yukimuu_bmd
MOURNING10/27 COMIC CITY SPARKの無料配布した本です(LOG+短編の本を落としたので、その中の一部をコピー本にしたもの)
「ハグ」「まつげ」「おそろい」は
ルクアロ版ワンドロワンライ様からお題をお借りしています!🙇 14
tatsukimknn
DOODLE(ルクアロ)「待てっつったろうが! 躾がなってねえなこのクソドギー!!」
「ごめんごめん! だって君があんまりかわ」
「っせえな! それ以上言ったら潰すぞ!」
「---ーッ!! いやちょっと待てそこは!」
「ハッ! イヤでも待てが出来るようにしてやろうか? 二度と起きねえかもしれねえが」
「……そうなったら君だって困るだろ(ぼそり」
「ああ!? なんか言ったか?」
「なんでもないよ!!」 2
hbnho210
SPUR MEルクアロ版ワンドロワンライ様よりお題をお借りしました。ヒロルクifです。ヒロルクちゃんがハイスクールライフをエンジョイするティーンズラブ。通貨ドル設定になってます。「ホテル」「好きって言って」11/12 屋上へとつづく階段の途中には、立入禁止と赤い文字で書かれた大きな看板が設置してあるためそこから先へ上ることはできない。しかし階段が途切れているわけではく、階段は看板の向こうへもずっとつづいている。看板を無視してそのまま階段を上り踊り場をUターンしてそこから更に階段を上って行くと屋上へと出られる扉がある。扉は施錠されていた。しかし、何とか屋上へ行こうと試みる生徒が後を絶たなかったため、ついに扉は簡単には開けることが出来ない電子式の鍵へと取替えられてしまった。そうなるとさすがにお手上げとばかりに屋上へ行こうとする生徒もいなくなり、屋上へつづく階段にはうっすらと埃がたまるようになった。
「だめだよ、だめ、ヒーロー、こんなところで……」
2559「だめだよ、だめ、ヒーロー、こんなところで……」
hbnho210
SPUR MEルクアロ版ワンドロワンライさまよりお題「屋上」「おねだり」お借りしました。ラブコメ大好きです☆というお話です。はい。「屋上」「おねだり」10/15「考えてみたことはあるかい? ハスマリーの紛争は僕たちが子供の頃に終わっていて、研究所も爆破されることなく、君と僕はあのまま成長して……そう、一緒に学校なんかに通ったりなんかもして……」
「何だそのくだらねえ話は」
「もしも、だよ。君と一緒に学校へ行ってみたかったな」
そんな、心臓がつぶれてしまいそうな話を、平気でする。絶対に手に入ることのない“もしも”なんかを願って、どうなる?
「失ったモノはもう二度と戻らねえんだよ」
声にだして言うつもりはなかった。クソドギーのいつものあまっちょろい戯言だと、鼻で笑って適当にあしらうつもりだった。
アーロンは舌打ちをした。ルークに背を向けたまま寝転がってルークの話を聴いていたアーロンは、ルークがどんな顔でそんな話をしたのか知らない。そして、黙ったままのルークが今どんな顔をしているのか、知らない。
1795「何だそのくだらねえ話は」
「もしも、だよ。君と一緒に学校へ行ってみたかったな」
そんな、心臓がつぶれてしまいそうな話を、平気でする。絶対に手に入ることのない“もしも”なんかを願って、どうなる?
「失ったモノはもう二度と戻らねえんだよ」
声にだして言うつもりはなかった。クソドギーのいつものあまっちょろい戯言だと、鼻で笑って適当にあしらうつもりだった。
アーロンは舌打ちをした。ルークに背を向けたまま寝転がってルークの話を聴いていたアーロンは、ルークがどんな顔でそんな話をしたのか知らない。そして、黙ったままのルークが今どんな顔をしているのか、知らない。
hbnho210
SPUR MEルクアロ版ワンドロワンライさまよりお題「月」「眠れない」をお借りしました。ルクアロでお伽噺っていいなと思ったけどよく考えたらふたりの物語もたいがいお伽噺みたいじゃないですか?????お題「月」「眠れない」9/10 月が煌々と啼く夜に、小舟をうかべて海をゆく。白銀の砂が波打際でさらさらとひかる岸辺をはなれて小舟はどんどん々遠くへ々とすすんでゆく。小舟には帆もなく、辺りには風もない。それでも小舟は無音の夜に凪いだ海をすべるようにゆく。小舟は、カモミール、ひなげし、すずらん、きんぽうげ、アネモネ、たくさんの花々で埋めつくされ、その中で花たちに護られるように男がひとり眠っていた。そして、その眠る男の傍らで、てのひらいっぱいにすくい上げた花を眠る男の身体の上にはらり々と降らせている男がいた。男は何度も花をすくい上げ、花で、その身体を隠そうとするように眠る男の胸に、喉に、花を降らせた。そうして、花や花弁が眠る男の身体の上に堕ちるたびに、傍らにうずくまる男の双眸からも涙がひとつぶ、またひとつぶと、はらはらと零れ堕ちた。
3192hbnho210
SPUR MEルクアロ版ワンドロワンライ様よりお題「初恋」「ギター」お借りしました。「初恋」「ギター」8/27「僕の初恋はきっと君なのだと思う」
唐突に、朝食のスクランブルエッグをスプーンですくって口へはこぶついでのようにそう言ったルークの顔をまじまじと見ながら、フォークに刺したぶあついベーコンをうっかりと皿の上に落としてしまったアーロンは舌打ちをして、半熟卵のようにふわふわと笑っているルークを睨んだ。
何て返せばいいんだよ
ずいぶん遅い初恋だな
いつの話だソレは
俺もだよ
俺の初恋も、
言えるかそんなこと
アーロンは何かを言うかわりに皿の上のベーコンをふたたびフォークで刺し、それを口の中へ放り込んだ。無言で二切れ目のベーコンにフォークを刺すアーロンをあいかわらずの笑顔で眺めながら、ルークはかまわずに話しつづける。
1987唐突に、朝食のスクランブルエッグをスプーンですくって口へはこぶついでのようにそう言ったルークの顔をまじまじと見ながら、フォークに刺したぶあついベーコンをうっかりと皿の上に落としてしまったアーロンは舌打ちをして、半熟卵のようにふわふわと笑っているルークを睨んだ。
何て返せばいいんだよ
ずいぶん遅い初恋だな
いつの話だソレは
俺もだよ
俺の初恋も、
言えるかそんなこと
アーロンは何かを言うかわりに皿の上のベーコンをふたたびフォークで刺し、それを口の中へ放り込んだ。無言で二切れ目のベーコンにフォークを刺すアーロンをあいかわらずの笑顔で眺めながら、ルークはかまわずに話しつづける。
hbnho210
SPUR MEルクアロ版ワンドロワンライさまよりお題:「バカップル」「たばこ」お借りしました!闇バもでてくる。ルクアロだけどBOND諸君がみんなで仲良く?しています。お題:「バカップル」「たばこ」7/16「キスしたときにたばこの味がすると、オトナのキスだな、て感じがするってむかし同級生の女の子が言っていたんだけど」
「……女とそういう話するのか、意外だな」
「ハイスクールのときだよ。隣の席の子が付き合いはじめたばかりの年上の彼氏の話をはじめると止まらなくて……それでさ、アーロンはどんな味がした」
「何」
「僕とキスをしたとき」
午后の気怠さのなか、どうでもいい話をしながら、なんとなく唇がふれあって、舌先でつつくように唇を舐めたり、歯で唇をかるく喰んだり、唇と唇をすり合わせて、まるで小鳥が花の蜜を吸うように戯れていた二人は、だんだんとじれったくなってどちらからともなくそのまま深く口吻けをした。そうして白昼堂々、リビングのソファで長い々キスをして、ようやく唇を離したが、離れがたいとばかりに追いかける唇と、舌をのばしてその唇をむかえようとする唇は、いつ果てるともわからぬ情動のまま口吻けをくりかえした。このままではキスだけではすまなくなると思った二人はようやく唇を解いて呼吸を整えた。身体の疼きがおさまってきたそのとき、ルークが意味不明な問答を仕掛けてきた。アーロンは、まだ冷めやらぬ肉体の熱を無理矢理に抑込みながら寝起きでも元気に庭を走りまわる犬のような顔をしたルークの顔をまじまじと見た。
2714「……女とそういう話するのか、意外だな」
「ハイスクールのときだよ。隣の席の子が付き合いはじめたばかりの年上の彼氏の話をはじめると止まらなくて……それでさ、アーロンはどんな味がした」
「何」
「僕とキスをしたとき」
午后の気怠さのなか、どうでもいい話をしながら、なんとなく唇がふれあって、舌先でつつくように唇を舐めたり、歯で唇をかるく喰んだり、唇と唇をすり合わせて、まるで小鳥が花の蜜を吸うように戯れていた二人は、だんだんとじれったくなってどちらからともなくそのまま深く口吻けをした。そうして白昼堂々、リビングのソファで長い々キスをして、ようやく唇を離したが、離れがたいとばかりに追いかける唇と、舌をのばしてその唇をむかえようとする唇は、いつ果てるともわからぬ情動のまま口吻けをくりかえした。このままではキスだけではすまなくなると思った二人はようやく唇を解いて呼吸を整えた。身体の疼きがおさまってきたそのとき、ルークが意味不明な問答を仕掛けてきた。アーロンは、まだ冷めやらぬ肉体の熱を無理矢理に抑込みながら寝起きでも元気に庭を走りまわる犬のような顔をしたルークの顔をまじまじと見た。
hbnho210
SPUR MEルクアロ版ワンドロワンライさまより「お題:カメラ、おやつ」お借りしました!第三者の視点から語られる在りし日のヒロルクの話。オリジナルモブたちが出てきます。
お題:「カメラ」「おやつ」7/2「とても古い写真だね」
手にした一枚の、角は所々削れてまるくなり、元はあざやかな色彩であふれていたであろう表面は色あせてうっすらと埃をかぶったようにぼんやりとしている、それは永い々時間を幾重にも折り重ねてしまってある箱の中から掘りだしてきたような古い写真だった。
「子供、男の子かな、兄弟? でもあまり似ていないね、……なんだかとっても楽しそう、隠し撮り? ふふふ、冗談だよ」
カメラマンがその国を訪れたのはもう二十年以上も前だと、懐かしそうに手にした写真を見つめて微笑うと、よく陽に焼けた顔の目じりに深い皺が刻まれた。
「ハスマリー公国? ああ、知ってるよ、美しい国だ。でも、二十年前……その頃はまだ紛争が絶えなくて、……そう、あの国で撮影した写真なの」
1944手にした一枚の、角は所々削れてまるくなり、元はあざやかな色彩であふれていたであろう表面は色あせてうっすらと埃をかぶったようにぼんやりとしている、それは永い々時間を幾重にも折り重ねてしまってある箱の中から掘りだしてきたような古い写真だった。
「子供、男の子かな、兄弟? でもあまり似ていないね、……なんだかとっても楽しそう、隠し撮り? ふふふ、冗談だよ」
カメラマンがその国を訪れたのはもう二十年以上も前だと、懐かしそうに手にした写真を見つめて微笑うと、よく陽に焼けた顔の目じりに深い皺が刻まれた。
「ハスマリー公国? ああ、知ってるよ、美しい国だ。でも、二十年前……その頃はまだ紛争が絶えなくて、……そう、あの国で撮影した写真なの」
ふみ(Fumi)
DOODLEルクアロ版ワンドロワンライお題「火傷」「五分間」お借りしました。
遅刻&めっちゃくちゃ時間オーバーしてしまった。
全然ワンドロでは無くなってしまってすみません…
⚠️ヒロルクの描写と、火傷や流血にご注意ください⚠️ 2
hbnho210
SPUR MEルクアロ版ワンドロワンライさまよりお題をお借りしました。アーロンの過去の想いでとトラウマ。ルクアロです。ちゅーまで。お題:「火傷」「五分間」6/18 君の頬にふれて火傷した指は、少しづつ蝋燭のように溶けてゆき、手首、肩、背中、やがて全身が溶けて、僕のカタチは失くなり、跡形もなく消えてゆく。この世界から僕がいなくなる。誰も僕が在たことを憶えていない。僕は最初から在なかった存在のように、この世界からも、皆の記憶のなかからも失えてゆく。
それでも、世界が僕を忘れても、忘れないで。君だけは、僕を忘れないで。僕のことを憶えていてほしい。夜空の星のように、道端に咲く花のように、萌えいずる新緑に吹く東風のように、フと、その存在に気付いて、一瞬でいいから、僕という存在が在たことを、想いだしてほしい。いつか君の世界が終焉る、その日まで。
「アーロン、まだ痛む?」
2292それでも、世界が僕を忘れても、忘れないで。君だけは、僕を忘れないで。僕のことを憶えていてほしい。夜空の星のように、道端に咲く花のように、萌えいずる新緑に吹く東風のように、フと、その存在に気付いて、一瞬でいいから、僕という存在が在たことを、想いだしてほしい。いつか君の世界が終焉る、その日まで。
「アーロン、まだ痛む?」
hbnho210
SPUR MEルクアロ版ワンドロワンライさまよりお題:「夢」「見えてる」お借りしました。ヒロルクとルクアロのはざまのような。アーロンのモノローグです。お題:「夢」「見えてる」6/4 夢のまにまに。
夜眠ると、悪夢しかみることができなくなってもうどれくらい経つのだろう。それでも、夢の襞と襞をかきわけて、その狭間にあの少年を探す。この、目が覚めても眠りのなかにいても悪夢しかみることのできない世界で、何処か、片隅にでも、あの、笑顔をみつけることができたなら。笑うと口からは春に生まれた雛の鳴声よりも生き々とした明るい声が翔びだして、その瞳からは太陽の欠片がいくつも々こぼれた。その声を、聴きながら、こぼれた欠片をこの手いっぱいにあつめて、抱きしめて眠りたい。そうすればきっと悪夢をみることもないだろう。君が在れば、悪夢はすべて失くなる。たとえ、街は炎に焼かれ、人は死に、大地は血に濡れて毒の海となっても、俺の世界から地獄は失える。君が在れば。君さえ在れば、この世界がどうなろうとも、俺の世界は救われる。
1833夜眠ると、悪夢しかみることができなくなってもうどれくらい経つのだろう。それでも、夢の襞と襞をかきわけて、その狭間にあの少年を探す。この、目が覚めても眠りのなかにいても悪夢しかみることのできない世界で、何処か、片隅にでも、あの、笑顔をみつけることができたなら。笑うと口からは春に生まれた雛の鳴声よりも生き々とした明るい声が翔びだして、その瞳からは太陽の欠片がいくつも々こぼれた。その声を、聴きながら、こぼれた欠片をこの手いっぱいにあつめて、抱きしめて眠りたい。そうすればきっと悪夢をみることもないだろう。君が在れば、悪夢はすべて失くなる。たとえ、街は炎に焼かれ、人は死に、大地は血に濡れて毒の海となっても、俺の世界から地獄は失える。君が在れば。君さえ在れば、この世界がどうなろうとも、俺の世界は救われる。
hbnho210
SPUR MEルクアロ版ワンドロワンライ様よりお題「犬」「ひざまくら」お借りしました!シバコです。公式の”愛犬の日”があまりにもかわいくてですね……シバコは何でも知ってるんですよ。お題:「犬」「ひざまくら」5/21 こうやって、だれかのおひざのうえでねるのはきもちがいい。あんまりきもちがよくてスグねむたくなっちゃうけれど、ほんとうは、あたまをなでてくれるてとか、ほっぺたをむにむにしてくれるゆびとか、やさしいめとか、もっとかんじていたい。でもやっぱりがまんができなくて、あくびがでちゃう。
いろいろなひとのおひざのうえでねむったことがあるけれど、どのおひざも、みんなきもちがいい。やさしくて、いいにおいのするいちばんだいすきなこずえさんのおひざ。そのおひざのうえでねむっていると、いろいろなひとがやってくる。みんなもこずえさんがだいすきなんだ。
たまに、だれもいないときに、あたまをなでてくれるてがあった。そのひとは、とおくの、ずっととおくのおそらのむこうをぼんやりとながめるようなめで、だまって、あたまをなでてくれた。そう、そのひとはこの“そらいろのしゅりけん”をくれたひとだ。でも、さいきんもうずっと、なでてもらってない。どうしたのかなあ。またいつか、あのおっきなてでなでてほしいな。
3192いろいろなひとのおひざのうえでねむったことがあるけれど、どのおひざも、みんなきもちがいい。やさしくて、いいにおいのするいちばんだいすきなこずえさんのおひざ。そのおひざのうえでねむっていると、いろいろなひとがやってくる。みんなもこずえさんがだいすきなんだ。
たまに、だれもいないときに、あたまをなでてくれるてがあった。そのひとは、とおくの、ずっととおくのおそらのむこうをぼんやりとながめるようなめで、だまって、あたまをなでてくれた。そう、そのひとはこの“そらいろのしゅりけん”をくれたひとだ。でも、さいきんもうずっと、なでてもらってない。どうしたのかなあ。またいつか、あのおっきなてでなでてほしいな。
hbnho210
SPUR MEルクアロ版ワンドロワンライ様よりお題「はちみつ」「恋」をおかりしました!ルクアロがいちゃいちゃいちゃいちゃしています。お題:「はちみつ」「恋」5/7 はちみつみたいに、あまい、あまい恋をしたの。
それは、パンケーキに蜂蜜のチューブをまるまる一本かけたくらいあまい?
そう訊いたら、パンケーキに蜂蜜をそんなにかけたことないから解らない、そう言われた。それはある日の放課後、クラスメイトの女子たちがクラスで流行っていた小説の一節を読み上げて聴かせてくれたときの会話だ。別の女子が、きっともっともっとあまいわ、スーパーの棚に並んでいる蜂蜜をぜんぶパンケーキにかけたよりもずっとあまいのよ、そう言って胸のまえで両手を強くにぎりしめてため息をついた。
スーパーの棚に並んでいる蜂蜜ぜんぶをパンケーキにかけたよりもあまい。
それはどれくらいあまいのだろう。想像もつかない。けれど、蜂蜜のチューブ一本まるまるパンケーキにかけたとき、脳がしびれるくらいあまかった。父さんにみつかって、蜂蜜のチューブ一本をまるまるパンケーキにかけることは禁止されてしまったけれど、ときどき思いだす、あのあまさを。あの、脳がびりびりっとして舌がどろどろにとけてしまうくらいあまい、あまい、はちみつよりもあまい「恋」とはどんなものかしら。そんなにあまい「恋」をしたら僕の舌はとろけて蜜になって口のなかはあまいあまい蜜でいっぱいになって息ができなくなってしまいそう。いっぱいになった蜜は口のなかからあふれて僕の体がすっかりと蜂蜜の瓶のなかにもぐってしまったみたいになったら、僕の心臓もひとくちかじると歯がじんじんするくらいにあまくなって、おなかのなかも頭のなかもあまい蜜でぱんぱんになった僕は、僕自身が世界中の蜂蜜をぜんぶかけたあまくてふわっふわのパンケーキみたいになってしまうんじゃないかしら。
1678それは、パンケーキに蜂蜜のチューブをまるまる一本かけたくらいあまい?
そう訊いたら、パンケーキに蜂蜜をそんなにかけたことないから解らない、そう言われた。それはある日の放課後、クラスメイトの女子たちがクラスで流行っていた小説の一節を読み上げて聴かせてくれたときの会話だ。別の女子が、きっともっともっとあまいわ、スーパーの棚に並んでいる蜂蜜をぜんぶパンケーキにかけたよりもずっとあまいのよ、そう言って胸のまえで両手を強くにぎりしめてため息をついた。
スーパーの棚に並んでいる蜂蜜ぜんぶをパンケーキにかけたよりもあまい。
それはどれくらいあまいのだろう。想像もつかない。けれど、蜂蜜のチューブ一本まるまるパンケーキにかけたとき、脳がしびれるくらいあまかった。父さんにみつかって、蜂蜜のチューブ一本をまるまるパンケーキにかけることは禁止されてしまったけれど、ときどき思いだす、あのあまさを。あの、脳がびりびりっとして舌がどろどろにとけてしまうくらいあまい、あまい、はちみつよりもあまい「恋」とはどんなものかしら。そんなにあまい「恋」をしたら僕の舌はとろけて蜜になって口のなかはあまいあまい蜜でいっぱいになって息ができなくなってしまいそう。いっぱいになった蜜は口のなかからあふれて僕の体がすっかりと蜂蜜の瓶のなかにもぐってしまったみたいになったら、僕の心臓もひとくちかじると歯がじんじんするくらいにあまくなって、おなかのなかも頭のなかもあまい蜜でぱんぱんになった僕は、僕自身が世界中の蜂蜜をぜんぶかけたあまくてふわっふわのパンケーキみたいになってしまうんじゃないかしら。
hbnho210
SPUR MEルクアロ版ワンドロワンライ様より、お題「歩幅」「メガネ」お借りしました!ルクアロです。老眼鏡が必要になりはじめた頃のルクアロです。ルクアロはおじいちゃんになっても骨になってもずっとずっと一緒にいると思っています。お題:「歩幅」「メガネ」3/19「お前、メガネなんか掛けてたか」
洗いたての真っ白なシーツや青と白のストライプのシャツ、少しよれた赤いシャツやバスタオルがはためく午后の庭先でページを繰っていたルークは顔を上げて、眼鏡のフレームの端を指で摘まんで持ち上げた。
「読書をするときだけだよ」
「なるほど、老眼鏡ってやつか」
アーロンは微笑って、ルークの傍らに座ると愉快そうに顔をのぞき込む。午后の陽光を反射するレンズのむこうでほそくなった瞳は、硝子の海のなかを泳ぐ翡翠色の魚のよう。アーロンはその魚を掴まえようと、凝、とみつめた。
「アーロン、君には必要なさそうだな」
「昔よりはだいぶ視力も落ちた」
数年前に二人で作った木の椅子は二人で座るのに丁度良いサイズで、晴れた日の休日はそこで遅い昼食をとったり午睡をしたり、今日も初夏の訪れを前に青々と茂る樹の下でルークは読書をしていた。木洩れ陽にゆれる白いページに陰が射す。隣で、アーロンは何やら手のなかで小さな金属の欠片を弄んでいる。金属は擦合う度に小さい虫のような声で鳴いていたが、アーロンはまるで興味がなさそうだ。
2086洗いたての真っ白なシーツや青と白のストライプのシャツ、少しよれた赤いシャツやバスタオルがはためく午后の庭先でページを繰っていたルークは顔を上げて、眼鏡のフレームの端を指で摘まんで持ち上げた。
「読書をするときだけだよ」
「なるほど、老眼鏡ってやつか」
アーロンは微笑って、ルークの傍らに座ると愉快そうに顔をのぞき込む。午后の陽光を反射するレンズのむこうでほそくなった瞳は、硝子の海のなかを泳ぐ翡翠色の魚のよう。アーロンはその魚を掴まえようと、凝、とみつめた。
「アーロン、君には必要なさそうだな」
「昔よりはだいぶ視力も落ちた」
数年前に二人で作った木の椅子は二人で座るのに丁度良いサイズで、晴れた日の休日はそこで遅い昼食をとったり午睡をしたり、今日も初夏の訪れを前に青々と茂る樹の下でルークは読書をしていた。木洩れ陽にゆれる白いページに陰が射す。隣で、アーロンは何やら手のなかで小さな金属の欠片を弄んでいる。金属は擦合う度に小さい虫のような声で鳴いていたが、アーロンはまるで興味がなさそうだ。
hbnho210
SPUR MEルクアロ版ワンドロワンライさまよりお題をお借りしました。モクマさんもチェズレイもでてきます。退行催眠でアーロンがルクバンちゃんになっています。※過去の拙著での設定がちょいちょいでてきますお題:「ネクタイ」「あいつが悪い」3/5 アーロンとチェズレイが大喧嘩をした。お互い反りが合わないということは周知の事実だけれど今回の喧嘩はちょっと派手で、華があっていいねえ、とモクマは笑っていたが少々厄介な事になってしまい、最初は面白がって笑っていたモクマも苦笑いをしている。ルークは顔面蒼白で口を開いたり閉じたりしていたが上手い言葉が見つからず、額ににじむ汗を拭って深呼吸をした。
「……アーロン、……僕が誰だか、わかる」
「おっきくなったヒーロー! また会えたね! ぼく、また未来の世界にタイムスリップしてきちゃったの?」
※注釈:過去の拙著でそういうネタがありました。
チェズレイの名を呼ぶルークの声もむなしく、既にチェズレイの姿は此処には無く、派手な「喧嘩」の末にとんでもない置土産をのこして何処へと姿をくらましてしまった。のこされたのは、青くなったり赤くなったりして右往左往しているルークと、初対面の“ルーク”に怯えられてしまいショックを受けているモクマと、誰もがうらやむ体躯をした成人男性の身体に齢、七歳の少年の心を持つ“ルーク・バーンズ”だけであった。
3845「……アーロン、……僕が誰だか、わかる」
「おっきくなったヒーロー! また会えたね! ぼく、また未来の世界にタイムスリップしてきちゃったの?」
※注釈:過去の拙著でそういうネタがありました。
チェズレイの名を呼ぶルークの声もむなしく、既にチェズレイの姿は此処には無く、派手な「喧嘩」の末にとんでもない置土産をのこして何処へと姿をくらましてしまった。のこされたのは、青くなったり赤くなったりして右往左往しているルークと、初対面の“ルーク”に怯えられてしまいショックを受けているモクマと、誰もがうらやむ体躯をした成人男性の身体に齢、七歳の少年の心を持つ“ルーク・バーンズ”だけであった。
hbnho210
SPUR MEルクアロ版ワンドロワンライさまよりハンドクリーム・抱き枕、お題お借りしました。アラナさーん!!!お題:「ハンドクリーム」「抱き枕」2/5「アーロン、手をだして」
何故とも問わず素直に手をだしてきたアーロンの、無防備な手にルークは指にすくいとった乳白色のクリームをぬった。ルークの指がアーロンの手の甲、指と指のあいだ、指先、手のひらにまで丹念にクリームをぬりこんでいく。アーロンは、いささか執拗にすぎないか、と思いながらも黙ってされるがままになっていた。
「何だこれは」
「ハンドクリームだよ、もらったんだ、いい匂いだろう」
自分の手から妙な匂いがすることが落ち着かなくて、手の甲をジャケットにこすりつけようとするアーロンの手をあわてて掴むと、ルークはその骨ばった太く長い指、血管のうきでた硬い甲、ぶあつい手のひらのすみずみを眺めた。
「君の手、荒れてるじゃないか、もっと労わってあげてよ」
2377何故とも問わず素直に手をだしてきたアーロンの、無防備な手にルークは指にすくいとった乳白色のクリームをぬった。ルークの指がアーロンの手の甲、指と指のあいだ、指先、手のひらにまで丹念にクリームをぬりこんでいく。アーロンは、いささか執拗にすぎないか、と思いながらも黙ってされるがままになっていた。
「何だこれは」
「ハンドクリームだよ、もらったんだ、いい匂いだろう」
自分の手から妙な匂いがすることが落ち着かなくて、手の甲をジャケットにこすりつけようとするアーロンの手をあわてて掴むと、ルークはその骨ばった太く長い指、血管のうきでた硬い甲、ぶあつい手のひらのすみずみを眺めた。
「君の手、荒れてるじゃないか、もっと労わってあげてよ」
hbnho210
SPUR MEルクアロ版ワンドロワンライさまよりお題をお借りしました!BOND諸君とナデシコさんがでてきます。お題:「薬」「はじめまして」1/22 とある麻薬のシンジケートをひとつ、潰して欲しいとチームBONDに依頼があった。潰して欲しいとはまた物騒なことで、と、モクマが笑う。言い方を変えようが諸君らのすることは、まあ、完膚なきまでに奴等を叩き潰し二度と日の目を見ることができないよう組織を根絶やしにすることだからな、と、涼しい顔でナデシコは組織に関わる情報と任務の詳細が記された書類を各々に渡した。書類は二、三枚ほど。任務は至ってシンプルで、情報は極めて少ない。法の目をかいくぐり国家権力を欺いて人々を苦しめている悪魔たちとの闘いの場は、紙の上ではない。この世界で暮らす人々の安寧を犯そうとする悪鬼共の巣喰うこの街だ。この街を、この街に住む人々を喰いつくされる前に、叩き潰す。それが、BOND諸君の使命だ。
6906yukimuu_bmd
PROGRESS越境の頃のルクアロマンガ(この前の話「ダダ漏れメテオライト」に入ってる通話スケベマンガ
→https://poipiku.com/2664600/8145902.html) 14
hbnho210
SPUR MEルクアロ版ワンドロワンライ様よりお題をおかりしました。2023年初ルクアロなのでおめでたく?ラブコメです。チェズレイ活躍してます。お題:「ノーズキス」「こたつ」1/8 雪や こんこん 霰や こんこん
降っても々 まだ降りやまぬ
犬はよろこび庭かけまわり
猫はこたつでまるくなる
エリントンに初雪が降った。初雪の一片を手でうけとめようと路地で、家の庭先で、窓から身をのりだして、誰もが腕をいっぱいに伸ばし、天へとそのてのひらを向けた。ルーク・ウィリアムズも、どうりで寒いわけだ暖かくしていよう、と言いながら真っ先に庭へ跳びだして空に向かって手をのばしている。その火照った肌にふれた雪の欠片がとけて頬が濡れるのも厭わずにはしゃいでいるその様子を見て、アーロンはハスマリーの子供たちが歌っていた異国の歌を思いだした。子供たちは意味もよくわからないまま歌っていたが、それを聴きながらアーロンは、雪が降って喜びながら駆けまわるルークを想像して、微笑った。
3151降っても々 まだ降りやまぬ
犬はよろこび庭かけまわり
猫はこたつでまるくなる
エリントンに初雪が降った。初雪の一片を手でうけとめようと路地で、家の庭先で、窓から身をのりだして、誰もが腕をいっぱいに伸ばし、天へとそのてのひらを向けた。ルーク・ウィリアムズも、どうりで寒いわけだ暖かくしていよう、と言いながら真っ先に庭へ跳びだして空に向かって手をのばしている。その火照った肌にふれた雪の欠片がとけて頬が濡れるのも厭わずにはしゃいでいるその様子を見て、アーロンはハスマリーの子供たちが歌っていた異国の歌を思いだした。子供たちは意味もよくわからないまま歌っていたが、それを聴きながらアーロンは、雪が降って喜びながら駆けまわるルークを想像して、微笑った。
kazemohukanai
DONE【ルーク視点の後にお読みください】2022/12/24〜25 ルアwebオンリー
『夢枯れの国』
ホリバ後の春ごろに再びエリントンで数日過ごす光バの話全年齢ほのぼの話。めくるめく日々を受け取っているアーロンの話です。
なおアーロンの体質についてなど、この話の上だけでの独自解釈を含みます。ご注意を。 39
hbnho210
DONEルアwebオンリーStarlight Sparkle展示作品②※12/11DRFes.無配の再掲。「機械市場の少年英雄」「そこな少年、強くなりたくはないかえ?」
ふと、気がつけば、知らない場所に在た。この街の景色は日々、変わる。昨日あった建物が今日はもう其処には無いことなどめずらしくもない。日毎、破壊されてゆく街。街だけではない。昨日まで毎日いっしょに遊んでいた子が、今日はもう何処にもいない。街も、人も、みんな破壊されてゆく。けれど、此処はどこか奇妙だと、立ち止まってあたりを見回していたアーロンに、先程まで其処にはいなかったはずの老婆……らしき人物が声をかけてきた。アーロンはその老婆に近づいて、顔を覗き込もうとしたが、よく、見えない。目も鼻も口も何処にあるのかわからない。闇い顔から声だけがする。
「強さを求むるならば、少年、汝は運が良い。今日はそこに市がたっている」
2615ふと、気がつけば、知らない場所に在た。この街の景色は日々、変わる。昨日あった建物が今日はもう其処には無いことなどめずらしくもない。日毎、破壊されてゆく街。街だけではない。昨日まで毎日いっしょに遊んでいた子が、今日はもう何処にもいない。街も、人も、みんな破壊されてゆく。けれど、此処はどこか奇妙だと、立ち止まってあたりを見回していたアーロンに、先程まで其処にはいなかったはずの老婆……らしき人物が声をかけてきた。アーロンはその老婆に近づいて、顔を覗き込もうとしたが、よく、見えない。目も鼻も口も何処にあるのかわからない。闇い顔から声だけがする。
「強さを求むるならば、少年、汝は運が良い。今日はそこに市がたっている」
hbnho210
DONEルアwebオンリーStarlight Sparkle展示作品①「ある冬の日、君とふたりで」「アーロン、ピザ何にする?」
ルークがデリバリー用ピザ店のメニューをひらいてアーロンに見せる。アーロンはソファに寝転がったままメニューを一瞥すると、肉、とだけ言って欠伸をした。
「肉のピザたくさんあるぞ、選ばなくていいのか?」
「全部」
ルークはため息をついて、あらためてメニューに目を通した。
「じゃあこの、生クリィムどか盛りイチゴとダークチェリーのせチョコレートトッピング&バニラアイス添えピザにするぞ」
「そんなピザねえだろ!」
結局、照焼きチキンとサラミたっぷりのディアボラとパルマには生ハムを追加して、 アーロンが「ドギー用だ」と選んだのはバンビーノ。サイドメニューはステーキ三百グラムとフレンチクルーラーを注文した。ルークが昨日、購入しておいたチョコレート五倍がけドーナツの箱をうきうきしながら開封する様子を横目にアーロンは電気ポットのスイッチを押す。明日はこの冬いちばんの大寒波がエリントンを襲うというニュースを聞いた二人は絶対に明日は家から一歩も出ないと決めて前日にたっぷりと食料を買込み、更に今日は追加でピザを注文した。
2955ルークがデリバリー用ピザ店のメニューをひらいてアーロンに見せる。アーロンはソファに寝転がったままメニューを一瞥すると、肉、とだけ言って欠伸をした。
「肉のピザたくさんあるぞ、選ばなくていいのか?」
「全部」
ルークはため息をついて、あらためてメニューに目を通した。
「じゃあこの、生クリィムどか盛りイチゴとダークチェリーのせチョコレートトッピング&バニラアイス添えピザにするぞ」
「そんなピザねえだろ!」
結局、照焼きチキンとサラミたっぷりのディアボラとパルマには生ハムを追加して、 アーロンが「ドギー用だ」と選んだのはバンビーノ。サイドメニューはステーキ三百グラムとフレンチクルーラーを注文した。ルークが昨日、購入しておいたチョコレート五倍がけドーナツの箱をうきうきしながら開封する様子を横目にアーロンは電気ポットのスイッチを押す。明日はこの冬いちばんの大寒波がエリントンを襲うというニュースを聞いた二人は絶対に明日は家から一歩も出ないと決めて前日にたっぷりと食料を買込み、更に今日は追加でピザを注文した。
kazemohukanai
DONE2022/12/24〜25 ルアwebオンリー『きみのゆめをみる』完全版
ホリバ後の春ごろに再びエリントンで数日過ごす光バの話全年齢ほのぼの話。ささやかなくだらない日常をおくりたいルークの話です。
なおアーロンの体質についてなど、この話の上だけでの独自解釈を含みます。ご注意を。 42
hbnho210
SPUR MEルクアロ版ワンドロワンライ様よりお題をおかりしました!ルクアロです。エロ描写あるけど未挿入なので……お題:「閉じ込められた」「赤点」12/11「はあ……、好き、好きだよ、……好きだ」
日付が変わる頃に帰宅してそのまま玄関と廊下、脱衣所まで待てずに脱ぎ散らかした服もそのままにシャワールームへ入っていったその数分後にまだ髪も濡れたままリビングへ入ってきたルークは、何のスイッチが入ったのかソファに寝転がっていたアーロンの上に倒れ込むと額、鼻の頭、頬、唇にキスをして好きだ好きだと連呼した。顔中をルークの唇が這いまわるものだからなかなかものを言うこともできずアーロンはしばらくルークのしたいようにさせていたが、いよいよその手があらぬところへと入ってきたので、いいかげんにしろとばかりにその顔を手で押し退けた。
「……おい、髪ちゃんと拭いてこい。俺までびしょ濡れになっちまったじゃねえか」
2981日付が変わる頃に帰宅してそのまま玄関と廊下、脱衣所まで待てずに脱ぎ散らかした服もそのままにシャワールームへ入っていったその数分後にまだ髪も濡れたままリビングへ入ってきたルークは、何のスイッチが入ったのかソファに寝転がっていたアーロンの上に倒れ込むと額、鼻の頭、頬、唇にキスをして好きだ好きだと連呼した。顔中をルークの唇が這いまわるものだからなかなかものを言うこともできずアーロンはしばらくルークのしたいようにさせていたが、いよいよその手があらぬところへと入ってきたので、いいかげんにしろとばかりにその顔を手で押し退けた。
「……おい、髪ちゃんと拭いてこい。俺までびしょ濡れになっちまったじゃねえか」
hbnho210
SPUR MEルクアロ版ワンドロワンライ様よりお題をお借りしました。ヒロルク。そしてルークとアーロンが再会するもっとずっとまえ、まだ少年のルークと少年のアーロンの話。です。捏造アリ。お題:「意気地なし」「雪景色」11/27 雪をみるの、はじめてなの?
埃のようにふわふわとしたものが空から降ってくる様子をいつまでも眺めていたら、不思議そうにそう訊かれた。ほんものを見るのははじめてだけれど、これが雪だということは知っていた。空から降ってくる真っ白なもの。さわると冷たい。何故、知っているのか。何かの本で見たことがあるのだろうか、それとも誰かが教えてくれたのか。誰が? 記憶を探ってみても、そこには地面にぽっかりと空いたように闇い穴しかなくて、何も見えない。その中に手をのばしてみても、手は虚空を彷徨うばかりで、何も掴むことは出来なかった。
ルークは大人たちの目を盗んでドアを開け、外へ出た。振返って誰も気がついていないことを確かめると、そのまま、施設の門を出た。うっすらと雪のつもった地面を踏むと、蹠にしんしんとしみわたる冷たさに、魂までも凍ってしまう思いがした。空へむかって手をのばしてみたけれど、手のひらで受けとめた雪はすぐに溶けてしまう。ルークは空を見上げた。雪は、空のずっとむこう、銀鼠色の彼方から降ってくる。ルークの額に、頬に、睫毛に、雪はどんどん降ってくる。冷たい。冷たくて、そしてとても美しいと、ルークは思った。そして、この、真っ白で美しいものを、自分は知っている。雪のようで、雪ではない、でも、それが何であるのかは解らない。ルークは雪を、好きだと思った。この眼前にひろがる雪景色の見事さに胸がいっぱいになって、
3250埃のようにふわふわとしたものが空から降ってくる様子をいつまでも眺めていたら、不思議そうにそう訊かれた。ほんものを見るのははじめてだけれど、これが雪だということは知っていた。空から降ってくる真っ白なもの。さわると冷たい。何故、知っているのか。何かの本で見たことがあるのだろうか、それとも誰かが教えてくれたのか。誰が? 記憶を探ってみても、そこには地面にぽっかりと空いたように闇い穴しかなくて、何も見えない。その中に手をのばしてみても、手は虚空を彷徨うばかりで、何も掴むことは出来なかった。
ルークは大人たちの目を盗んでドアを開け、外へ出た。振返って誰も気がついていないことを確かめると、そのまま、施設の門を出た。うっすらと雪のつもった地面を踏むと、蹠にしんしんとしみわたる冷たさに、魂までも凍ってしまう思いがした。空へむかって手をのばしてみたけれど、手のひらで受けとめた雪はすぐに溶けてしまう。ルークは空を見上げた。雪は、空のずっとむこう、銀鼠色の彼方から降ってくる。ルークの額に、頬に、睫毛に、雪はどんどん降ってくる。冷たい。冷たくて、そしてとても美しいと、ルークは思った。そして、この、真っ白で美しいものを、自分は知っている。雪のようで、雪ではない、でも、それが何であるのかは解らない。ルークは雪を、好きだと思った。この眼前にひろがる雪景色の見事さに胸がいっぱいになって、
hbnho210
SPUR MEルクアロ版ワンドロワンライ様より、お題:「落書き」「はじめから」おかりしました。ヒロルク、ルクアロです。キャラブネタ有。※だいぶ捏造した部分がありますお題:「落書き」「はじめから」11/13「やあ、見て、アーロン、可愛い落書きだ!」
アスファルトの上に白いチョークで丸や星型や様々な太さの線で描かれているそれが、具体的に何だかは解らずとも、歩道いっぱいに引かれた線の勢い、自由にひろがる図形や模様……見ているだけで楽しい。
「なかなか芸術的だな、将来有望だぞ」
ルークは顔を近づけて落書きの細部を観察したり、遠くから全体を眺めたりしていた。
「興味津々だな、散歩中の仔犬かてめえは」
「あ! あれビーストくんじゃないか?! ビーストくんをモデルに選ぶなんて……やはりこれを描いた子は天才!!」
「……イガグリじゃねえのか」
往来に引かれた白墨の線は道行く人達の靴に踏まれ、少しづつ掠れてゆく。線を引いたその小さな芸術家の卵はもうすっかり自分が生みだした図形や模様のことなど忘れているだろう。誰かの心に灯りを点けて、遠い彼方の記憶を想いださせたことも知らずに。
2260アスファルトの上に白いチョークで丸や星型や様々な太さの線で描かれているそれが、具体的に何だかは解らずとも、歩道いっぱいに引かれた線の勢い、自由にひろがる図形や模様……見ているだけで楽しい。
「なかなか芸術的だな、将来有望だぞ」
ルークは顔を近づけて落書きの細部を観察したり、遠くから全体を眺めたりしていた。
「興味津々だな、散歩中の仔犬かてめえは」
「あ! あれビーストくんじゃないか?! ビーストくんをモデルに選ぶなんて……やはりこれを描いた子は天才!!」
「……イガグリじゃねえのか」
往来に引かれた白墨の線は道行く人達の靴に踏まれ、少しづつ掠れてゆく。線を引いたその小さな芸術家の卵はもうすっかり自分が生みだした図形や模様のことなど忘れているだろう。誰かの心に灯りを点けて、遠い彼方の記憶を想いださせたことも知らずに。
hbnho210
SPUR MEルクアロ版ワンドロワンライ様のお題、「常套句」「出荷」で書かせて頂きました!ルクアロです。主役はビーストくんです。私はビーストくんはアーロンちゃんの妖精だと思っているので。お題:「常套句」「出荷」9/25「さあ、今年も『ビーストくん』の出荷が最盛期をむかえています!」
聴き間違えかと思い、アーロンはテレビの画面に目を遣った。
「みてください! 旬をむかえたビーストくんたち、まあるくて真っ赤で、かわいいですね~今年もこの愛らしい姿を待ち望んでいた人たちで市場には既に行列が出来ています。こんにちは~今日はどこからいらっしゃったんですか? …………」
テレビ画面には丸くて赤い、見覚えのある物体が山と積まれた様子が映しだされていた。その山の前でマイクを持ってしゃべりつづけるアナウンサーの声はもはや耳には入ってこない。丸くて赤いその物体は、相変わらずの面相で凝、とこちらを見ているもの、尻……なのかどうなのかわからない部分をこちらにむけているもの、ぎゅうぎゅうに積まれた隙間から小さな爪だけがのぞいているもの、様々であった。
4768聴き間違えかと思い、アーロンはテレビの画面に目を遣った。
「みてください! 旬をむかえたビーストくんたち、まあるくて真っ赤で、かわいいですね~今年もこの愛らしい姿を待ち望んでいた人たちで市場には既に行列が出来ています。こんにちは~今日はどこからいらっしゃったんですか? …………」
テレビ画面には丸くて赤い、見覚えのある物体が山と積まれた様子が映しだされていた。その山の前でマイクを持ってしゃべりつづけるアナウンサーの声はもはや耳には入ってこない。丸くて赤いその物体は、相変わらずの面相で凝、とこちらを見ているもの、尻……なのかどうなのかわからない部分をこちらにむけているもの、ぎゅうぎゅうに積まれた隙間から小さな爪だけがのぞいているもの、様々であった。
hbnho210
SPUR MEルクアロ版ワンドロワンライ 様よりお題をお借りしました!ルクアロです。みんなスイちゃんのことがだいすき。お題:「条件付き」「歌」9/11 ルークの歌、聴きたいな。
何気なく、だけれど、世界が誇る歌姫からそう言われてしまったルークは、それが歌の世界ではいわゆる社交辞令のようなものなのか、実は定番の歌手ジョークなのか、それとも本当に僕の歌を聴きたいということなのか、スイとの通話のあと、しばらく悩んでいた。
「なあ、どう思う、アーロン」
「何で俺にそんなこと訊くんだよ」
不機嫌そうな声で今すぐにでも通話を終了しようとするアーロンにルークはあわてて待ったをかけた。
「待ってくれアーロン、スイさんが言った言葉には続きがあるんだ」
「俺には関係ねえだろうが」
「それが、関係あるんだな」
ルークが思わせぶりな咳ばらいをひとつ、した。
「”アーロンの歌も聴きたいな”」
2216何気なく、だけれど、世界が誇る歌姫からそう言われてしまったルークは、それが歌の世界ではいわゆる社交辞令のようなものなのか、実は定番の歌手ジョークなのか、それとも本当に僕の歌を聴きたいということなのか、スイとの通話のあと、しばらく悩んでいた。
「なあ、どう思う、アーロン」
「何で俺にそんなこと訊くんだよ」
不機嫌そうな声で今すぐにでも通話を終了しようとするアーロンにルークはあわてて待ったをかけた。
「待ってくれアーロン、スイさんが言った言葉には続きがあるんだ」
「俺には関係ねえだろうが」
「それが、関係あるんだな」
ルークが思わせぶりな咳ばらいをひとつ、した。
「”アーロンの歌も聴きたいな”」
hbnho210
SPUR MEルクアロ版ワンドロワンライさまよりお題「禁断」「ミッション」をお借りしました。ハスマリーとエリントンの時差設定はふんわり捏造です。ルクアロです。お題:「禁断」「ミッション」8/28 この街が眠りにつく頃、彼の住む街の空は白みはじめ、蜻蛉の羽根のように透きとおった月が夜を惜しみながらとけてゆく。太陽はまだ、まどろみながら夢をみている。君も、夢のなかだろうか。何の夢をみているのだろう。君の夢のなかに、僕はいるのだろうか。僕は、きっと毎日君の夢をみているのだけれど、目が覚めたときにはぼんやりとしか覚えていない。ただ、目が覚めたときに僕のとなりに君がいないことに気づくとどうしようもなくさみしくて、さっきまでこの腕のなかに在たのに、この腕も、唇も、身体も君のことを憶えているのに、君はいない。僕は君がいないこの街で朝をむかえる。君は、僕を君の夢のなかへ招いてくれるだろうか。僕は何十キロもの肉をお土産に抱えて君に会いにいくよ。きっと夢のなかの僕は力持ちだから、いっぱいの肉を抱えた君を抱いて、ハスマリーの街中を駆けまわる。夜が明けるまで君と一緒にどこまでもどこまでも駆けてゆくんだ、まあ、これは昨日みた僕の夢の話なのだけれども。
2837hbnho210
SPUR MEルクアロ版ワンドロワンライさまより、お題:「魔法」「ぶん殴る」おかりしました!ルクアロ!お題:「魔法」「ぶん殴る」8/14「ルーク、てめえはほんとうにかっこいいな」
「は?」
「あ?」
僕の、相棒が、変です。
普段、意地悪な、いやちょっと過激な、まあ少々、口の悪い相棒が僕のことをドギーと呼んだり、おすわり、と言って犬か何かのように扱ったり、犬くさいだの甘いものの食べすぎで体がマシュマロみたいになってきただの、僕がメロウな気持ちになって愛の言葉を囁けばクサイこと言いやがると鼻で笑ったり。とにかく普段そんな調子なのだけれど、まあ相棒である僕は君がちょっと照れやさんで正直になることができなくて不器用な感情表現になってしまうんだってことは勿論ちゃんと理解している。だから君が何を言っても僕には君が只々、愛おしいとしか思えないワケなのだけれど。でも、たまには、君が想っているそのままの気持ちを口にしてくれたら、嬉しいかな。ほんのちょっとでいいから、はずれまんじゅうよりも甘い君の唇から、もっともっとスイートで甘ったるい言葉を、聴いてみたい、そう、思っていた。
4609「は?」
「あ?」
僕の、相棒が、変です。
普段、意地悪な、いやちょっと過激な、まあ少々、口の悪い相棒が僕のことをドギーと呼んだり、おすわり、と言って犬か何かのように扱ったり、犬くさいだの甘いものの食べすぎで体がマシュマロみたいになってきただの、僕がメロウな気持ちになって愛の言葉を囁けばクサイこと言いやがると鼻で笑ったり。とにかく普段そんな調子なのだけれど、まあ相棒である僕は君がちょっと照れやさんで正直になることができなくて不器用な感情表現になってしまうんだってことは勿論ちゃんと理解している。だから君が何を言っても僕には君が只々、愛おしいとしか思えないワケなのだけれど。でも、たまには、君が想っているそのままの気持ちを口にしてくれたら、嬉しいかな。ほんのちょっとでいいから、はずれまんじゅうよりも甘い君の唇から、もっともっとスイートで甘ったるい言葉を、聴いてみたい、そう、思っていた。
hbnho210
SPUR MEルクアロ版ワンドロワンライさまよりお題「予想外」「言いつけてやる」をお借りしました。ドギワルです。ドギワル日本捏造昔話。むちゃくちゃ捏造そして捏造です。友情出演:ニンジャジャンさん。お題:「予想外」「言いつけてやる」7/24 ここ最近、世間を騒がせている“悪党”がいた。名前は「ワルサムライ」血のような真っ赤な髪を地獄の業火のように逆立て、禍々しい白狐の面をつけている。面からギョロリとした眼をのぞかせて、その双眸に睨まれた者は身体中に一千もの穴があき、そこから血が流れだしてついには干乾びて死んでしまうとか。それはそれは異形の、不吉な、呪われた悪霊のごとく恐れられていた。今日も山で芝刈りをしていた村の翁が山道で「ワルサムライ」と出くわし、ほうほうのていで何とか村へと帰ってきたがそのまま三日ほど寝込むことになった。翁は村長に訴え、困り果てた村長が相談した相手が、今、街で話題の“正義の味方”の看板をぶらさげた「ニンジャジャン」という義侠の忍者だった。
6831