ミステリー お風呂から上がると、僕は真っ直ぐに自室へと向かう。先に入浴を済ませたルチアーノが、ベッドの上で僕を待っているのだ。『待っている』などという言葉を使っているが、そこに色っぽい意図は少しもない。いつの間にか、僕の部屋で夜更けまでの時を過ごすことが、日々の習慣になっていたのだ。
室内に足を踏み入れると、僕はベッドの上に視線を向ける。子供用の寝間着に身を包んだルチアーノが、ど真ん中に寝転がっていた。僕の家の僕の部屋だというのに、遠慮する素振りは微塵も感じられない。彼らしいと言えば彼らしいが、これも心を許してくれている証拠なのだろう。
彼はうつ伏せに寝そべったまま、手元に何かを広げていた。真っ直ぐに視線を向けるたまま、一定の間隔で手を動かしている。普段なら雑誌やゲームを手にしているのだが、今日はそのどちらでもないらしい。不思議に思って近づいてみると、その正体はすぐに分かった。
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