片想いの彼に俺の服を着てもらう方法 日が暮れても賑やかな事務所の中、雨彦は一人でソファーに座り人を待っていた。約束ではなく、一方的に待っているだけだ。
「あ。玄武、朱雀、お疲れ」
扉が開き誰かが戻って来たことに気づいた隼人が声を上げる。
「黒野、衣替えついでにタンスを整理したら不要な服が何枚かあってな。状態も良いから、欲しかったら譲りたいんだが、どうだ?」
「良いのかい?」
玄武は声を弾ませた。ちゃんとアイドルとしての稼ぎがあり服を買う金に困っているというわけではないが、オシャレをしたい年頃だからか服はいくらあっても欲しくなってしまうのだろう。それに加え彼の場合はそもそもサイズの合う服が滅多に見つからないために「飢えている」ことを同じ背丈の雨彦は知っている。
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