あまみ
DOODLE圭藤二年生になった春の話です。
珍しく葵ちゃんが男の子で、珍しく葵ちゃんが片想いしてる。
圭藤あ、咲いてる。
なんて今さら意識したのは、通学の電車の中だった。
流れる景色がやけに白いのは、線路沿いに植えられた桜の花びらが満開になっているから。
こんなタイミングで気がついたのは、春休み中で制服姿のやつがほとんど乗っていないからだ。野球部の朝練に向かう時間では、サラリーマンたちと押しくらまんじゅうするにはまだ早い。
たしか、我が市営団地の周りでも花を咲かせていたはずだ。入学や進級のタイミングで、姉や妹と写真を撮った記憶はある。
毎年、なんなら今朝だって横を通り過ぎて来たはずなのに、こんなにも視界に入らないものだとは。朝は練習のことで頭いっぱいで、夜は夕ごはんの段取りを組み立てるのに夢中になっているからかもしれない。
3861なんて今さら意識したのは、通学の電車の中だった。
流れる景色がやけに白いのは、線路沿いに植えられた桜の花びらが満開になっているから。
こんなタイミングで気がついたのは、春休み中で制服姿のやつがほとんど乗っていないからだ。野球部の朝練に向かう時間では、サラリーマンたちと押しくらまんじゅうするにはまだ早い。
たしか、我が市営団地の周りでも花を咲かせていたはずだ。入学や進級のタイミングで、姉や妹と写真を撮った記憶はある。
毎年、なんなら今朝だって横を通り過ぎて来たはずなのに、こんなにも視界に入らないものだとは。朝は練習のことで頭いっぱいで、夜は夕ごはんの段取りを組み立てるのに夢中になっているからかもしれない。
あまみ
DOODLE圭藤♀エイプリルフールネタ。
葵ちゃんは先天性女体化です〜
圭藤♀「おはよう藤堂、今日もかわいいな」
しぱしぱと高速まばたきを繰り返す葵っちに、やべっこれは完全ミスったわ、要圭はダッシュで校門からやり直したい気持ちを必死に押さえつける。
4月1日、今日こそは“智将のフリした要圭“として完璧に騙し通してやろうと企んでいたのに。心の奥底で、もうひとりの自分がクスクスとあざ笑っている姿が脳裏に浮かぶ。気まぐれ、そして抜き打ちで行う『圭ちゃんでしょうか智将でしょうかクイズ』は今のところ連敗を期している。
「おう、おはよう。智将こそ今日もイケメンじゃん」
予想していた強めのツッコミとは裏腹に、葵っちはからりと笑う。
え、え、バレてない?ていうか葵っちって智将のことイケメンとか思ってたの?
687しぱしぱと高速まばたきを繰り返す葵っちに、やべっこれは完全ミスったわ、要圭はダッシュで校門からやり直したい気持ちを必死に押さえつける。
4月1日、今日こそは“智将のフリした要圭“として完璧に騙し通してやろうと企んでいたのに。心の奥底で、もうひとりの自分がクスクスとあざ笑っている姿が脳裏に浮かぶ。気まぐれ、そして抜き打ちで行う『圭ちゃんでしょうか智将でしょうかクイズ』は今のところ連敗を期している。
「おう、おはよう。智将こそ今日もイケメンじゃん」
予想していた強めのツッコミとは裏腹に、葵っちはからりと笑う。
え、え、バレてない?ていうか葵っちって智将のことイケメンとか思ってたの?
あまみ
DOODLE智葵♀ホワイトデーです。
智将は葵ちゃん♀と付き合ってるし圭ちゃんは葵ちゃん♂と付き合ってる世界線です〜
智葵♀あ!智将なにそれズルイ!!
不意にリビングに響いた声に、ドキッと数センチソファから浮かぶ。手にしたスマホだけは落とさないように、しっかり握りしめたまま。
彼は風呂上がりで、俺は風呂待ちをしていて、テーブルの上のイチゴは母さんの日帰りバスツアーのお土産で、主人は早々に自分の取り分を食べ終わっている。
何か、ずるいと非難されるようなことはあるだろうか。
そりゃあ、この液晶画面の向こうには『智将次の休みどっか行かねえ?』なんて浮かれるようなメッセージがきているけれど、まさかそこまでは見えていないだろうし。
「なんだ、これは余ってるわけじゃないぞ」
適当にあたりをつけて真っ赤なイチゴをかばうと、「違うってえ、俺これ知らない!」、ぐいっと両手ごとスマホを引き寄せられる。
1096不意にリビングに響いた声に、ドキッと数センチソファから浮かぶ。手にしたスマホだけは落とさないように、しっかり握りしめたまま。
彼は風呂上がりで、俺は風呂待ちをしていて、テーブルの上のイチゴは母さんの日帰りバスツアーのお土産で、主人は早々に自分の取り分を食べ終わっている。
何か、ずるいと非難されるようなことはあるだろうか。
そりゃあ、この液晶画面の向こうには『智将次の休みどっか行かねえ?』なんて浮かれるようなメッセージがきているけれど、まさかそこまでは見えていないだろうし。
「なんだ、これは余ってるわけじゃないぞ」
適当にあたりをつけて真っ赤なイチゴをかばうと、「違うってえ、俺これ知らない!」、ぐいっと両手ごとスマホを引き寄せられる。
あまみ
DOODLE智将×葵ちゃん♀やきもちネタが好きすぎる
葵ちゃんは先天性女体化です
智葵♀要圭待機列、ただいま十分待ちです。
決して長くはない、朝練からホームルームまでの自由時間。廊下へと伸びる女子生徒の行列を眺めながら、藤堂はぼんやり頬杖をつく。
昼休みは大体野球部で集まり、放課後は即グラウンドへさらわれる。そんなスーパー大スター要圭様を、いちばんとっ捕まえられるタイミングが一日のうちの今だった。
誕生日、体育祭、野球部の活躍が校内に報道されたあとなどなど、ことあるごとに彼を目当てに女子が集まる。今朝はなんだろうな、なんて答えの出ない問いを浮かべていると、「昨日、男子と一年体育館共同だったらしいよ」、クラスメイトが爆速で回収してくれた。
ふうん、と真新しいブレザーたちを見やる。
智将、要圭様の采配は、野球以外でもさぞかし光り輝いていたことでしょう。
3924決して長くはない、朝練からホームルームまでの自由時間。廊下へと伸びる女子生徒の行列を眺めながら、藤堂はぼんやり頬杖をつく。
昼休みは大体野球部で集まり、放課後は即グラウンドへさらわれる。そんなスーパー大スター要圭様を、いちばんとっ捕まえられるタイミングが一日のうちの今だった。
誕生日、体育祭、野球部の活躍が校内に報道されたあとなどなど、ことあるごとに彼を目当てに女子が集まる。今朝はなんだろうな、なんて答えの出ない問いを浮かべていると、「昨日、男子と一年体育館共同だったらしいよ」、クラスメイトが爆速で回収してくれた。
ふうん、と真新しいブレザーたちを見やる。
智将、要圭様の采配は、野球以外でもさぞかし光り輝いていたことでしょう。
あまみ
DOODLE智藤♀バレンタインのようなやつ
あおいちゃんは先天性女体化です〜
智藤♀君が甘いものはあんまり、というのは、なぜか本人からじゃなく彼の双子の兄弟から聞いていた。
「甘いものというか、添加物があんまり、というか」
「ね、ね、意味わかんないでしょ?まあ智将の分は俺が引き受けるから、葵ちゃんも安心して」
「は、は?それこそ意味わかんないだろ主人、勝手に横から奪い取るな」
たしかに、要がぼりぼりぼりぼり食ってる毎日のおやつも、彼が手をつけているところは見たことがない。けどまあ、俺の作る弁当は特に文句もなく食べてくれるんだけどな。なんて、空っぽになった本日のお弁当箱を眺めながらニヤつく。
だから、2月14日も別に全然心配してなかった。
「智将、中学のときも断りまくってたよ」って言質は取れてるし、断りきれなかったとしても要行きだろう。
622「甘いものというか、添加物があんまり、というか」
「ね、ね、意味わかんないでしょ?まあ智将の分は俺が引き受けるから、葵ちゃんも安心して」
「は、は?それこそ意味わかんないだろ主人、勝手に横から奪い取るな」
たしかに、要がぼりぼりぼりぼり食ってる毎日のおやつも、彼が手をつけているところは見たことがない。けどまあ、俺の作る弁当は特に文句もなく食べてくれるんだけどな。なんて、空っぽになった本日のお弁当箱を眺めながらニヤつく。
だから、2月14日も別に全然心配してなかった。
「智将、中学のときも断りまくってたよ」って言質は取れてるし、断りきれなかったとしても要行きだろう。
あまみ
DOODLE圭藤モーニングルーティングッズの圭ちゃんの寝癖かわいいよね〜てやつ
圭藤要圭か“じゃない方か“のクイズは、それはそれは盛り上がる。
今日は食べカスがついてるから要、今日のマフラーの巻き方は智将。今日は五分に一回あくびしてるから要、今日の服の脱ぎ方は智将。
「おはよ智将」
「ああ、おはよう藤堂」
精度が上がって、後ろ姿だけでも見抜けたときの嬉しさといったら。
要圭か“じゃない方か“のクイズは、それはそれは盛り上がる。もちろん、こっそり、俺の中だけで。
今朝はもう、本当に見事なサービス問題だった。
顔も歩き方も、なんなら背中すら見なくったって自信満々正解を叩き出せる。
悪魔かってくらい頭をぴょんぴょんとがらせた、グラウンドに伸びる薄い影。
「よー要、芸術的な頭してんじゃん」
気軽にぽこんと後ろから小突いて、「やっぱり藤堂もそう思うか」、お気楽とはほど遠いリアクションにえっと背を伸ばす。
1002今日は食べカスがついてるから要、今日のマフラーの巻き方は智将。今日は五分に一回あくびしてるから要、今日の服の脱ぎ方は智将。
「おはよ智将」
「ああ、おはよう藤堂」
精度が上がって、後ろ姿だけでも見抜けたときの嬉しさといったら。
要圭か“じゃない方か“のクイズは、それはそれは盛り上がる。もちろん、こっそり、俺の中だけで。
今朝はもう、本当に見事なサービス問題だった。
顔も歩き方も、なんなら背中すら見なくったって自信満々正解を叩き出せる。
悪魔かってくらい頭をぴょんぴょんとがらせた、グラウンドに伸びる薄い影。
「よー要、芸術的な頭してんじゃん」
気軽にぽこんと後ろから小突いて、「やっぱり藤堂もそう思うか」、お気楽とはほど遠いリアクションにえっと背を伸ばす。
あまみ
DOODLE智藤♀と圭藤智将と葵ちゃん♀が付き合ってて圭ちゃんと葵ちゃん♂が付き合ってるシリーズ。
全員同時に存在してます。
お互いにむーってなってたらかわいいな〜て話。
智藤♀と圭藤♂俺たちとっても仲良しです。
朝はドツきながら自主練をこなすし、昼は課題のノートを見せる見せないで言い争う。夕方はお互いの恋人を駅まで送り届けていっしょに帰るし、夜はさっさと風呂入れとケツを叩いてる。
行ってきますもいただきますもただいまもいっしょな仲だからさ、「明日、葵っちと映画行くんだ〜」「そうか、俺も藤堂と行くぞ」、翌日の予定が被ることだって珍しくない。
俺たち、とっても仲良しな双子です。
まあ、さすがに映画のタイトルまでおそろいってわけじゃなさそうだが。
なんとなくあたりを見渡して、人の多さに藤堂の手をきゅっと握る。いるかいないかわからない双子の片割れより、かわいらしくて人目を引く本日の相方のほうがずっと大事だ。
2371朝はドツきながら自主練をこなすし、昼は課題のノートを見せる見せないで言い争う。夕方はお互いの恋人を駅まで送り届けていっしょに帰るし、夜はさっさと風呂入れとケツを叩いてる。
行ってきますもいただきますもただいまもいっしょな仲だからさ、「明日、葵っちと映画行くんだ〜」「そうか、俺も藤堂と行くぞ」、翌日の予定が被ることだって珍しくない。
俺たち、とっても仲良しな双子です。
まあ、さすがに映画のタイトルまでおそろいってわけじゃなさそうだが。
なんとなくあたりを見渡して、人の多さに藤堂の手をきゅっと握る。いるかいないかわからない双子の片割れより、かわいらしくて人目を引く本日の相方のほうがずっと大事だ。
あまみ
DOODLE圭ちゃんと葵ちゃん♂が付き合ってて智将と葵ちゃん♀が付き合っている謎の世界です。みんな出てきます。圭藤「あー!葵っち、なんでマフラーしてないの!?」
遠くから響いたその声にビクッと背筋を正してしまったのは、まさに今、マフラーに手をかけていたからだ。
いや、今日別になくてもいけるだろこんなもん春だぞ春、そーんなことないよ葵っちどこ住んでる!?俺たちなんて徒歩五分でマフラーぐるぐる巻きにしてきたもんね!
続く会話を眺めながら、ああ、そういやあいつはマフラーをしていなかったなと思い起こす。同じ家から、同じ電車に乗り、同じ校門をくぐった双子の彼。要圭は、彼を葵っち、こちらを葵ちゃんと呼んでいる。
「なあんでえー!約束したじゃん、お互いのマフラー交換してつけよ♡って!」
「はあ!?……あー、ああ、今度マフラー持ってきたときなって言っただろ!」
1114遠くから響いたその声にビクッと背筋を正してしまったのは、まさに今、マフラーに手をかけていたからだ。
いや、今日別になくてもいけるだろこんなもん春だぞ春、そーんなことないよ葵っちどこ住んでる!?俺たちなんて徒歩五分でマフラーぐるぐる巻きにしてきたもんね!
続く会話を眺めながら、ああ、そういやあいつはマフラーをしていなかったなと思い起こす。同じ家から、同じ電車に乗り、同じ校門をくぐった双子の彼。要圭は、彼を葵っち、こちらを葵ちゃんと呼んでいる。
「なあんでえー!約束したじゃん、お互いのマフラー交換してつけよ♡って!」
「はあ!?……あー、ああ、今度マフラー持ってきたときなって言っただろ!」
あまみ
DOODLE圭藤よく考えたら圭ちゃんと葵ちゃんも体格差あるよね〜かわいいね〜って話。
葵ちゃんは男の子です!
圭藤藤堂葵様は、それはそれはかっこいい。
背も高くって、髪も金髪なんかにしちゃってて、野球も上手くって、声だってでかくって、補習にだって付き合ってくれる。
藤堂葵様は、それはそれはかっこいい。
「好き嫌いなくなんでも食ってるからな」「いいだろ、似合ってるだろ」「まあ、天才が努力したらこんなもんよ」「それはお前には言われたくねえよ」「要がさびしいっつうから仕方なくな、仕方なく」。
葵お兄様〜と泣きつけば、いつから弟になったんだよ!なんて嫌そうにしながらも懐に俺を招いてくれる。
葵お兄様〜!と抱きつけば、ったく調子いいな、なんて呆れながらもくしゃくしゃと撫で回してくれる。
それは、俺が葵っちと付き合いだして四苦八苦しながら脱童貞したあとも変わらない。
3365背も高くって、髪も金髪なんかにしちゃってて、野球も上手くって、声だってでかくって、補習にだって付き合ってくれる。
藤堂葵様は、それはそれはかっこいい。
「好き嫌いなくなんでも食ってるからな」「いいだろ、似合ってるだろ」「まあ、天才が努力したらこんなもんよ」「それはお前には言われたくねえよ」「要がさびしいっつうから仕方なくな、仕方なく」。
葵お兄様〜と泣きつけば、いつから弟になったんだよ!なんて嫌そうにしながらも懐に俺を招いてくれる。
葵お兄様〜!と抱きつけば、ったく調子いいな、なんて呆れながらもくしゃくしゃと撫で回してくれる。
それは、俺が葵っちと付き合いだして四苦八苦しながら脱童貞したあとも変わらない。
あまみ
DOODLE圭藤年末年始の葵ちゃん男の子バージョン
圭藤12月31日ってチートすぎる。
こんな時間に靴を履いて、こんな時間に改札をくぐって、こんな時間にこいつの顔を見ることができるんだから。
「めちゃくちゃ寒いねー、葵っち」
要は、へらへらふにゃふにゃ笑っていた。
部活のときよりしっかり着込んで全身モコモコに膨らんでるくせに、ほっぺたを赤く光らせて笑っていた。
ライブカメラに映りに行こ!とニコニコお誘いを受けたときは、何が何だかわからなかった。
「は?え?なんだって?」と眉を寄せれば、「これ!」待ってましたと言わんばかりにスマホの画面を近付けられる。いや近いわ、近すぎる。お前の顔しか見えねえっつうの。
画面に映っていたのは、俺ですら名前を聞いたことがあるような超有名なお寺だった。まだ年が変わるまで一週間もあるような時期だったけど、正月の準備だろうか、寺の入り口に設置されたカメラはそこそこの人の波を流している。
1888こんな時間に靴を履いて、こんな時間に改札をくぐって、こんな時間にこいつの顔を見ることができるんだから。
「めちゃくちゃ寒いねー、葵っち」
要は、へらへらふにゃふにゃ笑っていた。
部活のときよりしっかり着込んで全身モコモコに膨らんでるくせに、ほっぺたを赤く光らせて笑っていた。
ライブカメラに映りに行こ!とニコニコお誘いを受けたときは、何が何だかわからなかった。
「は?え?なんだって?」と眉を寄せれば、「これ!」待ってましたと言わんばかりにスマホの画面を近付けられる。いや近いわ、近すぎる。お前の顔しか見えねえっつうの。
画面に映っていたのは、俺ですら名前を聞いたことがあるような超有名なお寺だった。まだ年が変わるまで一週間もあるような時期だったけど、正月の準備だろうか、寺の入り口に設置されたカメラはそこそこの人の波を流している。
あまみ
DOODLE圭藤♀はちゃめちゃ年末の葵ちゃん〜
葵ちゃんは先天性女体化です。
圭藤♀12月の藤堂葵は忙しい。
サンタの手先から始まって、パーティのごちそう作り、年末の大掃除に、冬休みのお弁当準備、あとはまあ学校の補習をテキトーにやりすごしていたら、あっという間にお正月だ。
「いっしょにあけましておめでとうしようね」、というのは妹との毎年のお約束だ。12月31日は日付が変わるまで起きている、ただそれだけのイベントごとなのだが、いまだに成功したことはない。こたつが気持ち良すぎるせいだ。
今年も、挑戦の準備が整った。年越しそばは夕飯に食べたし、明日からのお雑煮はたんまりこしらえた。ちょっとくらい寝坊したって平気だぜ、達成感にうんうんうなずく。
「あの子、寝ちゃったよ」という姉からのチャレンジ失敗報告と、控えめなスマホの通知音が重なったのは、そんな時だった。
893サンタの手先から始まって、パーティのごちそう作り、年末の大掃除に、冬休みのお弁当準備、あとはまあ学校の補習をテキトーにやりすごしていたら、あっという間にお正月だ。
「いっしょにあけましておめでとうしようね」、というのは妹との毎年のお約束だ。12月31日は日付が変わるまで起きている、ただそれだけのイベントごとなのだが、いまだに成功したことはない。こたつが気持ち良すぎるせいだ。
今年も、挑戦の準備が整った。年越しそばは夕飯に食べたし、明日からのお雑煮はたんまりこしらえた。ちょっとくらい寝坊したって平気だぜ、達成感にうんうんうなずく。
「あの子、寝ちゃったよ」という姉からのチャレンジ失敗報告と、控えめなスマホの通知音が重なったのは、そんな時だった。
あまみ
DOODLE圭藤デートの次の日の葵ちゃん
圭藤昨日さ、すっげえ楽しかったんだよ。
要が見つけて「行きたい」っつってた場所なのにめちゃめちゃ迷ってさ、逆方向ずーっとウロウロしててすげー笑ったし。
クリスマスだから屋台?あ、マーケット?みたいなの出てて、ほんとはラーメン食うはずだったのにそこで骨つき肉とか買っちゃってさ、美味かったなー、あれ。
人も多かったけど……、そうそう、要がすげえんだよ。観光っぽい人に英語で呼び止められてて、ジェスチャーでいろいろ話しててさ、最後みんなで写真まで撮ったぜ。
そう、その人たちと。
まあ送ってもらわなかったから、その写真俺らは見てねえんだけどな。
……あー写真、そういや全然撮らなかったな、昨日。
要のSNSのやつ?見たか?
それそれ、骨つき肉の写真、あれしか撮らなかったわ。
352要が見つけて「行きたい」っつってた場所なのにめちゃめちゃ迷ってさ、逆方向ずーっとウロウロしててすげー笑ったし。
クリスマスだから屋台?あ、マーケット?みたいなの出てて、ほんとはラーメン食うはずだったのにそこで骨つき肉とか買っちゃってさ、美味かったなー、あれ。
人も多かったけど……、そうそう、要がすげえんだよ。観光っぽい人に英語で呼び止められてて、ジェスチャーでいろいろ話しててさ、最後みんなで写真まで撮ったぜ。
そう、その人たちと。
まあ送ってもらわなかったから、その写真俺らは見てねえんだけどな。
……あー写真、そういや全然撮らなかったな、昨日。
要のSNSのやつ?見たか?
それそれ、骨つき肉の写真、あれしか撮らなかったわ。
あまみ
DOODLE圭藤♀智将です。インキュバスっぽい智将と狼っぽい葵ちゃん。
葵ちゃんは先天性女体化です〜
圭藤♀でかい口でかぶりつけ。
広告でもない、おばあちゃんの格言でもない。
かわいい彼女からの、たくさんある教えのひとつだ。
「ほら、智将も食えよおにぎり」
「……大きいな」
「でかい口開けてかぶりつくんだよ、それが一番うめえんだから」
彼女は料理が得意だった。それを誰かにふるまうのも好きだった。食うだろお前もって、当たり前みたいに振り向いて、美味いだろ残すなよって、にかにかと笑ってる。
「うまいだろ」
「……」
「こら、なんか言え。せめてうなずけ。夢中で食ってんな」
俺はもちろん、そんな彼女に気を取られてばかりいる。
***
好きだからこそ、一線を引いている部分もある。
「かなめっ!」
特にいつもとまったく違う呼び方で、大声を出しちゃったりしてるときは要注意だ。高確率で混乱を誘ってる。
1323広告でもない、おばあちゃんの格言でもない。
かわいい彼女からの、たくさんある教えのひとつだ。
「ほら、智将も食えよおにぎり」
「……大きいな」
「でかい口開けてかぶりつくんだよ、それが一番うめえんだから」
彼女は料理が得意だった。それを誰かにふるまうのも好きだった。食うだろお前もって、当たり前みたいに振り向いて、美味いだろ残すなよって、にかにかと笑ってる。
「うまいだろ」
「……」
「こら、なんか言え。せめてうなずけ。夢中で食ってんな」
俺はもちろん、そんな彼女に気を取られてばかりいる。
***
好きだからこそ、一線を引いている部分もある。
「かなめっ!」
特にいつもとまったく違う呼び方で、大声を出しちゃったりしてるときは要注意だ。高確率で混乱を誘ってる。
あまみ
DOODLE圭藤♀葵ちゃんちにいる圭ちゃん
葵ちゃんは先天性女体化です〜
圭藤♀すぐ作っちまうから待ってろ、が進化して、こないだと同じ焼きそばでいいか?、になったころ。
「うん、あの焼きそば好き〜」
俺は君の家で、ようやく緊張せずにダイニングテーブルに腰かけられるようになってきた。
いつもは、君の家族が座る席。
俺じゃない人がつけた傷がいっぱい残る、誰かの席。
俺は葵っちの背中が好きだ。
部活のときみたいに金髪を結んで、くたっとしたエプロンをつけて、こっちからは表情なんか見えないのに絶対なんかごきげんそうなのが伝わってくる。
野菜を切って、お肉を解凍して、冷蔵庫やキッチン下の扉を脚でボンッと閉じている。
なんてことない景色だけど、俺にはまだ指折り数えるくらいしかお目にかかったことのない光景だからさ、スマホもいじらずに、じーっと君のことばかり見つめてるってわけ。
750「うん、あの焼きそば好き〜」
俺は君の家で、ようやく緊張せずにダイニングテーブルに腰かけられるようになってきた。
いつもは、君の家族が座る席。
俺じゃない人がつけた傷がいっぱい残る、誰かの席。
俺は葵っちの背中が好きだ。
部活のときみたいに金髪を結んで、くたっとしたエプロンをつけて、こっちからは表情なんか見えないのに絶対なんかごきげんそうなのが伝わってくる。
野菜を切って、お肉を解凍して、冷蔵庫やキッチン下の扉を脚でボンッと閉じている。
なんてことない景色だけど、俺にはまだ指折り数えるくらいしかお目にかかったことのない光景だからさ、スマホもいじらずに、じーっと君のことばかり見つめてるってわけ。
あまみ
DOODLE圭藤♀寒そうな葵ちゃんと圭ちゃんと智将。
葵ちゃんは先天性女体化です。
圭藤♀毎日顔を合わせていたってね、そりゃあデートは特別ですよ。
前の日から、あれ食べよっかな、ここ行こっかなって。葵っち、おいしいって笑ってくれるかな、楽しいってはしゃいでくれるかなって。
寝ても覚めても君ばかり。
いつでもどこでも、君のことだけ。
「要!」
『あと一駅』の短いメッセージと時計を見比べてニヤニヤしていれば、はずんだ声に背中を叩かれる。
「悪りぃ、ちょっと待たせた」
「っ!ぜ、ぜーんぜん!そんなことない、」
よ。
振り返った先にいる彼女は、いつも通りかわいくって、いつもよりなんだか大人っぽくって、いつもの五万倍スカスカして見える。ショートパンツ?ホットパンツ?太ももまで丸見えの葵っちは部活のときみたいに元気いっぱいで、だけど学校じゃ絶対お目にかかれない特別感がある。
1612前の日から、あれ食べよっかな、ここ行こっかなって。葵っち、おいしいって笑ってくれるかな、楽しいってはしゃいでくれるかなって。
寝ても覚めても君ばかり。
いつでもどこでも、君のことだけ。
「要!」
『あと一駅』の短いメッセージと時計を見比べてニヤニヤしていれば、はずんだ声に背中を叩かれる。
「悪りぃ、ちょっと待たせた」
「っ!ぜ、ぜーんぜん!そんなことない、」
よ。
振り返った先にいる彼女は、いつも通りかわいくって、いつもよりなんだか大人っぽくって、いつもの五万倍スカスカして見える。ショートパンツ?ホットパンツ?太ももまで丸見えの葵っちは部活のときみたいに元気いっぱいで、だけど学校じゃ絶対お目にかかれない特別感がある。
あまみ
DOODLE圭藤ちゃん付けかわいいねって話。
圭藤そろそろ鈴虫の大合唱が響いてきてもいい頃合いだというのに、天気予報はまだ猛暑日が続く見込みだと真っ赤な画面で脅してくる。
「ああーあつい、キモい、背中溶けてる」
夏休み中飽きることなく聞かされてきた要圭の鳴き声は、新学期になっても絶好調だ。湿気と汗で明るい髪の毛をくたくたにしながら、重いカバンと体を鎧のように引きずっている。
「葵ちゃんあっついよー、暑くない?お腹すかない?アイス食べたくない?」
「そうだな圭ちゃん、俺は帰ってメシの支度だよ」
おやつコールを適当にあやしながら今夜はどうすっかーなんて冷蔵庫の中身を思い出していると、「お?」、両目を落っことしそうなほどまんまるにした要が、まばたきも忘れてこちらを見つめている。
786「ああーあつい、キモい、背中溶けてる」
夏休み中飽きることなく聞かされてきた要圭の鳴き声は、新学期になっても絶好調だ。湿気と汗で明るい髪の毛をくたくたにしながら、重いカバンと体を鎧のように引きずっている。
「葵ちゃんあっついよー、暑くない?お腹すかない?アイス食べたくない?」
「そうだな圭ちゃん、俺は帰ってメシの支度だよ」
おやつコールを適当にあやしながら今夜はどうすっかーなんて冷蔵庫の中身を思い出していると、「お?」、両目を落っことしそうなほどまんまるにした要が、まばたきも忘れてこちらを見つめている。
あまみ
DOODLE影でバレてる圭藤♀です。葵ちゃんは先天性女体化ですのでお気をつけください。
圭藤♀窓ガラス一枚分の距離だった。
歩き方?話す声?それとも俺のラブセンサー?
ふと振り向いたら廊下の先に君がいるなんて、俺たちってば運命で結ばれたふたりなのかもしれない。
向こうは俺に気づくかなって、教室の中から一瞬うずうずするけれど、
「葵ちゃあん!」
気持ちが勝手に飛び出しちゃった、ガラガラとあっけなく窓を開ける。ぶんぶんと、身を乗り出して手を振ってる。
一コマぶり、本日何度目かの呼び止めに、葵ちゃんはパッと顔を上げた。飼い主に呼ばれたワンちゃんみたいにまっすぐ俺だけ見つめると、「おー、」、ヘラ、としっぽのかわりに小さく手を振る。そんな些細な仕草が宝物みたいで、ぎゅうっと、左胸が跳ねた。
葵ちゃんと彼氏彼女になれたのは、つい先日のことだった。
2982歩き方?話す声?それとも俺のラブセンサー?
ふと振り向いたら廊下の先に君がいるなんて、俺たちってば運命で結ばれたふたりなのかもしれない。
向こうは俺に気づくかなって、教室の中から一瞬うずうずするけれど、
「葵ちゃあん!」
気持ちが勝手に飛び出しちゃった、ガラガラとあっけなく窓を開ける。ぶんぶんと、身を乗り出して手を振ってる。
一コマぶり、本日何度目かの呼び止めに、葵ちゃんはパッと顔を上げた。飼い主に呼ばれたワンちゃんみたいにまっすぐ俺だけ見つめると、「おー、」、ヘラ、としっぽのかわりに小さく手を振る。そんな些細な仕草が宝物みたいで、ぎゅうっと、左胸が跳ねた。
葵ちゃんと彼氏彼女になれたのは、つい先日のことだった。
あまみ
DOODLE圭藤葵ちゃんお誕生日おめでとうのやつです
圭藤午前0時まで、起きている。
妹をはやばやと寝かしつけ、姉を叩くように寝室へ押しやり、サンタにゴマを擦るように布団に潜りこんで数時間。
午前0時まで、起きている。
スマホを開き、やることもないのでそのまま伏せ、寝返りをうち、やっぱり元の体勢に戻り、またスマホを眺める。
今日も練習だったから、体はどんどん沈んでく。
今日も練習だったから、いつもより五倍増しで顔面を溶かした君にも会えて、
今日も練習だったから、『葵っち明日いっしょに帰ろうね』って見え透いたたくらみにも気づいてしまった。
午前0時まで、起きている。
勝手に要の泳ぐ瞳に期待して、勝手に“おやすみ“のスタンプがこないことに胸をふくらませ、勝手に『葵っち』というやわらかな声を思い出しながら。
2275妹をはやばやと寝かしつけ、姉を叩くように寝室へ押しやり、サンタにゴマを擦るように布団に潜りこんで数時間。
午前0時まで、起きている。
スマホを開き、やることもないのでそのまま伏せ、寝返りをうち、やっぱり元の体勢に戻り、またスマホを眺める。
今日も練習だったから、体はどんどん沈んでく。
今日も練習だったから、いつもより五倍増しで顔面を溶かした君にも会えて、
今日も練習だったから、『葵っち明日いっしょに帰ろうね』って見え透いたたくらみにも気づいてしまった。
午前0時まで、起きている。
勝手に要の泳ぐ瞳に期待して、勝手に“おやすみ“のスタンプがこないことに胸をふくらませ、勝手に『葵っち』というやわらかな声を思い出しながら。
あまみ
DOODLE圭藤♀葵ちゃんひとりで勝手に彼氏を爆モテ設定にしている話
葵ちゃんは先天性女体化です〜
圭藤♀一年のトイレにある鏡の前は、何もないのによく滑る。
怪談でも噂話でもない、れっきとしたただの事実だ。床が濡れているわけでもないのに、気をつけていないとすべって転がりそうになる。きゃあ!というトイレからの悲鳴は、大体はこのトラップに引っかかった被害者のものだ。毎日掃除されているとはいえ、便所で尻もちをつくかもしれないなんて恐怖、たとえ未遂でも大声を上げてしまう。
四月にその洗礼を受けた藤堂葵も、手を洗う瞬間だけは緊張感を走らせていた。上履きに力を入れすぎないように、そろりそろりと蛇口へ近づく。
決して長いとはいえない休み時間、トイレにはいつも“誰か“いる。クラスメイトに聞かれたくない話をする奴か、メイク直しに余念がない奴。その日も鏡の前を占領するのはあからさまにお喋りしたいだけの女子たちで、藤堂は体をねじこむように空いた洗面台にお邪魔する。背が高いので肩身が狭い。
5923怪談でも噂話でもない、れっきとしたただの事実だ。床が濡れているわけでもないのに、気をつけていないとすべって転がりそうになる。きゃあ!というトイレからの悲鳴は、大体はこのトラップに引っかかった被害者のものだ。毎日掃除されているとはいえ、便所で尻もちをつくかもしれないなんて恐怖、たとえ未遂でも大声を上げてしまう。
四月にその洗礼を受けた藤堂葵も、手を洗う瞬間だけは緊張感を走らせていた。上履きに力を入れすぎないように、そろりそろりと蛇口へ近づく。
決して長いとはいえない休み時間、トイレにはいつも“誰か“いる。クラスメイトに聞かれたくない話をする奴か、メイク直しに余念がない奴。その日も鏡の前を占領するのはあからさまにお喋りしたいだけの女子たちで、藤堂は体をねじこむように空いた洗面台にお邪魔する。背が高いので肩身が狭い。
あまみ
DOODLE圭藤ツイッターで見かけた『チューで誤魔化されるか』みたいな分布図をお借りしました〜
圭藤ほーら葵ちゃん、機嫌直してチューしてあげるから。
なんてぶん殴られるの大前提でウインクかましてみたけれど、意外にもお相手はおとなしかった。右まぶたをひくひく揺らしながら、え、怒らないの?、小首を傾げてみたけれど、君はあっけらかんとしたものだ。
「いや、別に怒るほどのことじゃねえし……。それよりほら、チューしろよチュー」
「えっいいの?」
「えっいいよ」
わあい!と大げさに喜びながら君に飛びつく。こういうのはちょっとでもためらうとムショーに恥ずかしくなっちゃうんだって、実体験で学びました。
ちゅうっとほっぺたに顔を寄せる。シャンプーかな、柔軟剤かな、葵ちゃんちのにおいがする。
「ん?ん、ん?」
へらへら顔を上げてみれば、俺とは真逆の顔をした君がいた。眉をしかめて、口をへの字にして、どんなアホだって気がつくくらいぶすっとした顔の君。
1437なんてぶん殴られるの大前提でウインクかましてみたけれど、意外にもお相手はおとなしかった。右まぶたをひくひく揺らしながら、え、怒らないの?、小首を傾げてみたけれど、君はあっけらかんとしたものだ。
「いや、別に怒るほどのことじゃねえし……。それよりほら、チューしろよチュー」
「えっいいの?」
「えっいいよ」
わあい!と大げさに喜びながら君に飛びつく。こういうのはちょっとでもためらうとムショーに恥ずかしくなっちゃうんだって、実体験で学びました。
ちゅうっとほっぺたに顔を寄せる。シャンプーかな、柔軟剤かな、葵ちゃんちのにおいがする。
「ん?ん、ん?」
へらへら顔を上げてみれば、俺とは真逆の顔をした君がいた。眉をしかめて、口をへの字にして、どんなアホだって気がつくくらいぶすっとした顔の君。
あまみ
DOODLE圭藤♀葵ちゃんに会えない日。
藤堂は先天性女体化です。
圭藤♀なんとなく、以外のなにものでもなかった。
するすると無意味にタップする指先が、見知らぬ誰かの楽しそうな思い出を爆速で流していったから。
今日は学校も部活もお休みで、朝から君の声すら聞いていないから。
机の上に広げた課題は真っ白で、ペンを握る気力が湧かなかったから。
『葵ちゃんの顔見たいよー』
やるべきことはもちろんほっぽって、勝手にそんな文章を送っていた。
すぐには既読にならないメッセージに、そういえばちょっと前にもこんなことをしていたなあと思い出す。
かわいい恋人の自撮りが欲しくってジタバタと駄々をこねていたら、結局届いたのは隠し撮りの俺の寝顔だった、みたいなやつ。なつかしい。あれから君ともずいぶんいっしょに時間を過ごして、形のある思い出もわんさか増えた。
1132するすると無意味にタップする指先が、見知らぬ誰かの楽しそうな思い出を爆速で流していったから。
今日は学校も部活もお休みで、朝から君の声すら聞いていないから。
机の上に広げた課題は真っ白で、ペンを握る気力が湧かなかったから。
『葵ちゃんの顔見たいよー』
やるべきことはもちろんほっぽって、勝手にそんな文章を送っていた。
すぐには既読にならないメッセージに、そういえばちょっと前にもこんなことをしていたなあと思い出す。
かわいい恋人の自撮りが欲しくってジタバタと駄々をこねていたら、結局届いたのは隠し撮りの俺の寝顔だった、みたいなやつ。なつかしい。あれから君ともずいぶんいっしょに時間を過ごして、形のある思い出もわんさか増えた。
あまみ
DOODLE圭藤智将です。
ツイッターで見かけた「キスで誤魔化されるか〜」というやつ。
圭藤別に、急に押し黙ったのは不機嫌さの意思表示じゃない。
「ほら、悪かったって。そんなすねんなよ、」
ケラケラと明るくわらう藤堂に、「いや、別に拗ねてるわけじゃ、」、俺はすかさず言い返す。一時間後には忘れていそうな他愛のないやりとり、気の利いた返事が思いつかなくて沈黙を選択しただけなんだが、と大きな手のひらを受け入れる。クセなのだろう、彼はやたらと俺の頭を撫でたがる。
「あのな藤堂、俺はただ、」
うりうりうりとかき混ぜられる髪の毛に合わせて首をかしげる。右へ左へ揺られながら、その手を取ろうと右手を伸ばした。いい加減、こちらのペースに引き戻したい。
「わかったわかった、チューしてやるから機嫌直せって。な?」
引き戻せたためしは、今のところない。
1322「ほら、悪かったって。そんなすねんなよ、」
ケラケラと明るくわらう藤堂に、「いや、別に拗ねてるわけじゃ、」、俺はすかさず言い返す。一時間後には忘れていそうな他愛のないやりとり、気の利いた返事が思いつかなくて沈黙を選択しただけなんだが、と大きな手のひらを受け入れる。クセなのだろう、彼はやたらと俺の頭を撫でたがる。
「あのな藤堂、俺はただ、」
うりうりうりとかき混ぜられる髪の毛に合わせて首をかしげる。右へ左へ揺られながら、その手を取ろうと右手を伸ばした。いい加減、こちらのペースに引き戻したい。
「わかったわかった、チューしてやるから機嫌直せって。な?」
引き戻せたためしは、今のところない。
あまみ
DOODLE圭藤腕まくらの話
※肩やそのほかもろもろへの悪影響は一切ありませんという気持ちで書いているので「一切ないんだな」という気持ちで読んでいただけると幸いです
圭藤あついあつい、あっついよ葵っちー、なんて散々っぱら文句を垂れていたくせに、コイツは片時も離れる気はないらしい。
「むが、」
夜、目をつむる前に見た光景。
でへへーと顔面を溶かして、おやすみぃと七割くらいもう寝てるような挨拶を投げて、すやあーっと眠りに落ちていくその姿。
数時間前とほぼ変わらない己の状況に、あれ、俺ほんとに寝たんかな、ちょっと目ぇつぶってただけじゃね、と混乱させられる。わずかな体のかたさが、そんなことはないよと教えてくれるのだけれど。
要圭は、藤堂葵の脇の下へすっぽり収まっている。「葵っちぃ〜」とぬとぬとひっついてきて、「おっ、コレいいじゃーん」とこちらの肩口を枕にして、いそいそとふたりの隙間を埋めてくる。
767「むが、」
夜、目をつむる前に見た光景。
でへへーと顔面を溶かして、おやすみぃと七割くらいもう寝てるような挨拶を投げて、すやあーっと眠りに落ちていくその姿。
数時間前とほぼ変わらない己の状況に、あれ、俺ほんとに寝たんかな、ちょっと目ぇつぶってただけじゃね、と混乱させられる。わずかな体のかたさが、そんなことはないよと教えてくれるのだけれど。
要圭は、藤堂葵の脇の下へすっぽり収まっている。「葵っちぃ〜」とぬとぬとひっついてきて、「おっ、コレいいじゃーん」とこちらの肩口を枕にして、いそいそとふたりの隙間を埋めてくる。
あまみ
DOODLE圭藤葵ちゃんは男の子です。
圭藤学割あるから、カレー屋さん行きませんか!
なんと情けないセリフだろう、と要圭は振り返る。
いっしょに遊ぼうって、ごはんとか食べに行こうって、学校がなくても練習がなくても、野球が俺たちのあいだになくても、ただ会いたいんだよって言えばいいだけなのに。
「おっ、いいな、俺が作るやつよりうめーんだろうな?」
二つ返事でのしかかる体重に、ウッ、と喉に空気が詰まる。「わかんない、葵ちゃんのカレー食べたことないし」、あ、やべ、これちょっと怒られるかななんて返答にも、「じゃあそのうち食わせてやるよ」、君はニヤリと笑ってみせる。
それはそれで舞い上がってしまいそうな約束に、「で、店はどこにあるんだよ。吉祥寺か?」「えっ、えっとねえー」、ふたりもそもそと肩を寄せる。
1320なんと情けないセリフだろう、と要圭は振り返る。
いっしょに遊ぼうって、ごはんとか食べに行こうって、学校がなくても練習がなくても、野球が俺たちのあいだになくても、ただ会いたいんだよって言えばいいだけなのに。
「おっ、いいな、俺が作るやつよりうめーんだろうな?」
二つ返事でのしかかる体重に、ウッ、と喉に空気が詰まる。「わかんない、葵ちゃんのカレー食べたことないし」、あ、やべ、これちょっと怒られるかななんて返答にも、「じゃあそのうち食わせてやるよ」、君はニヤリと笑ってみせる。
それはそれで舞い上がってしまいそうな約束に、「で、店はどこにあるんだよ。吉祥寺か?」「えっ、えっとねえー」、ふたりもそもそと肩を寄せる。
あまみ
DOODLE忘バ/圭藤葵ちゃんは男の子です。
圭藤35度の予感がした。
俺はみんな忘れちゃってからはじめての夏を迎えるけれど、窓から差し込む太陽の光が朝だよ朝だよとこちらを叩き起こすようになってきた。
「おはよおー」
真っ昼間みたいな、朝のあいさつ。葵ちゃんの金髪は光を透かしてピカピカ光って、なんだかマンガのキャラみたい。
あっちー、と言いながら髪をひとくくりにした葵ちゃんが、「おー、おはよ」、パッとこちらを振り返る。おひさまを見上げてるひまわりって、こんな気持ちなんだろうか。まぶしくもないのに、目を細める。
「ちゃんと朝メシおかわりしてきたかー、要ー」
わしゃっと俺の頭をひと撫でした葵ちゃんは、「あっつ!」、けれどすぐにあわてて手を引いた。
「けっこうあっつくなってんぞ、水飲め、水!」
1112俺はみんな忘れちゃってからはじめての夏を迎えるけれど、窓から差し込む太陽の光が朝だよ朝だよとこちらを叩き起こすようになってきた。
「おはよおー」
真っ昼間みたいな、朝のあいさつ。葵ちゃんの金髪は光を透かしてピカピカ光って、なんだかマンガのキャラみたい。
あっちー、と言いながら髪をひとくくりにした葵ちゃんが、「おー、おはよ」、パッとこちらを振り返る。おひさまを見上げてるひまわりって、こんな気持ちなんだろうか。まぶしくもないのに、目を細める。
「ちゃんと朝メシおかわりしてきたかー、要ー」
わしゃっと俺の頭をひと撫でした葵ちゃんは、「あっつ!」、けれどすぐにあわてて手を引いた。
「けっこうあっつくなってんぞ、水飲め、水!」
あまみ
DOODLE圭藤♀智将です。藤堂は先天性女体化です。
圭藤♀まったくこいつらときたら、どこででもこんなことをやってるんだろうか。
「なんだよ元気っ子、やけにおとなしいじゃねえか」
遠足前のちびっこのごとく、ぴかぴかと瞳を輝かせているのは我が彼女。金曜日の放課後だというのに、打って走ってと大はしゃぎで練習を終えました。えらくほっぺたが赤らんで映るのは、ようやく沈みはじめた太陽のおかげだけじゃないだろう。今日も野球、明日も野球、おまけにちょっと億劫な授業もないとくれば、ごきげんにならない理由はない。実際、よく通る声のトーンもいつも以上に弾んでる。
「ほら、いつものやるか?ぎゅーってやつ」
テンションを裏付けるように、パッと、両腕をひらかれた。制服に着替えたばかりの彼女はまだどこか上気していて、それがまた子供のようにも映る。思いきり公園で遊びまわったあとに、両親にだっこをせがむような。かけっこして帰るその途中で、兄弟におんぶをねだるような。
891「なんだよ元気っ子、やけにおとなしいじゃねえか」
遠足前のちびっこのごとく、ぴかぴかと瞳を輝かせているのは我が彼女。金曜日の放課後だというのに、打って走ってと大はしゃぎで練習を終えました。えらくほっぺたが赤らんで映るのは、ようやく沈みはじめた太陽のおかげだけじゃないだろう。今日も野球、明日も野球、おまけにちょっと億劫な授業もないとくれば、ごきげんにならない理由はない。実際、よく通る声のトーンもいつも以上に弾んでる。
「ほら、いつものやるか?ぎゅーってやつ」
テンションを裏付けるように、パッと、両腕をひらかれた。制服に着替えたばかりの彼女はまだどこか上気していて、それがまた子供のようにも映る。思いきり公園で遊びまわったあとに、両親にだっこをせがむような。かけっこして帰るその途中で、兄弟におんぶをねだるような。
あまみ
DOODLE忘バ/圭藤♀藤堂は先天性女体化ですのでお気をつけください
圭藤♀まったくこの子ったら、どこでそんな言葉を覚えてきたのかしら。
「充電充電充電、葵ちゃんちょっと充電させてよ〜!」
お菓子売り場のちびっこのごとく、ぶうぶうと駄々をこねまくるのは我が彼氏。今年4月にはれて16歳を迎えました、立派な男子高校生です。夕陽に照らされてやや幼くうつるものの、とてもわがままを連呼して許される年齢には見えません。
そもそも重い体を引きずっているのは俺も同じなんだけど、と、藤堂ははあーっと息を吐く。
部活の終わりの帰り道、イヤな疲労感はないものの、これから待ち受ける家事一覧を思い出すと気持ちはどうしても駆け足になる。
「そんなわめいたってモバッテリーなんか持ってねえよ!大体おまえんち、こっから徒歩5分だろうが!」
1158「充電充電充電、葵ちゃんちょっと充電させてよ〜!」
お菓子売り場のちびっこのごとく、ぶうぶうと駄々をこねまくるのは我が彼氏。今年4月にはれて16歳を迎えました、立派な男子高校生です。夕陽に照らされてやや幼くうつるものの、とてもわがままを連呼して許される年齢には見えません。
そもそも重い体を引きずっているのは俺も同じなんだけど、と、藤堂ははあーっと息を吐く。
部活の終わりの帰り道、イヤな疲労感はないものの、これから待ち受ける家事一覧を思い出すと気持ちはどうしても駆け足になる。
「そんなわめいたってモバッテリーなんか持ってねえよ!大体おまえんち、こっから徒歩5分だろうが!」
あまみ
DOODLE忘バ/圭藤♀藤堂は先天性女体化ですのでお気をつけください
圭藤♀からあげ!うれしい!大好物!
基本晩ごはんの残りものだから、ちっちゃいのとか焦げたやつばっかりなのもなんかうれしい。
ハンバーグ!最高!だーいすき!
基本晩ごはんのついでに作るから、ぶった切った形になってるのもめっちゃ最高。
「じゃあ、第一位は?」
なんでもないふうに訊ねながらも、藤堂くんのお箸はずっと止まったままだ。“業スーの冷凍“らしいブロッコリーを右へ左へ、頭でも撫でるみたいにころころ揺らしてる。
「んーーー、一位はいっぱいあるんですけどー、」
明後日のほうを見上げながら、要くんは明後日のことを言う。同率一位ってこと?からあげとハンバーグの立場は?なんて内なる山田太郎が野次を飛ばしてしまうのは、惣菜パンにかじりついてなんとかなだめた。
857基本晩ごはんの残りものだから、ちっちゃいのとか焦げたやつばっかりなのもなんかうれしい。
ハンバーグ!最高!だーいすき!
基本晩ごはんのついでに作るから、ぶった切った形になってるのもめっちゃ最高。
「じゃあ、第一位は?」
なんでもないふうに訊ねながらも、藤堂くんのお箸はずっと止まったままだ。“業スーの冷凍“らしいブロッコリーを右へ左へ、頭でも撫でるみたいにころころ揺らしてる。
「んーーー、一位はいっぱいあるんですけどー、」
明後日のほうを見上げながら、要くんは明後日のことを言う。同率一位ってこと?からあげとハンバーグの立場は?なんて内なる山田太郎が野次を飛ばしてしまうのは、惣菜パンにかじりついてなんとかなだめた。
あまみ
DOODLE忘バ/圭藤 圭葵藤堂は先天性女体化ですのでお気をつけください。
圭藤♀右から、左から、上から、また右から。
半永久的に言うことを聞かない毛束をムウーーっと引っ張って、やさしく離す。
思えば365日、コンディションが最高な日のほうが少ないような気もするけれど、この時期は特にきびしい。広がる、うねる、飛び出してくる。ありとあらゆるわがままをかましてくる己の髪に、鏡の向こうの藤堂葵様もしかめっつらしっぱなしだ。
「ねーね、じかんだよ〜」
ひょこ、とやってくるかわいいお呼び出しに、「ああー、もう!」、無駄な抵抗を手放した。
見てねえ見てねえ、俺のことなんか。
いつものおんなじならなんにも気づかねえ。
手首に髪ゴムを巻き、「おう、今行く!」、パッと顔もテンションも持ち上げる。
“朝練のない日は朝いっしょ“、野球と同じくらい大切な約束だ。
1072半永久的に言うことを聞かない毛束をムウーーっと引っ張って、やさしく離す。
思えば365日、コンディションが最高な日のほうが少ないような気もするけれど、この時期は特にきびしい。広がる、うねる、飛び出してくる。ありとあらゆるわがままをかましてくる己の髪に、鏡の向こうの藤堂葵様もしかめっつらしっぱなしだ。
「ねーね、じかんだよ〜」
ひょこ、とやってくるかわいいお呼び出しに、「ああー、もう!」、無駄な抵抗を手放した。
見てねえ見てねえ、俺のことなんか。
いつものおんなじならなんにも気づかねえ。
手首に髪ゴムを巻き、「おう、今行く!」、パッと顔もテンションも持ち上げる。
“朝練のない日は朝いっしょ“、野球と同じくらい大切な約束だ。