懐中時計の刻む音懐中時計の刻む音
カタカタカタと苛立たしげにキーボードを打つ音が執務室内に響き渡っていた。
(くそっ! なんでまた今日に限ってこうなる!)
今日は8月8日。イザークの誕生日だった。それなのに、現在の時刻は既に19時が過ぎているにも関わらず、イザークは仕事に追われていた。
なにも今日、こんな頭を悩ますエラーが出なくてもいいだろうがと腹が立ってくる。
誕生日を喜ぶ様な年齢では無いが、それでも今日は共に過ごしたいと思っていたのに、これでは帰る事も出来ない。
(一体なんの嫌がらせだ!? これは!)
先程からビーっとエラー音が鳴る度に、ピキリとこめかみ辺りが痙攣する。
(ふざけるなよ!)
こうしてドツボにハマって行くのを分かっていながらも、時計ばかり気にしてしまっていた。
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