mbyu6182
DONE誕生日の日の寝る前の甘い時間を恋人と過ごすお話。ミヤジ誕2024 主の部屋で、睡眠サポートを始める。今日、この日の事を思い出しながら、昨年の事も思い出し、こんな幸せな誕生日があと何回、自分に訪れるのだろうかと考えていた、そんな時。主の手がスルリとミヤジの手を撫でて、指を絡めた。
「主様…?」
そのまま手を唇に引き寄せる。
「ね、もっと祝いたいな…ミヤジが産まれてきてくれた事に感謝したい」
「もうたくさん祝ってもらったよ」
指先を舐めるようにキスして、主は少し不満気に言う。
「もっと…もっと、ミヤジと出逢えたことに、有り難うってしたいの」
ギュッと、ミヤジを握る手が強くなる。
「わがままくらい言ってよ…それとも、私、そんなに頼りないかな?甘えたりとか、して欲しい…恋人として…誕生日くらい」
1940「主様…?」
そのまま手を唇に引き寄せる。
「ね、もっと祝いたいな…ミヤジが産まれてきてくれた事に感謝したい」
「もうたくさん祝ってもらったよ」
指先を舐めるようにキスして、主は少し不満気に言う。
「もっと…もっと、ミヤジと出逢えたことに、有り難うってしたいの」
ギュッと、ミヤジを握る手が強くなる。
「わがままくらい言ってよ…それとも、私、そんなに頼りないかな?甘えたりとか、して欲しい…恋人として…誕生日くらい」
epj27t
DONEパスはバッカくんの被検体番号です。ホラーな個人的夢小説です。
⚠現パロ、キャラ崩壊あります。
作者が自分で読みたくて夢小説を書いております、そのため自我が全開です。あまり感情移入できるような文じゃありません、お気をつけて。
そのうちR指定になります。
⚠️続きは別のページに上げてます。 20014
住めば都
DONEvilla party! 開催おめでとうございます。展示作品です。同イベントXアカウントで開催されら、紋章見せての企画で掲載させていただいたユーハン夢になります。
災いの烙印、あるいは幸福の刻印 見ないようにと意識すればするほど、そちらへ目が吸い寄せられてしまうのは、一体どういうわけなんだろう。
ユーハンが腕を動かすたび、ちらちらと視界を過ぎるそれを、私の目は追いかけてしまう。彼の体に刻まれた、丸い形の紋章。悪魔と契約した証だ。
「主様、どうかなさいましたか?」
袖のない運動着を着ているせいで、ユーハンの二の腕はむき出しになっている。普段は服の下に隠れている紋章を見つめながら思考に没頭していた私は、心配そうに顔を覗き込んでくるユーハンに、思わず身を仰け反らせた。
近い。すぐ傍で、彼の顔半分を隠す長い前髪が揺れている。滴るような黒色に朱の混じる不思議な色彩は、暗闇で踊る炎のようだ。
「ごめん、大丈夫。だから……ちょっと離れてほしいかな……」
2572ユーハンが腕を動かすたび、ちらちらと視界を過ぎるそれを、私の目は追いかけてしまう。彼の体に刻まれた、丸い形の紋章。悪魔と契約した証だ。
「主様、どうかなさいましたか?」
袖のない運動着を着ているせいで、ユーハンの二の腕はむき出しになっている。普段は服の下に隠れている紋章を見つめながら思考に没頭していた私は、心配そうに顔を覗き込んでくるユーハンに、思わず身を仰け反らせた。
近い。すぐ傍で、彼の顔半分を隠す長い前髪が揺れている。滴るような黒色に朱の混じる不思議な色彩は、暗闇で踊る炎のようだ。
「ごめん、大丈夫。だから……ちょっと離れてほしいかな……」
mbyu6182
DOODLE🐏たちのキス事情(恋仲)主と恋仲になったときのキス事情🫖
キスは好き。優しく啄むようなキスを何度もする。顔中に、身体中に、何度も何度も、名前を呼びながら「お慕いしております」「こんなにも愛おしい人は他におりません」「私だけの…」結構饒舌。キスの合間に甘く囁いて頬を優しく撫でる。愛されてる感が凄い。大切にされてる感もえげつない。寧ろもっと強気でもいいのよ。
🍽
めちゃくちゃ好き。許されるのならば事ある毎にキスしたい。けど、恥ずかしいから我慢。主の気分次第ですぐにソノ気にさせられる。最初は触れるだけのキスだが、段々と足りなくなって唇を舐め軽く吸って、もっと、と強請ってくる。応えて唇を軽く口を開けると舌を捩じ込んでくる。かなりねちっこい。勿論、キスだけで終わるわけがない。
2748キスは好き。優しく啄むようなキスを何度もする。顔中に、身体中に、何度も何度も、名前を呼びながら「お慕いしております」「こんなにも愛おしい人は他におりません」「私だけの…」結構饒舌。キスの合間に甘く囁いて頬を優しく撫でる。愛されてる感が凄い。大切にされてる感もえげつない。寧ろもっと強気でもいいのよ。
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めちゃくちゃ好き。許されるのならば事ある毎にキスしたい。けど、恥ずかしいから我慢。主の気分次第ですぐにソノ気にさせられる。最初は触れるだけのキスだが、段々と足りなくなって唇を舐め軽く吸って、もっと、と強請ってくる。応えて唇を軽く口を開けると舌を捩じ込んでくる。かなりねちっこい。勿論、キスだけで終わるわけがない。
住めば都
DONEあくねこ、ルカス夢。いつもドキドキさせられて悔しい主様が、意趣返しのつもりで「ルカスは冗談ばっかり」と返したら、実は全部本気の本心だったと暴露される話。
交渉係を務めて長い男が、自分の思いに振り回されて本音を隠せず、苦し紛れに冗談だよって見え見えの誤魔化し方しかできないのめちゃくちゃ萌えるなと思うなどしました
いっそ全部、冗談にしてしまえたら 目の覚めるような美人ではない。愛嬌があるわけでも、聴衆を沸かせる話術を持つわけでもない。
至って普通。どこにでもいそうな、地味で目立たないタイプ。――それが私だ。
おおよそ三十年かけて築き上げた自己認識は、異世界で出会ったイケメン執事たちに「主様」と呼ばれ大切にされたところで、簡単に揺らぐようなものではない。
「フフ、主様といられる時間は、本当に幸せです♪ この時間が、永遠に続けばいいのになあ……」
「はいはい。全く……ルカスったら、冗談ばっかり言うんだから」
上機嫌に微笑む担当執事を、私は半眼で睨みつけた。
ルカスとアモンは、口説くようなセリフをよく言ってくる。恋愛経験の少ない私はそのたび顔を赤くしてドギマギしてしまうのだが、彼らの思惑どおりに翻弄されるのを、最近は悔しいと感じるようになっていた。
1884至って普通。どこにでもいそうな、地味で目立たないタイプ。――それが私だ。
おおよそ三十年かけて築き上げた自己認識は、異世界で出会ったイケメン執事たちに「主様」と呼ばれ大切にされたところで、簡単に揺らぐようなものではない。
「フフ、主様といられる時間は、本当に幸せです♪ この時間が、永遠に続けばいいのになあ……」
「はいはい。全く……ルカスったら、冗談ばっかり言うんだから」
上機嫌に微笑む担当執事を、私は半眼で睨みつけた。
ルカスとアモンは、口説くようなセリフをよく言ってくる。恋愛経験の少ない私はそのたび顔を赤くしてドギマギしてしまうのだが、彼らの思惑どおりに翻弄されるのを、最近は悔しいと感じるようになっていた。
mbyu6182
DOODLE執事以上・恋人未満各🐏抱っこ事情🫖
王道の姫抱き。「肩に腕を回してくださいね」って、あんた、これから結婚アルバム写真でも撮るんです?
🍽
ガッツリ俵肩乗せ抱き。主は食材かぇ?担がれとんのだが。運び方としては効率的か?なんか、お相撲さんに抱えられている気もしてきた…
⚔
謎の肩車。主の指差す方に動きます。たまに主の頭の高さを考えずに動くので、主の顔面に色々とクリーンヒットします。騎馬戦のような感覚だよ…
✝️
サクッと姫抱き。後から赤面するタイプ。「しっかり掴まっていてください」って言う割に、後で主が触れた辺りの服をサスサスして赤面してます。
🦋
縦抱き膝位置。主が肩に掴まっているわけだが、いつもと違う景色にワクワクしますね。主が頭をぶつけないようにとても注意深く動きます。
1000王道の姫抱き。「肩に腕を回してくださいね」って、あんた、これから結婚アルバム写真でも撮るんです?
🍽
ガッツリ俵肩乗せ抱き。主は食材かぇ?担がれとんのだが。運び方としては効率的か?なんか、お相撲さんに抱えられている気もしてきた…
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謎の肩車。主の指差す方に動きます。たまに主の頭の高さを考えずに動くので、主の顔面に色々とクリーンヒットします。騎馬戦のような感覚だよ…
✝️
サクッと姫抱き。後から赤面するタイプ。「しっかり掴まっていてください」って言う割に、後で主が触れた辺りの服をサスサスして赤面してます。
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縦抱き膝位置。主が肩に掴まっているわけだが、いつもと違う景色にワクワクしますね。主が頭をぶつけないようにとても注意深く動きます。
mbyu6182
DOODLE執事以上・恋人未満のハグ事情各🐏のハグ事情🫖
そっと包み込むようなハグ。あたたかい。紅茶のと、ちょこっとだけマドレーヌの甘い、香りがする。胸元に額を押し付けると優しく撫でてくれる。少し聖母を感じる。貴方様は処女妊娠して私を産んだお母様ですね
🍽
ガシィッと抱き締めてグルグルするので遠心力で足が外側に反れます。コレはアレだ、アレで見たよ、ジブリ。多分、ジブリ。ラピュタかな。ハウルかな。魔女宅かな。まあ、多分、宮さんだよ。多分ね。ロノの前向きさと素直さと感情的は、どことなくジブリ味あるよね。ロノ、ジブリ出れるんじゃない。ハグシーン用で。
⚔
強い。痛い。肋骨折る気かな?主、頑張ってカルシウム摂るね。バスティンのハグに負けない強い骨を手に入れるように頑張るよ。でも、無言だと、感情がわからないよ。怒ってるの?寂しかったの?嫉妬してる?言ってくれないかなぁ。話して欲しいなぁ。心を暴きたいなぁ。
1613そっと包み込むようなハグ。あたたかい。紅茶のと、ちょこっとだけマドレーヌの甘い、香りがする。胸元に額を押し付けると優しく撫でてくれる。少し聖母を感じる。貴方様は処女妊娠して私を産んだお母様ですね
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ガシィッと抱き締めてグルグルするので遠心力で足が外側に反れます。コレはアレだ、アレで見たよ、ジブリ。多分、ジブリ。ラピュタかな。ハウルかな。魔女宅かな。まあ、多分、宮さんだよ。多分ね。ロノの前向きさと素直さと感情的は、どことなくジブリ味あるよね。ロノ、ジブリ出れるんじゃない。ハグシーン用で。
⚔
強い。痛い。肋骨折る気かな?主、頑張ってカルシウム摂るね。バスティンのハグに負けない強い骨を手に入れるように頑張るよ。でも、無言だと、感情がわからないよ。怒ってるの?寂しかったの?嫉妬してる?言ってくれないかなぁ。話して欲しいなぁ。心を暴きたいなぁ。
猫目ゆこ
DONEaknk絵まとめ②⚠︎最後の1枚にアモ主♀があります(主顔無し)
単体絵(テディ/ボスキ/ユーハン/フェネス/ラト/ラムリ/ハウレス/ベリアン)
(2023/10/11〜10/29) 10
住めば都
DONEあくねこ、ミヤジ夢。夕日に照らされるミヤジを見て不安になった主様と、彼女の不安を優しく払うミヤジの話。
中村雨紅『夕焼け小焼け』より引用
ほんとはストールネタを入れたかったんだけど、書き始めてから、散歩ってことは運動着だよな?ということに気づき、入れられなかったのでした……
手を繋いで帰ろう♪〜夕焼け小焼けで日が暮れて
♪〜山のお寺の鐘がなる
秋は、日毎に深まっている。
悪魔執事の主人は、担当執事を務めるミヤジに誘われて、屋敷の裏に広がる森の小路を散策していた。
乾いた空気に晒された下草や落ち葉が、足を動かすたびにかさかさと音を立てる。姿を隠した鳥たちや虫たちも、澄んだ声を響かせており、森の中はちょっとした音楽会のようだ。
「主様、疲れてはいないかい?」
先導するミヤジが問うが、屋敷を出てからまだ十分も立っていない。心配性の執事に、女は「やっと体が温まってきたところだ」と元気いっぱい答えた。
二人はゆっくりと森を進んでいく。予定では、湖畔まで行って、少し休憩をしてから屋敷に戻ることになっていた。
1805♪〜山のお寺の鐘がなる
秋は、日毎に深まっている。
悪魔執事の主人は、担当執事を務めるミヤジに誘われて、屋敷の裏に広がる森の小路を散策していた。
乾いた空気に晒された下草や落ち葉が、足を動かすたびにかさかさと音を立てる。姿を隠した鳥たちや虫たちも、澄んだ声を響かせており、森の中はちょっとした音楽会のようだ。
「主様、疲れてはいないかい?」
先導するミヤジが問うが、屋敷を出てからまだ十分も立っていない。心配性の執事に、女は「やっと体が温まってきたところだ」と元気いっぱい答えた。
二人はゆっくりと森を進んでいく。予定では、湖畔まで行って、少し休憩をしてから屋敷に戻ることになっていた。
住めば都
DONE #aknk版深夜の創作一本勝負 よりお題をお借りしました使用お題「スイーツ」。メインはロノと主様、友情出演でハナマル、ユーハンという感じ。夢要素は香る程度。
今年のパレスはさつまいもがやたらと豊作。処理に困っているロノに、主様がアドバイスをしたようです。
パレスの日常の一部を切り取るようなつもりで書きました。
秋の味覚の楽しみ方 本日のおやつであるスイートポテトを前に、デビルズパレスの女主人は目を瞬かせた。
昨日はさつまいものマフィンで、一昨日は食後のデザートがさつまいものモンブランだった。その前の日は、確か夕食にさつまいものサラダが出たし、さらにその前はポタージュだったか。さすがに三日以上前ともなると記憶が怪しい。
彼女はさつまいもが大好きなので、連日でも全く構わない。だがいくら旬の食材とはいえ、こうも同じ食材を使ったメニューが続くと、台所事情が気になってしまう。
「最近、さつまいもの料理やスイーツが続くね。旬だから?」
「……やっぱ、気づきますよね?」
「まあ、これだけ続けばさすがにね」
「だよなあ……」
訊ねた女に、厨房の主であるロノは渋い顔になった。どうやらさつまいもメニューが続いていることを気にしていたらしい。
2604昨日はさつまいものマフィンで、一昨日は食後のデザートがさつまいものモンブランだった。その前の日は、確か夕食にさつまいものサラダが出たし、さらにその前はポタージュだったか。さすがに三日以上前ともなると記憶が怪しい。
彼女はさつまいもが大好きなので、連日でも全く構わない。だがいくら旬の食材とはいえ、こうも同じ食材を使ったメニューが続くと、台所事情が気になってしまう。
「最近、さつまいもの料理やスイーツが続くね。旬だから?」
「……やっぱ、気づきますよね?」
「まあ、これだけ続けばさすがにね」
「だよなあ……」
訊ねた女に、厨房の主であるロノは渋い顔になった。どうやらさつまいもメニューが続いていることを気にしていたらしい。
住めば都
DONEあくねこ、ボスキ夢※2023BDカードのストーリーの内容にかなり触れています。読んで感じたことをこねこねしたので…
ボスキの誕生日にとある不安を感じた主様が、ボスキと約束を交わす話
そんな"いつか"が来ませんように 仲間たちに囲まれ、盛大に祝われているボスキの姿を眺めながら、女はふと顔を曇らせた。
祝いの席にはふさわしくない表情であることも、気づいた執事たちが心配することもわかっている。けれどどうしても、わき上がる不安を心の中に留めておけなかった。
考えていたのは、今日の主役であるボスキのことだ。
パーティーが始まる前のこと。彼女はボスキと二人で話をする時間を得た。その場で用意していたプレゼントを渡し、話の流れで、彼の髪のセットを手伝うことになった。
ボスキの過去の話を聞くこともできて、とても有意義な時間だったのだが……ボスキという男の本質をまた一つ知った分、考えずにいられないことがあった。
ボスキ・アリーナスというひとは、それが自分に唯一できることで、かつ大切なひとのためになるとわかれば、相手を悲しませることになるとわかっていても、実行に移してしまう。そういう意志の強さがある。
2789祝いの席にはふさわしくない表情であることも、気づいた執事たちが心配することもわかっている。けれどどうしても、わき上がる不安を心の中に留めておけなかった。
考えていたのは、今日の主役であるボスキのことだ。
パーティーが始まる前のこと。彼女はボスキと二人で話をする時間を得た。その場で用意していたプレゼントを渡し、話の流れで、彼の髪のセットを手伝うことになった。
ボスキの過去の話を聞くこともできて、とても有意義な時間だったのだが……ボスキという男の本質をまた一つ知った分、考えずにいられないことがあった。
ボスキ・アリーナスというひとは、それが自分に唯一できることで、かつ大切なひとのためになるとわかれば、相手を悲しませることになるとわかっていても、実行に移してしまう。そういう意志の強さがある。
住めば都
DONEばーせか2023秋、開催おめでとうございます!展示作品です。楽しんでいただけたら嬉しいです。
ボスキ夢。両片思いの二人がすれ違って傷つけあって、仲直りする話。
明確な言葉はないけど、今のところボスキさんは十分のようです。
ボスキさんお誕生日おめでとう! あなたは「執事として魅力がない」ってよく言うけど、そんなことは全くないよ!とても魅力的なひとで、自慢の執事です!
愛の言葉にかえて 入浴を終え、さっぱりした気分で二階の執事室へ戻る途中のこと。ボスキは階段を登りきったところで、主人の寝室から小柄な人影が出てくるのに気づいた。無意識に口角が上がる。かつて負った怪我のせいで片目しか見えていないボスキだが、彼女の姿を見紛うことはないという自信があった。
声をかけようとして自分の服装を思い出したボスキは、登ってきたばかりの階段を数段降りた。羽織っただけのシャツのボタンを、可能な限り急いで止めていく。
主人が屋敷で生活を始めたばかりのころは、風呂上がりに上半身裸のままうろついて、気まずそうな顔をさせたものだ。さすがにまずいかと思い、最近は脱衣場を出る際にシャツを羽織るようになったが、暑いのと面倒なのとで、前を閉めずにいることが多かった。
14008声をかけようとして自分の服装を思い出したボスキは、登ってきたばかりの階段を数段降りた。羽織っただけのシャツのボタンを、可能な限り急いで止めていく。
主人が屋敷で生活を始めたばかりのころは、風呂上がりに上半身裸のままうろついて、気まずそうな顔をさせたものだ。さすがにまずいかと思い、最近は脱衣場を出る際にシャツを羽織るようになったが、暑いのと面倒なのとで、前を閉めずにいることが多かった。
住めば都
DONE #aknk版深夜の創作一本勝負 よりお題をお借りしました「逃げてもいいんだよ」バスティン夢
※秋のホーム会話のネタバレを一部含みます
向こうでいろいろあった主様が、バスティンと馬に乗っているうちに元気を取り戻す話
主様といるときか、動物を相手しているときだけ、柔らかい空気を纏うバスティンに夢を見ています。彼は穏やかな表情の奥に激重感情を隠してるのがずるいですよね……
安息の地を探して 天高く、馬肥ゆる秋。
近頃の馬たちは元気いっぱいで、よく食べ、よく走り、よく眠る。前後の話の流れは忘れたが、先日バスティンは主人にそんな話をした。
彼女がいたく興味を引かれた様子だったので、ならばとバスティンは提案したのだ。次の休日に、馬たちの様子を見に来るか、と。
それを聞いて、元より動物好きの主人は目を輝かせた。馬たちのストレスにならないのなら、触ったり乗ったりしてみたい。そう話す彼女はすでに楽しそうで、無表情が常のバスティンまで、つられて笑みを浮かべてしまうくらいだった。
だというのに――これは一体、どうしたことだろう。
「……主様」
「あ……うん。ごめん、ちょっとボーっとしてた。せっかく時間を取ってくれてるのに、ごめんね。今度はちゃんと聞いてるから、もう一回説明してもらえる?」
2707近頃の馬たちは元気いっぱいで、よく食べ、よく走り、よく眠る。前後の話の流れは忘れたが、先日バスティンは主人にそんな話をした。
彼女がいたく興味を引かれた様子だったので、ならばとバスティンは提案したのだ。次の休日に、馬たちの様子を見に来るか、と。
それを聞いて、元より動物好きの主人は目を輝かせた。馬たちのストレスにならないのなら、触ったり乗ったりしてみたい。そう話す彼女はすでに楽しそうで、無表情が常のバスティンまで、つられて笑みを浮かべてしまうくらいだった。
だというのに――これは一体、どうしたことだろう。
「……主様」
「あ……うん。ごめん、ちょっとボーっとしてた。せっかく時間を取ってくれてるのに、ごめんね。今度はちゃんと聞いてるから、もう一回説明してもらえる?」
住めば都
DONE #aknk版深夜の創作一本勝負 よりお題をお借りしました。「綺麗になったね」ベリアン夢。恋人設定でいちゃいちゃしてます。
恋をすると綺麗になるよね、という話。
あなたのおかげ 隣で作業をする女の横顔を眺めて、ベリアンは小さく感嘆の息をついた。
普段、穏やかに笑みを湛えていることの多い顔は、真剣そのもの。手元の書物に落とされた瞳が、忙しなく文章を追っている。ゆらゆらと揺れるロウソクの火に照らされたその姿には、得も言われぬ美しさがあった。
「……ベリアン?」
「っ、はい」
見つめていた横顔が、ベリアンのほうを向く。彼女はちょっと困ったように、眉尻を下げていた。
「どうかなさいましたか?」
「そういうわけじゃないけど……なんというか、あの……ちょっと、こっちを見すぎじゃない?」
女はずいぶんと躊躇ってから、恥ずかしそうにもごもごと言った。どうやら、熱い視線を注いでいたことに気づかれていたらしい。
1559普段、穏やかに笑みを湛えていることの多い顔は、真剣そのもの。手元の書物に落とされた瞳が、忙しなく文章を追っている。ゆらゆらと揺れるロウソクの火に照らされたその姿には、得も言われぬ美しさがあった。
「……ベリアン?」
「っ、はい」
見つめていた横顔が、ベリアンのほうを向く。彼女はちょっと困ったように、眉尻を下げていた。
「どうかなさいましたか?」
「そういうわけじゃないけど……なんというか、あの……ちょっと、こっちを見すぎじゃない?」
女はずいぶんと躊躇ってから、恥ずかしそうにもごもごと言った。どうやら、熱い視線を注いでいたことに気づかれていたらしい。
住めば都
DONEあくねこ、ラト夢。夜遅くに帰ってきた主様が、ラトと夜食を食べる話。どうやらラトは上手く寝つけなかったようで……?
当初の想定とは全然違う内容になってしまいましたが、過去の悪夢で感情をざわつかせているラトを主様が宥めるという本筋のところは書けたので良しとします。
本当は誕生日に間に合わせたかったけどムリでした。ラト、誕生日おめでとう!
ライナスの毛布 金の指環を指に嵌め、途端に襲い来る世界がねじれるような感覚を、目を閉じてやり過ごす。ゆっくり三秒数えて目を開けると、景色は見慣れた屋敷の玄関ホールに様変わりしていた。
「……主様」
帰ってきたことにほっと息をついた女に、暗がりから声をかけるものがいた。夜目の効かない彼女は、そこで初めてホール中央の大階段に腰掛ける執事の姿に気づいた。
「あれ、ラト?」
「はい……おかえりなさい」
「うん、ただいま」
名を呼ぶと、ラトはふらりと立ち上がった。濃いピンク色の髪が、彼の動きに合わせて揺れる。いつも三つ編みに結われている長い髪は下ろされており、シャンプーのコマーシャルかのようにさらりとたなびいた。
「ラトがこの時間まで起きてるの、珍しいね」
4012「……主様」
帰ってきたことにほっと息をついた女に、暗がりから声をかけるものがいた。夜目の効かない彼女は、そこで初めてホール中央の大階段に腰掛ける執事の姿に気づいた。
「あれ、ラト?」
「はい……おかえりなさい」
「うん、ただいま」
名を呼ぶと、ラトはふらりと立ち上がった。濃いピンク色の髪が、彼の動きに合わせて揺れる。いつも三つ編みに結われている長い髪は下ろされており、シャンプーのコマーシャルかのようにさらりとたなびいた。
「ラトがこの時間まで起きてるの、珍しいね」
住めば都
DONE #aknk版深夜の創作一本勝負 よりお題をお借りしています。「おかえり」ユーハン夢。
予定の時間を過ぎても帰ってこない主様を待ち続けるユーハンの話。
翌朝、ほかの執事からもユーハンがずっと待ってたと話を聞いて、主様は某ワンちゃんを思い浮かべたとかいないとか。
待てと言うならいつまでも 主人の帰宅時刻五分前になったのを確認し、ユーハンは出迎えのため本邸の玄関へ向かった。
今朝、主人は「帰宅はいつもどおりだと思う」と告げ出掛けていった。彼女が「いつもどおり」というときは、十分から二十分くらいの誤差はあるものの、だいたいこのくらいの時間に帰ってくる。
ユーハンは姿勢よく立ったまま、主人の帰宅を待った。だが、十分経っても、二十分経っても、彼女が戻ってくる気配はない。尤も、不思議な指環の力で二つの世界を行き来する彼女の帰還は、予兆も気配もなく、突然であるのが常なのだけれど。
そのうち帰ってくるだろうと思っていたユーハンだったが、予定の時間から一時間が経って、さすがに不安を感じた。
事件や事故に巻き込まれたのではないか。突然の病気や怪我で、身動きが取れなくなっているのかもしれない。彼女を狙う不届きな輩に襲われて、恐ろしい目に遭っていたとしたら。
3615今朝、主人は「帰宅はいつもどおりだと思う」と告げ出掛けていった。彼女が「いつもどおり」というときは、十分から二十分くらいの誤差はあるものの、だいたいこのくらいの時間に帰ってくる。
ユーハンは姿勢よく立ったまま、主人の帰宅を待った。だが、十分経っても、二十分経っても、彼女が戻ってくる気配はない。尤も、不思議な指環の力で二つの世界を行き来する彼女の帰還は、予兆も気配もなく、突然であるのが常なのだけれど。
そのうち帰ってくるだろうと思っていたユーハンだったが、予定の時間から一時間が経って、さすがに不安を感じた。
事件や事故に巻き込まれたのではないか。突然の病気や怪我で、身動きが取れなくなっているのかもしれない。彼女を狙う不届きな輩に襲われて、恐ろしい目に遭っていたとしたら。
住めば都
DONEあくねこ、ボスキ夢。ひょんなことから担当執事のボスキがいつも自分の右側にいることに気づいた主様が、その理由を考えて斜め上の勘違いをする話。
最後は「雨降って地固まる」です。
守護者の定位置 ある日の、夕食後のことだった。
屋敷の主人である女は、団欒室で執事たちとトランプに興じていた。ババ抜きから始まり、神経衰弱、大富豪を経て、そのときはちょうど七並べをしている最中だった。
「よお、盛り上がってるみたいだな」
顔を出したのは、主人の担当執事を務めるボスキ・アリーナスだ。ボスキは食事をとるため一旦女の傍を離れており、その間は同じ二階の執事室に暮らすフェネスが担当を代わっていた。
「あ、ボス〜、お疲れ〜」
手札とにらめっこをしていたラムリが顔を上げて、ボスキに手を振る。軽く手を上げて応じたボスキは、フェネスの座るソファに歩み寄って、背もたれに手をついた。
「お疲れさま、ボスキ。食事は落ち着いて取れた?」
5744屋敷の主人である女は、団欒室で執事たちとトランプに興じていた。ババ抜きから始まり、神経衰弱、大富豪を経て、そのときはちょうど七並べをしている最中だった。
「よお、盛り上がってるみたいだな」
顔を出したのは、主人の担当執事を務めるボスキ・アリーナスだ。ボスキは食事をとるため一旦女の傍を離れており、その間は同じ二階の執事室に暮らすフェネスが担当を代わっていた。
「あ、ボス〜、お疲れ〜」
手札とにらめっこをしていたラムリが顔を上げて、ボスキに手を振る。軽く手を上げて応じたボスキは、フェネスの座るソファに歩み寄って、背もたれに手をついた。
「お疲れさま、ボスキ。食事は落ち着いて取れた?」
住めば都
DONEあくねこ、ハウレス夢。恋人設定。夜の見張り台でハウレスと星を見る話。
特にヤマもオチも深い意味もない。イチャイチャしてるハウ主が書きたかっただけ。
星の夜 星を見に行かないかという誘いに、ハウレスの主人であり恋人でもある女は、にっこり笑って頷いた。拒否されるとは思っていなかったが、それでも受け入れられると嬉しいものだ。ハウレスは微笑みを返し、彼女に手を差し出した。
陽はとうに落ちて、屋敷には夜闇が蟠っている。ロウソクだけが光源の視界では足元が疎かになるからと、女が夜の屋敷を歩くときは、その日の担当執事が手を引いてエスコートするのが常となっていた。
主人の部屋のある二階から階段を上がり、三階の細い廊下を奥へと進む。見張り台へと続く階段を上がって扉を開け放てば、一気に視界が開けた。
「屋敷の中より、外のほうが明るいんだね」
歓声に続けて、女が言う。彼女の視線はすでに、数多の宝石を散りばめたような星空に釘づけだった。
1824陽はとうに落ちて、屋敷には夜闇が蟠っている。ロウソクだけが光源の視界では足元が疎かになるからと、女が夜の屋敷を歩くときは、その日の担当執事が手を引いてエスコートするのが常となっていた。
主人の部屋のある二階から階段を上がり、三階の細い廊下を奥へと進む。見張り台へと続く階段を上がって扉を開け放てば、一気に視界が開けた。
「屋敷の中より、外のほうが明るいんだね」
歓声に続けて、女が言う。彼女の視線はすでに、数多の宝石を散りばめたような星空に釘づけだった。
住めば都
DONE #aknk版深夜の創作一本勝負 よりお題をお借りしました。使用お題「魔法みたいだね」
ロノ夢。美味しい料理を作ってくれるロノの手は魔法の手だね、という話です。
魔法の手 自身の城とも言うべき厨房で、包丁を握り、フライパンを振り、お玉で鍋をかき混ぜる。ロノにとっては、悪魔執事となり調理担当の仕事をもらってからというもの、毎日繰り返した作業だ。
慣れた手つきで料理を作りながら、ロノは落ち着かない気持ちだった。厨房内をくるくると動き回る彼の背は、じっと注がれる視線を受け止めている。視線の主がほかの執事たちであれば歯牙にもかけないが、ロノの動きを熱心に見つめているのは、彼にとって唯一無二の主人だ。
ロノは浮ついてしまいそうな気持ちを押さえつけるために、平常心、平常心と口の中で唱える。しかし正直に言えば、効果は無いに等しかった。
「主様、お待たせしました! 簡単なもので申し訳ないですけど、夜食ができましたよ」
2761慣れた手つきで料理を作りながら、ロノは落ち着かない気持ちだった。厨房内をくるくると動き回る彼の背は、じっと注がれる視線を受け止めている。視線の主がほかの執事たちであれば歯牙にもかけないが、ロノの動きを熱心に見つめているのは、彼にとって唯一無二の主人だ。
ロノは浮ついてしまいそうな気持ちを押さえつけるために、平常心、平常心と口の中で唱える。しかし正直に言えば、効果は無いに等しかった。
「主様、お待たせしました! 簡単なもので申し訳ないですけど、夜食ができましたよ」
住めば都
DONEあくねこ、ミヤジ夢。「愛の出来損ない」の蛇足的ななにか。
↑からしばらく経って、二人が恋人になったあとのできごと。相変わらずぐるぐる悩んでる先生を主様がすくいあげるような話です。
ちなみにこれは本当に蛇足の蛇足ですが、ピロートークのつもりで書きました!
愛と呼ばせてくれ「ミヤジ」
「いっ!?」
名前を呼ばれると同時に額を弾かれて、ミヤジは痛みに呻いた。腕の中の愛しいひとに向けて、批難混じりに「痛いよ」と訴える。彼女は苦笑して、ほっそりとした指先で労るようにミヤジの額を撫でてくれた。
「だって、ミヤジが一人で悩んでいても仕方のないことをぐるぐる考えていそうな顔をしていたから」
「そ、そうか……」
それは一体どんな顔なのだろうと考えてみるが、ミヤジには想像もつかない。そもそも、ミヤジは自分のことを表情の乏しい男だと思っていた。僅かな表情の変化から、細かな心情を察することのできる、彼女の洞察力がすごいのだ。
「それで?」
「うん?」
「なにを考えていたのか、教えてはくれないの?」
1660「いっ!?」
名前を呼ばれると同時に額を弾かれて、ミヤジは痛みに呻いた。腕の中の愛しいひとに向けて、批難混じりに「痛いよ」と訴える。彼女は苦笑して、ほっそりとした指先で労るようにミヤジの額を撫でてくれた。
「だって、ミヤジが一人で悩んでいても仕方のないことをぐるぐる考えていそうな顔をしていたから」
「そ、そうか……」
それは一体どんな顔なのだろうと考えてみるが、ミヤジには想像もつかない。そもそも、ミヤジは自分のことを表情の乏しい男だと思っていた。僅かな表情の変化から、細かな心情を察することのできる、彼女の洞察力がすごいのだ。
「それで?」
「うん?」
「なにを考えていたのか、教えてはくれないの?」
住めば都
DONEあくねこ、ミヤジ夢。手を離すことが愛ならば、自分が抱えている感情はなんなのだろうかとぐるぐるするミヤジ先生の話。
薄暗くなってしまったけど、ネタがネタなので仕方ないと言えばそう。
穏やかで自分より周りを優先するひとに見えるけれど、実際は、頑固だし愛情が重いし我を通しがちな先生が好きです。
愛の出来損ない「次はわたし!」
「ぼくが先だよ!」
子どもたちの騒ぐ声が聞こえて、ミヤジは慌てて部屋のドアを開けた。今回、教室として使わせてもらった孤児院の一室には、まだ生徒たちと彼の主人がいるはずだった。
ミヤジは休日を利用して、子どもたちに勉強を教えるため街を訪れていた。
教室となる場所はその時々によっていろいろだが、今日は以前から、町外れにあるこの孤児院の部屋を使わせてもらう約束になっていた。ひととおりの授業のあと、ミヤジは子どもたちを主人に任せ、挨拶と次回の約束のため院長の元を訪ねていたのだが。
「なにかあったのかい!?」
思いのほか大きな音を立てて開いた扉に、中にいた者は皆、驚いたようだった。言い争っていた二人の子どもも口を噤んで、ぽかんとミヤジを見つめている。
2399「ぼくが先だよ!」
子どもたちの騒ぐ声が聞こえて、ミヤジは慌てて部屋のドアを開けた。今回、教室として使わせてもらった孤児院の一室には、まだ生徒たちと彼の主人がいるはずだった。
ミヤジは休日を利用して、子どもたちに勉強を教えるため街を訪れていた。
教室となる場所はその時々によっていろいろだが、今日は以前から、町外れにあるこの孤児院の部屋を使わせてもらう約束になっていた。ひととおりの授業のあと、ミヤジは子どもたちを主人に任せ、挨拶と次回の約束のため院長の元を訪ねていたのだが。
「なにかあったのかい!?」
思いのほか大きな音を立てて開いた扉に、中にいた者は皆、驚いたようだった。言い争っていた二人の子どもも口を噤んで、ぽかんとミヤジを見つめている。
住めば都
DONEあくねこ、ボスキ夢。冷房の効きすぎた電車が寒すぎて、途中下車して帰ってきた主様をボスキが出迎える話。
ボスキは、自己肯定感はそれなりだけど、自己評価はあんまり高くなさそうだなと思っています。
気遣いは細やかだし、ひとのことを全然見てないようで、一番見ているのは実は彼なんじゃないかなと思います。
気づけばあんたのことばかり いつ主人が帰ってきてもいいよう部屋を整えたボスキは、作業を終えると手持ち無沙汰になって、時計を見やった。
時刻は二十時をすぎたところだ。いつもならあちらの世界で仕事を終えた主人が帰ってくるころだが、今日は予め、遅くなると聞かされている。少なくともあと一時間は帰ってこないだろう。
つい「早く帰ってこねえかな」と独り言ち、ボスキは慌てて周囲を見回した。屋敷の主人の帰宅を待ちわびているのは彼だけではないが、それをほかの執事に聞かれるのは面映ゆい。ましてや本人に聞かれてしまったら、しばらくはどんな顔をすればいいのかわからなくなるだろう。
緩んだ気を引き締め直すように深呼吸を一つ。待っている間にトレーニングでもしようかと思ったところで、まだしばらく帰らないはずの主人が帰ってきた。
2420時刻は二十時をすぎたところだ。いつもならあちらの世界で仕事を終えた主人が帰ってくるころだが、今日は予め、遅くなると聞かされている。少なくともあと一時間は帰ってこないだろう。
つい「早く帰ってこねえかな」と独り言ち、ボスキは慌てて周囲を見回した。屋敷の主人の帰宅を待ちわびているのは彼だけではないが、それをほかの執事に聞かれるのは面映ゆい。ましてや本人に聞かれてしまったら、しばらくはどんな顔をすればいいのかわからなくなるだろう。
緩んだ気を引き締め直すように深呼吸を一つ。待っている間にトレーニングでもしようかと思ったところで、まだしばらく帰らないはずの主人が帰ってきた。
住めば都
DONEあくねこ、ルカス夢。善意が裏目に出たというか、藪をつついて蛇を出したというか、そういう話。もう逃げられない。
雉も鳴かずば撃たれまい「私にできることがあれば、なんでも言ってください」
片手を胸に当て、担当執事のルカスが言った。それは、女が不思議な縁で彼ら悪魔執事たちの主人となってから、何度も聞いた言葉だった。
出会ったころは、単なる社交辞令だと聞き流していた。しかし、いくつもの困難をともに乗り越えた今では、彼らが偽らざる真心からそう言っていることを女は知っている。だからこそ心配で、彼女は初めて、その台詞を聞くたびに思っていたことをぶつけてみることにした。
「ずっと、思っていたんだけどさ。そんなに簡単に"なんでも"って、言わないほうがいいんじゃない?」
「おや、どうしてですか?」
ルカスは金色の瞳を瞬かせた。聡い彼のことだから、女が言いたいことは理解しているだろうに。彼女はちょっとムッとして語気を強めた。
1634片手を胸に当て、担当執事のルカスが言った。それは、女が不思議な縁で彼ら悪魔執事たちの主人となってから、何度も聞いた言葉だった。
出会ったころは、単なる社交辞令だと聞き流していた。しかし、いくつもの困難をともに乗り越えた今では、彼らが偽らざる真心からそう言っていることを女は知っている。だからこそ心配で、彼女は初めて、その台詞を聞くたびに思っていたことをぶつけてみることにした。
「ずっと、思っていたんだけどさ。そんなに簡単に"なんでも"って、言わないほうがいいんじゃない?」
「おや、どうしてですか?」
ルカスは金色の瞳を瞬かせた。聡い彼のことだから、女が言いたいことは理解しているだろうに。彼女はちょっとムッとして語気を強めた。
住めば都
DONEあくねこ、アモン夢。花を育てたい主様と、手伝いをするアモンの話。
アモンの小悪魔っぽさを全然表現できませんでした。難しい……でもまた挑戦したい……
作中の花の育て方については、ウェブで調べながら書きましたが、間違っているところもあるかもしれません。ご容赦ください。
開花のためのプレリュード「私もなにか育ててみたいなあ」
アモンが主人の私室に飾る花を変えようと、瑞々しく咲いた庭の花を持っていたときのこと。その花たちを見た主人が、ぽつりと漏らした。
遠慮ばかりのアモンの主人が、執事たちの仕事を手伝う以外で自らなにかをやりたいと言い出すのは、とても珍しいことだった。幸運にも、彼女の希望を聞く栄誉に与ったアモンとしては、是が非でも叶えてやりたいところだ。
しかし、いくら本人の要望とはいえ、主人に土いじりをさせるのはいかがなものか。外で育てるのであれば、陽光に晒されるのは免れないし、虫だって出る。少し考えただけでも、多方面から反対をくらいそうだ。例えば日焼け対策にうるさい衣装係とか、虫嫌いのマナー指導係とか。
4027アモンが主人の私室に飾る花を変えようと、瑞々しく咲いた庭の花を持っていたときのこと。その花たちを見た主人が、ぽつりと漏らした。
遠慮ばかりのアモンの主人が、執事たちの仕事を手伝う以外で自らなにかをやりたいと言い出すのは、とても珍しいことだった。幸運にも、彼女の希望を聞く栄誉に与ったアモンとしては、是が非でも叶えてやりたいところだ。
しかし、いくら本人の要望とはいえ、主人に土いじりをさせるのはいかがなものか。外で育てるのであれば、陽光に晒されるのは免れないし、虫だって出る。少し考えただけでも、多方面から反対をくらいそうだ。例えば日焼け対策にうるさい衣装係とか、虫嫌いのマナー指導係とか。
住めば都
DONEあくねこ、テディ夢。階段を上る気力を失って段差に腰掛けていた主様を、テディが部屋まで抱き上げて運ぶ話。テディがオープンすけべになってしまったような気がしないでもない……
パレス広すぎるよ…ネタ第二弾です
甘える姿はSSR 玄関ホールの大階段に小柄な人影を見つけて、テディは内心、ラッキーと喜びの声を上げた。彼は厨房での手伝いを終えて、別邸に戻るところだった。慣れない作業をこなすのは大変だったが、その疲れも、彼女に会えば途端に吹き飛んでしまう。
「主様、おかえりなさいませ!」
「あ……テディ。うん、ただいま」
元気いっぱい出迎えたテディとは対照的に、主人は疲れきった様子だ。応える声も、どこかぼんやりとしている。
こんなにお疲れなのに、仕事のあとわざわざ屋敷に顔を出してくださるのだから、主様は本当に優しい人だなあ。そんなふうに思って、テディは自然と笑顔になる。
「主様、こんなところで、なにをしていらっしゃるんですか?」
「いやあ……特になにをしていたわけでもないんだけど……」
2345「主様、おかえりなさいませ!」
「あ……テディ。うん、ただいま」
元気いっぱい出迎えたテディとは対照的に、主人は疲れきった様子だ。応える声も、どこかぼんやりとしている。
こんなにお疲れなのに、仕事のあとわざわざ屋敷に顔を出してくださるのだから、主様は本当に優しい人だなあ。そんなふうに思って、テディは自然と笑顔になる。
「主様、こんなところで、なにをしていらっしゃるんですか?」
「いやあ……特になにをしていたわけでもないんだけど……」
住めば都
DONEあくねこ、ハウレス夢。夏の終わりにセンチメンタルになってしまった主様とハウレスの話。
企画「貴方が紡ぐ物語_弍」参加作品。「もうすぐ、夏が終わる」という書き出しで作品を作るという企画でした。楽しく参加させていただきました。ありがとうございました!
愛しき日々よ、続け もうすぐ、夏が終わる。
私たちはフガヤマでの滞在を終え、屋敷に戻ってきていた。かの地での賑やかなお祭りは、夏という季節の楽しさを凝縮したようで、慣れた場所へ帰ってきた安心感より、寂しさのほうが勝ってしまう。
夏の終わりは、どうにもセンチメンタルになってしまっていけない。
「主様、大丈夫ですか?」
「え?」
「いえ、ため息をついていらしたので」
傍に控えてくれていた担当執事のハウレスは、そう言うと心配そうに眉尻を下げた。私は元気そうに見えるよう笑顔を作って、大丈夫だよと答える。きちんと誤解を解いておかないと、この過保護な執事はどこまでも心配を加速させてしまうのだ。
「ただ……ちょっと寂しいなって思っただけなの。フガヤマで過ごした時間が、とても楽しかったから」
2034私たちはフガヤマでの滞在を終え、屋敷に戻ってきていた。かの地での賑やかなお祭りは、夏という季節の楽しさを凝縮したようで、慣れた場所へ帰ってきた安心感より、寂しさのほうが勝ってしまう。
夏の終わりは、どうにもセンチメンタルになってしまっていけない。
「主様、大丈夫ですか?」
「え?」
「いえ、ため息をついていらしたので」
傍に控えてくれていた担当執事のハウレスは、そう言うと心配そうに眉尻を下げた。私は元気そうに見えるよう笑顔を作って、大丈夫だよと答える。きちんと誤解を解いておかないと、この過保護な執事はどこまでも心配を加速させてしまうのだ。
「ただ……ちょっと寂しいなって思っただけなの。フガヤマで過ごした時間が、とても楽しかったから」
住めば都
DONEあくねこ、ユーハン夢。屋敷の玄関で寝落ちしている主様を見つけて取り乱すユーハンの話。
この後ユーハンは「主様には別邸で生活してもらうのがいいのでは?」という結論に達し、テディやハナマルも巻き込んで策略を巡らすも、本邸の執事たちの猛反対にあう、なーんて騒ぎがあったとかなかったとか。
主様の悪癖 入浴を終えて別邸に戻ろうとしていたユーハンは、玄関にうつ伏せで倒れている主人を見つめて目を剥いた。
「主様!!」
大音声で呼ばわって、傍に駆けつける。頭を揺らさぬようにとそれだけは十二分に気をつけて、ぐったりとした体を抱き起こした。
「主様、主様……!」
肩を叩いて呼びかけるが、反応はない。見たところ外傷は無さそうだが、主人の身になにがあったのか――ケガなのか病なのかそれとも他のなにかなのかは、医者ではないユーハンには判断がつかなかった。
「ルカスさん……ルカスさんをお呼びしないと……」
ああ、けれどユーハンが傍を離れた途端に状態が悪化して、主人が帰らぬ人となってしまったら。
その可能性に思い至ってしまったユーハンは、その場に凍りついたように動けなくなった。
2868「主様!!」
大音声で呼ばわって、傍に駆けつける。頭を揺らさぬようにとそれだけは十二分に気をつけて、ぐったりとした体を抱き起こした。
「主様、主様……!」
肩を叩いて呼びかけるが、反応はない。見たところ外傷は無さそうだが、主人の身になにがあったのか――ケガなのか病なのかそれとも他のなにかなのかは、医者ではないユーハンには判断がつかなかった。
「ルカスさん……ルカスさんをお呼びしないと……」
ああ、けれどユーハンが傍を離れた途端に状態が悪化して、主人が帰らぬ人となってしまったら。
その可能性に思い至ってしまったユーハンは、その場に凍りついたように動けなくなった。
住めば都
DONEあくねこ、ハナマル夢。飄々として掴みどころのないハナマルを掴みたい主様の話。
今日のログストを読んで思ったことを書きなぐっただけ。捏造と妄想100%。解釈違いだったらそっと閉じてください。
つかまえた「おーい、主様?」
思考の大海を漂っていた悪魔執事の主は、本日の担当を務めるカワカミ・ハナマルの呼びかけで我に返った。視界いっぱいに整った顔が飛び込んできて、彼女は思わず背を仰け反らせる。
こんなに近くまで来られても気づかなかったのかと、女は内心、自分自身に呆れてしまった。考え事に没頭すると周りが見えなくなってしまうのは、彼女の昔からの悪癖だ。しかしさすがに、ここまで近づかれても気がつかないというのは、今までになかった。
それだけこの屋敷が安心できる場所で、気を抜いて過ごしているということなのだろう。それがいいことなのか、悪いことなのかはさておき。
「主様ってば、このハナマル様が一緒にいるっていうのに、ほか事に浮気か〜? まったく、妬けちまうねえ」
1561思考の大海を漂っていた悪魔執事の主は、本日の担当を務めるカワカミ・ハナマルの呼びかけで我に返った。視界いっぱいに整った顔が飛び込んできて、彼女は思わず背を仰け反らせる。
こんなに近くまで来られても気づかなかったのかと、女は内心、自分自身に呆れてしまった。考え事に没頭すると周りが見えなくなってしまうのは、彼女の昔からの悪癖だ。しかしさすがに、ここまで近づかれても気がつかないというのは、今までになかった。
それだけこの屋敷が安心できる場所で、気を抜いて過ごしているということなのだろう。それがいいことなのか、悪いことなのかはさておき。
「主様ってば、このハナマル様が一緒にいるっていうのに、ほか事に浮気か〜? まったく、妬けちまうねえ」
住めば都
DONEあくねこ、ハウレス夢。朝、しんどそうにしている主様に四葉のクローバーを渡すハウレスの話。生活の思い出ネタバレあり。
これなんと、ほぼ実話でして。ある朝、仕事行きたくね〜と思いながら起きて、家出る前の時間にハウレスを担当にしてつんつんしてたら、四葉を持ってきておまじないをしてくれたんですよ……そういうとこだぞハウレス……
幸福が降り注ぎますように とある朝のこと。主人の起床時刻に寝室を訪ねたハウレスは、いつまでたってもノックに応答がないことに首を傾げた。
常であれば、すぐに「どうぞ」と応えがあるのだが。ハウレスの主人は寝坊も二度寝もめったにしないしっかり者で、彼が起床の声掛けにくるころには、身支度まで済ませていることがほとんどなのだ。
「失礼いたします。主様、起床のお時間ですよ」
もしかしたら今朝は、主人の貴重な寝起き姿が見られるかもしれない。不謹慎とは思いながらも、胸を躍らせながらハウレスは扉を開けた。しかし、ことは彼が思っていたほど簡単ではないようだった。
まだ眠っていると思われた主人は、ぱっちりと目を開いていた。しかし体は未だベッドの上にあり、毛布にくるまったまま。起きたくないと、全身で主張しているようにハウレスには見えた。
2408常であれば、すぐに「どうぞ」と応えがあるのだが。ハウレスの主人は寝坊も二度寝もめったにしないしっかり者で、彼が起床の声掛けにくるころには、身支度まで済ませていることがほとんどなのだ。
「失礼いたします。主様、起床のお時間ですよ」
もしかしたら今朝は、主人の貴重な寝起き姿が見られるかもしれない。不謹慎とは思いながらも、胸を躍らせながらハウレスは扉を開けた。しかし、ことは彼が思っていたほど簡単ではないようだった。
まだ眠っていると思われた主人は、ぱっちりと目を開いていた。しかし体は未だベッドの上にあり、毛布にくるまったまま。起きたくないと、全身で主張しているようにハウレスには見えた。
住めば都
DONEあくねこ、フェネス夢ハウレスに代わって担当執事を務めることになったフェネスの葛藤。
日常の思い出vol1で、自分にはハウレスの代わりなんて務まらないと思い悩むフェネスを見たときからずっと思っていたことを書いてみました。
たぶんこのフェネスは、白黒の館に行く前の彼だと思います。後だったらここまで卑屈にはならなさそう。
ありのままの君でいて 主人の部屋の扉を前に、フェネスは重苦しいため息を落とした。この部屋を、こんなに暗い気持ちで訪うのは、悪魔執事となってからの三百年で初めてのことかもしれない。
フェネスは今日一日、依頼で不在のハウレスに変わって、主人の担当執事を務めることになっていた。
平生であれば、主人の手伝いをする担当の日は、眩いほどの幸福に満ちている。この日だけは、誰に憚ることなく、無条件で主人の傍にいられるからだ。この屋敷に住む執事たちは皆、主の担当を務めたがっていて、だから担当執事はローテーション制となっていた。
順番が回ってくるのは、おおよそ半月に一度ほど。多くの者と同様、フェネスはその日が来るのを指折り数えて待ち焦がれている。
2248フェネスは今日一日、依頼で不在のハウレスに変わって、主人の担当執事を務めることになっていた。
平生であれば、主人の手伝いをする担当の日は、眩いほどの幸福に満ちている。この日だけは、誰に憚ることなく、無条件で主人の傍にいられるからだ。この屋敷に住む執事たちは皆、主の担当を務めたがっていて、だから担当執事はローテーション制となっていた。
順番が回ってくるのは、おおよそ半月に一度ほど。多くの者と同様、フェネスはその日が来るのを指折り数えて待ち焦がれている。
住めば都
DONEあくねこ、ハナマル夢。ホーム会話ネタバレありハナマルと桃を半分こして食べる話です
最後のところ、本当は、守りたい存在として重なるのに、向かう思いは子どもたちへのものとは少し違っていて、恋の芽吹きというか自覚というか、そういう感じにしたかったんですが、気づいたハナマルがその感情をどう扱のか、蓋をして見ないフリをするのか、大事に育てていくのか、私の中で解釈が殴りあって結論が出ませんでした……
重ねて、分け合って 街で所用を済ませ屋敷に戻ったハナマルは、玄関でユーハンに呼び止められてぎくりと肩を揺らした。
もっとも、なにか叱られるようなことをしでかした覚えがあるわけではなかった。今日はきちんと言いつけられた用件を果たしてきたし、賭場へ寄り道もしていない。
だからこれは、条件反射のようなものだ。ハナマルは普段、同じ部屋で暮らすこの真面目な青年から、小言をもらってばかりいるので。
「な、なんだよユーハン。今日はまだ、なにもしてねえぞ」
「……これからなにかしでかすような物言いはやめてください。小言を言うために呼び止めたわけではないですよ」
「あれ、そうなのか?」
なにを言われるのかと構えていたハナマルは、ユーハンの応えに拍子抜けして首を傾げた。ユーハンは大仰にため息をつく。
2355もっとも、なにか叱られるようなことをしでかした覚えがあるわけではなかった。今日はきちんと言いつけられた用件を果たしてきたし、賭場へ寄り道もしていない。
だからこれは、条件反射のようなものだ。ハナマルは普段、同じ部屋で暮らすこの真面目な青年から、小言をもらってばかりいるので。
「な、なんだよユーハン。今日はまだ、なにもしてねえぞ」
「……これからなにかしでかすような物言いはやめてください。小言を言うために呼び止めたわけではないですよ」
「あれ、そうなのか?」
なにを言われるのかと構えていたハナマルは、ユーハンの応えに拍子抜けして首を傾げた。ユーハンは大仰にため息をつく。
住めば都
DONEあくねこ、フルーレ夢。主様は、どうやらフルーレにお願いがあるようです。
夏イベが楽しみで楽しみで仕方ない今日この頃です。
夏の暑さと繁忙期がマジのマジで辛すぎる日々ですが、執事たちの浴衣姿に癒されながら乗り越えていきたいと思います。
俺のレッスンは厳しいですよ! フルーレは、地下の執事室で新しい衣装のデザインを考えていた。進み具合は、残念ながら芳しいとはいえない。ペンを握ってはいるものの、その手はしばらく止まったままだった。
少し気分転換でもしてこようか。外の空気を吸えば、なにかいいアイディアが浮かぶかもしれない。
そう考えたフルーレがペンを置いたところで、扉を叩く音が響いた。
「はい、どうぞ」
「入るね」
応答を受け、ドアの向こうから返されたのは柔らかな女性の声だ。十人を超えるデビルズパレスの住人の中に、女性はたった一人。訪ねてきたのが大切な主人であることに気づいて、フルーレは目を丸くした。
「あ、主様!? 呼んでくだされば、俺のほうからお伺いしましたのに……!」
1870少し気分転換でもしてこようか。外の空気を吸えば、なにかいいアイディアが浮かぶかもしれない。
そう考えたフルーレがペンを置いたところで、扉を叩く音が響いた。
「はい、どうぞ」
「入るね」
応答を受け、ドアの向こうから返されたのは柔らかな女性の声だ。十人を超えるデビルズパレスの住人の中に、女性はたった一人。訪ねてきたのが大切な主人であることに気づいて、フルーレは目を丸くした。
「あ、主様!? 呼んでくだされば、俺のほうからお伺いしましたのに……!」
住めば都
DONEあくねこ、ハウレス夢。過労で熱を出したハウレスが主様に看病される話。
なおハウレスは回復したあと、ボスキやアモンから主様に甲斐甲斐しく世話されたことをさんざんからかわれたそうな。
担当執事をつついてると、いやそのセリフそっくりそのまま返すよ!?って思うことが多くて、この話もそういうアレから生まれました( ˇωˇ )
きみに捧げる特効薬 今になって思い返して見ると、朝起きたとき、いつもより体が重いような気はしたのだ。けれど、頭が痛いとか咳や鼻汁が出るとか喉が痛むとか、ほかの症状がなかったものだから。少し疲れが溜まっているのだろうと、ハウレスは軽く考えてしまった。
「おそらくは、過労だね」
診察していたルカスが真剣な表情で告げるのを聞いて、ハウレスの主人はひどくショックを受けた表情になった。主様がそのように悲しそうなお顔をされる必要はないのにと、ハウレスは思ったけれど、熱があることを自覚してしまった体はやたらと重だるくて、口を開くこともままならなかった。
ハウレスの異変に気づいてルカスの元へと連れてきたのは、他ならぬ主人だった。
この日――。ハウレスは寝起きに体のだるさを覚えたものの、大したことではないと断じて普段どおりに仕事に取りかかった。屋敷中の窓を開けて空気を入れ替え、トレーニングをこなし、主人に起床時間を知らせにいった。身支度を済ませた彼女を食堂までエスコートするために手をとって、そこで眉間に皺を寄せ険しい顔になった主人に手首や首筋、額などを触られた。そうして、有無を言わさずここへ連れてこられたのだ。
2523「おそらくは、過労だね」
診察していたルカスが真剣な表情で告げるのを聞いて、ハウレスの主人はひどくショックを受けた表情になった。主様がそのように悲しそうなお顔をされる必要はないのにと、ハウレスは思ったけれど、熱があることを自覚してしまった体はやたらと重だるくて、口を開くこともままならなかった。
ハウレスの異変に気づいてルカスの元へと連れてきたのは、他ならぬ主人だった。
この日――。ハウレスは寝起きに体のだるさを覚えたものの、大したことではないと断じて普段どおりに仕事に取りかかった。屋敷中の窓を開けて空気を入れ替え、トレーニングをこなし、主人に起床時間を知らせにいった。身支度を済ませた彼女を食堂までエスコートするために手をとって、そこで眉間に皺を寄せ険しい顔になった主人に手首や首筋、額などを触られた。そうして、有無を言わさずここへ連れてこられたのだ。
住めば都
DONEあくねこ、ベリアン夢ある休日の朝、ベリアンが主様におまじないをかけてもらう話
仕事終わりにアニメイトに飛び込んで、サンリオコラボのグッズを買ってきました! コラボフェアの期間に買いに行けてよかった!
ぱしゃこれを1袋だけ買ったんですが、ベリアンが来てくれました!やっぱり書くと出ますね( ˇωˇ )
とっておきの魔法をかけてよ ベリアン・クライアンの一日は、主人の起床時間に彼女の寝室を訪うことから始まる。
「主様、おはようございます。起きていらっしゃいますか?」
「起きてるよ。どうぞ、入って」
「失礼いたします」
ドア越しのやりとりを経て入室する。このときには大抵、主人は身支度を終えているので、ベリアンが主人のためにできるのはアーリーモーニングティーを淹れることくらいだ。
こことは異なる世界でも生活を営む主人は、身の回りのことはほとんど自分でこなしてしまう。よっぽど疲れているときくらいしか寝過ごすこともないので、朝の手伝いはそれほど必要ではないのだろうなと、実のところベリアンは思っている。
優しい主人は、ただ執事たちの仕事を奪わないでくれているだけなのだ。それでも、主人が毎朝ベリアンの用意する紅茶を美味しそうに飲んで、笑顔で礼を言ってくれるのが幸せで。だからベリアンは主人が拒否しないかぎり、毎朝主人の部屋を訪ね、朝の紅茶を淹れるのをやめるつもりはない。
1968「主様、おはようございます。起きていらっしゃいますか?」
「起きてるよ。どうぞ、入って」
「失礼いたします」
ドア越しのやりとりを経て入室する。このときには大抵、主人は身支度を終えているので、ベリアンが主人のためにできるのはアーリーモーニングティーを淹れることくらいだ。
こことは異なる世界でも生活を営む主人は、身の回りのことはほとんど自分でこなしてしまう。よっぽど疲れているときくらいしか寝過ごすこともないので、朝の手伝いはそれほど必要ではないのだろうなと、実のところベリアンは思っている。
優しい主人は、ただ執事たちの仕事を奪わないでくれているだけなのだ。それでも、主人が毎朝ベリアンの用意する紅茶を美味しそうに飲んで、笑顔で礼を言ってくれるのが幸せで。だからベリアンは主人が拒否しないかぎり、毎朝主人の部屋を訪ね、朝の紅茶を淹れるのをやめるつもりはない。
住めば都
DONEあくねこ、ベリアン夢本編2章の直後くらい。悪魔執事が不老だと知った主様の反応が怖くてたまらないベリアンの話
楽園にはほど遠い わざと隠していたつもりでは、なかった。
だから、主人と墓参りに出かけていたハウレスから報告を聞いたとき、ショックを受けている自分に気づいて、ベリアンは驚いたのだ。
「ベリアンさん。先ほど主様に、俺たち悪魔執事が不老であることをお伝えしました。トリシアの墓石がかなり古いことを疑問に思われたのでしょう。いつごろ作られたものなのかと聞かれて、その流れで……」
「そう、ですか……わかりました」
主様は、なんと?
そう聞きたくて、けれどベリアンはハウレスに問うことができなかった。若い執事たちのまとめ役を務めるこの青年は、腹芸の類があまり得意ではない。その彼の様子からして、不老の事実を知った主人が悪魔執事を恐れるような事態には、なっていないだろうと思うけれど。
2871だから、主人と墓参りに出かけていたハウレスから報告を聞いたとき、ショックを受けている自分に気づいて、ベリアンは驚いたのだ。
「ベリアンさん。先ほど主様に、俺たち悪魔執事が不老であることをお伝えしました。トリシアの墓石がかなり古いことを疑問に思われたのでしょう。いつごろ作られたものなのかと聞かれて、その流れで……」
「そう、ですか……わかりました」
主様は、なんと?
そう聞きたくて、けれどベリアンはハウレスに問うことができなかった。若い執事たちのまとめ役を務めるこの青年は、腹芸の類があまり得意ではない。その彼の様子からして、不老の事実を知った主人が悪魔執事を恐れるような事態には、なっていないだろうと思うけれど。
住めば都
DONEあくねこ、ハウレス夢本編2章の直後くらいに、セラフィムの騙った主様の処刑を夢に見るハウレスの話。
始めたばっかりですが、生きてるだけで褒めてくれるあくねこくんにズブズブです。
本編は3章1部まで、イベストは全て読了、未所持カードばっかりだし執事たちのレベルもまだまだなので解釈が甘いところも多いかと思いますが、薄目でご覧いただければと思います( ˇωˇ )
悪夢のしりぞけ方 ハウレスはエスポワールの街中に佇んで、呆然と雑踏を眺めていた。
多くの商店が軒を列ねる大通りは、日頃から多くの人で賑わっている。幅広の通りはいつものように人でごった返していたが、いつもと違い、皆が同じほうを目指して歩いているのが奇妙だった。
なにかあるのだろうか。興味を引かれたハウレスは、足を踏み出して雑踏の中へ入った。途端に、周囲の興奮したような囁き声に取り囲まれる。
「火あぶりだってさ」
「当然の方法だよ。なにしろ奴は人類の敵なんだから」
「天使と通じてたなんて、とんでもない悪女だな」
「許せないよ。死んで当然だ」
虫の羽音のような、不快なさざめきが寄せては返す。悪意と恐怖、それから独善的な正義。それらを煮つめて凝らせたような感情が、人々の声や表情に塗りたくられていた。
4518多くの商店が軒を列ねる大通りは、日頃から多くの人で賑わっている。幅広の通りはいつものように人でごった返していたが、いつもと違い、皆が同じほうを目指して歩いているのが奇妙だった。
なにかあるのだろうか。興味を引かれたハウレスは、足を踏み出して雑踏の中へ入った。途端に、周囲の興奮したような囁き声に取り囲まれる。
「火あぶりだってさ」
「当然の方法だよ。なにしろ奴は人類の敵なんだから」
「天使と通じてたなんて、とんでもない悪女だな」
「許せないよ。死んで当然だ」
虫の羽音のような、不快なさざめきが寄せては返す。悪意と恐怖、それから独善的な正義。それらを煮つめて凝らせたような感情が、人々の声や表情に塗りたくられていた。