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TRAININGむざこく30本ノック②3日目
※注意※
無惨様は京都市中京区出身、黒死牟は東京都世田谷区出身。
無惨様的には「東京は田舎」「関西の食文化が最高」
うちの無惨様は素が出ると関西弁になる。
出身地東西食対決(カレーの肉が牛か豚かとか…) それは無惨の何気無い一言から始まった。
「どうして肉じゃがが豚肉なのだ」
質問の意味が解らず、黒死牟は首を傾げる。
「お口に合いませんでしたか?」
「そういう意味ではなく……」
普段、多忙な二人は外食が多い。あとは無惨が料理上手なので、手料理と言えば無惨が喜んでキッチンに立つのだが、たまには大好きな彼氏に手料理を食べさせたいという気持ちが働いた黒死牟は、手料理の定番「肉じゃが」を作って出したのだが、完成したものを見て、無惨は無言で、一向に箸をつけようとしない。
なるべく無惨好みの薄味になるように気を付けた。醤油で濃いめの味付けをしたいところを、出汁をきかせた薄味で、みりんや三温糖を多めに入れて少々甘めに作ったが、食べる前から質問を食らい、黒死牟は落ち込んでいる。
3256「どうして肉じゃがが豚肉なのだ」
質問の意味が解らず、黒死牟は首を傾げる。
「お口に合いませんでしたか?」
「そういう意味ではなく……」
普段、多忙な二人は外食が多い。あとは無惨が料理上手なので、手料理と言えば無惨が喜んでキッチンに立つのだが、たまには大好きな彼氏に手料理を食べさせたいという気持ちが働いた黒死牟は、手料理の定番「肉じゃが」を作って出したのだが、完成したものを見て、無惨は無言で、一向に箸をつけようとしない。
なるべく無惨好みの薄味になるように気を付けた。醤油で濃いめの味付けをしたいところを、出汁をきかせた薄味で、みりんや三温糖を多めに入れて少々甘めに作ったが、食べる前から質問を食らい、黒死牟は落ち込んでいる。
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TRAININGむざこく30本ノック29日目
長期休暇 きっかけは鳴女たち女性スタッフからのストライキだった。
「休みをください!!!!」
悲痛な叫びだ。仕事で趣味、休養、勉強、彼氏と遊ぶ時間、様々なものを犠牲にしているという訴えだった。
「勝手に休めば良いだろう」
「貴方がたが休まないと、他の者が休めませんから!」
ブチ切れた鳴女に言われ、鬼舞辻と黒死牟は国会閉会中の暇そうな1週間に、まとめて休暇を取ることにした。以降、他のスタッフも交代で長期休暇を取るそうだ。
いつも「休みが欲しい」と騒ぐ鬼舞辻だったので、さぞかし喜ぶかと思いきや、初日は泥のように眠ると、それからは何をしたら良いのか解らず、テラスでぼんやりと読みかけだった小説を読んでいた。
黒死牟も同じように鬼舞辻と初日は寝ていたが、翌日はこっそり持ち帰った仕事をして過ごすなど、二人揃って何をすれば良いのか解らない状態だった。
1381「休みをください!!!!」
悲痛な叫びだ。仕事で趣味、休養、勉強、彼氏と遊ぶ時間、様々なものを犠牲にしているという訴えだった。
「勝手に休めば良いだろう」
「貴方がたが休まないと、他の者が休めませんから!」
ブチ切れた鳴女に言われ、鬼舞辻と黒死牟は国会閉会中の暇そうな1週間に、まとめて休暇を取ることにした。以降、他のスタッフも交代で長期休暇を取るそうだ。
いつも「休みが欲しい」と騒ぐ鬼舞辻だったので、さぞかし喜ぶかと思いきや、初日は泥のように眠ると、それからは何をしたら良いのか解らず、テラスでぼんやりと読みかけだった小説を読んでいた。
黒死牟も同じように鬼舞辻と初日は寝ていたが、翌日はこっそり持ち帰った仕事をして過ごすなど、二人揃って何をすれば良いのか解らない状態だった。
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TRAININGむざこく30本ノック28日目
※ダンスのマナーは適当なので、ふわっと雰囲気で読んでください。
ボールルーム「Shall we dance?」
シャンパンを飲みながら談笑している鬼舞辻にダンスを申し込んだのは、秘書の黒死牟だった。
「どうした、いきなり」
「いえ……」
鬼舞辻が真顔で聞き返すと、耳まで真っ赤になっているのが解る。鬼舞辻から面白がって誘うならまだしも、あの堅物の秘書がこんな気障な真似をするのは珍しい。ボーイにグラスを渡し、黒死牟の差し出した手を取って、ダンスフロアの中央へ行く。二人の登場に会場の視線が一気に集まる。周囲に手を振りながら、鬼舞辻は黒死牟と向かい合い姿勢を正す。
「お前、フォローは出来るのか?」
「いえ……ダンスは不得手で……リード役の基本的なステップくらいしか……」
「だよな……よくそれで、私にダンスを申し込んだな」
1601シャンパンを飲みながら談笑している鬼舞辻にダンスを申し込んだのは、秘書の黒死牟だった。
「どうした、いきなり」
「いえ……」
鬼舞辻が真顔で聞き返すと、耳まで真っ赤になっているのが解る。鬼舞辻から面白がって誘うならまだしも、あの堅物の秘書がこんな気障な真似をするのは珍しい。ボーイにグラスを渡し、黒死牟の差し出した手を取って、ダンスフロアの中央へ行く。二人の登場に会場の視線が一気に集まる。周囲に手を振りながら、鬼舞辻は黒死牟と向かい合い姿勢を正す。
「お前、フォローは出来るのか?」
「いえ……ダンスは不得手で……リード役の基本的なステップくらいしか……」
「だよな……よくそれで、私にダンスを申し込んだな」
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TRAININGむざこく30本ノック27日目
夏場に、前世では絶対に見られなかった「ちょっと日に焼けたむざんさま」を目の当たりにして… 夏特有の集中豪雨で、南方の一部地域が被災し、当時、環境省の副大臣をしていた鬼舞辻は視察に行くことになった。
「はぁ? こんな時に政治家が背広組を引き連れて行っても、邪魔なだけだろう」
「恒例ですので……」
毎度毎度あんなの迷惑なのに、と言っていたが、副大臣という立場上、仕方が無いと黒死牟に説得され出向くこととなった。
が。
「先生、流石にその格好は……」
「お前も動きやすい格好で行け。あと、現地の役人に出迎えは無用だと言っておけ」
確かに彼の言い分は正しい。同行させる人間も黒死牟ひとりで良いと、背広組は霞ヶ関に待機するよう命じている。そして、自分自身はジーンズにスニーカー、Tシャツ姿で、長い前髪を高い位置でマンバンにしている。
1425「はぁ? こんな時に政治家が背広組を引き連れて行っても、邪魔なだけだろう」
「恒例ですので……」
毎度毎度あんなの迷惑なのに、と言っていたが、副大臣という立場上、仕方が無いと黒死牟に説得され出向くこととなった。
が。
「先生、流石にその格好は……」
「お前も動きやすい格好で行け。あと、現地の役人に出迎えは無用だと言っておけ」
確かに彼の言い分は正しい。同行させる人間も黒死牟ひとりで良いと、背広組は霞ヶ関に待機するよう命じている。そして、自分自身はジーンズにスニーカー、Tシャツ姿で、長い前髪を高い位置でマンバンにしている。
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TRAININGむざこく30本ノック26日目
秘書のサングラスからチラッと覗く切れ長の目にイライラムラムラする無惨様 人前で絶対にサングラスを外すな。
それは鬼舞辻からの一番初めに出された命令だった。勿論、理由など尋ねるわけもなく「御意」の一言で終わり、黒死牟は何の疑問も抱かず実行している。
黒死牟という名前も鬼舞辻が名付けた偽名で、彼の素性の解るものは全て隠されている。
秘密主義の鬼舞辻らしいと思い、黙って従っているのだが、夜間のサングラスだけは実に鬱陶しいこと、この上ない。
しかし、鬼舞辻の許可なく外せず、目上の人間相手でもサングラス姿なので無礼だと叱られることもあるが、鬼舞辻が睥睨することで黙らせることが出来てしまうので、サングラスを外す理由がどんどん減ってしまい、四六時中サングラスをするはめになってしまった。
1082それは鬼舞辻からの一番初めに出された命令だった。勿論、理由など尋ねるわけもなく「御意」の一言で終わり、黒死牟は何の疑問も抱かず実行している。
黒死牟という名前も鬼舞辻が名付けた偽名で、彼の素性の解るものは全て隠されている。
秘密主義の鬼舞辻らしいと思い、黙って従っているのだが、夜間のサングラスだけは実に鬱陶しいこと、この上ない。
しかし、鬼舞辻の許可なく外せず、目上の人間相手でもサングラス姿なので無礼だと叱られることもあるが、鬼舞辻が睥睨することで黙らせることが出来てしまうので、サングラスを外す理由がどんどん減ってしまい、四六時中サングラスをするはめになってしまった。
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TRAININGむざこく30本ノック24日目
始祖が秘書上を肩に担いで安産型の尻を叩く 誰だ、先生の椅子でふんぞり返っている感じの悪い男は。
そう思うものの、その男は鬼舞辻に瓜二つで、寧ろ、鬼舞辻よりも妙な大物感がある。親戚など血縁者はすべて把握しているが、あんな男は存在していなかった。
警戒する黒死牟を見て、退屈そうに欠伸をする。
「おい、お前」
「お前と呼ばれる筋合いはない」
声音まで似ていることに驚いたが、毅然とした態度で黒死牟が返事をすると、不機嫌そうに眉間に皺を寄せる。机に右肘をついて首を傾けたまま、下から睨めつけるように黒死牟を見る。
「口の利き方に気を付けろ、継国巌勝」
本名を呼ばれ、黒死牟の指先が僅かに震えるが、ぐっと拳を握り締め耐えた。その名を知る者は鬼舞辻しかいない。久方振りにその名で呼ばれ、反応する自分にも驚いた。
3030そう思うものの、その男は鬼舞辻に瓜二つで、寧ろ、鬼舞辻よりも妙な大物感がある。親戚など血縁者はすべて把握しているが、あんな男は存在していなかった。
警戒する黒死牟を見て、退屈そうに欠伸をする。
「おい、お前」
「お前と呼ばれる筋合いはない」
声音まで似ていることに驚いたが、毅然とした態度で黒死牟が返事をすると、不機嫌そうに眉間に皺を寄せる。机に右肘をついて首を傾けたまま、下から睨めつけるように黒死牟を見る。
「口の利き方に気を付けろ、継国巌勝」
本名を呼ばれ、黒死牟の指先が僅かに震えるが、ぐっと拳を握り締め耐えた。その名を知る者は鬼舞辻しかいない。久方振りにその名で呼ばれ、反応する自分にも驚いた。
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TRAININGむざこく30本ノック23日目
お互い浮気相手として遊びで始まった二人が本気になっていくむざこく「黒死牟、お前は付き合っている相手がいるのか?」
「え?」
突然の質問に持っていたスマホを落とした。
それを今、聞くか? と黒死牟は思った。それは三度目のセックスが終わった、ベッドの中で聞かれた。
「あの……」
「いや、いい。お前は好い男だからな、付き合っている女のひとりやふたり、いてもおかしくはないな」
煙草を吸いながら自己完結する鬼舞辻だが、どうして今更、そんなことを聞いてきたのか解らない。
「おりますが……」
数ヶ月前、付き合いで行った合コンで知り合った女性と交際していたが、結婚したいという向こうの熱量が酷すぎて、黒死牟の感情がついていかず疎遠になっていた。
「そういう先生もいらっしゃいますよね?」
2042「え?」
突然の質問に持っていたスマホを落とした。
それを今、聞くか? と黒死牟は思った。それは三度目のセックスが終わった、ベッドの中で聞かれた。
「あの……」
「いや、いい。お前は好い男だからな、付き合っている女のひとりやふたり、いてもおかしくはないな」
煙草を吸いながら自己完結する鬼舞辻だが、どうして今更、そんなことを聞いてきたのか解らない。
「おりますが……」
数ヶ月前、付き合いで行った合コンで知り合った女性と交際していたが、結婚したいという向こうの熱量が酷すぎて、黒死牟の感情がついていかず疎遠になっていた。
「そういう先生もいらっしゃいますよね?」
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TRAININGむざこく30本ノック22日目
銀座 銀座四丁目の交差点に立ち、時計台を眺めていた。
「あの時計塔が出来て90年になるのだな」
ライトアップされた建物を見上げ、無惨が呟いた。
「早いものですね……当時の元号は……」
「明治だな。まぁ、今の時計塔は昭和になって出来た二代目だ」
無惨はボルサリーノのフェルトハットを被り直し、黒死牟と共に夜の銀座を歩いた。
「大正くらいになると、夜も随分過ごしやすくなったと思ったが、近代化が進むにつれ、昼に拘る理由がなくなるほどに、夜は明るく、賑やかになったな」
「そうですね……この銀座に関しては……夜の方が華やかな場所もございますね……」
無惨はこの銀座という街を甚く気に入っていた。流行りのものが何でも手に入り、高級感があり、成熟した街だとよく話していた。
1198「あの時計塔が出来て90年になるのだな」
ライトアップされた建物を見上げ、無惨が呟いた。
「早いものですね……当時の元号は……」
「明治だな。まぁ、今の時計塔は昭和になって出来た二代目だ」
無惨はボルサリーノのフェルトハットを被り直し、黒死牟と共に夜の銀座を歩いた。
「大正くらいになると、夜も随分過ごしやすくなったと思ったが、近代化が進むにつれ、昼に拘る理由がなくなるほどに、夜は明るく、賑やかになったな」
「そうですね……この銀座に関しては……夜の方が華やかな場所もございますね……」
無惨はこの銀座という街を甚く気に入っていた。流行りのものが何でも手に入り、高級感があり、成熟した街だとよく話していた。
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TRAININGむざこく30本ノック20日目
同衾 夕暮れ時に降り出した雨は一向に止む気配はなく、小雨になるのを待っているうちに深夜になった。
「雨が降るからと早めに皆を帰らせて良かったですね」
観測史上最多の雨量になると言われていたので、雨が降る前に他のスタッフは帰らせていた。事務所内には鬼舞辻と黒死牟だけだった。
「この雨だと、車で帰るのも危ないな」
「えぇ、冠水している箇所もあるようで、基本的に職場での待機を推奨しているようです」
鬼舞辻は明日までに目を通したい資料があるから、と事務所に残るつもりだったようで、一人では何かあっては困るからと黒死牟も残っていたのだ。
「近くのホテルを探しましょうか?」
黒死牟が提案するが、ここで自分がホテルに泊まると、「議員様の特権だ」と騒ぐ連中がいるからやめておくと事務所に泊まることにしたようだ。
3419「雨が降るからと早めに皆を帰らせて良かったですね」
観測史上最多の雨量になると言われていたので、雨が降る前に他のスタッフは帰らせていた。事務所内には鬼舞辻と黒死牟だけだった。
「この雨だと、車で帰るのも危ないな」
「えぇ、冠水している箇所もあるようで、基本的に職場での待機を推奨しているようです」
鬼舞辻は明日までに目を通したい資料があるから、と事務所に残るつもりだったようで、一人では何かあっては困るからと黒死牟も残っていたのだ。
「近くのホテルを探しましょうか?」
黒死牟が提案するが、ここで自分がホテルに泊まると、「議員様の特権だ」と騒ぐ連中がいるからやめておくと事務所に泊まることにしたようだ。
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TRAININGむざこく30本ノック19日目
ピンヒール「無惨様……」
「なんだ」
「それは……婦人物の履物では……」
「そうだが」
女装……もとい、女性の姿に擬態はしていない。男の姿、それもスーツ姿のまま、12センチのハイヒールを履いている。
艶々の真っ黒なパテントレザーにピンヒールの内側と靴底は真っ赤で、強烈な双方の色が無惨の足の甲を更に白く見せている。その上、カットが浅く、プラットフォームが無いので、爪先立ち状態の足の指の隙間が見えて、妙に艶めかしい。
しかし、上記の説明はあくまでも無惨、もしくは第三者目線の感想であり、黒死牟からすれば、竹馬のように歩きにくそうな靴を、何故にあのように嬉しそうに履くのか理解に苦しんでいた。無惨と好い仲になり数百年という長い月日が流れた為、近代的な女性の服装の性的な魅力がさっぱり解らなくなってしまった黒死牟は、無惨のハイヒールに何の魅力も感じないのだ。
1045「なんだ」
「それは……婦人物の履物では……」
「そうだが」
女装……もとい、女性の姿に擬態はしていない。男の姿、それもスーツ姿のまま、12センチのハイヒールを履いている。
艶々の真っ黒なパテントレザーにピンヒールの内側と靴底は真っ赤で、強烈な双方の色が無惨の足の甲を更に白く見せている。その上、カットが浅く、プラットフォームが無いので、爪先立ち状態の足の指の隙間が見えて、妙に艶めかしい。
しかし、上記の説明はあくまでも無惨、もしくは第三者目線の感想であり、黒死牟からすれば、竹馬のように歩きにくそうな靴を、何故にあのように嬉しそうに履くのか理解に苦しんでいた。無惨と好い仲になり数百年という長い月日が流れた為、近代的な女性の服装の性的な魅力がさっぱり解らなくなってしまった黒死牟は、無惨のハイヒールに何の魅力も感じないのだ。
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TRAININGむざこく30本ノック18日目
下手な嘘 鬼にした者たちの思考を読み取れることは、便利だが不愉快なことも多い。
目の前で媚び諂っている慇懃無礼な雑魚の内心は恐怖、憎悪、野心、どす黒いものに満ち溢れ、同じ空気を吸うのも不愉快なので、気に入らない鬼は即刻処分した。
そんな配下の中で、唯一、自分に必要以上の恐れを持たず、敬意を持って接してくれる男がいた。
元鬼狩りの黒死牟だ。
主の首を持って、こちらに寝返った男だ。いつ寝首を掻かれるか解らない、信用ならない男だと警戒していたが、この男の胸の内は口に出して言う言葉とほぼ同じであった。
「私が恐ろしくはないのか?」
「その強さには……畏敬の念を抱いております……」
それは世辞などではなく、本心のようだ。
1504目の前で媚び諂っている慇懃無礼な雑魚の内心は恐怖、憎悪、野心、どす黒いものに満ち溢れ、同じ空気を吸うのも不愉快なので、気に入らない鬼は即刻処分した。
そんな配下の中で、唯一、自分に必要以上の恐れを持たず、敬意を持って接してくれる男がいた。
元鬼狩りの黒死牟だ。
主の首を持って、こちらに寝返った男だ。いつ寝首を掻かれるか解らない、信用ならない男だと警戒していたが、この男の胸の内は口に出して言う言葉とほぼ同じであった。
「私が恐ろしくはないのか?」
「その強さには……畏敬の念を抱いております……」
それは世辞などではなく、本心のようだ。
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TRAININGむざこく30本ノック11日目
行かないで 無惨が生まれ育った時代を考えると、彼は一緒に住むより通う方が馴染みあるのだろう。
愛しい相手と初めて夜を共にして「逢ひ見てののちの心にくらぶれば 昔はものを思はざりけり」などと後朝の歌を詠むような時代を生きていたので、通い婚に慣れ親しみすぎているのだろう。だからこそ、潜伏先を多数作って上手く立ち回れるのだろう。
中でも一番足を運ぶのは、黒死牟のところであった。
日が暮れた頃に黒死牟の住まいに向かうが、無惨としては「通い婚」という意識はない。あくまでも聞き取り調査である。なので、業務報告を受けたら、さっさと帰って自分の時間を過ごしたいのだ。
しかも、報告といっても、せいぜい柱を倒したくらいで、青い彼岸花は見つからないし、産屋敷の居所も掴めない。無惨の望む報告は何ひとつ返ってこないのだ。
1732愛しい相手と初めて夜を共にして「逢ひ見てののちの心にくらぶれば 昔はものを思はざりけり」などと後朝の歌を詠むような時代を生きていたので、通い婚に慣れ親しみすぎているのだろう。だからこそ、潜伏先を多数作って上手く立ち回れるのだろう。
中でも一番足を運ぶのは、黒死牟のところであった。
日が暮れた頃に黒死牟の住まいに向かうが、無惨としては「通い婚」という意識はない。あくまでも聞き取り調査である。なので、業務報告を受けたら、さっさと帰って自分の時間を過ごしたいのだ。
しかも、報告といっても、せいぜい柱を倒したくらいで、青い彼岸花は見つからないし、産屋敷の居所も掴めない。無惨の望む報告は何ひとつ返ってこないのだ。
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TRAININGむざこく30本ノック8日目
口紅 あぁ、まただ。
彼がプライベートで車を使用すると、必ずシートの下から口紅が出てくるのだ。
毎度毎度、黒いケースにココマークが入った口紅だ。ただ、今回は白いケースで金色のココマークが入っている。
このブランドを使うような女性とばかり付き合っているのか、それとも、ずっと同じ人と交際が続いているのか。
小さな口紅が己の存在を主張するかのようで不愉快なので、見つけた時は問い詰めもせず速やかに捨てていた。
しかし、こうして度々出てくると気が滅入る。それに一本五千円もすると知り、捨てるのがちょっと勿体無いな……と思っていた。
ネットで調べた時、値段にも驚いたが、その深い赤の妖艶さに胸が痛んだ。
女はたかが口紅一本に五千円も払う。彼に美しいと言われたいがためだけに。そして、その赤い唇で彼に愛の言葉を囁くのだ。
1782彼がプライベートで車を使用すると、必ずシートの下から口紅が出てくるのだ。
毎度毎度、黒いケースにココマークが入った口紅だ。ただ、今回は白いケースで金色のココマークが入っている。
このブランドを使うような女性とばかり付き合っているのか、それとも、ずっと同じ人と交際が続いているのか。
小さな口紅が己の存在を主張するかのようで不愉快なので、見つけた時は問い詰めもせず速やかに捨てていた。
しかし、こうして度々出てくると気が滅入る。それに一本五千円もすると知り、捨てるのがちょっと勿体無いな……と思っていた。
ネットで調べた時、値段にも驚いたが、その深い赤の妖艶さに胸が痛んだ。
女はたかが口紅一本に五千円も払う。彼に美しいと言われたいがためだけに。そして、その赤い唇で彼に愛の言葉を囁くのだ。
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TRAININGむざこく30本ノック7日目
黒革 初めて人を殺した時の感触は、今でもはっきり覚えている。
彼に貰った黒革の手袋を着けたまま、相手の首を思い切り絞めた。
首に指がめり込む感触は覚えているのに、どうして、この男を殺そうと思ったのか、理由はよく覚えていない。多分、彼に「殺してくれ」と頼まれたからだったと思う。
軍隊にいたが、実戦でも素手で人を殺すことなど一度もない。訓練では急所など、人の殺し方は大体学んでいるが、使う日などないと思っていた。だが、その日は案外早くやってきた。それも惚れた男に「殺せ」と命じられただけで実行してしまったのだ。
黒革に包まれた指先が相手の首にめり込み、徐々に男の顔色が変わっていく。
首の骨が折れるのではないかと思うほど絞めているのに、赤黒く膨れた顔は命の火を消そうとはしない。思ったより人間はしぶといと知った。
1464彼に貰った黒革の手袋を着けたまま、相手の首を思い切り絞めた。
首に指がめり込む感触は覚えているのに、どうして、この男を殺そうと思ったのか、理由はよく覚えていない。多分、彼に「殺してくれ」と頼まれたからだったと思う。
軍隊にいたが、実戦でも素手で人を殺すことなど一度もない。訓練では急所など、人の殺し方は大体学んでいるが、使う日などないと思っていた。だが、その日は案外早くやってきた。それも惚れた男に「殺せ」と命じられただけで実行してしまったのだ。
黒革に包まれた指先が相手の首にめり込み、徐々に男の顔色が変わっていく。
首の骨が折れるのではないかと思うほど絞めているのに、赤黒く膨れた顔は命の火を消そうとはしない。思ったより人間はしぶといと知った。
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TRAININGむざこく30本ノック4日目
モーニングコール 何度呼び出そうと、電話で起きたためしがない。
朝弱いくせに夜遊びが好きで、帰ってそのまま寝てくれたら良いのに、何故か翌日の答弁の資料に目を通す。根拠となる資料まで頭に叩き込んでくれるので、隙の無い答弁をしてくれるから助かるが、寝坊して遅刻したら何にもならない。
「さっさと起きてくれよ」
ステアリングリモコンの終話ボタンを押す。GPSで居場所を確認すると、プライベートのマンションにいるようだ。
議員宿舎で寝起きしていることになっているが、夜中にべろんべろんに酔い潰れて、廊下で他の議員と顔を合わせるのが気まずいだの、女を連れ込みにくいだの、それよりも他の議員の妻にちょっかいを出した前科が何犯もあり、なかなか議員宿舎で生活しづらい理由が多く、夜遊びしては、そちらに戻ることが多い。議員宿舎ならこんなお出迎え作業は不要なのに、どこまでも迷惑な話である。
1882朝弱いくせに夜遊びが好きで、帰ってそのまま寝てくれたら良いのに、何故か翌日の答弁の資料に目を通す。根拠となる資料まで頭に叩き込んでくれるので、隙の無い答弁をしてくれるから助かるが、寝坊して遅刻したら何にもならない。
「さっさと起きてくれよ」
ステアリングリモコンの終話ボタンを押す。GPSで居場所を確認すると、プライベートのマンションにいるようだ。
議員宿舎で寝起きしていることになっているが、夜中にべろんべろんに酔い潰れて、廊下で他の議員と顔を合わせるのが気まずいだの、女を連れ込みにくいだの、それよりも他の議員の妻にちょっかいを出した前科が何犯もあり、なかなか議員宿舎で生活しづらい理由が多く、夜遊びしては、そちらに戻ることが多い。議員宿舎ならこんなお出迎え作業は不要なのに、どこまでも迷惑な話である。
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TRAININGむざこく30本ノック2日目
桜並木「おお、絶景、絶景」
無惨は嬉しそうに桜吹雪の下を歩く。蕾のうちに周辺の集落に雑魚鬼を放ち、盛大に食い殺すように命じた。次々と人が姿を消すので「神隠しに遭った」「桜に攫われた」と村人は恐れた。そして人々は夜、出歩かなくなった。鬼狩りに勘繰られる前に無惨によって鬼は消された為、誰の邪魔も入らず、ひっそりと静まり返った川沿いにずらりと咲く、満開の桜並木を独り占めできたのだ。
今宵は満月。暗闇の中、月明かりを浴びて白く輝く桜を見て、無惨は上機嫌だ。
夜桜見物が好きなど、やはり風流なお人だと、数歩後ろを歩いていた黒死牟は桜より無惨を見ている時間の方が長かった。
月や桜ばかり眺め、ずっと上を向いていたが、ふと足元に置かれた地蔵を見ると、折った桜の枝が供えてある。
1420無惨は嬉しそうに桜吹雪の下を歩く。蕾のうちに周辺の集落に雑魚鬼を放ち、盛大に食い殺すように命じた。次々と人が姿を消すので「神隠しに遭った」「桜に攫われた」と村人は恐れた。そして人々は夜、出歩かなくなった。鬼狩りに勘繰られる前に無惨によって鬼は消された為、誰の邪魔も入らず、ひっそりと静まり返った川沿いにずらりと咲く、満開の桜並木を独り占めできたのだ。
今宵は満月。暗闇の中、月明かりを浴びて白く輝く桜を見て、無惨は上機嫌だ。
夜桜見物が好きなど、やはり風流なお人だと、数歩後ろを歩いていた黒死牟は桜より無惨を見ている時間の方が長かった。
月や桜ばかり眺め、ずっと上を向いていたが、ふと足元に置かれた地蔵を見ると、折った桜の枝が供えてある。
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TRAININGむざこく30本ノック1日目
バックハグ 360度、どこから見ても鬼舞辻議員は美しい。
正面から見ると黄金比の整った顔立ちをしており、側貌もEラインで美しい。全体的に色白で肌理も細かい。艶やかな黒髪を前髪は少し長めのゆるいスパイラルパーマで仕上げ、ツーブロックにすることで全体的なボリュームを抑え、もっさりとした印象を与えない。
179センチの長身に、すらりと長い手足。小さな顔。一見細身に見えるが、日々のトレーニングを欠かさず、徹底的に鍛え上げ、体脂肪10%を維持している。
生まれ持った美貌に甘えることなく、美しくある為に日々の努力と多少の人工的な手入れも欠かさない。その精神も美しい。
誰の目にも明らかな部分以外、そう、脱がなければ手入れされていると気付かない部分もあり、それは自分しか知らないと黒死牟の中で妙な優越感があった。体の部位だけでなく、乱れた息遣い、自分に囁きかける甘い声、人前では見せない男としての表情は自分だけが知るベッドの中での鬼舞辻の姿なのだ。
1443正面から見ると黄金比の整った顔立ちをしており、側貌もEラインで美しい。全体的に色白で肌理も細かい。艶やかな黒髪を前髪は少し長めのゆるいスパイラルパーマで仕上げ、ツーブロックにすることで全体的なボリュームを抑え、もっさりとした印象を与えない。
179センチの長身に、すらりと長い手足。小さな顔。一見細身に見えるが、日々のトレーニングを欠かさず、徹底的に鍛え上げ、体脂肪10%を維持している。
生まれ持った美貌に甘えることなく、美しくある為に日々の努力と多少の人工的な手入れも欠かさない。その精神も美しい。
誰の目にも明らかな部分以外、そう、脱がなければ手入れされていると気付かない部分もあり、それは自分しか知らないと黒死牟の中で妙な優越感があった。体の部位だけでなく、乱れた息遣い、自分に囁きかける甘い声、人前では見せない男としての表情は自分だけが知るベッドの中での鬼舞辻の姿なのだ。