風邪を引いた話。平日の昼間、趙がふらりとサバイバーに顔を出すと、開店の準備中だったマスターが声も出さずに階段を顎で示した。
趙の方もそれだけで意味がわかってしまい、それでもこんな昼間に?という疑問を拭えないまま、ゆっくりと階段を上がる。
そもそもは春日一番と仲間達のアジトとして、その後は趙と春日とナンバの三人の居候先として落ち着いた部屋の扉を開けると、押し入れに体半分を突っ込んで何かを探している春日がいた。
「珍しいねえ、こんな昼間に」
趙が声をかけると、モゾモゾと押し入れから這い出して来た春日の手には薬箱が抱えられていた。
「ん?趙?あ〜まあ、ちょっとな」
明らかに見つかりたくなかったという顔をして、春日が頬を掻く。
「怪我した?」
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