かがみのせなか
DONE令和悪魔くん3️⃣🚥です。バレンタインに間に合わなかった…
放課後 校内を案内してくれる男性教師に、三人の女子生徒が通り過ぎざま「さようなら」と挨拶した。その一瞬で巧みに二人の情報を可能な限り集めると、興奮で口元を緩ませて友達同士で目配せし合った。
彼女らの目線は主に一郎に向けられている。
顔を寄せ合い囁き合う三人の後ろ姿をメフィスト三世が呆れながら振り返ると、油断して振り返った一人と目が合った。
生徒は気まずそうにさっと向き直り、友達に何やら報告してクスクスと笑った。
何を言われているのかは大体想像がつく。
「すみません騒がしくて。何にでも興味を持つ年齢なんですよ。」
「いえ気にしてません。」
そう謝る生徒指導担当と名乗る教師自身も、二人への興味でずっとそわそわしていた。
7679彼女らの目線は主に一郎に向けられている。
顔を寄せ合い囁き合う三人の後ろ姿をメフィスト三世が呆れながら振り返ると、油断して振り返った一人と目が合った。
生徒は気まずそうにさっと向き直り、友達に何やら報告してクスクスと笑った。
何を言われているのかは大体想像がつく。
「すみません騒がしくて。何にでも興味を持つ年齢なんですよ。」
「いえ気にしてません。」
そう謝る生徒指導担当と名乗る教師自身も、二人への興味でずっとそわそわしていた。
かがみのせなか
DONE令和悪魔くん。選択に後悔はないけれど、きっと誰よりも自分が一番よくわかっている。
積み木 昼下がりの温かい陽の光が差し込むリビングで、メフィスト二世はテーブルに座りコーヒーを飲みながら、目の前の光景をにこにこと眺めていた。
真吾と、幼い一郎と三世が向かい合って積木で遊んでいた。
真吾が積木を積んでみせ、二人に遊び方を教えている。
三世は三角の赤い積木をずっと離さない。積木を持った手をブンブン振っては、お口で遊んで涎だらけにしている。積木が大きく見えてしまう、息子のぷっくりした手が愛おしい。
「三世君はその積木がお気に入りだねぇ。」
優しく話しかける真吾に、生えかけの下の歯を見せてにっこり笑った。スタイに涎が垂れて、真吾は笑って口元を拭った。
一郎は、何やら一生懸命積木を集めていた。真吾が作った積木の家と、集めた積木を見比べている。
2310真吾と、幼い一郎と三世が向かい合って積木で遊んでいた。
真吾が積木を積んでみせ、二人に遊び方を教えている。
三世は三角の赤い積木をずっと離さない。積木を持った手をブンブン振っては、お口で遊んで涎だらけにしている。積木が大きく見えてしまう、息子のぷっくりした手が愛おしい。
「三世君はその積木がお気に入りだねぇ。」
優しく話しかける真吾に、生えかけの下の歯を見せてにっこり笑った。スタイに涎が垂れて、真吾は笑って口元を拭った。
一郎は、何やら一生懸命積木を集めていた。真吾が作った積木の家と、集めた積木を見比べている。
かがみのせなか
DONE令和悪魔くん。🚥さんが魔界で助けを求められて戦います。
先代と後継が協力し合って戦うの書きたいなと思って書きました。図らずも💯ちゃんが大活躍です。
重大な間違いがありそうで本当に怖いです。
まあいっか。
守護者 1
パンと破裂音が室内に響き、真吾はハッとして魔術書から顔を上げた。
高い天井に余韻が残る。
見えない学校を包んで張っている結界が侵入者を弾いたのだ。
真吾はじっと宙を見詰め、意識を集中させて状況を探った。暫くそのまま外の様子を窺っていたが無事に排除できたようで、再び結界が作動する気配は無かった。
ふっと短く息を吐き、魔術書に目を戻す。
東嶽大帝を退けて以降、各界は比較的安定し、ここ悪魔界でも、見えない学校と、学校を拠点とする悪魔くんや十二使徒を害しようとする悪魔はほとんどいなくなった。
たまに興味本位なのか見えない学校に侵入しようとする魔物が現れるが、結界に阻まれると素直に退散する。
35782パンと破裂音が室内に響き、真吾はハッとして魔術書から顔を上げた。
高い天井に余韻が残る。
見えない学校を包んで張っている結界が侵入者を弾いたのだ。
真吾はじっと宙を見詰め、意識を集中させて状況を探った。暫くそのまま外の様子を窺っていたが無事に排除できたようで、再び結界が作動する気配は無かった。
ふっと短く息を吐き、魔術書に目を戻す。
東嶽大帝を退けて以降、各界は比較的安定し、ここ悪魔界でも、見えない学校と、学校を拠点とする悪魔くんや十二使徒を害しようとする悪魔はほとんどいなくなった。
たまに興味本位なのか見えない学校に侵入しようとする魔物が現れるが、結界に阻まれると素直に退散する。
かがみのせなか
PAST令和悪魔くん。令嬢パロ🚥2️⃣。Xの、juni様の素敵な世界観より生まれしタグ『#令悪令嬢パロ三次創作』で書かせていただいた物です。
ピアノとヴァイオリン 広く長い廊下を歩く。
ステンドグラスで飾られた大きな窓は穏やかな午後の日差しを通して白い廊下の床を鮮やかに彩る。まるで花が咲いているかのようだ。
気の晴れた時ならば素直に感動もできよう。だが二世の目は華やかな仕掛けなどに向けられてはいなかった。
登城してからずっと第一王子である真吾を探している。
メフィスト公爵家の来訪の知らせがあれば、埋れ木王室の兄弟は揃って必ず迎えに現れる。だが、何故か今日は第二王子である一郎の姿しかなかった。
一郎に兄の所在を確かめるが、元々無口な一郎からはっきりした言葉を得ることができなかった。
一郎は首を傾げて一言、今日は元気がないとだけ答えた。
もう兄の方には用はないとばかりに視線を三世に向けると、ぎごちなく微笑み、細い手で三世の手を引く。
3288ステンドグラスで飾られた大きな窓は穏やかな午後の日差しを通して白い廊下の床を鮮やかに彩る。まるで花が咲いているかのようだ。
気の晴れた時ならば素直に感動もできよう。だが二世の目は華やかな仕掛けなどに向けられてはいなかった。
登城してからずっと第一王子である真吾を探している。
メフィスト公爵家の来訪の知らせがあれば、埋れ木王室の兄弟は揃って必ず迎えに現れる。だが、何故か今日は第二王子である一郎の姿しかなかった。
一郎に兄の所在を確かめるが、元々無口な一郎からはっきりした言葉を得ることができなかった。
一郎は首を傾げて一言、今日は元気がないとだけ答えた。
もう兄の方には用はないとばかりに視線を三世に向けると、ぎごちなく微笑み、細い手で三世の手を引く。
かがみのせなか
PAST令和悪魔くん。👓️ちゃん。エッちゃんの結婚式。
みんなで幸せになりたかった。
二世さんはエッちゃんの気持ちに気付いてくれると思います。
コンタクトレンズ トイレから戻ると、美容スタッフ達がエツ子を見て、笑顔でうんうんと頷いた。
「特別な日ですものね!」
エツ子は軽く頭を下げる。
「お待たせしてしまってすみません、今日はよろしくお願いします。」
メイク台に促されて椅子に座ると、胸元に真っ白なタオルを掛けられた。縁が照明で囲われた大きな鏡越しにメイク担当のスタッフが微笑む。
「本日はおめでとうございます。」
「すみません、彼には内緒にしておきたかったので。」
「素敵なサプライズですね。きっとお相手の方喜ばれると思いますよ。」
ありがとうございますと応えながら、エツ子は鏡の中の自分を眺めた。
それはどうだろう。
メフィスト二世の、焼き立てのパンの様な笑顔を思い出す。
3533「特別な日ですものね!」
エツ子は軽く頭を下げる。
「お待たせしてしまってすみません、今日はよろしくお願いします。」
メイク台に促されて椅子に座ると、胸元に真っ白なタオルを掛けられた。縁が照明で囲われた大きな鏡越しにメイク担当のスタッフが微笑む。
「本日はおめでとうございます。」
「すみません、彼には内緒にしておきたかったので。」
「素敵なサプライズですね。きっとお相手の方喜ばれると思いますよ。」
ありがとうございますと応えながら、エツ子は鏡の中の自分を眺めた。
それはどうだろう。
メフィスト二世の、焼き立てのパンの様な笑顔を思い出す。
かがみのせなか
PAST令和悪魔くん。3️⃣と🚥さん。真吾さんが夕食を作ろうとして阻止されます。
なんかいつもご飯絡みのシーン書いている気がする。
ビー玉 夕食に誘われていた日の夕方、メフィスト家に訪れるとやつれた顔のメフィスト二世が出迎えた。
「納期明日なのに急な改修が入っちゃって…後もう少しで終わるんだけど、ご飯何の用意もできてないんだ。」
「その顔は徹夜だね…」
二世は後頭部を撫でながら、その定義変更で今揉めてるから仕方なく両方作ってるんだとボヤく。
「折角来てくれたのに、ごめんね真吾君。」
真吾はしょうがないねと頷くと杖を振り魔門を開こうとしたが、思い直して振り返った。徹夜の仕事を終えたその後から料理をするは大変だろうと思ったのだ。
「いつもご馳走されているばかりだから、たまには僕が用意するよ。簡単な物しか作れないけど。」
「カレーの気分じゃないんだなぁ。」
5499「納期明日なのに急な改修が入っちゃって…後もう少しで終わるんだけど、ご飯何の用意もできてないんだ。」
「その顔は徹夜だね…」
二世は後頭部を撫でながら、その定義変更で今揉めてるから仕方なく両方作ってるんだとボヤく。
「折角来てくれたのに、ごめんね真吾君。」
真吾はしょうがないねと頷くと杖を振り魔門を開こうとしたが、思い直して振り返った。徹夜の仕事を終えたその後から料理をするは大変だろうと思ったのだ。
「いつもご馳走されているばかりだから、たまには僕が用意するよ。簡単な物しか作れないけど。」
「カレーの気分じゃないんだなぁ。」
かがみのせなか
PAST令和悪魔くん。2️⃣🚥。花火大会の話。
真吾さんの哀しさを二世さんはずっと忘れないでいて欲しい。
あの日の花火 一瞬でも目を離したら見失ってしまいそうだ。心配そうに前を歩く子供達を目で追う真吾に、メフィスト二世は微笑む。もう迷子になって泣くような小さな子供ではないのに、真吾にとってはそうではないようだ。
数年ぶりに催される花火大会で、駅前の商店街は賑わっていた。歩行者天国に交通規制され飾り付けられた道路の両脇には屋台が並んで、その間をそれぞれ手にかき氷、チョコバナナ、りんご飴など魅力的な戦利品を手にした人達が皆笑顔で行き交っていた。
友達同士で誘い合い遊びに来たのだろう花が咲いたような浴衣の集まりや、風船の犬を散歩しながら歩く子供の手を引きゆっくり歩く親子。大量の焼きそばを両手に休憩所へ急ぐ人、ヨーヨーすくいの店の前でお互いの財布を見せ合う子供達。
5307数年ぶりに催される花火大会で、駅前の商店街は賑わっていた。歩行者天国に交通規制され飾り付けられた道路の両脇には屋台が並んで、その間をそれぞれ手にかき氷、チョコバナナ、りんご飴など魅力的な戦利品を手にした人達が皆笑顔で行き交っていた。
友達同士で誘い合い遊びに来たのだろう花が咲いたような浴衣の集まりや、風船の犬を散歩しながら歩く子供の手を引きゆっくり歩く親子。大量の焼きそばを両手に休憩所へ急ぐ人、ヨーヨーすくいの店の前でお互いの財布を見せ合う子供達。
かがみのせなか
PAST令和悪魔くん。🥤→🚥。なんだかんだ人間界の事に興味があるストちゃんを書きたかったです。
面倒な訪問者 一郎から教えを請われた原始宗教の信仰心理構造の説明資料として持ち出した本を、本棚の掃除がてら整理して戻していた。ついでに床や机の至る所に積み上げた本を片付け始めたら、思っていたよりも量がありなかなか終わらない。少しの休憩のつもりで手元の本を開いた。それからもうかれこれ一時間が過ぎた。
真吾は本に落とされた目を上げる。
書斎に羽音が聞こえた。また来たな、と呟く。
特殊な魔力が空間を瞬時に満たすが、攻撃の意思を感じないので、真吾はそのまま放置して本に戻る。用もないのにもう何度も来るので慣れてきていた。気を緩めるのは危険だと分かってはいるのだが。
一郎の気配に惹かれて来たのだろう。だが一郎はもうとっくに人間界に帰ってしまった。放っておけば諦めるだろう。
4789真吾は本に落とされた目を上げる。
書斎に羽音が聞こえた。また来たな、と呟く。
特殊な魔力が空間を瞬時に満たすが、攻撃の意思を感じないので、真吾はそのまま放置して本に戻る。用もないのにもう何度も来るので慣れてきていた。気を緩めるのは危険だと分かってはいるのだが。
一郎の気配に惹かれて来たのだろう。だが一郎はもうとっくに人間界に帰ってしまった。放っておけば諦めるだろう。
かがみのせなか
PAST令和悪魔くん。🥞→🚥。一郎くんの過去捏造してます。
一郎くんと真吾さんが喧嘩します。
三世くんは光の子です。
約束 人気のない歩道をのんびりと歩きながら夜の空気を楽しむ。まだ六月に入ったばかりのこの時期は、日中は夏のような暑さでも夜になると薄寒くなる。アルコールで火照った体には気持ちがいい。真吾は妹夫婦の他愛ないおしゃべりを聞きながら機嫌よく二人の後ろを歩いていた。
不意にエツ子が振り返る。
「お兄ちゃん静かだとちゃんと付いて来てるか心配になるんだけど。大丈夫?」
「大丈夫だよ、ちゃんと歩いてる。」
「こりゃダメだわ。前歩いてよ。」
エツ子は兄の両肩を掴むと、ホイホイと前に押し出す。
「真吾君久しぶりのお酒だったから効いちゃったね。」
「そうだね…」
久しぶりに外食でもしようと誘われたので素直に乗って来てみたら、何と二人の結婚記念祝いだった。
8830不意にエツ子が振り返る。
「お兄ちゃん静かだとちゃんと付いて来てるか心配になるんだけど。大丈夫?」
「大丈夫だよ、ちゃんと歩いてる。」
「こりゃダメだわ。前歩いてよ。」
エツ子は兄の両肩を掴むと、ホイホイと前に押し出す。
「真吾君久しぶりのお酒だったから効いちゃったね。」
「そうだね…」
久しぶりに外食でもしようと誘われたので素直に乗って来てみたら、何と二人の結婚記念祝いだった。
かがみのせなか
PAST令和悪魔くん。ほんのり3️⃣→🚥。一郎が儀式に挑みます。お衣装にずいぶん悩みました。
『沈む』と話が繋がってます。こっちが後です。ですがそれぞれ完結してます。
祝福 八幡で昼食を済ませた千年王国研究所の二人は、今にも降り出しそうな空を気にしながら、足早にオデオン座への道を急いだ。
「この天気じゃ家賃さん今日も来ないかなぁ。」
「依頼に来る奴は大抵逼迫した状況だから天気は関係ないだろう。」
「じゃあなんで来ないんだよ。」
「知名度、実績、そもそもケースが少ない。」
「積んでんじゃん。」
さなえさんになんて言い訳しよう、と三世は重い溜息を吐く。折角美味しいラーメンで満腹なのに気分はショボショボだ。
一郎を前にしてオデオン座の階段を上っていく。もうすぐ上り切るというところで急に一郎が立ち止まったので、三世は背中に顔面をぶつけ階段から落ちそうになった。文句を言おうと口を開きかける。
9529「この天気じゃ家賃さん今日も来ないかなぁ。」
「依頼に来る奴は大抵逼迫した状況だから天気は関係ないだろう。」
「じゃあなんで来ないんだよ。」
「知名度、実績、そもそもケースが少ない。」
「積んでんじゃん。」
さなえさんになんて言い訳しよう、と三世は重い溜息を吐く。折角美味しいラーメンで満腹なのに気分はショボショボだ。
一郎を前にしてオデオン座の階段を上っていく。もうすぐ上り切るというところで急に一郎が立ち止まったので、三世は背中に顔面をぶつけ階段から落ちそうになった。文句を言おうと口を開きかける。
かがみのせなか
PAST令和悪魔くん。3️⃣→🚥です。出会って間もない頃の一郎と三世。
真吾さんが三世くんを夜の海に誘います。
『祝福』と話が繋がってます。こっちが先です。でもそれぞれ完結しています。
沈む 一郎の詠唱を聞きながら、メフィスト三世は両の拳を強く握り締める。頭上に魔法陣を受けるとすぐ鳩尾の奥に熱を感じ、それが全身に爆発的に溢れた。
三世はステッキを構えると、目の前にゆらりとして挑発する悪魔の前に躍り出る。
「魔力、稲妻電撃!」
狙い通り悪魔の体の真ん中に命中する。が、悪魔はその巨体を揺すり、ヒステリックな大声でキャーキャーと嗤った。
「キカナイ!ゼンゼンキカナイ!ナニソレ、バカミタイ!」
真っ黒でドロドロしたそれは、ムチの様な腕を全身から放って二人を攻撃する。三世は巧みに攻撃を躱しながら、待避している一郎の位置を確認すると、ステッキを大きく振り技を繰り出した。
「魔力、絶対零度!」
よし、と三世は頷く。やはりこれは効果があった。伸ばした腕と半身が凍り付き拘束される。が、まだ上半分は動ける。
12724三世はステッキを構えると、目の前にゆらりとして挑発する悪魔の前に躍り出る。
「魔力、稲妻電撃!」
狙い通り悪魔の体の真ん中に命中する。が、悪魔はその巨体を揺すり、ヒステリックな大声でキャーキャーと嗤った。
「キカナイ!ゼンゼンキカナイ!ナニソレ、バカミタイ!」
真っ黒でドロドロしたそれは、ムチの様な腕を全身から放って二人を攻撃する。三世は巧みに攻撃を躱しながら、待避している一郎の位置を確認すると、ステッキを大きく振り技を繰り出した。
「魔力、絶対零度!」
よし、と三世は頷く。やはりこれは効果があった。伸ばした腕と半身が凍り付き拘束される。が、まだ上半分は動ける。
かがみのせなか
PAST令和悪魔くん。2️⃣→🚥。二世がマカロンを作って真吾さんに持って来ます。
マカロン ナイフとフォークで食べるマカロンってどうなんだろう、と云う思い付きから作った特大のマカロンを三つ包んで書斎へ来てみたが、試食係の姿が見えない。
書斎机にもソファにもいないので、書斎机の向こう側へ覗きに行ってみれば、案の定、本棚と机の間に緑色が落ちていた。
本にかかった手と、その先に雪崩れている数冊の本から察するに、片付けようとしたか取り出したかのところでバッテリーが切れたようだ。
メフィスト二世は腰に手を当てて呆れて息を吐く。うつ伏せでピクリとも動かないが息は苦しくないのか。二世は真吾の両脇に手を差し込むと、軽々と抱き起こした。
無理やり意識をサルベージされて嫌がる真吾が二世の腕を押し返そうとする。二世は逃がすまいと横抱きにすると、真吾の脱力した体を自分の腕で包み込む。真吾はされるがままに体重を二世に預けた。
1947書斎机にもソファにもいないので、書斎机の向こう側へ覗きに行ってみれば、案の定、本棚と机の間に緑色が落ちていた。
本にかかった手と、その先に雪崩れている数冊の本から察するに、片付けようとしたか取り出したかのところでバッテリーが切れたようだ。
メフィスト二世は腰に手を当てて呆れて息を吐く。うつ伏せでピクリとも動かないが息は苦しくないのか。二世は真吾の両脇に手を差し込むと、軽々と抱き起こした。
無理やり意識をサルベージされて嫌がる真吾が二世の腕を押し返そうとする。二世は逃がすまいと横抱きにすると、真吾の脱力した体を自分の腕で包み込む。真吾はされるがままに体重を二世に預けた。
かがみのせなか
PAST令和悪魔くん。成長🚥さん。雨の日、真吾さんが一郎に会いに来ます。
雨だれ 静かな室内に、軒から落ちる雫の音と、紙が擦れる音だけが聞こえる。
一郎は、腹の上に乗せた魔術書から目を上げた。ソファから身を起こし、窓の外を見る。スッと人影が窓から消えるのを見ると、一郎は本をテーブルに置いた。
依頼人だろうか。
「何か用か。」
足早に玄関に出てドアを開けると、階段を降りかけた深緑色の傘を呼び止める。
立ち止まった傘は少し躊躇い、ゆっくり振り返った。傘で隠れていたその青年の顔が現れた。
一郎は目を丸くし、息を呑む。
義父にそっくりな顔をした青年は、一郎を真っ直ぐに見返すと、困ったように微笑んだ。
軒先で傘を振るい、大雑把に水滴を落とすと、きっちり畳んで傘立てに立てる。一郎に促され研究所に入ると、真吾は目を細めて室内を見渡した。
5010一郎は、腹の上に乗せた魔術書から目を上げた。ソファから身を起こし、窓の外を見る。スッと人影が窓から消えるのを見ると、一郎は本をテーブルに置いた。
依頼人だろうか。
「何か用か。」
足早に玄関に出てドアを開けると、階段を降りかけた深緑色の傘を呼び止める。
立ち止まった傘は少し躊躇い、ゆっくり振り返った。傘で隠れていたその青年の顔が現れた。
一郎は目を丸くし、息を呑む。
義父にそっくりな顔をした青年は、一郎を真っ直ぐに見返すと、困ったように微笑んだ。
軒先で傘を振るい、大雑把に水滴を落とすと、きっちり畳んで傘立てに立てる。一郎に促され研究所に入ると、真吾は目を細めて室内を見渡した。
かがみのせなか
PAST令和悪魔くん。🥞→🚥です。真吾さんがお花を育てる話です。
百目ちゃんは可愛いですね。
花を育てる 百目の肩に乗って来たピクシー達は、ソファーの上に飛び降りると、暫くそのままポンポンと飛び跳ねて遊んだ。
百目は大事そうに抱えて来た透明なアクリルのケースをテーブルの上に置くと、ふうっと大きく息を吐いてにっこり真吾を振り返った。ケースの中には小さな陶器の植木鉢が入っている。
何も知らされていない真吾は、魔術書を捲る手を止めると、不思議そうにそのケースと百目を見比べた。
「百目、それは何だい?」
「お花を育てるケースなんだモン。」
「花を育てる予定はないけど…」
「これからその予定が出来るんだモン。悪魔くんが育てるんだモン。」
ソファートランポリンで満足するまで遊んだピクシー達は、ピョンピョンと積み上がった本を飛び移り、書斎机までやってくる。
6557百目は大事そうに抱えて来た透明なアクリルのケースをテーブルの上に置くと、ふうっと大きく息を吐いてにっこり真吾を振り返った。ケースの中には小さな陶器の植木鉢が入っている。
何も知らされていない真吾は、魔術書を捲る手を止めると、不思議そうにそのケースと百目を見比べた。
「百目、それは何だい?」
「お花を育てるケースなんだモン。」
「花を育てる予定はないけど…」
「これからその予定が出来るんだモン。悪魔くんが育てるんだモン。」
ソファートランポリンで満足するまで遊んだピクシー達は、ピョンピョンと積み上がった本を飛び移り、書斎机までやってくる。
かがみのせなか
PAST令和悪魔くん12話のお話。向日葵 向日葵。学名Helianthus annuus。キク科キク目ヒマワリ属。頭状花序で舌状花と管状花で構成され、種は螺旋状に並ぶ。原産地は北アメリカ大陸西部とされ、日本には一七世紀に伝来。鑑賞、種実の食用・油糧で広く栽培される。和名は成長期に花が太陽を追う性質から付けられ、日回り、日廻りと表記される事もある。別名日輪草、日車草等。最盛期は七月から九月。品種改良された物も含めその種類は多い。草丈三〇センチから三メートル、小輪・大輪、一重咲き・八重咲き、花の色は大別して黄・オレンジ・黒・褐色と多様だ。
僕がその花を初めて見たのは、写真だった。
見えない学校の書斎の、隙間なく本が収められた本棚の隅で、それは版型が他の本と異なり出っ張っていたので、前から気にはなっていた。
3037僕がその花を初めて見たのは、写真だった。
見えない学校の書斎の、隙間なく本が収められた本棚の隅で、それは版型が他の本と異なり出っ張っていたので、前から気にはなっていた。
かがみのせなか
PAST令和悪魔くん。ほんのり3️⃣→🚥、🥞→🚥?一郎くんの可愛かった頃を書きたかったです。
マントの事情 軽く二回ノックして扉を開くと、伯父がソファの上で目を擦りながら上半身を起こすところだった。瞼を苦労して上げながら、甥の顔を見てぼんやり笑いかける。折角寝ていたところを起こしてしまったようで、メフィスト三世は慌てた。
「わぁ伯父さん、起こしてすみません。」
「いいや大丈夫だよ、実はちょっと前から目は覚めていたんだ。」
何か用事かい?と訊く真吾の視線が、手に持っている紙袋に移ったので近寄って渡す。寝起きの湿った額に、柔らかそうな栗色の前髪が数筋張り付いている。
「昨日出張で遠出したのでお土産です。」
「遊びに行ったわけじゃないのに。気を遣ってくれてありがとう。これは何だい?」
「栗饅頭です。」
「栗饅頭好きなんだ、ありがとう、久しぶりだなぁ。」
2787「わぁ伯父さん、起こしてすみません。」
「いいや大丈夫だよ、実はちょっと前から目は覚めていたんだ。」
何か用事かい?と訊く真吾の視線が、手に持っている紙袋に移ったので近寄って渡す。寝起きの湿った額に、柔らかそうな栗色の前髪が数筋張り付いている。
「昨日出張で遠出したのでお土産です。」
「遊びに行ったわけじゃないのに。気を遣ってくれてありがとう。これは何だい?」
「栗饅頭です。」
「栗饅頭好きなんだ、ありがとう、久しぶりだなぁ。」
かがみのせなか
PAST令和悪魔くん12話後のお話。一郎くんが迷子になります。
ほんのり🥞→🚥。
おまじない 何処をどう歩いたのかもう分からない。戻れているのか、もっと奥へ入り込んでしまっているのかも分からない。長い廊下、暗い天井、どれも同じに見える重い扉。
冷たい床に、黙々と動かす裸足の爪先が痺れる。
背後を振り返り、前に向き直る。この選択は正しいだろうか。
もう何日もこうしているような気もするし、たった数分の出来事のようにも感じる。平常心を失っているのだろうか。心臓音がやたら大きく聞こえる。
こういう時どうすればいいと教えられた?
あの人は何と言っていた?
かじかんだ拳でトントンと胸を叩く。
この胸の詰まりは何だろう。
痛みはない。苦しいが呼吸器は正常だ。心拍数が上昇している。発汗量が増加し、四肢末端の体温が下降している。
3631冷たい床に、黙々と動かす裸足の爪先が痺れる。
背後を振り返り、前に向き直る。この選択は正しいだろうか。
もう何日もこうしているような気もするし、たった数分の出来事のようにも感じる。平常心を失っているのだろうか。心臓音がやたら大きく聞こえる。
こういう時どうすればいいと教えられた?
あの人は何と言っていた?
かじかんだ拳でトントンと胸を叩く。
この胸の詰まりは何だろう。
痛みはない。苦しいが呼吸器は正常だ。心拍数が上昇している。発汗量が増加し、四肢末端の体温が下降している。
かがみのせなか
PAST令和悪魔くん。ほんのり3️⃣→🚥三世くんが真吾さんを誘って映画を観に行きます。
因みに二世はヤキモチ妬いてます。
恋愛映画 珍しく早く帰宅し、夕食が出来るのをビール片手に待つ母が、通勤鞄からチケットを出して渡してきた。
「今話題の映画の割引チケット、会社でもらったんだけど、あげるわね。」
皿をテーブルに並べていたメフィスト三世は、手を止めてチケットを受け取る。泣けると評判の恋愛映画のチケットだった。
「二枚あるじゃん。パパと行ってくれば?」
「もう既に行きましたー。すっごく良かったよ!」
「え、いつの間に。二度観れば?」
「そんな使い方勿体無いでしょ。誰か誘って行っておいでよ。」
「誰かって…」
面子は決まっている。
さなえの笑顔がぽんと浮かんで、三世は慌てて打ち消す。
(さなえさんは土日仕事忙しいから!じゃなくて、ダメだろ人の奥さんだぞ!)
4777「今話題の映画の割引チケット、会社でもらったんだけど、あげるわね。」
皿をテーブルに並べていたメフィスト三世は、手を止めてチケットを受け取る。泣けると評判の恋愛映画のチケットだった。
「二枚あるじゃん。パパと行ってくれば?」
「もう既に行きましたー。すっごく良かったよ!」
「え、いつの間に。二度観れば?」
「そんな使い方勿体無いでしょ。誰か誘って行っておいでよ。」
「誰かって…」
面子は決まっている。
さなえの笑顔がぽんと浮かんで、三世は慌てて打ち消す。
(さなえさんは土日仕事忙しいから!じゃなくて、ダメだろ人の奥さんだぞ!)
かがみのせなか
PAST令和悪魔くん。ほんのり2️⃣→🚥。解釈の仕方ってその人の価値観や性格出るよなって。物語を深く考察するのは楽しいですよね。
冬の館にて 遠い北の国の厳しい冬。街で犯した自らの罪に追われて逃げた一人の盗人は雪山に迷う。二日間歩き続け、空腹と疲労と寒さで命を諦めかけたその時、ひっそりと佇む館を見付ける。必死の思いで戸を叩くと、一人の老人が彼を迎えた。老人の纏う服は、古ぼけてはいるものの高級な生地が使われ、屋敷の中は立派な調度品が置かれていた。
盗人は老人に温かい食事と豪華な客室を与えられた。盗人は老人の話し相手をして機嫌を取りながら、翌日も、また翌々日も館に留まる。館の中を見て回り、部屋に飾られた絵画、廊下に置かれた外国の花瓶、甲冑や彫刻などを品定めする。どれも価値の高い物ばかりだった。いくつか盗んで売れば当面の生活は困らない。いや、それどころか…と盗人はほくそ笑む。
5036盗人は老人に温かい食事と豪華な客室を与えられた。盗人は老人の話し相手をして機嫌を取りながら、翌日も、また翌々日も館に留まる。館の中を見て回り、部屋に飾られた絵画、廊下に置かれた外国の花瓶、甲冑や彫刻などを品定めする。どれも価値の高い物ばかりだった。いくつか盗んで売れば当面の生活は困らない。いや、それどころか…と盗人はほくそ笑む。
かがみのせなか
PAST令和3話『強欲』の後のエピソード。※ネタバレ注意!!
一郎に一言言いたくて書いたやつです。
秤 警察への説明が終わり研究所へ戻ると、草色の小さな背中が来客用のソファに腰掛けて待っていた。二人が部屋入ると横顔で振り返り、お帰りなさいと迎える。
昨日の今日だ。何の用件で来たのかは訊くまでもない。
メフィスト三世だけこんにちは伯父さんと応えると、お茶を用意しにキッチンへ消えた。一郎は無言で真吾の背後を回ると、書斎机に腰掛けた。
「お疲れ様、警察からの帰りだろう?大変だったね。」
湯を沸かす間三世は一旦部屋へ戻り、テーブルの隣に立った。
「今日で一通りの説明は終わって、今後は確認したいことが出てこなければ呼ばれる事は無いとの事でした。」
「じゃあ一旦は落ち着けそうだね…よかった。」
真吾は神妙な顔でこっくり頷く三世を気遣う。
2518昨日の今日だ。何の用件で来たのかは訊くまでもない。
メフィスト三世だけこんにちは伯父さんと応えると、お茶を用意しにキッチンへ消えた。一郎は無言で真吾の背後を回ると、書斎机に腰掛けた。
「お疲れ様、警察からの帰りだろう?大変だったね。」
湯を沸かす間三世は一旦部屋へ戻り、テーブルの隣に立った。
「今日で一通りの説明は終わって、今後は確認したいことが出てこなければ呼ばれる事は無いとの事でした。」
「じゃあ一旦は落ち着けそうだね…よかった。」
真吾は神妙な顔でこっくり頷く三世を気遣う。
かがみのせなか
PAST令和12話後くらいか。元気な一郎時空。真吾さんが偽真吾さんを救うために奮闘します。
赤い小鳥 1
男の子は何でできている?
カエルとカタツムリ
そして子犬の尻尾
そういうものでできている
❈❈❈
真吾は百目にメモを渡す。
「それをピクシー達に渡して、集めるよう頼んで欲しいんだ。」
「わかったモン。これは何を作る材料なんだモン?」
「新しく構築した魔術で試したいことがあるんだよ。」
メモに書かれた材料の数を数えながら、百目は不思議そうに首を傾げた。今まであまり見たことのない物ばかりだ。リストの一番最後に、ピクシー特製の強い鎮痛薬の名前がある。
百目のあどけない仕草に、真吾はフフっと笑った。
「お願いできるかな?なるべく早い方がいいんだ。」
「任せるんだモン!」
はりきって部屋から出て行く百目を見送ると、真吾は所狭しと本が積み上がった、重厚な飴色の書斎机に戻った。
14796男の子は何でできている?
カエルとカタツムリ
そして子犬の尻尾
そういうものでできている
❈❈❈
真吾は百目にメモを渡す。
「それをピクシー達に渡して、集めるよう頼んで欲しいんだ。」
「わかったモン。これは何を作る材料なんだモン?」
「新しく構築した魔術で試したいことがあるんだよ。」
メモに書かれた材料の数を数えながら、百目は不思議そうに首を傾げた。今まであまり見たことのない物ばかりだ。リストの一番最後に、ピクシー特製の強い鎮痛薬の名前がある。
百目のあどけない仕草に、真吾はフフっと笑った。
「お願いできるかな?なるべく早い方がいいんだ。」
「任せるんだモン!」
はりきって部屋から出て行く百目を見送ると、真吾は所狭しと本が積み上がった、重厚な飴色の書斎机に戻った。
かわな
DONE令和悪魔くん。一郎×メフィスト3世出会ったばかりのころの話。ご都合主義
魔法の布巾は上の棚の奥の奥/🥞🎩「お茶請けにはホットケーキがいい」
そう言ったのは悪魔くんだった。
出会って三日ほど経った、天気の良い昼下がりのことだ。
パパとおじさんに引き合わされたのはいいけれど、いったい何をしたらいいのかまだつかみ切れていなかったおれは、なんとなく体にまとわりついてくる居心地の悪さを脱ぎ捨てようとした結果、おやつでも食べようかな、なんて言った。それに対して返ってきた言葉がお茶請けにはホットケーキがいい、だ。まあ、たしかにホットケーキはおいしい。
「それって、焼けってことかよ」
「ほかになにがあるんだ? おやつにしようと言ったのは、君じゃないか」
「それはそうだけど、だれも作るなんて言ってないだろ」
「そうなのか。じゃあ、チョコバーを買ってきてくれ」
4568そう言ったのは悪魔くんだった。
出会って三日ほど経った、天気の良い昼下がりのことだ。
パパとおじさんに引き合わされたのはいいけれど、いったい何をしたらいいのかまだつかみ切れていなかったおれは、なんとなく体にまとわりついてくる居心地の悪さを脱ぎ捨てようとした結果、おやつでも食べようかな、なんて言った。それに対して返ってきた言葉がお茶請けにはホットケーキがいい、だ。まあ、たしかにホットケーキはおいしい。
「それって、焼けってことかよ」
「ほかになにがあるんだ? おやつにしようと言ったのは、君じゃないか」
「それはそうだけど、だれも作るなんて言ってないだろ」
「そうなのか。じゃあ、チョコバーを買ってきてくれ」
深藍桜
DONE令和悪魔くん第12話「犠牲」ネタバレ注意ストロファイアに対して容赦なしの内容なので、彼が推しだという方は見ない方がいいです(割とマジで)。
語り掛けてる人物の名前は出ませんが、全話履修していれば分かる様にはなっております。 2
深藍桜
TRAINING先日公式ツイに載っていた場面から思い付いた一郎とメフィスト3世のラーメン屋台での話です。横書きで読みたい方はこちら↓
https://crepu.net/post/2552394 2
深藍桜
DONEゲゲゲ忌2022悪魔くんスペシャルデーにあった真吾と一郎の話を文章にしてみました。昨日上げたやつの文庫メーカー版になります。
昨日の文章版(横書き)はこちら
https://poipiku.com/4092749/7905657.html 3