化物 旧サテライトエリアの郊外は、シティとは比べ物にならない程閑散としていた。かれこれ十分ほど歩いているが、人間の姿は一度も見かけない。見かけるとしたら、どこかから食料を奪ってきたカラスや、周辺に住み着いた小動物くらいだ。まあ、ここまで荒れるほどに放置されたシャッター商店街に、人間は用事など無いだろう。
そんなゴーストタウンのような通りの中でも、ルチアーノは迷うことなく歩を進めた。真っ直ぐに前を睨み付けると、足音を響かせながら歩いていく。時折足を止めて周りを見るのは、人の気配が無いかを探しているからだ。しかし、どれだけ探索を続けても、目的の人物は見つからなかった。
「ねえ、本当にこの辺なの? 怪しい組織どころか、人の気配すらしないけど」
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