zeppei27
DONE推しCP交換~!で、えんまさんからの素敵なリクエスト、『片想い成就したい主←笠』です。可愛い!笠殿は真剣勝負で挑んでくれるのかな、と想像していました。微妙についた尾ひれの解釈はお任せします。リクエストしていただき、ありがとうございました!夢浮橋 日光が草花を照らし、ふんわりとした湿り気を伴う温もりを空気中に放っている。心持悩ましく感じられるのは、芽吹かんとする木々の呼気ゆえだ。植物というものは口こそ利かぬものの、等しく生命としての力に溢れ、日々活動している。
田舎道を歩いていた小笠原清務は、ふと足を止めると、そんな季節の移ろいに感嘆した。静かで、力強い。まるで自分の中で育まれゆく想いのようだ。いつしか根付いて体中に枝葉を伸ばして蕾を膨らませる。花は、咲くようで、咲かない。
「詮無い事を」
自然にかこつけようとする己を恥じて、清務は抱えた山吹の花枝を確認した。家を出る際、庭に過分なほどに育った山吹を見つけ、ただ剪定するよりはと折り取ったものである。花は鮮やかな黄色で、太陽で染めたかのようだ。山吹色、と花そのものが色を指すのも納得である。
6772田舎道を歩いていた小笠原清務は、ふと足を止めると、そんな季節の移ろいに感嘆した。静かで、力強い。まるで自分の中で育まれゆく想いのようだ。いつしか根付いて体中に枝葉を伸ばして蕾を膨らませる。花は、咲くようで、咲かない。
「詮無い事を」
自然にかこつけようとする己を恥じて、清務は抱えた山吹の花枝を確認した。家を出る際、庭に過分なほどに育った山吹を見つけ、ただ剪定するよりはと折り取ったものである。花は鮮やかな黄色で、太陽で染めたかのようだ。山吹色、と花そのものが色を指すのも納得である。
sayumi_6161
DONEココデサンバにてリクエスト頂いたSSです。全て横読み(小説の一番頭文字を左から右に読む)付きです。
構って頂きありがとうございました!
一:押せ押せかっちゃんと照れまくりなデクくん
二:うっかり好きと言ってしまう雄英出勝
三:ドライブする出勝 7
zeppei27
DONEなんとなく続いている主福のお話で、単品でも読めます。横浜でクリスマスを楽しみ、大切なことを互いに伝え合う二人のお話です。メリー・クリスマス!>前作:鹿爪
https://poipiku.com/271957/11178099.html
>まとめ
https://formicam.ciao.jp/novel/ror.html
岐路 祝祭とは、これすなわち文化だ。何を尊び何を忌むのか、各々の判断基準が自ずと現れている。日本の年の瀬はしめやかに進み、パンと大きく正月で弾ける仕組みだが、所変われば品変わるという奴で、欧米諸国では年末こそが盛大に祝う時期であるらしい。小さな開国地である横浜の外国人居留地で、福沢諭吉は色とりどりの異国の飾りをまじまじと眺めていた。
「Christmas Market、だそうですよ。売上は生活困窮者への年越しの補助に当てるのだとか。面白い仕組みですね」
自分も先だって教会の壁に貼られていた知らせを読んだだけだというのに、さも従前から知っていたかのようなふりをして情人を見遣る。隣で興味深そうに木彫り人形を観ていた隠し刀は、少し目を瞬かせた後に口を動かした。
8994「Christmas Market、だそうですよ。売上は生活困窮者への年越しの補助に当てるのだとか。面白い仕組みですね」
自分も先だって教会の壁に貼られていた知らせを読んだだけだというのに、さも従前から知っていたかのようなふりをして情人を見遣る。隣で興味深そうに木彫り人形を観ていた隠し刀は、少し目を瞬かせた後に口を動かした。
某牙Kamsara
SPUR ME·ファン×ビルダー(ビルダー性別不指定)&ミント×ビルダー♂|二人称|中訳日·サンドロックの二人がポルティアに出張して、ついでに休暇を過ごして年をまたぎ、ポルティアのビルダーの恋が実を結むのを見守った話です。
·温泉デートの後、スターライト島の旅もきた!砂岩カプルは大活躍のほか、ミントとジンジャーの視点から語られるポビルの恋路もあります。
【MTAS|ファンビル|翻訳】バカンス・イン・ポルティア(4)·ファン×ビルダー(ビルダー性別不指定)&ミント×ビルダー♂|二人称|中訳日
·サンドロックの二人がポルティアに出張して、ついでに休暇を過ごして年をまたぎ、ポルティアのビルダーの恋が実を結むのを見守った話です。
·温泉デートの後、スターライト島の旅もきた!砂岩カプルは大活躍のほか、ミントとジンジャーの視点から語られるポビルの恋路もあります。ジンジャーがポビルに好意を持っていることは、病気治療の夜遊び任務から知ることができる。ガストのほうは個人的な妄想です。
·それて、個人的にもポルでミントは「仕事か恋か二者択一」をしなければならない恋イベントが好きじゃないで、若いエンジニアには酷すぎです。
·皆が見ているように、僕の日本語はまだまだ下手で、もちろん原文はもっと下手です(笑)。嫌でなければお許しください。
22441·サンドロックの二人がポルティアに出張して、ついでに休暇を過ごして年をまたぎ、ポルティアのビルダーの恋が実を結むのを見守った話です。
·温泉デートの後、スターライト島の旅もきた!砂岩カプルは大活躍のほか、ミントとジンジャーの視点から語られるポビルの恋路もあります。ジンジャーがポビルに好意を持っていることは、病気治療の夜遊び任務から知ることができる。ガストのほうは個人的な妄想です。
·それて、個人的にもポルでミントは「仕事か恋か二者択一」をしなければならない恋イベントが好きじゃないで、若いエンジニアには酷すぎです。
·皆が見ているように、僕の日本語はまだまだ下手で、もちろん原文はもっと下手です(笑)。嫌でなければお許しください。
某牙Kamsara
SPUR ME·ファン×ビルダー(ビルダー性別不指定)&ミント×ビルダー♂|二人称|ファン誕生日祝SP|中訳日·FANGタスティックなファン!お誕生日(三次元の暦法)おめでとう🎂!
·そこで大好きな温泉回を発表します!
【MTAS|ファンビル|翻訳】バカンス・イン・ポルティア(3)·ファン×ビルダー(ビルダー性別不指定)&ミント×ビルダー♂|二人称|中訳日
·サンドロックの二人がポルティアに出張して、ついでに休暇を過ごして年をまたぎ、ポルティアのビルダーの恋が実を結むのを見守った話です。
·大好きな温泉回>▽<です!!そしてSNSでは何度も取り上げられていますが、二人が温泉でラブラブしているシーンは、ゆのこさんっちのファンとノアさんを持ち込み相手に書かれています。そのため、今回は12月22日当日に更新しなければならないと勝手に決めていました。ゆのこさんの素敵なイラストありがとうございました!!ゆのこさん!!YYDS*!!(*中国のSNS用語、「永遠的神」のピンインの略語で、「いつまでも神様だ!」という意味です。)
23109·サンドロックの二人がポルティアに出張して、ついでに休暇を過ごして年をまたぎ、ポルティアのビルダーの恋が実を結むのを見守った話です。
·大好きな温泉回>▽<です!!そしてSNSでは何度も取り上げられていますが、二人が温泉でラブラブしているシーンは、ゆのこさんっちのファンとノアさんを持ち込み相手に書かれています。そのため、今回は12月22日当日に更新しなければならないと勝手に決めていました。ゆのこさんの素敵なイラストありがとうございました!!ゆのこさん!!YYDS*!!(*中国のSNS用語、「永遠的神」のピンインの略語で、「いつまでも神様だ!」という意味です。)
某牙Kamsara
SPUR ME·ファン×ビルダー(ビルダー性別不指定)&ミント×ビルダー♂|二人称|ファン誕生日祝SP|中訳日·ゲームのイベントと少しずれたファンの辛い経歴があります。
【MTAS|ファンビル|翻訳】バカンス・イン・ポルティア(2)·ファン×ビルダー(ビルダー性別不指定)&ミント×ビルダー♂|二人称|中訳日
·サンドロックの二人がポルティアに出張して、ついでに休暇を過ごして年をまたぎ、ポルティアのビルダーの恋が実を結むのを見守った話です。
·「桂皮」と「シナモン」について、植物学では近親に属するが、実は効能が全く異なる2つの漢方薬です。ゲームの中国語版は「桂皮」と書き、他の言語は「シナモン」に翻訳されているようです。本文には2つの異なる翻訳法の違いが残されています。
·ファンはシーサイからサンドロックに来た経歴は僕自身の幻想の産物であり、公式のストーリーとは関係がありません。
·皆が見ているように、僕の日本語はまだまだ下手で、もちろん原文はもっと下手です(笑)。嫌でなければお許しください。
21845·サンドロックの二人がポルティアに出張して、ついでに休暇を過ごして年をまたぎ、ポルティアのビルダーの恋が実を結むのを見守った話です。
·「桂皮」と「シナモン」について、植物学では近親に属するが、実は効能が全く異なる2つの漢方薬です。ゲームの中国語版は「桂皮」と書き、他の言語は「シナモン」に翻訳されているようです。本文には2つの異なる翻訳法の違いが残されています。
·ファンはシーサイからサンドロックに来た経歴は僕自身の幻想の産物であり、公式のストーリーとは関係がありません。
·皆が見ているように、僕の日本語はまだまだ下手で、もちろん原文はもっと下手です(笑)。嫌でなければお許しください。
Siro_umimoto
INFOオルクス・コード(0)墓地の夢商人 秋の薄曇りの午後、大学の裏手に広がる小道を今年一回生の北村涼が歩いていた。
空は灰色に染まり、風は冷たく、木々のざわめきが耳に触れる。彼は一人だった。いや、未だ大学に友人がいない彼にとって、そうでない日などなかった。
「別に帰ってもいいんだけどな……」
自嘲気味に呟きながら、遠回りの道に入っていった。彼はよく遠回りをする。そのことについて、彼自身は特に理由のない行為だと思い込んでいるが、実際は自身を呼び止めてくれる誰かの存在に期待していたということは言うまでもない。
ただ、自分がどこに向かっているのかは誰にも知られたくなかった。
いつもの遠回りの道を涼が歩いていると、突き当たりの塀奥から、卒塔婆のようなものが見えていることに気がついた。
692空は灰色に染まり、風は冷たく、木々のざわめきが耳に触れる。彼は一人だった。いや、未だ大学に友人がいない彼にとって、そうでない日などなかった。
「別に帰ってもいいんだけどな……」
自嘲気味に呟きながら、遠回りの道に入っていった。彼はよく遠回りをする。そのことについて、彼自身は特に理由のない行為だと思い込んでいるが、実際は自身を呼び止めてくれる誰かの存在に期待していたということは言うまでもない。
ただ、自分がどこに向かっているのかは誰にも知られたくなかった。
いつもの遠回りの道を涼が歩いていると、突き当たりの塀奥から、卒塔婆のようなものが見えていることに気がついた。
某牙Kamsara
SPUR ME·ファン×ビルダー(ビルダー性別不指定)&ミント×ビルダー♂|二人称|ファン誕生日祝SP|中訳日·サの二人がポに出張して、ついでに休暇を過ごして年をまたぎ、ポのビルダーの恋が実を結むのを見守った話です。
· ちなみにファンの「シーサイ弁」、実は中国四川の方言ですよ~!
【MTAS|ファンビル|翻訳】バカンス・イン・ポルティア(1)·ファン×ビルダー(ビルダー性別不指定)&ミント×ビルダー♂|二人称|中訳日
·サンドロックの二人がポルティアに出張して、ついでに休暇を過ごして年をまたぎ、ポルティアのビルダーの恋が実を結むのを見守った話です。
·ファンの「シーサイ弁」、実は四川の方言で、漢字の書き方と方言の発音が残っています。「巴適得板」は四川の方言ので一番代表的な言葉と言えまして、食べたり遊んだりするときに「とても楽しい」と感じる場合によく使われています。「巴適」だけ言ってもいいです。
·皆が見ているように、僕の日本語はまだまだ下手で、もちろん原文はもっと下手です(笑)。嫌でなければお許しください。
==========
「再来週…言い換えれば、来年…たくさんの旅の見聞を持って帰ってきますから…
15976·サンドロックの二人がポルティアに出張して、ついでに休暇を過ごして年をまたぎ、ポルティアのビルダーの恋が実を結むのを見守った話です。
·ファンの「シーサイ弁」、実は四川の方言で、漢字の書き方と方言の発音が残っています。「巴適得板」は四川の方言ので一番代表的な言葉と言えまして、食べたり遊んだりするときに「とても楽しい」と感じる場合によく使われています。「巴適」だけ言ってもいいです。
·皆が見ているように、僕の日本語はまだまだ下手で、もちろん原文はもっと下手です(笑)。嫌でなければお許しください。
==========
「再来週…言い換えれば、来年…たくさんの旅の見聞を持って帰ってきますから…
zeppei27
DONEなんとなく続いている主福のお話で、単品でも読めます。諭吉が隠し刀の爪を切る話。意味があるようでないような、尤もなようで馬鹿馬鹿しいささやかな読み合いです。相手の爪を切る動作って、ちょっと良いですね……>前作:黄金時間
https://poipiku.com/271957/11170821.html
>まとめ
https://formicam.ciao.jp/novel/ror.html
鹿爪 冬は、朝だという。かの清少納言の言は、数百年経った今でも尚十分通じる感覚だろう。福沢諭吉は湯屋の二階で窓の隙間から、そっと町が活気付いてゆく様を眺めていた。きりりと引き締まった冷たい空気に起こされ、その清涼さに浸った後、少しでも暖を取ろうとする一連の朝課に趣を感じられる。霜柱は先日踏んだ――情人である隠し刀とぱり、さく、ざく、と子供のように音の違いを楽しんで辺り一面を蹂躙した。雪は恐らく、そう遠くないうちにお目にかかるだろう。
諭吉にとっての冬の朝の楽しみとは、朝湯に入ることだった。寒さで目覚め、冷えた体をゆるりと温める。朝湯は生まれたてのお湯が瑞々しく、体の隅々まで染み通って活きが良い。一息つくどころか何十年も若返るかのような心地にさせてくれる。特に、隠し刀が常連である湯屋は湯だけでなく様々な心尽くしがあるため、過ごしやすい。例えば今も、半ば専用の部屋のようなものが用意され、隠し刀と諭吉は二人してだらけている。
4836諭吉にとっての冬の朝の楽しみとは、朝湯に入ることだった。寒さで目覚め、冷えた体をゆるりと温める。朝湯は生まれたてのお湯が瑞々しく、体の隅々まで染み通って活きが良い。一息つくどころか何十年も若返るかのような心地にさせてくれる。特に、隠し刀が常連である湯屋は湯だけでなく様々な心尽くしがあるため、過ごしやすい。例えば今も、半ば専用の部屋のようなものが用意され、隠し刀と諭吉は二人してだらけている。
zeppei27
DONEいつもの主福の現パロ、webオンリーで先行公開していたお話です。本に書下ろしで書いていた現パロ時空ですが、アシスタント×大学教授という前提だけわかっていれば無問題!単品で読める、二人と彼シャツをめぐるお話。彼シャツ、それはロマンとミステリー!些事 大学では、社会に出る前の最後のモラトリアムを象徴するが如く、学生たちが自由闊達に暮らしている。日がのぼったばかりのキャンパス内部を歩いてみれば、まずベンチで死んだようになって寝そべる学生が目に入るだろう。彼らは夜通し学業か将来か、はたまた別の何かに盛り上がって朝を迎えたのである。論文提出の時期が迫れば、寝巻き同然の姿でうろつき回る学生を見ることができるかもしれない。実験室で鍋を囲む学生たちを見たらば、大学側の人間がいるかを確認してみよう。もしいるのであれば、ギリギリ規約範囲内の出来事だろうと考えても良い。自宅ではないが、第二の家程度のだらしなさで肩の力を緩めることが一定の範囲内で許されているのだ。
7038zeppei27
DONEなんとなく続いている主福のお話で、単品でも読めます。webオンリーで先行公開していたものです。横浜で出会う人々で開く天麩羅パーティと、可愛くてずるい情人・諭吉のお話です。>前作:鬼が笑う
https://poipiku.com/271957/11141339.html
>まとめ
https://formicam.ciao.jp/novel/ror.html
黄金時間 何かと鋏は使いよう、と同じことで、どんな道具であろうと人であろうと、使い方一つで無限に可能性を秘めている。僅かながらの知恵で工夫を凝らし、己自身の研鑽を積んできた隠し刀にとって、進歩とは文字通り一歩一歩進む地道なものだった。人間はいきなり跳べたりはしない。全身の筋肉を鍛え、どこへ向かえば良いのか判断するための知識が必要だ。
ところが世界は広いもので、進歩が駆け足どころか悠々と遥か遠くへと飛躍することもある。阿鼻機流はその最たる例だ。滑空の理屈は解れども、鳥のように飛ぶ発想は到底抱けない。思いつけること自体が一種の才能と言えるだろう。郷里の行き詰まった――ある種、一つの技術を突き詰めることに徹していた――社会から出た隠し刀は、長屋にやってきたその天賦の才能の持ち主を笑顔で出迎えた。
7844ところが世界は広いもので、進歩が駆け足どころか悠々と遥か遠くへと飛躍することもある。阿鼻機流はその最たる例だ。滑空の理屈は解れども、鳥のように飛ぶ発想は到底抱けない。思いつけること自体が一種の才能と言えるだろう。郷里の行き詰まった――ある種、一つの技術を突き詰めることに徹していた――社会から出た隠し刀は、長屋にやってきたその天賦の才能の持ち主を笑顔で出迎えた。
zeppei27
DONEなんとなく続いている主福のお話で、単品でも読めます。新年の準備は年末から!新年の準備を頑張る人々と、餅に振り回される二人のお話。ちょっとシリアスで切な目です。>前作:お揃い
https://poipiku.com/271957/10947874.html
>まとめ
https://formicam.ciao.jp/novel/ror.html
鬼が笑う 冬がどんどんと日々を侵食してゆく。寒さに震えていたかと思えば、もう次の年が来るのだと今年の手仕舞いが叫ばれる。師走という名を、隠し刀はただの記号としか認識していなかったが、人間らしい生活をするようになってようやく言葉の意味を理解した。師走は師匠だけではない、あらゆる人々が駆けずり回る時なのだ。商家はツケの回収に走り、借金取りも今日までですよと大声で叫び立てる。煮炊きする音がどの家からも絶えず、正月飾りや晴れの揃えは飛ぶように売れていた。人影のまばらな路地ではこっそり、春駒の練習をする鳶がいたりもする。
人は皆等しく残り少ない今年を噛み締め、新しい時を迎え入れるのだ。太陽が上って、沈んで、また上るだけのことがこんなにも大袈裟で意味深い。故郷では、正月の支度らしい支度もなかったな、と隠し刀はぼんやりと市井の勢いに飲まれた。自分も何かをしなければいけないような気がする。だが、何を?何をすればこの年末年始を人らしく過ごせたと思えるだろう。
7257人は皆等しく残り少ない今年を噛み締め、新しい時を迎え入れるのだ。太陽が上って、沈んで、また上るだけのことがこんなにも大袈裟で意味深い。故郷では、正月の支度らしい支度もなかったな、と隠し刀はぼんやりと市井の勢いに飲まれた。自分も何かをしなければいけないような気がする。だが、何を?何をすればこの年末年始を人らしく過ごせたと思えるだろう。
かがり
INFO(2024.11.30)12/1DRF発行予定・司レオ寄り添いアンソロジー『永遠のあなたとラストダンスを』(X:@tklo_withyou)に寄稿させていただいた小説のサンプルとなります!
夏目君の催眠術で引きこもり期に逆行してしまったレオくんと、彼の手を引いて夢ノ先学院を巡りながら元に戻る手助けをする司くんのお話です。
(アンソロサンプル)司レオ:その先の福音「ああ、ちょっとまずったかナ……」
目の前に立つ真っ赤な髪の男は、不自然なイントネーションで、ぼやくように呟いた。
自分と同じくらいの体格のそいつは確か、校内で見たことがある小生意気な後輩だったはずだ。どうしてここに? そんな風に記憶を辿ろうとした瞬間、眩暈のような感覚と共に思考が揺らぎ、ぺたりとその場に腰を落とした。
訳が分からないまま辺りを見渡すと、ベッドが三つ並んだ真新しい部屋だ。恐らくは、共同生活のための空間。
「ここ、どこだ……?」
♪
「……それで、一体何があったと言うのですか?」
司は眉間を押さえて、情報の整理に努める。此処は星奏館の一室――レオ、夏目、なずなが生活を共にする三人部屋だった。
2108目の前に立つ真っ赤な髪の男は、不自然なイントネーションで、ぼやくように呟いた。
自分と同じくらいの体格のそいつは確か、校内で見たことがある小生意気な後輩だったはずだ。どうしてここに? そんな風に記憶を辿ろうとした瞬間、眩暈のような感覚と共に思考が揺らぎ、ぺたりとその場に腰を落とした。
訳が分からないまま辺りを見渡すと、ベッドが三つ並んだ真新しい部屋だ。恐らくは、共同生活のための空間。
「ここ、どこだ……?」
♪
「……それで、一体何があったと言うのですか?」
司は眉間を押さえて、情報の整理に努める。此処は星奏館の一室――レオ、夏目、なずなが生活を共にする三人部屋だった。
zeppei27
DONE主伊です!!!男前で覚悟の決まった伊藤に対し、心の準備ができていない隠し刀がもちゃもちゃするお話です。長州男児の肝っ玉をお見せしましょう(?)伊藤君が腰に手を当てて「おい」って呼び止めるところ、めちゃくちゃ好きです。かなわぬもの 心の通い路は、何度歩めどわからない。近づいては霞のように消え、掴んでいたはずの裾は揺れる柳の影となる。それでも求めるのは、いつか触れたい、互いに心を交わしたいという飢えがあるためだ。いかにもそれらしく勿体ぶるならば、人は一人では生きられないが故とでも言ってみよう。根源的な欲求である。
伊藤博文は、己の中に深く根差す理想と欲望とをよくよく承知していた。時に利害が一致せぬ時には折り合う術も心得ているし、当たって砕けるだけの度胸と行動力もある。ただ、指をくわえているだけでは何も変わらず、かなうものなどありはしない。自分に然程の天運が降り注ぐとは考えにくかった。強いて言うならば、躊躇わずに運を掴み取って来た人間だと自負している。
6912伊藤博文は、己の中に深く根差す理想と欲望とをよくよく承知していた。時に利害が一致せぬ時には折り合う術も心得ているし、当たって砕けるだけの度胸と行動力もある。ただ、指をくわえているだけでは何も変わらず、かなうものなどありはしない。自分に然程の天運が降り注ぐとは考えにくかった。強いて言うならば、躊躇わずに運を掴み取って来た人間だと自負している。
55migiwa
DOODLE2024.12.1新刊の表紙と登場人物紹介――高校卒業式翌日、北さんは失踪した。
五年越しの再会を果たした侑がひたすら暴走して、治も暴走して、角名の倫理観がぶっ壊れてるシリアス風味のエロ本です。
最後は侑北で着地します。そして北さんの初恋は宮侑(重要)
東3ホール レ05b 「アイポ」で参加しています。
イラストはハコさんです! 3
zeppei27
DONE加糖さん、遅ればせながらお誕生日おめでとうございます〜!!!いつも真っ直ぐな気持ちで輝く姿を黒田に重ねた、黒田と隠し刀の関係のお話をモブ視点でお贈りします。陽の差すところ これはこれは、よくおいでくださいました。幾度も足を運んでいただき、誠にありがとうございます。方々に貿易商は店を構えども、手前の店は他の江戸藩邸に負けぬ品揃えと自負しております。ええ、今日日は薩摩焼も好評でして。異国の方々には、優れた技術と絢爛豪華な美術性の双方が素晴らしいと大流行りですよ。
今日は随分やかましい?稽古場の音がここまで届いておりますからね、それに今日は空模様が危ういようですから。しかしご安心ください、そのうちおさまりましょう。
何、薩摩藩の稽古の中心と言えば黒田清隆様、あのお方の気分がどうにも斜めというわけでして。若手の代表格のようなお方です、荒れれば他の藩士が相手をするのは一苦労だ。私?私は論外ですよ——やっとうの腕は立ちませんで。立派なのは体格ばかりです。
2095今日は随分やかましい?稽古場の音がここまで届いておりますからね、それに今日は空模様が危ういようですから。しかしご安心ください、そのうちおさまりましょう。
何、薩摩藩の稽古の中心と言えば黒田清隆様、あのお方の気分がどうにも斜めというわけでして。若手の代表格のようなお方です、荒れれば他の藩士が相手をするのは一苦労だ。私?私は論外ですよ——やっとうの腕は立ちませんで。立派なのは体格ばかりです。
亞莉亜(アリア)
DONE以下の内容が無理な方は閲覧禁止。久しぶりにこっちで小説投げます。
BL
BLD
キス描写あり
ソニック受け
人間×人外
オリキャラ×既存キャラ
夢主不在(1部のセリフでの名前のみ) 1992
zeppei27
DONEえんまさんの可愛すぎる投げキスを見て、笠殿の可愛さに五体投地しました。ウーッ可愛い!そんな投げキスを教えるところから見たいという気持ちのままに、感謝の念を込めての主笠です。素敵絵をありがとうございました……! 3477game_1000you
SPOILER10/27発行の墓場鬼水小説「えんむえんえん」のプロットです。・ネタバレしかないのでご注意ください。
・項目は以下↓
[タイトル、テーマ、モチーフ、時代、場所、登場人物、ストーリー、ストーリーライン、シーン]
・プロット→草稿→初稿→第二稿→推敲→校正と書きました。書いてく中で変わったり付け足したりは結構してました。 9875
zeppei27
DONEいつもの主福の現パロのハロウィン話です。単品でも読めます。本に書下ろしで書いていた現パロ時空ですが、アシスタント×大学教授という前提だけわかっていれば無問題!普段通りの場所の空気が変わるのって、面白いですね。幸なるかな、愚かな人よ 最初はクリスマスだった。次に母の日が来てバレンタインデーが来て、父の日というなんとも忘れられがちなものを経てハロウィンがやって来た。日本のカレンダーでは直接書かれることはまだまだ少ないものの、じわじわと広まった(あるいはメディアなどの思惑に乗って広められた)習慣は、お花見よろしくお祭り騒ぎをする格好の理由として大流行りを迎えている。街中に出れば、芋栗南瓜くらいしかなかった秋の風景に、仮装衣装が並び、西洋風の怪物や魔女、お化けといった飾り物が目を楽しませてくれる。
秋と言えば何といっても紅葉で、その静けさと味わい深さを愛していた福沢諭吉にしてみれば、取り立てて魅力的なイベントではない。寧ろ、大学で教鞭を奮う立場にとっては聊か困りものでもあった。校門前には南瓜頭を被った不審者が守衛に呼び止められ、学生証の提示を求められている。ブラスバンド部が骸骨が描かれた全身タイツを着て、ハロウィンにちなんだ映画音楽を演奏し、それに合わせて黒猫の格好をしたチアリーダーがぴょんぴょん跳ねる。ここぞとばかりに菓子を売る生協の職員は魔女で、右を向いても左を向いても仮装をした人間が目立った。まともな格好をしている人間が異界に迷い込んだ心地とはまさにこのような状態を指すだろう。
2260秋と言えば何といっても紅葉で、その静けさと味わい深さを愛していた福沢諭吉にしてみれば、取り立てて魅力的なイベントではない。寧ろ、大学で教鞭を奮う立場にとっては聊か困りものでもあった。校門前には南瓜頭を被った不審者が守衛に呼び止められ、学生証の提示を求められている。ブラスバンド部が骸骨が描かれた全身タイツを着て、ハロウィンにちなんだ映画音楽を演奏し、それに合わせて黒猫の格好をしたチアリーダーがぴょんぴょん跳ねる。ここぞとばかりに菓子を売る生協の職員は魔女で、右を向いても左を向いても仮装をした人間が目立った。まともな格好をしている人間が異界に迷い込んだ心地とはまさにこのような状態を指すだろう。
zeppei27
DONEなんとなく続いている主福のお話で、単品でも読めます。お揃いの物を買いに、仲良く出かける二人のお話です。お買い物デートって良いよね(?)>前作:後始末
https://poipiku.com/271957/10920505.html
>まとめ
https://formicam.ciao.jp/novel/ror.html
お揃い 寒さが少しずつ肌身に染みるように、道具にもまた季節の変化は訪れる。障子はたわみが取れてスッと背筋を正し、外に置いた箒は朝に触れると思わず取り落してしまいそうな程に冷たくなる。空気が乾燥しているのだな、と己の手袋を見た福沢諭吉もまた冬支度に想いを馳せていた。衣服にこだわりはないので、せいぜい綿入れや分厚い外套を用意するだけで済むのだが、こと手袋に関してはそうはいかない。
常用している木綿の白手袋は季節構わず洗って使いまわせば良いが、冬場に愛用する革手袋は話が別だ。乾いた皮膚のように艶を失い、深く入った皺は今にも割れてしまいそうである。一度壊れてしまった革は死んでいるので、最早傷を癒して元に戻る術を持たない。世話をするのは死骸を引き取った持ち主の役割だ。
5986常用している木綿の白手袋は季節構わず洗って使いまわせば良いが、冬場に愛用する革手袋は話が別だ。乾いた皮膚のように艶を失い、深く入った皺は今にも割れてしまいそうである。一度壊れてしまった革は死んでいるので、最早傷を癒して元に戻る術を持たない。世話をするのは死骸を引き取った持ち主の役割だ。
zeppei27
DONEなんとなく続いている主福のお話で、単品でも読めます。『拝借』したからには、ね!『返却』しに行く隠し刀と諭吉、そしてFriendペリーの日常話。>前作:柚子
https://poipiku.com/271957/10787205.html
>まとめ
https://formicam.ciao.jp/novel/ror.html
後始末 子供というのは、社会的にまだまだ分別がつかない生き物だと見なされている。故にどれほど大それた悪戯をしでかそうともそれは悪戯に過ぎず、叱責や多少の罰を受けることはあっても大人のように責任を負わされることはない。例外はあれども、少なくとも福沢諭吉はこれまでちょっとした思いつきで躓く羽目になったことはなかった。長じて分別がついてからは、人の道を外れることもなく、実に品行方正な生き方をしてきたので全ては最早無関係の思い出である。
が、自分の思いつきはどれほど大義名分をつけても免責されぬものであったらしい。珍しく身なりを整えた隠し刀が、彼の家で出迎えてくれたと思えば切り出された提案に、諭吉は目を白黒させるばかりだった。
4694が、自分の思いつきはどれほど大義名分をつけても免責されぬものであったらしい。珍しく身なりを整えた隠し刀が、彼の家で出迎えてくれたと思えば切り出された提案に、諭吉は目を白黒させるばかりだった。
れある
MAIKING神山高校に参観日があれば…気が向けば続き書きます
カプなし
神山高校の参観日 とある日の神山高校の昼休み。いつもよりずっと、皆はざわざわとしていて、落ち着きがない。そしてしきりに廊下へと視線を投げる。
その理由は簡単だ。今年初の参観日だからだ。
斯く言うオレは別にいつも通りだ。親には参観日の事なんて言ってねえし、誰も来ないのは分かってるからだ。
そもそも、高校にもなって親に授業を見られるとかイヤに決まってる。
「彰人、どうかしたか?」
立ったまま考えていたオレの思考を、聞き慣れた相棒の声が遮断する。
「……いや、皆浮き足立ってるなーって思った。冬弥のとこは……来ねえか」
「一応日程は伝えたが、忙しいだろうしな」
「言ってるだけ偉いなお前。オレは言ってすらねえよ」
「そうか。……ところで彰人、もう授業開始2分前だ。教室へ戻った方がいい」
1093その理由は簡単だ。今年初の参観日だからだ。
斯く言うオレは別にいつも通りだ。親には参観日の事なんて言ってねえし、誰も来ないのは分かってるからだ。
そもそも、高校にもなって親に授業を見られるとかイヤに決まってる。
「彰人、どうかしたか?」
立ったまま考えていたオレの思考を、聞き慣れた相棒の声が遮断する。
「……いや、皆浮き足立ってるなーって思った。冬弥のとこは……来ねえか」
「一応日程は伝えたが、忙しいだろうしな」
「言ってるだけ偉いなお前。オレは言ってすらねえよ」
「そうか。……ところで彰人、もう授業開始2分前だ。教室へ戻った方がいい」
れある
MAIKING書ききれなかったニーゴお泊り会ネタ🎀がやばいからこそ今出さなきゃって…
ニーゴのお泊り会♪ ある冬の日の作業中だった。外では雪が降っていて、とても寒い。
「あー寒い。エアコンの温度上げようっと」
私はブランケットを膝の上に掛けながら、作業している。
私は立ち上がり、エアコンのリモコンを手に取る。そして迷いなく温度を上げた。エアコンが音を立てて、先程よりも強く暖風を吹き出す。
この冬は例年よりも寒いと言われていて、11月の今でもかなり気温は低かった。このままもっと寒くなるなんて考えられないし、過ごせる自信が無い。しかも私は、夜間定時制で高校に通っているから、普通の人たちよりも寒い時間帯だ。けど、朝起きるのがニガテな私が普通に通える訳もないし、仕方ないことなんだけど。
あ、そういえば自己紹介するのを忘れてたね。
3633「あー寒い。エアコンの温度上げようっと」
私はブランケットを膝の上に掛けながら、作業している。
私は立ち上がり、エアコンのリモコンを手に取る。そして迷いなく温度を上げた。エアコンが音を立てて、先程よりも強く暖風を吹き出す。
この冬は例年よりも寒いと言われていて、11月の今でもかなり気温は低かった。このままもっと寒くなるなんて考えられないし、過ごせる自信が無い。しかも私は、夜間定時制で高校に通っているから、普通の人たちよりも寒い時間帯だ。けど、朝起きるのがニガテな私が普通に通える訳もないし、仕方ないことなんだけど。
あ、そういえば自己紹介するのを忘れてたね。
zeppei27
DONEなんとなく続いている主福のお話で、単品でも読めます。リクエストをいただいた「料理描写(できれば諭吉で)」をテーマに、柚子尽の宴を開く二人のお話。美味しいものを目一杯!>前作:二人遊び(R18)
https://poipiku.com/271957/10767042.html
>まとめ
https://formicam.ciao.jp/novel/ror.html
柚子 季節の移ろいを訴えるのは様々で、例えば朝の空気の冷たさや風の香り、鳥や虫の鳴き声、それに葉の色の変化も忘れられない。今年に別れを告げるように一斉に艶やかな着物を纏って賑わせたかと思うとゆっくりと葉を落としてゆく様は、何度目にしても巡り来る年月に胸を震わせられる。別れを告げるのが葉であるならば、彼らの今年を詰め込んだ結果は文字通りその果実だろう。春は桜桃、夏は西瓜、秋は梨、そうして秋が深まって冬に近づいてくると目立つのは、
「良い香りですね」
柚子だ。通り一つ向こうから漂う強い香りに鼻をくすぐられ、福沢諭吉は思わず足を止めた。農家が運んできたのだろうか、俄かに市でも立ったかのように風に乗った香りが人々を誘う。実際既に引き込まれた人々の喧騒で、隠し刀の長屋がある方角は随分と賑わっているようだった。まさか彼が?これから遊びに行こうと計画していたこともあり、諭吉は足を早めた。
8497「良い香りですね」
柚子だ。通り一つ向こうから漂う強い香りに鼻をくすぐられ、福沢諭吉は思わず足を止めた。農家が運んできたのだろうか、俄かに市でも立ったかのように風に乗った香りが人々を誘う。実際既に引き込まれた人々の喧騒で、隠し刀の長屋がある方角は随分と賑わっているようだった。まさか彼が?これから遊びに行こうと計画していたこともあり、諭吉は足を早めた。
企画倉庫
DOODLEブツメツアフター小説です!自宅の紅×騎士で創作BLな話です(*'ω'*)
青い春から続く道、玄い冬をも君と笑み。逢禍学園校舎全壊。俺達の青春が在った世界は終わりを迎えた。涙と笑顔に見上げられた美しい青空の広がったその日から、先生も生徒も在校生も卒業生も大忙しで、親兄妹は兎も角仲の良い友達とも面と向かう時間が取れなかったくらいだ。それでもどうにか白兄さんの卒業式が無事終わり「外の世界を見てみたい」と旅に出た兄さんを見送った後、俺は妹である灰ちゃんの親友……許されるなら俺も友人と思っている男、柳田騎士君を個人的な用事で呼び出した。
「紅君、どうしたんだ? 灰ちゃんがいないのに俺を呼び出すなんて。……灰ちゃんのことで何か相談?」
カタンカタンと無機質な音を立てて彼は現れる。生命力を傾けた義肢が動いている音だ。彼は戦いの中で両足を標識化させて、その進行が随分と早かった。彼は物をよく考える性質だから、七億不思議の存在にさえ肯定的な男だから、迷い悩むことで肉体を変質させる七億不思議とは相性が悪いと言えた。旋律先生の幼馴染だという天竺先生がドッ祓いの能力を持つ人形遣いでなければ、彼はより苦労をして両足がない人生を生きることになっただろう。まるで元から自分の両足だったみたいに使っているその義肢を、彼は決して簡単に使い熟したわけではない。
3186「紅君、どうしたんだ? 灰ちゃんがいないのに俺を呼び出すなんて。……灰ちゃんのことで何か相談?」
カタンカタンと無機質な音を立てて彼は現れる。生命力を傾けた義肢が動いている音だ。彼は戦いの中で両足を標識化させて、その進行が随分と早かった。彼は物をよく考える性質だから、七億不思議の存在にさえ肯定的な男だから、迷い悩むことで肉体を変質させる七億不思議とは相性が悪いと言えた。旋律先生の幼馴染だという天竺先生がドッ祓いの能力を持つ人形遣いでなければ、彼はより苦労をして両足がない人生を生きることになっただろう。まるで元から自分の両足だったみたいに使っているその義肢を、彼は決して簡単に使い熟したわけではない。
zeppei27
DONE何となく続いている主福の話で、単品でも読めます。人が置いていった物だらけの長屋を整理できない隠し刀と、何故できないかを考えながらお手伝いをする諭吉のお話です。ちょっとしんみり。>前作:ありふれた椿事
https://poipiku.com/271957/10717664.html
>まとめ
https://formicam.ciao.jp/novel/ror.html
思い出道楽 物、物、物。見るものを圧倒するような無言の存在たちに、福沢諭吉はただただ口をつぐむばかりだった。茶箪笥、書見台、脇息に座布団。座布団の上には信楽焼だろう素朴な猫の焼き物と本物の野良猫が寝転んでいる。埃っぽい床には扇子や団扇が箱に乱雑に入れられ、その隣には端切れの山が茶と書かれた箱にどっさりと積まれていた。上を向けば民芸品の達磨が目のない虚を呈しており、書物も乱雑に散らばってやる気がない。
商品なぞ見つけたい人間だけが見つけるが良い、という堂々たる様子はおよそ店と呼ぶには憚られた。第一、物がひしめき合って店内全体が暗く、入り込んだらば底知れぬほど入り組んでいる。見る者が見れば、これは宝の山なのだろう。現に物の合間から覗く人影は少なくはない。しかし、部外者にしてみればここは塵芥の城にも等しかった。
7090商品なぞ見つけたい人間だけが見つけるが良い、という堂々たる様子はおよそ店と呼ぶには憚られた。第一、物がひしめき合って店内全体が暗く、入り込んだらば底知れぬほど入り組んでいる。見る者が見れば、これは宝の山なのだろう。現に物の合間から覗く人影は少なくはない。しかし、部外者にしてみればここは塵芥の城にも等しかった。
zeppei27
DONEマーカス、君とはもっといろいろ話ができると思っていたのに!横浜貴賓館関係メンバーでワイワイしたい!マーカスのお悩み相談会に、刀が伊賀七とサトウと取り組む話です。諭吉は最後に登場します。>前作:影遊び
https://poipiku.com/271957/10694953.html
>まとめ
https://formicam.ciao.jp/novel/ror.html
ありふれた椿事 世界は広い。日々の生活に追われていると、目先の環境しか考えられないものだが、その目先をどんどん遠くに伸ばしてゆくとやがては海を出て、そうして別の国にとたどり着くのだから面白い。自分は日本のどこか、ではなく世界のどこか、に暮らしているのだと唐突に思い当たって驚かずにはいられない。隠し刀も、福沢諭吉に出会うまでは自分の住む陸地のことを考えるので精一杯だった。だからこそ、自分の片割れを見つけることができなかったとも言える。
理屈はすんなりと飲み込めた。さりとて日常生活の中で異国に想いを馳せることはまだまだ少ないのが世情で、時折異国のものを見かけ、異人を目にして、ああ世界は広いと想起される程度のことである。ある意味自分よりも、尊王攘夷を唱える志士たちの方が世界を実感していると言えよう。忌み嫌う人間の方が高い意識を抱いているというのは皮肉な話だった。
5880理屈はすんなりと飲み込めた。さりとて日常生活の中で異国に想いを馳せることはまだまだ少ないのが世情で、時折異国のものを見かけ、異人を目にして、ああ世界は広いと想起される程度のことである。ある意味自分よりも、尊王攘夷を唱える志士たちの方が世界を実感していると言えよう。忌み嫌う人間の方が高い意識を抱いているというのは皮肉な話だった。
Do not Repost・東龍
TRAININGお題【けもみみ】で、オージュ先生の好感度が爆上がりするだけのモン出来た。※画像版やイラスト付→https://galleria.emotionflow.com/s/45784/710525.html
その男の周囲だけ、空気がどうも淀んでいる気がする。
カラフルな子供服売り場の前で、フードを深くかぶった黒いローブの長身の男が、真顔でプリチーな商品を吟味している。
それ自体は何も問題はないはずなのだが、周囲のカップルや子連れの母親らは、その不気味な男を気味悪がって距離をとっていた。
男はその冷たい目線を特に気にせず、可愛らしい犬猫のプリチーな服やグッズを手にとって眺めている。コップに描かれた、下手くそなユル可愛い犬猫のイラストを真顔で凝視しており、その鋭い眼に射抜かれ続けているユルい犬猫がだんだん可哀想に見えてくる。
オージュ・ウォゲは、これまでの人生の中でいわゆる『可愛いもの』というものに、さほど興味がなかった。むしろ、真逆のものである『怖いもの』の方を好んで見たり、選んだり、買ったりしてきた。
2433カラフルな子供服売り場の前で、フードを深くかぶった黒いローブの長身の男が、真顔でプリチーな商品を吟味している。
それ自体は何も問題はないはずなのだが、周囲のカップルや子連れの母親らは、その不気味な男を気味悪がって距離をとっていた。
男はその冷たい目線を特に気にせず、可愛らしい犬猫のプリチーな服やグッズを手にとって眺めている。コップに描かれた、下手くそなユル可愛い犬猫のイラストを真顔で凝視しており、その鋭い眼に射抜かれ続けているユルい犬猫がだんだん可哀想に見えてくる。
オージュ・ウォゲは、これまでの人生の中でいわゆる『可愛いもの』というものに、さほど興味がなかった。むしろ、真逆のものである『怖いもの』の方を好んで見たり、選んだり、買ったりしてきた。
serize7b2
DONE⚠️BL/鳴龍61巻act.2のこっそりお見舞いで🍥🐉妄想。りえ目線です。初🍥🐉SS。
全巻読破してから文章書こうと思ってましたが、60巻台入ったので読んだ範囲で書きたいネタをつい書いちゃいました。🍥🐉超萌えますね…! 4
serize7b2
DONE⚠️BL/アンセフィ若ジールのプレイアブル化・原作17周年記念です。大人になったことを実感する二人☕️
エピ2はエピ1の1992年から一年経っていない頃とふぁみ通インタビューに載っていたので、2000年までの付き合いとしては7〜8年くらい?この後別れる運命ではありますが…😢 7
zeppei27
DONE!上げ直し版です!いつかは書きたいけれども迷っていた片割れのお話です。わかりそうでわからず、相手はすっかり自分を知っているというのは、片割れならばありそうな話だと思いながら書いていました。名前はお好みでご想像ください。
>まとめ
https://formicam.ciao.jp/novel/ror.html
影遊び 江戸の街を賑わせるのは江戸八百八町といった都市の大きさは言うまでもなく、それを支える大小様々な店である。中でも屋台は昼と夜とでガラリと看板を変えてふらりと現れるものだから面白い。大概の屋台は流しが多く、これまた一期一会であると言うのが時に話題を呼ぶ。普段はあまり足を向けることのない人間でも、自然誘われるものが何某かあるというもので、福沢諭吉もまた、藩邸でぶらぶら時間を潰す朋輩から耳寄りな話を聞いて心惹かれていた。
「鍋焼きうどん、ですか。少し季節が早い気もしますね」
「夜にはちょうど良いってもんでさ。あれさ、それも味付けが上方仕込みでさっぱりとしてるんだな。具も天ぷらじゃなしに狐揚げやら鶏肉が入っててねえ。食べ出があっていいよ。何より、ここから近いってのも便利だ」
8484「鍋焼きうどん、ですか。少し季節が早い気もしますね」
「夜にはちょうど良いってもんでさ。あれさ、それも味付けが上方仕込みでさっぱりとしてるんだな。具も天ぷらじゃなしに狐揚げやら鶏肉が入っててねえ。食べ出があっていいよ。何より、ここから近いってのも便利だ」
てんていのねこ
MOURNINGDX3rdパロディのレイチュリ。🦚ジャーム堕ち(=キャラロスト)時空のお話。
人ならざる化物に堕ちてもずっと一緒の二人がいい。
「“祝福の子”カカワーシャ、君に誓おう。もし僕達のどちらかでも人間として終わりを迎えた時。互いを食い合い、果てよう。」
「ははっ、それって大損失なんじゃない?」
「君が人間でなくなれば、僕も日常への寄る辺を失いジャームとなる。その後の損害を考えれば些細なことだ。」
「教授…それって…。」
「君を愛している。君のいない日常に戻れない程に。」
「あはは…僕もだよ、ベリタス。君のことを絶対手放したくない。あっ、でも君を絶望させた世界には復讐したくなるかも。」
あの時、そんな熱烈な告白をされたっケ。
だから、僕タチは今。
「あははははははっ!ムダだよ!君の策謀も、運も!すべて僕タチが喰らい尽くした!君タチが望んだ通りにネ!」
901「ははっ、それって大損失なんじゃない?」
「君が人間でなくなれば、僕も日常への寄る辺を失いジャームとなる。その後の損害を考えれば些細なことだ。」
「教授…それって…。」
「君を愛している。君のいない日常に戻れない程に。」
「あはは…僕もだよ、ベリタス。君のことを絶対手放したくない。あっ、でも君を絶望させた世界には復讐したくなるかも。」
あの時、そんな熱烈な告白をされたっケ。
だから、僕タチは今。
「あははははははっ!ムダだよ!君の策謀も、運も!すべて僕タチが喰らい尽くした!君タチが望んだ通りにネ!」
zeppei27
DONEなんとなく続いている主福で、単品でも読めます。リクエストでいただいた「月見」をテーマに、月に魅入られ月を楽しむ、二人のロマンチックなお話です。>前作:『餅は焼いても揚げても良い』
https://poipiku.com/271957/10615331.html
>まとめ
https://formicam.ciao.jp/novel/ror.html
月を食む 人の心は変幻自在で移ろいやすく、今日花の可憐さに目を細めたらば翌日は懐の寂しさを嘆き、はたまた子の成長に目を見張る。世間そのものが変化に富んでいる中で、その一つ一つに感応しているとも言えるだろう。季節の移ろいに、事実以上の想いを見出すに至った隠し刀もまた、そうした俗世の眼差しを解するようになっていた。なべてそれは情人の福沢諭吉や、この歳になってようやく得た友人諸氏のお陰である。『人』の心は、人が知っている。
故に自分もようやっと『人』になったものだと心密かに達成感を覚えるなどしていたのだが、実はまだまだであったらしい。横浜の写真館に、依頼された写真を届けついでに馴染みの飯塚伊賀七を訪ねた隠し刀は、真っ黒な紙を前にうんうん唸る友人の姿に首を傾げた。
5879故に自分もようやっと『人』になったものだと心密かに達成感を覚えるなどしていたのだが、実はまだまだであったらしい。横浜の写真館に、依頼された写真を届けついでに馴染みの飯塚伊賀七を訪ねた隠し刀は、真っ黒な紙を前にうんうん唸る友人の姿に首を傾げた。
takaru
SPOILERきみさんへ捧げた🐔流花と人間流花がひょんなことから入れ替わってしまう小話です。🐔流花のセリフは『』
人間流花のセリフは「」
好き勝手に書いたのでそれでも大丈夫な方はよろしくお願いします。
パスワードは私ときみさんのサークル名
※ヒント合同誌で出した🐯のページに書いてます。 9147
zeppei27
DONEなんとなく続いている主福で、単品でも読めます。勉強のご褒美に、揚げ餅を食べながら海を見るデートを楽しむ二人のお話です。美味しい揚げ餅が食べたい!>前作:『有意義な休日』
https://poipiku.com/271957/10591789.html
>まとめ
https://formicam.ciao.jp/novel/ror.html
餅は焼いても揚げても良い ぼり、ぼり、ぼりぼり、ざ、ざっ、がりん、ざく、ざく。辺りが静かなためか、ひどく大きく響く音に、福沢諭吉は悩ましい表情を浮かべた。隠し刀との勉強会も大詰めを迎え、早く切り上げて少し休もうかと外に出た先に、煎餅屋の屋台が待ち構えていたのが運の尽きである。膝上に揚げ餅の包、傍らに麦酒。見渡す限りの青い海。ちょうど夕陽が傾きかけた頃で、情人との雰囲気作りは完璧なはずだった。悔しさを滲ませて、しばし過去を振り返るとしよう。
横浜貴賓館を出るなり、感覚の優れた隠し刀はすぐさま異変に気が付いた。否、彼でなくとも誰でもわかっただろう。
「諭吉、あの香ばしい匂いがするものを食べても良いか?」
「揚げ餅ですね。ええ、食べましょう。僕も久々です」
2511横浜貴賓館を出るなり、感覚の優れた隠し刀はすぐさま異変に気が付いた。否、彼でなくとも誰でもわかっただろう。
「諭吉、あの香ばしい匂いがするものを食べても良いか?」
「揚げ餅ですね。ええ、食べましょう。僕も久々です」
byakugun26
REHABILIリハビリを兼ねて久しぶりにお話を書きました。これでも留文です。
ちゃんとこの後、文次郎が頑張って襲い受けします
罠「――おい、文次郎!」
い組の部屋の扉を勢いよく開け放ち、否応なしに部屋へと入ってきた男を見やれば、その男がどれほど怒り狂っているかなど、仙蔵は嫌でも把握した。
そこには用具委員会委員長の男が眉間に皺を寄せ、吊り上がった三白眼をより一層鋭くさせながら同室を睨んでいる。
「正門付近の塀が破損していた! お前が壊したんだろう!」
その言葉を聞いてしまえば、突然現れた男が何を怒っているのか、仙蔵は容易に想像がついてしまう。
文次郎は、うまくいかないことがあれば所構わず頭突きをする男だ。その光景を仙蔵は何度見てきたか知らない。先程行われた授業で実力を発揮できなかった文次郎が、己の不甲斐なさに苛立って悪癖なそれを披露してもおかしくはない。よくあることだと話を片付けてしまいたいところだが、用具委員会からしたらそうはいかないのだろう。当の本人の胸倉を掴んでは、目を爛々とさせている。
1922い組の部屋の扉を勢いよく開け放ち、否応なしに部屋へと入ってきた男を見やれば、その男がどれほど怒り狂っているかなど、仙蔵は嫌でも把握した。
そこには用具委員会委員長の男が眉間に皺を寄せ、吊り上がった三白眼をより一層鋭くさせながら同室を睨んでいる。
「正門付近の塀が破損していた! お前が壊したんだろう!」
その言葉を聞いてしまえば、突然現れた男が何を怒っているのか、仙蔵は容易に想像がついてしまう。
文次郎は、うまくいかないことがあれば所構わず頭突きをする男だ。その光景を仙蔵は何度見てきたか知らない。先程行われた授業で実力を発揮できなかった文次郎が、己の不甲斐なさに苛立って悪癖なそれを披露してもおかしくはない。よくあることだと話を片付けてしまいたいところだが、用具委員会からしたらそうはいかないのだろう。当の本人の胸倉を掴んでは、目を爛々とさせている。