季節は二度と巡らない盧笙が死んだ。
階段から足を滑らせた妊婦を助けようとして一緒に落ちたらしい。それで妊婦と子供が助かれば救いがあったというのに誰も救われなかったのだからとことん救いがない。
盧笙が死んだということを受け入れる事もできず通夜は終わり、葬式も終わり、いつの間にか納骨も終わっていた。
「大丈夫か」
納骨式が終わり骨が納められた墓を前に呆然と立ち尽くす簓に声をかける。
「……大丈夫ちゃうなぁ」
そう言いながら簓は力なく垂れ下がっていた腕を伸ばし墓石に触れた。炎天下に晒され続けていた墓石は一瞬触れる事すら難しいほど熱を持っていたのか簓は驚いたように素早く手を引き墓石に触れた指先をさすった。
もう二度と触れ合う事はできないのだと、そう伝えられたのだと思った。
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