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PROGRESS三月の新刊その2 忘れ草が書き終わらないので代わりに間に合えばこれを出します ババンババンバンバンパイアのパロディです ついにやりました タイトルは書き終わったら考えます 今日書いた部分なので推敲前ですがサンプルとして一度のせてみますタイトル未定吸血鬼パロ()くりつる よっ。俺は鶴丸国永。平安生まれの吸血鬼だ。と言っても、青い彼岸花を躍起になって探したりそのために不同意で仲間を増やしたりすることはない、安全な吸血鬼だ。年齢は永遠の二十九歳ということにしている。実年齢が自分ではわからないので相談したらそういうことにしておけと言われたのでそうした。わからないというのはどういうことかというと、俺は自分がいつどうやって生まれたのか自分ではあまりよくわかっていない、ということだ。
こんなことを言っても信じてもらえないだろうが、俺は長生きの吸血鬼なので、日本史でいうところの平安時代からの記憶がある。流石にそこまで遡ると昔すぎておぼろげだが、現役で活躍していた鎌倉時代以降の記憶ならわりとちゃんと残っている。これがまた波瀾万丈な人生だった。安達という家に仕えていたらもっと偉い人から謀反の疑いをかけられて一家全員皆殺しにされてしまったし、俺も殺されるもんだと思っていたら美人すぎるからという理由で捕まって北条という家に仕えることになったし、その後何故か神社に放り込まれてしばらくして、今度は伊達の家、そして皇室。俺が美人すぎるばかりに色々なところに引っ張りだこだったというわけだ。
7477こんなことを言っても信じてもらえないだろうが、俺は長生きの吸血鬼なので、日本史でいうところの平安時代からの記憶がある。流石にそこまで遡ると昔すぎておぼろげだが、現役で活躍していた鎌倉時代以降の記憶ならわりとちゃんと残っている。これがまた波瀾万丈な人生だった。安達という家に仕えていたらもっと偉い人から謀反の疑いをかけられて一家全員皆殺しにされてしまったし、俺も殺されるもんだと思っていたら美人すぎるからという理由で捕まって北条という家に仕えることになったし、その後何故か神社に放り込まれてしばらくして、今度は伊達の家、そして皇室。俺が美人すぎるばかりに色々なところに引っ張りだこだったというわけだ。
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DONE残響番外編最終話 前半部分掲載します つるさん29〜30歳、からぼー27〜28歳くらいを想定して書きました 残響①から12年後の話です 長いね〜残響番外編④ ひらひらと花弁の舞う薄紅の桜並木だとか、きらきらと陽光の乱反射する青緑の湖面だとか、少し肌寒い風でさわさわと揺れる鮮やかな紅葉だとか、そういった風景を美しいと思うのと同じように。ただそこにある空間を、美しいと思ったことがある。
高い天井に、規則的な凹凸を持つ壁面。真正面に設置されたパイプオルガンの荘厳な姿。並ぶ客席は多くの観客で埋まり、とりとめのない会話が繰り広げられている。その話し声ですら耳触りの良い音に変えてしまうほどにこの空間は計算され尽くして設計されているのだと気付いた頃、舞台上に奏者達が現れる。全員が着席した後に遅れて歩いてきたのは一人のヴァイオリニスト。この演奏会でコンサートマスターを務める、大俱利伽羅広光だ。
13197高い天井に、規則的な凹凸を持つ壁面。真正面に設置されたパイプオルガンの荘厳な姿。並ぶ客席は多くの観客で埋まり、とりとめのない会話が繰り広げられている。その話し声ですら耳触りの良い音に変えてしまうほどにこの空間は計算され尽くして設計されているのだと気付いた頃、舞台上に奏者達が現れる。全員が着席した後に遅れて歩いてきたのは一人のヴァイオリニスト。この演奏会でコンサートマスターを務める、大俱利伽羅広光だ。
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DOODLE振り回される話正しい既成事実の作り方「伽羅坊、ちょっと話をしてもいいだろうか」
鶴丸国永という男がそんなことを言い出したのは、大倶利伽羅が部屋の灯りを消しもう寝てしまおうと布団に入ったときのことだった。
そんな風に話を切り出す前に、まず部屋へ入るときに声を掛けるなど少しは気を遣って欲しかったものだが、まあ、この男に言ったところで無駄であることを大倶利伽羅は長い付き合いで理解していた。
大倶利伽羅は寝る前にその日の後片付けと明日の支度をしっかりと済ませてから寝床に入るタイプである。今日は長期遠征から帰還後、眠気を堪えながらも報告書を書き、久方ぶりの非番も昼まで寝過ごすことがないようアラームをセットし着替えや洗面用具も枕元へ置いていた。朝に弱いと自覚があるから、どんなに眠くとも寝る前に翌朝の準備はしておく方なのだ。そうしてくたくたになってようやく瞼を閉じたころ、唐突に鶴丸は大倶利伽羅の部屋に侵入し布団に入ったままの大倶利伽羅へ馬乗りになったあと、こう言ったのである。
2322鶴丸国永という男がそんなことを言い出したのは、大倶利伽羅が部屋の灯りを消しもう寝てしまおうと布団に入ったときのことだった。
そんな風に話を切り出す前に、まず部屋へ入るときに声を掛けるなど少しは気を遣って欲しかったものだが、まあ、この男に言ったところで無駄であることを大倶利伽羅は長い付き合いで理解していた。
大倶利伽羅は寝る前にその日の後片付けと明日の支度をしっかりと済ませてから寝床に入るタイプである。今日は長期遠征から帰還後、眠気を堪えながらも報告書を書き、久方ぶりの非番も昼まで寝過ごすことがないようアラームをセットし着替えや洗面用具も枕元へ置いていた。朝に弱いと自覚があるから、どんなに眠くとも寝る前に翌朝の準備はしておく方なのだ。そうしてくたくたになってようやく瞼を閉じたころ、唐突に鶴丸は大倶利伽羅の部屋に侵入し布団に入ったままの大倶利伽羅へ馬乗りになったあと、こう言ったのである。
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PROGRESSつるさんの記念日と聞いて 書きかけですが進捗報告 音楽パロ番外編その3前編残響番外編③前編 ガタン、ゴトン。列車が線路を走る際に鳴る音が、足元の振動と共に車両内に響く。平日の真昼間とあって乗客は少なく、各々が手元のスマートフォンを眺めたり雑誌や新聞を読んだりして過ごしている。大きな車窓から差し込む光で明るいものの、冷房が効いており暑さは感じられない。
耳に嵌めたワイヤレスイヤホンから音が漏れないように気を配りつつ、練習中の曲やその他に気に入った曲などを聴いて、読みかけの文庫本のページを静かにめくる。そうして過ごす移動時間を、大倶利伽羅は殊の外気に入っている。とはいえ、大学付近に引っ越した大倶利伽羅は高校時代と異なり通学に電車を使わなくなったから、電車移動の頻度は少ない。使うとしても他大学のオーケストラ部の練習に呼ばれた時や、演奏会を聴きに行く時、友人知人と共に出かける時など、遠出の用事がある時に限られる。そして今年度はそこへ、恋人に呼び出された時、という場合が一つ加わった。
8568耳に嵌めたワイヤレスイヤホンから音が漏れないように気を配りつつ、練習中の曲やその他に気に入った曲などを聴いて、読みかけの文庫本のページを静かにめくる。そうして過ごす移動時間を、大倶利伽羅は殊の外気に入っている。とはいえ、大学付近に引っ越した大倶利伽羅は高校時代と異なり通学に電車を使わなくなったから、電車移動の頻度は少ない。使うとしても他大学のオーケストラ部の練習に呼ばれた時や、演奏会を聴きに行く時、友人知人と共に出かける時など、遠出の用事がある時に限られる。そして今年度はそこへ、恋人に呼び出された時、という場合が一つ加わった。
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PROGRESSセンチネルバース第三話 進捗報告 後半も書き終わったらまとめて推敲してぴくしぶにあげます忘れ草③進捗 耳を劈く蝉の鳴き声、じめじめと肌に纏わりつく湿気、じりじりと肌を焼く灼熱の陽射し。本丸の景色は春から梅雨、そして夏に切り替わり、咲いていたはずの菜の花や桜は気付けば朝顔に取って代わられていた。
ここは戦場ではなく畑だから、飛沫をあげるのは血ではなく汗と水。実り色付くのはナス、キュウリ、トマトといった旬の野菜たち。それらの世話をして収穫するのが畑当番の仕事であり、土から面倒を見る分、他の当番仕事と同等かそれ以上の体力を要求される。
「みんな、良く育っているね……うん、良い色だ。食べちゃいたいくらいだよ」
「いや、実際食べるだろう……」
野菜に対して艶やかな声で話しかけながら次々と収穫を進めているのは本日の畑当番の一人目、燭台切光忠。ぼそぼそと小声で合いの手を入れる二人目は、青白い顔で両耳を塞ぎ、土の上にしゃがみ込んでいる鶴丸国永だ。大きな麦わら帽子に白い着物で暑さ対策は万全、だったはずの鶴丸だが仕事を開始してからの数分間でしゃがんで以来立ち上がれなくなり、そのまますっかり動かなくなっていた。燭台切が水分補給を定期的に促していたが、それでも夏の熱気には抗えなかったようだ。
7937ここは戦場ではなく畑だから、飛沫をあげるのは血ではなく汗と水。実り色付くのはナス、キュウリ、トマトといった旬の野菜たち。それらの世話をして収穫するのが畑当番の仕事であり、土から面倒を見る分、他の当番仕事と同等かそれ以上の体力を要求される。
「みんな、良く育っているね……うん、良い色だ。食べちゃいたいくらいだよ」
「いや、実際食べるだろう……」
野菜に対して艶やかな声で話しかけながら次々と収穫を進めているのは本日の畑当番の一人目、燭台切光忠。ぼそぼそと小声で合いの手を入れる二人目は、青白い顔で両耳を塞ぎ、土の上にしゃがみ込んでいる鶴丸国永だ。大きな麦わら帽子に白い着物で暑さ対策は万全、だったはずの鶴丸だが仕事を開始してからの数分間でしゃがんで以来立ち上がれなくなり、そのまますっかり動かなくなっていた。燭台切が水分補給を定期的に促していたが、それでも夏の熱気には抗えなかったようだ。
krtrjp00
DONEくりつるwebオンリー【第5回 めくり綴るは恋調べ】開催おめでとうございます!!
こんなギリギリに本当にすみません😂
少しでも賑やかしになれば幸いです。
『それでもあなたと月が見たい』
大倶利伽羅くんが夜戦から帰ると⋯。
両片想いくりつるです。
なんと大倶利伽羅くんしかログインしていません。
以上が大丈夫でしたらどうぞ! 7
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DONE20240921 第5回【めくり綴るは恋調べ】展示です!
突然始まるからにゃん漫画。
つるにゃんお世話係からぼーの本丸とは別本丸です!
万屋街の成猫つるにゃんは同一個体です。
からにゃんも本にしようと思っていてその一部です! 3
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DOODLEドッペルゲンガーだった鶴丸と、一振り目の大倶利伽羅の話ドッペルゲンガー、恋を知る。第三話 本丸の道場はすぐ埋まってしまうため、個人で素振りなどの鍛錬をする場合は大抵、本丸施設の外を使う。これは以前、一振り目の鶴丸もそうだと言っていた。積極的に手合わせをする相手を探すならば道場、そうでないのならそれ以外、というのは暗黙の了解のようだった。たまに、掲示板に模擬戦の予定が掲示されているので、もう少し力をつけられたら参加するのもいいかもしれない。
汗で木刀が滑る。あ、と思った隙に首筋に木刀が突きつけられた。これで今日は6対2。もちろん、鶴丸の負けである。くそ、と舌打ちして木刀を拾った。大倶利伽羅は手加減をしない。だから悔しさはあっても苦しさはない。
「木刀に慣れすぎるのもよくないかもしれない」
46650汗で木刀が滑る。あ、と思った隙に首筋に木刀が突きつけられた。これで今日は6対2。もちろん、鶴丸の負けである。くそ、と舌打ちして木刀を拾った。大倶利伽羅は手加減をしない。だから悔しさはあっても苦しさはない。
「木刀に慣れすぎるのもよくないかもしれない」
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DOODLEドッペルゲンガーだった鶴丸と、一振り目の大倶利伽羅の話ドッペルゲンガー、恋を知る。第二話 朝日が目に痛い。
これは肉体を得る前にはなかった感覚で、鶴丸は自分の目を手で覆った。それでも隙間から容赦なく光は入ってくるもので、仕方がなく諦めて布団から起き上がる。
ふあ、と欠伸をしながら布団を畳み、戸を開ける。そうすると今度は完全に朝日が差し込むものだから、思わず呻いてしまった。
「ああ、鶴丸さま。おはようございます」
山ほどの洗濯物を持った平野が、部屋から出てきた鶴丸に気がつき挨拶をする。もはや前など見えなそうではあるが、気配を察したらしい。おはよう、と挨拶を返しつつ、鶴丸は平野が抱えていた荷物を半分持ってやった。
「平野は働き者だ」
「そんなことはありませんよ。これだって、僕たち粟田口部屋のものですからね」
24391これは肉体を得る前にはなかった感覚で、鶴丸は自分の目を手で覆った。それでも隙間から容赦なく光は入ってくるもので、仕方がなく諦めて布団から起き上がる。
ふあ、と欠伸をしながら布団を畳み、戸を開ける。そうすると今度は完全に朝日が差し込むものだから、思わず呻いてしまった。
「ああ、鶴丸さま。おはようございます」
山ほどの洗濯物を持った平野が、部屋から出てきた鶴丸に気がつき挨拶をする。もはや前など見えなそうではあるが、気配を察したらしい。おはよう、と挨拶を返しつつ、鶴丸は平野が抱えていた荷物を半分持ってやった。
「平野は働き者だ」
「そんなことはありませんよ。これだって、僕たち粟田口部屋のものですからね」
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DOODLEもうすぐ折れてしまう一振り目の鶴丸と大倶利伽羅を見守る二振り目の鶴丸の話です。ドッペルゲンガー、恋を知る。第一話 ――きみは、ドッペルゲンガーというものを知っているだろうか。
まあ、そうだろうな。
簡単に説明してしまえば、自分そっくりの姿をした分身、幻覚の一種ってもんらしい。面白いのは、自分のドッペルゲンガーを2回見たやつは死んでしまうっていう噂だ。もちろん、噂に過ぎない。本物のドッペルゲンガーは周囲の人間と会話をしないらしいしな。ま、残念ながら俺も、本物のドッペルゲンガーを見たやつと会ったことはないが。
訳がわからない、という顔をしているな。俺たちもそうだった。「それ」が現れたのは唐突で、どうしたらいいのか、俺たちも、主も、わかるはずがなかった。ただひとつ確かなのは、「それ」が現れたら、近いうちに同じ姿をした者は折れてしまう。だから便宜上、俺たちは「それ」をドッペルゲンガーと呼んだ。
37160まあ、そうだろうな。
簡単に説明してしまえば、自分そっくりの姿をした分身、幻覚の一種ってもんらしい。面白いのは、自分のドッペルゲンガーを2回見たやつは死んでしまうっていう噂だ。もちろん、噂に過ぎない。本物のドッペルゲンガーは周囲の人間と会話をしないらしいしな。ま、残念ながら俺も、本物のドッペルゲンガーを見たやつと会ったことはないが。
訳がわからない、という顔をしているな。俺たちもそうだった。「それ」が現れたのは唐突で、どうしたらいいのか、俺たちも、主も、わかるはずがなかった。ただひとつ確かなのは、「それ」が現れたら、近いうちに同じ姿をした者は折れてしまう。だから便宜上、俺たちは「それ」をドッペルゲンガーと呼んだ。
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DOODLEシール帳の話文具沼住人な大倶利伽羅くんと本の虫な鶴丸さん③ 大倶利伽羅の部屋には、彼にはなかなか似合っているとは言い難い可愛らしいシール帳が一冊存在している。どうやらこれは乱藤四郎にプレゼントされたものらしい。
この本丸の大倶利伽羅と乱は仲がいい。と思う。と言ったらきっと大倶利伽羅はいつものように馴れ合うつもりはないと主張するから敢えて言うことはなかったが、鶴丸からしてみてみればふたりは仲がいい。
大倶利伽羅は乱の次に顕現したようで、乱は大いに彼を構ったという。残念ながら鶴丸が顕現したのはそれから半年も後のことだからその光景を見ることが叶わなかったのが残念なところである。
大倶利伽羅ほどではないが乱も文具の類が好きだ。彼が回覧板の類を回すとき決まって小さなカードにささやかなメッセージを書いて挟んでいるのを微笑ましく思っている。そういうやりとりをするのはたいてい、顕現順の都合もあり大倶利伽羅とだった。大倶利伽羅の文具沼入りの原因は彼にもある気がする。
926この本丸の大倶利伽羅と乱は仲がいい。と思う。と言ったらきっと大倶利伽羅はいつものように馴れ合うつもりはないと主張するから敢えて言うことはなかったが、鶴丸からしてみてみればふたりは仲がいい。
大倶利伽羅は乱の次に顕現したようで、乱は大いに彼を構ったという。残念ながら鶴丸が顕現したのはそれから半年も後のことだからその光景を見ることが叶わなかったのが残念なところである。
大倶利伽羅ほどではないが乱も文具の類が好きだ。彼が回覧板の類を回すとき決まって小さなカードにささやかなメッセージを書いて挟んでいるのを微笑ましく思っている。そういうやりとりをするのはたいてい、顕現順の都合もあり大倶利伽羅とだった。大倶利伽羅の文具沼入りの原因は彼にもある気がする。
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DOODLE詩集の話文具沼住人な大倶利伽羅くんと本の虫な鶴丸さん② 大倶利伽羅は主曰く、「文具沼の住人」である。鶴丸としてはいまいちよくわからないが、とにかく文具が好きで好きでたまらない者のことをそういうそうだ。対して鶴丸は、「本の虫」と呼ばれる。暇さえあれば部屋に積んだ本を読み耽り、一日を過ごすのだ。本の中は身近な驚きがたくさん詰まっている。
なにか本を貸してくれ。
大倶利伽羅がそう頼んでくるのは、そう珍しいことではない。特に新しいペンやインクを買ったときなど、その書き心地を試すため短歌や詩などの短い文章を書いてみたりするのだ。そういうとき、鶴丸は似合いの本を選ぶのが好きだった。
大倶利伽羅が今回買ってきたのは、夕焼けの空を思わせるガラスペンだった。軸は短く丸みを帯びていて、大倶利伽羅にしては可愛らしさを感じる一品である。
1139なにか本を貸してくれ。
大倶利伽羅がそう頼んでくるのは、そう珍しいことではない。特に新しいペンやインクを買ったときなど、その書き心地を試すため短歌や詩などの短い文章を書いてみたりするのだ。そういうとき、鶴丸は似合いの本を選ぶのが好きだった。
大倶利伽羅が今回買ってきたのは、夕焼けの空を思わせるガラスペンだった。軸は短く丸みを帯びていて、大倶利伽羅にしては可愛らしさを感じる一品である。
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DOODLEインクの話文具沼住人な大倶利伽羅くんと本の虫な鶴丸さん① 大倶利伽羅の部屋は物が多い。とにかく、物が多い。綺麗に整頓されているから散らかっているという印象は受けないのだが、私物の多さでいったらおそらく本丸一ではないかと鶴丸は思っている。
まず、万年筆だけで三十はある。そのほかにも、ボールペンだとかガラスペンだとか、書く道具だけでかなりの数になるのだ。それらは綺麗にケースに納められていて、大倶利伽羅は非番の日によくそれを眺めていた。表情筋が硬くなかったらそこに笑顔が浮かんでいたかもしれない。
筆よりも現代に出てきた筆記用具の方を好むようで、よく自分のノート(これもまた、大量にあるのだ)に和歌や漢詩を書き写している。書いている内容には興味なく、ただ書く題材として選んでいるだけのようで、真顔で恋の歌を書き写していたときは、流石の鶴丸も驚いた。
1338まず、万年筆だけで三十はある。そのほかにも、ボールペンだとかガラスペンだとか、書く道具だけでかなりの数になるのだ。それらは綺麗にケースに納められていて、大倶利伽羅は非番の日によくそれを眺めていた。表情筋が硬くなかったらそこに笑顔が浮かんでいたかもしれない。
筆よりも現代に出てきた筆記用具の方を好むようで、よく自分のノート(これもまた、大量にあるのだ)に和歌や漢詩を書き写している。書いている内容には興味なく、ただ書く題材として選んでいるだけのようで、真顔で恋の歌を書き写していたときは、流石の鶴丸も驚いた。
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DOODLE手入れバグの話金繕い 手入れバグ、なのだという。
「いつ直るのかはわからんが、まあ、血は止まっているから問題はなさそうだな」
そういって鶴丸は傷口を撫でた。
本来ならば、手入れ部屋に入ればそこは再生されるはずである。しかし今は、痛々しいほどの傷跡が残っていた。出血が多かったのか頭がぐらぐらすると鶴丸は枕から頭を起こすこともできない。手入れ直後の貧血症状は珍しいことではなく、これについては深く気にする必要はなさそうだった。
大倶利伽羅は、ゆっくりと傷口を撫でる。
「痛むか」
「いいや。それについては問題ない」
傷口は硬い。まるで瘡蓋のようであったが、異なるのは傷口が輝いていることだ。金継ぎのように、鶴丸の傷口は金色に光っている。鶴丸の白い肌に、金はよく映えた。
1417「いつ直るのかはわからんが、まあ、血は止まっているから問題はなさそうだな」
そういって鶴丸は傷口を撫でた。
本来ならば、手入れ部屋に入ればそこは再生されるはずである。しかし今は、痛々しいほどの傷跡が残っていた。出血が多かったのか頭がぐらぐらすると鶴丸は枕から頭を起こすこともできない。手入れ直後の貧血症状は珍しいことではなく、これについては深く気にする必要はなさそうだった。
大倶利伽羅は、ゆっくりと傷口を撫でる。
「痛むか」
「いいや。それについては問題ない」
傷口は硬い。まるで瘡蓋のようであったが、異なるのは傷口が輝いていることだ。金継ぎのように、鶴丸の傷口は金色に光っている。鶴丸の白い肌に、金はよく映えた。
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DOODLEひとつの箱の、前日譚鶴丸国永の宝箱 美しいものを見た。
「……飽きないのか」
「飽きないねえ」
大倶利伽羅が呆れた声を出すのを、鶴丸は笑って返す。
話している間も、大倶利伽羅は手元から手を離さない。
手入れの最中である。
怪我によるものではない。己の刀を手入れしているのだ。審神者は物の心を聴くことができたが、かといって刀の扱いに関して詳しいわけではない。そのため、打粉などを用いての刀の手入れは自分の手で行う。
鶴丸は、大倶利伽羅が手入れしている姿を見るのが好きだった。大倶利伽羅もそれがわかっているから、もう諦めて追い返すことはしない。眺めている時、鶴丸が静かにしているせいかもしれない。ぶっきらぼうだが、優しい男だ。
「美しいな」
彫られた龍の、美しいこと。
2272「……飽きないのか」
「飽きないねえ」
大倶利伽羅が呆れた声を出すのを、鶴丸は笑って返す。
話している間も、大倶利伽羅は手元から手を離さない。
手入れの最中である。
怪我によるものではない。己の刀を手入れしているのだ。審神者は物の心を聴くことができたが、かといって刀の扱いに関して詳しいわけではない。そのため、打粉などを用いての刀の手入れは自分の手で行う。
鶴丸は、大倶利伽羅が手入れしている姿を見るのが好きだった。大倶利伽羅もそれがわかっているから、もう諦めて追い返すことはしない。眺めている時、鶴丸が静かにしているせいかもしれない。ぶっきらぼうだが、優しい男だ。
「美しいな」
彫られた龍の、美しいこと。
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DOODLEひとつの箱の話大倶利伽羅のカラクリ箱 鶴丸の部屋には一つ、カラクリ箱が置いてある。四角い、木製の小さな箱だ。鶴丸は時たまそれを開けようと挑戦していたが、うまくいかないようだった。
「昔は、開いたんだがな。仕掛けがどこかで引っ掛かっているのかもしれん」
箱はなにか入っているようで、中で硬い物がぶつかる音がする。
「まあ、今はきみを育てるので忙しいしな」
にっと鶴丸は笑う。
大倶利伽羅はこの本丸の中では比較的遅い顕現である。そのため、日々この鶴丸によって厳しく鍛えられていた。鶴丸の練度は頭打ちで、今は出陣よりも新人教育の方に深く携わっている。
「貰い物だったんだ。何度もひっくり返して、いじって、初めて開けられたときはそれはもう驚きだったものさ」
1995「昔は、開いたんだがな。仕掛けがどこかで引っ掛かっているのかもしれん」
箱はなにか入っているようで、中で硬い物がぶつかる音がする。
「まあ、今はきみを育てるので忙しいしな」
にっと鶴丸は笑う。
大倶利伽羅はこの本丸の中では比較的遅い顕現である。そのため、日々この鶴丸によって厳しく鍛えられていた。鶴丸の練度は頭打ちで、今は出陣よりも新人教育の方に深く携わっている。
「貰い物だったんだ。何度もひっくり返して、いじって、初めて開けられたときはそれはもう驚きだったものさ」
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DOODLE甘ったれ鶴丸の話鶴丸国永を甘やかさないと出られない部屋「ここを鶴丸国永を甘やかさないと出られない部屋とする!」
と、鶴丸は部屋にやってきて早々に、そう宣言した。
ここ数日の鶴丸は、ひたすらにただ出陣を繰り返す毎日である。浮かぶは赤披露。いくら戦が好きといえど限度がある。
今も耳の奥で派手な音楽が鳴り響いているぜ、と文句を言いながら畳の上に座り込んだ。楽器兵とかいう、此度の戦で与えられた特別な兵装の影響だろう。
俺は、と悩みつつ大倶利伽羅は口を開いた。
「……俺は、割と、あんたに対して甘いと思う」
「驚いた! 自覚があったんだな」
鶴丸はまんまるに目を見開いた。
けれど、ち、ち、と指を振る。
「甘いだけじゃダメなんだよ。『甘やかす』っていうのが大事なのさ」
661と、鶴丸は部屋にやってきて早々に、そう宣言した。
ここ数日の鶴丸は、ひたすらにただ出陣を繰り返す毎日である。浮かぶは赤披露。いくら戦が好きといえど限度がある。
今も耳の奥で派手な音楽が鳴り響いているぜ、と文句を言いながら畳の上に座り込んだ。楽器兵とかいう、此度の戦で与えられた特別な兵装の影響だろう。
俺は、と悩みつつ大倶利伽羅は口を開いた。
「……俺は、割と、あんたに対して甘いと思う」
「驚いた! 自覚があったんだな」
鶴丸はまんまるに目を見開いた。
けれど、ち、ち、と指を振る。
「甘いだけじゃダメなんだよ。『甘やかす』っていうのが大事なのさ」
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DOODLE寝相が悪い鶴丸の話夢遊 大倶利伽羅が顕現する前、当初光忠は鶴丸とふたり部屋だったのだという。
しかし鶴丸の寝相がかなり悪く、そのせいで光忠は夜に眠れなくなってしまった。光忠は朝餉の支度のため朝早く起きることが多く、鶴丸の寝相によって夜起こされるのは辛い。ごろんごろんと布団から転がり出る鶴丸に対しては呆れと心配がある。特に冬場などは鶴丸が布団から転がり出て風邪を引いてしまうのではという不安から、余計寝付けなくなってしまった。
そんなときに顕現したのが大倶利伽羅である。大倶利伽羅は鶴丸との付き合いが長く、鶴丸が布団から転がりでれば足蹴にして布団へ戻せるくらいには遠慮がない。
かくして光忠は鶴丸との相部屋を解消し、その代わりに大倶利伽羅がそこへ収まることになった。
518しかし鶴丸の寝相がかなり悪く、そのせいで光忠は夜に眠れなくなってしまった。光忠は朝餉の支度のため朝早く起きることが多く、鶴丸の寝相によって夜起こされるのは辛い。ごろんごろんと布団から転がり出る鶴丸に対しては呆れと心配がある。特に冬場などは鶴丸が布団から転がり出て風邪を引いてしまうのではという不安から、余計寝付けなくなってしまった。
そんなときに顕現したのが大倶利伽羅である。大倶利伽羅は鶴丸との付き合いが長く、鶴丸が布団から転がりでれば足蹴にして布団へ戻せるくらいには遠慮がない。
かくして光忠は鶴丸との相部屋を解消し、その代わりに大倶利伽羅がそこへ収まることになった。
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DOODLE政府所属の訳ありふたりプロローグ 鶴丸国永はアトリエを持っている。
色鉛筆。クレヨン。水彩絵の具。
画材は問わない。時たま、アトリエに籠もっては、一心不乱になにかを描いている。なにを描いているのかどうかは、大倶利伽羅にはわからない。なにせ、鶴丸の描く絵はいつだって真っ白なのだ。何度も何度も、手を動かし白を塗りつぶしていく。そうして、満足した絵を、金色の額縁にいれて飾るのだ。
いつからそうなのか、ということも大倶利伽羅は知らなかった。ここは刀剣男士の保養所であり、かつては本丸所属ではあったものの事情があって引き取られてきた刀剣男士の仮初めの居場所だった。大倶利伽羅がこの施設にやってきたときには既に鶴丸はアトリエを持ち、作品を作っていた。
3179色鉛筆。クレヨン。水彩絵の具。
画材は問わない。時たま、アトリエに籠もっては、一心不乱になにかを描いている。なにを描いているのかどうかは、大倶利伽羅にはわからない。なにせ、鶴丸の描く絵はいつだって真っ白なのだ。何度も何度も、手を動かし白を塗りつぶしていく。そうして、満足した絵を、金色の額縁にいれて飾るのだ。
いつからそうなのか、ということも大倶利伽羅は知らなかった。ここは刀剣男士の保養所であり、かつては本丸所属ではあったものの事情があって引き取られてきた刀剣男士の仮初めの居場所だった。大倶利伽羅がこの施設にやってきたときには既に鶴丸はアトリエを持ち、作品を作っていた。
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DOODLE負傷による不具合のある大倶利伽羅の話能面の男 大倶利伽羅がある出陣の際に負った負傷でちょっとした不具合が発生していたことに気がついたのはそれから半月後のことである。もっともそれが本当に不具合だったのか心理的な問題があったのか鶴丸は知る由もなかった。
半月ほど前に一振り目の鶴丸国永が折れた。当然のことながら戦の最中のことで、それはそれは勇猛果敢に敵に斬りかかり大将と相打ちになった末とのことである。大倶利伽羅はそのとき同じ部隊にいたそうだ。
――なんだ、その顔は。
二振り目である鶴丸が初めて大倶利伽羅と会ったとき、彼は呆気に取られた顔をした。
その顔とは。
挨拶もする機会を失い、鶴丸は自分の顔に触れる。
目も、鼻も、口もない。
気味の悪い物を見るかのように大倶利伽羅は鶴丸を一瞥する。
1731半月ほど前に一振り目の鶴丸国永が折れた。当然のことながら戦の最中のことで、それはそれは勇猛果敢に敵に斬りかかり大将と相打ちになった末とのことである。大倶利伽羅はそのとき同じ部隊にいたそうだ。
――なんだ、その顔は。
二振り目である鶴丸が初めて大倶利伽羅と会ったとき、彼は呆気に取られた顔をした。
その顔とは。
挨拶もする機会を失い、鶴丸は自分の顔に触れる。
目も、鼻も、口もない。
気味の悪い物を見るかのように大倶利伽羅は鶴丸を一瞥する。
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DOODLE小さくなっちゃった鶴丸の話手のひらの上 鶴さんが小さくなっちゃった!
遠征から帰還したばかりの大倶利伽羅を出迎えたのは慌てた様子の太鼓鐘と、そんな言葉だった。
「どういうことだ」
鶴丸は確か、大倶利伽羅が出立するよりも先に出陣に出ていたはずだ。大倶利伽羅は遠征先で手に入れてきた資材を仲間に預け、太鼓鐘とともに足早に移動する。
「鶴さんが出陣先で負傷してさ。それ自体は軽傷だったんだけど。手入れ部屋に入って、手入れ終わってもなかなか出てこないなと思ったら鶴さんの身体が縮んでたんだよ」
ほら、前、別の本丸でも太刀が短刀くらいちっちゃくなったっていうバグがあっただろ。ああいう感じでさ。
そう言われ、そういえばと記憶を掘り返す。あれは半年ぐらい前のことだっただろうか。時間経過とともにまた元の大きさに戻ったという話だが、注意喚起として本丸に通達があったのだ。
2107遠征から帰還したばかりの大倶利伽羅を出迎えたのは慌てた様子の太鼓鐘と、そんな言葉だった。
「どういうことだ」
鶴丸は確か、大倶利伽羅が出立するよりも先に出陣に出ていたはずだ。大倶利伽羅は遠征先で手に入れてきた資材を仲間に預け、太鼓鐘とともに足早に移動する。
「鶴さんが出陣先で負傷してさ。それ自体は軽傷だったんだけど。手入れ部屋に入って、手入れ終わってもなかなか出てこないなと思ったら鶴さんの身体が縮んでたんだよ」
ほら、前、別の本丸でも太刀が短刀くらいちっちゃくなったっていうバグがあっただろ。ああいう感じでさ。
そう言われ、そういえばと記憶を掘り返す。あれは半年ぐらい前のことだっただろうか。時間経過とともにまた元の大きさに戻ったという話だが、注意喚起として本丸に通達があったのだ。
🌸🌸🌸
DOODLE性癖の話灼熱地獄 大倶利伽羅が湯浴みをしたあとに部屋へ戻ると、ちょうど同室である鶴丸が羽織を脱いでいる最中だった。
「おかえり」
頷きながら戸を閉める。鶴丸は昨日から遠征へ出ていたので、どちらかといえばその言葉を使うのは大倶利伽羅の方ではないかという思いも一瞬あったのだが、結局言わずに終わった。持っていた洗面用具を置き、再度部屋を出る。遠征に出ていた者のために残されていた食事と、お茶の入ったポットを手に取り、部屋へと戻った。大倶利伽羅が持っているものに気がついた鶴丸が、ぱっと顔を輝かせる。
「ありがとよ。もうくたくただ」
戦闘になるようなことはなかったのだろうが、退屈を嫌うこの男のことだ。何もない方が辛かったに違いない。ほぼ全裸の状態で大倶利伽羅の持ってきた握り飯に手を伸ばす。
1632「おかえり」
頷きながら戸を閉める。鶴丸は昨日から遠征へ出ていたので、どちらかといえばその言葉を使うのは大倶利伽羅の方ではないかという思いも一瞬あったのだが、結局言わずに終わった。持っていた洗面用具を置き、再度部屋を出る。遠征に出ていた者のために残されていた食事と、お茶の入ったポットを手に取り、部屋へと戻った。大倶利伽羅が持っているものに気がついた鶴丸が、ぱっと顔を輝かせる。
「ありがとよ。もうくたくただ」
戦闘になるようなことはなかったのだろうが、退屈を嫌うこの男のことだ。何もない方が辛かったに違いない。ほぼ全裸の状態で大倶利伽羅の持ってきた握り飯に手を伸ばす。
花咲流奈
PAST竜咲7で無料配布した『歌劇本丸備忘録〜すえひろがり編〜』からの再録です。くりつるで終演後の一コマ。注意*あくまでも『とある歌劇本丸』であり実在のミュ本丸とは一切関係ありません。
パス→竜咲7開催日(月日/数字4桁) 1078
花咲流奈
PAST竜咲7で無料配布した『歌劇本丸備忘録〜すえひろがり編〜』からの再録です。いち兄視点でいち兄・鬼丸から見たくりつるの掌編になります。注意*あくまで『とある歌劇本丸』であり実在のミュ本丸とは一切関係ありません。
パス→竜咲7開催日(月日/数字4桁) 1798
鈴之助
DONEくりつるwebオンリー【めくり綴る恋調べ3】の展示作品です。
付き合って少し経った二振りと花冠の話
※ネットプリントの案内も合わせて掲載しています。
■支部にも掲載しました。
(https://www.pixiv.net/artworks/106550913)
後日、ツイッターにて全文掲載予定 11
艾(もぐさ)
PAST第三者視点や写り込み・匂わせ自カプ好きが高じた結果。別キャラメインの話に写り込むタイプのくりつるです。
村雲(&江)+鶴丸。村雲視点&一人称。
別題:寒がり鶴と、腹痛犬の恩返し。
この他、創作独自本丸・演練設定捏造など盛り込んでます。
鶴丸が村雲推し。つまりは本当になんでも許せる人向け。
※作中に出てくるメンカラーは三ュのものをお借りしていますが、三ュ本丸の物語は全く関係ない別本丸です。
【後夜祭/鍵開け】わんだふるアウトサイド ここの鶴丸国永は、寒がりだ。
とは、俺がこの本丸にやってきて数日経った日、同じ馬当番に当たった日に彼から教えてもらったことだ。
「鶴の名を冠しておきながらこれじゃあ、格好つかんだろう?」
内緒だぜ、と少しばかり気恥しそうに言った彼に、じゃあ何で縁もゆかりも無い俺に、と表情─どころか声に─出してしまったところ、彼はさして気にした風もなく「気候から来る腹痛なら気軽に相談してくれよ」と笑った。心から来るものには力になれないかもしれないが、とも。
それだけで、上手くやっていけそうかも、とお腹の奥底、捻れた痛みが和らいだのを覚えてる。
実際、彼が寒がりだということを知っている仲間は少なかった。彼と同じ所に長く在ったという刀が幾振りか。察しがよく気付いている風な刀もいたけれど、そういった刀達はわざわざ口や手を出そうとしていないようだった。それは、彼が寒さを凌ぐことに関してとても上手だったからかもしれない。
16066とは、俺がこの本丸にやってきて数日経った日、同じ馬当番に当たった日に彼から教えてもらったことだ。
「鶴の名を冠しておきながらこれじゃあ、格好つかんだろう?」
内緒だぜ、と少しばかり気恥しそうに言った彼に、じゃあ何で縁もゆかりも無い俺に、と表情─どころか声に─出してしまったところ、彼はさして気にした風もなく「気候から来る腹痛なら気軽に相談してくれよ」と笑った。心から来るものには力になれないかもしれないが、とも。
それだけで、上手くやっていけそうかも、とお腹の奥底、捻れた痛みが和らいだのを覚えてる。
実際、彼が寒がりだということを知っている仲間は少なかった。彼と同じ所に長く在ったという刀が幾振りか。察しがよく気付いている風な刀もいたけれど、そういった刀達はわざわざ口や手を出そうとしていないようだった。それは、彼が寒さを凌ぐことに関してとても上手だったからかもしれない。
艾(もぐさ)
PAST最後の日に食べたいものについての話。軽くですがカニバリズムの表現・話が出てくるので苦手な方は注意。文庫メーカーを使って短い話を書きたかった。
22'4.26 ぷらいべったー初掲
パスワードは綴恋内スペースに掲載しています。
【後夜祭/鍵開け】最後の食事も、君と「最後の日には何が食べたい?」
そう言い出したのは燭台切で、元を辿れば防人作戦という何の先触れもなく始まったそれの痕跡を引きずり、いつとも知れない最後の日を誰ともなく憂い始めたのが切欠だった。七年も過ごしていれば切替えも早いもので、投げられた正答等ない戯れに皆くすくす笑ってああでもないこうでもない、と話に花を咲かせていく。何より肉の器とは、こと食に関しては正直なものだ。
「伽羅坊は何が食べたい?」
鶴丸が、傍らの大倶利伽羅に訊く。カップのバニラアイスを黙々と食べ進めていた大倶利伽羅は、顔を上げ鶴丸を見たままじっと考える素振りをすると、そのまま鶴丸を指差した。
「人を指差すのは行儀が悪いぜ?」
「アンタもするだろう。」
1767そう言い出したのは燭台切で、元を辿れば防人作戦という何の先触れもなく始まったそれの痕跡を引きずり、いつとも知れない最後の日を誰ともなく憂い始めたのが切欠だった。七年も過ごしていれば切替えも早いもので、投げられた正答等ない戯れに皆くすくす笑ってああでもないこうでもない、と話に花を咲かせていく。何より肉の器とは、こと食に関しては正直なものだ。
「伽羅坊は何が食べたい?」
鶴丸が、傍らの大倶利伽羅に訊く。カップのバニラアイスを黙々と食べ進めていた大倶利伽羅は、顔を上げ鶴丸を見たままじっと考える素振りをすると、そのまま鶴丸を指差した。
「人を指差すのは行儀が悪いぜ?」
「アンタもするだろう。」
艾(もぐさ)
PAST第一回綴恋合せ展示用小説。突然ハムスター化した伽と、それについては心配するでもなく一緒にいる鶴の小噺。まだデキてない2人。創作動物審神者がいます&喋ります注意。捏造は言わずもがなです。22'3.27 ぷらいべったー初掲
パスワードは綴恋内スペースに掲載しています。
【後夜祭/鍵開け】君と食む星 伽羅坊がハムスターになった。
何故なったのか、と聞かれても分からない。朝起きて、畑当番の用意をして、朝ご飯を食べ、冬でもたくましく芽吹こうとする名も無き雑草たちを間引き土を作り、さて春に向けての苗を──と立ち上がったところで、何やら足袋を引っ張られる感触があるなぁと思ったら足元にハムスターがいた。
小さくふくよかで、野鼠とするには頼りない焦げ茶のそのかたまりを目にした瞬間、何でこんなところに、と考えるより早く思った。
あ、伽羅坊だこれ。と。
「伽羅坊?」
悩むより聞くのが早い。呼びかければ、ハムスターもとい、伽羅坊は小さく「ぢっ」と鳴いた。ハムスターの基本的な鳴き方自体は鼠と変わらないからこれが普通なんだろうが、すこぶる不機嫌極まりなさそうなそれにくつくつ笑いが込み上げる。見れば、小さな耳の下は微かに赤毛が混じっていた。ああ、やっぱり伽羅坊だ。
22143何故なったのか、と聞かれても分からない。朝起きて、畑当番の用意をして、朝ご飯を食べ、冬でもたくましく芽吹こうとする名も無き雑草たちを間引き土を作り、さて春に向けての苗を──と立ち上がったところで、何やら足袋を引っ張られる感触があるなぁと思ったら足元にハムスターがいた。
小さくふくよかで、野鼠とするには頼りない焦げ茶のそのかたまりを目にした瞬間、何でこんなところに、と考えるより早く思った。
あ、伽羅坊だこれ。と。
「伽羅坊?」
悩むより聞くのが早い。呼びかければ、ハムスターもとい、伽羅坊は小さく「ぢっ」と鳴いた。ハムスターの基本的な鳴き方自体は鼠と変わらないからこれが普通なんだろうが、すこぶる不機嫌極まりなさそうなそれにくつくつ笑いが込み上げる。見れば、小さな耳の下は微かに赤毛が混じっていた。ああ、やっぱり伽羅坊だ。
艾(もぐさ)
PAST冒頭を相方に投げて、貰った要素を組み込んで仕上げた小噺。大侵寇対策プログラム中盤ネタで赤疲労鶴とスパダリ属性伽羅。プラス伊達のメンタルお兄ちゃん燭台切。
22'3.11 ぷらいべったー初掲
パスワードは綴恋内スペースに掲載しています。
【後夜祭/鍵開け】龍の一声 十九万六千三百一。
その数字を稼げば、自身の練度は一段階上がるのだと言う。
その練度を表すのも、また数字。
思えば数字を追ってきた道のりだった。数を集め、数を稼ぎ、数を掘り進め。そうして今、数を狩っている。その数を狩るのにだって、数を消費する事が前提というのだからお笑い草だ。
千五百だか、五千だか。
政府も何を考えているのやら、敵を巨大化させたと思ったらまた数を課す。数打ちゃ当たる、とでも言いたいのか。この場合の数とは何を指すのか分かり兼ねるし、分かりたいとも思わないが。
終いには推定で億ときたモンだ。
億って。流石に途方も無さすぎてピンと来ない。己の本体を鑑定に出せばそれくらいいくだろうか。
14391その数字を稼げば、自身の練度は一段階上がるのだと言う。
その練度を表すのも、また数字。
思えば数字を追ってきた道のりだった。数を集め、数を稼ぎ、数を掘り進め。そうして今、数を狩っている。その数を狩るのにだって、数を消費する事が前提というのだからお笑い草だ。
千五百だか、五千だか。
政府も何を考えているのやら、敵を巨大化させたと思ったらまた数を課す。数打ちゃ当たる、とでも言いたいのか。この場合の数とは何を指すのか分かり兼ねるし、分かりたいとも思わないが。
終いには推定で億ときたモンだ。
億って。流石に途方も無さすぎてピンと来ない。己の本体を鑑定に出せばそれくらいいくだろうか。
花咲流奈
DOODLEくりつる。バレンタイン掌編。スパダリ系伽羅ちゃんと初心寄り個体な鶴さんでお送りします。バレンタインに双騎アーカイブ配信とかやられたら何か書かなくては……となって突貫で仕上げました。※女審神者がチラッといます。それにしても懐かしい曲名をタイトルに引っ張り出してしまった……ちょこっとLove『今日はチョコを贈る日なのよ。外国の聖人が由来で愛する人に贈り物をする日って言うのが、日本ではお菓子会社の戦略で好きな人にチョコを贈ろうってなって、それがいつからか大切なひとやお世話になったひと、かなり広範囲にチョコを贈る日として根付いたってわけ。まあ、今でも好きなひとにチョコをっていうのが大部分を占めるけど……常日頃からお世話になってるし、頑張ってくれてるきみたちに感謝のチョコを贈りたいなって思ったのがうちの本丸でのバレンタインのきっかけだよ』
鶴丸が顕現して初めての2月14日。
風呂上がりに呼び止められ、手のひらに『いつもありがとう』と感謝と労いの言葉を込めて審神者が菓子を乗せてくれたことへの疑問を口にした返答がそれだった。
2081鶴丸が顕現して初めての2月14日。
風呂上がりに呼び止められ、手のひらに『いつもありがとう』と感謝と労いの言葉を込めて審神者が菓子を乗せてくれたことへの疑問を口にした返答がそれだった。
花咲流奈
DOODLEくりつる(未満)。ある本丸から保護された鶴丸と政府所属の大倶利伽羅の『音楽』を通して始まるかもしれない物語。演奏会で再燃したピアノ弾き伽羅ちゃんの妄想から書き殴りました。*読み手を選ぶ表現あり 1496ゆうなぎ
PAST以前発行したコピー本「つれづれびより。」です。『めくり綴るは恋調べ』webオンリーの開催記念に、ひっぱりだしてみました。
第0回の時に期間限定でpass公開していましたが、せっかくなので展示します。
いつでもゆっくり見られるようにしておきますね。
(その内Pixivの方に多少直したものをupできたら…と思いつつ幾星霜…)
短いですが、楽しんでいただけましたら、幸いです。 18
silver02cat
DONEくりつる6日間チャレンジ2日目だよ〜〜〜〜〜!!ポイピク小説対応したの知らんかった〜〜〜〜〜!!
切望傍らに膝をついた大倶利伽羅の指先が、鶴丸の髪の一房に触れた。
「…………つる、」
ほんの少し甘さを滲ませながら、呼ばれる名前。
はつり、と瞬きをひとつ。
「…………ん、」
静かに頷いた鶴丸を見て、大倶利伽羅は満足そうに薄く笑うと、背を向けて行ってしまった。じんわりと耳の縁が熱を持って、それから、きゅう、と、膝の上に置いたままの両手を握り締める。ああ、それならば、明日の午前の当番は誰かに代わってもらわなくては、と。鶴丸も立ち上がって、その場を後にする。
髪を一房。それから、つる、と呼ぶ一声。
それが、大倶利伽羅からの誘いの合図だった。
あんまりにも直接的に、抱きたい、などとのたまう男に、もう少し風情がある誘い方はないのか、と、照れ隠し半分に反抗したのが最初のきっかけだった気がする。その日の夜、布団の上で向き合った大倶利伽羅が、髪の一房をとって、そこに口付けて、つる、と、随分とまあ切ない声で呼ぶものだから、完敗したのだ。まだまだ青さの滲むところは多くとも、その吸収率には目を見張るものがある。少なくとも、鶴丸は大倶利伽羅に対して、そんな印象を抱いていた。いやまさか、恋愛ごとに関してまで、そうだとは思ってもみなかったのだけれど。かわいいかわいい年下の男は、その日はもう本当に好き勝手にさせてやったものだから、味を占めたらしく。それから彼が誘いをかけてくるときは、必ずその合図を。まるで、儀式でもあるかのようにするようになった。
1312「…………つる、」
ほんの少し甘さを滲ませながら、呼ばれる名前。
はつり、と瞬きをひとつ。
「…………ん、」
静かに頷いた鶴丸を見て、大倶利伽羅は満足そうに薄く笑うと、背を向けて行ってしまった。じんわりと耳の縁が熱を持って、それから、きゅう、と、膝の上に置いたままの両手を握り締める。ああ、それならば、明日の午前の当番は誰かに代わってもらわなくては、と。鶴丸も立ち上がって、その場を後にする。
髪を一房。それから、つる、と呼ぶ一声。
それが、大倶利伽羅からの誘いの合図だった。
あんまりにも直接的に、抱きたい、などとのたまう男に、もう少し風情がある誘い方はないのか、と、照れ隠し半分に反抗したのが最初のきっかけだった気がする。その日の夜、布団の上で向き合った大倶利伽羅が、髪の一房をとって、そこに口付けて、つる、と、随分とまあ切ない声で呼ぶものだから、完敗したのだ。まだまだ青さの滲むところは多くとも、その吸収率には目を見張るものがある。少なくとも、鶴丸は大倶利伽羅に対して、そんな印象を抱いていた。いやまさか、恋愛ごとに関してまで、そうだとは思ってもみなかったのだけれど。かわいいかわいい年下の男は、その日はもう本当に好き勝手にさせてやったものだから、味を占めたらしく。それから彼が誘いをかけてくるときは、必ずその合図を。まるで、儀式でもあるかのようにするようになった。