本探し「ハウル君、ハウル君」
書架を覗き込み、そう声を掛ける。
けれど真剣な表情でパラパラとページを捲るハウルは当然のようにウィレームの声に気付かず、その手は止まらない。
その様子にウィレームは1人、苦笑いを浮かべた。
(この調子だと、もし仮に警報が鳴るようなことがあっても気付かず逃げ遅れてしまいそうだ)
そう思う程に凄まじい集中を、その気になれば彼は何時間でもしてしまう。むしろ先に限界を迎えるのは体力の方……という経験を既に何回かしているらしい。
だが、それも昔の話。
今のハウルには頼もしい存在がいるのだ。
ウィレームの声に反応したのか、ハウルの持つ肩掛け鞄から音もなくじわりと黒い靄のような物が溢れ出ては、そのまま空中に集まり形を作り始める。そうして朧な輪郭が明確になり現れたのは、まるで幼い少女を模した人形のような姿。
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