放課後、スタジオ待ちの時間つぶし。春名が希望してもしなくても、カフェに入るときは大抵ドーナツ屋だ。
中途半端にあいてしまった時間に一度家に帰るのも面倒で、春名は夏来と向かい合ってドーナツを食べていた。狭いテーブルに二人分のトレーが並ぶ。新曲の覚えこみのためにリズム隊二人でスタジオを取ったはいいのだが、予約が埋まっており遅い時間しか取れなかったのだ。
いつの間にこんなに日が落ちるのが早くなったのだろうか、学校を出たときにはまだ明るかったのに、とっくに町は夕焼けの色づきを失いつつあり夜にさしかかっている。会社帰りらしきサラリーマンが箱いっぱいのドーナツを買って行ったり、女性客がスマホ片手にドーナツと食事をのんびりととっていたり、二人が店に来た時とは客層も変わった。春名の前には終わらせまいとゆっくりゆっくり時間をかけて味わっているドーナツがまだ半分残っている(これでも二皿目だ)が、夏来の皿は来て早々に空になっていた。
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