居候の始まり「逃げるぞ!」
そう言って、名前も知らない魔術師がオレの腕を掴んだ。……オレが盗賊だって、分かってて掴んだ。
オレがどうなろうとアイツにはこれっぽっちも関係無かったのに、アイツは真っ直ぐオレを見て──
❖
ふと目が覚める。
それから先程と太陽の高さが殆ど変わらないのを見て、溜息を吐いた。
……あの時、白髪に新緑みたいな目の青年はオレの腕を掴んで何かしら魔術を使ったらしい。直後に眩い光に包まれた事と、何か問い掛けるような声が聞こえた気がするのは覚えている。が、次にオレが目を覚ました時には周囲には青年も青年を誘拐した魔術師集団ことメマスも居なければ、場所も全く知らない野原でメマスが目を付けていた物であろう水晶の欠片とオレ1人が倒れていた。
22750