春の迷い子、愛を知る 春とは、良くも悪くも変化の時期である。
暁人がKKと出会ってから初めて巡った一度目の春。暁人は無事に大学を卒業し、一般企業へと就職した。正直暁人としてはアジトに就職することも考えたのだが、当の相棒たるKKに断固として拒否されてしまった。
曰わく、こんな水物の怪しい商売に手を染めるよりも、真っ当な仕事につけと。「あんたがそれを言うのかよ」と口を尖らせれば「当事者だから言うんだよ」と煙草の煙と共に言われてしまった。
存外真摯な口調と真っ直ぐ射抜くような視線に混じる父性にぐぅと呻くことしか出来なかった。いっそ邪魔だとでも言われたら意地でも食らいついていったのに、彼が珍しく本音で暁人を思いやって言ってるのがわかってしまったから引き下がるしかなかった。それでもアジトの手が足りないときや、暁人に余裕があるときは『副業』として手伝うことをどうにか認めさせて一勝一敗。
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