抱き枕 気がついたら、真っ白な空間に立っていた。
周囲を見渡してみるが、近くに人の気配はない。それどころか、色彩を放つ物質の姿すら見えなかった。辺り一面が真っ白に染まっていて、一切の色が失われているのだ。視界を焼くような目映い光が、僕の瞳を貫いている。
光から瞳を逸らすように、僕は自分の手元に視線を向けた。視界に入ったものを見て、僕は悲鳴をあげてしまう。そこにあるはずの僕の身体は、真っ黒な影に染まっていたのだ。身体と服の境界線さえも、黒に溶け込んで分からなくなっている。
言い様の無い恐怖を感じて、僕はその場に座り込んだ。背筋に冷たいものが走って、身体が小刻みに震える。しかし、僕の身体が震えているのは、恐怖のためだけではなかったのだ。この真っ白な空間は、鳥肌が立つほどに肌寒かった。
3153