「え?もう7月?早いな~」
兄がカレンダーを見ながら呟いた。確かに事故のせいで記憶喪失になってからしばらくバタバタしていたから、気が付けばあっという間に7月になった。兄は退院してからも通院をしている。まだ脳波やCTなど検査は定期的に行っている。
「あれ今日って何日?」
「今日は7月の7日・・・」
「・・・えっもう七夕?」
兄に曜日を聞かれたので答えたら、少し驚いた表情をした。
「そっか、何も覚えていないけど、なんか凄く懐かしい気分」
小指で頭をかきながら笑顔を見せる兄の顔には哀愁が漂っているように感じた。
「七夕って何?」
「知らないで言ってたんかい」
「いやカレンダーに書いてあったからさ」
私は笑いながらツッコミを入れると、兄は苦笑しながら答えてくれた。
1998