Mobuta_Mobu
DONE主とハクメンちゃんとシームルグの話。二人に挟まれてビジネスの話し合いを聞きたいが、多分何も分からないのだろうと思われる。
狐と烏 授業が終わって外に出ると、校門の前に停まっている黒いリムジンが目に入った。家へ帰る生徒や学校の外へ遊びに行く生徒、部活動の一環で外周を走る運動部の生徒などがちらちらとリムジンを見やって通り過ぎていく。
すっかり見慣れたその光景にサモナーは苦笑する。これでも以前はもっと注目されていたし、不審がった生徒が先生を呼んできてちょっとした騒ぎになったこともあった。
サモナーがリムジンに近づいていくと、運転席のドアが開いて、中からショロトルが姿を現す。
「こんにちは、サモナー様」
プライベートで会う時とは違って、きちんと背筋を伸ばしてぺこりと頭を下げて挨拶をされる。
少しだけ距離を感じてしまって寂しいが、ショロトルは仕事中なので仕方がない。あと、後ろでぶんぶんと揺れている尻尾はご愛敬だ。
5264すっかり見慣れたその光景にサモナーは苦笑する。これでも以前はもっと注目されていたし、不審がった生徒が先生を呼んできてちょっとした騒ぎになったこともあった。
サモナーがリムジンに近づいていくと、運転席のドアが開いて、中からショロトルが姿を現す。
「こんにちは、サモナー様」
プライベートで会う時とは違って、きちんと背筋を伸ばしてぺこりと頭を下げて挨拶をされる。
少しだけ距離を感じてしまって寂しいが、ショロトルは仕事中なので仕方がない。あと、後ろでぶんぶんと揺れている尻尾はご愛敬だ。
Mobuta_Mobu
DONE主×クロードの仕事終わりの甘いご褒美の話。強くあろうと頑張るので、たまには甘やかしてくれませんか。
甘やかな褒美 しゃんと伸びた背筋。革靴が床を叩く音がコツコツと天井の高い廊下に響き、彼が一步踏み出す度にひらりとマントが宙で踊る。情熱的に燃えさかる炎のような髪をサモナーはちらりと見やった。
かっこいい、と素直に思う。
池袋の町を歩くクロードの姿はまさに一国を統べる王と呼ぶに相応しい佇まいだった。姿格好だけではない。交渉の場では時に情熱的に、時に懐広く思慮深く、そして時に冷徹に。クロードの内に潜む様々な面を見事なまでに使い分け、言葉巧みに自分に有利な状況を作り上げていく。他にやらなければならない用事があるからとクロードの側を離れるスノウの代わりを務めるのは今日が初めてではない。しかし、仕事中のクロードを決して見慣れることはなく何度見てもその格好良さに惚れ直す。
2252かっこいい、と素直に思う。
池袋の町を歩くクロードの姿はまさに一国を統べる王と呼ぶに相応しい佇まいだった。姿格好だけではない。交渉の場では時に情熱的に、時に懐広く思慮深く、そして時に冷徹に。クロードの内に潜む様々な面を見事なまでに使い分け、言葉巧みに自分に有利な状況を作り上げていく。他にやらなければならない用事があるからとクロードの側を離れるスノウの代わりを務めるのは今日が初めてではない。しかし、仕事中のクロードを決して見慣れることはなく何度見てもその格好良さに惚れ直す。
Mobuta_Mobu
DONE主シロのデートとしめのたい焼きの話。新宿駅で二人で食べたたい焼き、美味しかったね、シロウ……
たい焼き 賑やかな都会の土曜の夕方。まだ六時前だと言うのに真っ暗な街を歩く溢れんばかりの生命の中、サモナーとシロウは肩を並べて歩いていた。寒いね、などと言い合って、繋いだ手を二人の間で気まぐれに揺らしながら歩いていると突然サモナーが短く声を上げた。シロウはサモナーの視線の先を追いかける。
「たい焼きだよ、シロウ」
「本当だ。随分と人気なお店みたいだね」
大きい看板には可愛らしいたい焼きのイラストが描いてある。ただ肝心のたい焼きはずらりと並ぶ者たちの列の向こう側にあり見えない。
「しめに食べちゃう?」
しめ、とは言わずもがなデートのしめだ。期末試験も無事に終わり、もうすぐクリスマスと冬休みと年末年始と正月を控えた街中はどこもかしこも少し浮かれてるね、と話したのはつい数時間前。
1652「たい焼きだよ、シロウ」
「本当だ。随分と人気なお店みたいだね」
大きい看板には可愛らしいたい焼きのイラストが描いてある。ただ肝心のたい焼きはずらりと並ぶ者たちの列の向こう側にあり見えない。
「しめに食べちゃう?」
しめ、とは言わずもがなデートのしめだ。期末試験も無事に終わり、もうすぐクリスマスと冬休みと年末年始と正月を控えた街中はどこもかしこも少し浮かれてるね、と話したのはつい数時間前。
mytA
PAST【過去絵掲載】放サモ+αログ 2019年9月~2021年9月放サモ絵+他ジャンルキャラ数点のまとめログです。キャラごちゃまぜ。最後のほうに他作品キャラ数店あり。
ややセンシティブ絵もあります。主人公は3メイン5一点ありです。
2019年~2021年の間に描いたものになります。現在放サモはプレイしておりません。現在の設定と異なるもの等あるかもしれません。ご了承ください。
※ガラク、ゴッドベルト、マッシュについては当時のTwitterでお題をいただいたもので、未プレイみりしら絵になります。 36
むつき
DONEアンドヴァリ+主人公マリンリゾートクライシス時空
リゾートバイト 強い陽射しの下で浮かれたお客が落としていったホットドッグの包み紙や、ジェラート用のプラスチックスプーン。繰り返し寄せる波がどこかから運んできたビールの空き缶は無数の傷をつけ、ぐしゃりとつぶれている。
そういったごみは、気付けば波打ち際のあっちにもこっちにも落ちていた。ごみだけれど、そのひとつひとつに誰かのひとときの思い出が詰まっているような気がして、サモナーはそれらを毎日丁寧に拾い集める。
遊泳エリアを閉めたあとの夕暮れ、それから次の日の早朝。何人ものスタッフが何度もチェックした波打ち際はごみひとつ落ちていない。砂はこまかく、真っ白に光っていてきれいだ。
自分以外、まだ誰の姿もない浜辺に立ち尽くし、サモナーはただ海を眺めていた。波の音が繰り返し耳を洗う。室内にいたらまだ暗いであろうこの時刻、海の遠くにそびえたつ壁以外に遮るもののない海は、すでに明るくなり始めていた。
2355そういったごみは、気付けば波打ち際のあっちにもこっちにも落ちていた。ごみだけれど、そのひとつひとつに誰かのひとときの思い出が詰まっているような気がして、サモナーはそれらを毎日丁寧に拾い集める。
遊泳エリアを閉めたあとの夕暮れ、それから次の日の早朝。何人ものスタッフが何度もチェックした波打ち際はごみひとつ落ちていない。砂はこまかく、真っ白に光っていてきれいだ。
自分以外、まだ誰の姿もない浜辺に立ち尽くし、サモナーはただ海を眺めていた。波の音が繰り返し耳を洗う。室内にいたらまだ暗いであろうこの時刻、海の遠くにそびえたつ壁以外に遮るもののない海は、すでに明るくなり始めていた。
むつき
DONEダゴン×主人公※先生はほぼ不在
気付かないうちに囚われかけてる主人公くんちゃんの話
夢に落ちる ぽたぽた、ぽたぽた、と。水滴のしたたる音は聞こえるか聞こえないかと言うくらいのかすかなもので、けれどきりもなく続いている。いったいいつからその音が聞こえ始めたのか、サモナーには思い出すことができなかった。
少なくともここ数日、昼となく夜となく聞こえ続け、耳の底にこびりついたようになって離れない。教室に入ってくるなり繰り広げられるシロウとケンゴの漫才じみたやり取りを眺めている時も、授業の残り時間に思いを馳せながら教師の板書を黙々と書き写している時も。
どこかで水が、こぼれ続けている。またあるいは、水から上がってきた生きものが、濡れた体もそのままに、陸で何かを探し続けている。
ホームルームを済ませた副担任を見送って、教室はにわかにざわめき出す。勇んで部活動へ向かう者、友達を誘って街へ遊びに行く者。放課後、クラスメイトたちの過ごし方は様々だ。
2342少なくともここ数日、昼となく夜となく聞こえ続け、耳の底にこびりついたようになって離れない。教室に入ってくるなり繰り広げられるシロウとケンゴの漫才じみたやり取りを眺めている時も、授業の残り時間に思いを馳せながら教師の板書を黙々と書き写している時も。
どこかで水が、こぼれ続けている。またあるいは、水から上がってきた生きものが、濡れた体もそのままに、陸で何かを探し続けている。
ホームルームを済ませた副担任を見送って、教室はにわかにざわめき出す。勇んで部活動へ向かう者、友達を誘って街へ遊びに行く者。放課後、クラスメイトたちの過ごし方は様々だ。
むつき
DONEカトブレパス+シュクユウ+主人公街中のコスプレイベントに行く話
交流 サモナーとの待ち合わせ場所まで駆け寄ってきたシュクユウは、すでに頬を紅潮させていた。
「きょうは、友達を紹介してくれるんだよね?」
「そう、他校の子だよ。高校生」
「おれ、仲良くできるかな?」
無意識のうちの癖なのか、カメラのグリップをぎゅっと掴む。いつもながら手入れの行き届いた、シュクユウの宝物だった。
心配することないよ、とサモナーは力強く励ます。
「にーちゃんが言うなら大丈夫だよね! えへへっ」
こぼれるような笑顔が返ってくる。見つめ合い、頷き合った。
「それで、今日のイベントっていうのは、この辺りでやってるの?」
サモナーに促されて歩きながら、辺りを見渡す。駅から歩いてほんの数分。道の両側に路面店が立ち並び、ぶらぶら歩いてショッピングを楽しむにはうってつけのエリアだ。友だちと並んで楽しそうに話している人や、たくさんのショップバッグを手から下げた人たちが歩道に溢れている。
2600「きょうは、友達を紹介してくれるんだよね?」
「そう、他校の子だよ。高校生」
「おれ、仲良くできるかな?」
無意識のうちの癖なのか、カメラのグリップをぎゅっと掴む。いつもながら手入れの行き届いた、シュクユウの宝物だった。
心配することないよ、とサモナーは力強く励ます。
「にーちゃんが言うなら大丈夫だよね! えへへっ」
こぼれるような笑顔が返ってくる。見つめ合い、頷き合った。
「それで、今日のイベントっていうのは、この辺りでやってるの?」
サモナーに促されて歩きながら、辺りを見渡す。駅から歩いてほんの数分。道の両側に路面店が立ち並び、ぶらぶら歩いてショッピングを楽しむにはうってつけのエリアだ。友だちと並んで楽しそうに話している人や、たくさんのショップバッグを手から下げた人たちが歩道に溢れている。
むつき
DONE主人公×シロウやきもちをやくシロウの話
それは甘く それは例えば、移動教室や登下校といった、ごく日常的なタイミングで目撃される。また或いは、放課後に街を歩くような、何気ない時のことだ。
クラスや学年を問わず彼に話しかけてくる相手は多く、ひとたび街へ出れば、制服のデザインや年代すら関係なく彼のもとへ走り寄ってくる相手が何人もいる。
そのたびに俺はどうしようもなく気を揉み、心の狭さを痛感しては、自己嫌悪に陥っていく。
彼の端末はしょっちゅう震えていて――誓って、どこの誰からどんな連絡が来ているのか詮索するつもりは毛頭ない――、画面を光らせているメッセージアプリの通知が視界の端に映ってしまう。どこかの誰かが、彼に気持ちを寄せている証拠。
学園の内外でイベントがあるたびに、長期休暇のたびに、嬉しそうに彼の名前を呼ぶ相手が増えていく。そしてそれはつまり、彼が楽しそうにそれらに応える回数が増えていくということと同義なのだった。
2799クラスや学年を問わず彼に話しかけてくる相手は多く、ひとたび街へ出れば、制服のデザインや年代すら関係なく彼のもとへ走り寄ってくる相手が何人もいる。
そのたびに俺はどうしようもなく気を揉み、心の狭さを痛感しては、自己嫌悪に陥っていく。
彼の端末はしょっちゅう震えていて――誓って、どこの誰からどんな連絡が来ているのか詮索するつもりは毛頭ない――、画面を光らせているメッセージアプリの通知が視界の端に映ってしまう。どこかの誰かが、彼に気持ちを寄せている証拠。
学園の内外でイベントがあるたびに、長期休暇のたびに、嬉しそうに彼の名前を呼ぶ相手が増えていく。そしてそれはつまり、彼が楽しそうにそれらに応える回数が増えていくということと同義なのだった。
むつき
DONEレイヴ×上野所属主人公+パズズ+ハスター
あんまりレイヴ先輩は出てこない
後輩の恋愛模様を見てにこにこしたり心配したりしている二人
恋愛相談は頼れる大人に 食堂の出入り口にかけられているのれんは麻でできていて、さっぱりとした風合いをしている。のれんの裾は扇風機の風が当たる度にそよそよと動き、廊下を歩く寮生の視線をやさしく誘導した。
何か飲み物でも、と、食堂へ足を運んだパズズとハスターの視線の先、振り向いたサモナーはエプロンをつけていた。昼食の後片付けの時間には遅すぎるし、かと言って夕食の支度にはまだ早い。
皆で食事をとる大きなテーブルの周りにも、奥の冷蔵庫やコンロの前にも、サモナー以外誰の姿もなかった。いったい一人きりで何の作業をしていたのだろうと首をひねる二人をよそに、サモナーは明るい表情を浮かべて「おかえりなさい」と出迎えた。
「お仕事、お疲れさま。無事に終わったんだね?」
5101何か飲み物でも、と、食堂へ足を運んだパズズとハスターの視線の先、振り向いたサモナーはエプロンをつけていた。昼食の後片付けの時間には遅すぎるし、かと言って夕食の支度にはまだ早い。
皆で食事をとる大きなテーブルの周りにも、奥の冷蔵庫やコンロの前にも、サモナー以外誰の姿もなかった。いったい一人きりで何の作業をしていたのだろうと首をひねる二人をよそに、サモナーは明るい表情を浮かべて「おかえりなさい」と出迎えた。
「お仕事、お疲れさま。無事に終わったんだね?」
むつき
DONE上野ギルド+主人公ジュラシックサマーバカンスイベント時空
彼方より 透き通る青と生い茂る緑にいろどられた世界は目がさめるように美しく、今までに経験したことのない舞台上の別世界もまた刺激的だ。身の周りのあらゆる物事が新鮮で、地下世界に下りてきたサモナーが消費するエネルギーは日々増していく。したがって、朝も昼も晩も、食卓につく時は常にほぼ極限状態の空腹に陥っているのだった。
つい先程バーゲストが運んできてくれたご馳走が、テーブルを埋め尽くさんばかりに並んでいる。具が見えないほどチーズの乗せられたピザは焼き上げられたばかりらしく、食欲を誘う香りと共にじわじわと熱気を放っている。たっぷりのケチャップとマスタードを添えたチキンナゲットに、ボウルに山盛りのサラダ。パーティーさながらの光景に、サモナーの腹の虫がぐうと鳴いた。
3377つい先程バーゲストが運んできてくれたご馳走が、テーブルを埋め尽くさんばかりに並んでいる。具が見えないほどチーズの乗せられたピザは焼き上げられたばかりらしく、食欲を誘う香りと共にじわじわと熱気を放っている。たっぷりのケチャップとマスタードを添えたチキンナゲットに、ボウルに山盛りのサラダ。パーティーさながらの光景に、サモナーの腹の虫がぐうと鳴いた。
むつき
DONEパズズ+ハスターバイオなハザードを鎮めに行く二人の話
※研究者とか報道陣とかモブがちらちら
emergency サイレンこそ消されたものの、緊急車両の上では慌ただしげに赤色灯が回っている。平日の昼日中にも関わらず、その工業地帯の一角は騒然としていた。
背の高いフェンスに囲まれた敷地内、樹木の向こうには連なる社屋が見え隠れしている。白一色に塗られたそれらには、黄色と黒を基調としたマークが入っていた。そのシンボルを日常生活の中で見かけることはめったにない。どのような物質を指しているのか分からないまでも、その色の組み合わせは工場の外を通りがかる人々に、容易に近付いてはならぬ場所であることを思わせた。
門の外、駆けつけた警察官や消防隊員が各所と連絡を取り合う後ろにはテレビ局の報道班や新聞記者が立ち並び、手に手にマイクや撮影機材を握っている。情報通を気取る一般人や通りすがりの野次馬なども詰めかけ、道路の端で押し合いへし合いしていた。
2623背の高いフェンスに囲まれた敷地内、樹木の向こうには連なる社屋が見え隠れしている。白一色に塗られたそれらには、黄色と黒を基調としたマークが入っていた。そのシンボルを日常生活の中で見かけることはめったにない。どのような物質を指しているのか分からないまでも、その色の組み合わせは工場の外を通りがかる人々に、容易に近付いてはならぬ場所であることを思わせた。
門の外、駆けつけた警察官や消防隊員が各所と連絡を取り合う後ろにはテレビ局の報道班や新聞記者が立ち並び、手に手にマイクや撮影機材を握っている。情報通を気取る一般人や通りすがりの野次馬なども詰めかけ、道路の端で押し合いへし合いしていた。
むつき
DONEアールプ+上野所属主人公暑い時期の話
共同作業 玄関の引き戸はおそろしく立て付けが悪く、開け閉めのたびに絵に描いたようながたがたという音を立てる。おまけに、開閉にはちょっとしたコツが必要だった。いわく、ななめに押し上げるようにして力をかけるとスムーズに開くだとか、引き開ける瞬間の勢いが肝心だとか。主張はみな違っていて、獣人寮の住人はそれぞれが自分なりのやり方を持っていた。
今にも羽根が外れて飛んでいってしまうのではないかと心配になるほど旧式の扇風機は、それでも日々黙々と首を振っている。開け放った窓から控えめな風が入ってくるのを、半透明の扇風機の羽根がゆるくかき回す。二階の自室にいるよりも一階の談話室にいた方が涼しい気がして、サモナーは何をするでもなく床に転がっていた。ソファがあるのに腰を下ろさないのは、ソファの布地が肌に張り付くのを嫌ったからだ。
2650今にも羽根が外れて飛んでいってしまうのではないかと心配になるほど旧式の扇風機は、それでも日々黙々と首を振っている。開け放った窓から控えめな風が入ってくるのを、半透明の扇風機の羽根がゆるくかき回す。二階の自室にいるよりも一階の談話室にいた方が涼しい気がして、サモナーは何をするでもなく床に転がっていた。ソファがあるのに腰を下ろさないのは、ソファの布地が肌に張り付くのを嫌ったからだ。
むつき
DONE主人公くん×クロード +スノウ夕方の首都高ドライブ
夕方の高速道路 防音のための柵はまるで壁と呼んでも差し支えないほどの威圧感をまとって、道路の両側に高々とそびえている。
柵より上、目に映るのは等間隔に立ち並んだ照明灯ばかりだ。その銀色の、ほっそりとした柱たちが飛ぶような勢いで後ろに流れていくのを数え続けていく。暮れかけて淡いグラデーションを浮かべた空を背景に、見えるのはひたすらに壁と照明だけで、けれど俺にはそれも嬉しかった。何しろこっちはしがない男子高校生なのだ。普段の移動手段は徒歩が基本だし、学外をふらふらする時は電車に乗るけれど、それは特急でも何でもなくて、移動距離もささやかなものだった。
景色に気を取られるあまり、顔が窓ガラスに貼り付きそうになったところでふと思いとどまる。隣の座席――隣といっても車内が広すぎるせいで、反対側の窓際までには結構な距離がある――を振り向けば、クロードは穏やかな横顔をして窓の外に視線を送っていた。
2554柵より上、目に映るのは等間隔に立ち並んだ照明灯ばかりだ。その銀色の、ほっそりとした柱たちが飛ぶような勢いで後ろに流れていくのを数え続けていく。暮れかけて淡いグラデーションを浮かべた空を背景に、見えるのはひたすらに壁と照明だけで、けれど俺にはそれも嬉しかった。何しろこっちはしがない男子高校生なのだ。普段の移動手段は徒歩が基本だし、学外をふらふらする時は電車に乗るけれど、それは特急でも何でもなくて、移動距離もささやかなものだった。
景色に気を取られるあまり、顔が窓ガラスに貼り付きそうになったところでふと思いとどまる。隣の座席――隣といっても車内が広すぎるせいで、反対側の窓際までには結構な距離がある――を振り向けば、クロードは穏やかな横顔をして窓の外に視線を送っていた。
むつき
DONEヤスタネ+シンノウ雪合戦イベント、シンノウ先生の回診を手伝うヤスヨリの話
回診 ウォーモンガーズ所属の軍医が片手から下げた鞄には、見かけ以上に多くの薬や機材が収められているらしい。相手の容体を詳細に聞き取ったのち、その鞄の口は静かに開く。中からは実に様々なもの――傷口の手当てのための消毒液や塗り薬、気分を落ち着けるアロマオイルやハーブのポプリ、お灸に薬草茶など――が取り出され、そばに控えているヤスヨリを驚かせた。
部屋で頭痛を訴えている者がいると聞いて、二人はホテルのロビーから上層階へと移動する。地厚なカーペットが敷き詰められている廊下は足音も響かず、穏やかな静けさに満ちていた。
「ヤスヨリくんは、医術に興味があるのかい」
ふとシンノウの声が響く。病人の居所を探して熱心に各ドアの部屋番号を確かめていたヤスヨリは足を止めた。軍医の意図するところが分からず、たくましい眉の下、丸っこい瞳を瞬かせる。
1384部屋で頭痛を訴えている者がいると聞いて、二人はホテルのロビーから上層階へと移動する。地厚なカーペットが敷き詰められている廊下は足音も響かず、穏やかな静けさに満ちていた。
「ヤスヨリくんは、医術に興味があるのかい」
ふとシンノウの声が響く。病人の居所を探して熱心に各ドアの部屋番号を確かめていたヤスヨリは足を止めた。軍医の意図するところが分からず、たくましい眉の下、丸っこい瞳を瞬かせる。
むつき
DONEシンノウ+ヨリトモ+主人公雪山のリゾート施設で軍医するシンノウ先生、グランピングテントを医務室として使っていてほしいという願望
グランピング医務室 突如として決定した冬のレジャー――ギルド対抗の雪合戦――のため、「臨時」の医務室を用意したと聞いた時には、さてどんなプレハブ小屋か手狭な部屋があてがわれるかと内心身構えたのだ。必要な薬品や機材の詰まった巨大なトランクを携え、指定された場所へ向かったシンノウを迎えたのは、見上げるほどに大きな半球型のドームテントだった。
真っ白な雪原の中に建てられているはずが、中は驚くほどに温かい。テントの素材がいいのか、焚かれているストーブが強力なのか、あるいはその両方なのだろう。大きなソファベッドやたっぷりとしたカーテン、木製のしゃれた戸棚は、温かな印象を与えると同時に装飾的で、殺風景な灰色の調度品やパイプベッドを見慣れた身には少し戸惑う。やわらかな色合いに灯る照明、心地良さを演出する空間。良くも悪くも、ここはリゾート施設なのだ。
3641真っ白な雪原の中に建てられているはずが、中は驚くほどに温かい。テントの素材がいいのか、焚かれているストーブが強力なのか、あるいはその両方なのだろう。大きなソファベッドやたっぷりとしたカーテン、木製のしゃれた戸棚は、温かな印象を与えると同時に装飾的で、殺風景な灰色の調度品やパイプベッドを見慣れた身には少し戸惑う。やわらかな色合いに灯る照明、心地良さを演出する空間。良くも悪くも、ここはリゾート施設なのだ。
むつき
DONEタネトモ+主人公(+ヨリトモ)バレンタインスノーファイトイベントの頃
その者の器 あちらの山を眺めてもこちらの足元を確かめても、見事なまでに白一色だった。一向に溶けない雪の上、雪は新たに降り積もり、リゾート施設へやってきた者たちの心を浮き立たせる。
「貴方様は、将の器に生まれながら……」
言葉を乗せてこぼれた息は、たちまちのうちに白く凍っていった。慣れないスノーウェアを身に着けているのは二人とも同じだ。タネトモの言葉を受けた彼は、ファーのついた襟になかば口元を埋めながら顔を輝かせた。
「将の器? ほめてくれて嬉しいな。じゃあ俺、将を目指そうかな」
彼の眼差しは澄み切っていて、目の前の参謀を試しているようには見えなかった。周囲からは破天荒と評されつつも、自ら立てた計画を完遂する彼の力には目を見張るものがある。やるといえばいかに無謀であってもやってのける、その気概と能力を備えている人物だった。
1130「貴方様は、将の器に生まれながら……」
言葉を乗せてこぼれた息は、たちまちのうちに白く凍っていった。慣れないスノーウェアを身に着けているのは二人とも同じだ。タネトモの言葉を受けた彼は、ファーのついた襟になかば口元を埋めながら顔を輝かせた。
「将の器? ほめてくれて嬉しいな。じゃあ俺、将を目指そうかな」
彼の眼差しは澄み切っていて、目の前の参謀を試しているようには見えなかった。周囲からは破天荒と評されつつも、自ら立てた計画を完遂する彼の力には目を見張るものがある。やるといえばいかに無謀であってもやってのける、その気概と能力を備えている人物だった。
むつき
DONEヨリトモ+主人公過去の話、或るループの話
過去の別世界で弟の首実検をしたヨリトモが、東京でのループで主人公くんちゃんを見つけるたびに首実検の答え合わせをさせられる話
ヨリトモが選んだ弟の顔と、プレイヤーが選んだ主人公くんちゃんの顔が同じだといいなというやつ
首実検「謀反人、源義経を討ち取れ!」と言った者がある。
「生け捕りは無用である」と叫んだ者がある。
「首を持ってきた者には褒美を取らす」と付け加えた者がある。
勇ましい足音を響かせながら皆が出て行ったのを見送ったのち、小生は安堵していた。これだけの人数を出したのだ。小生が手を下さずとも、じきに我が弟は物言わぬむくろとなり、遠き世界へひとり旅立つであろう。
もうあの瞳に射すくめられることはない。あの声に心震わされることもない。あの体の熱に、あの笑みに。
あとはこの御所の奥でただじっと構えているのみが、小生の当座の仕事なのだ。
後刻、閑散とした部屋に届けられた首桶の数は、五つであった。
「……これはどうしたことかな」
2716「生け捕りは無用である」と叫んだ者がある。
「首を持ってきた者には褒美を取らす」と付け加えた者がある。
勇ましい足音を響かせながら皆が出て行ったのを見送ったのち、小生は安堵していた。これだけの人数を出したのだ。小生が手を下さずとも、じきに我が弟は物言わぬむくろとなり、遠き世界へひとり旅立つであろう。
もうあの瞳に射すくめられることはない。あの声に心震わされることもない。あの体の熱に、あの笑みに。
あとはこの御所の奥でただじっと構えているのみが、小生の当座の仕事なのだ。
後刻、閑散とした部屋に届けられた首桶の数は、五つであった。
「……これはどうしたことかな」
むつき
DONE主人公×クロード +ガルム交差する夕暮れクロード不在で話が進む主クロの主人公くんちゃんとガルム
改札の中も外も、ひとでごった返していた。会社や学校からの帰り道らしく、スーツや制服姿で足早に通り抜けていく人が多いけれど、おめかししている人もいれば普段着っぽい人もいる。壁際で立ち止まって熱心に端末を覗き込んでいる人や、待ち合わせの相手を見つけて嬉しそうに駆け寄っていく人もいて、ざわざわした駅の構内は活気にあふれていた。
気付けば足が向いていたのはどう考えても闘技場の方向で、無意識での行動に我ながら笑ってしまう。でも今日はクロードのところに行くわけじゃないよと、体の向きを大きく変えた。
街から駅へ入ってくる人と改札から吐き出されてきた人とで、波が交差する。ワンピース姿の子どもの鬼と恰幅のいい犬獣人のあいだをうまくすり抜けながら、夕暮れの街へと踏み出した。
1989改札の中も外も、ひとでごった返していた。会社や学校からの帰り道らしく、スーツや制服姿で足早に通り抜けていく人が多いけれど、おめかししている人もいれば普段着っぽい人もいる。壁際で立ち止まって熱心に端末を覗き込んでいる人や、待ち合わせの相手を見つけて嬉しそうに駆け寄っていく人もいて、ざわざわした駅の構内は活気にあふれていた。
気付けば足が向いていたのはどう考えても闘技場の方向で、無意識での行動に我ながら笑ってしまう。でも今日はクロードのところに行くわけじゃないよと、体の向きを大きく変えた。
街から駅へ入ってくる人と改札から吐き出されてきた人とで、波が交差する。ワンピース姿の子どもの鬼と恰幅のいい犬獣人のあいだをうまくすり抜けながら、夕暮れの街へと踏み出した。
むつき
DONEタネトモ+主人公ヨリトモの話をする二人
支度 廊下の先、細く開いた扉の向こうからは、温かなみかん色の光がこぼれている。肉や野菜を煮た食欲を誘う香りも漂ってきて、タネトモはふと足を止めた。
軍の幹部たちが食事をとるための小さな一室だが、階下にある大食堂でも同じように食事の支度がなされているに違いない。あたたかな料理の香りは直に廊下を伝って広がり、宿舎にいる者たち皆の元へと届くだろう。
部屋の中には誰かがいるらしく、廊下の壁にこぼれてくる灯りは時折遮られてちらちらと動く。動きと動きの合間に熟慮が入るのか、光の揺らぎは不規則だ。どうも手慣れたスタッフの動きではないと、タネトモは半ば訝しみながら近付いていくと、ドアノブを静かに引き開けた。
食卓の上には、いつもと変わらずほんの数人分だけの食事が用意されようとしている。折敷の上に並べられた椀、艶のある塗り箸。小鉢のひとつを覗き込んで盛り付けを調整しているのは、事もあろうに総大将の弟だった。
2391軍の幹部たちが食事をとるための小さな一室だが、階下にある大食堂でも同じように食事の支度がなされているに違いない。あたたかな料理の香りは直に廊下を伝って広がり、宿舎にいる者たち皆の元へと届くだろう。
部屋の中には誰かがいるらしく、廊下の壁にこぼれてくる灯りは時折遮られてちらちらと動く。動きと動きの合間に熟慮が入るのか、光の揺らぎは不規則だ。どうも手慣れたスタッフの動きではないと、タネトモは半ば訝しみながら近付いていくと、ドアノブを静かに引き開けた。
食卓の上には、いつもと変わらずほんの数人分だけの食事が用意されようとしている。折敷の上に並べられた椀、艶のある塗り箸。小鉢のひとつを覗き込んで盛り付けを調整しているのは、事もあろうに総大将の弟だった。
むつき
DONEヨリトモ+主人公同じギルドに所属しているループの話
花を贈る 弟のことは、隣の部屋に待たせたきり忘れていた。
報告など、どうせ聞かなくても分かっている。戦地に送り出した弟は、今回もまた無事に帰ってきた。そのこと自体がすでに報告――戦は我が方の勝利で終わったという報告――であるのだから。
積み上がった書類へ粛々と目を通し、机の上がおおかた綺麗になった辺りで不意に弟のことを思い出した。他の者を通じて「用事が片付かないからまだ会えない」と返答はしておいたが、帰るようには言っていない。きっと愚直に、通された一室で待ち続けているのだろう。机を片付け、立ち上がった。
応接室を覗けば、案の定弟の丸い頭が視界に映る。背中を向けた恰好で、ソファに腰を下ろしていた。小生が部屋に入るなり飛び上がってこちらを振り向くかと思っていたが、ドアノブを回しても革靴のかかとが音を立てても相手は微動だにしない。おそるおそる近付き、表情を窺う。
1651報告など、どうせ聞かなくても分かっている。戦地に送り出した弟は、今回もまた無事に帰ってきた。そのこと自体がすでに報告――戦は我が方の勝利で終わったという報告――であるのだから。
積み上がった書類へ粛々と目を通し、机の上がおおかた綺麗になった辺りで不意に弟のことを思い出した。他の者を通じて「用事が片付かないからまだ会えない」と返答はしておいたが、帰るようには言っていない。きっと愚直に、通された一室で待ち続けているのだろう。机を片付け、立ち上がった。
応接室を覗けば、案の定弟の丸い頭が視界に映る。背中を向けた恰好で、ソファに腰を下ろしていた。小生が部屋に入るなり飛び上がってこちらを振り向くかと思っていたが、ドアノブを回しても革靴のかかとが音を立てても相手は微動だにしない。おそるおそる近付き、表情を窺う。
むつき
DONEヨリトモ+主人公くん甘味処に行く二人
甘いもの 平日の夕方にも関わらずあちこちの卓に客の姿がある甘味処は、掃除が行き届き空気が澄んでいた。年月を重ねてきたと分かる机はよく拭き上げられ、唐茶色の上に飴のような艶を重ねている。
あんみつとぜんざいの椀が揃った盆を前にして、弟は随分と機嫌が良いようだった。今回のループにおいて、彼はなかなかの甘党であるらしい。品書きを何度も眺め散々迷った挙げ句、どちらかひとつには絞れないと言って二つとも頼む辺り、余程のものだった。
「ヨリトモのも、おいしそうだよね」
こちらの手元へ視線をやって、じっと考え込むような仕草を見せる。
「そうだね。良ければ君も、別の機会に味わってみるといい」
純朴な弟は、まっすぐな瞳をして素直に頷いた。
2049あんみつとぜんざいの椀が揃った盆を前にして、弟は随分と機嫌が良いようだった。今回のループにおいて、彼はなかなかの甘党であるらしい。品書きを何度も眺め散々迷った挙げ句、どちらかひとつには絞れないと言って二つとも頼む辺り、余程のものだった。
「ヨリトモのも、おいしそうだよね」
こちらの手元へ視線をやって、じっと考え込むような仕草を見せる。
「そうだね。良ければ君も、別の機会に味わってみるといい」
純朴な弟は、まっすぐな瞳をして素直に頷いた。
むつき
DONEフッキ+ティダ+主人公「聖夜に輝くギャングスター」イベント
クリスマスディナー オーブンから出されたばかりのラザニアにも、こまかな泡のたちのぼるシャンパンにも、別段興味はなかった。本人が公言している通り、自身の妹とちょっとした占いと賭け以外、フッキが興味関心を寄せるものはほとんどない。マフィアファミリーの闘争に片が付き、大勢でテーブルを囲んでクリスマスディナーという結末を迎えたとしても、彼の気分に特段の変化は起こらなかった。
テーブルの上にどんな料理が並んでいるのかなど、どうでもいいのだ。本当は今すぐ妹のそばに寄り添って、あれこれと世話を焼いてやりたかった。好きなものを皿に取ってやったり、大きなチキンの骨を全部外してやったり。けれど今、当の本人は随分と忙しそうにしていた。サモナーの周りには、腰ほどまでの背丈しかない子どもたちがたくさん群がっている。待ちわびていたクリスマスをやっと迎えることができた子どもたちが、優しい年長者の庇護を受けたいと願うのは当然のことだ。
2568テーブルの上にどんな料理が並んでいるのかなど、どうでもいいのだ。本当は今すぐ妹のそばに寄り添って、あれこれと世話を焼いてやりたかった。好きなものを皿に取ってやったり、大きなチキンの骨を全部外してやったり。けれど今、当の本人は随分と忙しそうにしていた。サモナーの周りには、腰ほどまでの背丈しかない子どもたちがたくさん群がっている。待ちわびていたクリスマスをやっと迎えることができた子どもたちが、優しい年長者の庇護を受けたいと願うのは当然のことだ。
むつき
DONEシンノウ←主人公くん主人公の好き好きアピと先生のオトナの対応
保健室 がらがらという音を響かせ、遠慮のない調子で引き戸が滑る。あー! と、俺を糾弾する声が低く上げられた。
「おいおい、まーだいるじゃねぇか。オレが戻る前に帰るようにって、そう言っただろう?」
言われた言葉は覚えていた。ここは保健室だ。心身の不調を訴える学生のための場所。あいにく俺は怪我もしていなければ頭も痛くない。至って健康体だ。ただ一点、胸の中からもやついた感覚を拭い去れないことだけを除いては。
前後を反対にした椅子をまたぐようにして座ったまま背もたれの上で腕を組み、そこへ顎を乗せる。まだ寮には戻りたくないというアピールをしてみせた俺を見下ろして、シンノウは盛大に鼻を鳴らした。
「まったく、仕方のねぇ問題児くんだなぁ」
1962「おいおい、まーだいるじゃねぇか。オレが戻る前に帰るようにって、そう言っただろう?」
言われた言葉は覚えていた。ここは保健室だ。心身の不調を訴える学生のための場所。あいにく俺は怪我もしていなければ頭も痛くない。至って健康体だ。ただ一点、胸の中からもやついた感覚を拭い去れないことだけを除いては。
前後を反対にした椅子をまたぐようにして座ったまま背もたれの上で腕を組み、そこへ顎を乗せる。まだ寮には戻りたくないというアピールをしてみせた俺を見下ろして、シンノウは盛大に鼻を鳴らした。
「まったく、仕方のねぇ問題児くんだなぁ」
むつき
DONEシロウ+主人公くんエビルたちを寮のお風呂に入れる話
お風呂 大きなスポンジを駆使して、洗面器いっぱいにボディーソープの泡を作っていく。きめ細かな泡を、めいっぱいたくさん。
確実に、自分の体を洗う時より一生懸命になっている。何しろ、大事なシロウの大事なエビルたちを洗うんだから。
「そろそろいいよ。お待たせ」
カランの近くに立っている子を手招きする。他の子に比べてフットワークが軽く、よく前に出たがる好奇心旺盛なエビルだ。泡だらけの俺の手元を興味深そうに見つめていた。
「そうだよ、君の番」
俺が声をかけたのを受けて、待ってましたと言わんばかりに進み出てくる。椅子に腰かけた俺の前に立ち、じっとこっちを見上げた。水温設定を済ませたシャワーを優しくかけてから、横に置いた洗面器から泡をすくってエビルの体を包み込む。くすぐったいのか、小さな体をよじって楽しそうな声を上げた。
2394確実に、自分の体を洗う時より一生懸命になっている。何しろ、大事なシロウの大事なエビルたちを洗うんだから。
「そろそろいいよ。お待たせ」
カランの近くに立っている子を手招きする。他の子に比べてフットワークが軽く、よく前に出たがる好奇心旺盛なエビルだ。泡だらけの俺の手元を興味深そうに見つめていた。
「そうだよ、君の番」
俺が声をかけたのを受けて、待ってましたと言わんばかりに進み出てくる。椅子に腰かけた俺の前に立ち、じっとこっちを見上げた。水温設定を済ませたシャワーを優しくかけてから、横に置いた洗面器から泡をすくってエビルの体を包み込む。くすぐったいのか、小さな体をよじって楽しそうな声を上げた。
むつき
INFOレイヴ先輩×主人公の同人誌サンプル10/22頒布予定
【同人誌サンプル】待てば海路の日和あり【概要】
放サモ レイヴ×主人公
「待てば海路の日和あり」
web再録6本(加筆修正済)+書き下ろし4本 短編小説集
A5/40ページ/全年齢対象
10/22 LW作品オンリー二次創作オンラインイベント合わせ
BOOTHショップにて頒布予定(匿名配送)
https://sm-trippa.booth.pm/items/5102693
レイヴ先輩と主人公が仲良くしている日常の本。
「ジュラシックサマーバカンス」イベント設定の話も3本ほど。
上野ギルドメンバーはアールプ中心にちょこちょこと顔を出します。
【主人公について】
飢野学園所属、獣人寮で生活している設定。
性別および身体特徴の表現なし(タイプ不詳)。
固有名称なし。「サモナー」「後輩」表記。
9995放サモ レイヴ×主人公
「待てば海路の日和あり」
web再録6本(加筆修正済)+書き下ろし4本 短編小説集
A5/40ページ/全年齢対象
10/22 LW作品オンリー二次創作オンラインイベント合わせ
BOOTHショップにて頒布予定(匿名配送)
https://sm-trippa.booth.pm/items/5102693
レイヴ先輩と主人公が仲良くしている日常の本。
「ジュラシックサマーバカンス」イベント設定の話も3本ほど。
上野ギルドメンバーはアールプ中心にちょこちょこと顔を出します。
【主人公について】
飢野学園所属、獣人寮で生活している設定。
性別および身体特徴の表現なし(タイプ不詳)。
固有名称なし。「サモナー」「後輩」表記。
むつき
DONEサンダユウ←主人公くんちゃん歌舞伎町ハロウィンイベント時空
先生が職員室の自席でカップラーメンを食べるのが見たい
職員室 自分の学校でだって職員室に入るのはあんまり好きじゃないのだから、他の学校の職員室なんて余計に緊張するに決まっていた。
引き戸をからりと開け、失礼しますとほんのひと声、その瞬間にあっちの先生もこっちの先生も首を巡らせて自分の方へ視線を送ってくる。悪いことをしたおぼえもなければ、先生たちから向けられる視線が咎められるようなそれというわけでもない。それでもいつでも何とはなしに、職員室というのは緊張する場所なのだった。
「失礼しまーす……」
お弁当を開けたり購買部や食堂へ行ったりする休み時間がのどかに過ぎていくのは、どこの学校でも同じだ。ここ歌舞輝蝶学園と神宿学園との違いは、外は日が暮れているどころか真夜中で、窓の外からの明かりといえば無数に立ち並ぶ街灯や、あちこちのお店のネオンカラーだった。
2374引き戸をからりと開け、失礼しますとほんのひと声、その瞬間にあっちの先生もこっちの先生も首を巡らせて自分の方へ視線を送ってくる。悪いことをしたおぼえもなければ、先生たちから向けられる視線が咎められるようなそれというわけでもない。それでもいつでも何とはなしに、職員室というのは緊張する場所なのだった。
「失礼しまーす……」
お弁当を開けたり購買部や食堂へ行ったりする休み時間がのどかに過ぎていくのは、どこの学校でも同じだ。ここ歌舞輝蝶学園と神宿学園との違いは、外は日が暮れているどころか真夜中で、窓の外からの明かりといえば無数に立ち並ぶ街灯や、あちこちのお店のネオンカラーだった。
むつき
DONEクルースニク+主人公くんちゃん(+サンダユウ)歌舞伎町ハロウィンイベント時空
無自覚タラシサモナーにぎゅんぎゅんしてしまう先生の話
恥ずかしハロウィン しまった、と思った時には、廊下の向こうから歩いてきたサモナーとすでに目が合っていた。
「あれ? クルースニク先生、なんかすごい恰好してる」
さらりと言われた言葉は嫌味でも揶揄でもなく、純粋な驚きと感心なのだと、分かってはいる。相手の性格を考えてみれば十分分かることだ。純粋な気持ちで言われたそれを、こちらも肩の力を抜いて受け止めればいいだけなのに、今すぐこの派手な衣装を脱ぎたくて仕方なくなってくる。
今日から交換留学生が来るなんてことは、前々から分かっていた話だ。神宿学園からやってくるその留学生が、いったい誰であるのかも。職員室近くの廊下をうろうろしていたら当の本人と鉢合わせしそうなことくらい、予測できて当然だった。
2017「あれ? クルースニク先生、なんかすごい恰好してる」
さらりと言われた言葉は嫌味でも揶揄でもなく、純粋な驚きと感心なのだと、分かってはいる。相手の性格を考えてみれば十分分かることだ。純粋な気持ちで言われたそれを、こちらも肩の力を抜いて受け止めればいいだけなのに、今すぐこの派手な衣装を脱ぎたくて仕方なくなってくる。
今日から交換留学生が来るなんてことは、前々から分かっていた話だ。神宿学園からやってくるその留学生が、いったい誰であるのかも。職員室近くの廊下をうろうろしていたら当の本人と鉢合わせしそうなことくらい、予測できて当然だった。
むつき
DONEケンゴ+シロウ歌舞伎町ハロウィンイベント時空
サモナーが泊まりがけの留学だなんて!ってやきもきするシロウと、いつも通りのケンゴの話
心配性 綺羅綺羅しい微笑みを振りまく上級生とサモナーが連れ立って消えて以降、シロウはずっと心ここに在らずの様子を見せていた。
授業はおろか、ホームルームもとっくに終わっている。開け放たれた窓の向こうからは、様々な運動部の掛け声や各種楽器の音色が風に乗って聞こえていた。自分の席に腰かけ、握りしめた端末の画面を頻繁に眺めては何もメッセージが来ていないことを確認してため息をつく。そんなことをしているのは、教室の中でシロウただひとりだった。
「なあシロウ、そんなに心配することねぇじゃねぇか」
教室の後ろ、引き戸の上の欄間を使って懸垂を繰り返していたケンゴが見かねたように声をかけた。
「あいつひとりで歌舞輝蝶に留学するわけじゃねぇだろ。むしろ向こうに顔がきく奴が、うちの学園の別学年の代表になって同行してくれるんだ。ありがてぇ話じゃねぇか」
2578授業はおろか、ホームルームもとっくに終わっている。開け放たれた窓の向こうからは、様々な運動部の掛け声や各種楽器の音色が風に乗って聞こえていた。自分の席に腰かけ、握りしめた端末の画面を頻繁に眺めては何もメッセージが来ていないことを確認してため息をつく。そんなことをしているのは、教室の中でシロウただひとりだった。
「なあシロウ、そんなに心配することねぇじゃねぇか」
教室の後ろ、引き戸の上の欄間を使って懸垂を繰り返していたケンゴが見かねたように声をかけた。
「あいつひとりで歌舞輝蝶に留学するわけじゃねぇだろ。むしろ向こうに顔がきく奴が、うちの学園の別学年の代表になって同行してくれるんだ。ありがてぇ話じゃねぇか」
むつき
DONEリヒトとメリュジーヌさん お互いに敬意を払いあう主従感がすきプレゼントフォーユークニヨシの同人誌製本を手伝った時の話
前作 https://poipiku.com/5834246/8887499.html の続き
無心になって手を動かすこと数時間、出来上がった同人誌をすべて段ボール箱に収め、リヒトは大きなため息をついた。壁際、山のように積み上がった箱を見つめ、しばしぼんやりと佇む。依頼された作業はなんとか終えられた。他の部屋も街も眠りにつつまれているのか、外はしんと静まって、車の走り去る音すらも聞こえてこない。
「良かったぁ、おかげさまで明日、じゃないやもう今日だね、とにかくこれでイベントの準備はばっちりだよ! 本当にありがとう!」
何度も何度も感謝の言葉を口にするクニヨシは、その丸い顔をこれ以上ないというくらいにほころばせている。つい先ほどまで猛烈な勢いでペンを走らせたり、ああでもないこうでもないと頭をひねりながら色を置いたりしていたはずが、疲れた様子など微塵も浮かべていない。友人が嬉しいのなら自分も嬉しいと、リヒトは知らず知らずのうちに頬をゆるませた。
2905前作 https://poipiku.com/5834246/8887499.html の続き
無心になって手を動かすこと数時間、出来上がった同人誌をすべて段ボール箱に収め、リヒトは大きなため息をついた。壁際、山のように積み上がった箱を見つめ、しばしぼんやりと佇む。依頼された作業はなんとか終えられた。他の部屋も街も眠りにつつまれているのか、外はしんと静まって、車の走り去る音すらも聞こえてこない。
「良かったぁ、おかげさまで明日、じゃないやもう今日だね、とにかくこれでイベントの準備はばっちりだよ! 本当にありがとう!」
何度も何度も感謝の言葉を口にするクニヨシは、その丸い顔をこれ以上ないというくらいにほころばせている。つい先ほどまで猛烈な勢いでペンを走らせたり、ああでもないこうでもないと頭をひねりながら色を置いたりしていたはずが、疲れた様子など微塵も浮かべていない。友人が嬉しいのなら自分も嬉しいと、リヒトは知らず知らずのうちに頬をゆるませた。
むつき
DONEクニヨシの漫画製本を手伝うリヒトイベント開催11時間前 コピー機を通過してきたばかりの紙は、インクも黒々として熱かった。そのうちの一枚を手に取って眺めるリヒトのかたわら、漫画の続きは次から次へとコピー機から吐き出され、どんどんと積み上がっていく。
描き込まれている人物やフキダシは、どれも存分に描き手の情熱を伝えていた。生き生きとした表情、疾走感のあるコマ割り。毛並みは緻密に描き込まれ、広げた手のひらにある肉球は丸くつややかで、いかにもやわらかそうだった。
「それでひとセットだから! たくさんあって悪いんだけど、頼りにしてるね!」
溌剌としたクニヨシの声を受けて、リヒトは我に返る。目の前に積み上がる紙の山。ふたのあいた段ボール箱。先ほどカーテンごしに確かめた空に浮かぶ月は、リヒトの頭上高くに輝いていた。
971描き込まれている人物やフキダシは、どれも存分に描き手の情熱を伝えていた。生き生きとした表情、疾走感のあるコマ割り。毛並みは緻密に描き込まれ、広げた手のひらにある肉球は丸くつややかで、いかにもやわらかそうだった。
「それでひとセットだから! たくさんあって悪いんだけど、頼りにしてるね!」
溌剌としたクニヨシの声を受けて、リヒトは我に返る。目の前に積み上がる紙の山。ふたのあいた段ボール箱。先ほどカーテンごしに確かめた空に浮かぶ月は、リヒトの頭上高くに輝いていた。
むつき
DONEナイトプールイベント、フッキ×主人公真夏の夜は 初めに夜のプールと聞いた時は、なんだかうす暗くて静かな場所を想像していた。たぶん、学校のプールのイメージが強すぎたのだと思う。直線でふちどられたプール、水色のペンキ。殺風景で、ひっそりとしていて。だけど今回招待してもらった有楽町のナイトプールは、もちろんそれとは全然違っていた。
ゴージャスで、カラフル。まさにそんな感じだった。暮れかけた空の下、そこらじゅうが輝かしくライトアップされている。楽しむべき時はこれからだと言わんばかりだった。
プールサイドに立ち並ぶ建物は南の異世界の情緒に溢れていて、黄金色に塗り染められている。そこにライトが当たってますます眩しい。水の中にライトが仕込まれているらしく、プールの中さえも光っている。いっぱいの水が光を反射して目がくらみそうだった。
4918ゴージャスで、カラフル。まさにそんな感じだった。暮れかけた空の下、そこらじゅうが輝かしくライトアップされている。楽しむべき時はこれからだと言わんばかりだった。
プールサイドに立ち並ぶ建物は南の異世界の情緒に溢れていて、黄金色に塗り染められている。そこにライトが当たってますます眩しい。水の中にライトが仕込まれているらしく、プールの中さえも光っている。いっぱいの水が光を反射して目がくらみそうだった。
むつき
DONEナイトプールイベントのフッキとヤマサチヒコお兄ちゃん対決 人工的な波の打ち寄せるプールの向こうには流れるプール。高さも長さもたっぷりのウォータースライダーに、飛び込み台の設置されているプールもある。この施設にあるすべてのプールを体験しようとすれば、到底一晩では間に合わないほどだった。
「兄貴、次はあっちへ行ってみよう」
「もちろんええぞ! おっ、なんじゃあ、滝があるのう」
せっかく来たのだから、色々体験してみないともったいない。ゴム草履の足裏をぺたぺたと鳴らしながら、ヤマサチヒコとサモナーはプールサイドを並んで歩いた。
泳いだりすべったりする合間、近くのフードワゴンに立ち寄っては、派手な色合いをしたドリンクを買ったり、揚げたてのポテトをつまんだりする。夜遅い時間にジャンクな軽食をとるなんて、普段の学生生活ではご法度だ。「いけない秘密」が増えるねなんて、冗談めかして言っては笑い合った。
3064「兄貴、次はあっちへ行ってみよう」
「もちろんええぞ! おっ、なんじゃあ、滝があるのう」
せっかく来たのだから、色々体験してみないともったいない。ゴム草履の足裏をぺたぺたと鳴らしながら、ヤマサチヒコとサモナーはプールサイドを並んで歩いた。
泳いだりすべったりする合間、近くのフードワゴンに立ち寄っては、派手な色合いをしたドリンクを買ったり、揚げたてのポテトをつまんだりする。夜遅い時間にジャンクな軽食をとるなんて、普段の学生生活ではご法度だ。「いけない秘密」が増えるねなんて、冗談めかして言っては笑い合った。
むつき
DONE本編のフッキと主人公或るディーラー こんなのは、悪党どもの常套手段だ。そんなことは分かっていた。
洒落た彼の装いは、ゲームの場を悠然と取り仕切るディーラーのようだった。さまざまなものを包み隠す、優雅な物腰。フッキと名乗った竜人の男は、力なく崩れ落ちた主人公に向かってまっすぐに視線を投げかけていた。
「助けようとしていた相手の本当の姿が、君もようやく分かったはずでしょう」
怒涛の出来事に、頭は混乱しきっていた。そんな主人公を前に、フッキはあえて言葉を重ねてみせる。相手に、より重要な事柄を理解させるように。相手が、より絶望をおぼえ、救いを求めるように。
予測もつかなかった事態や絶体絶命の修羅場なら、これまでにも幾度も切り抜けてきた。でも今回のこれは、今までのものとはレベルが違う。今まで信じてきた前提や世界のことわり。そういったものがあっけなくひっくり返っていく。まるで、テーブルの上に並べられた、ただの紙でできたカードを一枚、ぺたりとひっくり返すように。
1411洒落た彼の装いは、ゲームの場を悠然と取り仕切るディーラーのようだった。さまざまなものを包み隠す、優雅な物腰。フッキと名乗った竜人の男は、力なく崩れ落ちた主人公に向かってまっすぐに視線を投げかけていた。
「助けようとしていた相手の本当の姿が、君もようやく分かったはずでしょう」
怒涛の出来事に、頭は混乱しきっていた。そんな主人公を前に、フッキはあえて言葉を重ねてみせる。相手に、より重要な事柄を理解させるように。相手が、より絶望をおぼえ、救いを求めるように。
予測もつかなかった事態や絶体絶命の修羅場なら、これまでにも幾度も切り抜けてきた。でも今回のこれは、今までのものとはレベルが違う。今まで信じてきた前提や世界のことわり。そういったものがあっけなくひっくり返っていく。まるで、テーブルの上に並べられた、ただの紙でできたカードを一枚、ぺたりとひっくり返すように。
むつき
DONE放課後の主シロとエビルたちさみしがりや 端末の画面に指先を滑らせ、時間を確かめる。ゆっくり歩いて向かっても、約束の時間には間に合いそうだった。
「シロウ。俺はそろそろ」
机の前からゆっくりと立ち上がる。昨日の放課後、専門の業者が来てワックスをかけていったという教室の床はつやつやのつるつるだ。椅子を引く感触でさえ、いつもとは違っていた。
「寮の門限の前には戻るから。心配してくれなくても大丈夫だよ」
「俺はまだ何も言ってないぞ」
困ったように眉をしかめたシロウは、腰掛けたまま軽く腕組みをする。顔を見合わせ、同じタイミングでくすくすと笑いあった。
「じゃあまた夕飯の時に、食堂で……」
俺が言い終わるより先に、キイキイ! と元気な声がした。それに、足首の辺りにもちゃもちゃと何かがくっつく感触。とっさに確かめた足元には、なぜかエビルたちが押し寄せていた。
2265「シロウ。俺はそろそろ」
机の前からゆっくりと立ち上がる。昨日の放課後、専門の業者が来てワックスをかけていったという教室の床はつやつやのつるつるだ。椅子を引く感触でさえ、いつもとは違っていた。
「寮の門限の前には戻るから。心配してくれなくても大丈夫だよ」
「俺はまだ何も言ってないぞ」
困ったように眉をしかめたシロウは、腰掛けたまま軽く腕組みをする。顔を見合わせ、同じタイミングでくすくすと笑いあった。
「じゃあまた夕飯の時に、食堂で……」
俺が言い終わるより先に、キイキイ! と元気な声がした。それに、足首の辺りにもちゃもちゃと何かがくっつく感触。とっさに確かめた足元には、なぜかエビルたちが押し寄せていた。