楓可不『海の鵲』 埠頭にある病院は、見舞いに行くには実は少し不便だ。バス路線は限られているし、時間帯にもよるが本数もそれほど多くない。父親の入院中や、退院後も両親が付き添ってくれている時は車だったから気にならなかったが、一人で病院を訪れるようになって改めて実感した。
閉じ込められてるみたいだ、と可不可が溢したことがある。病室も、病院も、埠頭全部が鳥籠か檻のようだと。
『今バスに乗ったよ』
楓が送ったメッセージはすぐに既読がつき、しゅうまいに似た白い犬が指を立てたスタンプが返ってきた。
『待ってるね』
『そういえば、今年も病院の入口に笹が飾られてたよ。短冊はまだ書いてないから一緒に書こうね』
楓も先ほど可不可が送ってきたものと同じスタンプを返す。既読がついてから数分待って、それ以上の返信がなさそうなことを確認してから画面を落とした。
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