ノック
史桜ナオ
DONE2023年11月3〜4日開催 羊と猫のワルツ6 展示作品です。白の魔法使い衣装の主従で秋薔薇撮影に行ってきました🌹
ファウスト:ナオ(@aporochoco_non )
レノックス:望月戒(@kai_motizuki )
photo:ハシノ(@hsnEiryk_1250 ) 15
かいこう
DONEノックアウト/花流花流の日まで後15日~~
ノックアウト 屋上での眠りを妨げた上級生らしき男たち四人を退けたところで、背後の扉が開いた。振り返ると、赤いリーゼント頭を先頭に、五人組が立っている。自分と同じようながたいの派手な赤い頭の男と視線が絡んだ。
「流川楓」
リーゼント頭の後ろから誰だと聞かれたので、名前を教えてやる。赤いリーゼントの男が驚いた様子で繰り返してきた。落ち着きのない動物みたいなしぐさで人の周囲をうろつきながら、ジロジロと人の顔を眺めては、何故だか知らないが、自分とこっちの身長を手で比べたりし始める。取り敢えず屋上で伸びている奴らの仲間かと聞けばオレの名前を教えてやろうか、と喚き始めた。別にいいとあしらったのが気に喰わないのか、学ランの胸元をつかんでくる。
2539「流川楓」
リーゼント頭の後ろから誰だと聞かれたので、名前を教えてやる。赤いリーゼントの男が驚いた様子で繰り返してきた。落ち着きのない動物みたいなしぐさで人の周囲をうろつきながら、ジロジロと人の顔を眺めては、何故だか知らないが、自分とこっちの身長を手で比べたりし始める。取り敢えず屋上で伸びている奴らの仲間かと聞けばオレの名前を教えてやろうか、と喚き始めた。別にいいとあしらったのが気に喰わないのか、学ランの胸元をつかんでくる。
suno_kabeuchi
TRAININGi7SS 100本ノック 31本目モンてんと名探偵
ぼくはめいたんてい! 眼鏡にポシェット、ヘアピン代わりにリボンを付けてモンてんが胸を張っている。とりあえず写真を撮ってから協力者であろう龍之介に問えば。
「『オオカミ少年と少年探偵』のドラマを見て影響されたんだって」
可愛いよね、とニコニコ顔でふんすふんすしているモンてんを見つめている。陸を選択するとはわかっている、と天はしたり顔で頷いた。
そんなキュートな探偵は虫眼鏡を片手にあちこち覗き見ている。TRIGGERの面々は比較的綺麗好きなのもあって汚れらしい汚れもなく、物が散乱しているなんてこともないから退屈なんじゃないかと天がこっそり観察していると、何かに気づいたようにモン天がテレビ横の隙間に潜り込んだ。数十秒後、ぴょっこり出てきた。何やら得意気な顔をしている。
587「『オオカミ少年と少年探偵』のドラマを見て影響されたんだって」
可愛いよね、とニコニコ顔でふんすふんすしているモンてんを見つめている。陸を選択するとはわかっている、と天はしたり顔で頷いた。
そんなキュートな探偵は虫眼鏡を片手にあちこち覗き見ている。TRIGGERの面々は比較的綺麗好きなのもあって汚れらしい汚れもなく、物が散乱しているなんてこともないから退屈なんじゃないかと天がこっそり観察していると、何かに気づいたようにモン天がテレビ横の隙間に潜り込んだ。数十秒後、ぴょっこり出てきた。何やら得意気な顔をしている。
suno_kabeuchi
TRAININGi7SS 100本ノック 30本目天と龍之介と桃のパフェ
すずみの愛情 真っ先に目についたのは可愛らしくミントが乗った、丸々と肥え太ったつやつやの桃。その下に敷き詰められたクリームにはまるで花弁のようにスライスされた桃が飾られ、中層には桃のシャーベットとサイコロカットされた果肉がぎっしり詰められている。そして下層のコーンフレークにはチョコレートソースが絡んでいて、たとえそれだけになったとしても口を飽きさせない工夫が凝らされていた。
ででん。そんな効果音を幻聴するほど見事な桃のパフェだった。
持ってきてくれた龍之介を見れば、「ロケでたくさん桃をいただいちゃったから」とニコニコ顔だった。それだけが理由でこんな立派な桃のパフェが出てくるなど、一体誰が想像できようか。少なくとも天は想像できなかった。あるにしても、暫くは食卓に桃が並ぶくらいだ。
581ででん。そんな効果音を幻聴するほど見事な桃のパフェだった。
持ってきてくれた龍之介を見れば、「ロケでたくさん桃をいただいちゃったから」とニコニコ顔だった。それだけが理由でこんな立派な桃のパフェが出てくるなど、一体誰が想像できようか。少なくとも天は想像できなかった。あるにしても、暫くは食卓に桃が並ぶくらいだ。
suno_kabeuchi
TRAININGi7SS 100本ノック 29本目雨の日のモンてんと天
降り暮らす硝子に音を混ぜて しとしとしと。静かに降る雨を窓からモンてんがじっと見つめている。ベランダのプランターに植わったプチトマトの葉がぱちぱちと水を弾いて歌っている。
久し振りの雨だった。少なくともジョウロを持ったモンてんがいつも通り窓から出ようとするのを慌てて止めねばならない程度には久々の恵みの雨だった。
止めたら止めたで訝しまれてしまったが、雨が降っているからモンてんが水を上げなくてもいいんだよと説明したらすんなり引き下がった。ピンクのジョウロは定位置にそっと戻された。なお水がたっぷり入ったままだったので、天はこっそり回収して中の水を捨てた。
それから窓際に座ってじっと外を見つめている。眠っているのかと思うほど静かなので時折覗き込むが、ぱっちりおめめのままだった。
445久し振りの雨だった。少なくともジョウロを持ったモンてんがいつも通り窓から出ようとするのを慌てて止めねばならない程度には久々の恵みの雨だった。
止めたら止めたで訝しまれてしまったが、雨が降っているからモンてんが水を上げなくてもいいんだよと説明したらすんなり引き下がった。ピンクのジョウロは定位置にそっと戻された。なお水がたっぷり入ったままだったので、天はこっそり回収して中の水を捨てた。
それから窓際に座ってじっと外を見つめている。眠っているのかと思うほど静かなので時折覗き込むが、ぱっちりおめめのままだった。
suno_kabeuchi
TRAININGi7SS 100本ノック 28本目春原くんのクラスメイトのモブと落とし物
しらないきみ 落とし物をした。有り体に言えばそれだけの話だ。
それも高級品だとか身分証だとかの重要な価値を有するものでも誰かの手作りでオンリーワンだということもなくて、百均で売ってそうなチープなキーホルダーのぬいぐるみ。人によってはそんなものくらいでと笑い飛ばすに違いない。実際、全く同じものが近所のショップで売られているのを見た。でもそれじゃあダメなのだ。
「見つからない……」
誰もいない西日が差し込む教室で漏れ出た声は実に情けなかった。我ながらこんなに途方に暮れた声音を出せるとは思いもしなかった。それだけ思い入れがあるのだと間接的に理解したし、それ故に失くしたという現実が重く圧し掛かる。唇が震える。鼻がツンとして痛い。じわじわと視界が滲んでいく。
971それも高級品だとか身分証だとかの重要な価値を有するものでも誰かの手作りでオンリーワンだということもなくて、百均で売ってそうなチープなキーホルダーのぬいぐるみ。人によってはそんなものくらいでと笑い飛ばすに違いない。実際、全く同じものが近所のショップで売られているのを見た。でもそれじゃあダメなのだ。
「見つからない……」
誰もいない西日が差し込む教室で漏れ出た声は実に情けなかった。我ながらこんなに途方に暮れた声音を出せるとは思いもしなかった。それだけ思い入れがあるのだと間接的に理解したし、それ故に失くしたという現実が重く圧し掛かる。唇が震える。鼻がツンとして痛い。じわじわと視界が滲んでいく。
suno_kabeuchi
TRAININGi7SS 100本ノック 27本目猛暑日にお使いに行った天と楽のはなし。
涼を求めて何歩でも 蝉すら鳴かない酷暑。空を見上げずともわかる強烈な太陽の日差しを受けた天の首筋には幾筋もの汗が伝っている。日焼け止めは勿論のこと、帽子にマスクにサングラスと徹底して紫外線を対策しているが、それ故に熱くて暑くてたまらない。日傘を持ってきていなければ比にならない程のダメージを負っていたと思うとぞっとする。焼肉の気持ちがわかってしまった。
隣の楽を見上げれば、サングラスの向こうで銀鼠がげんなりと眇められている。特に色白の楽は日焼けが酷く目立つ。今ほど男性の日傘が当たり前ではない時からずっと差している分、その違いをよく感じるのだろう。
「マジであっちぃ……これ日差しっていうかもはや光線だろ」
「日差しがビームになる日が来るなんて思わなかった」
767隣の楽を見上げれば、サングラスの向こうで銀鼠がげんなりと眇められている。特に色白の楽は日焼けが酷く目立つ。今ほど男性の日傘が当たり前ではない時からずっと差している分、その違いをよく感じるのだろう。
「マジであっちぃ……これ日差しっていうかもはや光線だろ」
「日差しがビームになる日が来るなんて思わなかった」
イロイロキイロ
DOODLE2部20章7話の好きポイントと長々とした語りです。水を飲ますところが一番好きだという気付きを得ました。UR従者レノックス…。慣れ切った主ファウスト。レノックスの「少しだけ人の悪い笑み」…! 8suno_kabeuchi
TRAININGi7SS 100本ノック 26本目楽とアイスラテとモンtrg
おうさまだれだ! 食いっぷりが一番いいのはモン天だが、飲みっぷりが一番いいのはモン楽である。特に炭酸系の飲み物については、ぷはー! と明快な笑顔と共に息を吐いているのをよく見掛ける。「そういうとこ楽に似てるよね」と通りすがりの天に言われたのは前の話だ。
「お待たせ。ほら、アイスラテ」
カランと涼しげな音を立ててモンたちの前にグラスが並べられる。待ってましたとばかりにはしゃぐモンたちを見ながら「溢すなよ」と楽も笑う。
まだまだ引く気配のない夏の日差しは広い窓のリビングを容赦なく熱してくる。楽は自分の生まれなのもあって夏を好んでいるが、それでもここ数年の暑さは異常だと思う。
「お、もう飲んだのか。早いな……って口にひげついてんぞ」
582「お待たせ。ほら、アイスラテ」
カランと涼しげな音を立ててモンたちの前にグラスが並べられる。待ってましたとばかりにはしゃぐモンたちを見ながら「溢すなよ」と楽も笑う。
まだまだ引く気配のない夏の日差しは広い窓のリビングを容赦なく熱してくる。楽は自分の生まれなのもあって夏を好んでいるが、それでもここ数年の暑さは異常だと思う。
「お、もう飲んだのか。早いな……って口にひげついてんぞ」
suno_kabeuchi
TRAININGi7SS 100本ノック 25本目天と龍之介と夜食
何度だって言いたくなるので その日の天は久方振りに疲弊していた。
早朝の情報番組の生放送から始まって新曲のレコーディングに続き遅めの昼食を半ば流し込むようにして移動中の車の中で終わらせたら長回しのあるドラマの撮影を経て自身がメインパーソナリティを務めるトーク番組の収録を行ってから大物アーティストのラジオにゲスト出演と、とにかくハードでタイトなスケジュールだった。どうしてもこの日でないといけない、という動かせない事情があったのだ。
とはいえ予定をフィックスする前に姉鷺に本当にいいのかと念押しで聞かれ、構わないと答えたのは天である。寧ろ限界まで調整してせめてこまめな休憩を挟めるようにしてくれたその手腕には相変わらず舌を巻くくらいだ。
903早朝の情報番組の生放送から始まって新曲のレコーディングに続き遅めの昼食を半ば流し込むようにして移動中の車の中で終わらせたら長回しのあるドラマの撮影を経て自身がメインパーソナリティを務めるトーク番組の収録を行ってから大物アーティストのラジオにゲスト出演と、とにかくハードでタイトなスケジュールだった。どうしてもこの日でないといけない、という動かせない事情があったのだ。
とはいえ予定をフィックスする前に姉鷺に本当にいいのかと念押しで聞かれ、構わないと答えたのは天である。寧ろ限界まで調整してせめてこまめな休憩を挟めるようにしてくれたその手腕には相変わらず舌を巻くくらいだ。
suno_kabeuchi
TRAININGi7SS 100本ノック 24本目天とモンてんとシナモン
スパイシー・アタック! ふんわりと綿菓子のようなミルクを艶のある黒い水面に乗せる。蕩けるような甘い匂いがやわく広がって天は顔を綻ばせた。
「大丈夫、キミの分もあるよ」
その匂いに釣られたようにてちてちやってきたモンてんに微笑みひとつ向けてコーヒーサーバーとモン天専用のマグカップを手に取ると慣れた手付きで注ぎ入れる。たっぷりの蜂蜜も一緒に混ぜ合わせ、きめ細かく泡立てたミルクを乗せてやればモンてんの瞳がこの上なく輝いた。
「どうぞ、召し上がれ」
マグカップを差し出してやれば、ぺこりと体ごと頭を下げたモンてんがおもむろに受け取った。ふうふうと息を吹きかけている。
その様子を横目に天はスパイスボックスからシナモンを取る。蓋を指で挟んでクっと捻り、くるくると回す。そのまま蓋を外して自分のマグカップの上に容器を傾け、トントンと指先でタップすれば薄茶色のパウダーが真っ白なミルクの上に咲く。
764「大丈夫、キミの分もあるよ」
その匂いに釣られたようにてちてちやってきたモンてんに微笑みひとつ向けてコーヒーサーバーとモン天専用のマグカップを手に取ると慣れた手付きで注ぎ入れる。たっぷりの蜂蜜も一緒に混ぜ合わせ、きめ細かく泡立てたミルクを乗せてやればモンてんの瞳がこの上なく輝いた。
「どうぞ、召し上がれ」
マグカップを差し出してやれば、ぺこりと体ごと頭を下げたモンてんがおもむろに受け取った。ふうふうと息を吹きかけている。
その様子を横目に天はスパイスボックスからシナモンを取る。蓋を指で挟んでクっと捻り、くるくると回す。そのまま蓋を外して自分のマグカップの上に容器を傾け、トントンと指先でタップすれば薄茶色のパウダーが真っ白なミルクの上に咲く。
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TRAININGi7SS100本ノック 23本目龍之介と作りすぎた焼きそば
おいしいのまほう「うーん……作りすぎちゃったな」
こんもりとフライパンの上で山を作っている焼きそばを見ながら龍之介は首を掻いた。定期的に行われる『冷蔵庫一掃キャンペーン』で文字通り賞味期限切れ間近なブロックベーコンや傷みそうな野菜を纏めて消化しようと拵えた夕飯。想像より量が膨れてしまい、三人とモンたちで食べるにしても確実に余ってしまう。
「明日食べればいいんだけど、折角だったら何かアレンジしてあげたいな」
うぅん、と首を捻ってキッチンを探る。六枚切りの食パンが未開封で発見された。閃いた。
早速とばかりにホットサンドメーカーを取り出し、食パンをセットする。スプーンで中央を軽くへこませ、その中に焼きそば山の一部を移動させてもう一枚の食パンを被せる。そのままホットサンドメーカーの上蓋を閉じて留め具で固定する。フライパンが乗っていないコンロに火をつけるとその上にホットサンドメーカーを置いた。
919こんもりとフライパンの上で山を作っている焼きそばを見ながら龍之介は首を掻いた。定期的に行われる『冷蔵庫一掃キャンペーン』で文字通り賞味期限切れ間近なブロックベーコンや傷みそうな野菜を纏めて消化しようと拵えた夕飯。想像より量が膨れてしまい、三人とモンたちで食べるにしても確実に余ってしまう。
「明日食べればいいんだけど、折角だったら何かアレンジしてあげたいな」
うぅん、と首を捻ってキッチンを探る。六枚切りの食パンが未開封で発見された。閃いた。
早速とばかりにホットサンドメーカーを取り出し、食パンをセットする。スプーンで中央を軽くへこませ、その中に焼きそば山の一部を移動させてもう一枚の食パンを被せる。そのままホットサンドメーカーの上蓋を閉じて留め具で固定する。フライパンが乗っていないコンロに火をつけるとその上にホットサンドメーカーを置いた。
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TRAININGi7SS100本ノック 22本目天とモンてんとレンジとたまご
エッグ・クライシスはすぐ傍に 専用容器に卵を入れ、電子レンジで時間設定。音を立てて加熱を始めたそれを確認して、天は冷蔵庫から薄切りベーコンのパックを取り出した。換気扇にスイッチを入れておもむろにフライパンを出したところでぐいぐいと脚に妙な圧力を感じて見下ろせば、モンてんが慌てたように全身で天を押し出そうとしている。
「どうしたの、モンてん」
困惑を綺麗に隠してモンてんを掬い上げて目線を合わせれば、天の手の上でぴょんこぴょんこ跳ねながら電子レンジを指し示した。
「ああ、卵をレンジに入れたら爆発すんじゃないかって?」
切羽詰まった顔でこくこくと頷くモンてんを宥めるように天は努めて優しく「大丈夫だよ」と微笑んだ。
「普通にレンジにかけたら確かにそうなっちゃうけど、ゆで卵メーカー使ってるからね。今までのゆで卵も実はレンジで作ってたんだよ」
624「どうしたの、モンてん」
困惑を綺麗に隠してモンてんを掬い上げて目線を合わせれば、天の手の上でぴょんこぴょんこ跳ねながら電子レンジを指し示した。
「ああ、卵をレンジに入れたら爆発すんじゃないかって?」
切羽詰まった顔でこくこくと頷くモンてんを宥めるように天は努めて優しく「大丈夫だよ」と微笑んだ。
「普通にレンジにかけたら確かにそうなっちゃうけど、ゆで卵メーカー使ってるからね。今までのゆで卵も実はレンジで作ってたんだよ」
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TRAININGi7SS100本ノック 21本目八乙女楽と二階堂大和のサシ飲み~運動部を添えて~
めんそーれよいどれ「あれ? 楽と大和じゃん!」
耳に覚えがありすぎる声にビールを煽る楽と海ブドウをつついていた大和は揃って声の方を向いた。予想通り、ベビーフェイスの先輩の顔があった。二人と目が合った百は人好きのする懐っこい笑顔を浮かべる。
「今をときめくIDOLiSH7とTRIGGERのリーダーが揃ってサシ飲みしてたの? 仲良しじゃん!」
「別に仲良くはないっすよ。今日だってタイミングが合ったから、たまたま」
「おまえ、俺の連絡結構な確率で既読スルーするだろうが」
「タイミングが悪かったんだって」
「あれ? 大和さんと八乙女?」
「あ、楽! 大和くんも」
「龍!」
「ミツ、おまえもいたのかよ」
「俺と三月は番組が一緒だったからね」
6966耳に覚えがありすぎる声にビールを煽る楽と海ブドウをつついていた大和は揃って声の方を向いた。予想通り、ベビーフェイスの先輩の顔があった。二人と目が合った百は人好きのする懐っこい笑顔を浮かべる。
「今をときめくIDOLiSH7とTRIGGERのリーダーが揃ってサシ飲みしてたの? 仲良しじゃん!」
「別に仲良くはないっすよ。今日だってタイミングが合ったから、たまたま」
「おまえ、俺の連絡結構な確率で既読スルーするだろうが」
「タイミングが悪かったんだって」
「あれ? 大和さんと八乙女?」
「あ、楽! 大和くんも」
「龍!」
「ミツ、おまえもいたのかよ」
「俺と三月は番組が一緒だったからね」
suno_kabeuchi
TRAININGi7SS100本ノック 20本目八乙女楽と龍之介とモンtrgとセンチメンタルな天
季春、訪れの慶びに香り立つ ただいま、という前に。ふわ、と、天の鼻腔をほのかに優しいにおいが擽った。それでいて胃がきゅるる、と情けなく鳴くものだからあまりにもわかりやすい自分に天は苦笑した。すっかり気が緩んでしまっている事実を改めて実感してしまって気恥しさが淡く込み上げる。
「あ、出迎えに来てくれたの? ふふ、ありがとう。ただいま」
その大きな耳で天が玄関の扉を開く音が聞きつけたのか、廊下の向こうからてちてちと小さな同居者たちが姿を現し、天の姿を確認すると「おかえり!」と言うようにぼむぼむ弾んでいる。毎度の事ながら情熱的に歓迎してくれるその姿に天は玄関の扉を施錠しながらくすりと笑みを零した。
「ただいま」
「天、おかえり」
「お、早かったな。おかえり、天」
1626「あ、出迎えに来てくれたの? ふふ、ありがとう。ただいま」
その大きな耳で天が玄関の扉を開く音が聞きつけたのか、廊下の向こうからてちてちと小さな同居者たちが姿を現し、天の姿を確認すると「おかえり!」と言うようにぼむぼむ弾んでいる。毎度の事ながら情熱的に歓迎してくれるその姿に天は玄関の扉を施錠しながらくすりと笑みを零した。
「ただいま」
「天、おかえり」
「お、早かったな。おかえり、天」
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TRAININGi7SS100本ノック 19本目バーガーショップに来た楽とモンがく
チャンキー・ジャンキーに踊れ 世界的に有名なハンバーガーチェーン店。その入口付近にあるメニュー表にキャップと薄色のサングラスを纏った姿で楽は視線を走らせた。実に簡単な変装ではあるが、意外と人は気づかないもので。堂々としていれば、今をときめくTRIGGERのリーダー八乙女楽が真剣な顔でジャンクフードのメニューを吟味しているなど思われないのである。
ジャンクフードの代名詞ともいえるハンバーガーは食べすぎると体型や健康に影響が出るのを理解しているので基本的に口にする事は無い。それは自身がアイドルとして、己の容姿も含めて商品であり価値を齎している事をよく理解しているが故に。だがそれはそれとしてどうしても食べたくなってしまう事がある。今日がそれだった。それが例えば長期撮影の舞台や映画であるのならそれでも律する事は叶うが、幸か不幸か楽はつい先日主演ドラマのクランクアップを終えたばかりである。別のドラマ撮影はあるが、それは来月とまだ期間がある。
2489ジャンクフードの代名詞ともいえるハンバーガーは食べすぎると体型や健康に影響が出るのを理解しているので基本的に口にする事は無い。それは自身がアイドルとして、己の容姿も含めて商品であり価値を齎している事をよく理解しているが故に。だがそれはそれとしてどうしても食べたくなってしまう事がある。今日がそれだった。それが例えば長期撮影の舞台や映画であるのならそれでも律する事は叶うが、幸か不幸か楽はつい先日主演ドラマのクランクアップを終えたばかりである。別のドラマ撮影はあるが、それは来月とまだ期間がある。
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TRAININGi7SS100本ノック 18本目風邪っぴき天と看病するモンたち
あつくてあまい、あいのあじ 何かともなく、天の意識が浮上する。
霞がかった頭は処理が遅く、天は一瞬、自分がどうしてベッドの中にいるのかを忘れた。
気管をせり上がる塊を吐くように咳き込めば、ぎりぎりと万力で頭を締め付けられているような痛みが襲う。常心真言を唱えられた孫悟空の気持ちと共に、自分が体調不良で寝込んでいる事を理解した。
咳が収まるのにつられるようにして痛みの波が去る。ごろりと寝返りを打ち、体調管理も出来ないなんて、と己の醜態に眉を顰めた。
確かにこのところは有難くもたくさんのオファーがあった。ミュージカル「ゼロ」の公演を終えてからは特に。しかしそこは有能敏腕マネージャーがしっかり管理してやってくれていた。天に過剰な負担が掛かりすぎないように、けれど肝要なところは決して外さないようにと徹底したスケジュール管理を行ってくれていた。それにも関らずこの醜態である。
4755霞がかった頭は処理が遅く、天は一瞬、自分がどうしてベッドの中にいるのかを忘れた。
気管をせり上がる塊を吐くように咳き込めば、ぎりぎりと万力で頭を締め付けられているような痛みが襲う。常心真言を唱えられた孫悟空の気持ちと共に、自分が体調不良で寝込んでいる事を理解した。
咳が収まるのにつられるようにして痛みの波が去る。ごろりと寝返りを打ち、体調管理も出来ないなんて、と己の醜態に眉を顰めた。
確かにこのところは有難くもたくさんのオファーがあった。ミュージカル「ゼロ」の公演を終えてからは特に。しかしそこは有能敏腕マネージャーがしっかり管理してやってくれていた。天に過剰な負担が掛かりすぎないように、けれど肝要なところは決して外さないようにと徹底したスケジュール管理を行ってくれていた。それにも関らずこの醜態である。
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TRAININGi7SS100本ノック 17本目朝帰りの八乙女と早朝収録のつなしとコーヒー
モーニング・コーヒーに愛を添えて「お客さん、着きましたよ」
嗄れ声に揺さぶられるようにして楽は意識を手繰り寄せた。
瞼を押し上げれば、タクシーのメーターが料金を示しているのが見えた。どうやらいつの間にか眠っていたらしい。
「すみません、電子マネーでいいですか」
「はい。交通ICですか? クレジットですか?」
「クレジットで」
短いやり取り経てタクシーを降りる。日が昇り始めた夜に溶けていくタクシーを見送り、楽は大欠伸するとマンションのエントランスを潜った。
「あー……ちょっと飲みすぎたかもしんねえ。明日オフでよかったわ……」
抜けきらないアルコールの酩酊感を自覚しながらエレベーターへ乗り込む。スマートフォンを見れば、午前五時半を指していた。
2186嗄れ声に揺さぶられるようにして楽は意識を手繰り寄せた。
瞼を押し上げれば、タクシーのメーターが料金を示しているのが見えた。どうやらいつの間にか眠っていたらしい。
「すみません、電子マネーでいいですか」
「はい。交通ICですか? クレジットですか?」
「クレジットで」
短いやり取り経てタクシーを降りる。日が昇り始めた夜に溶けていくタクシーを見送り、楽は大欠伸するとマンションのエントランスを潜った。
「あー……ちょっと飲みすぎたかもしんねえ。明日オフでよかったわ……」
抜けきらないアルコールの酩酊感を自覚しながらエレベーターへ乗り込む。スマートフォンを見れば、午前五時半を指していた。
suno_kabeuchi
TRAININGi7/SS100本ノック15本目モン天と天と夜中の雷雨
射干玉に雷声、鬱然を薙げ 眠りの淵から強引に引き上げるような閃光が瞼の裏を走った直後、轟音が天の鼓膜を殴った。あまりの凄まじさに思わず天は瞼を押し上げる。寝起きがいい方だとは言えないが、そんな天をして無理やり呼び覚まさせる程の雷だった。
ぼんやりする頭によぎったのはちいさないのちのことだった。こんな酷い雷雨で怯えたり怖がったりしていないだろうか。微睡みの湖からのそりのそりと遠ざかりながら辺りを見渡せば、不自然にカーテンの裾が捲れていることに気づく。目を凝らしてみれば、細い尻尾がぴょろりと覗いていた。わざわざ窓際に行ってまで外を眺めているということは、特に恐怖しているということはなさそうだ。
「モン天、外を見ているの?」
ベッドから降りてモン天の傍にしゃがみ込む。天の存在に気づいたモン天がこくりと頷く。大きな両の瞳が再び外を向いた。何かをするということもなく、ただじっと雷が避雷針に向かって殴りつけてくる様をじっと見つめている。空が割れる音がするや否や、稲玉が怒声を上げる。モン天を見る。いつもきらきらしている瞳は、雨と一瞬の雷を反射させてより燦爛とした色を帯びていた。
944ぼんやりする頭によぎったのはちいさないのちのことだった。こんな酷い雷雨で怯えたり怖がったりしていないだろうか。微睡みの湖からのそりのそりと遠ざかりながら辺りを見渡せば、不自然にカーテンの裾が捲れていることに気づく。目を凝らしてみれば、細い尻尾がぴょろりと覗いていた。わざわざ窓際に行ってまで外を眺めているということは、特に恐怖しているということはなさそうだ。
「モン天、外を見ているの?」
ベッドから降りてモン天の傍にしゃがみ込む。天の存在に気づいたモン天がこくりと頷く。大きな両の瞳が再び外を向いた。何かをするということもなく、ただじっと雷が避雷針に向かって殴りつけてくる様をじっと見つめている。空が割れる音がするや否や、稲玉が怒声を上げる。モン天を見る。いつもきらきらしている瞳は、雨と一瞬の雷を反射させてより燦爛とした色を帯びていた。
suno_kabeuchi
TRAININGi7/SS100本ノック 14本目楽とモン天とみたらし団子
ほうこうてんかんじにはウインカーをおだしください その香ばしさにモン天の耳がぴんと伸びた。追って「ただいま」という楽の声が鼓膜を揺らす。どうやらお土産を買ってきてくれたらしい。モン天は瞳を輝かせてソファからローテーブルの上に移った。短い足を畳んで楽の到着を待ちわびる。
数分後、モン天が縦に百体ほど並ぶ必要があろうかと思うほど長い脚がリビングに踏み入る。先に手を洗っていたのだろう。モン天の大きな耳がキャッチした水音は恐らくそれだ。さておき、モン天に気づくと「お、今日はそこにいたのか」と快活に楽が笑った。その手にはビニールに入った紙袋がある。美味しそうな匂いはそこからか、とモン天が瞳を輝かせれば、行動を察したのか「ちゃんとおまえの分もあるから焦んな」と制止されてしまった。
891数分後、モン天が縦に百体ほど並ぶ必要があろうかと思うほど長い脚がリビングに踏み入る。先に手を洗っていたのだろう。モン天の大きな耳がキャッチした水音は恐らくそれだ。さておき、モン天に気づくと「お、今日はそこにいたのか」と快活に楽が笑った。その手にはビニールに入った紙袋がある。美味しそうな匂いはそこからか、とモン天が瞳を輝かせれば、行動を察したのか「ちゃんとおまえの分もあるから焦んな」と制止されてしまった。
suno_kabeuchi
TRAININGi7/SS100本ノック 13本目モン天とバナナ
みんなだいすきとりぷとふぁん どうにも気分がすぐれない。それは気圧の影響なのか溜まりがちだった疲労の影響なのか、あるいは別の何かなのか。思いつく原因はいくつかあるけれど、栓なきことだと天はかぶりを振った。重い体を叱咤して身を起こす。ベッドに素足をつける。ぺたぺたと肌が跳ねる音をさせながらカーテンを開け放った。ついでに窓を開ければ湿気を帯びた風がのそりと部屋に入り込んだ。頰を撫でるそれに天は少しばかり顔を顰めた。
さりとて天候に文句をつけても意味がない。溜息ひとつで不満を散らすとおもむろに寝巻きに手を掛けた。
「……あれ、モン天がいない」
着替え終わったところで枕元へ視線を投げればヘソ天している筈のモン天がいない。着替えている間にリビングに向かったのだろうか。
1156さりとて天候に文句をつけても意味がない。溜息ひとつで不満を散らすとおもむろに寝巻きに手を掛けた。
「……あれ、モン天がいない」
着替え終わったところで枕元へ視線を投げればヘソ天している筈のモン天がいない。着替えている間にリビングに向かったのだろうか。
suno_kabeuchi
TRAININGi7/SS100本ノック 12本目モン天とポシェット
ぷれぜんと・ふぉー・ゆー!「うん。見てるよ。素敵なポシェットだね」
天が微笑むとモン天は一際表情を華やがせ、くるくるとその場で回り出した。その肩から下げられているスモーキーピンクのポシェットが動きに合わせてぱたぱた揺れる。
先日ちょうど似合いそうだとモン天に他ならぬ天がプレゼントしたものだが、いたくお気に召したらしく、どこに行くにしても必ず下げるようになった。それが家の中であってもである。
「……? モン天?」
それまで機嫌良くくるくる回っていたモン天がぴたりと動きを止める。そのまま静止すること数秒。
まさか自らの回転で酔ったのかと天が身を乗り出そうとしたところでモン天がいそいそとポシェットの中身を漁り出した。どうやら酔ったわけではないらしい。小さく安堵の息を吐いて天は浮かしかけた腰を下ろした。
709天が微笑むとモン天は一際表情を華やがせ、くるくるとその場で回り出した。その肩から下げられているスモーキーピンクのポシェットが動きに合わせてぱたぱた揺れる。
先日ちょうど似合いそうだとモン天に他ならぬ天がプレゼントしたものだが、いたくお気に召したらしく、どこに行くにしても必ず下げるようになった。それが家の中であってもである。
「……? モン天?」
それまで機嫌良くくるくる回っていたモン天がぴたりと動きを止める。そのまま静止すること数秒。
まさか自らの回転で酔ったのかと天が身を乗り出そうとしたところでモン天がいそいそとポシェットの中身を漁り出した。どうやら酔ったわけではないらしい。小さく安堵の息を吐いて天は浮かしかけた腰を下ろした。
👁 👁
MEMOもくりで100本ノックの如く答えてもらいました。ほんとごめんありがとう
青大先輩質問集1生年月日は?
戦国時代あたりの12月15日
2血液型は?
A型と出がち
3身長何cm?
180以上
4好きな食べ物と理由は?
お肉/(多分)美味しいから
5好きなお菓子と理由は?
スルメ/(多分)美味しいから
6好きな色と理由は?
金色/……って言ったらあざとい?
7好きな季節と理由は?
春/銀次郎と再会したから
(ちなみに秋に別れちゃった(失踪)から嫌いらしいですその季節)
8人からよく言われる性格は?
面倒見がいい、頼りになるけど掴みどころがない。大人だなー。感情表現豊か。
9自分で思う性格は?
平凡な男です
10自分に自信のあるところは?
えーっと、目付きが厳つい…とか?
11自分の見た目で自信あるところは?
あー言っちゃった、目です。あ、あと、脱皮するから傷がない所。
2315戦国時代あたりの12月15日
2血液型は?
A型と出がち
3身長何cm?
180以上
4好きな食べ物と理由は?
お肉/(多分)美味しいから
5好きなお菓子と理由は?
スルメ/(多分)美味しいから
6好きな色と理由は?
金色/……って言ったらあざとい?
7好きな季節と理由は?
春/銀次郎と再会したから
(ちなみに秋に別れちゃった(失踪)から嫌いらしいですその季節)
8人からよく言われる性格は?
面倒見がいい、頼りになるけど掴みどころがない。大人だなー。感情表現豊か。
9自分で思う性格は?
平凡な男です
10自分に自信のあるところは?
えーっと、目付きが厳つい…とか?
11自分の見た目で自信あるところは?
あー言っちゃった、目です。あ、あと、脱皮するから傷がない所。
suno_kabeuchi
TRAININGi7/SS100本ノック11本目楽と天とモンの生態
トラベリング・モン てちてちてち。目の前を通り過ぎるモン楽を見る。もこもこまるまるした体を後ろからそっと持ち上げれば、気づいているのかいないのかモン楽は短い足を前後させている。そのままそっと下ろせば再びてちてちと歩き出した。
「………楽、何してるの?」
呆れたような声音が振ってきて顔を上げれば天の顔と鉢合わせた。その声を形にしてような呆れ顔だった。
「四葉に教えてもらったこと試してたんだよ」
「四葉環に?」
ああ、と楽が首肯する。
「歩いてるモンを後ろからそっと持ち上げるとそのまま歩き続けるってな。本当だったぜ」
やや興奮した様子の楽にまたしょうもないことを、と言わんばかりに天が半目を向けた。傍から見ていてかなり奇怪でシュールな行動をしていて自覚がないのだろうか、この男は。口には出さず天は心中で呟いた。
560「………楽、何してるの?」
呆れたような声音が振ってきて顔を上げれば天の顔と鉢合わせた。その声を形にしてような呆れ顔だった。
「四葉に教えてもらったこと試してたんだよ」
「四葉環に?」
ああ、と楽が首肯する。
「歩いてるモンを後ろからそっと持ち上げるとそのまま歩き続けるってな。本当だったぜ」
やや興奮した様子の楽にまたしょうもないことを、と言わんばかりに天が半目を向けた。傍から見ていてかなり奇怪でシュールな行動をしていて自覚がないのだろうか、この男は。口には出さず天は心中で呟いた。
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TRAININGi7/SS100本ノック 10本目モンつなとお運びチャレンジ
芳しきリベンジを誓って がたんっ、がらがらがら、ごんごろごん。聞こえていた壮大な演奏会に龍之介は通話を切ったばかりのスマートフォンを尻ポケットにねじ込んでキッチンに飛び込んだ。
「も、モンつな!? なんでマグカップに……!? だ、大丈夫か!?」
龍之介のマグカップをすっぽり被ってばたついているその姿にぎょっとしながらも慌てて救出する。ぐっしょりと濡れそぼっているモンつなの鮮やかなブルーの毛並みはすっかり色を変えている。耳を下げて瞳を潤ませるモンつなの表情は「ごめんなさい」一色である。取り敢えず手短なタオルで包んでやれば、ぺこり…….と龍之介の掌の上で実に悲壮感漂うごめん寝を披露された。もしかして土下座のつもりなのだろうか。
944「も、モンつな!? なんでマグカップに……!? だ、大丈夫か!?」
龍之介のマグカップをすっぽり被ってばたついているその姿にぎょっとしながらも慌てて救出する。ぐっしょりと濡れそぼっているモンつなの鮮やかなブルーの毛並みはすっかり色を変えている。耳を下げて瞳を潤ませるモンつなの表情は「ごめんなさい」一色である。取り敢えず手短なタオルで包んでやれば、ぺこり…….と龍之介の掌の上で実に悲壮感漂うごめん寝を披露された。もしかして土下座のつもりなのだろうか。
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TRAININGi7/SS100本ノック9本目モンtrgと風鈴
夜風ライダーの歌声 りんりんりん。ちりちりちり。かららららん。そんな音が聞こえてきてモンたちは一斉に窓の外を見た。ベランダの窓が空いている。網戸の向こうに龍之介の長躯が見えた。りんりんりん。ちりちりちり。かららららん。何やら不思議な音がお邪魔しますというように風に乗って室内へと訪れる。モンたちは互いに顔を見合わせるとてちてちと窓際まで近づいた。りんりんりん。ちりちりちり。かららららん。やはり外から聞こえてくる。グラスいっぱいに注がれた氷にも似た音色にモンたちの耳もぴくぴく跳ねる。
「うわっ! びっくりした……みんな揃ってどうしたの?」
網戸にくっついているモンたちに龍之介がしゃがみ込んだ。そよそよと風が流れる。時同じくして流れてきた涼しげな音色にモンたちはぴょんこぴょんこ跳ねてみせた。
594「うわっ! びっくりした……みんな揃ってどうしたの?」
網戸にくっついているモンたちに龍之介がしゃがみ込んだ。そよそよと風が流れる。時同じくして流れてきた涼しげな音色にモンたちはぴょんこぴょんこ跳ねてみせた。
suno_kabeuchi
TRAININGi7/SS100本ノック8本目モン天のお悩み相談室
とくべつ〝おやなみ〟そうだんしつ ソファの定位置から物憂げな面差しでうっそりと窓の外を眺めているその姿はとても美しいと思う。耳をぴこぴこさせながらモン天は天を眺める。憂いを帯びたローズクォーツの瞳は夕陽を受けてきらきらしているけれど、どこか朧げにも見えてモン天はくいっと体を捻った。
てちてちと天の傍まで近寄れど、そのローズクォーツがモン天に向くことはなかった。ただただ窓の外を見つめている。
何か面白いものがあるのだろうかと同じように窓の外に顔を向けるも、いつも通りの綺麗な夕焼けが広がっているだけだった。昼と夜の一瞬の隙間。ごく僅かにしか見られない空の風貌。青い空の時はぴかぴかの太陽がこの時ばかりは真っ赤に燃えているのを見てびっくりしたこともある。火事なのか、と天を問うて「火事じゃないよ。あれはお日様の衣装替え」と教えてもらったのは懐かしい記憶だ。
1193てちてちと天の傍まで近寄れど、そのローズクォーツがモン天に向くことはなかった。ただただ窓の外を見つめている。
何か面白いものがあるのだろうかと同じように窓の外に顔を向けるも、いつも通りの綺麗な夕焼けが広がっているだけだった。昼と夜の一瞬の隙間。ごく僅かにしか見られない空の風貌。青い空の時はぴかぴかの太陽がこの時ばかりは真っ赤に燃えているのを見てびっくりしたこともある。火事なのか、と天を問うて「火事じゃないよ。あれはお日様の衣装替え」と教えてもらったのは懐かしい記憶だ。
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DONEオフ会で再会するレノックスとフィガロの現パロです。自分ごとですが、先日ビアン向けのオフ会に行ってきて、そのことを回想していたらふと思いついたので書きました。
フィの元彼のモブがいます。
あとオフ会のターンは秒で終わって、ほとんどファミレスで話してます。
ファミレスでおしゃべりする現パロのレノックス とフィガロ どいつもこいつも。つまらないな。
その言葉を飲み下して、フィガロは代わりに作り笑いを浮かべた。
昼間のバーを貸し切って行われているオフ会に、フィガロは参加していた。二十代後半から三十代、つまりアラサーで、かつ男性同性愛者向けのオフ会である。番号を渡されて、いくつかのテーブルに分かれ、おしゃべりして、シャッフル。これを繰り返す。だがフィガロの手元にある、運営が渡してきたメモ用紙は空白のまま、会の半分が終わろうとしていた。
同じテーブルの男たち会話に興味が持てず、フィガロはまだ話したことのない人物を遠目に眺める。いずれも、つまらなそうな男だ。ガチムチ系は趣味じゃないし、好みの綺麗な見かけの子もいない。
4823その言葉を飲み下して、フィガロは代わりに作り笑いを浮かべた。
昼間のバーを貸し切って行われているオフ会に、フィガロは参加していた。二十代後半から三十代、つまりアラサーで、かつ男性同性愛者向けのオフ会である。番号を渡されて、いくつかのテーブルに分かれ、おしゃべりして、シャッフル。これを繰り返す。だがフィガロの手元にある、運営が渡してきたメモ用紙は空白のまま、会の半分が終わろうとしていた。
同じテーブルの男たち会話に興味が持てず、フィガロはまだ話したことのない人物を遠目に眺める。いずれも、つまらなそうな男だ。ガチムチ系は趣味じゃないし、好みの綺麗な見かけの子もいない。
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TRAININGi7/100本ノック7本目天と姉鷺と花火
短夜に花篝「天、今日はもう上がりでいいかしら?」
ハンドルを回す姉鷺に「はい」と短く肯定を返す。自分のスケジュールなど一番この敏腕マネージャーが把握しているだろうにとは思ったが姉鷺のことだ、明日のスケジュールを鑑みて何か変更を調整しているのかもしれない。
仕事モードのまま姉鷺に問えば、「仕事じゃないわ。ちょっと寄り道していいかって相談よ」と茶目っけ混じりに笑まれたのがわかった。ぱちくちと目を瞬き、天もまたつられたように笑う。
「もちろんです。どこへでもお供しますよ」
「そんなカッコいいこと言わないでちょうだい。惚れるわよ」
「光栄です」
いつかしたやり取りを思い出して二人してくすくす音を転がした。
やがて車を走らせるほど暫し。どこかの駐車場に駐車して「ここから少し歩くわよ」と姉鷺に促され、開け放たれたスライドドアから外へ身を滑らせる。どこからともなく洒脱な破裂音が聞こえてきて天は車をロックしている姉鷺を見た。「あの、姉鷺さん」と驚いた調子を隠せない天に「わかっちゃったかしら。じゃあ答え合わせといきましょうか」と瀟酒にウインクすると道を先導した。人は殆ど来ないからマスクだけでいいと手渡されたそれを付けた。
1290ハンドルを回す姉鷺に「はい」と短く肯定を返す。自分のスケジュールなど一番この敏腕マネージャーが把握しているだろうにとは思ったが姉鷺のことだ、明日のスケジュールを鑑みて何か変更を調整しているのかもしれない。
仕事モードのまま姉鷺に問えば、「仕事じゃないわ。ちょっと寄り道していいかって相談よ」と茶目っけ混じりに笑まれたのがわかった。ぱちくちと目を瞬き、天もまたつられたように笑う。
「もちろんです。どこへでもお供しますよ」
「そんなカッコいいこと言わないでちょうだい。惚れるわよ」
「光栄です」
いつかしたやり取りを思い出して二人してくすくす音を転がした。
やがて車を走らせるほど暫し。どこかの駐車場に駐車して「ここから少し歩くわよ」と姉鷺に促され、開け放たれたスライドドアから外へ身を滑らせる。どこからともなく洒脱な破裂音が聞こえてきて天は車をロックしている姉鷺を見た。「あの、姉鷺さん」と驚いた調子を隠せない天に「わかっちゃったかしら。じゃあ答え合わせといきましょうか」と瀟酒にウインクすると道を先導した。人は殆ど来ないからマスクだけでいいと手渡されたそれを付けた。
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TRAININGi7/SS100本ノック6本目天とさくらんぼと朝食
モーニング・ワンシーンに薫陶 真っ赤っかでまんまるで、とってもつやつやしていてまるで宝石のよう。きゅっと身が詰まっていることが素人目にもわかる程で、甘みをたっぷり溜め込んでいるそれを口にすればさぞ美味に違いない。
さくらんぼを洗いながら天は知らず知らず生唾を飲み込む。食い意地が張っているようで少し恥ずかしくなってしまったが、茶々を入れてくる可能性が高い楽は洗面所にいる筈なのでよしとした。念のため覗き込んだリビングに人はいない。龍之介は昨晩が遅かったのと今日の仕事が午後からなのでまだ眠っているのだろう。今はまだ早朝と呼べる時間だ。天と楽はそれぞれ別所で仕事があるから起きている。ついでに今日は天が朝食当番である。
流水を弾いて一層きらきらするさくらんぼに目を奪されそうになりながらそれぞれの小皿に取り分ける。お盆にそれを乗せてダイニングへと運ぶ。楽が敷いてくれていたランチョンマットに手際よく並べていく。わかめご飯に茄子と油揚げのお味噌汁、ヨーグルトにさくらんぼ。龍之介の分は同じように用意して冷蔵庫に仕舞い、冷蔵庫のメモボードにメッセージは添えた。起きたらきっと見てくれるだろうし、返信をボードに書き入れてくれるだろう。龍之介はそういう律儀な男だ。
758さくらんぼを洗いながら天は知らず知らず生唾を飲み込む。食い意地が張っているようで少し恥ずかしくなってしまったが、茶々を入れてくる可能性が高い楽は洗面所にいる筈なのでよしとした。念のため覗き込んだリビングに人はいない。龍之介は昨晩が遅かったのと今日の仕事が午後からなのでまだ眠っているのだろう。今はまだ早朝と呼べる時間だ。天と楽はそれぞれ別所で仕事があるから起きている。ついでに今日は天が朝食当番である。
流水を弾いて一層きらきらするさくらんぼに目を奪されそうになりながらそれぞれの小皿に取り分ける。お盆にそれを乗せてダイニングへと運ぶ。楽が敷いてくれていたランチョンマットに手際よく並べていく。わかめご飯に茄子と油揚げのお味噌汁、ヨーグルトにさくらんぼ。龍之介の分は同じように用意して冷蔵庫に仕舞い、冷蔵庫のメモボードにメッセージは添えた。起きたらきっと見てくれるだろうし、返信をボードに書き入れてくれるだろう。龍之介はそういう律儀な男だ。
suno_kabeuchi
TRAININGi7/SS100本ノック 5本目お説教されるモンtrg
そういうものなのです「いきなり止めたのは悪かったよ。けど、おまえらだってやっちゃダメだって言われてることやっただろうが」
天がキッチンからアイスティーのポットの中身を詰め替えて戻ってみれば、楽とモンたちが討論を交わしている光景だった。モンたちはし唇を引き締めていたり反省したり尻尾をビタンビタンさせたりと反応は様々であるが、いずれにしてもお世辞にもご機嫌とは言い難い様子である。席を外した数分のうちに一体何があったというのだろう。手にしたポットをコースターの上に置いて龍之介を見た。
「どうしたの、これ」
「モンたちのチーズ伸ばし大会を中断させたら抗議されちゃって……」
「は? チーズ伸ばし大会?」
「ピザのチーズをどこまで伸ばせるかって競ってたみたい」
570天がキッチンからアイスティーのポットの中身を詰め替えて戻ってみれば、楽とモンたちが討論を交わしている光景だった。モンたちはし唇を引き締めていたり反省したり尻尾をビタンビタンさせたりと反応は様々であるが、いずれにしてもお世辞にもご機嫌とは言い難い様子である。席を外した数分のうちに一体何があったというのだろう。手にしたポットをコースターの上に置いて龍之介を見た。
「どうしたの、これ」
「モンたちのチーズ伸ばし大会を中断させたら抗議されちゃって……」
「は? チーズ伸ばし大会?」
「ピザのチーズをどこまで伸ばせるかって競ってたみたい」
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TRAININGi7/SS100本ノック楽とモンとあったかシーツ
もこもこにまどろむ からりとよく晴れた、もとい晴れすぎた今日は洗濯物が一瞬で乾く。どうせならと全員分のシーツもタオルケットも午前中に洗って干したが、午後一番には既に乾いていた。いくらなんでも早すぎだろ、と楽が呟く。広々としたベランダにずらりと並ぶシーツとタオルケットの海に手を差し入れる。慣れた手付きで回収すると鼻腔に柔軟剤の香りが滑り込む。心地良いそれに顔を寄せて思い切り肺いっぱいに流し込む。天が「絶対にこれ」とセレクトしたものだが、楽も龍之介も気に入ったので珍しく異論なく決まったブランドのものだ。
カンカン照りの今日は少し外に出るだけで汗ばむ。風は多少出ているが、それでも暑いことに変わりはない。あまり外にいるのもよくないと楽は物干し竿掛けを下ろし、早々に空調の効いた室内に戻った。
643カンカン照りの今日は少し外に出るだけで汗ばむ。風は多少出ているが、それでも暑いことに変わりはない。あまり外にいるのもよくないと楽は物干し竿掛けを下ろし、早々に空調の効いた室内に戻った。
suno_kabeuchi
TRAININGi7/SS100本ノック龍之介とモンつなとおふろ
いざゆかん、おおうなばらのだいぼうけん! 蛇口レバーを捻り、髪を掻き上げて水滴を払う。撮影でたっぷり汗を掻いた今日のような日は特にシャワーが気持ちいい。滴る水をそのままに扉を見る。磨硝子の向こうに見慣れたシルエットが見えて、龍之介はくすりと笑みを零した。
「お待たせ。いいよ、入っておいで」
扉を開けば、予想通りモンつながわくわくした顔でそこにいた。
空の風呂桶を差し出せば、モンつなは慣れた様子でぴょんと飛び乗った。それを認めて龍之介がモンつなが入った風呂桶を持って湯船に身を沈める。ざぷり。龍之介の体積分水嵩が増した。ぷかぷか。ゆらゆら。着水したばかりの風呂桶は不安定に揺れている。ひと匙の不安と、それ以上の期待を込めてモンつながきりりと表情を引き締める。やがて風呂桶が安定すると、「しゅっぱつしんこう!」とばかりに瞳を輝かせたモンつながびしりと短い手を突き上げる。ちゃぷちゃぷと音を立ててゆっくりと風呂桶が進み始めた。モンつなのテンションも鰻登りである。
696「お待たせ。いいよ、入っておいで」
扉を開けば、予想通りモンつながわくわくした顔でそこにいた。
空の風呂桶を差し出せば、モンつなは慣れた様子でぴょんと飛び乗った。それを認めて龍之介がモンつなが入った風呂桶を持って湯船に身を沈める。ざぷり。龍之介の体積分水嵩が増した。ぷかぷか。ゆらゆら。着水したばかりの風呂桶は不安定に揺れている。ひと匙の不安と、それ以上の期待を込めてモンつながきりりと表情を引き締める。やがて風呂桶が安定すると、「しゅっぱつしんこう!」とばかりに瞳を輝かせたモンつながびしりと短い手を突き上げる。ちゃぷちゃぷと音を立ててゆっくりと風呂桶が進み始めた。モンつなのテンションも鰻登りである。