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    case669

    @case669

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    case669

    PROGRESS本になったら良いなのレオジャミこれ間に合わなくない?
    普段ならば王宮での仕事を終えた後は共に連れだって王宮から自宅へと帰る事が多いが、今日は休日前に片付けておきたい相談があるからとレオナは兄王の部屋へと向かった。あえてこの時間を選んだということは王と臣下としてではなく、兄と弟としての立場を利用した相談があるのだろう。同席を求められることも無かったジャミルは一足先に広すぎる自宅へと帰り夕食の支度にとりかかる。とは言っても時間のある時に仕込んで保存していた食材を仕上げたり温めたりするだけでさほど時間はかからない。今日の夕食のメニューは野菜を刻んで挽肉とともに炒めるだけで出来上がるドライカレーと、昨日の残り物のローストビーフを使ったサラダ、それから食事前に冷凍しておいたピタパンを温めるだけで簡単に完成。レオナの帰りが遅いようならば来週の為の食材の仕込みを今してしまうのも良いかもしれない。側室が使っていた時代は使用人を含めた大人数の食事を用意していたのであろうキッチンは広々としていて作業がしやすく、一度料理を始めるとつい楽しくなってしまってあれやこれやと作りたい料理が思い浮かんでしまう。まずは冷蔵庫の中身を確認しながら来週の献立を考えていると、玄関の方で微かな人の気配。もしかしたら休日前の兄弟水入らずともなればそのまま引き留められて酒を飲まされ、遅い帰りになるかもしれないと心配したのは杞憂に終わったらしい。玄関が閉まる音を聞いてから十秒程数えた頃に振り返ればばちょうどレオナがキッチンへと入ってくる所だった。
    2105

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    DONE39.初めての朝帰り(レオジャミ)
    鼻ちゅーと良く寝れたかよってにこにこする先輩が書きたかっただけなのに長くなった
    目を開けたら見慣れた天井、明るい日差し。
    こんなにもすっきりと目覚めたのは久方ぶりだなとぼんやり思い、それから慌てて跳ね起きようとしては腹の上にのし掛かる何かに阻害されてぐえ、と変な声が出た。横を見れば随分と穏やかな顔で眠るサバナクローの寮長。
    そう、ここはレオナの部屋だ。見慣れてしまっていることに思うところが無いわけではないが、今はそんなことを気にしている場合ではない。
    昨夜、レオナとベッドを共にした。それは別に構わない。お互い合意の上のことであるし、これが初めてのことでもない。だがのうのうと朝まで、仮にも他国の王弟殿下のベッドで朝まで呑気に寝てしまうなど、ジャミルのプライドが許さない。
    寝所とは本来、何よりも安全が約束された場所であるべきだ。念入りな防御魔法がかけられていたとしても、ベッドに他人を連れ込む時はすぐ手が届く場所に護衛が控えているべきであるし、部屋の主が一番無防備になる時、つまりは睡眠をとる時は逆に羽虫一匹たりとも部屋に侵入してはならない。
    護衛の一人も連れてきていない王弟殿下にそれは無理な相談なのだとしても、だからこそ、事を致す時はレオナの一番安全な場所であるべきベッ 1930

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    PASTなんか豆イベで宇宙猫顔になってしまったので昔書いたフロジャミ?未満?を三つ再掲
    じゃみが手慣れたびっちです注意
    【がじがじ】

    さて、困った。
    ジャミルは部室の明かりをぼんやりと眺めながら溜息を吐く。薄情な部員達はジャミルと目を合わせぬままそそくさと着替えてさっさと出て行ってしまった。残されたのはフロイドと、二人きり。
    そのフロイドといえば、ジャミルを後ろからしっかりと抱え込んで首筋をはぐはぐと齧っている。尖った歯が肌を傷つけない程度の強さで幾度も立てられ、時折大きな舌がべろりと舐めてはちゅうと吸い付く。くすぐったいとも痛いとも言えない、なんとも言えない感触。
    「なあ、そろそろ行かないと」
    「ん、ん~~」
    朝練でしっかりと汗をかいた後だから、正直な所、恥ずかしいし勘弁して欲しい。一度寮に戻ってシャワーを浴びようと思っていたから碌に汗も拭いていないし、フロイドに齧られているせいで右肩がべしょべしょになっている。だがまるで大事なぬいぐるみでも抱えるかのように長い腕で確りと腕の中に閉じ込められていては逃げ出す事も出来ない。一時間目が始まる前に飽きてくれれば良いのだが、飽きてくれなかった場合はどうしようか。
    「早く着替えないと、授業が始まる」
    「ん~~」
    ジャミルの腹をがっちりホールドしている腕をぺんぺ 5370

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    DONE完全にオチを見失ったレオジャミ。三日前の私は何が書きたかったんだろう。れおにゃ先輩不在でじゃみとらぎがぐだぐだしてるだけ。静まり返った夜の校舎、その食堂。
    日中は飢えた生徒で騒がしいこの場所も夜ともなれば人も寄りつかず静まり帰っていた。唯一響くのはかちゃかちゃと軽い金属がこすれる音と、紙にペンを走らせる音ばかり。
    「ジャミルくん、マジャラマジャルに沈む明星って、ゼラとギグとベベランテとあと何スか」
    「ゼラとベベランテは合ってるがギグは違う。星売り商人の項目に説明がある筈だから読み直せ」
    へえい、とキッチンが見えるカウンターに陣取り勉強道具を広げたラギーが教科書を捲る。言われた通りに見つけた項目を一から順に目を通して行けば確かに求めていた答えが細やかな説明と共に書かれていた。
    カウンターの向こうではボウルを掻き混ぜる音が止んだと思いきや、じゅわ、と高温の油に素材が落とされた音。景気良く跳ねる油の音と香りは否が応にもラギーの胃袋を刺激する。
    「カリムは、頭文字を取ってゼレベラと繰り返し唱えて覚えていたな。俺は名称よりも星の形状で記憶していたが……そのやり方は全ての星命体の形状と名称が一致していないと覚えられないだろうからまあ、参考までに」
    「俺はゼレベラ方式っスかねえ…ゼレベラゼレベラ…ゼラレグムンベベランテ 4013

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    CAN’T MAKE欲望に素直に書いたカリジャミ♀と兄レオ♀前提の、パパ活してる黒ギャルJKレオ♀ジャミ♀ちゃんの話
    R18は無いけど倫理観と貞操観念が死んでるので自己責任でオナシャス…ほんとに…
    なお続きのお仕置きセッが読みたくて書きました誰か続きを…続きをください…
    「32、181の76」
    「オッサンの気分じゃない」
    「26、178の66」
    「華奢過ぎだろう、次」
    「20……だけどホ別ですね却下で。……ええと23、187、82」
    「写真は?」
    「先輩、結構好きなタイプなんじゃないですか?」
    ようやくスマホから顔を上げてこちらを向いたレオナに送られてきた写真の画面を見せるも、ちらと一目見ただけでパス、と告げて再び手元のスマホへとやる気なく視線が落ちていった。なんとなくそんな気はしていたが、実際に見ればジャミルだって溜め息の一つも吐きたくなる。
    「……乗り気じゃないなら、今日は大人しくお兄さんの所に帰ったら良いんじゃないですか?」
    すっかり氷が溶けて味の薄まってしまったカフェラテを一口飲み、ジャミルは頬杖をついた。目の前では氷しか残っていないグラスを片手にストローを噛みながらスマホを弄るレオナがううんと肯でも否でもない唸り声を上げている。
    ああ、これはもう完全に今日は無しになるやつだ。そもそも最初の指定がゴツくて余裕ある男だった時点で薄々は察していたのだ。ジャミルがSNSに書き込んだ内容に今もなお次々にメッセージが送られている様を一瞥してからスマホの画 4015

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    DONE38.美味しいお肉の食べ方(レオジャミ)かぷりと、肩に立てられた歯に目を覚ます。食感を確かめるような、ただ肌の上に歯を滑らせるような、意図の掴めぬ動きでやわやわと肉に浅く食い込ませてから離れて行く。濡れた肌がひやりとした。
    大方、昨夜共に眠りについた筈の可愛い年下の恋人がまた何か思い立ったのだろうと振り返ろうとするが、押し留めるようにぐっと背を押される。
    「まだ寝ててください」
    「テメェに起こされたんだが」
    「また寝てください」
    「無茶言うな」
    くふりと込み上げた笑いを吐きだして大人しく寝返りを諦めれば再び肩に触れる柔らかな感触。今度は唇だろうか、ちぅ、と可愛らしい音を立てて啄まれる。
    「何がしてぇんだ」
    「俺にもよくわかんないです」
    説明を放棄しているくせに、ただ身体を差し出せと言わんばかりな横柄な声にレオナの笑いは深まるばかり。よくわからないが、止める理由も特にない。あふ、と欠伸を零しながら大人しく身を委ねる。
    ちゅ、ちゅ、と幾度か肩回りを啄んだ後、一時の呼吸を置いてからぺろ、と舌先が肌を掠める。未知の食べ物をおっかなびっくり確かめるような拙い舌先。もう一度、味を確認するように肌の上をなぞり、それからかぷりとまた甘く食ま 1213

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    MOURNING私が書いたと思えないくらいにびっくりするほどベタ甘なレオジャミ。思い付いたまま書いたけど私が一番びっくりしてる「復習代わりに動物言語で会話しません?」
    ぽかぽかと暖かな日差しが射し込む昼下がり。昼食後から勝手にレオナの部屋の机を占拠し試験勉強をしていたジャミルが伸びをしながらレオナを振り返る。
    「いいぜ」
    我関せずとばかりにベッドの上で本を読んでいたレオナは一度瞬いてからぱたりと本を閉じた。それからゆったりと枕に肘をついて頭を支える。
    「わんわん!わわうわん!」
    椅子に座ったまま身を捻りベッドに向き直ったジャミルの台詞にふは、と思わずレオナは笑った。
    「教科書かよ……ばうわう!ばう!ばうばう!」
    「みゃあう。にゃうにゃうにゃあ」
    応えるジャミルも笑っていた。今更こんな会話が復習になるはずもない。復習とは名ばかりの、ただの休憩なのだろう。
    「まぁーお、にゃぁあ、ごろごろにゃあ」
    「ははっ……ふしゃぁ、っっしゃーくるるるる、しゃっしゃぁしゃー」
    「っっきしゃぁ!しゃーっふしゃ、ふしゃあー!」
    「……どういう意味です?」
    「っこっこっこっこっ、っこけこっこっこ」
    片眉を上げたジャミルが不信げに首を傾げるが、暗に動物言語以外の言葉には応えないと告げてやれば唇をへの字にしながらもきゅぅうんと小さく謝罪の 1800

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    MOURNINGヴぃる様のとこでモデルになるレオジャミちゃん達の話を書こうとしたけど挫折した喋ってるだけのやつ
    出てくるのはヴぃる様、えぺる、ふろいど、らぎーとレオジャミ
    『ヴィル・シェーンハイトと交際中のレオナ・キングスカラー、謎の美女と深夜密会!まさかの二股!?王族のふしだらな夜遊び!!!』



    「なんでコイツと付き合ってることになってんだ?」
    「そこっスか!?アンタがこの前、何故モデルになったか聞かれた時に「可愛い恋人に頼まれたら断れねぇ」とか格好つけたこと言ったからでしょーが!その上でヴィルさんとイチャイチャしたでっかいポスターをあんな街のど真ん中に出したら恋人のヴィルさんに頼まれたんだって誤解もするっスよ!」
    「僕の周りでも、レオナサンとヴィルサンが寄りを戻したんだって、皆勘違いしていました」
    「公私混同甚だしいな」
    「メディアなんてそんなものよ。諦めなさい」
    「放っておいていいんですか、これ」
    「どーせ何言ったって無駄でしょー。俺、その二人は付き合ってないって散々言ったのに信じてくれなかったしぃ」
    「俺の可愛い恋人が名乗りを上げてくれりゃあこんな記事も出なくなるんだがな」
    「自分で言ってて恥ずかしく無いんですか」
    「事務所でいちゃつくの止めてくださーい」
    「公表するのは構わないけど、レオナ王弟殿下の恋人というレッテルがどれだけ世間の関心を引 1005

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    DONE大遅刻のレオジャミちゃんのバレンタイン…だけど前振りが長すぎて力尽きたのでレオジャミ要素ちょっとだけ日曜の夜。
    夕食を終えた後、珍しく「あとはもう一人で大丈夫だからジャミルはゆっくり休んでくれよな!」とカリムに気遣われた。
    そんなに疲れた顔をしていただろうか?いや特別疲れたという認識は無いし、むしろ今日は穏やかな一日だったから体力が余っているくらいだ。
    だがカリムがそう言うならお言葉に甘えて自由な時間を満喫するのも良いだろう。ジャミルと友人になるべく頑張っているカリムは一通りの事は一人で出来るようになってきていた。点数をつけるとするならまだまだ落第点ではあるが、かつて一から十まで全てジャミルの手を借りていた頃と比べたら格段に成長している。出来なかった所の尻拭いをするのは結局ジャミルだが、ずっと見守っていなくとも明日の朝少し早く起きて確認しに行ってやれば良いだけだと思えば過去の苦労よりもずっと楽になっている。
    さてそうなれば何をしようかと考えながら自室へと向かって歩いていた所に同級生からかけられた声。お前寮長の世話しなくていいなら暇だろちょっと付き合えよとポーカーのお誘い。何処の誰が切欠だったかはわからないが、今寮内ではひっそりとポーカーが流行っていてジャミルも度々参加しては掛け金を巻 3123

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    DOODLEワンドロの約束のお題で書いたけど牙のお題で書いた物の続き?になってしまったのでタグ無しで
    設定捏ねながら書いてるからよくわからないと思うごめんなさい
    特殊な組織に所属する未来のレオジャミ
    少々余計な掃除もしてしまったがこれにて無事に任務完了。保護した女性は支局に預けて晴れて次の任務まで自由の身。これが熱砂の国で無ければのんびり観光でも、と思うところだがまだカリムと直接会う勇気がジャミルにはない。余計な事をしてうっかり見つかる前にさっさと退散するに限る。
    「このまま本部に帰還で良いですか?」
    「ああ」
    支局のポータルを借りれば遠く離れた本部まで一瞬で辿り着く。まずは砂埃にまみれた生活からようやく解放された事を噛み締める為にもシャワーでも浴びてさっぱりしたいし、その後は任務成功の祝杯でも上げたい。なんせ今日はレオナがようやく見習いを卒業し、めでたくジャミルの同僚となって初めての任務成功だ。
    やっと、同じ場所に立てた。やっと、同じ未来へ向かうスタートラインに並ぶことが出来た。レオナにとっては見習いとして放り込まれた今までの任務に比べて随分と簡単な任務で祝杯も何も無いかもしれないが、ジャミルにとっては待ちに待った日なのだから今日はぱーっと飲み明かしたい。



    狭いバスルームであちこちぶつけながら二人で身を清め、バスタブに張った湯にぎゅうぎゅう詰めになって沈み一息着く。レオナが 1736

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    MEMOよわよわ
    レオジャミ
    寝苦しさを感じて目を覚ます。寝室に射し込む明るい日の光の中、まるで抱き枕でも抱えるかのようにジャミルの右側からしがみ付いている一回り大きな熱い身体。普段から同じベッドで眠っているが、朝までジャミルの肩を枕に両手両足でがっちりと抱え込み、こんなにもべったり絡みついているのも珍しい。レオナによってすっかり裸のままベッドに入るのが当たり前になってしまった所為で、互いの肌が汗でぬるりと滑っていた。道理で寝苦しいわけだと思った所で思い出す。
    レオナは昨晩、出張から深夜遅くに空港に帰ってきた筈だ。空港に着く頃には公共交通機関は動いていないし、迎えを呼ぶにも遅すぎる時間だからそのまま近くのホテルに泊まり、今日は会社に顔を出してからゆっくり帰ると、飛行機に乗る前に通話した覚えがある。だからジャミルはキングサイズのベッドに一人寂しく寝ていたというのにいつの間に帰っていたのか。
    そっと頬に掛かる柔らかく波打つ髪を避ければ現れるのは眉間に皺を寄せて眠る少し窶れた顔。
    「んん……」
    むずがるように頬を擦り付け、ぎゅうとしがみつく腕に力が込められていた。見慣れない可愛らしい仕草にジャミルの頬が緩む。壁に掛けられ 3069

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    MEMOファレレオワンドロ
    【初めてのキス】【体温】
    国の代名詞でもある、燃え尽きる直前のような鮮やかな紅蓮に染まった王の寝室。空の色に負けない立派な鬣の海に眠る穏やかな顔。馬乗りになった身体は、まだ暖かかった。
    こんなにも穏やかな気持ちで兄の顔を見るのはいつぶりだろうか。
    秀でた額から、意思の強さをうかがわせる太い眉を撫で、堀の深い鼻梁を通って唇へと指先が触れる。まだ柔らかい。この唇がたくさんの言葉を紡ぐのを聞いた。良いことも、悪いことも、此処から溢れだした音はいつだってレオナの心を乱した。それも、もう二度と聞くことは無い。
    その唇よりも雄弁だった兄の二つの瞳は今や目蓋の向こうに封じられた。二度とレオナを映すことはない。レオナ以外を映すこともない。最期にレオナだけを焼き付けて伏せられた目蓋に、自然と唇を寄せていた。二度と開くことが無いようにと、子供騙しのようなおまじない。ちぅと微かな音を立てて啄み、離れてもその目蓋は伏せられたままで、そういえばこの男は死んだのだなと何処か他人事のように思う。この距離にレオナが在るのに、ただ静かに動かないままの兄が少しだけ慣れなくて、少しだけおかしかった。
    兄は、死んだ。レオナが殺した。
    きっと今頃、兄の 1510

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    MEMOゆめものがたり
    アデレイ…というかオールキャラ
    人が神と決別し、シガイの脅威から逃れてはや幾年。
    インソムニアの六月には珍しい快晴。まるで祝福するかのような空に感謝すると共に、たった一人の妹の晴れの日なのだから当然だろうという思いがレイヴスの胸の中にあった。
    「おかしなところは無いでしょうか……」
    美しく繊細な純白のヴェールを被った妹が落ち着かぬ様子でレイヴスを見上げていた。玉座へと繋がる分厚い扉の向こうからはオルガンの音が響き、式の始まりを告げている。
    「心配するな。お前と血が繋がっていなければこのまま拐ってやりたいと思うくらいに美しい」
    「ふふ、そんなご冗談をおっしゃられるのも珍しいですね」
    ヴェールの向こうで愛らしい顔が綻んだ。妹が幼少の頃より想う相手と結ばれる事が喜ばしいのは事実だが、兄として、たった一人きりの家族として、手離したくないと思ってしまう気持ちも無い訳では無い。
    「……こうして手を引いてやれるのも最後だからな」
    活発な妹の手を引く事はそれほど無かったが、彼女の導となるべく常に前を向いて歩いてきた。だがそれも今日で終わりだ。
    穏やかな笑みを浮かべていた筈の妹の顔がくしゃりと歪み、そうして胸元へと飛び込んで来るのを両 1296

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    MEMO制服
    カリジャミ
    スリムなラインのシャツとジャケット。今まで風通しの良い服に慣れてきた身には張り付くような布の不快感が付きまとう。おまけに首を締めるネクタイの息苦しさ。着慣れぬ制服を楽しめたのは初めて袖を通した日だけで、今では朝着替える時に一々溜め息が溢れてしまう。
    「なあ、ジャミル。これ着なくちゃ駄目か?」
    ジャミルよりものびのびと育てられたカリムにはもっと苦痛が大きいのだろう。ベストのボタンを留めていた筈の指先が汚物でも摘まむようにジャケットを持ち上げていた。
    「アジームの跡取りは服もまともに着られないと謗られたくは無いだろう、諦めろ」
    「まともな服なら他にもあるだろ?」
    「入学早々目立つようなことはするなと言ってるんだ」
    「でもジャミルだって困ってるんだろ?」
    「お前一人守るくらいならなんとかなる」
    「ジャミルも無事じゃなきゃ意味が無いって言ってるだろ!」
    不服そうな顔をしてカリムが拗ねるが、正直ただただ面倒臭い。ジャミルはきっちりとネクタイを締めてジャケットのボタンまで留め終えたというのにカリムはまだ中途半端にベストを着る途中だった。
    「とにかく、着替えろ。遅刻するぞ」
    「なあ、この服だと俺が死 1046

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    MEMO傍に居ろと素直に言え
    エスアイ
    「お前、結婚したい相手とか居ないのか?」
    今まさに欲を吐きだしたばかりの、息も整わぬままに向かい合った姿勢で問われてさすがのエスティニアンも閉口した。人の事をとやかく言えるような身でも無いが、もう少しタイミングを考えられなかったのかと思う。
    「……何だ、藪から棒に」
    だがそれを責めた所で伝わらないのは重々身に染みている。というよりも、わかっていてやっている相手に何を言った所で無駄だ。
    「いやなに、我々も良い歳だから、好いた相手がいるならばそろそろ身を固めるのもどうかと思ったのだよ」
    「本音は?」
    驚いた、と言わんばかりに目の前でアイメリクの目が見開かれ、それから眉尻を下げて笑う。一応そうして恥じらって見せるのは素なのかそれとも礼儀だとでも思ってるのか判断に迷う所だ。
    「お前を皇都に留めるにはどうしたら良いかと思ってな」
    「なんだ、寂しいのか」
    「寂しいというよりも心許ないというのが正しいな」
    「熱狂的な信者ともいえる部下やら四大名家の元当主やら、最近では平民の信仰まで集めておいて?」
    「だって彼らは私を殺せないだろう」
    またわけのわからないことを言い始めた、というのがエスティニアンの素 1157

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    MEMOどうせその気もないくせに
    アデレイ
    「君、結婚する気ない?」
    帝国宰相の部屋で、たった今まで肌を重ねていたアーデンが朝食のメニューでも尋ねるような気安さで問う。この男の気紛れでベッドに引きずり込まれ、レイヴスの心を一切無視したこの関係に愛も情も無いが、それでも急過ぎる話題に流石に神経を疑う。
    「……必要性を感じない」
    「そんなこと無いでしょ。将軍になりたいのなら、必要じゃない?後ろ楯」
    言いたいことはわからなくもない。皇帝と貴族が支配するこの国において、属国出身の人間の立場は最底辺にある。本来ならば軍に入っても生涯下級兵士のまま終わる筈のレイヴスが准将の地位にまでのしあがることが出来たのは恐らく、アーデンが何かしらの思惑でもって介入したからであって、レイヴス一人の力では到底なしえなかった。だが逆に言えば、アーデンが望まなければレイヴスは将軍になれない所か今すぐ殺される可能性だってあるのだ。たかだか貴族の後ろ楯くらいでアーデンの気紛れを止める事など出来ない。
    それをわかっていながらこうして問う意味は、きっとただの暇潰しなのだろう。わざと毛を逆撫でしてレイヴスが荒れる姿を楽しむ趣味の悪い遊び。まともに付き合うだけ無駄だ。
    922

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    MEMO水底
    ウリサン
    夜の砂の家は静まり返っていた。
    夜更かしは良くないと散々幼馴染みにも言われて来たが、一度文字を追うことに夢中になってしまうとなかなか止められるものではない。多くの人が集まり騒がしい昼間と違い、蝋燭が空気を焼く音と紙を捲る音しかない静けさの中ならば止める理由もない。
    そうして今日も自室に持ち込んだ本を、ベッドに腰掛けて読み耽るウリエンジェの部屋の扉が静かにノックされる。こんな夜更けにミンフィリアやタタルが訪れる筈もない。少しばかりの不信感を抱きつつも、どうぞ、と答えて顔を上げる。
    「やっぱりまだ起きてたな」
    へらりと軽薄な笑みを浮かべて部屋に入って来たのはサンクレッドだった。同じシャーレアンで賢人の地位を頂いた男だが、特別親しいというわけでもない。むしろ流れる水のようにころころと表情を変えるこの男の事を少し苦手に思っているくらいだ。華やかに飛沫を上げて流れる水面の下に、ウリエンジェには想像もつかないような濁った川底の気配を纏わせていればなおのこと。
    「このような夜深に何か……ご用でしょうか」
    少しの緊張を纏わせたウリエンジェに構わず、ずかずかとベッドに近付き本を取り上げるサンクレッドから 977

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    MEMOだだっ子なアデレイジグナタス要塞の、宰相の部屋。
    レイヴスが数度のノックの後、返事を待たずに開けたその部屋の中に、宰相が落ちていた。
    「………」
    これが普通の人間相手ならば心配してやるべきところなのだろうが、相手はアーデンである。何を思って床の上に大の字になって転がっているのかは知らないが、ろくでもない事を考えているのだという事くらいは流石にレイヴスも身に染みて理解している。扉から机までの直線上に堂々と落ちているアーデンを踏みつけてやりたいのは山々だが、下手に突いて関わり合いにはなりたくないので投げ出された足の方から回り込んで机へとたどり着く。広げられたままの資料や書類をざっと見渡し、邪魔にはならずに目に着く場所を探して持って来た報告書をそっと置いた。本来ならば書面と共に口頭で概要をざっと説明する予定だったが、本人がこの状態なら諦めるのが吉だろう。将軍としての務めはこれで十分の筈だ。
    そうして踵を返そうとした右足が、動かなかった。思わずつんのめりそうになるのを辛うじて堪え、足元を見ればだらりと地面に寝転がったままレイヴスの右足を掴むアーデンの姿。
    「普通さあ、人が倒れてたら心配するもんじゃないのぉ?」
    985

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    MEMO黒峰さんの猫じゃみちゃんの絵から書いたカリジャミにゃあ。

    と、ジャミルが鳴いた。
    いつもひんやりとした眉毛をへにゃりと下げて、つり上がった目尻を垂れ下げて、いつもきりりと結ばれた唇をぱかりと大きく開けて、もう一度、にゃあ、と鳴いた。
    「じゃっ……じゃみ、ジャミルが可愛い!!!」
    カリムが思わず頬へと手を伸ばせば、避けるどころか自ら近付いてすりすりと頬擦りされた。更にはそのままカリムの足の上に我が物顔で乗り上がって座り、ちょん、と鼻先が触れあう。思ったよりも重くて足が痛い。けれど、今まで見たことも無いくらいに蕩けきったご満悦な顔をしているジャミルを見てしまっては文句なんて言えようも無かった。
    「……ジャミル?」
    「なあう」
    名前を呼べばふにゃふにゃの笑顔でジャミルが答える。なあに?とでも言ってるような顔でこてりと首が傾き、ぴるぴると頭に生えた猫耳が震えていた。
    ジャミルが可愛い。
    いやいつもの姿だって十分可愛いのだけれど、それはそれとしてジャミルが可愛い。
    感極まって思わず唇を重ねようと近付けるも、ぐいっと二つのぐーにした手で思い切り顔を押し退けられてしまった。
    「ふなぁーあ」
    やーだね、とでも言っている、ような。思わぬ抵抗を受けて 1203

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    MEMO脱、兄レオしようと何かが足掻いてるメモらしい「あの人を止めない私の事、恨んでいるかしら」
    「それを言うならば俺の方だろう。憎く無いのか」
    「私はね、レオナ。貴方をどうやったらあの人の傍に生かさず殺さず留めて置けるか考えているような女よ」
    「は、何の為に」
    「あの人と、国の為に。ひいては私とチェカを守る為に。それ以外の理由があるかしら」
    「さすがはアイツを尻に敷いてる方だ。我が国は安泰だな」
    「貴方があの人の傍にいてくれるうちはね」
    「……」
    「……」
    「貴女は、あれの、何処に惚れて結婚したんだ」
    「……私、可愛い男の人が好きなの」
    「あれが……?」
    「男の人にはわからないかしら。素直で、一途で、いつも笑っていて。可愛いでしょう」
    「間抜けで思い込みが激しくて能天気なだけだろう」
    「そこが可愛いのよ」
    「はあ……」
    「貴方も、素直で、一途で、いつも笑ってはいないけれど……可愛いと思ってるわよ」
    「馬鹿にしてんのか」
    「愛しているのよ、家族として」
    「それはどうも」
    「だからね。……だから、もしも、本気で逃げ出したいと思ったのなら、私に相談して」
    「は?」
    「悪いようにはしないわ。……というよりも、私に心構えが欲しいだけね。きっと大 715

    case669

    MEMO発掘した四章後の平和なカリジャミどんどんがちゃ。
    「カリム、朝!」
    ばたん。

    「ふぇ……?」
    騒々しさに目を覚ましたカリムが漸く扉を見る頃には既に声の主はおらず、まるでずっと閉じられていたかのように静かな扉がそこにあった。
    ふあと込み上げる欠伸を零しながらのそのそと身を起こす。以前ならば気付かぬうちにカリムの部屋に訪れ、そっと優しく揺り起こしてくれたジャミルはもう居ない。あと五分、なんて甘えれば仕方ないなと溜息一つで待ってくれたジャミルも、今にも眠気に引き摺られそうに船を漕ぐカリムを着せ替え人形のように身を委ねているだけで着替えまでさせてくれるジャミルも、熱々の目覚めのチャイを用意してくれるジャミルも居ない。
    けれどそれが悲しいとは思わなかった。むしろ嫌いだと言いながらもなんだかんだこうして最低限の世話を焼いてくれるジャミルは優しいなあと頬が緩んでしまう。
    本当はもうひと眠りしたい所だが、起こしてくれるジャミルが居なければきっと朝食も食べ損ねるし学校にも遅刻してしまう。以前、確り寝坊した時、慌てて駆け込んだ学校で見かけたジャミルの「ざまあみろ」と言わんばかりの冷え冷えとした笑顔はもう一度見たい気もするが、それよりも 3005

    case669

    MEMO発掘した兄レオ王の様に怠惰に裸のままベッドに横たわるレオナの足元に本物の王が跪き、そっと足を掬いあげていとも大切な物かのように爪先に口付けを落とす。まるで乞うように丹念に唇を何度も押し付けられ、躊躇いなく生温い口内に親指を含まれてぬるりと濡れた舌が皮膚の薄い場所まで丹念に這う。室内着とは言え、誰もが惚れ惚れするような見栄えのする巨躯を豪奢な刺繍とアクセサリーに彩られた男が、民の前に悠然と立つべき王が、誰からも望まれない弟に頭を垂れてあたかも決定権はレオナにあるかのように許しを請う。
    受け入れた所で、レオナが本当に欲しい物はくれない。
    拒んだ所で、レオナが首を縦に振るまできっと離してはくれない。
    結局の所、すべてはこの男次第。レオナがすべきことはただ「王に愛され、そして王を愛する弟」であることだけだ。
    気紛れに顔を足の裏で踏みつけてやっても止める処かべろりと土踏まずを一舐めされ、ちゅ、ちゅ、と音を立てながら移動した唇がくるぶしに甘く歯を立てる。
    「ご機嫌斜めだな、レオナ」
    脹脛に頬ずりをしてうっとりと笑う兄を冷めた目で眺め、そして耐え切れずに顔を反らした。本人にそのつもりが無いのはわかっているが、まる 1464

    case669

    MEMOとりあえず支部に上げてないアデレイを忘れないように移動しとくレイヴスに手を取られた、と思った瞬間には脇の下に挟まれ容赦なく骨が折られる。
    「いったあああ」
    「痛いのか」
    「痛いに決まってるでしょ、俺を何だと思ってるの」
    「何なのかわからない」
    「ええ……」
    「分類的にはなんなんだ。人か?シガイか?それ以外の生物か?」
    「神に愛されし唯一の人間だよ」
    「眠れなくなるほどに愛されているものな」
    「五月蠅いよ」
    「誰かに代わってもらいたいと思うか?」
    「やだよ。神様の愛は俺一人占めにするんだから」
    「だからお前は嫌いなんだ」
    「ありがとう、俺も愛してるよ」
    「神様よりも?」
    「ストーカーを愛する馬鹿が何処にいる?」
    「お前の場合、それが一番幸せになれる道なんじゃないか?」
    「やる事は変わらないけれどね」
    「愛の為に死ぬ?」
    「だから愛してないって言ってるじゃん」
    「俺の事は愛しているのに?」
    「君を愛しても世界は変わらないからね」
    「やっぱりお前は嫌いだ」
    「それでも俺は君を愛してるよ」
    「ストーカーはお断りだ」
    「神から唯一愛された男の愛だよ。人間なら恭しく受け取ってよ」
    「俺の神を奪ったのはお前だ」
    「じゃあ俺が君の唯一の神様だね。神様に愛されて 902