二人の距離 お風呂から上がると、僕は自分の部屋へと向かった。住み慣れた自分の家の廊下を、ゆっくりとした足取りで前へと進む。自宅とは思えないほどに緊張してしまうのは、今までとは違う環境が待っているからだ。高鳴る鼓動を押さえつけると、僕は室内へと足を踏み入れる。
薄暗い部屋の中では、ルチアーノが待ち構えていた。彼もそれなりに緊張しているのか、ベッドの隅に腰かけている。借りてきた猫のようにおとなしいその姿を見たら、少し緊張が緩んできた。
「上がったよ」
小さく声をかけてから、僕は彼の隣に腰を下ろす。体重でマットレスが歪んで、ルチアーノの身体が斜めになった。さりげない仕草で体勢を戻すと、彼は小さな声で答える。
「そうかよ」
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