「その件は私から」
役人たちからビクトールへの質問に、フリックが応えた。白いシャツにタイをゆるく結んだ格好は居並ぶ役人たちとそうは変わらない。居心地の悪いふかふかの椅子から立ち上がる様をなんとなしに見上げていると、フリックの指先が会議の進行を示すかのように書類の一点をさした。
その間も、ミューズへの報告はよどみなく続いていく。
まったく何をさせてもそれなりに取り繕ってしまう男だ。
傭兵隊とてミューズの正式な組織の一部だ。定例会議への出席は義務付けられている。毎月何を成し、いくら金を使い、次に何を行うのか。自分たちの存在意義は自分たちで示さなければならない。
面倒この上ない。だからと言って、出席しなければ自分たちを推したアナベルの名前に傷がつく。それもまたビクトールの本意ではなかった。
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