浬-かいり-
DOODLEkoms。後輩に問い詰められてめんどくさく悶々するokswの話。隠伏の日陰「瀬田先輩と付き合ってるって、本当なんですか」
ひゅ、と。心臓を掴まれて、息が止まって、行き場を失くした酸素が喉の間から漏れ出たような。そんな音が自分から発せられた。
まだ慣れないRiNGでの練習を終えて、ひと足先にスタジオから出たら声を掛けられて人気のない所まで連れてこられて。そしてこの台詞だ。
見たことある子だ。花女の、学年がひとつ下の子だ。ハロハピのライブにも度々来て、差し入れも何度か貰ったことがある。学校で話したこともある。ただそんな彼女の目的は、あたしじゃなくて薫さんであることをよく知っている。
「え、あ、どうして、」
そんなことをぐるぐる考えていたら、声が喉に張り付いて上手く喋れなかった。
3485ひゅ、と。心臓を掴まれて、息が止まって、行き場を失くした酸素が喉の間から漏れ出たような。そんな音が自分から発せられた。
まだ慣れないRiNGでの練習を終えて、ひと足先にスタジオから出たら声を掛けられて人気のない所まで連れてこられて。そしてこの台詞だ。
見たことある子だ。花女の、学年がひとつ下の子だ。ハロハピのライブにも度々来て、差し入れも何度か貰ったことがある。学校で話したこともある。ただそんな彼女の目的は、あたしじゃなくて薫さんであることをよく知っている。
「え、あ、どうして、」
そんなことをぐるぐる考えていたら、声が喉に張り付いて上手く喋れなかった。
浬-かいり-
DOODLEかおみさ。🌸世界線桜色に染まれ 白馬に跨り道を行けば、此方に振り向いた子猫ちゃんたちが桜色に頬を染める。
新年度になり、桜並木には新しい風と共に花弁が舞う。私と同じ制服を着た学生たちは、皆浮き足立っているように見えた。それは、今日から進級し新しい生活が始まるから……というだけではないのだろう。
耳を傾ければ、聞こえてくる弾んだ声。近頃の学校内の話題は、とある噂で持ちきりだ。
伝説の桜の樹。
10年に一度だけ満開に咲き誇る、中庭の桜の樹。その樹の下で大切な人と一緒に幸せを願うと、その願いは必ず叶うという。
素晴らしく儚い話だと思う。ロマンがあり、夢がある。その話に花を咲かせ盛り上がる子猫ちゃんたちも可愛らしい。大切な人と共に桜を見れることだけでも素敵な時間だ。きっと、願いも叶うことだろう。
3276新年度になり、桜並木には新しい風と共に花弁が舞う。私と同じ制服を着た学生たちは、皆浮き足立っているように見えた。それは、今日から進級し新しい生活が始まるから……というだけではないのだろう。
耳を傾ければ、聞こえてくる弾んだ声。近頃の学校内の話題は、とある噂で持ちきりだ。
伝説の桜の樹。
10年に一度だけ満開に咲き誇る、中庭の桜の樹。その樹の下で大切な人と一緒に幸せを願うと、その願いは必ず叶うという。
素晴らしく儚い話だと思う。ロマンがあり、夢がある。その話に花を咲かせ盛り上がる子猫ちゃんたちも可愛らしい。大切な人と共に桜を見れることだけでも素敵な時間だ。きっと、願いも叶うことだろう。
浬-かいり-
DOODLEハロハピ。赤ちゃんになった(?)奥沢とハロハピがわちゃわちゃやるはなし。
Gimme a smile, Baby「あら?」
本日は、ハロー、ハッピーワールド! 通称ハロハピの練習日だった。CiRCLEのラウンジに一番乗りした弦巻こころは、部屋に入った瞬間にいつもと違う光景に気付いた。
ラウンジの隅っこに、黒いベビーカーが一台鎮座していた。ライブハウスではおおよそ見ない物に、こころは物珍しげに近付く。日除けのシェードが下ろしてあった為全容は見えないが、そこから小さな足が覗いているのは見えていた。
しゃがみ込んで、シェードの裏を覗き込む。そこには、こころが期待していた通りのものがあった。
「赤ちゃんだわ!」
ボリューム抑えめに歓声を上げる。
ぷっくりとした小さな手足、こぼれ落ちそうなほっぺた、控えめに聞こえてくる寝息。
3597本日は、ハロー、ハッピーワールド! 通称ハロハピの練習日だった。CiRCLEのラウンジに一番乗りした弦巻こころは、部屋に入った瞬間にいつもと違う光景に気付いた。
ラウンジの隅っこに、黒いベビーカーが一台鎮座していた。ライブハウスではおおよそ見ない物に、こころは物珍しげに近付く。日除けのシェードが下ろしてあった為全容は見えないが、そこから小さな足が覗いているのは見えていた。
しゃがみ込んで、シェードの裏を覗き込む。そこには、こころが期待していた通りのものがあった。
「赤ちゃんだわ!」
ボリューム抑えめに歓声を上げる。
ぷっくりとした小さな手足、こぼれ落ちそうなほっぺた、控えめに聞こえてくる寝息。
浬-かいり-
DOODLEかおみさ※怪盗パロ
これから共犯者なる君へ その日は満月だった。深夜だというのに夜の静けさは全く無く、サイレンが鳴り響き慌ただしい足音が幾重にも重なっていた。無線を行き交うのは怒号と、焦った声と、動揺する声と、そして笑い声。
「こちら宝石展示場、怪盗ハロハッピーはダイヤを盗み、尚逃走中……!」
世間を騒がす怪盗ハロハッピーは、予告状の時刻ぴったりに現れて予告していたダイヤを回収した。美術館内を逃走する怪盗を、警備員たちが必死に追いかける。
しかし追われている筈の怪盗は、楽しそうに笑うのだった。
「さあ、今宵も共に楽しもうじゃないか!」
そんな煽りとも取れる台詞を怪盗が口にして、壁に飾られた絵画へと手を伸ばす。それも盗むつもりかと警備員たちが声を荒げようとしたその瞬間、絵画の裏から大量の白い鳩が飛び出した。
2844「こちら宝石展示場、怪盗ハロハッピーはダイヤを盗み、尚逃走中……!」
世間を騒がす怪盗ハロハッピーは、予告状の時刻ぴったりに現れて予告していたダイヤを回収した。美術館内を逃走する怪盗を、警備員たちが必死に追いかける。
しかし追われている筈の怪盗は、楽しそうに笑うのだった。
「さあ、今宵も共に楽しもうじゃないか!」
そんな煽りとも取れる台詞を怪盗が口にして、壁に飾られた絵画へと手を伸ばす。それも盗むつもりかと警備員たちが声を荒げようとしたその瞬間、絵画の裏から大量の白い鳩が飛び出した。
浬-かいり-
DOODLEかのみさ夏の残骸に蓋 放課後。外に出てみれば、少し冷たい風が頬を掠めた。すっかり秋一色の外は肌寒い。そろそろマフラーやコートを出さなくちゃいけないかも。
学校の敷地内に生えている木の葉は、どれも黄色やオレンジなど鮮やかな色に変わっていて、風が吹くたびに数枚がひらひらと地面に落ちた。
夏休みがとっくに終わってしまった空の日は短く、既に日は傾き始めていた。夕日に照らされながら、耳には部活動に勤しむ声が届く。ただその声は夏休み前よりも勢いが無いように感じて——すぐにそれが、どこの部活も三年生の引退があったからだと思い当たった。
今日のテニス部の活動は無し。一人で歩き、やがて花壇の前で足を止めた。俯いた視線の先には、すっかり枯れてしまったひまわりが同じように俯いている。
2983学校の敷地内に生えている木の葉は、どれも黄色やオレンジなど鮮やかな色に変わっていて、風が吹くたびに数枚がひらひらと地面に落ちた。
夏休みがとっくに終わってしまった空の日は短く、既に日は傾き始めていた。夕日に照らされながら、耳には部活動に勤しむ声が届く。ただその声は夏休み前よりも勢いが無いように感じて——すぐにそれが、どこの部活も三年生の引退があったからだと思い当たった。
今日のテニス部の活動は無し。一人で歩き、やがて花壇の前で足を止めた。俯いた視線の先には、すっかり枯れてしまったひまわりが同じように俯いている。
浬-かいり-
DOODLEここみさ眠れない夜の訪問者 深夜、閉め切った窓の外からは何も音は聞こえない。それは家の中も同じで、既に寝静まった屋内から何かが聞こえて来る訳でもない。
ただ、一つの部屋は例外であった。電気を消して真っ暗になった部屋の中、ベッドの上の膨らんだ毛布が落ち着きなく動く。
ベッドで横になる奥沢美咲は、眉間に皺を寄せながら寝返りを打った。もぞもぞと落ち着く体勢を探して、見つからなくてまた寝返り。固く目を瞑っても、眠気が訪れる気配は一向に無い。
「んんんん……」
呻き声に近い声を上げながらのっそりと起き上がり、枕元に置いていたペットボトルの水を一口。ついでにスマホで画面を見てみれば、時刻は深夜2時を示していた。
なんだか、今夜はやけに寝付きが悪い。別に睡眠を取りすぎた訳でもない。普通に学校で授業を受けて、部活に参加して、バンドの練習をして、寧ろ身体は疲れているはずだった。それでも、目は冴えて脳は忙しなくぐるぐると回る。頭の中では新しい歌詞が浮かんではこれでは無いと消え、鼻唄が頭を過ってはそこへドラムやベースの音が足されていく。
2389ただ、一つの部屋は例外であった。電気を消して真っ暗になった部屋の中、ベッドの上の膨らんだ毛布が落ち着きなく動く。
ベッドで横になる奥沢美咲は、眉間に皺を寄せながら寝返りを打った。もぞもぞと落ち着く体勢を探して、見つからなくてまた寝返り。固く目を瞑っても、眠気が訪れる気配は一向に無い。
「んんんん……」
呻き声に近い声を上げながらのっそりと起き上がり、枕元に置いていたペットボトルの水を一口。ついでにスマホで画面を見てみれば、時刻は深夜2時を示していた。
なんだか、今夜はやけに寝付きが悪い。別に睡眠を取りすぎた訳でもない。普通に学校で授業を受けて、部活に参加して、バンドの練習をして、寧ろ身体は疲れているはずだった。それでも、目は冴えて脳は忙しなくぐるぐると回る。頭の中では新しい歌詞が浮かんではこれでは無いと消え、鼻唄が頭を過ってはそこへドラムやベースの音が足されていく。
浬-かいり-
DOODLEハロハピ年少組+戸山市ヶ谷サマーナイト・センセーション「……やっぱり、さ。無理だよ、あたしには」
7バンド合同の野外ライブ。特設ステージの裏、機材が並びスタッフが往来する灯りの少ないスペースで、ライブTシャツを着た奥沢美咲は蒼い顔をして首を振った。
今は夜。日中にぎらぎらと殺人的な光を放っていた太陽は引っ込んでいるとはいえ、熱帯夜の今日は蒸した空気が流れていて嫌な暑さだ。ステージの方からは熱気の冷めない観客達の声が聞こえてくる。
「諦めるのはまだ早いわ、美咲!」
「そうだよ、みーくん! そんなこと言わないでよ……!」
眉を下げる美咲を囲うようにして声を掛けているのは、同じバンドメンバーである弦巻こころと北沢はぐみだ。この二人も今日はステージ衣装とは違い、この日の為に作られたライブTシャツを着用している。
24287バンド合同の野外ライブ。特設ステージの裏、機材が並びスタッフが往来する灯りの少ないスペースで、ライブTシャツを着た奥沢美咲は蒼い顔をして首を振った。
今は夜。日中にぎらぎらと殺人的な光を放っていた太陽は引っ込んでいるとはいえ、熱帯夜の今日は蒸した空気が流れていて嫌な暑さだ。ステージの方からは熱気の冷めない観客達の声が聞こえてくる。
「諦めるのはまだ早いわ、美咲!」
「そうだよ、みーくん! そんなこと言わないでよ……!」
眉を下げる美咲を囲うようにして声を掛けているのは、同じバンドメンバーである弦巻こころと北沢はぐみだ。この二人も今日はステージ衣装とは違い、この日の為に作られたライブTシャツを着用している。
浬-かいり-
DOODLEかおみさその我儘、今日限定につき 寒いな、と身震いする感覚で目を開ける。薄いタオルケットだけでは暖を取るには心許なくて、でも手元にはそれしか無いから仕方なく引き寄せて身体を丸める。今は何時なんだろう。頭が重い。身体の節々が痛む。吐き気がして気持ち悪い。……昨日、何時に寝たっけな。
そんなことをぐるぐる考えていたら、頭に何かが乗せられた。ゆっくりとそちらに視線を移す。
「おはよう。今日はよく眠っていたね、お姫様」
声を掛けてきたのが薫さんだと気付いて、頭に乗せられたのは彼女の手だったと理解する。撫でる感触が心地よくて、それでも頭の痛みは和らいではくれなくて顔を顰める。
あたしと同じで朝には弱い薫さんだけど、今日はとっくに起きていたようで身なりが整っていた。
2693そんなことをぐるぐる考えていたら、頭に何かが乗せられた。ゆっくりとそちらに視線を移す。
「おはよう。今日はよく眠っていたね、お姫様」
声を掛けてきたのが薫さんだと気付いて、頭に乗せられたのは彼女の手だったと理解する。撫でる感触が心地よくて、それでも頭の痛みは和らいではくれなくて顔を顰める。
あたしと同じで朝には弱い薫さんだけど、今日はとっくに起きていたようで身なりが整っていた。
浬-かいり-
DOODLEかおみさ臆病者と梅雨の空 静かな部屋の中では、雨が窓を叩く音がやけにはっきりと聞こえてくる。
朝の天気予報では、東京は先日から梅雨入りしたと告げていた。雨が続くここ最近は6月というのに気温が低く、衣替えを終えて暫く経つ半袖の制服では肌寒い。
雨音に混じって、薫さんが台本のページを捲る音。寒いからと温かい飲み物を淹れてきたのは自分のくせに、台本を読むのに夢中で殆ど手に取られることの無かったマグカップからは、もう湯気が立つことはない。
あたしはパソコンに繋がれたヘッドホンを一度外すと、自分のマグカップを手に取って……もう自分の分は飲み切ってしまっていることを思い出した。仕方ないので、代わりに薫さんのマグカップに口を付ける。すっかり冷めてしまっているコーヒーは当然だけど身体を温めてくれる訳はなく、喉は潤ったけれど寧ろ肌寒さが増した。身震いをすれば、薫さんがすぐに気付いて顔を上げた。
2566朝の天気予報では、東京は先日から梅雨入りしたと告げていた。雨が続くここ最近は6月というのに気温が低く、衣替えを終えて暫く経つ半袖の制服では肌寒い。
雨音に混じって、薫さんが台本のページを捲る音。寒いからと温かい飲み物を淹れてきたのは自分のくせに、台本を読むのに夢中で殆ど手に取られることの無かったマグカップからは、もう湯気が立つことはない。
あたしはパソコンに繋がれたヘッドホンを一度外すと、自分のマグカップを手に取って……もう自分の分は飲み切ってしまっていることを思い出した。仕方ないので、代わりに薫さんのマグカップに口を付ける。すっかり冷めてしまっているコーヒーは当然だけど身体を温めてくれる訳はなく、喉は潤ったけれど寧ろ肌寒さが増した。身震いをすれば、薫さんがすぐに気付いて顔を上げた。
浬-かいり-
DOODLEハロハピ+戸山&市ヶ谷※ピコふぃーばー21話ネタ
サンバ三分前 北沢はぐみは頭を抱えていた。いや、正しくははぐみの姿をした松原花音が頭を抱えていた。
遡ること僅か数十分前。一体何をどうつもりだったか分からない瞬間移動装置というものを弦巻家が開発し、ハロー、ハッピーワールド! 通称ハロハピのメンバーはそれのお披露目会に立ち会った。
そんな中、装置へ行っちゃうモンモンしてわちゃもちゃっとしてしまうハプニングがあって、そんな訳で今彼女達五人は身体が入れ替わっている状態になってしまったのである。
弦巻こころの姿になった奥沢美咲が、状況を不審に思った使用人を誤魔化すべく部屋から退室。「この部屋で大人しく待っているように」といった旨のハンドサインを他の四人に送るものの伝わっていなかったのか、はたまた好奇心が強過ぎて一瞬で忘れ去られてしまったのか。
2784遡ること僅か数十分前。一体何をどうつもりだったか分からない瞬間移動装置というものを弦巻家が開発し、ハロー、ハッピーワールド! 通称ハロハピのメンバーはそれのお披露目会に立ち会った。
そんな中、装置へ行っちゃうモンモンしてわちゃもちゃっとしてしまうハプニングがあって、そんな訳で今彼女達五人は身体が入れ替わっている状態になってしまったのである。
弦巻こころの姿になった奥沢美咲が、状況を不審に思った使用人を誤魔化すべく部屋から退室。「この部屋で大人しく待っているように」といった旨のハンドサインを他の四人に送るものの伝わっていなかったのか、はたまた好奇心が強過ぎて一瞬で忘れ去られてしまったのか。
浬-かいり-
DOODLEかおみさ(大学一年生×高校三年生)微睡みに委ねるまま けたたましく鳴るアラームの音で、徐々に意識がはっきりする。目を閉じたまま手探りでスマホを探して、やっとの思いでアラームを止めた。時刻は午前六時半。
スマホを探す為に布団から出した手が寒くて、アラームを止めた後に思わず布団の中へまた手を引っ込めた。まずいな、布団の外に出たくない。これだから冬の朝というものは厄介だ。
なんとか起きなくてはと、布団の中で目をしぱしぱ瞬かせながら頭の中で今日の予定を確認する。
あれ、そもそも今日は何曜日だったっけ。ここのところ、大学の課題やライブ、演劇サークルの活動が重なって続いていて、すっかり曜日感覚が抜け落ちてしまった。
もう一度曜日を確認しようと、布団の外へ手を伸ばそうとする。その時、指先が何か温かいものに触れて思わず固まった。
1999スマホを探す為に布団から出した手が寒くて、アラームを止めた後に思わず布団の中へまた手を引っ込めた。まずいな、布団の外に出たくない。これだから冬の朝というものは厄介だ。
なんとか起きなくてはと、布団の中で目をしぱしぱ瞬かせながら頭の中で今日の予定を確認する。
あれ、そもそも今日は何曜日だったっけ。ここのところ、大学の課題やライブ、演劇サークルの活動が重なって続いていて、すっかり曜日感覚が抜け落ちてしまった。
もう一度曜日を確認しようと、布団の外へ手を伸ばそうとする。その時、指先が何か温かいものに触れて思わず固まった。
浬-かいり-
DOODLE咲咲ブレーキ同盟がお泊まり会するはなし(後編) ミッシェルのもこもこルームウェアを着て顔を真っ赤にしながら有咲のスマホを取り上げようとする美咲と、それを笑いながら阻止する有咲の攻防から数秒後。暫し謎の沈黙が訪れる。向かい合わせに座った二人が目を泳がせ、そして視線がかち合う。
口を開いたのは有咲の方だった。
「……で、何やるよ?」
夕飯まで、まだ時間がある。ポピパで泊まる時は、ハロハピで泊まる時はいつも何をしてどんな風に過ごしていたっけ。二人は考えを巡らせる。
「トランプでもやる?」
「二人でか?」
「じゃあUNOとか?」
「だから二人しか居ないっての」
「…………」
「……宿題、やるか?」
あまり楽しくない提案だが、明日も学校があるので仕方ない。他にやりたいことも思い浮かばないので、二人で黙々と宿題に取り掛かるのであった。
1987口を開いたのは有咲の方だった。
「……で、何やるよ?」
夕飯まで、まだ時間がある。ポピパで泊まる時は、ハロハピで泊まる時はいつも何をしてどんな風に過ごしていたっけ。二人は考えを巡らせる。
「トランプでもやる?」
「二人でか?」
「じゃあUNOとか?」
「だから二人しか居ないっての」
「…………」
「……宿題、やるか?」
あまり楽しくない提案だが、明日も学校があるので仕方ない。他にやりたいことも思い浮かばないので、二人で黙々と宿題に取り掛かるのであった。
浬-かいり-
DOODLE咲咲ブレーキ同盟がお泊まり会するはなし(前編) 平日のある日。この日はバンド練習も他の予定も特に無い。それなのに、自宅で寛ぐ市ヶ谷有咲はそわそわと落ち着きがなかった。
室内をウロウロ歩き、部屋の埃をチェックし、窓を開けては閉め、最後にベッドに飛び込んだ。
直後、家のインターホンが鳴ると弾かれたように起き上がり、手櫛で髪を整えながら玄関へ向かった。息を整えながら、ゆっくりとドアを開ける。
「あー……。い、いらっしゃい」
「……どうも。お邪魔します」
ぎこちなく挨拶をする有咲に、制服姿に大きな荷物を持った奥沢美咲が、同じようにぎこちない挨拶を返した。
◆
「こころ、これ見て」
事の発端は、その日の朝のことだった。2年A組の教室に来ていた弦巻こころを手招きし、美咲は自分のスマートフォンの画面を見せた。画面を覗き込んだこころの顔が、ぱっと華やぐ。
2822室内をウロウロ歩き、部屋の埃をチェックし、窓を開けては閉め、最後にベッドに飛び込んだ。
直後、家のインターホンが鳴ると弾かれたように起き上がり、手櫛で髪を整えながら玄関へ向かった。息を整えながら、ゆっくりとドアを開ける。
「あー……。い、いらっしゃい」
「……どうも。お邪魔します」
ぎこちなく挨拶をする有咲に、制服姿に大きな荷物を持った奥沢美咲が、同じようにぎこちない挨拶を返した。
◆
「こころ、これ見て」
事の発端は、その日の朝のことだった。2年A組の教室に来ていた弦巻こころを手招きし、美咲は自分のスマートフォンの画面を見せた。画面を覗き込んだこころの顔が、ぱっと華やぐ。
浬-かいり-
DOODLEハロハピHello, Happy Halloween……?「そういえば、美咲って仮装してなかったわよね?」
始まりは、ハロハピ会議の中突然零された、弦巻こころのそんな一言だった。あまりにも突然過ぎた為、奥沢美咲含めハロハピのメンバー達はきょとんと首を傾げる。
因みに先程までは、好きなおでんの具について話をしていた。本来は次のライブについて話し合う為の会議であったが、話題が大幅に逸れることはハロハピ会議では日常茶飯事だ。そして、こころの突拍子のない一言も。
「……なんの話?」
「この間サーカスでやったハロウィンライブの話よ! 美咲だけ仮装していないじゃない!」
「そりゃ、アレは衣装だったし」
先日大成功を収めた、ハロハピがオープニングアクトを務めたサーカスでのライブ。ハロウィンだった為、その時の衣装は仮装も兼ねていた。仮装だけど衣装。だからミッシェルとして舞台に上がっていた美咲には、衣装が無いのは当然だったのだが。
1978始まりは、ハロハピ会議の中突然零された、弦巻こころのそんな一言だった。あまりにも突然過ぎた為、奥沢美咲含めハロハピのメンバー達はきょとんと首を傾げる。
因みに先程までは、好きなおでんの具について話をしていた。本来は次のライブについて話し合う為の会議であったが、話題が大幅に逸れることはハロハピ会議では日常茶飯事だ。そして、こころの突拍子のない一言も。
「……なんの話?」
「この間サーカスでやったハロウィンライブの話よ! 美咲だけ仮装していないじゃない!」
「そりゃ、アレは衣装だったし」
先日大成功を収めた、ハロハピがオープニングアクトを務めたサーカスでのライブ。ハロウィンだった為、その時の衣装は仮装も兼ねていた。仮装だけど衣装。だからミッシェルとして舞台に上がっていた美咲には、衣装が無いのは当然だったのだが。
浬-かいり-
DOODLEハロハピ+ラスボスバンド過保護は程々にしましょう「あ、こころー」
「美咲!!」
放課後。2年B組の教室にやってきた奥沢美咲がバンドメンバーの名前を呼べば、弦巻こころは目を輝かせながら飛び付いた。
それをなんなく受け止めてから、美咲は苦笑いを浮かべる。
「美咲から迎えに来てくれるなんて嬉しいわ! 早速CiRCLEへ練習に行きましょう!」
「いやいや、違うってば。やっぱり忘れてたかー……」
溜息を吐けば、こころがきょとんと首を傾げた。その後ろで、山吹沙綾が手を振った。
「あれっ、美咲お疲れ! もしかして迎えに来てくれた?」
「いや、それもあるんだけど……。こころがきっと、忘れてるだろうなって思ったから一応伝えにきた」
「こころーーん! みーーくーーん! 練習行こ〜〜〜〜〜っっ!!」
2909「美咲!!」
放課後。2年B組の教室にやってきた奥沢美咲がバンドメンバーの名前を呼べば、弦巻こころは目を輝かせながら飛び付いた。
それをなんなく受け止めてから、美咲は苦笑いを浮かべる。
「美咲から迎えに来てくれるなんて嬉しいわ! 早速CiRCLEへ練習に行きましょう!」
「いやいや、違うってば。やっぱり忘れてたかー……」
溜息を吐けば、こころがきょとんと首を傾げた。その後ろで、山吹沙綾が手を振った。
「あれっ、美咲お疲れ! もしかして迎えに来てくれた?」
「いや、それもあるんだけど……。こころがきっと、忘れてるだろうなって思ったから一応伝えにきた」
「こころーーん! みーーくーーん! 練習行こ〜〜〜〜〜っっ!!」
浬-かいり-
DOODLE咲咲誕生日の朝、教室にて。 10月1日。既に花咲川女子学園2年A組の教室に着いていた市ヶ谷有咲は、一緒に登校してきた戸山香澄と共に談笑をしていた。まだ始業までは余裕があり、廊下の方からも楽しそうな話し声が聞こえて来る。
「じゃあ美咲! 今日の夜、あたしの家に集合よ! 美咲はあたしが迎えに行くから、家で待っていて頂戴ね!」
「はぐみたち、すっごいサプライズ用意してるから!!」
「いや、サプライズって先に言っちゃダメなんじゃない……?」
廊下から、聞き覚えのある声が三つ聞こえた。二つは朝から元気の有り余る声、一つはまだ少し眠たげなようにも感じる声。
有咲が教室の入り口へ視線をやれば、クラスメイトの奥沢美咲の姿があった。彼女はバンド活動を同じくしている弦巻こころと北沢はぐみに手を振ると、教室の中へと入ってきた。有咲が声を掛けるより先に、香澄が美咲の元へと駆け寄る。
2237「じゃあ美咲! 今日の夜、あたしの家に集合よ! 美咲はあたしが迎えに行くから、家で待っていて頂戴ね!」
「はぐみたち、すっごいサプライズ用意してるから!!」
「いや、サプライズって先に言っちゃダメなんじゃない……?」
廊下から、聞き覚えのある声が三つ聞こえた。二つは朝から元気の有り余る声、一つはまだ少し眠たげなようにも感じる声。
有咲が教室の入り口へ視線をやれば、クラスメイトの奥沢美咲の姿があった。彼女はバンド活動を同じくしている弦巻こころと北沢はぐみに手を振ると、教室の中へと入ってきた。有咲が声を掛けるより先に、香澄が美咲の元へと駆け寄る。
浬-かいり-
DOODLEハロハピ特にそういうオチは求めてなかった まだ残暑が残る夏休みの夜。弦巻家にハロー、ハッピーワールド! の五人は集まっていた。
畳の部屋に敷かれた布団の上に正座する五人。真っ暗な部屋の中、彼女達が囲む一本の蝋燭の火だけが揺らめいていた。
「それじゃあ第一回! ハロハピ怪談大会を始めるわよ!」
おどろおどろしい雰囲気に似つかわしくない、弦巻こころの明るい号令が響く。正座して目を輝かせる北沢はぐみが拍手をして、膝を抱える松原花音が苦笑いをして、そわそわと落ち着きの無い瀬田薫が表情を硬くした。
奥沢美咲はこの状況に首を傾げた。ハロハピの普段の雰囲気とかけ離れ過ぎたこの部屋の様相に、戸惑うばかりだった。
「あの、こころ? ……なんで突然怪談?」
「この間モカがね、Afterglowのみんなで怪談大会をしたってお話ししてくれたの!」
2821畳の部屋に敷かれた布団の上に正座する五人。真っ暗な部屋の中、彼女達が囲む一本の蝋燭の火だけが揺らめいていた。
「それじゃあ第一回! ハロハピ怪談大会を始めるわよ!」
おどろおどろしい雰囲気に似つかわしくない、弦巻こころの明るい号令が響く。正座して目を輝かせる北沢はぐみが拍手をして、膝を抱える松原花音が苦笑いをして、そわそわと落ち着きの無い瀬田薫が表情を硬くした。
奥沢美咲はこの状況に首を傾げた。ハロハピの普段の雰囲気とかけ離れ過ぎたこの部屋の様相に、戸惑うばかりだった。
「あの、こころ? ……なんで突然怪談?」
「この間モカがね、Afterglowのみんなで怪談大会をしたってお話ししてくれたの!」
浬-かいり-
DOODLEかおみさ+はぐみ内緒の時間は二人の時間「みーーーさきーーーー!!」
「みーくんみーくん〜〜! ねえねえ、今日こころんと三人でかき氷食べに行こうよー!」
放課後、こころんと二人でみーくんの教室へ飛び込む。この間おたえとイヴちんと行った、駅の近くの新しいかき氷屋さん。すっごく美味しかったから、こころんとみーくんにも食べて欲しいって思ったんだ。
けれどみーくんは、ちょっと眉を下げて困った顔をした。
「あー……ごめん、あたし予定があるんだ。二人で行っておいでよ」
「そうなんだ……。わかった! 今度一緒に行こうね!」
みーくんが一緒に行けないのは残念だけど。その代わり次は一緒に行く約束をして、手を振った。
こころんと校門を出る時に、少しだけ急いでるみたいに歩くみーくんの背中を見つけた。だからきっと、とっても大事な用事だったんだと思う。
2598「みーくんみーくん〜〜! ねえねえ、今日こころんと三人でかき氷食べに行こうよー!」
放課後、こころんと二人でみーくんの教室へ飛び込む。この間おたえとイヴちんと行った、駅の近くの新しいかき氷屋さん。すっごく美味しかったから、こころんとみーくんにも食べて欲しいって思ったんだ。
けれどみーくんは、ちょっと眉を下げて困った顔をした。
「あー……ごめん、あたし予定があるんだ。二人で行っておいでよ」
「そうなんだ……。わかった! 今度一緒に行こうね!」
みーくんが一緒に行けないのは残念だけど。その代わり次は一緒に行く約束をして、手を振った。
こころんと校門を出る時に、少しだけ急いでるみたいに歩くみーくんの背中を見つけた。だからきっと、とっても大事な用事だったんだと思う。
浬-かいり-
DOODLEかおみさ(※ブルーシープ衣装パロ)「おやすみ、ストレイシープ」の続き
ストレイシープは眠らない「おやすみ、仔羊ちゃん」
お月様とお星様が煌めく紺碧の空の下。今夜も眠れずにいた迷える仔羊が、ぐっすりと眠りの海へ落ちていきました。
モノクルの奥にルビーの瞳を輝かせる、ブルーシープと名乗る魔法使いが仔羊の頭を撫でて微笑みます。シルクハットの下に見える羊の角が、月明かりに照らされました。
その隣で、黒髪の間から同じような羊の角を覗かせた使い魔の女の子が、じっとブルーグレーの瞳を魔法使いへ向けました。
「美咲もありがとう、お疲れ様」
魔法使いが使い魔の女の子の頭を撫でてあげれば、恥ずかしがりやの彼女は窓の外へと目を逸らします。
まだ夜は始まったばかり。眠れぬ仔羊が眠った後は、魔法使いと使い魔の女の子の、二人だけの時間です。
1728お月様とお星様が煌めく紺碧の空の下。今夜も眠れずにいた迷える仔羊が、ぐっすりと眠りの海へ落ちていきました。
モノクルの奥にルビーの瞳を輝かせる、ブルーシープと名乗る魔法使いが仔羊の頭を撫でて微笑みます。シルクハットの下に見える羊の角が、月明かりに照らされました。
その隣で、黒髪の間から同じような羊の角を覗かせた使い魔の女の子が、じっとブルーグレーの瞳を魔法使いへ向けました。
「美咲もありがとう、お疲れ様」
魔法使いが使い魔の女の子の頭を撫でてあげれば、恥ずかしがりやの彼女は窓の外へと目を逸らします。
まだ夜は始まったばかり。眠れぬ仔羊が眠った後は、魔法使いと使い魔の女の子の、二人だけの時間です。
浬-かいり-
DOODLEかのみさ※モブ視点教師パロ
教科書は教えてくれない「どう? 解けた?」
「ううん……。分かんないよ先生、こんなの当て嵌まるところ無くない?」
机に広げたプリントの上に突っ伏せば、腕が当たってシャーペンが床に落ちた。頭がパンクしそうで、それを拾う気力も無い。
「ちゃんと教科書見てみなって。3行目から5行目」
苦笑いする先生が、シャーペンを拾ってくれる。私は項垂れた姿勢のままそれを受け取って、彼女の顔を見上げた。
奥沢先生は、現代文を担当する私のクラスの担任だ。見たところまだ若そうだけど、しっかりしていて話も親身に聞いてくれて頼り甲斐があって、生徒からも慕われている先生だ。
国語が壊滅的に苦手な私の為に、こうして一人きりの補習を開いてくれる。私もまた、先生を慕っている一人の生徒だった。
2775「ううん……。分かんないよ先生、こんなの当て嵌まるところ無くない?」
机に広げたプリントの上に突っ伏せば、腕が当たってシャーペンが床に落ちた。頭がパンクしそうで、それを拾う気力も無い。
「ちゃんと教科書見てみなって。3行目から5行目」
苦笑いする先生が、シャーペンを拾ってくれる。私は項垂れた姿勢のままそれを受け取って、彼女の顔を見上げた。
奥沢先生は、現代文を担当する私のクラスの担任だ。見たところまだ若そうだけど、しっかりしていて話も親身に聞いてくれて頼り甲斐があって、生徒からも慕われている先生だ。
国語が壊滅的に苦手な私の為に、こうして一人きりの補習を開いてくれる。私もまた、先生を慕っている一人の生徒だった。
浬-かいり-
DOODLEかのみさ(みさかのん)「リナリアを踏む」(https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=15658988)の花音さん視点の話。
ヒマワリを咲かせる「美咲ちゃん、さっきの子って知り合い?」
「さっきの子?」
初めてのハコでライブを終えて、その打ち上げ。ライブの話で盛り上がるこころちゃん達を落ち着かせながらメニューを注文して一息ついた頃、隣に座る美咲ちゃんに声を掛けた。
彼女は不思議そうな顔をしたけれど、先程ライブハウスを出る時に声を掛けてきたスタッフの子だと説明すれば、納得いったように頷いた。
「ライブ前にちょっとだけ話をしたんです。ミッシェルに興味があったみたいで」
「そうなんだ」
美咲ちゃんはそう説明したけれど。あの時私が見たあの子の顔と視線は、ただの好意や興味じゃないように感じた。
テーブルの下にある美咲ちゃんの右手を見つけると、きゅっと手を握る。少しだけ顔を赤らめた彼女が、驚いたように此方を見て小声で私を呼ぶ。
1811「さっきの子?」
初めてのハコでライブを終えて、その打ち上げ。ライブの話で盛り上がるこころちゃん達を落ち着かせながらメニューを注文して一息ついた頃、隣に座る美咲ちゃんに声を掛けた。
彼女は不思議そうな顔をしたけれど、先程ライブハウスを出る時に声を掛けてきたスタッフの子だと説明すれば、納得いったように頷いた。
「ライブ前にちょっとだけ話をしたんです。ミッシェルに興味があったみたいで」
「そうなんだ」
美咲ちゃんはそう説明したけれど。あの時私が見たあの子の顔と視線は、ただの好意や興味じゃないように感じた。
テーブルの下にある美咲ちゃんの右手を見つけると、きゅっと手を握る。少しだけ顔を赤らめた彼女が、驚いたように此方を見て小声で私を呼ぶ。
浬-かいり-
DOODLEはぐみと美咲夕立にスキップ 空を見上げて、北沢はぐみは一人溜息を吐いた。灰色の空からは、激しく雨が降り注いでいる。雨はベンチの屋根を叩きつけ、グラウンドをあっという間にぬかるみにしていく。
夏休みに入って最初のソフトボールの練習に、すっかり舞い上がっていたのがつい数十分前。来週末には、試合を控えていて気合も入っていた。
今日の分の練習はとっくに終わったのだが、なんだかもう少しだけ練習したい気分で。帰り支度を整えるチームメンバー達に手を振って、一人自主練習に打ち込んでいた。そしたらこの有様だ。
グラウンドに居残りしたことを、少しだけ後悔する。両手にはバットとグローブ。傘なんて持ち合わせていなかった。
「濡れて帰るしかないかなぁ……」
2379夏休みに入って最初のソフトボールの練習に、すっかり舞い上がっていたのがつい数十分前。来週末には、試合を控えていて気合も入っていた。
今日の分の練習はとっくに終わったのだが、なんだかもう少しだけ練習したい気分で。帰り支度を整えるチームメンバー達に手を振って、一人自主練習に打ち込んでいた。そしたらこの有様だ。
グラウンドに居残りしたことを、少しだけ後悔する。両手にはバットとグローブ。傘なんて持ち合わせていなかった。
「濡れて帰るしかないかなぁ……」
浬-かいり-
DOODLEくらさわ(倉田×奥沢)傘へ誘うは迎え梅雨「わ、雨だ。どうしよう……」
今日は楽しみにしていたファンタジー小説の発売日だった。学校が終わってからすぐに本屋に寄って目当ての本を買って、ついでに他に何か面白そうな本が無いか店内を回って。
そうしてやっと帰ろうと自動ドアの先へ踏み出したら、勢いよく降る雨が私の帰路を遮っていた。今日降るって言ってたっけ。
(どうしよう、傘持ってないや……)
駅まではそこそこ歩かなきゃいけない。この雨の中じゃせっかく買った本が濡れてしまう。それだけは絶対にダメ。でも、ここでずっと待っててもいつ止むかなんて分からないし……。
「あれ、倉田さん?」
後ろで自動ドアの開く音と、知ってる声。振り返ってみれば、一つ年上の他校の先輩の姿。ハロー、ハッピーワールド! の美咲さんだ。首を傾げて私を不思議そうに見つめていた。
2289今日は楽しみにしていたファンタジー小説の発売日だった。学校が終わってからすぐに本屋に寄って目当ての本を買って、ついでに他に何か面白そうな本が無いか店内を回って。
そうしてやっと帰ろうと自動ドアの先へ踏み出したら、勢いよく降る雨が私の帰路を遮っていた。今日降るって言ってたっけ。
(どうしよう、傘持ってないや……)
駅まではそこそこ歩かなきゃいけない。この雨の中じゃせっかく買った本が濡れてしまう。それだけは絶対にダメ。でも、ここでずっと待っててもいつ止むかなんて分からないし……。
「あれ、倉田さん?」
後ろで自動ドアの開く音と、知ってる声。振り返ってみれば、一つ年上の他校の先輩の姿。ハロー、ハッピーワールド! の美咲さんだ。首を傾げて私を不思議そうに見つめていた。
浬-かいり-
DOODLEかおみさGood-by, sweet Whiteday. 「お客さん、みんな喜んでくれて良かったですね」
ホワイトデー公演の帰り道。薄暗くなり始めた道の中で美咲がぽつりと零した。公演は大成功に終わり、バレンタインに愛を向けてくれた子猫ちゃん達もとても喜んでくれた。
美咲も公演で披露する曲を作ってくれたり、裏方の仕事を手伝ってくれたりと、去年に引き続き世話になってしまった。本当に感謝が尽きない。
「美咲、まだ時間はあるかい?」
ホワイトデー終了まで残り六時間。美咲を家に送り届けている途中だが、まだやらなければいけないことがある。私は尋ねながら、いつもの公園を指差した。首を傾げてから頷く美咲の手を引いて公園のベンチへ。
既に時報のチャイムが鳴った後の公園に人の姿は殆どなく、春特有の強めで生暖かい風が髪を撫でていくだけだ。
1464ホワイトデー公演の帰り道。薄暗くなり始めた道の中で美咲がぽつりと零した。公演は大成功に終わり、バレンタインに愛を向けてくれた子猫ちゃん達もとても喜んでくれた。
美咲も公演で披露する曲を作ってくれたり、裏方の仕事を手伝ってくれたりと、去年に引き続き世話になってしまった。本当に感謝が尽きない。
「美咲、まだ時間はあるかい?」
ホワイトデー終了まで残り六時間。美咲を家に送り届けている途中だが、まだやらなければいけないことがある。私は尋ねながら、いつもの公園を指差した。首を傾げてから頷く美咲の手を引いて公園のベンチへ。
既に時報のチャイムが鳴った後の公園に人の姿は殆どなく、春特有の強めで生暖かい風が髪を撫でていくだけだ。
浬-かいり-
DOODLE咲咲+ましろいっそ夢オチって言ってくれよ 「あ、有咲ちゃんいらっしゃい。今日は一人で練習でいいんだよね?」
「はい、お願いします」
受付にいるまりなさんに挨拶をして、スタジオへ入る前に飲み物でも買おうかとラウンジへ。するとソファの上に、何か小さいぬいぐるみのようなものが見えた。
……誰かの忘れ物か? 周りには誰も居ないし、仕方ない。まりなさんに届けるか。そう思いながら、“それ”に近付いて。
「……は???」
固まる。思考が停止する。いや、え??? 混乱しながら、それを抱き上げてみた。温かいな。重いな。現実だな。
“それ”が此方を見上げてきて、アクアマリンの瞳と目が合った。
「あれ、市ヶ谷さん。何して———、」
いつの間に背後に居たのか。奥沢さんの声がして名前を呼ばれて、肩にぽんと手を置かれた。それが起動の合図だったかのように、私の身体はぎこちなく動き奥沢さんの方を向く。抱える“それ”を見せるように。
2932「はい、お願いします」
受付にいるまりなさんに挨拶をして、スタジオへ入る前に飲み物でも買おうかとラウンジへ。するとソファの上に、何か小さいぬいぐるみのようなものが見えた。
……誰かの忘れ物か? 周りには誰も居ないし、仕方ない。まりなさんに届けるか。そう思いながら、“それ”に近付いて。
「……は???」
固まる。思考が停止する。いや、え??? 混乱しながら、それを抱き上げてみた。温かいな。重いな。現実だな。
“それ”が此方を見上げてきて、アクアマリンの瞳と目が合った。
「あれ、市ヶ谷さん。何して———、」
いつの間に背後に居たのか。奥沢さんの声がして名前を呼ばれて、肩にぽんと手を置かれた。それが起動の合図だったかのように、私の身体はぎこちなく動き奥沢さんの方を向く。抱える“それ”を見せるように。
浬-かいり-
DOODLEかおみさHello, melty Valentine. 「おや、美咲?」
「お、おはようございます……」
二月十四日の朝。ギターケースを提げる薫さんは、家の前で佇んでいたあたしを見て不思議そうに首を傾げた。あたしはぎこちなく挨拶をする。
それもそうだ。今日はハロハピのバレンタインライブがあるので、スタジオに直接集合の筈だ。わざわざ薫さんの家の前で待つ必要なんてない。驚いた顔をされるのも尤もなのである。
「もしかして、迎えに来てくれたのかい?」
「あー……、うん、まあ」
嬉しそうな声音になった薫さんに対して、曖昧な返事。よくよく考えたら、家の前で出待ちって重たくなかったかな。迷惑だったかな。大丈夫だよね。だって一応、付き合ってるわけだし。
そんなことをぐるぐる考えていたら、薫さんがあたしの手を握って歩き出した。咄嗟に、慌ててその手を反対側に引っ張る。
1557「お、おはようございます……」
二月十四日の朝。ギターケースを提げる薫さんは、家の前で佇んでいたあたしを見て不思議そうに首を傾げた。あたしはぎこちなく挨拶をする。
それもそうだ。今日はハロハピのバレンタインライブがあるので、スタジオに直接集合の筈だ。わざわざ薫さんの家の前で待つ必要なんてない。驚いた顔をされるのも尤もなのである。
「もしかして、迎えに来てくれたのかい?」
「あー……、うん、まあ」
嬉しそうな声音になった薫さんに対して、曖昧な返事。よくよく考えたら、家の前で出待ちって重たくなかったかな。迷惑だったかな。大丈夫だよね。だって一応、付き合ってるわけだし。
そんなことをぐるぐる考えていたら、薫さんがあたしの手を握って歩き出した。咄嗟に、慌ててその手を反対側に引っ張る。
浬-かいり-
DOODLEハロハピ(※マフィアパロ)「銃声は一度きり」の後日談
拝啓、過保護なきみたちへ。「おかえり、みーくん! よかったよ〜〜〜!!」
不覚にも敵のアジトに捕らえられて尋問……というか拷問に近いソレに合うも、ボスであるこころに直々に救助されて。無事に五体満足で本拠地に帰ってきた。
涙目のはぐみに出迎えられて、きつくハグされる。正直身体の節々が痛いけれど、心配を掛けさせちゃったからな。大人しく受けておく。はぐみも無事みたいで良かった。
薫さんと花音さんも手を振って出迎えてくれるけど、いやあなた達も敵アジトに乗り込んでたこと知ってるんですからね。白々しくない? 有難いけどさ。
「そうね、美咲はまずお風呂に入ってくるといいわ! そのままだと寒いでしょう?」
今のあたしは、水を頭から被った為ずぶ濡れだ。帰る時に、寒いからと自分のジャケットを貸そうとしてくれるこころと一悶着もあった。惨敗したので今のあたしの肩にはこころのジャケットが掛けられている。濡らしちゃったけどこれ一体いくらするジャケットなんだろう。怖いので聞かずにそのまま黒服さんに託しておいた。
2515不覚にも敵のアジトに捕らえられて尋問……というか拷問に近いソレに合うも、ボスであるこころに直々に救助されて。無事に五体満足で本拠地に帰ってきた。
涙目のはぐみに出迎えられて、きつくハグされる。正直身体の節々が痛いけれど、心配を掛けさせちゃったからな。大人しく受けておく。はぐみも無事みたいで良かった。
薫さんと花音さんも手を振って出迎えてくれるけど、いやあなた達も敵アジトに乗り込んでたこと知ってるんですからね。白々しくない? 有難いけどさ。
「そうね、美咲はまずお風呂に入ってくるといいわ! そのままだと寒いでしょう?」
今のあたしは、水を頭から被った為ずぶ濡れだ。帰る時に、寒いからと自分のジャケットを貸そうとしてくれるこころと一悶着もあった。惨敗したので今のあたしの肩にはこころのジャケットが掛けられている。濡らしちゃったけどこれ一体いくらするジャケットなんだろう。怖いので聞かずにそのまま黒服さんに託しておいた。
浬-かいり-
DOODLEかおみさ(大学一年×高校三年)カウントダウン バンド練習の無い金曜日の放課後。こころとはぐみの三人でちょっとだけファストフード店に寄り道をしてお喋りをして、先に帰ると店を出て行く二人に手を振って見送った。店内のテーブル席に一人残ったあたしは、スマホを弄る。今日は空いてるから、ゆっくりしていっていいとバイト中の花音さんに声を掛けてもらって。
「美咲」
そうして暫くしてから、優しく名前を呼ばれたので顔をあげた。あたしの目に映るのは、コートにマフラー姿で微笑む薫さん。
「すまないね、待っただろう」
「ううん、大丈夫。さっきまでこころとはぐみと一緒だったし」
頭を撫でてくる薫さんに首を振る。あたしがコートを羽織ってマフラーを巻いている間、薫さんは空になったあたしのドリンクカップを捨てに行ってくれていた。支度を終えると、戻ってきた薫さんが行こうかって手を差し出す。やりたいことを即座に察したあたしは、眉を下げた。
2492「美咲」
そうして暫くしてから、優しく名前を呼ばれたので顔をあげた。あたしの目に映るのは、コートにマフラー姿で微笑む薫さん。
「すまないね、待っただろう」
「ううん、大丈夫。さっきまでこころとはぐみと一緒だったし」
頭を撫でてくる薫さんに首を振る。あたしがコートを羽織ってマフラーを巻いている間、薫さんは空になったあたしのドリンクカップを捨てに行ってくれていた。支度を終えると、戻ってきた薫さんが行こうかって手を差し出す。やりたいことを即座に察したあたしは、眉を下げた。
浬-かいり-
DOODLEかおみさ(※オメガバース)それを運命と呼ぶ 嫌な予感がする。瀬田薫がそう思ったのは、恋人であり番である奥沢美咲のヒートが近いことだけが原因ではなかった。
この日の放課後、二人はCiRCLEで待ち合わせていた。新曲にあるギターソロの練習を、美咲が付き合ってくれる予定だった。
放課後に担任から雑用を引き受けてしまったので、少し遅れると連絡したのが数十分前。それにはすぐに了解の返事が来たものの、雑用を終え今から向かうと送ったメッセージには既読すら付いていない。たったそれだけのことであるのだが、どうにも嫌な予感が頭を過ぎって仕方ない。重いギターケースを背負って、CiRCLEまでの道を急いでいた。
気のせいであって欲しかった。辿り着けば美咲はなんでもない様子で、そんなに急いで来なくても良かったのに、心配し過ぎ。なんて憎まれ口を叩いて笑ってくれるのだと。そう思いたかった。
2543この日の放課後、二人はCiRCLEで待ち合わせていた。新曲にあるギターソロの練習を、美咲が付き合ってくれる予定だった。
放課後に担任から雑用を引き受けてしまったので、少し遅れると連絡したのが数十分前。それにはすぐに了解の返事が来たものの、雑用を終え今から向かうと送ったメッセージには既読すら付いていない。たったそれだけのことであるのだが、どうにも嫌な予感が頭を過ぎって仕方ない。重いギターケースを背負って、CiRCLEまでの道を急いでいた。
気のせいであって欲しかった。辿り着けば美咲はなんでもない様子で、そんなに急いで来なくても良かったのに、心配し過ぎ。なんて憎まれ口を叩いて笑ってくれるのだと。そう思いたかった。
浬-かいり-
DOODLEここみさ(※マフィアパロ)銃声は一度きり。 ぼんやりとしていた意識が突然覚醒する。身体中が痛い。顔が冷たくて寒くて、髪から滴る水と目の前に転がる空のバケツを視界に捉えて、顔に水を掛けられたのだと理解した。上手く動かない身体で冷静に状況を整理する。どうやら椅子に座らされた状態で、後ろ手に縛られているらしい。がっちりと背凭れに固定されている。
「起きたか。気絶には早いもんな?」
頭上から聞こえてきた声の主を見上げる。男のようだが、電灯の逆光で顔はよく見えない。暗い部屋で窓は無い。どうやら地下室のようだ。
そうだ、“仕事”の途中で敵勢力にかち合って口論になったんだ。いつもだったら安い挑発なんかには乗らないし、余計な争いも避けるのに。その時は一緒に居たはぐみにちょっかいを出してきたものだから、あたしもムキになってつい少しだけやり返してしまった。結果仲間を呼ばれて、この有様だ。はぐみは逃げられたかな。いや、人の心配をできるような状況じゃないんだけどさ。
2390「起きたか。気絶には早いもんな?」
頭上から聞こえてきた声の主を見上げる。男のようだが、電灯の逆光で顔はよく見えない。暗い部屋で窓は無い。どうやら地下室のようだ。
そうだ、“仕事”の途中で敵勢力にかち合って口論になったんだ。いつもだったら安い挑発なんかには乗らないし、余計な争いも避けるのに。その時は一緒に居たはぐみにちょっかいを出してきたものだから、あたしもムキになってつい少しだけやり返してしまった。結果仲間を呼ばれて、この有様だ。はぐみは逃げられたかな。いや、人の心配をできるような状況じゃないんだけどさ。
浬-かいり-
DOODLEハロハピ平穏にだなんて言わせない 元旦。神社での和太鼓演奏も終え、その日の午後はハロハピ全員揃っての初詣だった。初詣を終え、屋台の間を並んで歩く。綿飴の屋台に弦巻こころが吸い込まれ、北沢はぐみがたこ焼きを頬張り、瀬田薫がファンに囲まれ、松原花音が焦り、そのまま何故かこころとはぐみが振袖のままバク転を披露し、奥沢美咲に首根っこを掴まれ強制退場させられる。
今は少し落ち着いて、再び屋台を見て回っていた。
「あっ見て! 獅子舞さんが居るわ!」
こころが指差した先、人集りの中心に獅子舞を見つけた。笛や太鼓の音に合わせて踊る獅子舞に混じり、大人の笑い声や子供の泣き声が響いている。
人混みの間からちらりと見えた獅子舞と目が合ったような気がして、美咲が息を詰まらせた。
1839今は少し落ち着いて、再び屋台を見て回っていた。
「あっ見て! 獅子舞さんが居るわ!」
こころが指差した先、人集りの中心に獅子舞を見つけた。笛や太鼓の音に合わせて踊る獅子舞に混じり、大人の笑い声や子供の泣き声が響いている。
人混みの間からちらりと見えた獅子舞と目が合ったような気がして、美咲が息を詰まらせた。
浬-かいり-
DOODLEハロハピミッション・サンタクロース「みんな、準備はいいかしら?」
「おー!!」
12月25日、午前4時。真っ暗な早朝の中、弦巻こころが高らかな号令を掛ける。それに対して北沢はぐみが元気よく答えた。松原花音は戸惑うばかり、瀬田薫にいたっては目を閉じて半分夢の世界だ。因みに美咲は四人が眠っていた部屋で一人まだ夢の中である。
「えーと……、どういう状況かな?」
弦巻家の広い屋根の上に四人は立っていた。何故か屋根の上はライトで照らされ明るく、前日までの雪も積もっていないし凍結もしていないので安全。おまけに何故かヒーターがあり暖かい。薫が眠くなるのも頷ける。
何故クリスマス当日の早朝に屋根の上に。昨日クリスマスライブを終えて、打ち上げという名のお泊まり会を楽しんでいたのに。戸惑う花音に、こころは切り出した。
2991「おー!!」
12月25日、午前4時。真っ暗な早朝の中、弦巻こころが高らかな号令を掛ける。それに対して北沢はぐみが元気よく答えた。松原花音は戸惑うばかり、瀬田薫にいたっては目を閉じて半分夢の世界だ。因みに美咲は四人が眠っていた部屋で一人まだ夢の中である。
「えーと……、どういう状況かな?」
弦巻家の広い屋根の上に四人は立っていた。何故か屋根の上はライトで照らされ明るく、前日までの雪も積もっていないし凍結もしていないので安全。おまけに何故かヒーターがあり暖かい。薫が眠くなるのも頷ける。
何故クリスマス当日の早朝に屋根の上に。昨日クリスマスライブを終えて、打ち上げという名のお泊まり会を楽しんでいたのに。戸惑う花音に、こころは切り出した。
浬-かいり-
DOODLEかおみさ(社会人パロ)38℃に融ける 部屋に鳴り響くアラームの音で目を覚ます。重い瞼をなんとか開けながら隣を見るが、美咲の姿は無かった。同棲を始める時に二人で買った少し大きめのベッドが、今は途方もなく広く感じる。寝る前に根を詰め過ぎないよう声は掛けたのだが、結局彼女は徹夜したようだ。
フリーで作曲の仕事をしている美咲は、昨日はろくに食事も摂らず作業部屋に閉じ籠もっていた。締切が迫っている訳では無いのだが、本人曰く調子が出て来たので今手を止めたくは無い。とのことらしい。
ベッドから降りて着替えてから、美咲の作業部屋のドアをノックする。返事は無い。
「美咲、おはよう。調子はどうだい? 今から朝食を作るから、そしたら一緒に食べよう」
数秒後、呻き声に近い返事のようなものが聞こえて来た。一応の返事があったことに少しだけ安堵して、また呼びに来るよ、と一言だけ添えてキッチンへと向かう。
2588フリーで作曲の仕事をしている美咲は、昨日はろくに食事も摂らず作業部屋に閉じ籠もっていた。締切が迫っている訳では無いのだが、本人曰く調子が出て来たので今手を止めたくは無い。とのことらしい。
ベッドから降りて着替えてから、美咲の作業部屋のドアをノックする。返事は無い。
「美咲、おはよう。調子はどうだい? 今から朝食を作るから、そしたら一緒に食べよう」
数秒後、呻き声に近い返事のようなものが聞こえて来た。一応の返事があったことに少しだけ安堵して、また呼びに来るよ、と一言だけ添えてキッチンへと向かう。
浬-かいり-
DOODLEかおみさアップルミントのゆめをみて 時刻は21時を少し過ぎたところ。外は寒いが、家の中は暖房が効いている為暖かい。風呂上りの瀬田薫は自室のベッドに腰掛け台本を読みながら、一人そわそわと落ち着かない様子でいた。それは、今日が金曜の夜だからということだけが理由では無かった。
視線は手元の文章を追うものの、目は滑って内容は頭に入ってこない。それでも平静を装ってぺらぺらとページを捲る振りをしていれば、やがて扉の向こうから階段を上がる音が聞こえた。軽い足音は段々此方へと近付き、扉が開けられる。
「薫さん、お風呂ありがと」
「ああ。よく温まったかい?」
部屋に入ってきた恋人――奥沢美咲の姿に、薫は激しく動悸する心臓を誤魔化しながら微笑んだ。頷く美咲の頰はほんのりと赤く、しっかり身体を温めてきたであろうことが窺える。
2453視線は手元の文章を追うものの、目は滑って内容は頭に入ってこない。それでも平静を装ってぺらぺらとページを捲る振りをしていれば、やがて扉の向こうから階段を上がる音が聞こえた。軽い足音は段々此方へと近付き、扉が開けられる。
「薫さん、お風呂ありがと」
「ああ。よく温まったかい?」
部屋に入ってきた恋人――奥沢美咲の姿に、薫は激しく動悸する心臓を誤魔化しながら微笑んだ。頷く美咲の頰はほんのりと赤く、しっかり身体を温めてきたであろうことが窺える。
浬-かいり-
DOODLEここみさくるくる溶かして、ティータイム 「……っと。こんなもんか」
パソコンを閉じてから、背もたれに寄りかかって身体を伸ばす。今度デビューするというアイドルグループに提供する曲作りが、やっと一段落着いたところだ。まだ細かく直すところは沢山あるけれど、昨日の夜からずっと寝ずに作業していたし、今は少しくらい休んでもいいだろう。
ずっと装着していたヘッドフォンを外すと、木枯らしがガタガタと窓を揺らしていた。木の葉や枝が揺れる音が、閉め切っている部屋まで聞こえてくる。外は寒そうだ。
作業部屋を出てキッチンへ向かうと、点けっぱなしの電気ケトルを横目にマグカップを取り出す。食器棚から一緒に縦長の缶を出したところで、家のチャイムが軽快に鳴った。一旦マグカップと缶をテーブルに置き、インターホンのボタンを押した。
2406パソコンを閉じてから、背もたれに寄りかかって身体を伸ばす。今度デビューするというアイドルグループに提供する曲作りが、やっと一段落着いたところだ。まだ細かく直すところは沢山あるけれど、昨日の夜からずっと寝ずに作業していたし、今は少しくらい休んでもいいだろう。
ずっと装着していたヘッドフォンを外すと、木枯らしがガタガタと窓を揺らしていた。木の葉や枝が揺れる音が、閉め切っている部屋まで聞こえてくる。外は寒そうだ。
作業部屋を出てキッチンへ向かうと、点けっぱなしの電気ケトルを横目にマグカップを取り出す。食器棚から一緒に縦長の缶を出したところで、家のチャイムが軽快に鳴った。一旦マグカップと缶をテーブルに置き、インターホンのボタンを押した。
浬-かいり-
DOODLEハロハピばいばい、ナイトメア 今日のハロハピ恒例のお泊まり会は私の家で行われた。あんまり広くはない私の部屋にお布団を敷いて(四枚は敷き切れないので二枚だけ)、みんなでトランプやボードゲームをして遊んだり、次のライブの構想を練ったり、お喋りをしたり。明日もバンド練習があるし、あんまり遅くまで起きていられないねって、ちょっとだけ後ろ髪を引かれながらお布団に入ったのだった。
「ん……、」
むくり、と身体を起こす。まだ真っ暗で間接照明の光しか無い部屋の中、四人分の寝息が聞こえてきた。枕元のスマホをちらりと見れば、みんなでおやすみを言ってからまだ一時間も経っていなかった。今日はとっても楽しかったから、身体がまだ起きていたいって目が覚めちゃったのかな。水でも飲みに行こうと思って、ベッドから降りる。
2912「ん……、」
むくり、と身体を起こす。まだ真っ暗で間接照明の光しか無い部屋の中、四人分の寝息が聞こえてきた。枕元のスマホをちらりと見れば、みんなでおやすみを言ってからまだ一時間も経っていなかった。今日はとっても楽しかったから、身体がまだ起きていたいって目が覚めちゃったのかな。水でも飲みに行こうと思って、ベッドから降りる。
浬-かいり-
DOODLEかおみさ(※モブ男子視点)こちら温めますか 今日も厳しい部活を終えて、学校を出る。日課となっている買い食いの為に、コンビニへ立ち寄ることにしよう。夕飯前だけれど、運動部の男子高校生の空腹は家までもってはくれない。
いつもだったら通学路の途中にあるコンビニに立ち寄るのだけど。最近は少しだけ遠回りして、別のコンビニへ行っていた。
「いらっしゃいませー」
自動ドアが開くと、レジに居たツインテールの女の子が挨拶してくれたので軽く会釈する。今の気分はホットスナックってもう決まっていたけれど、俺は店内を物色する振りをして辺りを見渡す。
(……いた)
“彼女”は品出しの最中だった。ケースの乗ったカートを引きながら、棚に弁当を並べている。俺は棚に隠れながら、こっそりとその様子を窺った。
2371いつもだったら通学路の途中にあるコンビニに立ち寄るのだけど。最近は少しだけ遠回りして、別のコンビニへ行っていた。
「いらっしゃいませー」
自動ドアが開くと、レジに居たツインテールの女の子が挨拶してくれたので軽く会釈する。今の気分はホットスナックってもう決まっていたけれど、俺は店内を物色する振りをして辺りを見渡す。
(……いた)
“彼女”は品出しの最中だった。ケースの乗ったカートを引きながら、棚に弁当を並べている。俺は棚に隠れながら、こっそりとその様子を窺った。
浬-かいり-
DOODLEかおみさ赤い糸辿って 朝起きたら、見慣れないものが視界に入った。
右手の小指に結ばれたそれは、赤い糸のようなものだった。ものだった、と確信が持てない言い方をしているのは、取ろうと思ったらすり抜けて触れなかったからだ。
(なにこれ、幻覚?)
でも、幻覚にしては随分はっきり見え過ぎているように思う。透けてる訳でもなく、はっきりと見える赤。小指の根本にしっかりと結ばれているそれは、部屋の外へと伸びていた。辿って自室のドアを開けると、階段の更に下へと続いている。
「……まあ、いっか」
きっと疲れているんだ。だからこんな幻覚見ちゃうんだって。実際下の階に降りてみても、家族からなんの反応もない。本当に見えていないみたいだ。
赤い糸は玄関の先、ドアの向こうへと続いている。
2635右手の小指に結ばれたそれは、赤い糸のようなものだった。ものだった、と確信が持てない言い方をしているのは、取ろうと思ったらすり抜けて触れなかったからだ。
(なにこれ、幻覚?)
でも、幻覚にしては随分はっきり見え過ぎているように思う。透けてる訳でもなく、はっきりと見える赤。小指の根本にしっかりと結ばれているそれは、部屋の外へと伸びていた。辿って自室のドアを開けると、階段の更に下へと続いている。
「……まあ、いっか」
きっと疲れているんだ。だからこんな幻覚見ちゃうんだって。実際下の階に降りてみても、家族からなんの反応もない。本当に見えていないみたいだ。
赤い糸は玄関の先、ドアの向こうへと続いている。
浬-かいり-
DOODLEかおみさビターチョコレート 事の発端は、はぐみだった。夏休みも残り一週間を切ろうとしていた日のハロハピ会議、顔色の悪いはぐみが「宿題がまだ終わってない」と切り出した。夏休み明けはすぐにテストがある。テストを心配する美咲と花音、いつの間にか宿題を終わらせていたこころ、それに何故か薫まで加わって。
弦巻家のいつものハロハピ会議室。大きなテーブルの上にお菓子を広げて、今日はハロハピ会議じゃなくて勉強会だ。このハロー、ハッピーワールド! というバンドでは、この光景はとっても珍しいかもしれない。
「花音さん、ここの解き方分かる?」
「ん? えーっとね……これは、この公式を使えばいいと思うよ」
「……あ。本当だ、ありがとうございます」
真面目に勉強するのは美咲と花音。美咲の質問に答えながら、花音はテーブルの向かいに座る三人をちらりと見やる。
2675弦巻家のいつものハロハピ会議室。大きなテーブルの上にお菓子を広げて、今日はハロハピ会議じゃなくて勉強会だ。このハロー、ハッピーワールド! というバンドでは、この光景はとっても珍しいかもしれない。
「花音さん、ここの解き方分かる?」
「ん? えーっとね……これは、この公式を使えばいいと思うよ」
「……あ。本当だ、ありがとうございます」
真面目に勉強するのは美咲と花音。美咲の質問に答えながら、花音はテーブルの向かいに座る三人をちらりと見やる。