耳掃除 お風呂に入ろうと部屋に入った時、耳の奥に違和感を感じた。何かが詰まっているような奇妙な感覚が、耳の奥でわだかまっているのである。小指を差し込んで取ってみようとするが、入り口で引っ掛かって上手く動かせない。大した収穫も得られないままに、僕は耳から手を離した。
改めて室内に足を踏み入れると、タンスの前で足を止める。耳の違和感は気になるが、先にお風呂に入るのが得策だろう。耳掻きを使って掃除をするとしても、皮膚をふやけさせてからの方がいい。少しの間考えると、僕はタンスの引き出しを開けた。
一時間ほどでお風呂を済ませると、僕は再び自室へと足を運ぶ。いつもと少しだけ違うのは、右手に耳掻きを握っていることだ。仄かに漏れる光に照らされた廊下を通ると、灯りの前で足を止める。部屋の中を覗き込むと、ベッドの上に転がるルチアーノの姿が視界に入った。
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