高諸04 高坂が心惹かれる相手というのは、いつも恋の外側にいた。その相手といえば、雑渡昆奈門であったり、山本陣内であったり。命を懸けてでも側にいたいと思う相手と恋心は、いつも結びつかなかった。
高坂はよくもてると言われるし、その自覚もある。ただ、忍ぶ事を生業とする忍者として必ずしも得という訳ではなかったし、相応に面倒事にも巻き込まれてきた。
様々な出来事が積み重なった結果、高坂は色恋沙汰に興味が湧かなくなっていた。自分の事も、他人の事も。
そんな心に不意に乗り込んで来たのが、弟分である尊奈門の噂話だ。
その対応について動いているうちに、薄々と、少しずつ。否応なしに。高坂の心の奥から、滲み出るものがあった。
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