その温もりに、委ねる夜(ゆづいと) 時計の針が零時を回った頃、保存中の進捗バーが止まった。
静まり返った本部では蛍光灯の半分が落とされ、ラップトップのファンの音だけが小さく響いている。
外の窓は夜気を含んで深い藍色に染まっていた。ガラス越しの自分の顔がやけに疲れて見えるのは、うっすらと隈が浮かんでいるからだろう。
それでもあと、少しだけ。そう思って手を動かしかけたとき――
「こんな時間までお仕事をしている悪い子は、誰でしょう」
背後から届いた穏やかな声に、反射的に肩が跳ねる。
振り返るといつの間にか、後ろ手にドアを閉めた城瀬さんが佇んでいた。
私服のカーディガン姿で長袖の袖を緩くまくった姿。会いたかったはずなのに、よりにもよって今。
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