おぐ☁️
DOODLE蛍ちゃん右まとめ------------------------
gnsnにどはまりした2024年下半期…
ほたち可愛すぎてスクショが増えていく一方です、、、
明日のアップデート・・・・ver.5.3たのしみだ・・・・・
2024.12.31. 66
かみすき
DONEトマ蛍トーマ生誕祭2024
君に幸せあれ
《トマ蛍》ねえトーマ、お誕生日おめでとう。愛してるよ ずいぶん長いこと会っていないように感じるのはきっと気のせいではないだろう、決して筆まめでないはずのトーマが五十枚綴りの便箋を使い切ってしまうくらいの時間が経ったのだから。
その分受け取った手紙も少なくない。我慢した寂しさと同じだけの山になった手紙も、離れている間にも二人で共に積み重ねた思い出だとすれば良いものかもしれないと思えた。
彼女が旅人であることは重々承知している。むしろトーマは、あちこちを飛び回るその姿を美しいと思ったのだ。目的に向かって立ち止まることはない、振り返ることもない。一処に留まるなんて似合わないとさえ思う。何もかもわかった上でその手を引っ張った。忙しなく紡がれていく彼女の日々にひとつ自分が刻まれるだけで嬉しかった。
7575その分受け取った手紙も少なくない。我慢した寂しさと同じだけの山になった手紙も、離れている間にも二人で共に積み重ねた思い出だとすれば良いものかもしれないと思えた。
彼女が旅人であることは重々承知している。むしろトーマは、あちこちを飛び回るその姿を美しいと思ったのだ。目的に向かって立ち止まることはない、振り返ることもない。一処に留まるなんて似合わないとさえ思う。何もかもわかった上でその手を引っ張った。忙しなく紡がれていく彼女の日々にひとつ自分が刻まれるだけで嬉しかった。
かみすき
DONEトマ蛍そもそも喧嘩なんてしなさそうというのは置いといて
《トマ蛍》夕飯が食べられなくても知らないよ その日のトーマは珍しく慌てた様子だったと、すれ違った人々はそう語った。声をかけてくる知り合いを軽くいなし、時おり抱えた紙袋の中身を確認してはそれを揺らさない軽い身のこなしで人の隙間を抜けて。階段に差し掛かれば速さこそ落ちるものの、ぱたぱたと一段ずつ、落ちないように確実に踏みしめながらも滑るように駆け下りていく。
季節を感じられる楓の形の練り切りと、一緒に勧められた茶葉。あとはみたらし団子を三本。綺麗に並んでこちらを見ていたいちご大福まで買ってしまった。
それらを抱えて走るトーマの目的は、昨晩から続いている蛍との喧嘩を終わらせることだった。なんてこと無いちょっとした言い合いが発展してしまっただけなのだが、どうして止められなかったのだろうかとトーマは後悔を募らせていた。
2136季節を感じられる楓の形の練り切りと、一緒に勧められた茶葉。あとはみたらし団子を三本。綺麗に並んでこちらを見ていたいちご大福まで買ってしまった。
それらを抱えて走るトーマの目的は、昨晩から続いている蛍との喧嘩を終わらせることだった。なんてこと無いちょっとした言い合いが発展してしまっただけなのだが、どうして止められなかったのだろうかとトーマは後悔を募らせていた。
かみすき
DONEトマ蛍が出会ってからずいぶん経った頃の話※トーマのデートイベネタバレっぽい
《トマ蛍》拝啓、数年前の君と 物の片付けとはどうしてこうも進まないのだろうか。久しく読んでいなかった本があればページを捲り、アルバムを取り出しては思い出に浸り。そのうち目的を思い出して端に寄せるけれど、次の山に移ればまた同じように手が止まる。
誘惑を振り切って手をかけた引き出しには、いっぱいに詰まっているこれまでに貰った手紙たち。トーマはその中に鍵付きの箱を見つけたところで、もう今日の片付けは諦めるべきかもしれないと思った。
大人の手で捻れば簡単に壊せそうな錠は、誰かに見られたくないとかそういうのではなくて、ただ大切にしておきたくて、なんとなくの。これを開けるための鍵はあまりにも小さかったせいでとうの昔に失くしてしまった。それきりしまい込んでいた箱は、爪で鍵穴を回せば簡単に開いた。
2111誘惑を振り切って手をかけた引き出しには、いっぱいに詰まっているこれまでに貰った手紙たち。トーマはその中に鍵付きの箱を見つけたところで、もう今日の片付けは諦めるべきかもしれないと思った。
大人の手で捻れば簡単に壊せそうな錠は、誰かに見られたくないとかそういうのではなくて、ただ大切にしておきたくて、なんとなくの。これを開けるための鍵はあまりにも小さかったせいでとうの昔に失くしてしまった。それきりしまい込んでいた箱は、爪で鍵穴を回せば簡単に開いた。
かみすき
DONEトマ蛍いっぱい甘えてほしいし、いっぱい甘やかしてほしい
《トマ蛍》熱い暑いけど抱きしめて 珍しくトーマより早く起きていた蛍は、じっとりと汗を滲ませた熱い額を押し付けてきた。
食べたくないとごねるその口に白粥を突っ込み、咳き込む蛍の背中を擦って蜂蜜を湯に溶かす。顎まで布団をかけてしっかり寝るように言い聞かせ、こうして屋敷に出てきたわけだが。
ひとつ何かをする度に、いらぬ心配がトーマの頭を過った。彼女が子どもではないことも、いざとなれば助けを呼べる小さな仲間が見てくれていることもわかっている。ただどうしても、滅多に弱音を吐かない蛍がトーマの手を握って「行かないで」と呟いた光景が離れなくて。やがて眠った蛍の酷く熱いその手をベッドの上に置いてきたことを、激しく後悔していた。体調が悪い時には人肌が恋しくなるものだ。隣にいるだけでいい、そんな人として選んでもらったというのに、寄り添ってやることもできずに自分は一体何を。
1921食べたくないとごねるその口に白粥を突っ込み、咳き込む蛍の背中を擦って蜂蜜を湯に溶かす。顎まで布団をかけてしっかり寝るように言い聞かせ、こうして屋敷に出てきたわけだが。
ひとつ何かをする度に、いらぬ心配がトーマの頭を過った。彼女が子どもではないことも、いざとなれば助けを呼べる小さな仲間が見てくれていることもわかっている。ただどうしても、滅多に弱音を吐かない蛍がトーマの手を握って「行かないで」と呟いた光景が離れなくて。やがて眠った蛍の酷く熱いその手をベッドの上に置いてきたことを、激しく後悔していた。体調が悪い時には人肌が恋しくなるものだ。隣にいるだけでいい、そんな人として選んでもらったというのに、寄り添ってやることもできずに自分は一体何を。
かみすき
DONEトマ蛍推しカプ、毎日夏祭りに行ってほしい
《トマ蛍》店員さん、オレとデートしてください 屋敷に帰るや否や、一息つく間もなく浴衣を着せられる。誰に何を聞いてもそのうちわかりますから、の一点張り。理由もわからぬまま下駄を履き、今さっきくぐったばかりの門を追い出された。
皆は手を振って送り出すばかり。何事かと疑問符を浮かべるトーマの背を、誰かが軽く叩いた。
「トーマっ」
同時に脇からひょこんと顔を出したのは、薄らと化粧を施した蛍だった。上向きのまつ毛は瞬きに合わせて震え、色をのせた頬が愛くるしさを引き立てる。弧を描く唇は紅でくっきりと縁取られて満足げな表情を彩っていた。
ずいぶんなおめかしだと彼女に向き合えばこれまた上等な浴衣が相見える。眩しい白地に、ぱっと咲く真紅の花たち。蛍が腕を広げると炎のように揺らめいて見えた。
3329皆は手を振って送り出すばかり。何事かと疑問符を浮かべるトーマの背を、誰かが軽く叩いた。
「トーマっ」
同時に脇からひょこんと顔を出したのは、薄らと化粧を施した蛍だった。上向きのまつ毛は瞬きに合わせて震え、色をのせた頬が愛くるしさを引き立てる。弧を描く唇は紅でくっきりと縁取られて満足げな表情を彩っていた。
ずいぶんなおめかしだと彼女に向き合えばこれまた上等な浴衣が相見える。眩しい白地に、ぱっと咲く真紅の花たち。蛍が腕を広げると炎のように揺らめいて見えた。
かみすき
DONEトマ蛍定番の願い事だけど、まあ何回煎じてもおいしいからオッケー
《トマ蛍》空からみてる 「トーマは、もし蛍さんと年に一度しか会えないとしたら何をするんだい」
太陽に照らされて揺れる笹の葉の下、唐突に尋ねた綾人に深い意味はないのだろう。しかし心の中を読まれたようでどきりと心臓が跳ねる。早く会いたい、なんて思い浮かべていた愛しい人の顔。
「そう、ですね」
どれだけ忙しくとも必ず時間を作ってくれる彼女のおかげで、週に一度は顔を合わせているけれど。この先、ずっと会えなくなることだってあり得るかもしれない。彼女は旅人だから。休むことなく進み続ける。いずれ旅の終点にたどり着いて、それからまた、新たな旅を始めるかもしれない。
もし、年に一度だったら。きっと、話したいこともやりたいこともたくさんあるだろう。なんせ一年分だ。今だってまだまだ満たされない程だというのに、たった一日に何を詰め込めるだろうか。
2187太陽に照らされて揺れる笹の葉の下、唐突に尋ねた綾人に深い意味はないのだろう。しかし心の中を読まれたようでどきりと心臓が跳ねる。早く会いたい、なんて思い浮かべていた愛しい人の顔。
「そう、ですね」
どれだけ忙しくとも必ず時間を作ってくれる彼女のおかげで、週に一度は顔を合わせているけれど。この先、ずっと会えなくなることだってあり得るかもしれない。彼女は旅人だから。休むことなく進み続ける。いずれ旅の終点にたどり着いて、それからまた、新たな旅を始めるかもしれない。
もし、年に一度だったら。きっと、話したいこともやりたいこともたくさんあるだろう。なんせ一年分だ。今だってまだまだ満たされない程だというのに、たった一日に何を詰め込めるだろうか。
かみすき
DONEトマ蛍推しカプの何でもない日常はいいぞ
《トマ蛍》あつはなついね 話には聞いていたものの、こうも厳しい環境だとは。稲妻の夏、高温多湿。
神里屋敷も漏れなく、その中にある。開け放った窓から入り込む風は生ぬるく、頼んでもいない不快感を運んできた。目を開けられないほどにぎらぎらと眩しい太陽を避けて屋根の下で過ごしていても、纏わりつくようにじっとり重い空気からは逃げられない。滲んだ汗は拭き取ったそばからまたすぐに湧いて出てきて、すべてのやる気を溶かしていった。
だるい手足を投げ出す。ぎしぎし音を立てる床板は火照った体には程よい冷たさだが、それもあっと言う間に蛍の体温に馴染んでしまう。ここら一帯の床はもうすっかり温まってしまって、かろうじて動かせそうな指先で辺りの床を探ってもひんやりとした気持ちよさにはありつけそうにない。動きたくはないけれど、同時に頬に張り付く床の温度も鬱陶しくて仕方がなかった。
2387神里屋敷も漏れなく、その中にある。開け放った窓から入り込む風は生ぬるく、頼んでもいない不快感を運んできた。目を開けられないほどにぎらぎらと眩しい太陽を避けて屋根の下で過ごしていても、纏わりつくようにじっとり重い空気からは逃げられない。滲んだ汗は拭き取ったそばからまたすぐに湧いて出てきて、すべてのやる気を溶かしていった。
だるい手足を投げ出す。ぎしぎし音を立てる床板は火照った体には程よい冷たさだが、それもあっと言う間に蛍の体温に馴染んでしまう。ここら一帯の床はもうすっかり温まってしまって、かろうじて動かせそうな指先で辺りの床を探ってもひんやりとした気持ちよさにはありつけそうにない。動きたくはないけれど、同時に頬に張り付く床の温度も鬱陶しくて仕方がなかった。
かみすき
DONEトマ蛍マリッジブルー的な
《トマ蛍》明日も天気になあれ「眠れない?」
「うん……どきどきする」
月明かりをきらりと反射した蜂蜜色の瞳がトーマを捉える。ずいぶん夜は更けたものの未だぱっちりと開かれて、眠気の気配はこれっぽっちもなさそうだった。
「トーマも、眠れないの」
「そうだね」
今日はしっかり休息を取らなければならないのは、お互いわかっている。それでも、うきうき浮かれた気分がそうはさせてくれなかった。
明日は、トーマと蛍の結婚式。わくわくふわふわ、心臓はばくばく。落ち着いている方が無理な話だろう。いっそこのままのんびりお喋りを繰り返して、眠らずに朝を迎えるのもありだろうか。これだけはしゃいだ気持ちなら、それくらいやったって明日も元気に乗り切れるだろう。
1731「うん……どきどきする」
月明かりをきらりと反射した蜂蜜色の瞳がトーマを捉える。ずいぶん夜は更けたものの未だぱっちりと開かれて、眠気の気配はこれっぽっちもなさそうだった。
「トーマも、眠れないの」
「そうだね」
今日はしっかり休息を取らなければならないのは、お互いわかっている。それでも、うきうき浮かれた気分がそうはさせてくれなかった。
明日は、トーマと蛍の結婚式。わくわくふわふわ、心臓はばくばく。落ち着いている方が無理な話だろう。いっそこのままのんびりお喋りを繰り返して、眠らずに朝を迎えるのもありだろうか。これだけはしゃいだ気持ちなら、それくらいやったって明日も元気に乗り切れるだろう。
かみすき
DONEトマ蛍トマ蛍が同棲するお家のあれこれになって見守りたい気持ちからできたごく短いお話のまとめ2
≪トマ蛍≫新居の○○になりたい2【冷蔵庫になりたい】
冷たいお水を求めてキッチンへと入れば、クッキーの入った瓶に手を突っ込んだ先客がいた。
その脇をすり抜けて奥の冷蔵庫に向かおうとしたのに、右へ左へ、口の端にクッキーの欠片をつけたままの蛍がトーマの行く先を塞いで妨害する。
「なーにしてるの」
「邪魔してる」
「オレお水飲みたいんだけど」
「だめー」
正面を突破しようとすれば、その小さな体をめいっぱい広げて止められる。体当たりを受け流したくても、蛍にきゅうと抱きしめられてしまえばどんな弱い力だってトーマは動けなくなってしまう。
寄りかかる蛍を受け止めて、むふ、と得意げに笑う顔を飾るクッキーの欠片を、その唇に押し込んだ。
「進めないよ」
「うん、邪魔してるからね」
3668冷たいお水を求めてキッチンへと入れば、クッキーの入った瓶に手を突っ込んだ先客がいた。
その脇をすり抜けて奥の冷蔵庫に向かおうとしたのに、右へ左へ、口の端にクッキーの欠片をつけたままの蛍がトーマの行く先を塞いで妨害する。
「なーにしてるの」
「邪魔してる」
「オレお水飲みたいんだけど」
「だめー」
正面を突破しようとすれば、その小さな体をめいっぱい広げて止められる。体当たりを受け流したくても、蛍にきゅうと抱きしめられてしまえばどんな弱い力だってトーマは動けなくなってしまう。
寄りかかる蛍を受け止めて、むふ、と得意げに笑う顔を飾るクッキーの欠片を、その唇に押し込んだ。
「進めないよ」
「うん、邪魔してるからね」
かみすき
DONEトマ蛍ベッドでいちゃいちゃする推し、なんぼあっても良いですからね
《トマ蛍》早起きはずいぶんお得 雑に閉めたカーテンは、どうやら朝日が漏れる隙間を残していたらしい。蛍だけに差し込んだ光のせいで、いつもよりずっと早く目が覚めてしまった。
突き刺さる眩しさにしょぼしょぼと瞬きを繰り返す。どうしてきちんと閉めなかったんだろう。朝日から逃げるように転がりながら、昨晩の自分へのどうしようもないもやもやをため息と一緒に吐き出す。時間はわからないけれど、もう少し眠れたはずなのに。だって、まだトーマが寝ている。
いくら寝返りを打っても、布団を被り直してみても、目覚めるタイミングが良かったのか悪かったのか、眠気はもう戻ってこなかった。
仕方なく目の前にあったトーマの背中を眺める。穏やかな寝息と共に上下する肩。すっかり草臥れたお揃いの部屋着。一房の長い髪はその体に巻き込まれてくしゃりと潰れていた。覗く項は、トーマよりもずっと背の低い蛍にはなかなか見られるものではなくて。
1629突き刺さる眩しさにしょぼしょぼと瞬きを繰り返す。どうしてきちんと閉めなかったんだろう。朝日から逃げるように転がりながら、昨晩の自分へのどうしようもないもやもやをため息と一緒に吐き出す。時間はわからないけれど、もう少し眠れたはずなのに。だって、まだトーマが寝ている。
いくら寝返りを打っても、布団を被り直してみても、目覚めるタイミングが良かったのか悪かったのか、眠気はもう戻ってこなかった。
仕方なく目の前にあったトーマの背中を眺める。穏やかな寝息と共に上下する肩。すっかり草臥れたお揃いの部屋着。一房の長い髪はその体に巻き込まれてくしゃりと潰れていた。覗く項は、トーマよりもずっと背の低い蛍にはなかなか見られるものではなくて。
かみすき
DONEトマ蛍休み明けに仕事に行く人、みなえらい!
《トマ蛍》後ろ髪を引っ張るな「次のお休みいつ? 今日?」
いつもなら朝はぽやんと寝ぼけているはずの蛍が、今日は珍しいことにわあわあ騒いでいる。扉を開けたいトーマのその動きを封じようと、全身でしがみつきながら。
「今日は休みじゃないよ。だから行かなくちゃ」
「やだあ、もっと一緒にいようよ」
久しぶりの連休を貰い、他に邪魔するものもない洞天で、どちらかが限界を迎えるまで夜更かしして、朝だか昼だかわからない時間に起きて。お菓子を食べ過ぎたせいでご飯を食べられなくなって、半端な時間にお腹が空く。
蛍と共にのんびり過ごしたところまではよかったのだ。たった二日、されど二日。一般的には長い休みではないけれど、この期間で十分に体も心も癒されて、今日から元気に仕事に向かうはずだった。トーマが足りないとごねる蛍の全力の足止めをくらうまでは。
1721いつもなら朝はぽやんと寝ぼけているはずの蛍が、今日は珍しいことにわあわあ騒いでいる。扉を開けたいトーマのその動きを封じようと、全身でしがみつきながら。
「今日は休みじゃないよ。だから行かなくちゃ」
「やだあ、もっと一緒にいようよ」
久しぶりの連休を貰い、他に邪魔するものもない洞天で、どちらかが限界を迎えるまで夜更かしして、朝だか昼だかわからない時間に起きて。お菓子を食べ過ぎたせいでご飯を食べられなくなって、半端な時間にお腹が空く。
蛍と共にのんびり過ごしたところまではよかったのだ。たった二日、されど二日。一般的には長い休みではないけれど、この期間で十分に体も心も癒されて、今日から元気に仕事に向かうはずだった。トーマが足りないとごねる蛍の全力の足止めをくらうまでは。
かみすき
DONEトマ蛍あの時の悪夢を見るトーマ
《トマ蛍》獏にあげます 神の目の押収は、これでちょうど百人目。ざわつく民衆の中、トーマはその神像の前に投げ出されていた。
大丈夫、ここで大人しく神の目を渡しておけば、綾人や綾華にまで手が伸びることはしばらく防げる。これが最善なのだ。これしか、ないのだ。
社奉行に喧嘩を売るようなものだが、圧倒的な権力にしてみれば、トーマなど外から来たただの余所者に過ぎないのだ。異国の特徴を持つその金髪は、この辺りではよく目立った。
トーマが築いてきた繋がりが生む、そこそこの顔の広さも含め。見せしめとして、牽制として、ちょうどいい人材は他にいないだろう。
いやに冷静な頭が弾き出したその考えは、まるで他人事のようだった。
違う、他人事のように考えたかっただけか。
2177大丈夫、ここで大人しく神の目を渡しておけば、綾人や綾華にまで手が伸びることはしばらく防げる。これが最善なのだ。これしか、ないのだ。
社奉行に喧嘩を売るようなものだが、圧倒的な権力にしてみれば、トーマなど外から来たただの余所者に過ぎないのだ。異国の特徴を持つその金髪は、この辺りではよく目立った。
トーマが築いてきた繋がりが生む、そこそこの顔の広さも含め。見せしめとして、牽制として、ちょうどいい人材は他にいないだろう。
いやに冷静な頭が弾き出したその考えは、まるで他人事のようだった。
違う、他人事のように考えたかっただけか。
かみすき
DONEトマ蛍トマ蛍が同棲するお家のあれこれになって見守りたい気持ちからできたごく短いお話のまとめ
《トマ蛍》新居の〇〇になりたい【壁になりたい】
次々に運び込まれる家具たちと、隅に山積みの箱たち。
木の匂いで満たされた新居が少しずつ賑やかになっていく様を、広いリビングに鎮座するソファに腰掛けて眺めていた。
蛍の体より大きな家具を運ばせるなんて、とここで待たされているけど、手伝うくらいならできると思うの。過保護になりたいらしいトーマのために仕方なく、静かに座りながら手近な箱を開封する。
食器を慎重に取り出して、犬の尻尾がかわいいお揃いのマグカップを手に取る。あれ、汗だくのトーマに冷たいお茶でもと思ったけれど、まだ冷蔵庫は空っぽなんだった。
小さな箱を開けてはでへへ、とだらしなく緩む頬。
今日からここで、トーマと二人暮らしをする。同棲ってやつ。
4300次々に運び込まれる家具たちと、隅に山積みの箱たち。
木の匂いで満たされた新居が少しずつ賑やかになっていく様を、広いリビングに鎮座するソファに腰掛けて眺めていた。
蛍の体より大きな家具を運ばせるなんて、とここで待たされているけど、手伝うくらいならできると思うの。過保護になりたいらしいトーマのために仕方なく、静かに座りながら手近な箱を開封する。
食器を慎重に取り出して、犬の尻尾がかわいいお揃いのマグカップを手に取る。あれ、汗だくのトーマに冷たいお茶でもと思ったけれど、まだ冷蔵庫は空っぽなんだった。
小さな箱を開けてはでへへ、とだらしなく緩む頬。
今日からここで、トーマと二人暮らしをする。同棲ってやつ。
かみすき
DONEトマ蛍日焼け止めクリームを塗ってあげる話
《トマ蛍》その日の晩はお屋敷で 挨拶もそこそこに、見ろよこれ! とパイモンが蛍の服をずるりと下ろしたせいで突然晒された胸元。
朝の忙しない空気を引きずる神里屋敷の廊下に、トーマの情けない悲鳴が響き渡った。わらわら集まってくる使用人を追い返しながら、とっさに腕の中に囲った客人たちを近くの部屋に押し込む。
「びっ……くりした……」
「なんでそんなに慌ててるんだよ」
「誰かに見られたら困るだろ」
「ええ? トーマ以外いなかっただろ」
廊下なんて、いつ誰が現れるかもわからない。蛍の身体を見せてたまるか。おかしな虫がついたらどうする、そういう目で見ていいのはトーマだけなのに。全身から吹き出した汗が止まらなかった。
本人はトーマの心配事にぴんときていないらしく、まあいいかと再び蛍のインナーをずらす。
2160朝の忙しない空気を引きずる神里屋敷の廊下に、トーマの情けない悲鳴が響き渡った。わらわら集まってくる使用人を追い返しながら、とっさに腕の中に囲った客人たちを近くの部屋に押し込む。
「びっ……くりした……」
「なんでそんなに慌ててるんだよ」
「誰かに見られたら困るだろ」
「ええ? トーマ以外いなかっただろ」
廊下なんて、いつ誰が現れるかもわからない。蛍の身体を見せてたまるか。おかしな虫がついたらどうする、そういう目で見ていいのはトーマだけなのに。全身から吹き出した汗が止まらなかった。
本人はトーマの心配事にぴんときていないらしく、まあいいかと再び蛍のインナーをずらす。
かみすき
DONEトマ蛍同棲するにあたっての
《トマ蛍》まだ間取りも決めていないのである ソファに腰掛けながら膝の間に座る小さな体を抱えて、その柔らかい髪に頬を寄せる。すんと鼻を鳴らせばお風呂上がりの甘い石鹸の香りがいっぱいに飛び込んできた。
もこもこの部屋着に包まれた蛍を愛でるトーマなど気にもとめず、本人は家具カタログを捲ってはあちこち印をつけている。
二人で使うものだから一緒に決めたいの、とふんふん鼻歌を歌いながらカタログを眺める蛍。あまりにもかわいい。ぎゅっと抱きしめながら覗き込んだカタログは、ベッドの図版を載せたページを見せていた。
「どうせなら奮発してキングサイズにするかい?」
「ひとりでキングサイズはさすがに大きすぎるよ」
「……え? ひとり?」
腕の中で首をひねった蛍は、聞き返したトーマを不思議そうに見上げる。お互いの困惑に何とも言えない沈黙が満ちた。
1825もこもこの部屋着に包まれた蛍を愛でるトーマなど気にもとめず、本人は家具カタログを捲ってはあちこち印をつけている。
二人で使うものだから一緒に決めたいの、とふんふん鼻歌を歌いながらカタログを眺める蛍。あまりにもかわいい。ぎゅっと抱きしめながら覗き込んだカタログは、ベッドの図版を載せたページを見せていた。
「どうせなら奮発してキングサイズにするかい?」
「ひとりでキングサイズはさすがに大きすぎるよ」
「……え? ひとり?」
腕の中で首をひねった蛍は、聞き返したトーマを不思議そうに見上げる。お互いの困惑に何とも言えない沈黙が満ちた。
かみすき
DONEトマ蛍ハッピーな話にしたかったけどなんだこれは
《トマ蛍》不束者ではございますがお嬢がお茶を用意しようとするものだから慌てて代わろうとしたのに、トーマは座っていてくださいねと茶器すらも渡してもらえなかった。
足が痺れて苦手だと言っていたのに珍しく正座した蛍が、背すじをぴんと伸ばして正面の若をじっと見つめている。その横では空中で膝を折ったパイモンがぎゅっと口を引き結んで見守っていた。
空いていた蛍の隣に収まったはいいが、なんだ、この集まりは。何も聞かされぬまま呼ばれた先は、重大な評議を行うんだと言われても納得できる程の緊張感に溢れていた。物を聞くのも憚られるほど静まりかえっていて、アイコンタクトを図ろうにも誰とも目が合わないのだ。
こと、と置かれたお茶は、色を見るに神里屋敷にあるもので一番上等な、稲妻産のもの。
1578足が痺れて苦手だと言っていたのに珍しく正座した蛍が、背すじをぴんと伸ばして正面の若をじっと見つめている。その横では空中で膝を折ったパイモンがぎゅっと口を引き結んで見守っていた。
空いていた蛍の隣に収まったはいいが、なんだ、この集まりは。何も聞かされぬまま呼ばれた先は、重大な評議を行うんだと言われても納得できる程の緊張感に溢れていた。物を聞くのも憚られるほど静まりかえっていて、アイコンタクトを図ろうにも誰とも目が合わないのだ。
こと、と置かれたお茶は、色を見るに神里屋敷にあるもので一番上等な、稲妻産のもの。
かみすき
DONEトマ蛍投げたのはたぶん玉ねぎ
《トマ蛍》もしもの話ですがお店の目の前で注目を集めていたカップル。あまりにも大きな声だから会話も丸聞こえだったのだけれど、どうやら女性の浮気が原因で喧嘩しているようだった。相手の男を一発殴りたいから今すぐ連れてこいとか、もうあなたとはやっていけないから別れようだとか。
遠巻きに眺めていた人たちも、自分のパートナーが浮気したらどうしてやろうか、なんて話で盛り上がり始めた。浮気。そんなこと考えつきもしなかったけれど、世の中よくある話らしい。
蛍自身はトーマ以外なんてちっとも興味ないし、トーマだってそういった不誠実なことをするとも思えない。もしトーマに他の好きな人ができたとしても、きっときちんとお別れしてから次に進むんだろう。そういう人だから……とまで想像して、別れるのは嫌だな、そんなこと言われたらどうしようか、なんて勝手に不安になってしまった。
1906遠巻きに眺めていた人たちも、自分のパートナーが浮気したらどうしてやろうか、なんて話で盛り上がり始めた。浮気。そんなこと考えつきもしなかったけれど、世の中よくある話らしい。
蛍自身はトーマ以外なんてちっとも興味ないし、トーマだってそういった不誠実なことをするとも思えない。もしトーマに他の好きな人ができたとしても、きっときちんとお別れしてから次に進むんだろう。そういう人だから……とまで想像して、別れるのは嫌だな、そんなこと言われたらどうしようか、なんて勝手に不安になってしまった。
かみすき
PASTトマ蛍ホワイトデーの話
≪トマ蛍≫どうしてこんなに美しい昨晩冷蔵庫に入れたそれの無事を確認する。
チョコレートで作った薔薇。うん、問題ない。
試行を重ねてやっと綺麗にできた5つを花束のように丁寧にラッピングする。
下段にある大量の失敗作はまた今度食べるとして。ひとりで食べ切るにはなかなかの量だけど、若とお嬢は手伝ってくれるだろうか。
ひと月前のバレンタインデー。
稲妻式、女性からの贈り物を期待していたトーマと、その他諸国で一般的な、男性からの贈り物を待っていた蛍。
盛大なすれ違いを起こしたふたりは、ホワイトデーと呼ばれる今日、やり直しバレンタインデーをする約束をしていた。
互いに贈り物を用意すると決めて迎えた今日はこのあと、蛍の洞天に招かれている。できたばかりの花束を持って、なんだか落ち着かなくて無駄に鏡の前で身だしなみを整えた。プロポーズしに行くわけでもないのにな。
2875チョコレートで作った薔薇。うん、問題ない。
試行を重ねてやっと綺麗にできた5つを花束のように丁寧にラッピングする。
下段にある大量の失敗作はまた今度食べるとして。ひとりで食べ切るにはなかなかの量だけど、若とお嬢は手伝ってくれるだろうか。
ひと月前のバレンタインデー。
稲妻式、女性からの贈り物を期待していたトーマと、その他諸国で一般的な、男性からの贈り物を待っていた蛍。
盛大なすれ違いを起こしたふたりは、ホワイトデーと呼ばれる今日、やり直しバレンタインデーをする約束をしていた。
互いに贈り物を用意すると決めて迎えた今日はこのあと、蛍の洞天に招かれている。できたばかりの花束を持って、なんだか落ち着かなくて無駄に鏡の前で身だしなみを整えた。プロポーズしに行くわけでもないのにな。
かみすき
PASTトマ蛍のんびりした朝
≪トマ蛍≫三度寝いかがですか遠くの方で何かがかちゃかちゃ音を立てて、それにつられてゆるりと意識が浮上した。
開かない目を擦ったぼんやりした視界で、外が明るくなっているのに気づいた。
朝、かあ。それでも身体は睡眠を求めているようで、再び落ちてきた瞼に抗うこともなく目を閉じる。
どうにかまだ動く手で背後を弄ってみたけど、ただシーツが擦れるだけ。トーマはもう起きてるみたい。
そこまで確認したのは覚えている。
そうして次は、ベッドの脇に座り込んだトーマに起こされた。あれ、二度寝した記憶もなかったな。
ぱしぱし瞬きをしながらどうにか目を開けようとするんだけど……うーん、すぐに閉じちゃうよ。
「起きないとキスしちゃうよ」
「……」
「起きた?」
「ん……起きてない」
2057開かない目を擦ったぼんやりした視界で、外が明るくなっているのに気づいた。
朝、かあ。それでも身体は睡眠を求めているようで、再び落ちてきた瞼に抗うこともなく目を閉じる。
どうにかまだ動く手で背後を弄ってみたけど、ただシーツが擦れるだけ。トーマはもう起きてるみたい。
そこまで確認したのは覚えている。
そうして次は、ベッドの脇に座り込んだトーマに起こされた。あれ、二度寝した記憶もなかったな。
ぱしぱし瞬きをしながらどうにか目を開けようとするんだけど……うーん、すぐに閉じちゃうよ。
「起きないとキスしちゃうよ」
「……」
「起きた?」
「ん……起きてない」
かみすき
PASTトマ蛍蛍ちゃんのにおい
≪トマ蛍≫実はもう10回くらい依頼人から貰った小さな紙袋を抱きしめて、駆け出そうとする足にはゆっくり! と言い聞かせて。
早く帰りたくて走っていたのだけれど、崩れやすいお菓子だから揺らさないようにねという言葉を思い出して大切に抱えてそっと歩いている。今ヒルチャールに遭遇したら困っちゃうな。
早くトーマに会いたい。
今日は丸一日休みだというトーマを置いていくなんて、と後ろ髪を引かれる思いで出かけたのは数時間前。これでも急いだつもりだったのに、確かに予定よりは早かったけれど、もうずいぶん日も高くなってしまった。
トーマにおいしいお茶を淹れてもらって、待たせてごめんねとこのお菓子を一緒に食べて、今日の残りをのんびり過ごす。そんなことを考えればやっぱり駆け出したくなってしまう。
2782早く帰りたくて走っていたのだけれど、崩れやすいお菓子だから揺らさないようにねという言葉を思い出して大切に抱えてそっと歩いている。今ヒルチャールに遭遇したら困っちゃうな。
早くトーマに会いたい。
今日は丸一日休みだというトーマを置いていくなんて、と後ろ髪を引かれる思いで出かけたのは数時間前。これでも急いだつもりだったのに、確かに予定よりは早かったけれど、もうずいぶん日も高くなってしまった。
トーマにおいしいお茶を淹れてもらって、待たせてごめんねとこのお菓子を一緒に食べて、今日の残りをのんびり過ごす。そんなことを考えればやっぱり駆け出したくなってしまう。
かみすき
PASTトマ蛍バレンタインデーの話
≪トマ蛍≫カルチャーショックってやつ?ない。チョコがない。いや、チョコなら厨房の棚にこれでもかとある。
違う、蛍からのチョコがない。
今日はバレンタインデーなのに。いや別にバレンタインにチョコを送らないといけない決まりはないけど。
ずっとスメールにいた蛍がわざわざ、2月14日に帰ってくる、と言うから。当然貰えるものだと思いこんでいた。だって、付き合っているのだから。
落ち着かない様子でいるのは緊張からだろうか、かわいいな、などと考えていたのははじめのうちだけ。
パイモンもひとりでどこかへ出かけていて、今はふたりっきりなのに。隣に座った蛍から出てくるのは旅先の話と、あとはキラキラ光る茸だけ。
足元に置いたその紙袋は。異国のロゴマークは洋菓子店のものだろう。チョコ。話が切れるタイミングで蛍をちらりと見やっても、ひとつも目が合わない。
3451違う、蛍からのチョコがない。
今日はバレンタインデーなのに。いや別にバレンタインにチョコを送らないといけない決まりはないけど。
ずっとスメールにいた蛍がわざわざ、2月14日に帰ってくる、と言うから。当然貰えるものだと思いこんでいた。だって、付き合っているのだから。
落ち着かない様子でいるのは緊張からだろうか、かわいいな、などと考えていたのははじめのうちだけ。
パイモンもひとりでどこかへ出かけていて、今はふたりっきりなのに。隣に座った蛍から出てくるのは旅先の話と、あとはキラキラ光る茸だけ。
足元に置いたその紙袋は。異国のロゴマークは洋菓子店のものだろう。チョコ。話が切れるタイミングで蛍をちらりと見やっても、ひとつも目が合わない。
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PASTトマ蛍でっかい犬のぬいぐるみ
≪トマ蛍≫犬と犬と犬一週間ぶりにやっと彼女の元を訪れることができたものの、もうすでに、ずいぶん夜も深くなってしまった。
こんな時間に訪ねては迷惑かとも思ったけれど、それでも、今晩泊まりに行くからと伝えたときの彼女の表情を思えば、這ってでも会いに行かなくちゃ。
うとうとと頭を揺らすマルに挨拶をしてから、彼女の邸宅へ。扉を開いた先は照明も落とされて、月の光でぼんやりと家具が浮かんで見えるだけ。さすがにもう眠っているか。
階段が軋む音にも気を払いながら、そろそろと寝室へ進む。上ってすぐがパイモンの部屋、その奥に蛍の部屋――扉のすき間から光が漏れている。待っていてくれたのか。
思わずばたばた駆け出したくなるのを堪えて足音を忍ばせる。辿り着いた扉をノックするが、しかし返事はない。ほたる、と小さく呼んでみても静かなまま。
3138こんな時間に訪ねては迷惑かとも思ったけれど、それでも、今晩泊まりに行くからと伝えたときの彼女の表情を思えば、這ってでも会いに行かなくちゃ。
うとうとと頭を揺らすマルに挨拶をしてから、彼女の邸宅へ。扉を開いた先は照明も落とされて、月の光でぼんやりと家具が浮かんで見えるだけ。さすがにもう眠っているか。
階段が軋む音にも気を払いながら、そろそろと寝室へ進む。上ってすぐがパイモンの部屋、その奥に蛍の部屋――扉のすき間から光が漏れている。待っていてくれたのか。
思わずばたばた駆け出したくなるのを堪えて足音を忍ばせる。辿り着いた扉をノックするが、しかし返事はない。ほたる、と小さく呼んでみても静かなまま。
かみすき
PASTトマ蛍 / トーマ不在デートの服を選びたい
≪トマ蛍≫デートの準備これが男の子の理想のデート服!
八重堂の前を通ったときにちらりと見えたその文字に、思わず足を止めてしまった。
デートの服装に、理想なんてあるのか。
どこに行くにも何をするにも、この一張羅とずっと一緒だ。もちろん、デートだってこれ。
でも、目の前の雑誌は何と。素敵な服でデートを成功させよう♪ なんて言っている。ちら、と開いてみれば、華やかなファッションをまとった女の子たち。見下ろした自分の服装は、それと比べればなんだか地味に見える。
今までのデートが失敗だったとは思わないけれど、もしかしてトーマもかわいい服を着ている方がいい、とかあるんだろうか。
ショックを受けた蛍は鍛冶屋への用もすっかり忘れて、買ったばかりの雑誌を握りしめて友人の元に転がり込んだのだ。
2246八重堂の前を通ったときにちらりと見えたその文字に、思わず足を止めてしまった。
デートの服装に、理想なんてあるのか。
どこに行くにも何をするにも、この一張羅とずっと一緒だ。もちろん、デートだってこれ。
でも、目の前の雑誌は何と。素敵な服でデートを成功させよう♪ なんて言っている。ちら、と開いてみれば、華やかなファッションをまとった女の子たち。見下ろした自分の服装は、それと比べればなんだか地味に見える。
今までのデートが失敗だったとは思わないけれど、もしかしてトーマもかわいい服を着ている方がいい、とかあるんだろうか。
ショックを受けた蛍は鍛冶屋への用もすっかり忘れて、買ったばかりの雑誌を握りしめて友人の元に転がり込んだのだ。
かみすき
PASTトマ蛍はじめてのこたつ
≪トマ蛍≫こたつの話こたつ。寒い季節を乗り越えるアイテム。社奉行でご飯をご馳走になったパイモンが体験したというそれはとてもとても快適らしく、なあなあ洞天にも置こうぜ! と連日熱烈なアピールを受けている。確かに、最近は洞天の気温を少し下げているのもあり、日が落ちるとぐっと冷え込む。様々な表情を見せてくれるという四季に憧れ、マルに頼んで管理してもらっているのだけれど。全室に暖炉を用意するのも大変だし、かといって火鉢だけでは暖めきれない。新しい暖房器具を導入したいのは山々だが、なんせ邸宅にはどうにか詰め込んだ家具たち。詳しいことはわからないけれど、たくさん家具を置きすぎるとマルが困ってしまうらしい。今はもうこれ以上物を置く余裕がないのだ。
3441かみすき
PASTトマ蛍壁ドンを知りたい蛍ちゃん
≪トマ蛍≫壁ドンをしてもらう話近頃の稲妻では、空前の小説ブームが起きているのだという。冒険譚から推理小説までジャンルは様々だが、とりわけ恋愛小説の人気が高い。その影響から、少女の間では「壁ドン」なるものが流行っているらしい。男の子が女の子を壁際まで追いこんで、壁に腕をついて囲い込むこと。綾華から勧められて読んだ本にも描かれていたそれは、どうやら胸キュン必至の一撃らしく、好きな男の子から壁ドンをされることが乙女の共通の憧れのようだった。先週出たばかりの新刊の帯にも「壁ドンで胸キュン!」との文字が踊っているのを見た。
隣でお茶をすすっているトーマに話を振ってみれば、トーマも壁ドンを知っているという。
「ただ、読んでみても、その『壁ドンで胸キュン』の感覚がわからなくて」
2747隣でお茶をすすっているトーマに話を振ってみれば、トーマも壁ドンを知っているという。
「ただ、読んでみても、その『壁ドンで胸キュン』の感覚がわからなくて」