なりひさ
DONEガンマト。凍れる時の秘法期間中。凍れる未来 マトリフは目の前に広がる凄惨な光景から目が離せなかった。家並みは押し潰され、所々で火が上がっている。それが月のない晩をポツポツと照らしていた。逃げ惑う人々の悲鳴が既に弱々しい。この蹂躙は長く続いていたらしい。
「た……助けて……」
逃げ遅れていた人を瓦礫から引っ張り出してマトリフは回復呪文をかける。しかしそれを終えるとすぐに飛翔呪文で飛んだ。これをやったのは間違いなくガンガディアだ。その姿を探す。巨体はすぐに見つかった。
「おや大魔道士、遅かったじゃないか。私の準備運動はとっくに済んでいるのだよ」
ぐしゃり、と手に持っていた何かが潰れて落ちていった。ガンガディアはその気になればこの街を消し炭にすることも出来ただろう。それをせずに半壊程度に抑えていた。それらは全てはマトリフを誘き出すためだ。
2285「た……助けて……」
逃げ遅れていた人を瓦礫から引っ張り出してマトリフは回復呪文をかける。しかしそれを終えるとすぐに飛翔呪文で飛んだ。これをやったのは間違いなくガンガディアだ。その姿を探す。巨体はすぐに見つかった。
「おや大魔道士、遅かったじゃないか。私の準備運動はとっくに済んでいるのだよ」
ぐしゃり、と手に持っていた何かが潰れて落ちていった。ガンガディアはその気になればこの街を消し炭にすることも出来ただろう。それをせずに半壊程度に抑えていた。それらは全てはマトリフを誘き出すためだ。
なりひさ
DONEガンマト。外科医のガンガさんとマトの話消えた記憶 淡い光が広がっていた。点灯していない蛍光灯がついた天井がカーテンで仕切られている。
なぜオレはこんな所に居るのだろうか。思い出そうとして頬に風を感じた。そちらを向けば少し開いた窓があり、そこからの風がカーテンを揺らしていた。
多数の不規則な足音が遠くに聞こえる。館内放送が静かに誰かを呼び出していた。乾燥機で乾かされたシーツの匂いがして、自分が横になっているベッドを見やる。ここが病院であることは間違いなさそうだ。淡い桃色のカーテンがベッドをぐるりと囲んでいる。
すると早足で歩いてくる足音が聞こえた。それはこちらへ近付いてくる。それをぼんやりと聞いていたらカーテンが勢いよく引かれた。白衣を着た男がこちらを見ている。白衣を着ているからには医者だろう。服の上からでもわかる筋肉質な肉体をしている。医者はオレを見て安堵したように表情を緩めた。
12320なぜオレはこんな所に居るのだろうか。思い出そうとして頬に風を感じた。そちらを向けば少し開いた窓があり、そこからの風がカーテンを揺らしていた。
多数の不規則な足音が遠くに聞こえる。館内放送が静かに誰かを呼び出していた。乾燥機で乾かされたシーツの匂いがして、自分が横になっているベッドを見やる。ここが病院であることは間違いなさそうだ。淡い桃色のカーテンがベッドをぐるりと囲んでいる。
すると早足で歩いてくる足音が聞こえた。それはこちらへ近付いてくる。それをぼんやりと聞いていたらカーテンが勢いよく引かれた。白衣を着た男がこちらを見ている。白衣を着ているからには医者だろう。服の上からでもわかる筋肉質な肉体をしている。医者はオレを見て安堵したように表情を緩めた。
なりひさ
DONEガンマト。現パロの二人。ハドとアバに迷惑かけてる。写真 ガンガディアは時間を確認しようとスマートフォンに触れた。ぱっと明るくなる画面に時刻が表示される。しかしそれよりも目がいったのは、壁紙に設定したマトリフの写真だった。
「……おい」
上司の苦い声にガンガディアはスマートフォンから顔を上げる。見ればハドラーが天敵でも見るような顔でガンガディアのスマートフォンを見ていた。ガンガディアはサッとスマートフォンを隠す。
「見ないでください」
「だったら壁紙なんぞに設定するな」
「せっかく撮らせてくれた写真なんですよ。いつでも見られるようにしたいではないですか」
「……それは隠し撮りではないのか」
ハドラーが苦い顔をしたのはそのせいもあったらしい。マトリフの写真は横から撮ったもので、視線すらこちらに向いていない。少し遠いのも相まって、まるで隠し撮りのように見えなくもない。
1067「……おい」
上司の苦い声にガンガディアはスマートフォンから顔を上げる。見ればハドラーが天敵でも見るような顔でガンガディアのスマートフォンを見ていた。ガンガディアはサッとスマートフォンを隠す。
「見ないでください」
「だったら壁紙なんぞに設定するな」
「せっかく撮らせてくれた写真なんですよ。いつでも見られるようにしたいではないですか」
「……それは隠し撮りではないのか」
ハドラーが苦い顔をしたのはそのせいもあったらしい。マトリフの写真は横から撮ったもので、視線すらこちらに向いていない。少し遠いのも相まって、まるで隠し撮りのように見えなくもない。
なりひさ
DONEガンマト。両片思いのままの二人。凍れる時の秘法の頃、ガンガディアはある呪文を使う。作業用BGM「ピノ」君を残す呪文 それに気づいた時には、呪文は煙のように消えかけていた。
「なんの呪文だそれ?」
ガンガディアの手はマトリフに向けられ、指が輪のように形作られていた。そこには間違いなく呪文の形跡があり、しかもマトリフの知らないものだった。だが攻撃呪文ではなさそうで、その証拠にマトリフの周りに咲いた花は風に揺れるだけでなんの害も受けていなかった。
「……秘密だ」
ガンガディアは珍しく言い淀みながらぽつりと口にした。真面目な気質の彼はその事に不誠実さでも感じたのか、恥じるように目線を外らせてしまった。
マトリフは何か言い返そうとした口を閉じる。揶揄うにはよいネタだと思ったのだが、何故だが気分が乗らなかった。あまりにも平和すぎる時間の流れに感化されたのかもしれない。マトリフは咲き乱れる花に目をやる。そうすると自然とそこに立ち尽くす二人にも目がいった。
2357「なんの呪文だそれ?」
ガンガディアの手はマトリフに向けられ、指が輪のように形作られていた。そこには間違いなく呪文の形跡があり、しかもマトリフの知らないものだった。だが攻撃呪文ではなさそうで、その証拠にマトリフの周りに咲いた花は風に揺れるだけでなんの害も受けていなかった。
「……秘密だ」
ガンガディアは珍しく言い淀みながらぽつりと口にした。真面目な気質の彼はその事に不誠実さでも感じたのか、恥じるように目線を外らせてしまった。
マトリフは何か言い返そうとした口を閉じる。揶揄うにはよいネタだと思ったのだが、何故だが気分が乗らなかった。あまりにも平和すぎる時間の流れに感化されたのかもしれない。マトリフは咲き乱れる花に目をやる。そうすると自然とそこに立ち尽くす二人にも目がいった。
なりひさ
DONEガンマト。本に封印されたガンガディアがマトリフの魔力供給によって力を貸す話本「よせよ、師匠」
ポップは悲痛な顔で呟いた。マトリフの行動を止めるように腕を掴む。ポップの伏せられた瞼が己の不甲斐なさに震えていた。しかしマトリフの意志は固く、ポップの手を取るとそっと腕から外した。
時刻は早朝だった。しかし清爽さとは無縁の鎮痛な空気が洞窟に満ちている。大魔道士が二人揃っても解決できない問題に直面していたからだ。数多の呪文も叡智もこの問題の解決は不可能だった。ポップは悔しそうに拳を握りしめる。
「おれにもっと力があれば……」
「そう落ち込むな。オレの魔法力で済むなら安いもんだ」
マトリフは書架から一冊の本を手に取った。皮表紙のそれは金文字で仰々しく飾られているが古寂びている。長い年月人の手にあったことを示すように落ち着いた色合いになったその本は、マトリフの手によく馴染んでいた。
1743ポップは悲痛な顔で呟いた。マトリフの行動を止めるように腕を掴む。ポップの伏せられた瞼が己の不甲斐なさに震えていた。しかしマトリフの意志は固く、ポップの手を取るとそっと腕から外した。
時刻は早朝だった。しかし清爽さとは無縁の鎮痛な空気が洞窟に満ちている。大魔道士が二人揃っても解決できない問題に直面していたからだ。数多の呪文も叡智もこの問題の解決は不可能だった。ポップは悔しそうに拳を握りしめる。
「おれにもっと力があれば……」
「そう落ち込むな。オレの魔法力で済むなら安いもんだ」
マトリフは書架から一冊の本を手に取った。皮表紙のそれは金文字で仰々しく飾られているが古寂びている。長い年月人の手にあったことを示すように落ち着いた色合いになったその本は、マトリフの手によく馴染んでいた。
なりひさ
DONEガンマト。すれ違う二人憧れ 眠れないからと飲んだ酒が底をついた。空になった瓶がいくつか床に転がっている。その割には酔うことすらできないでいた。
外は酷い雨が降っている。岩戸を閉めていてもその音が洞窟内に響いていた。マトリフはベッドに寝転がりながら空の酒瓶を手で弄ぶ。夜も遅いが、一向に眠気が訪れなかった。
「大魔道士」
ガンガディアが部屋の前に立っていた。咎めるような眼差しに一瞬煙たく思ったが、マトリフは誘うように手招いた。ガンガディアは空瓶を拾いながらマトリフの側まで来る。ガンガディアの小言がはじまる前にマトリフは言った。
「オレにラリホーかけてくれよ。眠れねえんだ」
甘ったるくねだったが、ガンガディアの表情は動かなかった。
13610外は酷い雨が降っている。岩戸を閉めていてもその音が洞窟内に響いていた。マトリフはベッドに寝転がりながら空の酒瓶を手で弄ぶ。夜も遅いが、一向に眠気が訪れなかった。
「大魔道士」
ガンガディアが部屋の前に立っていた。咎めるような眼差しに一瞬煙たく思ったが、マトリフは誘うように手招いた。ガンガディアは空瓶を拾いながらマトリフの側まで来る。ガンガディアの小言がはじまる前にマトリフは言った。
「オレにラリホーかけてくれよ。眠れねえんだ」
甘ったるくねだったが、ガンガディアの表情は動かなかった。
kisaragi_hotaru
DONEガンマトが地底魔城で魔王たちとわちゃわちゃするゆるふわな短文。マトロボ話と似た流れでマト本人連れてきました版です。こんなんでもガンマトと言い張ってみる。ガンマト結婚式は地底魔城で行われて勇者一行もお祝いに来てくれる平和な未来。 マトリフが 仲間に 加わった!
「おう。そういうわけだからよろしくな」
「ハドラー様。この者が以前ご報告した大魔道士です」
「待て」
鼻をほじりながら気のない挨拶をするマトリフ。上司に新しい仲間を紹介するガンガディア。片手を前に突き出してストップをかけるハドラー。
「大魔道士とはあれだろう……勇者一行の」
「その通りです」
「ふざけるなよガンガディア」
「私は至って本気です。近年この魔王軍では深刻な人手不足。キギロが行方不明になってからというものもはや私ひとりでは仕事が回りきらないのが現状。故に私の知る中で最も優秀な人材を確保した次第です」
ガンガディアの言葉を聞いてマトリフがピクリと反応する。顔を顰めて傍らの巨体を見上げた。
2412「おう。そういうわけだからよろしくな」
「ハドラー様。この者が以前ご報告した大魔道士です」
「待て」
鼻をほじりながら気のない挨拶をするマトリフ。上司に新しい仲間を紹介するガンガディア。片手を前に突き出してストップをかけるハドラー。
「大魔道士とはあれだろう……勇者一行の」
「その通りです」
「ふざけるなよガンガディア」
「私は至って本気です。近年この魔王軍では深刻な人手不足。キギロが行方不明になってからというものもはや私ひとりでは仕事が回りきらないのが現状。故に私の知る中で最も優秀な人材を確保した次第です」
ガンガディアの言葉を聞いてマトリフがピクリと反応する。顔を顰めて傍らの巨体を見上げた。
kisaragi_hotaru
DONEガンマトというよりはガン→マトなお話です。本誌獄炎ネタバレ要素含みます。キラマシがガンガさん作だったらという前提です。マト本人は出てきません。 ガンガディアは甚く立腹していた。
祈りの間に籠ったまま出てこなくなった魔王に代わり全軍の総指揮を担うことになっていたガンガディアはさすがに心身ともに疲労を感じていた。信頼されているからこそと思えば名誉も感じるが度が過ぎればそれも憤りを感じてしまうようになってくるというものだ。尤も本音を言えば仕事が忙しすぎて地底魔城から出られず勇者一行を自ら追いかけるわけにはいかなくなってしまったことにより、つまるところ大魔道士に会えなくなって凹んでしまっているのである。意外と繊細なのだ。
そんな矢先。久方ぶりに魔王が姿を現した。祈りの間は悲惨な有様になっていたが不思議と死の大地から持ち帰っていた不気味な置物だけは傷一つ無かった。
6914祈りの間に籠ったまま出てこなくなった魔王に代わり全軍の総指揮を担うことになっていたガンガディアはさすがに心身ともに疲労を感じていた。信頼されているからこそと思えば名誉も感じるが度が過ぎればそれも憤りを感じてしまうようになってくるというものだ。尤も本音を言えば仕事が忙しすぎて地底魔城から出られず勇者一行を自ら追いかけるわけにはいかなくなってしまったことにより、つまるところ大魔道士に会えなくなって凹んでしまっているのである。意外と繊細なのだ。
そんな矢先。久方ぶりに魔王が姿を現した。祈りの間は悲惨な有様になっていたが不思議と死の大地から持ち帰っていた不気味な置物だけは傷一つ無かった。
なりひさ
DONEガンマト。デートする二人たまにはデートでもしようや「デート、とは」
「なんだよ、デート知らねえのか」
昼下がりの洞窟でガンガディアとマトリフはのんびりとした時間を過ごしていた。そしてマトリフは急に「デートでもするか」と提案したのだ。
ガンガディアは眼鏡に指をやる。光の加減でそのレンズがキラリと光って見えた。
「意味は知っている。人間が行う奇妙な行動だろう。一緒に出かけて同じ行動を取ることでお互いの興味を深めるという。その点でおいて私は既に君への興味は極限値まできているのでこれ以上に上がることはないが、君が私に興味を持ってくれるならデートの意味もある。私が聞きたかったのはデートの具体的な内容だが、やはり流行りはパプニカか。温暖な気候と風光明媚な観光名所を有し、我々の共通の興味がある魔導書を扱う店も多い。しかしその点においてはカールも力を入れ始めたところではあるし、君の希望が一番だから……」
3204「なんだよ、デート知らねえのか」
昼下がりの洞窟でガンガディアとマトリフはのんびりとした時間を過ごしていた。そしてマトリフは急に「デートでもするか」と提案したのだ。
ガンガディアは眼鏡に指をやる。光の加減でそのレンズがキラリと光って見えた。
「意味は知っている。人間が行う奇妙な行動だろう。一緒に出かけて同じ行動を取ることでお互いの興味を深めるという。その点でおいて私は既に君への興味は極限値まできているのでこれ以上に上がることはないが、君が私に興味を持ってくれるならデートの意味もある。私が聞きたかったのはデートの具体的な内容だが、やはり流行りはパプニカか。温暖な気候と風光明媚な観光名所を有し、我々の共通の興味がある魔導書を扱う店も多い。しかしその点においてはカールも力を入れ始めたところではあるし、君の希望が一番だから……」
なりひさ
DONEガンマトとハドアバ。鉢合わせ4人のその後の話大魔道士の暇潰し 今日も今日とてガンガディアはマトリフに会いにきていた。地底魔城でハドラーと鉢合わせて、二人の関係がバレてからというもの、ガンガディアは憚ることなく会いに来るようになった。
今は二人で湖に浸かっている。ここ数日の暑さに辟易していたところだったので、程よい冷たさの湖の水温は気持ちよかった。若者たちは浅瀬で遊んでいる。マトリフはガンガディアに横抱きに抱えられながら浮かんでいた。
「暑くはないかね?」
「いいや……ちょうどいい」
魔王の侵攻も最近ではおざなりだ。そのおかげでのんびりと旅をしている。そののんびりとした時間の中で、マトリフは少々の退屈を感じていた。その退屈がある思いつきを連れてきた。
「熱中症ってゆっくり言ってみな」
1795今は二人で湖に浸かっている。ここ数日の暑さに辟易していたところだったので、程よい冷たさの湖の水温は気持ちよかった。若者たちは浅瀬で遊んでいる。マトリフはガンガディアに横抱きに抱えられながら浮かんでいた。
「暑くはないかね?」
「いいや……ちょうどいい」
魔王の侵攻も最近ではおざなりだ。そのおかげでのんびりと旅をしている。そののんびりとした時間の中で、マトリフは少々の退屈を感じていた。その退屈がある思いつきを連れてきた。
「熱中症ってゆっくり言ってみな」
なりひさ
DONEガンマトとハドアバ。地底魔城で鉢合わせする4人鉢合わせの朝 マトリフが目覚めたら眼前には真白いシーツが広がっていた。巨大なベッドにいたのはマトリフ一人だ。そこは地底魔城のガンガディアの部屋で、見渡したがガンガディアはいなかった。
昨日は魔王軍と鉢合わせて戦闘になった。最終的にお互いに引いて戦闘は終わったが、仲間と少し離れた隙にマトリフはここへと連れ去られた。連れ去ったのはガンガディアで、それは初めてのことではなかった。マトリフはガンガディアの部屋に連れ込まれて、裸で一戦交えた。つまり二人はそういう関係だった。
マトリフは巨大なベッドに寝転がり、シーツに包まれている。どこかに法衣が落ちているだろうが、それを拾うのも億劫だった。回復呪文をかけながらのセックスは限度を知らない。マトリフは身体の奥に疲労を感じてベッドで寝返りを打った。ガンガディアが戻る前に抜け出してルーラで戻らなければいけないが、まだ起きられなかった。
3030昨日は魔王軍と鉢合わせて戦闘になった。最終的にお互いに引いて戦闘は終わったが、仲間と少し離れた隙にマトリフはここへと連れ去られた。連れ去ったのはガンガディアで、それは初めてのことではなかった。マトリフはガンガディアの部屋に連れ込まれて、裸で一戦交えた。つまり二人はそういう関係だった。
マトリフは巨大なベッドに寝転がり、シーツに包まれている。どこかに法衣が落ちているだろうが、それを拾うのも億劫だった。回復呪文をかけながらのセックスは限度を知らない。マトリフは身体の奥に疲労を感じてベッドで寝返りを打った。ガンガディアが戻る前に抜け出してルーラで戻らなければいけないが、まだ起きられなかった。
なりひさ
DONEガンマト。ガンガディアを想って彼の死に場所を呪文で花畑にするマトリフ空に君を想う 平和が訪れた。その功労者である勇者がひっそりと訪れたのは魔王軍との最終決戦の地だった。
あの戦いで魔王軍は勇者たちを待ち構えていた。地底魔城のその周囲を埋め尽くすほどの魔物たちを一手に引き受けたのはマトリフだった。その魔王軍の先頭にいたデストロールをアバンは覚えている。そこからどんな戦闘になったのかは、先に進んだアバンには知りようがなかった。ただ勝ったのはマトリフで、その戦闘の激しさは筆舌に尽くしがたいものだったのは変わり果てた地形からも明らかだった。
だが、今その地面が変わっていることにアバンは驚いていた。呪文のせいか、あるいは魔物たちの攻撃で抉れて起伏が激しくなっていた地面には一面の花が咲いていた。それが風に吹かれて揺れている。
1952あの戦いで魔王軍は勇者たちを待ち構えていた。地底魔城のその周囲を埋め尽くすほどの魔物たちを一手に引き受けたのはマトリフだった。その魔王軍の先頭にいたデストロールをアバンは覚えている。そこからどんな戦闘になったのかは、先に進んだアバンには知りようがなかった。ただ勝ったのはマトリフで、その戦闘の激しさは筆舌に尽くしがたいものだったのは変わり果てた地形からも明らかだった。
だが、今その地面が変わっていることにアバンは驚いていた。呪文のせいか、あるいは魔物たちの攻撃で抉れて起伏が激しくなっていた地面には一面の花が咲いていた。それが風に吹かれて揺れている。
なりひさ
DONEガンマト。スイカ割り大会スイカの上手な割り方について「もうちょい左……あと半歩」
マトリフはスイカを見ながら指示を出す。ガンガディアは目隠しをして棍棒を持っていた。
ここは世界一平和な世界の砂浜。全ての怨恨を忘れ去り、みんながスイカ割りに興じていた。新旧勇者一行、新旧魔王軍が一堂に会しており、どのペアが一番上手くスイカを割れるかと競い合っていた。今はガンガディアとマトリフのペアである。揃いの海水パンツを履いた二人はスイカを狙っていた。
「アレって狡くねえか?」
ガンガディアとマトリフのスイカ割りを見て不満を言ったのはポップだった。ポップは自分が知るよりも若いマトリフを見上げている。というのも、マトリフはガンガディアの肩に乗り、いわゆる肩車をしていた。そして操縦桿でも握るようにガンガディアの耳を持っている。そしてそこから適切な指示を出しているのだ。
1135マトリフはスイカを見ながら指示を出す。ガンガディアは目隠しをして棍棒を持っていた。
ここは世界一平和な世界の砂浜。全ての怨恨を忘れ去り、みんながスイカ割りに興じていた。新旧勇者一行、新旧魔王軍が一堂に会しており、どのペアが一番上手くスイカを割れるかと競い合っていた。今はガンガディアとマトリフのペアである。揃いの海水パンツを履いた二人はスイカを狙っていた。
「アレって狡くねえか?」
ガンガディアとマトリフのスイカ割りを見て不満を言ったのはポップだった。ポップは自分が知るよりも若いマトリフを見上げている。というのも、マトリフはガンガディアの肩に乗り、いわゆる肩車をしていた。そして操縦桿でも握るようにガンガディアの耳を持っている。そしてそこから適切な指示を出しているのだ。
kisaragi_hotaru
DONE指輪ネタで書いてみたかったガンマト。指輪自体は出てこないけど指輪ネタのつもりです。 食われるかと思った。
マトリフの前で跪きうやうやしく左手を掬い取ったガンガディアがおもむろに口を開いて指に食らいついたのだ。
ぎょっ、としたマトリフは次いで感じた痛みに反射的に声を上げて顔を顰める。
「いってえよ! なにすんだ!」
突然指を噛まれたのだ。文句も言いたくなるというもの。食い込む歯の感触が消えたことを見計らって掴まれた手を取り戻そうとマトリフは手を引き戻す。
しかしガンガディアの口は離れたが手は掴まれたまま。見ればマトリフの左手の薬指の付け根から血が滲んでいる。それをガンガディアは舌を這わせて舐め取った。
「んっ……」
まるで情事の時のようなねっとりとした舌使いにマトリフの左手が痛みのせいだけでなく震えた。
3423マトリフの前で跪きうやうやしく左手を掬い取ったガンガディアがおもむろに口を開いて指に食らいついたのだ。
ぎょっ、としたマトリフは次いで感じた痛みに反射的に声を上げて顔を顰める。
「いってえよ! なにすんだ!」
突然指を噛まれたのだ。文句も言いたくなるというもの。食い込む歯の感触が消えたことを見計らって掴まれた手を取り戻そうとマトリフは手を引き戻す。
しかしガンガディアの口は離れたが手は掴まれたまま。見ればマトリフの左手の薬指の付け根から血が滲んでいる。それをガンガディアは舌を這わせて舐め取った。
「んっ……」
まるで情事の時のようなねっとりとした舌使いにマトリフの左手が痛みのせいだけでなく震えた。
なりひさ
DONEガンマト。モシャスしてたけど魔物だとバレて人間に攻撃されるガンガディアの話終わりの朝、百年の孤独 君を失いたくない。どうか、私の前から消えないでくれ。ガンガディアがそう願うには遅すぎた。沈む太陽を止められないように、終わりは刻一刻と近づいていた。
空を朱に染める太陽が地平線の向こうへ沈もうとしている。その空に背を向けながらガンガディアはひとり街を歩いていた。
本当はマトリフと一緒に出かけるつもりだったが、昼過ぎになってマトリフが体調を崩した。昨夜に無理をさせたせいなのかマトリフはずっと布団から出ずにいた。心配したガンガディアが声をかければ怠いと言う。触れれば発熱しており、回復呪文も効かなかった。街へ出かけることは中止しようとガンガディアは提案したが、だったらとマトリフは買い物を頼んできた。それはマトリフが好んで飲む茶で、街にある馴染みの店でしか取り扱っていない。確かに茶葉は残り少なかったが、急ぐほどでもなかった。ガンガディアはそれよりも体調が良くないマトリフのそばにいたかったのだが、マトリフがそれを許さなかった。さっさと行けと追い出され、ガンガディアは渋々承諾した。
11173空を朱に染める太陽が地平線の向こうへ沈もうとしている。その空に背を向けながらガンガディアはひとり街を歩いていた。
本当はマトリフと一緒に出かけるつもりだったが、昼過ぎになってマトリフが体調を崩した。昨夜に無理をさせたせいなのかマトリフはずっと布団から出ずにいた。心配したガンガディアが声をかければ怠いと言う。触れれば発熱しており、回復呪文も効かなかった。街へ出かけることは中止しようとガンガディアは提案したが、だったらとマトリフは買い物を頼んできた。それはマトリフが好んで飲む茶で、街にある馴染みの店でしか取り扱っていない。確かに茶葉は残り少なかったが、急ぐほどでもなかった。ガンガディアはそれよりも体調が良くないマトリフのそばにいたかったのだが、マトリフがそれを許さなかった。さっさと行けと追い出され、ガンガディアは渋々承諾した。
kisaragi_hotaru
DONEサババデートしに来たはずが大変なことになるガンマト。そんなガンマトに巻き込まれるディーさんのお話です。獄炎とダイ大のネタバレ要素を含んでいます。マトが全然クールじゃない。IQ低めのゆるふわ小説。なんでも許せる方向けです。そうだ サババ、行こう。 「久しぶりに来たぜ。サババ!!」
「確かに。私は一度しか来たことはないが、相変わらず人が多い場所だ」
「あー、その一度ってのはあれか、オレらの買い物を邪魔しに来やがったあの時か」
「……根に持っているのかね? 大魔道士」
「べっつに〜。そんなことより!」
大魔道士と呼ばれた男はビシッと人差し指をその相手へと突きつけた。
「大魔道士じゃなくて、マトリフ! そう呼べって言ったろーが!」
「そ、そうだったな…………マトリフ」
「えらく間が空いたな。なんだよそんなにオレの名前呼ぶのが嫌なのかよ、ガンガディア」
マトリフは不満だとばかりに顔を顰めて自分よりも幾分と背の高い体格の良い男を見上げた。
ガンガディアはトロル族の特別変異種デストロールである。本来ならばマトリフの優にニ倍以上ある身長は今この時は半分より少し高いくらいになっている。肌の色も若干色濃いくらいで人間のそれとまるで大差無い。服装も布の服を重ね着しており筋肉質な胸元や二の腕は晒されていない。普段なら身に付けている金の首飾りや腕輪も外している。どこにでもいるような至って普通の人間の男性の姿になっているガンガディア。それは試行錯誤の末に編み出したモシャスの応用であった。
14610「確かに。私は一度しか来たことはないが、相変わらず人が多い場所だ」
「あー、その一度ってのはあれか、オレらの買い物を邪魔しに来やがったあの時か」
「……根に持っているのかね? 大魔道士」
「べっつに〜。そんなことより!」
大魔道士と呼ばれた男はビシッと人差し指をその相手へと突きつけた。
「大魔道士じゃなくて、マトリフ! そう呼べって言ったろーが!」
「そ、そうだったな…………マトリフ」
「えらく間が空いたな。なんだよそんなにオレの名前呼ぶのが嫌なのかよ、ガンガディア」
マトリフは不満だとばかりに顔を顰めて自分よりも幾分と背の高い体格の良い男を見上げた。
ガンガディアはトロル族の特別変異種デストロールである。本来ならばマトリフの優にニ倍以上ある身長は今この時は半分より少し高いくらいになっている。肌の色も若干色濃いくらいで人間のそれとまるで大差無い。服装も布の服を重ね着しており筋肉質な胸元や二の腕は晒されていない。普段なら身に付けている金の首飾りや腕輪も外している。どこにでもいるような至って普通の人間の男性の姿になっているガンガディア。それは試行錯誤の末に編み出したモシャスの応用であった。
なりひさ
DONE事後ガンマトラブラブ編やわらかい朝 目を覚ましたときに、隣にいる存在がまだ信じられないと思うときがある。ガンガディアは寝過ぎた頭を動かしてマトリフを見た。マトリフはまだ夢の中にいるようで、起きる気配はない。
この洞窟は朝陽が差さない。代わりに波の音はよく届く。それが子守唄のように眠気を誘うのか、ガンガディアは目覚めたばかりなのにまた瞼が重くなった。
ガンガディアも寝るなら広いベッドを、と設えたはいいが、マトリフは広いベッドの中で縮まって寝ている。背中の一部だけをガンガディアに触れさせているのは、まるで存在を確かめるような仕草に思えてならない。ガンガディアがこの洞窟で一緒に寝るようになってからというもの、マトリフはいつもこの体勢で寝ている。ガンガディアが動けばその振動がマトリフに伝わってしまうものだから、彼の眠りを妨げないためにもガンガディアは動けないでいた。そうしていると寝過ごすことが増え、ガンガディアはすっかり長寝の癖がついてしまった。
1261この洞窟は朝陽が差さない。代わりに波の音はよく届く。それが子守唄のように眠気を誘うのか、ガンガディアは目覚めたばかりなのにまた瞼が重くなった。
ガンガディアも寝るなら広いベッドを、と設えたはいいが、マトリフは広いベッドの中で縮まって寝ている。背中の一部だけをガンガディアに触れさせているのは、まるで存在を確かめるような仕草に思えてならない。ガンガディアがこの洞窟で一緒に寝るようになってからというもの、マトリフはいつもこの体勢で寝ている。ガンガディアが動けばその振動がマトリフに伝わってしまうものだから、彼の眠りを妨げないためにもガンガディアは動けないでいた。そうしていると寝過ごすことが増え、ガンガディアはすっかり長寝の癖がついてしまった。
なりひさ
DONE二人のときだけデレてくるガンガさんのガンマトクーデレ その日マトリフはカールにいた。アバンやポップと一緒に丸テーブルを囲んでいる。久しぶりに会って食事でも、とのアバンの誘いで集まっていた。
振る舞われたアバンの手料理を食べ終えても話は続いた。気心知れた仲であるから、雑談から世界情勢についてまで話題は尽きない。
そうこうしているうちに日が暮れてきた。天気が良いからと開けられていたバルコニーから涼しい風が入ってくる。その窓へと、デストロールが静かに降り立った。
「げっ……」
その青い巨体を見てマトリフは嫌そうに口を曲げる。ガンガディアは巨体を折り曲げてバルコニーから室内へと入ってきた。
「歓談中にお邪魔してすまない。大魔道士を迎えにきた」
ガンガディアは礼儀正しく言ってアバンとポップを見た。しかしマトリフはガンガディアに背を向けると、カップに残った冷めた茶をちびちびと飲み始める。
1644振る舞われたアバンの手料理を食べ終えても話は続いた。気心知れた仲であるから、雑談から世界情勢についてまで話題は尽きない。
そうこうしているうちに日が暮れてきた。天気が良いからと開けられていたバルコニーから涼しい風が入ってくる。その窓へと、デストロールが静かに降り立った。
「げっ……」
その青い巨体を見てマトリフは嫌そうに口を曲げる。ガンガディアは巨体を折り曲げてバルコニーから室内へと入ってきた。
「歓談中にお邪魔してすまない。大魔道士を迎えにきた」
ガンガディアは礼儀正しく言ってアバンとポップを見た。しかしマトリフはガンガディアに背を向けると、カップに残った冷めた茶をちびちびと飲み始める。
なりひさ
DONE地獄で再会するガンマト地獄でなぜ悪い マトリフは暗い天井を見上げる。落ちてきたときも思ったが、ここは随分と深いようだ。
視線を前方へやれば、また先の見えない道が続いている。ぽつりぽつりと蝋燭が灯っているが、その頼りない明かりでは遠くまでは見えなかった。
「大魔道士?」
懐かしい声に振り返れば、驚愕の表情を浮かべたガンガディアがいた。マトリフは小さく手を上げる。
「よぉ」
「何故ここに」
ガンガディアは怒ったようにマトリフに駆け寄ってきた。そのまま身体を掴まれる。思わず痛みを予測したが、そんなものは当然にない。もう死んでいるからだ。
「何故って、オレはクズ野郎なんでね。地獄がふさわしいだろ?」
マトリフはあたりを見渡す。ここが地獄らしいが、案外地味だった。もっと不気味で恐ろしい場所を想像していたのに。
1740視線を前方へやれば、また先の見えない道が続いている。ぽつりぽつりと蝋燭が灯っているが、その頼りない明かりでは遠くまでは見えなかった。
「大魔道士?」
懐かしい声に振り返れば、驚愕の表情を浮かべたガンガディアがいた。マトリフは小さく手を上げる。
「よぉ」
「何故ここに」
ガンガディアは怒ったようにマトリフに駆け寄ってきた。そのまま身体を掴まれる。思わず痛みを予測したが、そんなものは当然にない。もう死んでいるからだ。
「何故って、オレはクズ野郎なんでね。地獄がふさわしいだろ?」
マトリフはあたりを見渡す。ここが地獄らしいが、案外地味だった。もっと不気味で恐ろしい場所を想像していたのに。
なりひさ
DONEキスの日のガンマトキスの日 マトリフにはガンガディアがキスをするタイミングがわかる。マトリフは機嫌が良ければそれに応じるし、忙しければさっさと離れてしまう。そうしたらガンガディアは少し残念そうにするものの、執拗に要求することもない。
今もガンガディアはソファの隣に座るマトリフをそっと見下ろしてくる。ガンガディアはマトリフの暇な時と忙しい時を見分けようとしてくる。マトリフはちょうど読んでいた本に飽きていた。ページを捲る速度が落ちてきて、視線も本から離れがちである。そういったことをガンガディアはつぶさに観察していた。
かちゃり、とガンガディアが眼鏡を置いた音がマトリフにも聞こえた。マトリフは読んでいなかった本の文字へと視線をやりながら、ガンガディアの手が伸びてくるのを待った。
2712今もガンガディアはソファの隣に座るマトリフをそっと見下ろしてくる。ガンガディアはマトリフの暇な時と忙しい時を見分けようとしてくる。マトリフはちょうど読んでいた本に飽きていた。ページを捲る速度が落ちてきて、視線も本から離れがちである。そういったことをガンガディアはつぶさに観察していた。
かちゃり、とガンガディアが眼鏡を置いた音がマトリフにも聞こえた。マトリフは読んでいなかった本の文字へと視線をやりながら、ガンガディアの手が伸びてくるのを待った。
なりひさ
DONE身体だけの関係ガンマト背中の跡 背中についた爪の痕が、痛いのか熱いのかわからない。ガンガディアは朝陽が差し込む窓を薄目で見ながら、隣から聴こえる規則正しい呼吸音を聞くともなしに聞いていた。まだ朝というには早い時間だが、元より魔族は睡眠時間が人間より短いので時間を持て余していた。
夜を共にしたからといって、なにも朝まで一緒にいなくともよいとガンガディアは思っていた。なので以前に寝たときに夜のうちに帰ったら、次に会ったときに冷たくされた。帰るなら先に言え、言わないなら朝まで一緒に寝てろ、とつっけんどんに言われたのだ。
人間の眠りは長い。脆弱な身体しか持たないから仕方ないのだろう。ガンガディアはそっと起き上がると横に寝ているマトリフを見下ろす。細い肩がむき出しになっていたのでシーツを引き上げた。
781夜を共にしたからといって、なにも朝まで一緒にいなくともよいとガンガディアは思っていた。なので以前に寝たときに夜のうちに帰ったら、次に会ったときに冷たくされた。帰るなら先に言え、言わないなら朝まで一緒に寝てろ、とつっけんどんに言われたのだ。
人間の眠りは長い。脆弱な身体しか持たないから仕方ないのだろう。ガンガディアはそっと起き上がると横に寝ているマトリフを見下ろす。細い肩がむき出しになっていたのでシーツを引き上げた。
なりひさ
DONEマトリフがガンガディアに指輪をあげる話ひとつの指輪「これを、私に?」
ガンガディアは差し出された指輪に驚いた。箱に入れられたわけでも、リボンがかかってるわけでもない指輪は、マトリフの両手の中で鈍く光っている。
「早く受け取れよ。重いんだよこれ」
言われてガンガディアは指輪をつまみ上げる。マトリフは息をつくと肩を回した。ガンガディアにとっては軽いが、小さなマトリフにとっては随分と重かったらしい。
「どうして指輪を?」
「どうしてって、前のは無くしたって言ってただろ」
それは以前にマトリフが指摘したことだった。マトリフとはじめてヨミカイン魔道図書館で出会ったとき、ガンガディアは右手に指輪をしていた。しかしそれ以降は指輪をしているのを見なかったという。ガンガディアはマトリフがそこまで見ていたことに驚いた。ガンガディアはヨミカインでマトリフからベタンを受け、地下深くに落とされた。その拍子に割ってしまったのか、気付いたら指輪は無くなっていた。その事を伝えると、マトリフは興味を失ったように素っ気ない返事をしたのだ。
1828ガンガディアは差し出された指輪に驚いた。箱に入れられたわけでも、リボンがかかってるわけでもない指輪は、マトリフの両手の中で鈍く光っている。
「早く受け取れよ。重いんだよこれ」
言われてガンガディアは指輪をつまみ上げる。マトリフは息をつくと肩を回した。ガンガディアにとっては軽いが、小さなマトリフにとっては随分と重かったらしい。
「どうして指輪を?」
「どうしてって、前のは無くしたって言ってただろ」
それは以前にマトリフが指摘したことだった。マトリフとはじめてヨミカイン魔道図書館で出会ったとき、ガンガディアは右手に指輪をしていた。しかしそれ以降は指輪をしているのを見なかったという。ガンガディアはマトリフがそこまで見ていたことに驚いた。ガンガディアはヨミカインでマトリフからベタンを受け、地下深くに落とされた。その拍子に割ってしまったのか、気付いたら指輪は無くなっていた。その事を伝えると、マトリフは興味を失ったように素っ気ない返事をしたのだ。
なりひさ
DONEアバンはマトリフを訪ねてパプニカ王国へ行くが、マトリフはは既にパプニカを去っていた。アバンはマトリフを探してヨミカイン魔導図書館へ行くが、そこにいたのは青いトロルで……魔導図書館の地下深く アバンがマトリフを訪ねたのはあの戦いから数年後のことだった。最後に会ったときには彼はパプニカの王宮に勤めていた。そのためアバンはパプニカにむかったのだが、そこに彼はいなかった。
アバンにその事を伝えたのは城の衛兵だった。もう辞めたと言われたきり、理由さえ教えてくれない。アバンがなんとか聞き出そうとすると、王の側近という者が出てきた。その者が言うには、マトリフは最初からパプニカ王国に仕える気など無かったのだという。仕事も不真面目、職権の濫用、閲覧禁止の魔導書の持ち出しなどを行なったために追放したという。側近はマトリフが国家を転覆させようとしていたのではないかとまで言った。
アバンはマトリフのことはあの旅の間のことしか知らない。彼が癖のある人物であることは間違いないが、側近の語るような人でないことは理解していた。マトリフは魔王との戦いで我が身を削ってまで正義のために戦ってくれたのだ。
4510アバンにその事を伝えたのは城の衛兵だった。もう辞めたと言われたきり、理由さえ教えてくれない。アバンがなんとか聞き出そうとすると、王の側近という者が出てきた。その者が言うには、マトリフは最初からパプニカ王国に仕える気など無かったのだという。仕事も不真面目、職権の濫用、閲覧禁止の魔導書の持ち出しなどを行なったために追放したという。側近はマトリフが国家を転覆させようとしていたのではないかとまで言った。
アバンはマトリフのことはあの旅の間のことしか知らない。彼が癖のある人物であることは間違いないが、側近の語るような人でないことは理解していた。マトリフは魔王との戦いで我が身を削ってまで正義のために戦ってくれたのだ。
なりひさ
MAIKINGガンマト。ダイを探すポップのためにマトリフは魔界へ通じる道をこじ開ける。そこでマトリフを待っていたのは……。⚠︎ギュータ編ネタバレ含有⚠︎魔界旅路思慕 封印されたギュータの地下深くにマトリフとポップはいた。かつては逢魔窟と呼ばれたそこは禍々しい魔力が澱んでおり、それらが見せる幻影に打ち勝って辿り着いた最深部に、魔界へと繋がる裂け目があった。
「大丈夫かよ、師匠」
ポップは気遣わしげに師を見る。攻撃してくる幻影への反撃に、マトリフはかなり苦戦していた。以前はマァムの父であるロカに担がれて通ったのだと聞いたが、ポップがマトリフを担いでいくには無理があり、二人で背を守りながら裂け目まで来た。しかし体力が限界まできているようで、マトリフは肩で息をしていた。
「……いらねえ心配すんじゃねえ。ここで開けられなきゃ来た意味がねえんだ」
マトリフは裂け目を睨め付ける。二人がここへ来たのは魔界へ行き、ダイを探すためである。マトリフはそのためにギュータの封印を解き、ポップをここまでへ連れてきた。
10858「大丈夫かよ、師匠」
ポップは気遣わしげに師を見る。攻撃してくる幻影への反撃に、マトリフはかなり苦戦していた。以前はマァムの父であるロカに担がれて通ったのだと聞いたが、ポップがマトリフを担いでいくには無理があり、二人で背を守りながら裂け目まで来た。しかし体力が限界まできているようで、マトリフは肩で息をしていた。
「……いらねえ心配すんじゃねえ。ここで開けられなきゃ来た意味がねえんだ」
マトリフは裂け目を睨め付ける。二人がここへ来たのは魔界へ行き、ダイを探すためである。マトリフはそのためにギュータの封印を解き、ポップをここまでへ連れてきた。
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DONEガンマトに巻き込まれたポプReproduce 誰かが洞窟内に入ってきた気配でガンガディアはそちらを見た。洞窟内にはガンガディアひとりきりで、逆光の入り口に立っていたのはマトリフだった。
「もう修行は終わったのかね」
「まあな」
マトリフはポップを連れて修行に出ていた。それは月に数回行われる修行で、いつもならガンガディアもその修行に同行しているのだが、今日は同行を断られていた。
「ポップ君は?」
「あいつなら帰った。用事があるんだとよ」
マトリフはいつもの安楽椅子にどっかりと腰を下ろした。あー疲れた、などとぼやきながら椅子を揺らしている。ガンガディアはそこに僅かな違和感を覚えた。
「食事もせずに帰るとは、よほど急ぎの用事なのだろうか」
いつもは修行が終われば食事をして帰るのが習慣だった。ガンガディアは昼食にと思って作ったスープに目をやってから、眼鏡に手をやる。ふむ、と胸中で呟いてからマトリフを見た。
3230「もう修行は終わったのかね」
「まあな」
マトリフはポップを連れて修行に出ていた。それは月に数回行われる修行で、いつもならガンガディアもその修行に同行しているのだが、今日は同行を断られていた。
「ポップ君は?」
「あいつなら帰った。用事があるんだとよ」
マトリフはいつもの安楽椅子にどっかりと腰を下ろした。あー疲れた、などとぼやきながら椅子を揺らしている。ガンガディアはそこに僅かな違和感を覚えた。
「食事もせずに帰るとは、よほど急ぎの用事なのだろうか」
いつもは修行が終われば食事をして帰るのが習慣だった。ガンガディアは昼食にと思って作ったスープに目をやってから、眼鏡に手をやる。ふむ、と胸中で呟いてからマトリフを見た。
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MAIKINGガンマトとハドポプが混在している世界線のお話の続きです。マトポプは師弟愛です。ひたすらしゃべってるだけです。ダイ大原作と獄炎のネタバレを含んでおりますので、閲覧の際には十分にご注意くださいませ。
捏造と妄想がかなり激しいです。いわゆる、何でも許せる人向け、となっております。
このシリーズは一旦ここで完結という形を取らせていただこうと思います。続きを待ってくれておりましたなら申し訳ないです……。
大魔道士のカミングアウト 5 「――ハドラー様は10年前の大戦にて亡くなられたと聞き及んでいたのだが」
本日二度目のガラスの割れる音を聞いた後、ガンガディアから至って冷静に尋ねられたポップは一瞬逡巡して、ゆっくりと頷いた。
「ああ、死んだよ。跡形もなく消えちまった」
さすがにこのまま放置しておくのは危ないからと、二人が割ってしまったコップの残骸を箒で一箇所に掻き集めたポップは片方の指先にメラを、もう片方の指先にヒャドを作り出し、ちょんと両方を突き合わせた。途端にスパークしたそれは眩い閃光を放ち、ガラスの残骸は一瞬で消滅した。
「そうか……ハドラー様は君のメドローアで……」
なんともいえない顔でガンガディアはそう言ったが、ポップは「は?」と怪訝な顔をして振り返った。
7747本日二度目のガラスの割れる音を聞いた後、ガンガディアから至って冷静に尋ねられたポップは一瞬逡巡して、ゆっくりと頷いた。
「ああ、死んだよ。跡形もなく消えちまった」
さすがにこのまま放置しておくのは危ないからと、二人が割ってしまったコップの残骸を箒で一箇所に掻き集めたポップは片方の指先にメラを、もう片方の指先にヒャドを作り出し、ちょんと両方を突き合わせた。途端にスパークしたそれは眩い閃光を放ち、ガラスの残骸は一瞬で消滅した。
「そうか……ハドラー様は君のメドローアで……」
なんともいえない顔でガンガディアはそう言ったが、ポップは「は?」と怪訝な顔をして振り返った。
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MAIKINGガンマトとハドポプが混在している世界線のお話の続きです。マトポプは師弟愛です。ダイ大原作と獄炎のネタバレを含んでおりますので、閲覧の際にはご注意くださいませ。
捏造と妄想がかなり激しいです。いわゆる、何でも許せる人向け、となっております。更新は少しずつになってしまいます。あしがらず。
大魔道士のカミングアウト 4 恋愛相談。
弟子の台詞を聞いたマトリフの脳内にいくつかの顔が浮かんだが、続いた台詞でその全てが除外されることとなった。
「あ、因みに相手は男なんで」
マジかよ。マトリフは思った。
「マジかよ」
そのまま声にも出てしまった。唖然とするマトリフにさらなる追撃が襲いかかる。
「んでもって人間でもなかったりする」
「……ポップ」
「ん?」
「ちょっとそこ座れ。正座」
「……わかった」
マトリフの真剣な声に、ポップは一瞬怯んだがギュッと胸元を握りしめる手に力を込めて、勇気を出して一歩を踏み出した。
「オメーは部屋から出ていけガンガディア」
「……」
不満をありありと表す顔をしてガンガディアはそれでも言われた通りに身体を起こしてマトリフから離れた。寝室の出入り口に向かう途中でポップとすれ違う。その時、
5640弟子の台詞を聞いたマトリフの脳内にいくつかの顔が浮かんだが、続いた台詞でその全てが除外されることとなった。
「あ、因みに相手は男なんで」
マジかよ。マトリフは思った。
「マジかよ」
そのまま声にも出てしまった。唖然とするマトリフにさらなる追撃が襲いかかる。
「んでもって人間でもなかったりする」
「……ポップ」
「ん?」
「ちょっとそこ座れ。正座」
「……わかった」
マトリフの真剣な声に、ポップは一瞬怯んだがギュッと胸元を握りしめる手に力を込めて、勇気を出して一歩を踏み出した。
「オメーは部屋から出ていけガンガディア」
「……」
不満をありありと表す顔をしてガンガディアはそれでも言われた通りに身体を起こしてマトリフから離れた。寝室の出入り口に向かう途中でポップとすれ違う。その時、
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MAIKINGガンマトとハドポプが混在している世界線のお話です。マトポプは師弟愛です。ダイ大原作と獄炎のネタバレを含んでおりますので、閲覧の際には十分にご注意くださいませ。
捏造と妄想がかなり激しいです。いわゆる、何でも許せる人向け、となっております。更新は少しずつになってしまいます。あしからず。
大魔道士のカミングアウト 3 元魔王軍。そう聞いた場合に多くの者が真っ先に思い浮かぶのは大魔王バーンを頂点とした10年前に勇者ダイが討滅した魔王軍だろう。しかし、マトリフが先程言った“元魔王軍”はそうではないことをポップは理解していた。
「元魔王軍……それって……つまり……」
その先に続く言葉を、その名を、声に出して発するには、この時のポップには些か勇気が必要だった。
ポップの意を汲んだわけではないがマトリフがひとつ頷き、
「ああ。ハドラーが魔王として君臨していた時の魔王軍のことだ」
そう続けた。
息を呑むポップ。緊張で震えそうになった手を思い切り握り締めた。ちゃぶ台の下で行われているそのような葛藤の様相など知る由もないマトリフとガンガディアは懐かしむように互いに顔を見合わせる。
5400「元魔王軍……それって……つまり……」
その先に続く言葉を、その名を、声に出して発するには、この時のポップには些か勇気が必要だった。
ポップの意を汲んだわけではないがマトリフがひとつ頷き、
「ああ。ハドラーが魔王として君臨していた時の魔王軍のことだ」
そう続けた。
息を呑むポップ。緊張で震えそうになった手を思い切り握り締めた。ちゃぶ台の下で行われているそのような葛藤の様相など知る由もないマトリフとガンガディアは懐かしむように互いに顔を見合わせる。
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MAIKINGガンマトとハドポプが混在している世界線のマトポプ(師弟愛)のお話の続きです。ガンマトの事後要素が少しだけあります。直接的な描写はありません。
今回もハドポプ要素はありません。ハドが出てこないせいでガンマト+巻き込まれポプみたいなお話になっています。
ダイ大原作と獄炎のネタバレを含んでおります。捏造と妄想が激しい産物です。何でも許せる人向け、となっております。
大魔道士のカミングアウト 2 「お初にお目にかかる。私はデストロールのガンガディア。大魔道士マトリフの弟子、ポップよ。君のことはマトリフから聞いているよ。是非会ってみたいと思っていた。まあマトリフがなかなか会わせてはくれなかったがね。会えて嬉しいよ」
「はあ……どうも」
礼儀正しく自己紹介をされてポップは拍子抜けしつつも片手を後頭部に置いてペコリと会釈を返した。
マトリフから聞いていたという台詞で、ポップは横目でちらりとマトリフへと視線を向ける。見るからに嫌そうな顔をしているマトリフ。それが仮にも恋人に対する表情なのかと思うと再び混乱してきそうだったが、しかしそれよりも気になるべきことがポップにはあった。
「……コイツが、師匠の……恋人……」
4113「はあ……どうも」
礼儀正しく自己紹介をされてポップは拍子抜けしつつも片手を後頭部に置いてペコリと会釈を返した。
マトリフから聞いていたという台詞で、ポップは横目でちらりとマトリフへと視線を向ける。見るからに嫌そうな顔をしているマトリフ。それが仮にも恋人に対する表情なのかと思うと再び混乱してきそうだったが、しかしそれよりも気になるべきことがポップにはあった。
「……コイツが、師匠の……恋人……」
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MAIKINGガンマトとハドポプが混在している世界線のマトポプ(師弟愛)のお話です。ガンマトの事後要素が少しだけあります。直接的な描写はありません。
今回はハドポプ要素はありません。
ダイ大原作最終回と獄炎のネタバレを含んでおりますので、閲覧の際には十分にご注意くださいませ。
捏造と妄想の産物です。いわゆる、何でも許せる人向け、となっております。あしからず。
大魔道士のカミングアウト 1 「……は?」
そう広くはない洞窟内にその声は大きく響いた。あまりにも間の抜けたそれは僅かな余韻を残したが、空気に完全に溶け込んで消えるまで時間はそうかからなかった。弟子の視線から逃れるようにマトリフは顔を背けた。なんというタイミングの悪さだと嘆いたところで、もう遅い。この弟子は察しが良い。なんせ人間にしては長い生涯において唯一の、最初で最後の、自慢の弟子だ。
「え、師匠……うそだろ……?」
そんな今や世間では二代目大魔道士と呼ばれている弟子――ポップの驚愕の色がありありと浮かぶ台詞に、うそだ、とすぐさま答えられたならどんなによかったかと、マトリフは目元を片手で覆って深い溜息を吐き出した。
ポップが息を呑む。マトリフの反応が、事実なのだと告げていたからだ。
5773そう広くはない洞窟内にその声は大きく響いた。あまりにも間の抜けたそれは僅かな余韻を残したが、空気に完全に溶け込んで消えるまで時間はそうかからなかった。弟子の視線から逃れるようにマトリフは顔を背けた。なんというタイミングの悪さだと嘆いたところで、もう遅い。この弟子は察しが良い。なんせ人間にしては長い生涯において唯一の、最初で最後の、自慢の弟子だ。
「え、師匠……うそだろ……?」
そんな今や世間では二代目大魔道士と呼ばれている弟子――ポップの驚愕の色がありありと浮かぶ台詞に、うそだ、とすぐさま答えられたならどんなによかったかと、マトリフは目元を片手で覆って深い溜息を吐き出した。
ポップが息を呑む。マトリフの反応が、事実なのだと告げていたからだ。