ki/o/ku「ねーレッド、起きてる?」
「あ?」
騒がしい声に振り向いた瞬間、白いフラッシュが視界を奪った。カメラアイが絞られる。そのアナログで軽微な作動音が片目の中で短く鳴った。
フラッシュで一瞬ぼやけた映像の中で、小柄な身体が手を振っている。
「なんだ、そんなものわざわざ持ち出して」
「オモチャみたいで楽しいじゃん」
そいつは素体むき出しの軽装で部屋の中をちょこまかとうろつき周り、その手にした古式ゆかしいカメラをあちこちに向けた。
手のひらの中の直方体の上部にシャッターボタンが付いている。そいつがシャッターを切るたびに、室内が白く眩しく点滅する。まあ、直接オレに向けたとき程には眩しくはない。その直方体の前面に取り付けられた扁平なカメラアイの絞りの作動音は、オレの身体で鳴った音よりも随分喧しい。
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