ。
3034正確には鳴き声というべきかもしれない。ヒトのそれと雛鳥のそれが絶妙に混ざり合った音だ。
本来このような街中ではまず聞こえることのない、鍾離自身数百年と立ち会っていない…仙鳥の雛鳥独特の鳴き声にまさかと背筋が泡立つ心地がした。
「あ、しょぉぉぉぉりぃぃぃぃぃーーーー」
鳴き声を上回る友人の相棒…パイモンの絶叫に通りすがりの人々さえも振り返る。その後ろをぱたぱたと…予測に違わず子どもを抱えた旅人が姿を見せた。
「パイモン、それに旅人…それから……」
自然と鍾離の視線が旅人の腕の中へと移る。
いまだ鳴き止まぬ稚児は手足と、そして羽をばたつかせて旅人の腕の中から抜け出す勢いだ。
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DONEしょしょドロライ12回目「赤い糸」
赤い糸「魈は赤い糸ってあると思う?」
「なんだそれは?」
璃月に昔から伝わるお伽噺の中で、いつか結ばれる運命の相手とは赤い糸で繋がっているというものがあるらしい。普段見えないその糸は決して切れることはないという。それを題材にした小説が今流行っているのだと旅人は言っていた。
「運命の相手など……我には不要だ。馬鹿馬鹿しい」
「魈はそう言うと思った」
旅人には想像通りの返事だったようで、はは。と声をあげて笑っていた。夜叉にもし運命の相手がいるとしたら、それは不幸なことだと思う。赤い糸が見えていたとして、相手と出会う前に命を落とす確率のほうが高いだろう。相手は仙人とも限らない。好きでもない相手と糸で結ばれているからと言って一緒になったりするのだろうか。旅人に話を聞くと、恋愛小説なのだから、基本的には好意を寄せている者同士の純愛話なのだと言っていた。
1134「なんだそれは?」
璃月に昔から伝わるお伽噺の中で、いつか結ばれる運命の相手とは赤い糸で繋がっているというものがあるらしい。普段見えないその糸は決して切れることはないという。それを題材にした小説が今流行っているのだと旅人は言っていた。
「運命の相手など……我には不要だ。馬鹿馬鹿しい」
「魈はそう言うと思った」
旅人には想像通りの返事だったようで、はは。と声をあげて笑っていた。夜叉にもし運命の相手がいるとしたら、それは不幸なことだと思う。赤い糸が見えていたとして、相手と出会う前に命を落とす確率のほうが高いだろう。相手は仙人とも限らない。好きでもない相手と糸で結ばれているからと言って一緒になったりするのだろうか。旅人に話を聞くと、恋愛小説なのだから、基本的には好意を寄せている者同士の純愛話なのだと言っていた。
sayuta38
DOODLE鍾魈短文鍾離と伴侶になることになった魈が、鍾離に質問してみる話
未完話1「魈。これから先も、ずっと俺と共に生きてくれないか」
「……断る理由はありません。我も、鍾離様の傍にいることが許されるなら、この命が尽きるまで傍にいます」
軽い言葉ではないと思っていたが、この鍾離の言葉が、それ以上の意味を持っていたと気づいたのはそれから数日経ってからであった。
凡人で言うところの伴侶というものに該当するらしい。良かったね。と旅人に言われ、心当たりが全くなかったので「何がだ?」と聞いてみたところ、鍾離の方から旅人に報告があったという。
『ついに魈が承諾してくれたんだ』
六千年の時を思わせないような朗らかな笑みで、それはそれは嬉しそうに旅人に話をしていたらしいので、その表情は是非とも見てみたかった。と思う反面、あの時の言葉はそういう意味だったのかと驚いたものだ。
2987「……断る理由はありません。我も、鍾離様の傍にいることが許されるなら、この命が尽きるまで傍にいます」
軽い言葉ではないと思っていたが、この鍾離の言葉が、それ以上の意味を持っていたと気づいたのはそれから数日経ってからであった。
凡人で言うところの伴侶というものに該当するらしい。良かったね。と旅人に言われ、心当たりが全くなかったので「何がだ?」と聞いてみたところ、鍾離の方から旅人に報告があったという。
『ついに魈が承諾してくれたんだ』
六千年の時を思わせないような朗らかな笑みで、それはそれは嬉しそうに旅人に話をしていたらしいので、その表情は是非とも見てみたかった。と思う反面、あの時の言葉はそういう意味だったのかと驚いたものだ。
YmLiBItnyo12595
DONE『夜桜、月下』たとえば、そう。こんなにも美しく、穏やかで、春の訪れのように温かな――。
夜桜を見る鍾離と魈の話。
登場人物⇒鍾離、魈
・注意事項
外景への独自解釈があります。
鍾魈版週ドロライ企画に投稿したものです。
第11回お題【お花見/桜+抱きしめる+『春の訪れ』】
『夜桜、月下』 何時の時も、魈には鍾離の真意が分からない。当たり前だ、彼の方は[[rb:仙祖 > せんそ]]『[[rb:岩王帝君 > がんおうていくん]]であり、あの魔神戦争を勝ち抜いた岩の魔神モラクスである。一介の夜叉である魈とは生きてきた時間も、その長い時間の全てを費やすようにしてきた『在り方』も、違うのだ。
ゆえに、どうしてこのような状況に自分は置かれているのか、今の魈には分からなかった。
具体的に言うならば、何故か魈は現在、鍾離の持つ[[rb:洞天 > どうてん]]の一つに招かれ、彼と隣り合うように腰を下ろしながら花を見ているのである。
花、と一概に言っても、それは璃月でよくみられる[[rb:草花 > くさばな]]ではない。他国には多く在るという、枝の先に花をつけるようなタイプの広葉樹である。それも、確か――……。
3249ゆえに、どうしてこのような状況に自分は置かれているのか、今の魈には分からなかった。
具体的に言うならば、何故か魈は現在、鍾離の持つ[[rb:洞天 > どうてん]]の一つに招かれ、彼と隣り合うように腰を下ろしながら花を見ているのである。
花、と一概に言っても、それは璃月でよくみられる[[rb:草花 > くさばな]]ではない。他国には多く在るという、枝の先に花をつけるようなタイプの広葉樹である。それも、確か――……。
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DONE鍾魈短文「抱き上げる」モラクスとちびしょの話
抱き上げる「お前はどこから来た?」
「それは、我のことか?」
モラクスは木陰で休んで目を閉じていたが、ふと目が覚めると目の前に翡翠色のふわふわの髪をした小さな子供が不思議そうな瞳でこちらを覗いていた。
「お前以外に誰がいる?」
「木の上にはヤマガラがいる」
子供のフリをして襲いかかってくるタイプの魔神かと思い警戒していたが、どうやらそうではないらしい。きょとんとした琥珀色の瞳は、まだ戦のことなど何も知らなさそうな純新無垢の子供そのものに見えた。
「我は、あっちの村から来た。修行の最中だったのだが、知らぬ人が眠っていたので、気になって見にきたのだ」
「一人で修行を……?」
「ああ。我は夜叉だからな」
こんなに小さな子供が一人で修行するなど、鍛えられる技量はたかが知れているだろう。そう思ったが、ぺこりと頭を下げた夜叉は手を空に翳し、槍を取り出した。
2099「それは、我のことか?」
モラクスは木陰で休んで目を閉じていたが、ふと目が覚めると目の前に翡翠色のふわふわの髪をした小さな子供が不思議そうな瞳でこちらを覗いていた。
「お前以外に誰がいる?」
「木の上にはヤマガラがいる」
子供のフリをして襲いかかってくるタイプの魔神かと思い警戒していたが、どうやらそうではないらしい。きょとんとした琥珀色の瞳は、まだ戦のことなど何も知らなさそうな純新無垢の子供そのものに見えた。
「我は、あっちの村から来た。修行の最中だったのだが、知らぬ人が眠っていたので、気になって見にきたのだ」
「一人で修行を……?」
「ああ。我は夜叉だからな」
こんなに小さな子供が一人で修行するなど、鍛えられる技量はたかが知れているだろう。そう思ったが、ぺこりと頭を下げた夜叉は手を空に翳し、槍を取り出した。
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DONE鍾魈短文「エイプリルフール」魈が🥚を産んだ!と鍾離に嘘をつきにいくパイモンの話。
エイプリルフール「鍾離! 大変なんだ! ちょっと来てくれ~!」
「む? パイモン。久しいな。旅人は一緒ではないのか?」
璃月港の三杯酔にてお茶を嗜んでいる鍾離の元へ、パイモンは一人飛んでやって来ていた。
「その旅人が! 助けてくれよ鍾離~! 魈だけじゃ……」
「ほう? 魈も一緒なのであれば、尚更俺の手は必要ないと見える。何か別の問題があるのだろうか」
パイモンは魈や旅人の名前を出せば、すぐに鍾離は立ち上がって来てくれるだろうと思ったのだ。
しかし、肝心の鍾離は未だ座ったままである。なんならもう一口、と茶を飲んでいた。こんなに危機迫った演技をしているはずなのに。なんでだよ! とパイモンは憤っていた。
「魈が卵をあっためてて、ヒナの世話をしているんだぞ~!? なんか、こう、大変そうで! これが緊急事態じゃないなら何でお前は立ち上がるんだよ!」
2719「む? パイモン。久しいな。旅人は一緒ではないのか?」
璃月港の三杯酔にてお茶を嗜んでいる鍾離の元へ、パイモンは一人飛んでやって来ていた。
「その旅人が! 助けてくれよ鍾離~! 魈だけじゃ……」
「ほう? 魈も一緒なのであれば、尚更俺の手は必要ないと見える。何か別の問題があるのだろうか」
パイモンは魈や旅人の名前を出せば、すぐに鍾離は立ち上がって来てくれるだろうと思ったのだ。
しかし、肝心の鍾離は未だ座ったままである。なんならもう一口、と茶を飲んでいた。こんなに危機迫った演技をしているはずなのに。なんでだよ! とパイモンは憤っていた。
「魈が卵をあっためてて、ヒナの世話をしているんだぞ~!? なんか、こう、大変そうで! これが緊急事態じゃないなら何でお前は立ち上がるんだよ!」
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DONEしょしょドロライ11回目「抱きしめたい」「春のおとずれ」
抱きしめたい 足繁く年中望舒旅館へ通いつめていれば、自然と道中の草花や生き物に目が行き、季節の移り変わりをまざまざと実感することが多くなったように思う。
先日まで吹いていた肌を突き刺すような冷たい風は、いつの間にか地から芽を出し花を咲かせる暖かい風に変わっていた。
暑さや寒さは、人の形をとっているからといって、凡人程に気温の変化に対して身体が堪えることはない。それは、仙人である魈も同じだろう。だが、この春という季節に魈に会えることは少しの楽しみでもあった。
「し、鍾離様……いらしていたのですか」
気配を消して、望舒旅館の露台でうららかな日差しを浴びつつのんびり茶を飲んでいると、今思い浮かべていた護法夜叉が顔を覗かせていた。
2003先日まで吹いていた肌を突き刺すような冷たい風は、いつの間にか地から芽を出し花を咲かせる暖かい風に変わっていた。
暑さや寒さは、人の形をとっているからといって、凡人程に気温の変化に対して身体が堪えることはない。それは、仙人である魈も同じだろう。だが、この春という季節に魈に会えることは少しの楽しみでもあった。
「し、鍾離様……いらしていたのですか」
気配を消して、望舒旅館の露台でうららかな日差しを浴びつつのんびり茶を飲んでいると、今思い浮かべていた護法夜叉が顔を覗かせていた。
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DONEしょしょドロライ11回目「花見/桜」
花と酒と「そろそろ桜が満開のようだな。週末花見でもどうだ?」
「はい、予定は空いてます」
毎年この時期になると、鍾離は花見に行こうと魈を誘う。花を眺めるだけで何が楽しいのだろうかと魈は思っていたのだが、鍾離は酒を片手に花や景色を堪能するのが好きなのだと気付いてからは、毎回付き添っている。
始めはただ川原にレジャーシートを敷いて、買って来た弁当や飲み物を持参しただけだったのだが、翌年以降は市販のものではなく朝から弁当を手作りして行くようになっていた。来年あたりはテーブルなど買い揃えているかもしれない。
前日からスーパーへ買い出しに行き、次の日はいつもより早目に起きて弁当を作る。卵焼きや煮物は鍾離が作ってくれるので、魈は簡単に出来るおにぎりや、ちくわにきゅうりを詰めたりするものを担当する。
3495「はい、予定は空いてます」
毎年この時期になると、鍾離は花見に行こうと魈を誘う。花を眺めるだけで何が楽しいのだろうかと魈は思っていたのだが、鍾離は酒を片手に花や景色を堪能するのが好きなのだと気付いてからは、毎回付き添っている。
始めはただ川原にレジャーシートを敷いて、買って来た弁当や飲み物を持参しただけだったのだが、翌年以降は市販のものではなく朝から弁当を手作りして行くようになっていた。来年あたりはテーブルなど買い揃えているかもしれない。
前日からスーパーへ買い出しに行き、次の日はいつもより早目に起きて弁当を作る。卵焼きや煮物は鍾離が作ってくれるので、魈は簡単に出来るおにぎりや、ちくわにきゅうりを詰めたりするものを担当する。
YmLiBItnyo12595
DONE『名前を呼んで』「どうか、お目覚めになったら。もう一度、我の名前を呼んでください」
魈が猫になって鍾離に甘やかされた日の話(『室咲』『遅咲』の続き)
・注意事項
魈が猫になります。
捏造解釈設定が多々あります。
鍾魈版週ドロライ企画に投稿したものです。
第10回お題【(画像左上参照)】
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つつ(しょしょ垢)
DONE媚薬イベ……げふん、錬金イベ楽しいで過ぎった鍾魈小話。やったもん勝ちのn番煎じ媚薬ネタ。
首席錬金術師兼調査小隊隊長様に怒られないように気をつけます(手遅れ)
雰囲気「夜」があるので苦手な方は薄目推奨。期待している方はそういう設定にしていない時点でお察し。
紅紫「はいこれ」
望舒旅館露台で吟遊詩人に手渡されたのは淡い紅紫色の液体が入った硝子瓶だ。形は情愛を示す形だったと記憶している魈は色と言い形と言いあからさまに怪しい雰囲気のそれを目を細めて押し戻そうとする。
「説明も聞かないで否定するのはよくないよー これはね、旅人謹製のお薬」
「…説明を聞いてもなおさら我には不要のものだ」
立ち去ろうとしたがぐっと腕を掴まれ、有無を言わさず卓まで連れていかれた。自由と奔放を体現しているようなこの詩人には、主君であり敬愛するかの御仁とはまた別の意味でどうにも逆らえない。悪意も善意も悟らせない。しかし害意はゼロなのが余計にタチが悪いと思う。
「今旅人はね、モンドで錬金術を広く一般の人に知ってもらうために西風騎士団を手伝って錬金薬の製造販売するお仕事やってるんだ」
3601望舒旅館露台で吟遊詩人に手渡されたのは淡い紅紫色の液体が入った硝子瓶だ。形は情愛を示す形だったと記憶している魈は色と言い形と言いあからさまに怪しい雰囲気のそれを目を細めて押し戻そうとする。
「説明も聞かないで否定するのはよくないよー これはね、旅人謹製のお薬」
「…説明を聞いてもなおさら我には不要のものだ」
立ち去ろうとしたがぐっと腕を掴まれ、有無を言わさず卓まで連れていかれた。自由と奔放を体現しているようなこの詩人には、主君であり敬愛するかの御仁とはまた別の意味でどうにも逆らえない。悪意も善意も悟らせない。しかし害意はゼロなのが余計にタチが悪いと思う。
「今旅人はね、モンドで錬金術を広く一般の人に知ってもらうために西風騎士団を手伝って錬金薬の製造販売するお仕事やってるんだ」
sayuta38
DONE鍾魈短文「レベル1」魈を召喚したらレベル1でちょっと小さい魈が来た話。
レベル1「三眼五顕仙人、魈。召喚に応じ参上」
「魈~~!」
「旅人、世話になる」
何度星に願ったことか。やっとのことで空が黄金に染まり、目の前には待ち望んでいた護法夜叉・魈が目の前に現れたのだ。
「鍾離先生に来てもらった甲斐があったよ~!」
「鍾離様……?」
「久しいな、魈。旅人に頼まれ銅雀の寺まで赴き祈りの真似事などしてみたのだが、うまくいったようだ。共に旅が出来るのを喜ばしく思うぞ。俺もしばし同行しよう」
「な……鍾離様に願われてしまえば、来ない訳にはいきません。よろしくお願いします」
魈は鍾離に深々と頭を下げ、新米の長槍を地面に突き立てていた。
……ところで、魈に会うのは久しぶりであったのだが、魈はこんなに幼い顔立ちだったのかと思う程、目の前の仙人のほっぺはまろみを帯びていた。確か、身長もそこまで変わらなかったはずだったと記憶していたが、どう見ても自分よりも小さく、パイモンと同じくらいに見える。
4242「魈~~!」
「旅人、世話になる」
何度星に願ったことか。やっとのことで空が黄金に染まり、目の前には待ち望んでいた護法夜叉・魈が目の前に現れたのだ。
「鍾離先生に来てもらった甲斐があったよ~!」
「鍾離様……?」
「久しいな、魈。旅人に頼まれ銅雀の寺まで赴き祈りの真似事などしてみたのだが、うまくいったようだ。共に旅が出来るのを喜ばしく思うぞ。俺もしばし同行しよう」
「な……鍾離様に願われてしまえば、来ない訳にはいきません。よろしくお願いします」
魈は鍾離に深々と頭を下げ、新米の長槍を地面に突き立てていた。
……ところで、魈に会うのは久しぶりであったのだが、魈はこんなに幼い顔立ちだったのかと思う程、目の前の仙人のほっぺはまろみを帯びていた。確か、身長もそこまで変わらなかったはずだったと記憶していたが、どう見ても自分よりも小さく、パイモンと同じくらいに見える。
YmLiBItnyo12595
DONE『≒//ニアリーイコール・フェアリーテイル』両想いと片想いを同時並行していく彼らの恋物語は、こうして始まったのである。
鍾魈 ×現代AU×魔法少女AU
・注意事項
後天性女体化表現があります。
鍾魈版週ドロライ企画に投稿したものです。
第10回お題【恋のはじまり】
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sayuta38
DONEしょしょドロライ10回目(お題9回目)ホワイトデー
ホワイトデー「この日に手伝いを頼みたいのだが、空いているだろうか」
鍾離が指しているのは三月十四日だった。特に何の疑問も持たずに二つ返事で魈は了承し、当日鍾離の家へと訪れていた。
「朝からすまないな。装具を外して上からこれを羽織り、そこの紙袋を持って俺と共に璃月港を回って欲しいんだ」
「……承知しました」
凡人に扮して鍾離の手伝いをして欲しいということなのだろう。手伝いならばといそいそと葬具を外し、身の丈程の長い外套を羽織った。紙袋はいくつも用意してあり、確かに鍾離一人で持ち歩くには大変そうだった。
「では行こうか」
「はい」
璃月港を鍾離と共に歩く。何処へ向かうのかと思ったが、三歩程歩いたところで鍾離が女人に話し掛けていた。魈の知らないただの凡人へ、鍾離は紙袋から一つ包みを渡し手短に会話をした後、別れの挨拶をしていた。そして、また三歩程歩いては別の女人へと声を掛けに行っている。何用で女人へ話し掛け、何用で包みを渡しているのか、魈へ説明がなかったので想像もできなかった。これは一体どういうことだろうか。疑問を口にしたくても次から次へと鍾離は女人に包みを渡すべく声を掛けているので、口を挟むこともできなかった。
4178鍾離が指しているのは三月十四日だった。特に何の疑問も持たずに二つ返事で魈は了承し、当日鍾離の家へと訪れていた。
「朝からすまないな。装具を外して上からこれを羽織り、そこの紙袋を持って俺と共に璃月港を回って欲しいんだ」
「……承知しました」
凡人に扮して鍾離の手伝いをして欲しいということなのだろう。手伝いならばといそいそと葬具を外し、身の丈程の長い外套を羽織った。紙袋はいくつも用意してあり、確かに鍾離一人で持ち歩くには大変そうだった。
「では行こうか」
「はい」
璃月港を鍾離と共に歩く。何処へ向かうのかと思ったが、三歩程歩いたところで鍾離が女人に話し掛けていた。魈の知らないただの凡人へ、鍾離は紙袋から一つ包みを渡し手短に会話をした後、別れの挨拶をしていた。そして、また三歩程歩いては別の女人へと声を掛けに行っている。何用で女人へ話し掛け、何用で包みを渡しているのか、魈へ説明がなかったので想像もできなかった。これは一体どういうことだろうか。疑問を口にしたくても次から次へと鍾離は女人に包みを渡すべく声を掛けているので、口を挟むこともできなかった。
sayuta38
DOODLE魔法少女パロの鍾魈魔法少女パロの「降魔は我がすべき務め! 風に抱かれ永遠に眠るがいい!」
「グワァァ」
魔法のステッキを振りかざし、円を描き風を集め対象へと放つ。それはスライムのようなものに見事命中し、対象は光を放ちながらどろどろに溶けていき断末魔をあげていた。
「う……うぅ……おれはただ……あの子と、仲良くしたかった……だけなんだ……」
じゅわりと歪な影が空中へ霧散していく。
「仲良くしたければ、いくらでも方法はあろう。こんな形でなくてもな」
霧散した中心から、美しい核と一人の男が現れた。核を手で囲み、そっとステッキの中心へと誘導する。これでやっと八つ目だ。
近くで倒れている少女は、スライムだった男に襲われ気絶していた。好いているが振り向いて貰えない気持ちに付け込まれ、妖魔となったのであろう。こんな場所で寝かせるのもと思い、硬いコンクリートから近くの公園の芝生の上へと運んでやった。
2847「グワァァ」
魔法のステッキを振りかざし、円を描き風を集め対象へと放つ。それはスライムのようなものに見事命中し、対象は光を放ちながらどろどろに溶けていき断末魔をあげていた。
「う……うぅ……おれはただ……あの子と、仲良くしたかった……だけなんだ……」
じゅわりと歪な影が空中へ霧散していく。
「仲良くしたければ、いくらでも方法はあろう。こんな形でなくてもな」
霧散した中心から、美しい核と一人の男が現れた。核を手で囲み、そっとステッキの中心へと誘導する。これでやっと八つ目だ。
近くで倒れている少女は、スライムだった男に襲われ気絶していた。好いているが振り向いて貰えない気持ちに付け込まれ、妖魔となったのであろう。こんな場所で寝かせるのもと思い、硬いコンクリートから近くの公園の芝生の上へと運んでやった。
sayuta38
DONEしょしょドロライ9回目「名前を呼んで」
名前を呼んで「降魔大聖、今日は共に任務に当たれて良かった。またいずれ」
「あの、帝君」
「では旅人、また会おう」
いつもなら望舒旅館でしばし茶を飲み休憩してから璃月港に帰るところを、旅人が口を挟む暇もなく常人ではないスピードで、帝君は帰離原に向かって去って行った。旅人も、なんとなく気まずい空気が流れているのを感じ取っていたのであろう。指で頬を掻き、どうしたものかと魈に尋ねてきた。
「魈……その、先生と喧嘩でもしたの……?」
「喧嘩……?」
喧嘩とは、お互い譲れないことがあり、折り合いがつかなかった場合にそうなるものだ。しかし、帝君と口論をした覚えはなく、不手際があり叱責された覚えもない。何について謝罪すれば良いかわからない状態なのだが、何か確実に帝君の機嫌を損ねていることはわかっていた。
2523「あの、帝君」
「では旅人、また会おう」
いつもなら望舒旅館でしばし茶を飲み休憩してから璃月港に帰るところを、旅人が口を挟む暇もなく常人ではないスピードで、帝君は帰離原に向かって去って行った。旅人も、なんとなく気まずい空気が流れているのを感じ取っていたのであろう。指で頬を掻き、どうしたものかと魈に尋ねてきた。
「魈……その、先生と喧嘩でもしたの……?」
「喧嘩……?」
喧嘩とは、お互い譲れないことがあり、折り合いがつかなかった場合にそうなるものだ。しかし、帝君と口論をした覚えはなく、不手際があり叱責された覚えもない。何について謝罪すれば良いかわからない状態なのだが、何か確実に帝君の機嫌を損ねていることはわかっていた。
sayuta38
DONE鍾魈短文「バレンタイン」バレンタイン「鍾離様……! あ……」
夜も更けた頃、鍾離の家の前で彼の帰りを待っていた。チョコを渡したら、すぐに帰るつもりであったのに、鍾離は両手いっぱいに紙袋をぶら下げており、とても受け取れる体勢ではなかった。
「魈。珍しいな。何か俺に用があったのか?」
「はい……鍾離様、その荷物は?」
「今日はバレンタインデーだからか、妙にチョコレートを貰ってしまってな。皆義理チョコだと言っていたが、一人では到底食べキレそうにない。お前も食べるか?」
「それは、鍾離様にと贈られたものですので、我がいただく訳にはいきません」
「そうか。して、お前の用件を聞こう」
「……また改めます。では」
今日は旅人の任務に同行を頼まれたのだが、内容がチョコレートを作るからとカカオを煎ったり磨り潰したりというものだった。力仕事が多いからと呼ばれたようだ。確かに困ったことがあれば呼べとは言ったが……と思いつつも、結局最後まで手伝ってしまった。旅人は色んな人に配ると言って、溶かしたチョコを色々な型に入れ固めていた。チョコが余ったから魈も先生に渡すチョコを作れば良いと、流されるままにチョコを作ってしまったのだ。旅人が丁寧に包んでくれたので、渡すだけ渡そうとここまで来たのである。
1764夜も更けた頃、鍾離の家の前で彼の帰りを待っていた。チョコを渡したら、すぐに帰るつもりであったのに、鍾離は両手いっぱいに紙袋をぶら下げており、とても受け取れる体勢ではなかった。
「魈。珍しいな。何か俺に用があったのか?」
「はい……鍾離様、その荷物は?」
「今日はバレンタインデーだからか、妙にチョコレートを貰ってしまってな。皆義理チョコだと言っていたが、一人では到底食べキレそうにない。お前も食べるか?」
「それは、鍾離様にと贈られたものですので、我がいただく訳にはいきません」
「そうか。して、お前の用件を聞こう」
「……また改めます。では」
今日は旅人の任務に同行を頼まれたのだが、内容がチョコレートを作るからとカカオを煎ったり磨り潰したりというものだった。力仕事が多いからと呼ばれたようだ。確かに困ったことがあれば呼べとは言ったが……と思いつつも、結局最後まで手伝ってしまった。旅人は色んな人に配ると言って、溶かしたチョコを色々な型に入れ固めていた。チョコが余ったから魈も先生に渡すチョコを作れば良いと、流されるままにチョコを作ってしまったのだ。旅人が丁寧に包んでくれたので、渡すだけ渡そうとここまで来たのである。
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DONE『室咲』(どうして鍾離様との会話だけが、こんなにも難しく感じてしまうのだろう)
鍾離とうまく話が出来なくて、悩んでいる魈の話。
登場人物⇒鍾離、魈、空、パイモン
・注意事項
魈が小鳥になれる設定が付いています。
鍾魈版週ドロライ企画に投稿したものです。
第8回お題【①バレンタイン】
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sayuta38
DONE鍾魈短文「猫の日」猫に変化して鍾離のとこに行ってみる魈の話
猫の日「ニャオ」
「ニャ、ニャニャッ」
……何やら、今日の旅館には……いつもより猫がたくさん集まっている気がしている。朝からミャオミャオと鳴き声がそこかしこから聞こえ、最上階の自分が寝泊まりしている部屋の前にも陽だまりを求めて猫が数匹丸まっていた。露台から下を見ても、テーブルの上や下にと、たくさんの猫がいる。
「……!?」
椅子に腰掛け、茶を飲んでいる男性が目に入る。それは紛れもなく弥怒が作成した衣服であり、それに袖を通しているのはもちろん彼の凡人、鍾離であった。
鍾離は茶を一口飲んではそれをテーブルに置き、膝の上に座っている猫の背を撫でている。鍾離は猫が好きだったのだろうか。テーブルに猫が登って来ても、それを見て行儀が悪いと叱責することもなく、にこやかに微笑んで手を伸ばしている。
1778「ニャ、ニャニャッ」
……何やら、今日の旅館には……いつもより猫がたくさん集まっている気がしている。朝からミャオミャオと鳴き声がそこかしこから聞こえ、最上階の自分が寝泊まりしている部屋の前にも陽だまりを求めて猫が数匹丸まっていた。露台から下を見ても、テーブルの上や下にと、たくさんの猫がいる。
「……!?」
椅子に腰掛け、茶を飲んでいる男性が目に入る。それは紛れもなく弥怒が作成した衣服であり、それに袖を通しているのはもちろん彼の凡人、鍾離であった。
鍾離は茶を一口飲んではそれをテーブルに置き、膝の上に座っている猫の背を撫でている。鍾離は猫が好きだったのだろうか。テーブルに猫が登って来ても、それを見て行儀が悪いと叱責することもなく、にこやかに微笑んで手を伸ばしている。
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DONE『晩翠』「彼らを思い出し、『今ここに居てくれたら』と思うこの気持ちこそ、俺達が確かに共に居た証なのだから」
24年、海灯祭イベントを終えて書いた話です。今と過去と、これからの話。
今年も素敵なイベントをありがとうございました。海灯祭を祝して。
登場人物⇒鍾離、魈。五夜叉。セリフのみでパイモン。
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sayuta38
DONE鍾魈短文「練習」凧揚げを一緒にしようと誘う練習をしに鍾離の家に来た魈の話(海灯祭バレ含みます)
練習「ほう……これは」
珍しいこともあるものだ。
「鍾離様……その……」
控えめに叩かれた玄関のドアを開ければ、そこには魈がいた。
「どうした?」
何やら言いにくそうに目線をウロウロとさせ、その後俯き、ちらりと上目遣いで俺を見ている。
「我の……練習相手になっていただけないでしょうか……」
「…………ほう?」
思わず間抜けな返答をしてしまった。魈がここを尋ねてくることも珍しいが、例えば、魈が槍の稽古をつけて欲しいと思っていた場合このような言い方はしない。つまり、手合わせの誘いではないということだ。
ゆっくり話を聞こうと家の中へ魈を通す。椅子に座るように言えば、立ったままで良いと話を始めた。
「我は……その、他者を誘って遊びに興じたことがなく……」
2641珍しいこともあるものだ。
「鍾離様……その……」
控えめに叩かれた玄関のドアを開ければ、そこには魈がいた。
「どうした?」
何やら言いにくそうに目線をウロウロとさせ、その後俯き、ちらりと上目遣いで俺を見ている。
「我の……練習相手になっていただけないでしょうか……」
「…………ほう?」
思わず間抜けな返答をしてしまった。魈がここを尋ねてくることも珍しいが、例えば、魈が槍の稽古をつけて欲しいと思っていた場合このような言い方はしない。つまり、手合わせの誘いではないということだ。
ゆっくり話を聞こうと家の中へ魈を通す。椅子に座るように言えば、立ったままで良いと話を始めた。
「我は……その、他者を誘って遊びに興じたことがなく……」
sayuta38
DONEしょしょドロライ8回目「甘やかしたい」
魈を甘やかしたくて望舒旅館に来る先生の話
甘やかしたい「魈、今日はお前に頼み事があって来たのだが、時間はあるか?」
「鍾離様。どのようなご用件でしょうか」
望舒旅館の露台にて、いつになく真剣な顔で鍾離がそう言っていた。一体どのような用事なのだろうかと魈も身構えるのは、ごく自然な事である。
「俺を頼って欲しい」
魈は真剣に鍾離の目を見て言葉を待ったのだが、耳から入ってきた至極単純な言葉が、脳内で処理できずにいた。
「…………は? え、えぇと、鍾離様以上に頼りになる方はいないと思いますが……」
「違うな、甘えて欲しい」
「甘え……?」
「ううむ。どう言えば魈に伝わるのだろうか。何か困ったことはないか?」
「いえ、特には……」
鍾離の意図が全く掴めない。鍾離は尚も考え込んでしまっているので申し訳なく思ってしまう。しかし、鍾離に期待されていることが、全くもってわからないのだ。
2739「鍾離様。どのようなご用件でしょうか」
望舒旅館の露台にて、いつになく真剣な顔で鍾離がそう言っていた。一体どのような用事なのだろうかと魈も身構えるのは、ごく自然な事である。
「俺を頼って欲しい」
魈は真剣に鍾離の目を見て言葉を待ったのだが、耳から入ってきた至極単純な言葉が、脳内で処理できずにいた。
「…………は? え、えぇと、鍾離様以上に頼りになる方はいないと思いますが……」
「違うな、甘えて欲しい」
「甘え……?」
「ううむ。どう言えば魈に伝わるのだろうか。何か困ったことはないか?」
「いえ、特には……」
鍾離の意図が全く掴めない。鍾離は尚も考え込んでしまっているので申し訳なく思ってしまう。しかし、鍾離に期待されていることが、全くもってわからないのだ。
つつ(しょしょ垢)
DONE2024年祭りの3日目を噛み締めていたら生まれた鍾魈。このあとある方とのリプやり取りで「霄灯を作ろう」は「たまごを作ろう」の隠語であると相成りましたことをご報告いたします。ん??
霄灯霄灯
翹英荘での新たな縁を堪能したところで、別れ際にパイモンから
「そういえばしょーりぃ、聞いて驚けー、なんと、あの魈が霄灯を自分で作ってオイラたちと一緒に飛ばしたんだぞ!」
と心を揺るがす報告を受け、顔では柔らかな笑みを浮かべたつもりながらも、冷ややかな旅人の目に見透かされたようだった。
璃月港に戻るという堂主の言葉に、もう一晩茶を堪能したいと別行動の許可を貰い最寄りの宿を取る。部屋に案内されるや否や『道』を開いた。
目の前には霄灯に彩られた望舒旅館が広がり、祭りの雰囲気に浮き足立つ客たちの間を抜けていく夜風は冷たく、対照的にざわつく鍾離の心を撫でていく。
勘のいい堂主に後日ここに来ていたことがバレるのも面倒かと姿を消して最上階に向かう。
2203翹英荘での新たな縁を堪能したところで、別れ際にパイモンから
「そういえばしょーりぃ、聞いて驚けー、なんと、あの魈が霄灯を自分で作ってオイラたちと一緒に飛ばしたんだぞ!」
と心を揺るがす報告を受け、顔では柔らかな笑みを浮かべたつもりながらも、冷ややかな旅人の目に見透かされたようだった。
璃月港に戻るという堂主の言葉に、もう一晩茶を堪能したいと別行動の許可を貰い最寄りの宿を取る。部屋に案内されるや否や『道』を開いた。
目の前には霄灯に彩られた望舒旅館が広がり、祭りの雰囲気に浮き足立つ客たちの間を抜けていく夜風は冷たく、対照的にざわつく鍾離の心を撫でていく。
勘のいい堂主に後日ここに来ていたことがバレるのも面倒かと姿を消して最上階に向かう。
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DONE鍾魈短文「少しずつ」海灯祭3日目を踏まえたその後の話。
ネタバレ注意です。
往生堂へいってみる魈君の話。
少しずつ 往生堂か……。
場所が何処にあるのか知らない訳ではない。鍾離が時間があれば往生堂の者と話をしてみるといいと言ったのだ。しかし、仙人が突然理由もなく往生堂を訪れるなど、全くどのような話をすれば良いかわからなかった。
胡堂主とは会話こそしたことがあるものの、挨拶以上どうしたら良いか、やはりわからない。最近の鍾離の様子でも聞けば良いのか。しかし、鍾離がそこで働いているのに他人に聞くのもどうかと思うのだ。
来てみるといい。という鍾離の助言の元、ひとまず偵察がてら往生堂の屋根へと降り立った。意外と従業員はいるようだ。話し掛けてみるならば、男性の方が良いだろうかと、そこで働いている人々に目を向ける。
何か困り事でもあるならば助力がてら話しをしても良いとは思うが、今日の往生堂は特に事件もなく淡々と皆責務をこなしているようである。それもそうだ。仙人の助けがいる程の大事件が、鍾離もいるこの場で頻繁に起こるはずもない。
2143場所が何処にあるのか知らない訳ではない。鍾離が時間があれば往生堂の者と話をしてみるといいと言ったのだ。しかし、仙人が突然理由もなく往生堂を訪れるなど、全くどのような話をすれば良いかわからなかった。
胡堂主とは会話こそしたことがあるものの、挨拶以上どうしたら良いか、やはりわからない。最近の鍾離の様子でも聞けば良いのか。しかし、鍾離がそこで働いているのに他人に聞くのもどうかと思うのだ。
来てみるといい。という鍾離の助言の元、ひとまず偵察がてら往生堂の屋根へと降り立った。意外と従業員はいるようだ。話し掛けてみるならば、男性の方が良いだろうかと、そこで働いている人々に目を向ける。
何か困り事でもあるならば助力がてら話しをしても良いとは思うが、今日の往生堂は特に事件もなく淡々と皆責務をこなしているようである。それもそうだ。仙人の助けがいる程の大事件が、鍾離もいるこの場で頻繁に起こるはずもない。
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DONE『紅包』「まさかこの歳になって、このようなものを貰う機会を得ようとは……実に面白い」
某スタンプが可愛すぎて突発的に書いた短文です。
鍾離が魈に紅包をあげた日の話。
登場人物⇒胡桃、鍾離、魈。セリフのみで旅人、パイモン。
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sayuta38
DONE鍾魈短文「おこづかい」先生におこづかいを貰ってかいものに行くしょしょ
おこづかい「商店へ買い物に行こうと思うのだが、お前も共にどうだ」
いつもは時間が掛かりすぎるからと一人で買い物に行く鍾離が、今日は何故か魈を誘いに望舒旅館へと来ていた。
「時間は問題ありませんが、我はモラの持ち合わせもなければ、欲しいと思っているものもありません。それでも良ければ……になりますが」
「俺とて特に欲しいものがある訳ではない。ブラブラと店を回り、心を惹かれた物を買って帰る。言わば無駄遣いの散歩だ」
「無駄遣い……」
「ちなみにモラの心配はしなくていい。俺は今日お前に小遣いを渡そうと、お前の分のモラも持ってきている」
「小遣い……?」
なんと返せば良いかわからず、鍾離の言う単語を復唱することしか出来なくなっている。今の鍾離の言葉を要約するならば、鍾離からわざわざモラを貰って、無駄遣いの散歩をするということだ。
2477いつもは時間が掛かりすぎるからと一人で買い物に行く鍾離が、今日は何故か魈を誘いに望舒旅館へと来ていた。
「時間は問題ありませんが、我はモラの持ち合わせもなければ、欲しいと思っているものもありません。それでも良ければ……になりますが」
「俺とて特に欲しいものがある訳ではない。ブラブラと店を回り、心を惹かれた物を買って帰る。言わば無駄遣いの散歩だ」
「無駄遣い……」
「ちなみにモラの心配はしなくていい。俺は今日お前に小遣いを渡そうと、お前の分のモラも持ってきている」
「小遣い……?」
なんと返せば良いかわからず、鍾離の言う単語を復唱することしか出来なくなっている。今の鍾離の言葉を要約するならば、鍾離からわざわざモラを貰って、無駄遣いの散歩をするということだ。
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DONE『勿忘草』「きっとあなたに出逢うためにまた、生まれてきたのだろう」
鍾魈×転生型現代AU×ガーデンバース
・注意事項
R-15程度の表現、死に別れの描写があります。
苦手な方はご注意ください。
鍾魈版週ドロライ企画に投稿したものです。
第7回お題【③わたしの夢】
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DONE鍾魈短文「豆まき」恵方巻き食べたり豆まきしたりするしょしょ
豆まき 留雲真君……もとい、閑雲が璃月港に住むようになってから、ますます鍾離が望舒旅館へ来る回数が多くなった気がする。近所に旧友が住むことになり、顔を合わせる機会や共に食事をする回数が増えたそうだ。港にいる弟子達を遠くから見守っていたり、時には手を貸している姿をよく見かけると望舒旅館に来る度に鍾離はそのような話をしてくれる。
「鍾離様、最近は往生堂の仕事も落ち着いていらっしゃるのですか?」
「そうでもない。毎日のように堂主から頼まれごとがあり、何かしら仕事はしている」
「では……なぜ鍾離様は最近よく望舒旅館にいらっしゃるのでしょうか……?」
少し前までは魈がいない時に鍾離が望舒旅館に来ていようが、特に自分に用事がある訳ではないと思い気に留めていなかったが、最近はその頻度から明らかに魈に会いに来ている気がしてならない。あまり不在にしているのも気が悪いかと思い、降魔が忙しくなければ一旦望舒旅館へ帰り、鍾離を迎えるようにしている。
2308「鍾離様、最近は往生堂の仕事も落ち着いていらっしゃるのですか?」
「そうでもない。毎日のように堂主から頼まれごとがあり、何かしら仕事はしている」
「では……なぜ鍾離様は最近よく望舒旅館にいらっしゃるのでしょうか……?」
少し前までは魈がいない時に鍾離が望舒旅館に来ていようが、特に自分に用事がある訳ではないと思い気に留めていなかったが、最近はその頻度から明らかに魈に会いに来ている気がしてならない。あまり不在にしているのも気が悪いかと思い、降魔が忙しくなければ一旦望舒旅館へ帰り、鍾離を迎えるようにしている。