なりひさ
DONEガンマト。デトロイトビカムヒューマンのパロ。ガンガディアがアンドロイドで、画家のマトリフを介護している。善の鼓動善の鼓動
「おはようマトリフ」
言いながらカーテンを開けた。太陽は既に高い位置にある。背後のベッドからは呻き声が聞こえた。マトリフは日光を遮るように手を上げてから寝返りをうった。
「もう十時を過ぎている。さっき画材屋から絵具を受け取ってきた。昼からは小雨が降るそうだ」
「二度寝日和だな」
私はベッドサイドに移動してコップに水を注ぐ。そばにあった薬と一緒にマトリフに差し出した。
「さあ飲んで」
「どうだ、お前も一緒に二度寝しないか」
マトリフは差し出した薬を無視して私を誘う。だがそれに応じては駄目だと瞬時に判断した。
「薬を飲んで」
「ふん」
マトリフはぼやきながら薬を手に取って水で流し込んだ。マトリフは長年の病気のせいで心臓が悪い。時間通りに服薬させることも私の仕事のひとつだった。
33718「おはようマトリフ」
言いながらカーテンを開けた。太陽は既に高い位置にある。背後のベッドからは呻き声が聞こえた。マトリフは日光を遮るように手を上げてから寝返りをうった。
「もう十時を過ぎている。さっき画材屋から絵具を受け取ってきた。昼からは小雨が降るそうだ」
「二度寝日和だな」
私はベッドサイドに移動してコップに水を注ぐ。そばにあった薬と一緒にマトリフに差し出した。
「さあ飲んで」
「どうだ、お前も一緒に二度寝しないか」
マトリフは差し出した薬を無視して私を誘う。だがそれに応じては駄目だと瞬時に判断した。
「薬を飲んで」
「ふん」
マトリフはぼやきながら薬を手に取って水で流し込んだ。マトリフは長年の病気のせいで心臓が悪い。時間通りに服薬させることも私の仕事のひとつだった。
なりひさ
DONEガンマト。カラー表紙のプールにいる目隠し束縛マトリフとガンガディアプール 若者のはしゃぐ声が聞こえる。跳ねる水音は軽やかだった。陽射しはさんさんと降り注ぎ、夏の匂いが漂っていた。
だがマトリフの視界は真っ暗に閉ざされていた。腕は胴体ごと縛られている。その姿は楽しげなプールサイドには似つかわしくないものだったが、自業自得でもあった。
アバンたちは揃ってプールに来ていた。知り合いからオープン前に誘われて、貸切状態で遊んでいたのだ。マトリフも水着を着て遊ぶのかと思いきや、プールサイドに陣取って、目の保養とばかりににやけて若者たちの水着姿を眺めていた。だがその視線だけでも御用となった。マトリフは目隠しをされた上にチェアに縛り付けられてしまった。
「ちぇっ……」
せっかくの楽しみを奪われてマトリフは不貞腐れた。そのマトリフに影が差す。マトリフも気配に気づいて顔を上げた。
968だがマトリフの視界は真っ暗に閉ざされていた。腕は胴体ごと縛られている。その姿は楽しげなプールサイドには似つかわしくないものだったが、自業自得でもあった。
アバンたちは揃ってプールに来ていた。知り合いからオープン前に誘われて、貸切状態で遊んでいたのだ。マトリフも水着を着て遊ぶのかと思いきや、プールサイドに陣取って、目の保養とばかりににやけて若者たちの水着姿を眺めていた。だがその視線だけでも御用となった。マトリフは目隠しをされた上にチェアに縛り付けられてしまった。
「ちぇっ……」
せっかくの楽しみを奪われてマトリフは不貞腐れた。そのマトリフに影が差す。マトリフも気配に気づいて顔を上げた。
なりひさ
DONEガンマト。キギロに恋愛相談をするマトリフの話恋愛相談 キギロは空を見上げる。丸く囲まれた空は、今日も青かった。
キギロは挿木だ。地底魔城へと下りる階段の、ちょっとした隙間に植わっている。まだ小さいために自由に歩くことも出来ない。だから日がな一日空を見上げるくらいしかする事がない。だから話し相手は大歓迎で、少々気に入らない相手でもいいから暇潰しに話をしたいくらいだった。
だが、誰でもいいというわけではない。例えば、今こちらに歩いて来ている人間なんてもってのほかだった。
「よお、雑草」
大魔道士と呼ばれる人間がキギロを見下ろして言った。キギロは小さな手を握り締める。
「もしそれがボクを呼んだのだとしたら許さないよ」
大魔道士はキギロの言葉を気にする風もなく隣に腰を下ろした。大魔道士は帽子を脱ぐとクッション代わりに背に置いている。
5931キギロは挿木だ。地底魔城へと下りる階段の、ちょっとした隙間に植わっている。まだ小さいために自由に歩くことも出来ない。だから日がな一日空を見上げるくらいしかする事がない。だから話し相手は大歓迎で、少々気に入らない相手でもいいから暇潰しに話をしたいくらいだった。
だが、誰でもいいというわけではない。例えば、今こちらに歩いて来ている人間なんてもってのほかだった。
「よお、雑草」
大魔道士と呼ばれる人間がキギロを見下ろして言った。キギロは小さな手を握り締める。
「もしそれがボクを呼んだのだとしたら許さないよ」
大魔道士はキギロの言葉を気にする風もなく隣に腰を下ろした。大魔道士は帽子を脱ぐとクッション代わりに背に置いている。
なりひさ
DONEガンマト。凍れる時間の秘法期間の二人。仲良くないバージョン。原作程度のマトリフの吐血あり。溶けない氷 マトリフは膨大な魔法力が無意味なまま霧散するのを感じた。もっとも、この呪文でも凍りついた勇者を救えないとわかっていた。だがもし万が一、ほんの少しでも可能性があるならと、縋るような気持ちで呪文を唱えたのだ。
勇者アバンは寸分違わない状態でそこに立っていた。マトリフは震える手を握りしめる。強大な威力の呪文はマトリフの手を焼いていった。その肉が焦げた匂いが鼻につく。回復呪文をかけなければと頭では思いながら、膝の力が抜けてその場にしゃがみ込んだ。
焼け爛れた手のひらを見つめる。こんなことをしたって、アバンは救えない。
「ッ……!」
マトリフは急に息苦しさを感じて胸元を掴んだ。内臓が締め付けられるような感覚に体を丸める。それが先ほど使った呪文のせいだとわかっていた。この呪文は人間が使えるものではない。その強大さは人間の肉体には負荷が大きすぎるからだ。
1815勇者アバンは寸分違わない状態でそこに立っていた。マトリフは震える手を握りしめる。強大な威力の呪文はマトリフの手を焼いていった。その肉が焦げた匂いが鼻につく。回復呪文をかけなければと頭では思いながら、膝の力が抜けてその場にしゃがみ込んだ。
焼け爛れた手のひらを見つめる。こんなことをしたって、アバンは救えない。
「ッ……!」
マトリフは急に息苦しさを感じて胸元を掴んだ。内臓が締め付けられるような感覚に体を丸める。それが先ほど使った呪文のせいだとわかっていた。この呪文は人間が使えるものではない。その強大さは人間の肉体には負荷が大きすぎるからだ。
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DONEガンマト。謎平和時空。ガンマトの痴話喧嘩に巻き込まれる地底魔城の旧魔王軍とアバン先生痴話喧嘩「君にはデリカシーというものがないのか」
ガンガディアは羞恥と怒りを滲ませてマトリフに言う。聞こえているにも関わらず、マトリフにはガンガディアの気持ちは少しも伝わっていないようだった。それどころかガンガディアがなぜ声を荒げているのか理解できないというように、耳に指を入れて面倒臭そうにガンガディアを見上げている。
「なんで怒るんだよ」
「言い方というものがあるだろう」
「インテリに付き合ってられっかよ」
マトリフは鼻で笑うとそっぽ向いてしまった。だが今回はガンガディアも引き下がれない。ガンガディアは踵を返すと洞窟の出入り口へと向かった。
「どこ行くんだよ」
マトリフの声は大きくはないのに洞窟に響いた。その声音に「行くな」という意味が込められていると知りながら、ガンガディアは足を止めなかった。なぜなら今回は明らかにマトリフが悪いからだ。
8277ガンガディアは羞恥と怒りを滲ませてマトリフに言う。聞こえているにも関わらず、マトリフにはガンガディアの気持ちは少しも伝わっていないようだった。それどころかガンガディアがなぜ声を荒げているのか理解できないというように、耳に指を入れて面倒臭そうにガンガディアを見上げている。
「なんで怒るんだよ」
「言い方というものがあるだろう」
「インテリに付き合ってられっかよ」
マトリフは鼻で笑うとそっぽ向いてしまった。だが今回はガンガディアも引き下がれない。ガンガディアは踵を返すと洞窟の出入り口へと向かった。
「どこ行くんだよ」
マトリフの声は大きくはないのに洞窟に響いた。その声音に「行くな」という意味が込められていると知りながら、ガンガディアは足を止めなかった。なぜなら今回は明らかにマトリフが悪いからだ。
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DONEヨミカイン魔導図書館を復興させているガンマトのちょっとしたお話です。#まおしゅうアフター
一般参加してました(*´ω`*)お疲れ様でした。
人間として生きる時間の輪から外れてマトリフは若い身体に宿った強大な魔力を持て余すように日々魔法を行使していた。何百年も前に破壊されたヨミカイン魔導図書館を復興させる目的を掲げているために長い人生もそう退屈なものとは感じない。むしろ海辺の洞窟で隠居生活をしていた頃に比べれば随分と忙しいくらいだ。マトリフは今も隠居しているようなものだがその生活はガンガディアと共にある。敵同士だった二人はいつしか恋仲となり、これから先の長い時間を一緒に生きていくことを誓った。仲睦まじくも時に喧嘩もしたりと。
「ベタン!!」
ドゴォン!!と派手な轟音をたてて床が突き抜けた。親指を下に突きつけて息巻くマトリフ。昔とは違い老いによる疲労ではなくこの時のマトリフは怒り心頭であったのだ。
1832「ベタン!!」
ドゴォン!!と派手な轟音をたてて床が突き抜けた。親指を下に突きつけて息巻くマトリフ。昔とは違い老いによる疲労ではなくこの時のマトリフは怒り心頭であったのだ。
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DONEガンマト。現パロの二人のループ8/8 八月八日、日曜日。今日も良い天気だ。カーテンの隙間からは早朝とは思えない陽射しが入り込んでいる。
隣のマトリフはまだ熟睡している。あと十分ほどで目を覚ますだろう。急ぐ理由もないから目覚めるのを待った。今日も暑い一日になる。室温計は二十七度。管理された空調は快適な室温を保っていた。
「……もう起きてんのか」
ややあってかけられた声に、私は横を見る。まだ寝ぼけ眼のマトリフが私を見ていた。その身体を抱き寄せる。寝癖のついた銀髪に口付ければ、マトリフは大きな欠伸をした。
「飯なんかあったか?」
「フレンチトーストにしようかと」
「お、それちょうど食いたかった」
私が朝食を作っている間にマトリフはベランダの植物たちに水をやっていた。マトリフは植木鉢に話しかけている。天気の話をしたかと思えば、昨日観た映画の話へと移った。マトリフは昨夜観た映画のラストが気に入っていない。そういえばなんの映画を観ていたのだったか。
18058隣のマトリフはまだ熟睡している。あと十分ほどで目を覚ますだろう。急ぐ理由もないから目覚めるのを待った。今日も暑い一日になる。室温計は二十七度。管理された空調は快適な室温を保っていた。
「……もう起きてんのか」
ややあってかけられた声に、私は横を見る。まだ寝ぼけ眼のマトリフが私を見ていた。その身体を抱き寄せる。寝癖のついた銀髪に口付ければ、マトリフは大きな欠伸をした。
「飯なんかあったか?」
「フレンチトーストにしようかと」
「お、それちょうど食いたかった」
私が朝食を作っている間にマトリフはベランダの植物たちに水をやっていた。マトリフは植木鉢に話しかけている。天気の話をしたかと思えば、昨日観た映画の話へと移った。マトリフは昨夜観た映画のラストが気に入っていない。そういえばなんの映画を観ていたのだったか。
なりひさ
DONEガンマト。ムギサンの漫画を小説にしたもの銀雪 久しぶりに会ったマトリフはガンガディアを見て笑みを浮かべた。しかし彼はベッドに座ったままで、見慣れた法衣も着ていない。彼の体調が思わしくないのだと気付き、ガンガディアは表情を曇らせた。
「どうしたんだよ。こっち来いよ」
マトリフは苦笑して手招きする。その横に緑の服を着た少年がいて、驚いたようにガンガディアを見上げていた。
「え……師匠……知り合いかい?」
少年はマトリフを見る。マトリフは可笑そうにくつくつと笑い、少年にガンガディアを紹介した。マトリフはガンガディアにも少年を紹介し、その少年が弟子だと言った。すると少年は人懐っこくガンガディアに話しかけてくる。その様子にガンガディアは軽やかな意外性を感じた。
1006「どうしたんだよ。こっち来いよ」
マトリフは苦笑して手招きする。その横に緑の服を着た少年がいて、驚いたようにガンガディアを見上げていた。
「え……師匠……知り合いかい?」
少年はマトリフを見る。マトリフは可笑そうにくつくつと笑い、少年にガンガディアを紹介した。マトリフはガンガディアにも少年を紹介し、その少年が弟子だと言った。すると少年は人懐っこくガンガディアに話しかけてくる。その様子にガンガディアは軽やかな意外性を感じた。
なりひさ
DONEガンマト。現パロ。知育菓子を買う二人知育菓子 二人揃って食材を買いに出た夕方。家から徒歩で向かったスーパーは、同じように夕食を買いに来た人で賑わっていた。
何を食べようか等と話しながら冷房の効いた店内を歩く。ガンガディアは長い名前の料理名をいくつかあげた。ガンガディアは中々の凝り性で、料理も複雑な工程のものでも嬉々として作る。ガンガディアの料理の説明を聞きながら、じゃあ焼き魚がいいとマトリフは答えた。
そのまま店内をぐるりと回ろうとしていたら、ガンガディアが調味料を見てくると言うので、マトリフは酒を見に行った。しばらく新商品を眺めていたのだが待ってもガンガディアが戻ってこない。
マトリフは手にいくつかビール缶を持ちながらガンガディアを探した。カゴはガンガディアが持っている。いくつかのコーナーを回ってからマトリフはようやくガンガディアを見つけた。ガンガディアは菓子の棚の前で直立したまま何かを手にしている。しかもそこは幼児向けの菓子が置かれた棚だった。
1772何を食べようか等と話しながら冷房の効いた店内を歩く。ガンガディアは長い名前の料理名をいくつかあげた。ガンガディアは中々の凝り性で、料理も複雑な工程のものでも嬉々として作る。ガンガディアの料理の説明を聞きながら、じゃあ焼き魚がいいとマトリフは答えた。
そのまま店内をぐるりと回ろうとしていたら、ガンガディアが調味料を見てくると言うので、マトリフは酒を見に行った。しばらく新商品を眺めていたのだが待ってもガンガディアが戻ってこない。
マトリフは手にいくつかビール缶を持ちながらガンガディアを探した。カゴはガンガディアが持っている。いくつかのコーナーを回ってからマトリフはようやくガンガディアを見つけた。ガンガディアは菓子の棚の前で直立したまま何かを手にしている。しかもそこは幼児向けの菓子が置かれた棚だった。
なりひさ
DONEガンマト「時の砂」その後の蛇足。弟子に会いたくて未来へ来ちゃったバルゴートなにこれ修羅場じゃん ポップは焼きたてのパイを持ってルーラで降り立った。アバンの料理教室で作った自信作である。折角なのでマトリフと一緒に食べようと温かいうちに持ってきた。
「師匠ぉ〜ガンガディアのおっさん〜お邪魔するぜ」
呼びかけながら入り口をくぐる。しかしいつもなら返ってくる返事がなかった。人の気配はするのに返事が無いとは、来るタイミングが悪かったのだろうか。ポップはそろりと奥を覗く。
「えっと、これどういう状況?」
ポップは目の前の光景に頭にハテナをいくつも浮かべながら訊ねた。
まずガンガディアがマトリフの肩を抱いている。優しく、というより、まるで取られまいとするようにきつく掴んでいた。ガンガディアは額に血管を浮かべてガチギレ五秒前といった雰囲気だ。そのガンガディアに肩を抱かれたマトリフは諦念の表情で遠くを見ている。そしてその二人と向かい合うように老人が座っていた。ポップが驚いたのはその姿だ。その老人はマトリフと同じ法衣を着ている。かなりやんちゃな髭を生やしており、片目は布で覆われていた。その老人がポップへと視線をやると立ち上がった。
2209「師匠ぉ〜ガンガディアのおっさん〜お邪魔するぜ」
呼びかけながら入り口をくぐる。しかしいつもなら返ってくる返事がなかった。人の気配はするのに返事が無いとは、来るタイミングが悪かったのだろうか。ポップはそろりと奥を覗く。
「えっと、これどういう状況?」
ポップは目の前の光景に頭にハテナをいくつも浮かべながら訊ねた。
まずガンガディアがマトリフの肩を抱いている。優しく、というより、まるで取られまいとするようにきつく掴んでいた。ガンガディアは額に血管を浮かべてガチギレ五秒前といった雰囲気だ。そのガンガディアに肩を抱かれたマトリフは諦念の表情で遠くを見ている。そしてその二人と向かい合うように老人が座っていた。ポップが驚いたのはその姿だ。その老人はマトリフと同じ法衣を着ている。かなりやんちゃな髭を生やしており、片目は布で覆われていた。その老人がポップへと視線をやると立ち上がった。
なりひさ
DONEガンマト。診断メーカーのお題で書いたもの。飼育「ただいま」
ガンガディアは言いながら自室のドアを開けた。すぐドアを閉めて小さな姿を探す。部屋はしんと静まりかえっていた。
「大魔道士?」
マトリフにはこの地底魔城のガンガディアの私室を自由に使わせている。マトリフはすぐに顔を見せた。ベッドのシーツに潜り込んでいたらしい。マトリフはそこから抜け出すと、飛翔呪文で飛んでガンガディアのところまできた。
「なにも問題なかったかね?」
マトリフはこくりと頷いてガンガディアの肩に座った。ガンガディアは指をマトリフに向ける。その指はマトリフの歯型だらけだった。
マトリフはガンガディアの指に頬を擦り寄せる。今日は噛まないのだろうかとガンガディアが思っていると、マトリフはかぱっと口を開けてガンガディアの指に噛み付いた。ピリリと痛みが走る。マトリフは口を離すと歯型を確認してからそこを舌で舐めた。それはマトリフなりの愛情表現なのだとガンガディアは思っていた。
1206ガンガディアは言いながら自室のドアを開けた。すぐドアを閉めて小さな姿を探す。部屋はしんと静まりかえっていた。
「大魔道士?」
マトリフにはこの地底魔城のガンガディアの私室を自由に使わせている。マトリフはすぐに顔を見せた。ベッドのシーツに潜り込んでいたらしい。マトリフはそこから抜け出すと、飛翔呪文で飛んでガンガディアのところまできた。
「なにも問題なかったかね?」
マトリフはこくりと頷いてガンガディアの肩に座った。ガンガディアは指をマトリフに向ける。その指はマトリフの歯型だらけだった。
マトリフはガンガディアの指に頬を擦り寄せる。今日は噛まないのだろうかとガンガディアが思っていると、マトリフはかぱっと口を開けてガンガディアの指に噛み付いた。ピリリと痛みが走る。マトリフは口を離すと歯型を確認してからそこを舌で舐めた。それはマトリフなりの愛情表現なのだとガンガディアは思っていた。
kisaragi_hotaru
DONEガンマト前提で破邪の洞窟内でわちゃわちゃしてるポプとラーとヒムちゃんのお話です。ネタバレ捏造妄想満載なのでご容赦くださいm(_ _)m ズドォン、と相当な重量音を轟かせて巨大なモンスターが地に沈んだ。
完全に動かなくなったモンスターの側でたった今決め手の一撃を食らわせた人型の金属生命体が銀色の拳を振り翳して声を上げた。
「よっしゃあ!!」
「ナイスだぜヒム!!」
少し離れたところからポップが嬉々として声をかければヒムが振り返って鼻を指先で擦りながら「へへっ」と笑う。
「おめえのサポートのおかげだぜ。ありがとよポップ」
「確かに。あのままではオレもコイツもこのモンスターに手傷を負わされていたところだった」
ヒムの側で魔槍を携えて軽く息を吐き出しながらそう言ったのはラーハルトだ。その目線は屍と化したモンスターを見下ろしている。
ここは破邪の洞窟。その最下層近くまでポップたちは来ていた。大魔王との決戦からすでに20年の年月が経っていた。行方知れずになっていた小さな勇者が魔界から地上に帰還してからしばらくは慌ただしい日々を過ごしていたが、今は至って平穏な日常が繰り返される世界となっている。
4578完全に動かなくなったモンスターの側でたった今決め手の一撃を食らわせた人型の金属生命体が銀色の拳を振り翳して声を上げた。
「よっしゃあ!!」
「ナイスだぜヒム!!」
少し離れたところからポップが嬉々として声をかければヒムが振り返って鼻を指先で擦りながら「へへっ」と笑う。
「おめえのサポートのおかげだぜ。ありがとよポップ」
「確かに。あのままではオレもコイツもこのモンスターに手傷を負わされていたところだった」
ヒムの側で魔槍を携えて軽く息を吐き出しながらそう言ったのはラーハルトだ。その目線は屍と化したモンスターを見下ろしている。
ここは破邪の洞窟。その最下層近くまでポップたちは来ていた。大魔王との決戦からすでに20年の年月が経っていた。行方知れずになっていた小さな勇者が魔界から地上に帰還してからしばらくは慌ただしい日々を過ごしていたが、今は至って平穏な日常が繰り返される世界となっている。
kisaragi_hotaru
DONEガンマト(+巻き込まれポプ要素含む)ガンガさんの眼鏡とか耳とかがあれなことになるの書いてみたかっただけの超絶短文です。ガンガさんの視力が悪い設定です。
「……これはオレが悪いのか……?」
ポツリと呟かれた声は不機嫌なもの。あいにくと顔はぼやけて見えないのでガンガディアは相手――大魔道士マトリフの心身の状態をその声色のみで判断するしかない。
ほんの少しだけ痛む顔はそのままにガンガディアはむしろ自分の痛みなどよりもよほど気にするべき相手の様子に、困惑した別の感情的な意味を持って眉間に皺を寄せた。
マトリフの手にはガンガディアのかけていた眼鏡がある。ガンガディアにとっては小さいがマトリフにとってはけっこうな大きさの眼鏡。ただし、それはレンズが割れてしまっていた。つい先程のことだ。マトリフの放ったバギマがガンガディアの顔面に見事にクリティカルヒットした。故の眼鏡の末路である。
1488ポツリと呟かれた声は不機嫌なもの。あいにくと顔はぼやけて見えないのでガンガディアは相手――大魔道士マトリフの心身の状態をその声色のみで判断するしかない。
ほんの少しだけ痛む顔はそのままにガンガディアはむしろ自分の痛みなどよりもよほど気にするべき相手の様子に、困惑した別の感情的な意味を持って眉間に皺を寄せた。
マトリフの手にはガンガディアのかけていた眼鏡がある。ガンガディアにとっては小さいがマトリフにとってはけっこうな大きさの眼鏡。ただし、それはレンズが割れてしまっていた。つい先程のことだ。マトリフの放ったバギマがガンガディアの顔面に見事にクリティカルヒットした。故の眼鏡の末路である。
なりひさ
DONEガンマト。過去に戻って若マトに出会うガンガディアの話。作業用BGM「ふたつの星」「絶対証明ロック」時の砂 降り立ったのは雲の上の里だった。ガンガディアはマトリフの魔法力を辿ってここまでやってきた。
突然に降り立ったガンガディアに里の者たちは目を丸くさせた。見ればマトリフが着ていた法衣とよく似たものを着ている。
ガンガディアは時の砂を使って過去へと来ていた。だがマトリフの洞窟はただの岩場で、マトリフの姿は見当たらなかった。それからガンガディアはマトリフの魔法力を辿ってここまで来た。
「大魔道士を探している」
ガンガディアは敵意がない事を示そうと両の手のひらを見せた。しかしその場にいた数人の里の者は、ガンガディアに向かって呪文を放っていた。
「バルゴート様を呼べ!」
指示が飛び、騒ぎが大きくなっていく。里の者は次々と呪文を撃ってきた。それもかなりレベルの高い呪文ばかりだ。ガンガディアはそれらを避けたり相殺しながら耐える。
12267突然に降り立ったガンガディアに里の者たちは目を丸くさせた。見ればマトリフが着ていた法衣とよく似たものを着ている。
ガンガディアは時の砂を使って過去へと来ていた。だがマトリフの洞窟はただの岩場で、マトリフの姿は見当たらなかった。それからガンガディアはマトリフの魔法力を辿ってここまで来た。
「大魔道士を探している」
ガンガディアは敵意がない事を示そうと両の手のひらを見せた。しかしその場にいた数人の里の者は、ガンガディアに向かって呪文を放っていた。
「バルゴート様を呼べ!」
指示が飛び、騒ぎが大きくなっていく。里の者は次々と呪文を撃ってきた。それもかなりレベルの高い呪文ばかりだ。ガンガディアはそれらを避けたり相殺しながら耐える。
kisaragi_hotaru
DONEガンマト小説。お互い自覚してるけど敵同士なので気持ちを打ち明けられないまま殺す気のない戦いをしてる茶番劇。この後めちゃくちゃ赤面してるマトもいたりする。 森の中で魔王軍の襲撃に合い交戦となった。躊躇うことなくマトリフへと向かって来たガンガディアの攻撃を避けながらマトリフはトベルーラを使い木々の間を器用に駆け抜けていく。しかし器用さはガンガディアも十分に持ち合わせており不敵な笑みを浮かべながらマトリフの後方から追い上げていく。初めてサババの町中でそうしたようにその後も何度もトベルーラで追い追われを繰り返していた。
しつけえな、とマトリフは内心で呟きながら少しでも仲間たちから引き離すためにスピードを上げた。魔法力には自信があるが体力に関してはそうでもない。自他ともに認めるところであるそれを思いながらマトリフは舌打ちしつつ肩越しにガンガディアを見遣る。
2916しつけえな、とマトリフは内心で呟きながら少しでも仲間たちから引き離すためにスピードを上げた。魔法力には自信があるが体力に関してはそうでもない。自他ともに認めるところであるそれを思いながらマトリフは舌打ちしつつ肩越しにガンガディアを見遣る。
なりひさ
DONEガンマト。幼児化したマトリフの話小さな頃に見たもの アバンはマトリフに会うために海岸沿いに降り立った。穏やかな気候は心地よい潮風を運んでくる。
アバンが洞窟の入り口へと向かっていると大きな声が聞こえた。それは子供特有の柔らかくも甲高い声で、悲鳴のようだった。アバンは声のしたほうへと急ぐ。だがその声はどうやらマトリフの洞窟から聞こえていた。
「どうしたんですか!」
アバンは言いながら洞窟に駆け込む。すると今ではすっかり馴染みとなったガンガディアが困り果てたようにアバンを見た。その顔が半分凍っている。小さな子どもがガンガディアの耳を掴んでぶら下がり、ガンガディアに向かってヒャドを唱えていた。まだ五つか六つほどの歳だろうか。淡い色の髪で手足が棒のように細い。
7546アバンが洞窟の入り口へと向かっていると大きな声が聞こえた。それは子供特有の柔らかくも甲高い声で、悲鳴のようだった。アバンは声のしたほうへと急ぐ。だがその声はどうやらマトリフの洞窟から聞こえていた。
「どうしたんですか!」
アバンは言いながら洞窟に駆け込む。すると今ではすっかり馴染みとなったガンガディアが困り果てたようにアバンを見た。その顔が半分凍っている。小さな子どもがガンガディアの耳を掴んでぶら下がり、ガンガディアに向かってヒャドを唱えていた。まだ五つか六つほどの歳だろうか。淡い色の髪で手足が棒のように細い。
kisaragi_hotaru
DONE無自覚のままであろうとした両片想いガンマトが自覚させられるお話。欠損描写がありますが最終的には治りますけれど苦手な方はご注意くださいませ。謎時空なので深く突っ込んではいけない系です。魔王は祈りの間にて引きこもり中です。 乱戦状態だった。一人ずつ探して回復していったのでは間に合わない。マトリフは冷静さを保ちながら素早く周囲を見回して、次いで傍らでモンスターを殴り飛ばしたブロキーナに視線を向ける。最近習得したばかりの回復呪文を使うにしても発動中は無防備になってしまう。詠唱のための時間稼ぎも必要だ。
「よお大将! 全員を一気に回復させてやっからちょっくらザコどもの相手を頼むぜ」
「いいよん」
モンスターの大群相手にしながらもブロキーナは軽いノリで請け負った。
そんな二人の会話を聞いていた一体のモンスターが不満をありありと孕んだ声色でもって割り込んだ。
「ほう。君の言うザコとは私のことも含まれているのかな?」
トロルの群れの向こう側から青色の肌をしたさらに巨大な体躯が現れた。眼鏡を中指の鋭利な爪で押し込んで歩み寄ってくるその理知的な動作とは裏腹に額には幾つもの血管が盛り上がっていた。
4949「よお大将! 全員を一気に回復させてやっからちょっくらザコどもの相手を頼むぜ」
「いいよん」
モンスターの大群相手にしながらもブロキーナは軽いノリで請け負った。
そんな二人の会話を聞いていた一体のモンスターが不満をありありと孕んだ声色でもって割り込んだ。
「ほう。君の言うザコとは私のことも含まれているのかな?」
トロルの群れの向こう側から青色の肌をしたさらに巨大な体躯が現れた。眼鏡を中指の鋭利な爪で押し込んで歩み寄ってくるその理知的な動作とは裏腹に額には幾つもの血管が盛り上がっていた。
なりひさ
DONEガンマト。凍れる時の秘法期間中。凍れる未来 マトリフは目の前に広がる凄惨な光景から目が離せなかった。家並みは押し潰され、所々で火が上がっている。それが月のない晩をポツポツと照らしていた。逃げ惑う人々の悲鳴が既に弱々しい。この蹂躙は長く続いていたらしい。
「た……助けて……」
逃げ遅れていた人を瓦礫から引っ張り出してマトリフは回復呪文をかける。しかしそれを終えるとすぐに飛翔呪文で飛んだ。これをやったのは間違いなくガンガディアだ。その姿を探す。巨体はすぐに見つかった。
「おや大魔道士、遅かったじゃないか。私の準備運動はとっくに済んでいるのだよ」
ぐしゃり、と手に持っていた何かが潰れて落ちていった。ガンガディアはその気になればこの街を消し炭にすることも出来ただろう。それをせずに半壊程度に抑えていた。それらは全てはマトリフを誘き出すためだ。
2285「た……助けて……」
逃げ遅れていた人を瓦礫から引っ張り出してマトリフは回復呪文をかける。しかしそれを終えるとすぐに飛翔呪文で飛んだ。これをやったのは間違いなくガンガディアだ。その姿を探す。巨体はすぐに見つかった。
「おや大魔道士、遅かったじゃないか。私の準備運動はとっくに済んでいるのだよ」
ぐしゃり、と手に持っていた何かが潰れて落ちていった。ガンガディアはその気になればこの街を消し炭にすることも出来ただろう。それをせずに半壊程度に抑えていた。それらは全てはマトリフを誘き出すためだ。
なりひさ
DONEガンマト。外科医のガンガさんとマトの話消えた記憶 淡い光が広がっていた。点灯していない蛍光灯がついた天井がカーテンで仕切られている。
なぜオレはこんな所に居るのだろうか。思い出そうとして頬に風を感じた。そちらを向けば少し開いた窓があり、そこからの風がカーテンを揺らしていた。
多数の不規則な足音が遠くに聞こえる。館内放送が静かに誰かを呼び出していた。乾燥機で乾かされたシーツの匂いがして、自分が横になっているベッドを見やる。ここが病院であることは間違いなさそうだ。淡い桃色のカーテンがベッドをぐるりと囲んでいる。
すると早足で歩いてくる足音が聞こえた。それはこちらへ近付いてくる。それをぼんやりと聞いていたらカーテンが勢いよく引かれた。白衣を着た男がこちらを見ている。白衣を着ているからには医者だろう。服の上からでもわかる筋肉質な肉体をしている。医者はオレを見て安堵したように表情を緩めた。
12320なぜオレはこんな所に居るのだろうか。思い出そうとして頬に風を感じた。そちらを向けば少し開いた窓があり、そこからの風がカーテンを揺らしていた。
多数の不規則な足音が遠くに聞こえる。館内放送が静かに誰かを呼び出していた。乾燥機で乾かされたシーツの匂いがして、自分が横になっているベッドを見やる。ここが病院であることは間違いなさそうだ。淡い桃色のカーテンがベッドをぐるりと囲んでいる。
すると早足で歩いてくる足音が聞こえた。それはこちらへ近付いてくる。それをぼんやりと聞いていたらカーテンが勢いよく引かれた。白衣を着た男がこちらを見ている。白衣を着ているからには医者だろう。服の上からでもわかる筋肉質な肉体をしている。医者はオレを見て安堵したように表情を緩めた。
なりひさ
DONEガンマト。現パロの二人。ハドとアバに迷惑かけてる。写真 ガンガディアは時間を確認しようとスマートフォンに触れた。ぱっと明るくなる画面に時刻が表示される。しかしそれよりも目がいったのは、壁紙に設定したマトリフの写真だった。
「……おい」
上司の苦い声にガンガディアはスマートフォンから顔を上げる。見ればハドラーが天敵でも見るような顔でガンガディアのスマートフォンを見ていた。ガンガディアはサッとスマートフォンを隠す。
「見ないでください」
「だったら壁紙なんぞに設定するな」
「せっかく撮らせてくれた写真なんですよ。いつでも見られるようにしたいではないですか」
「……それは隠し撮りではないのか」
ハドラーが苦い顔をしたのはそのせいもあったらしい。マトリフの写真は横から撮ったもので、視線すらこちらに向いていない。少し遠いのも相まって、まるで隠し撮りのように見えなくもない。
1067「……おい」
上司の苦い声にガンガディアはスマートフォンから顔を上げる。見ればハドラーが天敵でも見るような顔でガンガディアのスマートフォンを見ていた。ガンガディアはサッとスマートフォンを隠す。
「見ないでください」
「だったら壁紙なんぞに設定するな」
「せっかく撮らせてくれた写真なんですよ。いつでも見られるようにしたいではないですか」
「……それは隠し撮りではないのか」
ハドラーが苦い顔をしたのはそのせいもあったらしい。マトリフの写真は横から撮ったもので、視線すらこちらに向いていない。少し遠いのも相まって、まるで隠し撮りのように見えなくもない。
なりひさ
DONEガンマト。両片思いのままの二人。凍れる時の秘法の頃、ガンガディアはある呪文を使う。作業用BGM「ピノ」君を残す呪文 それに気づいた時には、呪文は煙のように消えかけていた。
「なんの呪文だそれ?」
ガンガディアの手はマトリフに向けられ、指が輪のように形作られていた。そこには間違いなく呪文の形跡があり、しかもマトリフの知らないものだった。だが攻撃呪文ではなさそうで、その証拠にマトリフの周りに咲いた花は風に揺れるだけでなんの害も受けていなかった。
「……秘密だ」
ガンガディアは珍しく言い淀みながらぽつりと口にした。真面目な気質の彼はその事に不誠実さでも感じたのか、恥じるように目線を外らせてしまった。
マトリフは何か言い返そうとした口を閉じる。揶揄うにはよいネタだと思ったのだが、何故だが気分が乗らなかった。あまりにも平和すぎる時間の流れに感化されたのかもしれない。マトリフは咲き乱れる花に目をやる。そうすると自然とそこに立ち尽くす二人にも目がいった。
2357「なんの呪文だそれ?」
ガンガディアの手はマトリフに向けられ、指が輪のように形作られていた。そこには間違いなく呪文の形跡があり、しかもマトリフの知らないものだった。だが攻撃呪文ではなさそうで、その証拠にマトリフの周りに咲いた花は風に揺れるだけでなんの害も受けていなかった。
「……秘密だ」
ガンガディアは珍しく言い淀みながらぽつりと口にした。真面目な気質の彼はその事に不誠実さでも感じたのか、恥じるように目線を外らせてしまった。
マトリフは何か言い返そうとした口を閉じる。揶揄うにはよいネタだと思ったのだが、何故だが気分が乗らなかった。あまりにも平和すぎる時間の流れに感化されたのかもしれない。マトリフは咲き乱れる花に目をやる。そうすると自然とそこに立ち尽くす二人にも目がいった。
なりひさ
DONEガンマト。本に封印されたガンガディアがマトリフの魔力供給によって力を貸す話本「よせよ、師匠」
ポップは悲痛な顔で呟いた。マトリフの行動を止めるように腕を掴む。ポップの伏せられた瞼が己の不甲斐なさに震えていた。しかしマトリフの意志は固く、ポップの手を取るとそっと腕から外した。
時刻は早朝だった。しかし清爽さとは無縁の鎮痛な空気が洞窟に満ちている。大魔道士が二人揃っても解決できない問題に直面していたからだ。数多の呪文も叡智もこの問題の解決は不可能だった。ポップは悔しそうに拳を握りしめる。
「おれにもっと力があれば……」
「そう落ち込むな。オレの魔法力で済むなら安いもんだ」
マトリフは書架から一冊の本を手に取った。皮表紙のそれは金文字で仰々しく飾られているが古寂びている。長い年月人の手にあったことを示すように落ち着いた色合いになったその本は、マトリフの手によく馴染んでいた。
1743ポップは悲痛な顔で呟いた。マトリフの行動を止めるように腕を掴む。ポップの伏せられた瞼が己の不甲斐なさに震えていた。しかしマトリフの意志は固く、ポップの手を取るとそっと腕から外した。
時刻は早朝だった。しかし清爽さとは無縁の鎮痛な空気が洞窟に満ちている。大魔道士が二人揃っても解決できない問題に直面していたからだ。数多の呪文も叡智もこの問題の解決は不可能だった。ポップは悔しそうに拳を握りしめる。
「おれにもっと力があれば……」
「そう落ち込むな。オレの魔法力で済むなら安いもんだ」
マトリフは書架から一冊の本を手に取った。皮表紙のそれは金文字で仰々しく飾られているが古寂びている。長い年月人の手にあったことを示すように落ち着いた色合いになったその本は、マトリフの手によく馴染んでいた。
なりひさ
DONEガンマト。すれ違う二人憧れ 眠れないからと飲んだ酒が底をついた。空になった瓶がいくつか床に転がっている。その割には酔うことすらできないでいた。
外は酷い雨が降っている。岩戸を閉めていてもその音が洞窟内に響いていた。マトリフはベッドに寝転がりながら空の酒瓶を手で弄ぶ。夜も遅いが、一向に眠気が訪れなかった。
「大魔道士」
ガンガディアが部屋の前に立っていた。咎めるような眼差しに一瞬煙たく思ったが、マトリフは誘うように手招いた。ガンガディアは空瓶を拾いながらマトリフの側まで来る。ガンガディアの小言がはじまる前にマトリフは言った。
「オレにラリホーかけてくれよ。眠れねえんだ」
甘ったるくねだったが、ガンガディアの表情は動かなかった。
13610外は酷い雨が降っている。岩戸を閉めていてもその音が洞窟内に響いていた。マトリフはベッドに寝転がりながら空の酒瓶を手で弄ぶ。夜も遅いが、一向に眠気が訪れなかった。
「大魔道士」
ガンガディアが部屋の前に立っていた。咎めるような眼差しに一瞬煙たく思ったが、マトリフは誘うように手招いた。ガンガディアは空瓶を拾いながらマトリフの側まで来る。ガンガディアの小言がはじまる前にマトリフは言った。
「オレにラリホーかけてくれよ。眠れねえんだ」
甘ったるくねだったが、ガンガディアの表情は動かなかった。
kisaragi_hotaru
DONEガンマトが地底魔城で魔王たちとわちゃわちゃするゆるふわな短文。マトロボ話と似た流れでマト本人連れてきました版です。こんなんでもガンマトと言い張ってみる。ガンマト結婚式は地底魔城で行われて勇者一行もお祝いに来てくれる平和な未来。 マトリフが 仲間に 加わった!
「おう。そういうわけだからよろしくな」
「ハドラー様。この者が以前ご報告した大魔道士です」
「待て」
鼻をほじりながら気のない挨拶をするマトリフ。上司に新しい仲間を紹介するガンガディア。片手を前に突き出してストップをかけるハドラー。
「大魔道士とはあれだろう……勇者一行の」
「その通りです」
「ふざけるなよガンガディア」
「私は至って本気です。近年この魔王軍では深刻な人手不足。キギロが行方不明になってからというものもはや私ひとりでは仕事が回りきらないのが現状。故に私の知る中で最も優秀な人材を確保した次第です」
ガンガディアの言葉を聞いてマトリフがピクリと反応する。顔を顰めて傍らの巨体を見上げた。
2412「おう。そういうわけだからよろしくな」
「ハドラー様。この者が以前ご報告した大魔道士です」
「待て」
鼻をほじりながら気のない挨拶をするマトリフ。上司に新しい仲間を紹介するガンガディア。片手を前に突き出してストップをかけるハドラー。
「大魔道士とはあれだろう……勇者一行の」
「その通りです」
「ふざけるなよガンガディア」
「私は至って本気です。近年この魔王軍では深刻な人手不足。キギロが行方不明になってからというものもはや私ひとりでは仕事が回りきらないのが現状。故に私の知る中で最も優秀な人材を確保した次第です」
ガンガディアの言葉を聞いてマトリフがピクリと反応する。顔を顰めて傍らの巨体を見上げた。
kisaragi_hotaru
DONEガンマトというよりはガン→マトなお話です。本誌獄炎ネタバレ要素含みます。キラマシがガンガさん作だったらという前提です。マト本人は出てきません。 ガンガディアは甚く立腹していた。
祈りの間に籠ったまま出てこなくなった魔王に代わり全軍の総指揮を担うことになっていたガンガディアはさすがに心身ともに疲労を感じていた。信頼されているからこそと思えば名誉も感じるが度が過ぎればそれも憤りを感じてしまうようになってくるというものだ。尤も本音を言えば仕事が忙しすぎて地底魔城から出られず勇者一行を自ら追いかけるわけにはいかなくなってしまったことにより、つまるところ大魔道士に会えなくなって凹んでしまっているのである。意外と繊細なのだ。
そんな矢先。久方ぶりに魔王が姿を現した。祈りの間は悲惨な有様になっていたが不思議と死の大地から持ち帰っていた不気味な置物だけは傷一つ無かった。
6914祈りの間に籠ったまま出てこなくなった魔王に代わり全軍の総指揮を担うことになっていたガンガディアはさすがに心身ともに疲労を感じていた。信頼されているからこそと思えば名誉も感じるが度が過ぎればそれも憤りを感じてしまうようになってくるというものだ。尤も本音を言えば仕事が忙しすぎて地底魔城から出られず勇者一行を自ら追いかけるわけにはいかなくなってしまったことにより、つまるところ大魔道士に会えなくなって凹んでしまっているのである。意外と繊細なのだ。
そんな矢先。久方ぶりに魔王が姿を現した。祈りの間は悲惨な有様になっていたが不思議と死の大地から持ち帰っていた不気味な置物だけは傷一つ無かった。
なりひさ
DONEガンマト。デートする二人たまにはデートでもしようや「デート、とは」
「なんだよ、デート知らねえのか」
昼下がりの洞窟でガンガディアとマトリフはのんびりとした時間を過ごしていた。そしてマトリフは急に「デートでもするか」と提案したのだ。
ガンガディアは眼鏡に指をやる。光の加減でそのレンズがキラリと光って見えた。
「意味は知っている。人間が行う奇妙な行動だろう。一緒に出かけて同じ行動を取ることでお互いの興味を深めるという。その点でおいて私は既に君への興味は極限値まできているのでこれ以上に上がることはないが、君が私に興味を持ってくれるならデートの意味もある。私が聞きたかったのはデートの具体的な内容だが、やはり流行りはパプニカか。温暖な気候と風光明媚な観光名所を有し、我々の共通の興味がある魔導書を扱う店も多い。しかしその点においてはカールも力を入れ始めたところではあるし、君の希望が一番だから……」
3204「なんだよ、デート知らねえのか」
昼下がりの洞窟でガンガディアとマトリフはのんびりとした時間を過ごしていた。そしてマトリフは急に「デートでもするか」と提案したのだ。
ガンガディアは眼鏡に指をやる。光の加減でそのレンズがキラリと光って見えた。
「意味は知っている。人間が行う奇妙な行動だろう。一緒に出かけて同じ行動を取ることでお互いの興味を深めるという。その点でおいて私は既に君への興味は極限値まできているのでこれ以上に上がることはないが、君が私に興味を持ってくれるならデートの意味もある。私が聞きたかったのはデートの具体的な内容だが、やはり流行りはパプニカか。温暖な気候と風光明媚な観光名所を有し、我々の共通の興味がある魔導書を扱う店も多い。しかしその点においてはカールも力を入れ始めたところではあるし、君の希望が一番だから……」
なりひさ
DONEガンマトとハドアバ。鉢合わせ4人のその後の話大魔道士の暇潰し 今日も今日とてガンガディアはマトリフに会いにきていた。地底魔城でハドラーと鉢合わせて、二人の関係がバレてからというもの、ガンガディアは憚ることなく会いに来るようになった。
今は二人で湖に浸かっている。ここ数日の暑さに辟易していたところだったので、程よい冷たさの湖の水温は気持ちよかった。若者たちは浅瀬で遊んでいる。マトリフはガンガディアに横抱きに抱えられながら浮かんでいた。
「暑くはないかね?」
「いいや……ちょうどいい」
魔王の侵攻も最近ではおざなりだ。そのおかげでのんびりと旅をしている。そののんびりとした時間の中で、マトリフは少々の退屈を感じていた。その退屈がある思いつきを連れてきた。
「熱中症ってゆっくり言ってみな」
1795今は二人で湖に浸かっている。ここ数日の暑さに辟易していたところだったので、程よい冷たさの湖の水温は気持ちよかった。若者たちは浅瀬で遊んでいる。マトリフはガンガディアに横抱きに抱えられながら浮かんでいた。
「暑くはないかね?」
「いいや……ちょうどいい」
魔王の侵攻も最近ではおざなりだ。そのおかげでのんびりと旅をしている。そののんびりとした時間の中で、マトリフは少々の退屈を感じていた。その退屈がある思いつきを連れてきた。
「熱中症ってゆっくり言ってみな」
なりひさ
DONEガンマトとハドアバ。地底魔城で鉢合わせする4人鉢合わせの朝 マトリフが目覚めたら眼前には真白いシーツが広がっていた。巨大なベッドにいたのはマトリフ一人だ。そこは地底魔城のガンガディアの部屋で、見渡したがガンガディアはいなかった。
昨日は魔王軍と鉢合わせて戦闘になった。最終的にお互いに引いて戦闘は終わったが、仲間と少し離れた隙にマトリフはここへと連れ去られた。連れ去ったのはガンガディアで、それは初めてのことではなかった。マトリフはガンガディアの部屋に連れ込まれて、裸で一戦交えた。つまり二人はそういう関係だった。
マトリフは巨大なベッドに寝転がり、シーツに包まれている。どこかに法衣が落ちているだろうが、それを拾うのも億劫だった。回復呪文をかけながらのセックスは限度を知らない。マトリフは身体の奥に疲労を感じてベッドで寝返りを打った。ガンガディアが戻る前に抜け出してルーラで戻らなければいけないが、まだ起きられなかった。
3030昨日は魔王軍と鉢合わせて戦闘になった。最終的にお互いに引いて戦闘は終わったが、仲間と少し離れた隙にマトリフはここへと連れ去られた。連れ去ったのはガンガディアで、それは初めてのことではなかった。マトリフはガンガディアの部屋に連れ込まれて、裸で一戦交えた。つまり二人はそういう関係だった。
マトリフは巨大なベッドに寝転がり、シーツに包まれている。どこかに法衣が落ちているだろうが、それを拾うのも億劫だった。回復呪文をかけながらのセックスは限度を知らない。マトリフは身体の奥に疲労を感じてベッドで寝返りを打った。ガンガディアが戻る前に抜け出してルーラで戻らなければいけないが、まだ起きられなかった。
なりひさ
DONEガンマト。ガンガディアを想って彼の死に場所を呪文で花畑にするマトリフ空に君を想う 平和が訪れた。その功労者である勇者がひっそりと訪れたのは魔王軍との最終決戦の地だった。
あの戦いで魔王軍は勇者たちを待ち構えていた。地底魔城のその周囲を埋め尽くすほどの魔物たちを一手に引き受けたのはマトリフだった。その魔王軍の先頭にいたデストロールをアバンは覚えている。そこからどんな戦闘になったのかは、先に進んだアバンには知りようがなかった。ただ勝ったのはマトリフで、その戦闘の激しさは筆舌に尽くしがたいものだったのは変わり果てた地形からも明らかだった。
だが、今その地面が変わっていることにアバンは驚いていた。呪文のせいか、あるいは魔物たちの攻撃で抉れて起伏が激しくなっていた地面には一面の花が咲いていた。それが風に吹かれて揺れている。
1952あの戦いで魔王軍は勇者たちを待ち構えていた。地底魔城のその周囲を埋め尽くすほどの魔物たちを一手に引き受けたのはマトリフだった。その魔王軍の先頭にいたデストロールをアバンは覚えている。そこからどんな戦闘になったのかは、先に進んだアバンには知りようがなかった。ただ勝ったのはマトリフで、その戦闘の激しさは筆舌に尽くしがたいものだったのは変わり果てた地形からも明らかだった。
だが、今その地面が変わっていることにアバンは驚いていた。呪文のせいか、あるいは魔物たちの攻撃で抉れて起伏が激しくなっていた地面には一面の花が咲いていた。それが風に吹かれて揺れている。
なりひさ
DONEガンマト。スイカ割り大会スイカの上手な割り方について「もうちょい左……あと半歩」
マトリフはスイカを見ながら指示を出す。ガンガディアは目隠しをして棍棒を持っていた。
ここは世界一平和な世界の砂浜。全ての怨恨を忘れ去り、みんながスイカ割りに興じていた。新旧勇者一行、新旧魔王軍が一堂に会しており、どのペアが一番上手くスイカを割れるかと競い合っていた。今はガンガディアとマトリフのペアである。揃いの海水パンツを履いた二人はスイカを狙っていた。
「アレって狡くねえか?」
ガンガディアとマトリフのスイカ割りを見て不満を言ったのはポップだった。ポップは自分が知るよりも若いマトリフを見上げている。というのも、マトリフはガンガディアの肩に乗り、いわゆる肩車をしていた。そして操縦桿でも握るようにガンガディアの耳を持っている。そしてそこから適切な指示を出しているのだ。
1135マトリフはスイカを見ながら指示を出す。ガンガディアは目隠しをして棍棒を持っていた。
ここは世界一平和な世界の砂浜。全ての怨恨を忘れ去り、みんながスイカ割りに興じていた。新旧勇者一行、新旧魔王軍が一堂に会しており、どのペアが一番上手くスイカを割れるかと競い合っていた。今はガンガディアとマトリフのペアである。揃いの海水パンツを履いた二人はスイカを狙っていた。
「アレって狡くねえか?」
ガンガディアとマトリフのスイカ割りを見て不満を言ったのはポップだった。ポップは自分が知るよりも若いマトリフを見上げている。というのも、マトリフはガンガディアの肩に乗り、いわゆる肩車をしていた。そして操縦桿でも握るようにガンガディアの耳を持っている。そしてそこから適切な指示を出しているのだ。
kisaragi_hotaru
DONE指輪ネタで書いてみたかったガンマト。指輪自体は出てこないけど指輪ネタのつもりです。 食われるかと思った。
マトリフの前で跪きうやうやしく左手を掬い取ったガンガディアがおもむろに口を開いて指に食らいついたのだ。
ぎょっ、としたマトリフは次いで感じた痛みに反射的に声を上げて顔を顰める。
「いってえよ! なにすんだ!」
突然指を噛まれたのだ。文句も言いたくなるというもの。食い込む歯の感触が消えたことを見計らって掴まれた手を取り戻そうとマトリフは手を引き戻す。
しかしガンガディアの口は離れたが手は掴まれたまま。見ればマトリフの左手の薬指の付け根から血が滲んでいる。それをガンガディアは舌を這わせて舐め取った。
「んっ……」
まるで情事の時のようなねっとりとした舌使いにマトリフの左手が痛みのせいだけでなく震えた。
3423マトリフの前で跪きうやうやしく左手を掬い取ったガンガディアがおもむろに口を開いて指に食らいついたのだ。
ぎょっ、としたマトリフは次いで感じた痛みに反射的に声を上げて顔を顰める。
「いってえよ! なにすんだ!」
突然指を噛まれたのだ。文句も言いたくなるというもの。食い込む歯の感触が消えたことを見計らって掴まれた手を取り戻そうとマトリフは手を引き戻す。
しかしガンガディアの口は離れたが手は掴まれたまま。見ればマトリフの左手の薬指の付け根から血が滲んでいる。それをガンガディアは舌を這わせて舐め取った。
「んっ……」
まるで情事の時のようなねっとりとした舌使いにマトリフの左手が痛みのせいだけでなく震えた。
なりひさ
DONEガンマト。モシャスしてたけど魔物だとバレて人間に攻撃されるガンガディアの話終わりの朝、百年の孤独 君を失いたくない。どうか、私の前から消えないでくれ。ガンガディアがそう願うには遅すぎた。沈む太陽を止められないように、終わりは刻一刻と近づいていた。
空を朱に染める太陽が地平線の向こうへ沈もうとしている。その空に背を向けながらガンガディアはひとり街を歩いていた。
本当はマトリフと一緒に出かけるつもりだったが、昼過ぎになってマトリフが体調を崩した。昨夜に無理をさせたせいなのかマトリフはずっと布団から出ずにいた。心配したガンガディアが声をかければ怠いと言う。触れれば発熱しており、回復呪文も効かなかった。街へ出かけることは中止しようとガンガディアは提案したが、だったらとマトリフは買い物を頼んできた。それはマトリフが好んで飲む茶で、街にある馴染みの店でしか取り扱っていない。確かに茶葉は残り少なかったが、急ぐほどでもなかった。ガンガディアはそれよりも体調が良くないマトリフのそばにいたかったのだが、マトリフがそれを許さなかった。さっさと行けと追い出され、ガンガディアは渋々承諾した。
11173空を朱に染める太陽が地平線の向こうへ沈もうとしている。その空に背を向けながらガンガディアはひとり街を歩いていた。
本当はマトリフと一緒に出かけるつもりだったが、昼過ぎになってマトリフが体調を崩した。昨夜に無理をさせたせいなのかマトリフはずっと布団から出ずにいた。心配したガンガディアが声をかければ怠いと言う。触れれば発熱しており、回復呪文も効かなかった。街へ出かけることは中止しようとガンガディアは提案したが、だったらとマトリフは買い物を頼んできた。それはマトリフが好んで飲む茶で、街にある馴染みの店でしか取り扱っていない。確かに茶葉は残り少なかったが、急ぐほどでもなかった。ガンガディアはそれよりも体調が良くないマトリフのそばにいたかったのだが、マトリフがそれを許さなかった。さっさと行けと追い出され、ガンガディアは渋々承諾した。
kisaragi_hotaru
DONEサババデートしに来たはずが大変なことになるガンマト。そんなガンマトに巻き込まれるディーさんのお話です。獄炎とダイ大のネタバレ要素を含んでいます。マトが全然クールじゃない。IQ低めのゆるふわ小説。なんでも許せる方向けです。そうだ サババ、行こう。 「久しぶりに来たぜ。サババ!!」
「確かに。私は一度しか来たことはないが、相変わらず人が多い場所だ」
「あー、その一度ってのはあれか、オレらの買い物を邪魔しに来やがったあの時か」
「……根に持っているのかね? 大魔道士」
「べっつに〜。そんなことより!」
大魔道士と呼ばれた男はビシッと人差し指をその相手へと突きつけた。
「大魔道士じゃなくて、マトリフ! そう呼べって言ったろーが!」
「そ、そうだったな…………マトリフ」
「えらく間が空いたな。なんだよそんなにオレの名前呼ぶのが嫌なのかよ、ガンガディア」
マトリフは不満だとばかりに顔を顰めて自分よりも幾分と背の高い体格の良い男を見上げた。
ガンガディアはトロル族の特別変異種デストロールである。本来ならばマトリフの優にニ倍以上ある身長は今この時は半分より少し高いくらいになっている。肌の色も若干色濃いくらいで人間のそれとまるで大差無い。服装も布の服を重ね着しており筋肉質な胸元や二の腕は晒されていない。普段なら身に付けている金の首飾りや腕輪も外している。どこにでもいるような至って普通の人間の男性の姿になっているガンガディア。それは試行錯誤の末に編み出したモシャスの応用であった。
14610「確かに。私は一度しか来たことはないが、相変わらず人が多い場所だ」
「あー、その一度ってのはあれか、オレらの買い物を邪魔しに来やがったあの時か」
「……根に持っているのかね? 大魔道士」
「べっつに〜。そんなことより!」
大魔道士と呼ばれた男はビシッと人差し指をその相手へと突きつけた。
「大魔道士じゃなくて、マトリフ! そう呼べって言ったろーが!」
「そ、そうだったな…………マトリフ」
「えらく間が空いたな。なんだよそんなにオレの名前呼ぶのが嫌なのかよ、ガンガディア」
マトリフは不満だとばかりに顔を顰めて自分よりも幾分と背の高い体格の良い男を見上げた。
ガンガディアはトロル族の特別変異種デストロールである。本来ならばマトリフの優にニ倍以上ある身長は今この時は半分より少し高いくらいになっている。肌の色も若干色濃いくらいで人間のそれとまるで大差無い。服装も布の服を重ね着しており筋肉質な胸元や二の腕は晒されていない。普段なら身に付けている金の首飾りや腕輪も外している。どこにでもいるような至って普通の人間の男性の姿になっているガンガディア。それは試行錯誤の末に編み出したモシャスの応用であった。
なりひさ
DONE事後ガンマトラブラブ編やわらかい朝 目を覚ましたときに、隣にいる存在がまだ信じられないと思うときがある。ガンガディアは寝過ぎた頭を動かしてマトリフを見た。マトリフはまだ夢の中にいるようで、起きる気配はない。
この洞窟は朝陽が差さない。代わりに波の音はよく届く。それが子守唄のように眠気を誘うのか、ガンガディアは目覚めたばかりなのにまた瞼が重くなった。
ガンガディアも寝るなら広いベッドを、と設えたはいいが、マトリフは広いベッドの中で縮まって寝ている。背中の一部だけをガンガディアに触れさせているのは、まるで存在を確かめるような仕草に思えてならない。ガンガディアがこの洞窟で一緒に寝るようになってからというもの、マトリフはいつもこの体勢で寝ている。ガンガディアが動けばその振動がマトリフに伝わってしまうものだから、彼の眠りを妨げないためにもガンガディアは動けないでいた。そうしていると寝過ごすことが増え、ガンガディアはすっかり長寝の癖がついてしまった。
1261この洞窟は朝陽が差さない。代わりに波の音はよく届く。それが子守唄のように眠気を誘うのか、ガンガディアは目覚めたばかりなのにまた瞼が重くなった。
ガンガディアも寝るなら広いベッドを、と設えたはいいが、マトリフは広いベッドの中で縮まって寝ている。背中の一部だけをガンガディアに触れさせているのは、まるで存在を確かめるような仕草に思えてならない。ガンガディアがこの洞窟で一緒に寝るようになってからというもの、マトリフはいつもこの体勢で寝ている。ガンガディアが動けばその振動がマトリフに伝わってしまうものだから、彼の眠りを妨げないためにもガンガディアは動けないでいた。そうしていると寝過ごすことが増え、ガンガディアはすっかり長寝の癖がついてしまった。
なりひさ
DONE二人のときだけデレてくるガンガさんのガンマトクーデレ その日マトリフはカールにいた。アバンやポップと一緒に丸テーブルを囲んでいる。久しぶりに会って食事でも、とのアバンの誘いで集まっていた。
振る舞われたアバンの手料理を食べ終えても話は続いた。気心知れた仲であるから、雑談から世界情勢についてまで話題は尽きない。
そうこうしているうちに日が暮れてきた。天気が良いからと開けられていたバルコニーから涼しい風が入ってくる。その窓へと、デストロールが静かに降り立った。
「げっ……」
その青い巨体を見てマトリフは嫌そうに口を曲げる。ガンガディアは巨体を折り曲げてバルコニーから室内へと入ってきた。
「歓談中にお邪魔してすまない。大魔道士を迎えにきた」
ガンガディアは礼儀正しく言ってアバンとポップを見た。しかしマトリフはガンガディアに背を向けると、カップに残った冷めた茶をちびちびと飲み始める。
1644振る舞われたアバンの手料理を食べ終えても話は続いた。気心知れた仲であるから、雑談から世界情勢についてまで話題は尽きない。
そうこうしているうちに日が暮れてきた。天気が良いからと開けられていたバルコニーから涼しい風が入ってくる。その窓へと、デストロールが静かに降り立った。
「げっ……」
その青い巨体を見てマトリフは嫌そうに口を曲げる。ガンガディアは巨体を折り曲げてバルコニーから室内へと入ってきた。
「歓談中にお邪魔してすまない。大魔道士を迎えにきた」
ガンガディアは礼儀正しく言ってアバンとポップを見た。しかしマトリフはガンガディアに背を向けると、カップに残った冷めた茶をちびちびと飲み始める。
なりひさ
DONE地獄で再会するガンマト地獄でなぜ悪い マトリフは暗い天井を見上げる。落ちてきたときも思ったが、ここは随分と深いようだ。
視線を前方へやれば、また先の見えない道が続いている。ぽつりぽつりと蝋燭が灯っているが、その頼りない明かりでは遠くまでは見えなかった。
「大魔道士?」
懐かしい声に振り返れば、驚愕の表情を浮かべたガンガディアがいた。マトリフは小さく手を上げる。
「よぉ」
「何故ここに」
ガンガディアは怒ったようにマトリフに駆け寄ってきた。そのまま身体を掴まれる。思わず痛みを予測したが、そんなものは当然にない。もう死んでいるからだ。
「何故って、オレはクズ野郎なんでね。地獄がふさわしいだろ?」
マトリフはあたりを見渡す。ここが地獄らしいが、案外地味だった。もっと不気味で恐ろしい場所を想像していたのに。
1740視線を前方へやれば、また先の見えない道が続いている。ぽつりぽつりと蝋燭が灯っているが、その頼りない明かりでは遠くまでは見えなかった。
「大魔道士?」
懐かしい声に振り返れば、驚愕の表情を浮かべたガンガディアがいた。マトリフは小さく手を上げる。
「よぉ」
「何故ここに」
ガンガディアは怒ったようにマトリフに駆け寄ってきた。そのまま身体を掴まれる。思わず痛みを予測したが、そんなものは当然にない。もう死んでいるからだ。
「何故って、オレはクズ野郎なんでね。地獄がふさわしいだろ?」
マトリフはあたりを見渡す。ここが地獄らしいが、案外地味だった。もっと不気味で恐ろしい場所を想像していたのに。
なりひさ
DONEキスの日のガンマトキスの日 マトリフにはガンガディアがキスをするタイミングがわかる。マトリフは機嫌が良ければそれに応じるし、忙しければさっさと離れてしまう。そうしたらガンガディアは少し残念そうにするものの、執拗に要求することもない。
今もガンガディアはソファの隣に座るマトリフをそっと見下ろしてくる。ガンガディアはマトリフの暇な時と忙しい時を見分けようとしてくる。マトリフはちょうど読んでいた本に飽きていた。ページを捲る速度が落ちてきて、視線も本から離れがちである。そういったことをガンガディアはつぶさに観察していた。
かちゃり、とガンガディアが眼鏡を置いた音がマトリフにも聞こえた。マトリフは読んでいなかった本の文字へと視線をやりながら、ガンガディアの手が伸びてくるのを待った。
2712今もガンガディアはソファの隣に座るマトリフをそっと見下ろしてくる。ガンガディアはマトリフの暇な時と忙しい時を見分けようとしてくる。マトリフはちょうど読んでいた本に飽きていた。ページを捲る速度が落ちてきて、視線も本から離れがちである。そういったことをガンガディアはつぶさに観察していた。
かちゃり、とガンガディアが眼鏡を置いた音がマトリフにも聞こえた。マトリフは読んでいなかった本の文字へと視線をやりながら、ガンガディアの手が伸びてくるのを待った。
なりひさ
DONE身体だけの関係ガンマト背中の跡 背中についた爪の痕が、痛いのか熱いのかわからない。ガンガディアは朝陽が差し込む窓を薄目で見ながら、隣から聴こえる規則正しい呼吸音を聞くともなしに聞いていた。まだ朝というには早い時間だが、元より魔族は睡眠時間が人間より短いので時間を持て余していた。
夜を共にしたからといって、なにも朝まで一緒にいなくともよいとガンガディアは思っていた。なので以前に寝たときに夜のうちに帰ったら、次に会ったときに冷たくされた。帰るなら先に言え、言わないなら朝まで一緒に寝てろ、とつっけんどんに言われたのだ。
人間の眠りは長い。脆弱な身体しか持たないから仕方ないのだろう。ガンガディアはそっと起き上がると横に寝ているマトリフを見下ろす。細い肩がむき出しになっていたのでシーツを引き上げた。
781夜を共にしたからといって、なにも朝まで一緒にいなくともよいとガンガディアは思っていた。なので以前に寝たときに夜のうちに帰ったら、次に会ったときに冷たくされた。帰るなら先に言え、言わないなら朝まで一緒に寝てろ、とつっけんどんに言われたのだ。
人間の眠りは長い。脆弱な身体しか持たないから仕方ないのだろう。ガンガディアはそっと起き上がると横に寝ているマトリフを見下ろす。細い肩がむき出しになっていたのでシーツを引き上げた。
なりひさ
DONEマトリフがガンガディアに指輪をあげる話ひとつの指輪「これを、私に?」
ガンガディアは差し出された指輪に驚いた。箱に入れられたわけでも、リボンがかかってるわけでもない指輪は、マトリフの両手の中で鈍く光っている。
「早く受け取れよ。重いんだよこれ」
言われてガンガディアは指輪をつまみ上げる。マトリフは息をつくと肩を回した。ガンガディアにとっては軽いが、小さなマトリフにとっては随分と重かったらしい。
「どうして指輪を?」
「どうしてって、前のは無くしたって言ってただろ」
それは以前にマトリフが指摘したことだった。マトリフとはじめてヨミカイン魔道図書館で出会ったとき、ガンガディアは右手に指輪をしていた。しかしそれ以降は指輪をしているのを見なかったという。ガンガディアはマトリフがそこまで見ていたことに驚いた。ガンガディアはヨミカインでマトリフからベタンを受け、地下深くに落とされた。その拍子に割ってしまったのか、気付いたら指輪は無くなっていた。その事を伝えると、マトリフは興味を失ったように素っ気ない返事をしたのだ。
1828ガンガディアは差し出された指輪に驚いた。箱に入れられたわけでも、リボンがかかってるわけでもない指輪は、マトリフの両手の中で鈍く光っている。
「早く受け取れよ。重いんだよこれ」
言われてガンガディアは指輪をつまみ上げる。マトリフは息をつくと肩を回した。ガンガディアにとっては軽いが、小さなマトリフにとっては随分と重かったらしい。
「どうして指輪を?」
「どうしてって、前のは無くしたって言ってただろ」
それは以前にマトリフが指摘したことだった。マトリフとはじめてヨミカイン魔道図書館で出会ったとき、ガンガディアは右手に指輪をしていた。しかしそれ以降は指輪をしているのを見なかったという。ガンガディアはマトリフがそこまで見ていたことに驚いた。ガンガディアはヨミカインでマトリフからベタンを受け、地下深くに落とされた。その拍子に割ってしまったのか、気付いたら指輪は無くなっていた。その事を伝えると、マトリフは興味を失ったように素っ気ない返事をしたのだ。
なりひさ
DONEアバンはマトリフを訪ねてパプニカ王国へ行くが、マトリフはは既にパプニカを去っていた。アバンはマトリフを探してヨミカイン魔導図書館へ行くが、そこにいたのは青いトロルで……魔導図書館の地下深く アバンがマトリフを訪ねたのはあの戦いから数年後のことだった。最後に会ったときには彼はパプニカの王宮に勤めていた。そのためアバンはパプニカにむかったのだが、そこに彼はいなかった。
アバンにその事を伝えたのは城の衛兵だった。もう辞めたと言われたきり、理由さえ教えてくれない。アバンがなんとか聞き出そうとすると、王の側近という者が出てきた。その者が言うには、マトリフは最初からパプニカ王国に仕える気など無かったのだという。仕事も不真面目、職権の濫用、閲覧禁止の魔導書の持ち出しなどを行なったために追放したという。側近はマトリフが国家を転覆させようとしていたのではないかとまで言った。
アバンはマトリフのことはあの旅の間のことしか知らない。彼が癖のある人物であることは間違いないが、側近の語るような人でないことは理解していた。マトリフは魔王との戦いで我が身を削ってまで正義のために戦ってくれたのだ。
4510アバンにその事を伝えたのは城の衛兵だった。もう辞めたと言われたきり、理由さえ教えてくれない。アバンがなんとか聞き出そうとすると、王の側近という者が出てきた。その者が言うには、マトリフは最初からパプニカ王国に仕える気など無かったのだという。仕事も不真面目、職権の濫用、閲覧禁止の魔導書の持ち出しなどを行なったために追放したという。側近はマトリフが国家を転覆させようとしていたのではないかとまで言った。
アバンはマトリフのことはあの旅の間のことしか知らない。彼が癖のある人物であることは間違いないが、側近の語るような人でないことは理解していた。マトリフは魔王との戦いで我が身を削ってまで正義のために戦ってくれたのだ。