この日だけの約束を地獄のプリニー教育係という仕事は閑職で、万年人手など不足しっぱなしだ。
激務に追われる中、ヴァルバトーゼはふとカレンダーに目をやった。
「……もう、こんな時期か」
「…?閣下、どうされました?」
「いや、何でもない。気にするな」
「………」
呟いた言葉に、フェンリッヒが反応するが、ヴァルバトーゼはそう言って手元の書類に目を戻した。
なんとなく、特別な感情が込められていたのは己の気のせいか、とフェンリッヒも自分の仕事へ戻って行った。
そんな出来事があった数日後、フェンリッヒはいつも通りにヴァルバトーゼを起こすべく、部屋のドアをノックした。
「閣下、失礼致します」
ドアを開けると、いつも通りの光景──に、違和感がひとつ。
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