zeppei27
DONE企画3本目、りひとさんからいただいたご指名の諭吉で、『バウムクーヘンエンド』です。完全に独立した単品だよ!史実で妻帯者だから、ばっちりですね!特に贈る側が気づかないのが好きなので……業が深い仕上がりになりました。リクエストありがとうございました!
輪違 めでたい話である。人と人が縁付き、新しい家門を形成し、将来の繁栄を子子孫孫まで伝えようとする。家族ができる、人生を共に歩む相手ができる、それだけでも十分喜ばしい。
そんなものは、畢竟自分には縁遠いものであったのだと隠し刀は痛感していた。家を持たず、自由に生き、己なりに人と人との縁を理解し不器用に繋いできたつもりであるが、所詮は枠外の存在である。
「おめでとう」
覚悟を決めるために口中で台詞を反芻しながら、長屋で一人、祝儀の品を作る。人生で初めて作るものが、一番の友人のためとは幸運だろう。自分がまた一つ、人らしくなった証だ——この胸をじくじくと痛ませるくだらない想いも含めて。
何もかも気づくのが遅く、全て手遅れだった。誰も悪くはない、強いていうならば己の不始末と言える。鮮やかな楓が染め抜かれた風呂敷の中に、秘蔵の葉巻をたっぷり詰め込み、仕入れたばかりのウヰスキーボンボンなる菓子を添えたところで、隠し刀は深々とため息をついた。どれほど作業が進もうとも、頭の中は遅々として回らない。数日前に勝海舟邸を訪れた時から、自分の時間は止まったままだった。
4395そんなものは、畢竟自分には縁遠いものであったのだと隠し刀は痛感していた。家を持たず、自由に生き、己なりに人と人との縁を理解し不器用に繋いできたつもりであるが、所詮は枠外の存在である。
「おめでとう」
覚悟を決めるために口中で台詞を反芻しながら、長屋で一人、祝儀の品を作る。人生で初めて作るものが、一番の友人のためとは幸運だろう。自分がまた一つ、人らしくなった証だ——この胸をじくじくと痛ませるくだらない想いも含めて。
何もかも気づくのが遅く、全て手遅れだった。誰も悪くはない、強いていうならば己の不始末と言える。鮮やかな楓が染め抜かれた風呂敷の中に、秘蔵の葉巻をたっぷり詰め込み、仕入れたばかりのウヰスキーボンボンなる菓子を添えたところで、隠し刀は深々とため息をついた。どれほど作業が進もうとも、頭の中は遅々として回らない。数日前に勝海舟邸を訪れた時から、自分の時間は止まったままだった。
suz
DONE2024.07.07 Lucky Card!7 無配べったーで書いていた鈍感ベルギャ男子に振り回される遊飛くんのお話をコピー本にしたものです。
https://privatter.net/p/10975411 16
suz
PAST2024.05.04 GRおまけ本(再録)某ラジオの「厳しい(優しい)上司」にテンションがぶちあがって、イベントでおまけ本としてつけていたもの。
当初の宣言通り Lucky Card! 7 開催にあわせて再録します。
https://privatter.net/p/11032835 4
zeppei27
DONE企画2本目、うさりさんよりいただいたご指名の龍馬で、『匂いを嗅ぐ』です。龍馬は湯屋に行かないのでなんというか……濃そうだな、などと具体的に想像してしまいました。香水をつけていることもあり、変化を楽しめる相手だと思います。リクエストありがとうございました!
聞香 千葉道場の帰り道は常に足取りが重い。それなりに鍛えている方だが、疲労は蓄積するものなのだと隠し刀は己の限界を実感していた。所詮は人の身である。男谷道場も講武館も、秘密の忍者屋敷もすいすいとこなしたところで、回を重ねれば疲れるのも道理だ。
が、千葉道場は中でも格別であった。理由の一つは毎度千葉佐那が突撃してくることで、一度は勝負しないと承知してくれない。そうでもなければ、「私に会いに来てくださったのではないですか」などとしおらしい物言いをされるので弱ってしまう。健気な少女を健全に支えたつもりが、妙な逆ねじを食わされている形だ。
佐那だけならばまだ良い。性懲りもなく絡んでくる清河八郎もまあ、どうにかなる。問題は最後の一つで、佐那が坂本龍馬と自分との手合わせを観たいとせがむところにあった。彼女は元々龍馬と浅からぬ因縁があり、ずるい男は逃げ回るばかりで年貢を納めようとしない。その癖、隠し刀の太刀筋が観たいだのなんだの言いながら道場までついてくる。佐那は龍馬と手合わせできないのであれば、二人が戦う様を観たいと譲歩してくれるというのが一連の流れだ。
3110が、千葉道場は中でも格別であった。理由の一つは毎度千葉佐那が突撃してくることで、一度は勝負しないと承知してくれない。そうでもなければ、「私に会いに来てくださったのではないですか」などとしおらしい物言いをされるので弱ってしまう。健気な少女を健全に支えたつもりが、妙な逆ねじを食わされている形だ。
佐那だけならばまだ良い。性懲りもなく絡んでくる清河八郎もまあ、どうにかなる。問題は最後の一つで、佐那が坂本龍馬と自分との手合わせを観たいとせがむところにあった。彼女は元々龍馬と浅からぬ因縁があり、ずるい男は逃げ回るばかりで年貢を納めようとしない。その癖、隠し刀の太刀筋が観たいだのなんだの言いながら道場までついてくる。佐那は龍馬と手合わせできないのであれば、二人が戦う様を観たいと譲歩してくれるというのが一連の流れだ。
てんていのねこ
DOODLEレイチュリのDX3rdパロ書き散らし。知恵喰らいと幸運喰らいのレイチュリ。
🛁はノイマン/ウロボロスの万能型、🦚はモルフェウス/ウロボロスの万能型で、二人でコンビ組むと打ち合わせ無しで戦闘方法とか変えてきそう。
欧州某国に本拠地を置く巨大企業スターピースカンパニー。その技術顧問として籍を置く博識学会の天才Dr.レイシオと、戦略投資部の長ダイアモンドの懐刀たる十人のオーヴァードのひとり“アベンチュリン”との仕事が決まった。
「やあ、“ヌースの愛子”サン。」
「その名で呼ぶなと伝えたはずだが。」
「あはは、ごめんね。コードネームで呼ぶのってマナーみたいなもんだろう?癖になっててさ。じゃあ、改めて名乗ろう。僕は同胞喰らいの“アベンチュリン”。カンパニーの技術顧問なら聞いたことあるだろう?僕は他者のレネゲイドを喰らい、己の幸運に変換するオーヴァードだ。人生を台無しにされないよう、気をつけて?」
「…ウロボロスか。問題ない。」
1038「やあ、“ヌースの愛子”サン。」
「その名で呼ぶなと伝えたはずだが。」
「あはは、ごめんね。コードネームで呼ぶのってマナーみたいなもんだろう?癖になっててさ。じゃあ、改めて名乗ろう。僕は同胞喰らいの“アベンチュリン”。カンパニーの技術顧問なら聞いたことあるだろう?僕は他者のレネゲイドを喰らい、己の幸運に変換するオーヴァードだ。人生を台無しにされないよう、気をつけて?」
「…ウロボロスか。問題ない。」
zeppei27
DONE企画1本目、ハレさんよりいただいたご指名の桂さんで、『ネクタイいじり』です。洋装がある人に当たったピッタリ具合にニコニコしました。靴紐結びも良い~ですが、命の危険性があるネクタイが一番好きです。蝶ネクタイ以外も色々おしゃれを楽しむ姿を……見たいよ!ネクタイが前からではなく後ろからしているのも込みで趣味です。
リクエストありがとうございました!
戯れ 朝の支度は煩わしい。新政府が立ち上がってからというもの、ただでさえ目まぐるしい職務の始まりに、桂小五郎もとい木戸孝允は今日も翻弄されていた。顔を洗って寝間着を脱ぐ。ここまでは宜しい。
しかし、幼少期から慣れ親しんだ旧時代を置いてしまうと、途端に心もとなくなる。シャツ、靴下止めに靴下、ズボン、ズボン吊り、ベスト、ああ全くどうしてこんなにも身に着けるものが多いのだろう。小道具まで揃えると煩わしさは頂点に達する。
「おはよう。どうだ、順調か」
「おはよう。わかるだろう?恥ずかしながらこの体たらくだ」
するりと入り込んだ声に自室の戸口を見れば、苦楽を共にした隠し刀が顔を覗かせていた。昨晩まで同じ褥に入って暴れまわったというのに、方や前途多難、方や完璧に身なりを整えているとはどういうことだろう。思えば情人は、奇兵隊の影響を受けて出会って早々に洋装に切り替えていた。おまけに手先がひどく器用で、小五郎はしばしば髪結いなども手伝ってもらったものである。
3118しかし、幼少期から慣れ親しんだ旧時代を置いてしまうと、途端に心もとなくなる。シャツ、靴下止めに靴下、ズボン、ズボン吊り、ベスト、ああ全くどうしてこんなにも身に着けるものが多いのだろう。小道具まで揃えると煩わしさは頂点に達する。
「おはよう。どうだ、順調か」
「おはよう。わかるだろう?恥ずかしながらこの体たらくだ」
するりと入り込んだ声に自室の戸口を見れば、苦楽を共にした隠し刀が顔を覗かせていた。昨晩まで同じ褥に入って暴れまわったというのに、方や前途多難、方や完璧に身なりを整えているとはどういうことだろう。思えば情人は、奇兵隊の影響を受けて出会って早々に洋装に切り替えていた。おまけに手先がひどく器用で、小五郎はしばしば髪結いなども手伝ってもらったものである。
zeppei27
DONEなんとなく続きの主福で、単品でも読めます。ちょっと横浜の遠くまで、紅葉狩りデートをする二人のお話です。全く季節外れですが、どうしても書きたかったので!一緒にクエストで出かけたい人生でした……>前作(R18)https://poipiku.com/271957/10379583.html
秋遠からじ 朝の空気が一段と冷えるようになって、香りからも冬の訪れが近いことをひしひしと感じさせる。晩秋も終わりに近づき、あれほど横浜の街を賑わせていた色とりどりの木々は葉を落とし、寒々とした木肌をなす術もなく晒していた。落ち葉をかく人々だけがただ忙しい。そうして掃き清められた道にいずれ冬が訪れ、雪が全てを覆うだろう。貸布団屋に夏布団を返しに行く道すがら、隠し刀は世の移ろいを新鮮な面持ちで眺めて目を見張った。
「秋が、終わるんだな」
至極当然の自然の摂理である。これまでも幾度もの春を、夏を、そして秋やこれから来る冬を延々繰り返し眺めていた。季節は人間がどうこうするものでもなく、ただただ流れてゆく川にも似ている。せいぜい農作物やこんな布団の交換の目安くらいでしか見ておらず、花見の楽しみさえ我関せずであった隠し刀だが、横浜で迎える初めての秋は格別に去り難く、また引き止めたい心地にさせていた。
9598「秋が、終わるんだな」
至極当然の自然の摂理である。これまでも幾度もの春を、夏を、そして秋やこれから来る冬を延々繰り返し眺めていた。季節は人間がどうこうするものでもなく、ただただ流れてゆく川にも似ている。せいぜい農作物やこんな布団の交換の目安くらいでしか見ておらず、花見の楽しみさえ我関せずであった隠し刀だが、横浜で迎える初めての秋は格別に去り難く、また引き止めたい心地にさせていた。
海老(小説)白玉(絵)
PASTスタゼノハマって二本目に書いた作品で、以下文章はpixivに貼っているままです。石化前の二人です。
25巻まで読んでないと、ネタバレ含むかもです。
五年ぶりの創作なんで温かい目で見て頂ければ幸いです。
とりあえず、ファンブックでるまでにピクシブ登録出来てよかった。
ナニモナイヨル 深夜、解錠の音と共に玄関扉が勢い良く開くと、部屋に一人の男が入って来た。
「よっ、久しぶり」
「来る前に、何故一言連絡を寄越さない。僕はこれから寝る所何だが」
暗がりの中、男は家人に構わずソファー横の間接照明を灯す。
すると、誰もが息を飲むような美しい顔が浮かび上がり、さらに鍛え上げられた肉体は服の上からでもわかる。ラフな黒シャツとカーゴパンツだが、それすらも絵になる男だ。
ただ家人であるゼノは既にパジャマ姿で、上掛けをめくり正にキングサイズのベッドに入ろうとしていた為か、苛立った様子だ。
普段オールバックにされた前髪は、両サイドに軽く流され誤魔化しているベビーフェイスを際立たせている。
ムスリッとして相手を睨むも、彼は涼しい顔で合鍵をカーゴパンツのポケットへしまいソファーに腰掛けた。
2541「よっ、久しぶり」
「来る前に、何故一言連絡を寄越さない。僕はこれから寝る所何だが」
暗がりの中、男は家人に構わずソファー横の間接照明を灯す。
すると、誰もが息を飲むような美しい顔が浮かび上がり、さらに鍛え上げられた肉体は服の上からでもわかる。ラフな黒シャツとカーゴパンツだが、それすらも絵になる男だ。
ただ家人であるゼノは既にパジャマ姿で、上掛けをめくり正にキングサイズのベッドに入ろうとしていた為か、苛立った様子だ。
普段オールバックにされた前髪は、両サイドに軽く流され誤魔化しているベビーフェイスを際立たせている。
ムスリッとして相手を睨むも、彼は涼しい顔で合鍵をカーゴパンツのポケットへしまいソファーに腰掛けた。
てんていのねこ
MAIKING今度は天才クラブ鍾離×高級幹部タルタリヤの鍾タル。おまけでテウセル。
あと個人的なノートもつけておきます。
「どこかへ行くのか?」
天才クラブのメンバー「貴金の神」鍾離は自らの監視者に問いかけた。
かつて人々が夢見た『真の錬金術』を実現し、それを以て神の一瞥を受けた天才は現在スターピースカンパニーの監視下に置かれている。呼吸のような気軽さで希少金属を造られては星間市場に悪影響が出ると判断されての処置だ。
「調和セレモニーに招待されてね。俺が行くことになった。」
監視者…戦略投資部の高級幹部タルタリヤは答える。
海に沈む夕陽を思わせる橙の髪と深い海の底のような瞳。かつて雪に閉ざされた星に暮らした『海屑の民』の特徴だった。その民も民族抗争で殆どが死亡。タルタリヤは現在確認された唯一と言っていい生き残りであった。
1894天才クラブのメンバー「貴金の神」鍾離は自らの監視者に問いかけた。
かつて人々が夢見た『真の錬金術』を実現し、それを以て神の一瞥を受けた天才は現在スターピースカンパニーの監視下に置かれている。呼吸のような気軽さで希少金属を造られては星間市場に悪影響が出ると判断されての処置だ。
「調和セレモニーに招待されてね。俺が行くことになった。」
監視者…戦略投資部の高級幹部タルタリヤは答える。
海に沈む夕陽を思わせる橙の髪と深い海の底のような瞳。かつて雪に閉ざされた星に暮らした『海屑の民』の特徴だった。その民も民族抗争で殆どが死亡。タルタリヤは現在確認された唯一と言っていい生き残りであった。
てんていのねこ
TRAINING自分だけが楽しい鐘タル⇔レイチュリで立場交換したパロディのレイチュリ側スケッチ。いずれ岩神🛀✕「公子」🦚になるやつ。
立場は同じでも微妙に話は変わっていく予定。
女皇があの天才なのは趣味です。
綴命の氷国と称される極寒の地で、二柱の神が密約を交わしていた。
「頃合いだ。僕の国民に『卒業試験』を行う。」
教授と伝搬の岩国の神ベリタス・レイシオは言った。
「それと私に、何の関係が?」
氷国の女皇ルアン・メェイは静かに口を開いた。
「僕の神の心を譲渡する。その代わり課題として君の貴石を譲ってもらいたい。そうだな…砂金石がいい。」
「彼ですか。構いませんよ。」
砂金石。見目麗しい奴隷上がりの博徒で、女皇のためならば命を賭してでも必ず成果を上げる優秀な貴石。
有能で忠誠心のある部下であっても、興味の外にあれば手放すことに何の躊躇もない女神はあっさりと取引に応じた。
「譲渡の条件は『卒業試験』の終了および合格基準への到達。国が壊滅するような事態にならない限り、僕は人間としての名を名乗り、市井に潜伏する。そのための身分もすでに用意した。」
425「頃合いだ。僕の国民に『卒業試験』を行う。」
教授と伝搬の岩国の神ベリタス・レイシオは言った。
「それと私に、何の関係が?」
氷国の女皇ルアン・メェイは静かに口を開いた。
「僕の神の心を譲渡する。その代わり課題として君の貴石を譲ってもらいたい。そうだな…砂金石がいい。」
「彼ですか。構いませんよ。」
砂金石。見目麗しい奴隷上がりの博徒で、女皇のためならば命を賭してでも必ず成果を上げる優秀な貴石。
有能で忠誠心のある部下であっても、興味の外にあれば手放すことに何の躊躇もない女神はあっさりと取引に応じた。
「譲渡の条件は『卒業試験』の終了および合格基準への到達。国が壊滅するような事態にならない限り、僕は人間としての名を名乗り、市井に潜伏する。そのための身分もすでに用意した。」
zeppei27
DONEなんとなく続きの主福で、単品でも読めます。付き合ってから積極性を増す諭吉にドギマギする隠し刀と、見守る櫻屋・勝のお話です。物覚えがいい人に教えたら思いもよらぬ反撃を受けるって良いですね!多生之縁 とんでもない人物に、とんでもないことを教えてしまった。罪悪感と背徳感から、隠し刀は柄にもなく深い悔恨の念を抱いていた。まさかこんなことになるとは、まるで予想がつかなかったと言えば嘘になる。それでも可能性は低いと思っていたのだ。何しろ隠し刀が己の手腕を染み込ませた相手は、かの理性の人・福沢諭吉なのである。
「考え事ですか?」
ひそりとした声に思考の波から戻ると、隠し刀は小首を傾げる諭吉の頬を手の甲で撫でた。すりり、とすかさず寄って顔を綻ばせる情人は可愛いと同時に末恐ろしい。付き合いたての頃であれば、何をするんです!などと恥ずかしがって逃げ出していただろうに、今では危うくこちらが取り込まれそうになる。人通りが少ないとはいえ、二人がいる場所は横浜貴賓館の図書室なのだ。
13754「考え事ですか?」
ひそりとした声に思考の波から戻ると、隠し刀は小首を傾げる諭吉の頬を手の甲で撫でた。すりり、とすかさず寄って顔を綻ばせる情人は可愛いと同時に末恐ろしい。付き合いたての頃であれば、何をするんです!などと恥ずかしがって逃げ出していただろうに、今では危うくこちらが取り込まれそうになる。人通りが少ないとはいえ、二人がいる場所は横浜貴賓館の図書室なのだ。
浅葱和月
MAIKINGモブシャイからの双子シャイの予定「んっ……そんなに乱暴にしないでください」
罪人のように腕を拘束されたシャイロックを兵士たちが囲む。
処刑でも行われるのかと誤解されかねない数の兵士たちだが、行われるのは処刑ではなく、身体検査。
シャイロック一人を身体検査するにしては兵士たちを集めすぎだと思うが、それ程に魔法使いであるシャイロックを警戒しているのである。
「今から貴様の身体検査をする!妙な真似はするなよ!」
「こんなに囲まれては抵抗する気もおきませんよ」
「どうだか。魔法使いは嘘つきだからな!おい!こいつに口枷をして、詠唱を口に出せないようにしろ!」
「はっ!」
指揮をとる男の言葉に近くにいた兵士が動き、少し怯えながらもシャイロックの上品な口に不似合いな口枷が咥えさせらる。
369罪人のように腕を拘束されたシャイロックを兵士たちが囲む。
処刑でも行われるのかと誤解されかねない数の兵士たちだが、行われるのは処刑ではなく、身体検査。
シャイロック一人を身体検査するにしては兵士たちを集めすぎだと思うが、それ程に魔法使いであるシャイロックを警戒しているのである。
「今から貴様の身体検査をする!妙な真似はするなよ!」
「こんなに囲まれては抵抗する気もおきませんよ」
「どうだか。魔法使いは嘘つきだからな!おい!こいつに口枷をして、詠唱を口に出せないようにしろ!」
「はっ!」
指揮をとる男の言葉に近くにいた兵士が動き、少し怯えながらもシャイロックの上品な口に不似合いな口枷が咥えさせらる。
てんていのねこ
MOURNINGうちのアベンチュリンがすり抜けでジェパードを連れてきて、ゼーバルとリンクスも完凸にしたので「もうこれはランドゥー家のカカワーシャですわ」と思い立って書いた小説です。レイチュリでサンジェパ。
開拓者はどちら前提でも読める。多分。
あとプーマンの名前は毛玉。かわいい。
ランドゥー家のカカワーシャ1.
古のシルバーメインの符号で記された暗号文。その答えを求めてセーバルの工房に足を運んだが、手応えはなかった。
「だったらジェパードに聞いたらわかるかな?」
「あははっ、ジェイちゃんに聞くくらいなら自分で解いた方が早いよ!あっ、でもワーちゃんならわかるかも。」
「ワーちゃん?」
「二人目の弟。博物館の館長でね。人懐っこくて優しい、いい子だよ。今の時間ならまだ向こうだと思うし、行っておいで。」
セーバルに言われ、開拓者達は歴史文化博物館へと向かう。受付の女性に目的の人物のことを尋ねると、奥から小柄で細身な男性が姿を現した。
歳の頃はジェパードと同じくらいだろうか。髪の色こそセーバル達のような金髪だが、顔立ちがあまり似ていない。それに細いフレームの眼鏡の奥から覗くネオンのような瞳が異彩を放っている。
3111古のシルバーメインの符号で記された暗号文。その答えを求めてセーバルの工房に足を運んだが、手応えはなかった。
「だったらジェパードに聞いたらわかるかな?」
「あははっ、ジェイちゃんに聞くくらいなら自分で解いた方が早いよ!あっ、でもワーちゃんならわかるかも。」
「ワーちゃん?」
「二人目の弟。博物館の館長でね。人懐っこくて優しい、いい子だよ。今の時間ならまだ向こうだと思うし、行っておいで。」
セーバルに言われ、開拓者達は歴史文化博物館へと向かう。受付の女性に目的の人物のことを尋ねると、奥から小柄で細身な男性が姿を現した。
歳の頃はジェパードと同じくらいだろうか。髪の色こそセーバル達のような金髪だが、顔立ちがあまり似ていない。それに細いフレームの眼鏡の奥から覗くネオンのような瞳が異彩を放っている。
てんていのねこ
MAIKING私だけが楽しかったペラの小説きっかけにレイチュリが始まる小説の残骸。どんどんペラがメインになっていくし、ゲストのKさんが楽しすぎて脱線したので諦めました。
こうしてメインカプの脇でわちゃわちゃしている人びとが大好きです。 3964
てんていのねこ
MAIKINGテイワットにレイチュリ放り込んだ。そして鍾タルに巻き込ませた。
ここから4Pにしようかどうか考えて力尽きた。
なお恋愛の先輩ヅラしているがアベの貞操はレイチュリするまでガチガチに存護されていたものとし、鍾タルはどっちも恋愛初心者の童貞処女とする。
更にレイチュリもそうだったとする。癖。 2654
zeppei27
DONE何となく続きの主福で、清い添い寝を終えた朝に二人で湯屋にお出かけするお話です。単独でも読めます!好奇心が旺盛な人間は、純粋な気持ちで夢中になっているうちに地雷を踏むことがままあるでしょうが、踏んで爆発する様もまた良い眺めだと思います。
前作>
https://poipiku.com/271957/10317103.html
もみづる色 情人と添い遂げた後の朝とは、一体どんなものだろうか。遥か昔の後朝の文に遡らなくとも、それは特別なひとときに違いない。理性の人である福沢諭吉も同様で、好きになってしまった人と付き合うようになってからというもの、あれやこれやと幾度となく想像を巡らせてきた。寄り添い合うようにして行儀良く寝たまま起きて笑い合うだろうか?それとも、決して隙を見せることのない隠し刀のあどけない寝顔を見ることが叶うだろうか。貪られるのか貪るのか、彼我の境目を失うように溶け合ったとしたらば離れがたく寂しいものかもしれない。
では現実はどうであったかというと、諭吉は窮屈な体をうんと伸ばしてゆるゆると目を覚ました。はたと瞳を開き、光を捉えた瞬間頭をよぎったのは、すわ寝坊したろうかという不吉な予感だった。味噌汁のふわりとした香りが空きっ腹をくすぐる。見覚えのない部屋だ。己の身を確認すれば、シャツと下穿きだけという半端な格好である。普段は米国で入手した寝巻を身につけているのだが、よそ行きのままということは、ここは出先なのだろう。それにしたって中途半端だ――
9065では現実はどうであったかというと、諭吉は窮屈な体をうんと伸ばしてゆるゆると目を覚ました。はたと瞳を開き、光を捉えた瞬間頭をよぎったのは、すわ寝坊したろうかという不吉な予感だった。味噌汁のふわりとした香りが空きっ腹をくすぐる。見覚えのない部屋だ。己の身を確認すれば、シャツと下穿きだけという半端な格好である。普段は米国で入手した寝巻を身につけているのだが、よそ行きのままということは、ここは出先なのだろう。それにしたって中途半端だ――
海老(小説)白玉(絵)
REHABILIポイピク登録しました。文字書きの海老と、お絵描きの白玉です。使い方分からないからアワアワしてます。小説頁は挿絵差し込みできないみたいなんで、こっちに貼ってみた。 4zeppei27
DONE遅くなりましたが、傭泥『ご親切にどうもありがとう』の続きです。何故スパダリが誕生したのか、傭兵という一匹の虎の胸の内です。あともう少し続きます……!前作>
https://poipiku.com/271957/10154086.html
どういたしまして/1 生まれついてからこの方、優しさというものは特別持ち合わせていなかった。父母の愛情はそれなりに受けていたし、生活は豊かでなくとも最低限満たされていたが、端的に言って余裕が不足していた。否、好奇心とでも言おうか。将来自分の役に立つと諭された武芸や拙い読み書きをする気概はあったのだし、家族のために骨を折ることは少しも厭わなかった。
優しさとは生まれついての素質ではなく、習慣である。赤の他人に進んで手を貸し、身を切る行動原理は理性によるものではない。そうあるべきだと、そうありたいと思わせる土壌あってこそと言える。父母は他者に優しかったかもしれないが、ナワーブにそれを強いることはなかった。当然ながら、発展途上にある子供が己の不足に気づく由もない。
6587優しさとは生まれついての素質ではなく、習慣である。赤の他人に進んで手を貸し、身を切る行動原理は理性によるものではない。そうあるべきだと、そうありたいと思わせる土壌あってこそと言える。父母は他者に優しかったかもしれないが、ナワーブにそれを強いることはなかった。当然ながら、発展途上にある子供が己の不足に気づく由もない。
zeppei27
DONE何となく続きの主福で、付き合い始めたものの進展せずもだもだする諭吉と、観察者アーネスト・サトウの友情(?)話です。お互いに相手をずるいと思いつつ、つい許してしまうような関係性は微笑ましい。単品でも多分読めるはず!前作>
https://poipiku.com/271957/10313215.html
帰宅 比翼という鳥は、一羽では飛べない生き物だという。生まれつき、一つの目と一つの翼しか持たず、その片割れとなる相手とぴたりと寄り添って初めて飛べるのだ。無論伝説上の生き物であるのだから現実にはあり得ないものの、対となる相手がいなければどうにも生きることさえ立ち行かないという現象は起こりうる。
かつての自分であれば鼻で笑ってしまうような想いに、福沢諭吉は今日もむぐむぐと唇を運動させた。ぐっと力を入れていなければ、ついついだらしのない表情を浮かべてしまう。見る人が見れば、自分が誰かを待ちわびていることが手に取るようにわかるに違いない。
隠し刀と恋をする(そう、自分はけじめをつけたのだ!)ようになって以来、諭吉は一日千秋という言葉の意味を身を以て知った。滅多矢鱈に忙しい相手は、約束なくしては会うことの叶わぬ身である。彼の住まいに誘われたことはあるものの、家主は方々に出掛けてばかりで待ちわびる時間が一層辛くなるだけであった。
7614かつての自分であれば鼻で笑ってしまうような想いに、福沢諭吉は今日もむぐむぐと唇を運動させた。ぐっと力を入れていなければ、ついついだらしのない表情を浮かべてしまう。見る人が見れば、自分が誰かを待ちわびていることが手に取るようにわかるに違いない。
隠し刀と恋をする(そう、自分はけじめをつけたのだ!)ようになって以来、諭吉は一日千秋という言葉の意味を身を以て知った。滅多矢鱈に忙しい相手は、約束なくしては会うことの叶わぬ身である。彼の住まいに誘われたことはあるものの、家主は方々に出掛けてばかりで待ちわびる時間が一層辛くなるだけであった。
zeppei27
DONERONIN主福、前作の何となく続きです。無茶な人助けばかりする隠し刀の姿を見たらば、普通は心配になってしまうのでは?理性的に面倒を避けようとする諭吉の理解を超えた行動なんだろうなあと思うと、ちょっとだけ申し訳なくなります。冷静な人がメチャクチャになってしまう姿は良い。前作>
https://poipiku.com/271957/10302464.html
名付けたならば まだ熱を持っているような気がする。鏡台の前で髪を整えながら、福沢諭吉は努めて上の空でいようと懸命な努力を続けていた。普段であれば真正面から鏡の中の自分に向き合うところが、今日はどうにも難しい。否、この数日ほどはずっと同じ煩悶を繰り返しては鎮めていた。毎日見てそらで思い出せるような自分の顔など、今更何を感じよう。形ばかりの気合を入れてちら、と鏡を見てう、と思わず呻き声が出た。
「いつもと同じ、のはずなんですけれどもね」
どうしてこうも面映さが沸々と胸の中を満たしてゆくものか。ちらりと一瞬見ただけで、自分に向けられた眼差しの熱さまで思い起こされて頬が上気する。数奇な出会いを経た友人かつ一教子に過ぎないはずの隠し刀が、戯れともつかぬ誘いかけで自分の顎に触れた。太く節くれだった指先は戸惑う諭吉の唇をこじ開け――狼藉はそこまでだった。悪戯げな囁きを残して、全ては何事もなかったかのように日常に舞い戻っている。
5259「いつもと同じ、のはずなんですけれどもね」
どうしてこうも面映さが沸々と胸の中を満たしてゆくものか。ちらりと一瞬見ただけで、自分に向けられた眼差しの熱さまで思い起こされて頬が上気する。数奇な出会いを経た友人かつ一教子に過ぎないはずの隠し刀が、戯れともつかぬ誘いかけで自分の顎に触れた。太く節くれだった指先は戸惑う諭吉の唇をこじ開け――狼藉はそこまでだった。悪戯げな囁きを残して、全ては何事もなかったかのように日常に舞い戻っている。
理図(rito)
REHABILI原作軸コラロ❤️🔥🐯小説。コラロのワンドロワンライ企画さまに投稿させていただいたSSです。
154回 お題「青空/光」
事前制作 60min+80min
短め&CP要素あまりありません…。 2
zeppei27
DONE初RONINで気分のままに、隠し刀(男)×諭吉です。どうして契らせてくれないんだ諭吉ぃ!姫扱いをしてきたのにこの仕打ち、昇華させずにはいられませんでした。服装と言い、恥じらいを見せる様子と言い、居合(史実)まで持ち出してきて胸がいっぱいです。理性的な人が熱くなって激情に身を任せる時の勢いって良いですね……。舌足らず 横浜貴賓館は今日も活況を呈していた。国も身分も分け隔てなく、世界に対し門戸を開かんとする人々で溢れ、明日への野望や希望がひしめき合って熱気を孕んでいる。交わされる言葉はほぼ日本語ではなく、目を閉じて仕舞えばここが日本であることをも忘れてしまうような様相である。長らく鎖国を強いてきた国とは思えぬ状態で、十年前の日本人であれば誰もが想像だにしなかっただろう。
ここに、輝かんばかりの明日が見えようとしている。福沢諭吉もまた、そんな足掛かりを得るべく出入りする人間の一人だった。当初は幕府外国方として公文書を翻訳するためだけであったが、今では出入りする人々に日本語を教えるという小遣い稼ぎもできて一石二鳥である。とりわけアーネスト・サトウは、並々ならぬ熱意を持って学ぼうという姿勢が面白く、彼に教える時間が公務に計算されることも含めて希少な存在だ。本居宣長に興味を持ち、和歌を嗜もうとする英国人など、彼の母国でも滅多におるまい。彼との交流は、諭吉に母国に対する新しい見方を発見させる刺激的な時間だった。
3493ここに、輝かんばかりの明日が見えようとしている。福沢諭吉もまた、そんな足掛かりを得るべく出入りする人間の一人だった。当初は幕府外国方として公文書を翻訳するためだけであったが、今では出入りする人々に日本語を教えるという小遣い稼ぎもできて一石二鳥である。とりわけアーネスト・サトウは、並々ならぬ熱意を持って学ぼうという姿勢が面白く、彼に教える時間が公務に計算されることも含めて希少な存在だ。本居宣長に興味を持ち、和歌を嗜もうとする英国人など、彼の母国でも滅多におるまい。彼との交流は、諭吉に母国に対する新しい見方を発見させる刺激的な時間だった。
kikian0901_gs
SPUR ME以前書いた「夏に恋人ができたと思い酒飲んで泣く五の夏五」を修正、加筆したものです。長くなりそうかつこれ書いてたら他の本に間に合わないため、こちら六月の本にと考えています。ハッピーエンドにする予定です。
臆病者と卑怯者の末路 相方に恋人ができた、らしい。
勿論相手は自分ではない。新人アナウンサーの女らしい。らしい、というのは自分は噂で聞いた程度のことしか知らないからだ。本人から聞いたのでなければただの噂で嘘なのかもしれないけれど、この噂は本当かもしれない、なんて思ってしまった。
なんせ相方である夏油傑は、物凄くモテる。僕よりモテる。学生時代なんて、ほぼ毎日女に告白されていた程だ。そんなんだから本人もそれなりに遊んでおり、女の扱いが慣れているのだ。クズである。
だが、ここ数年は……というより、俺と傑がニコイチと言われるようになってから、誰かと付き合っているような様子はなかった。芸人を目指し高校卒業と共に同居をして、結構売れている今でも一緒に住んでいるが、傑から恋人を紹介されたこともなければ、そういう話だってしたことない。
28373勿論相手は自分ではない。新人アナウンサーの女らしい。らしい、というのは自分は噂で聞いた程度のことしか知らないからだ。本人から聞いたのでなければただの噂で嘘なのかもしれないけれど、この噂は本当かもしれない、なんて思ってしまった。
なんせ相方である夏油傑は、物凄くモテる。僕よりモテる。学生時代なんて、ほぼ毎日女に告白されていた程だ。そんなんだから本人もそれなりに遊んでおり、女の扱いが慣れているのだ。クズである。
だが、ここ数年は……というより、俺と傑がニコイチと言われるようになってから、誰かと付き合っているような様子はなかった。芸人を目指し高校卒業と共に同居をして、結構売れている今でも一緒に住んでいるが、傑から恋人を紹介されたこともなければ、そういう話だってしたことない。
理図(rito)
REHABILI31よiくばiりフiェスネタ。二次創作リハビリ第一弾
書いてる矢先にフェスが早期終了いたしまして、元々の起承転結の「起承」が申し訳程度にスッカスカになっています、すみません(最初2ページ)。
現パロコラロ。
ローが高校生くらいで、まだ正式なえっっっっちはしてないくらい。
コラさんが「せめて高校卒業してからじゃないとダメ!」って言うから。
その割に際どいスキンシップは仕掛けてくるバグり方してる。 7
zeppei27
DONE遅ればせながらメイドの日〜!付き合っている傭泥で、メイドパラダイスなお話です。
完璧の作り方 荘園には時空を超えた場所である。と、いうのもおとぎ話でしか存在しないような神であるとか、呪いであるとか、そもそもここで主に開催される『ゲーム』からして奇妙だ。自室で寝ていたはずが、ある日突然豪華客船に乗せられ殺人事件に巻き込まれたり、異国情緒あふれる街並みで追いかけっこをさせられたりもする。当初は皆戸惑うものだが、人間も強かなもので回を重ねればさして驚くには値しなくなる。むしろ、どうすれば今回の『催し物』で自分が有利に動けるか——そんなことさえ考えるようになるのだ。
「いくらなんでもこれはおかしくないか?」
ナイチンゲールのサインが書かれたお知らせを読んだクリーチャー・ピアソンはわざとらしく哀れっぽい声をあげた。多分外界の街角なら、お人好しの一人や二人は釣れただろう。
3143「いくらなんでもこれはおかしくないか?」
ナイチンゲールのサインが書かれたお知らせを読んだクリーチャー・ピアソンはわざとらしく哀れっぽい声をあげた。多分外界の街角なら、お人好しの一人や二人は釣れただろう。
yhuruhata
DONE好奇心だけで生きる鶴丸国永と、未来の亡霊であるところの同田貫正国。すこしふしぎ。ぷらいべったー+
https://privatter.me/page/66364de3dbe3c 9
86mayuri
DONE全文はpixivに上げています。【墜天の王 蔭 11 蜜月】長編修帝小説の一部。追憶。原作軸。翼の団時代の回想シーン。阿修羅×帝釈天
墜天の王 11 その馴れ初めは焦がれて苦く ③.
明け方の白み始めた空は薄ぼやけ、広がる朝霧に遠くの山々は雲海に沈む。
内窓を開け放てば風のない空気は冷涼で、静かに自分の肌を刺そうとしたが、この程度では罰にもならない。
自分でも自覚のない疲労があったのか、行為の後にすぐ眠ってしまったようだ。知らないうちに身なりを整えたのか気が付くと隣で夜着を身に纏う帝釈天が静かに眠っていた。
彼の寝顔を見守る資格すら己にはない。蟠りだけが胸の内を苛むようなそんな後悔を日を跨いでも持越し、横たわる彼の傍にいることが出来なかった。
衣服だけ整え寝台から下りて昨晩と同じ出窓の前に戻ってきてしまった阿修羅は、窓を開けたままでまた同じように茵に胡坐を組んで座る。
「阿修羅」
3766明け方の白み始めた空は薄ぼやけ、広がる朝霧に遠くの山々は雲海に沈む。
内窓を開け放てば風のない空気は冷涼で、静かに自分の肌を刺そうとしたが、この程度では罰にもならない。
自分でも自覚のない疲労があったのか、行為の後にすぐ眠ってしまったようだ。知らないうちに身なりを整えたのか気が付くと隣で夜着を身に纏う帝釈天が静かに眠っていた。
彼の寝顔を見守る資格すら己にはない。蟠りだけが胸の内を苛むようなそんな後悔を日を跨いでも持越し、横たわる彼の傍にいることが出来なかった。
衣服だけ整え寝台から下りて昨晩と同じ出窓の前に戻ってきてしまった阿修羅は、窓を開けたままでまた同じように茵に胡坐を組んで座る。
「阿修羅」
zeppei27
DONE傭泥で、謎のスパダリ(?)ナワーブに引き続き振り回されるピアソンさんのお話です。この行為は好意なのか、それとも真意は別に存在するのだろうか?もう少し続きます。>前回のお話
https://poipiku.com/271957/10154086.html
ご親切にどうもありがとう /2 大概の口約束は破られるものである。そうでなければ何故、神はモーセに石の板を与えただろう?神でさえも物理的な手段で残すことを選んだのだ、人間同士ならば契約書類は絶対必要であるし、あるからと言って油断してもいけない。クリーチャーは賢い人間なので、契約の有用性と無効性を巧みに利用して上澄を啜ることを心得ていた。つまり――傭兵だか軍人だか知らないが、ナワーブ・サベダーの珍妙な申し出など、実しやかな嘘だろうとハナから信用していなかったのである。
この荘園に来た人間が、本当の身分を洗いざらい打ち明ける必要があるだろうか?信用ならない連中とうまくやっていくためには、嘘と夢と上辺だけの平和を楽しむ上品さがあれば十分だ。真実は誰にも確かめようもなく、また真実だからと言って価値があるわけでもない。クリーチャーが『慈善家』でなくとも、そう主張し続けることこそに意義がある。
6187この荘園に来た人間が、本当の身分を洗いざらい打ち明ける必要があるだろうか?信用ならない連中とうまくやっていくためには、嘘と夢と上辺だけの平和を楽しむ上品さがあれば十分だ。真実は誰にも確かめようもなく、また真実だからと言って価値があるわけでもない。クリーチャーが『慈善家』でなくとも、そう主張し続けることこそに意義がある。
キツキトウ
DONE2024/4/24自分は、鉱物は何だか人みたいだなと思う時があるのです。
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エブリスタ「三行から参加できる」用に新しく書いたもの。「終煙奇譚」シリーズの一つ。
終煙怪奇譚:「息する仮晶」.
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「じゃあ、大人しくここでまっているのよ」
吐かれた息は白く広がりついには消えた。
赤い背は遠ざかっていき、その人にいつも纏わり付いていた強い匂いがそれに付いて消えていく。
自分に向かって誰かがそう言っていたのだ。
✤ ✤ ✤
屋根の下で、細く白い手を空に透かしては微かに白い息を天へ投げ、見上げていた視線をまた地に落とす。……クラリと頭が揺れた時、何かが視界の端に映り込んだ。
もふもふとした何かが目の前を通る。もふもふとした白くてまん丸い毛玉達だ。ちょこんと目のような粒も見える。
それはぴょんぴょんと跳ねてはピタリと止まり、止まった場所で次々にぶつかり合ってはひっついて、むきゅむきゅとおしくらまんじゅうをしだす。そして暫くすると一匹一匹と塵じりになっていき、やがてまた戻ってきては同じことを繰り返していた。
3533.
「じゃあ、大人しくここでまっているのよ」
吐かれた息は白く広がりついには消えた。
赤い背は遠ざかっていき、その人にいつも纏わり付いていた強い匂いがそれに付いて消えていく。
自分に向かって誰かがそう言っていたのだ。
✤ ✤ ✤
屋根の下で、細く白い手を空に透かしては微かに白い息を天へ投げ、見上げていた視線をまた地に落とす。……クラリと頭が揺れた時、何かが視界の端に映り込んだ。
もふもふとした何かが目の前を通る。もふもふとした白くてまん丸い毛玉達だ。ちょこんと目のような粒も見える。
それはぴょんぴょんと跳ねてはピタリと止まり、止まった場所で次々にぶつかり合ってはひっついて、むきゅむきゅとおしくらまんじゅうをしだす。そして暫くすると一匹一匹と塵じりになっていき、やがてまた戻ってきては同じことを繰り返していた。
zeppei27
DONE傭泥で、謎のスパダリ(?)ナワーブに悩まされるピアソンさんのお話です。果たしてナワーブの真意はどこにあるのか、一緒に迷いながら楽しんでいただければ幸いです〜続きます!ご親切にどうもありがとう/1 他人に配慮することは、相手に目に見えぬ『貸し』を作ることである。塵も積もればなんとやらで、あからさまでなしにさりげなく、しかし何とはなしに伝えねばならない。当たり前だと思われてはこちらの損だからだ。返せる程度の親切を相手に『させた』時点で関係は極限に達する。お互いとても楽しい経験で、これからも続けたいと思わせたならば大成功だ。
そう、クリーチャー・ピアソンにとって『親切』はあくまでもビジネスであり駆け引きだ。慈善家の看板を掲げているのは、何もない状態で親切心を表現しようものならば疑惑を抱かせてしまう自分の見目故である。生い立ちからすれば見てくれの良さは必ずしも良いものではなかったと言うならば、曳かれ者の小唄になってしまうだろう。せめてもう少し好感触を抱かせる容貌をしていたらば楽ができたはずだからだ。クリーチャーはドブの臭いのように自分の人生を引きずっていた――故にそれを逆手に取っている。
7288そう、クリーチャー・ピアソンにとって『親切』はあくまでもビジネスであり駆け引きだ。慈善家の看板を掲げているのは、何もない状態で親切心を表現しようものならば疑惑を抱かせてしまう自分の見目故である。生い立ちからすれば見てくれの良さは必ずしも良いものではなかったと言うならば、曳かれ者の小唄になってしまうだろう。せめてもう少し好感触を抱かせる容貌をしていたらば楽ができたはずだからだ。クリーチャーはドブの臭いのように自分の人生を引きずっていた――故にそれを逆手に取っている。