甘味の味見 美味しそうに焼き菓子を頬張るヴィエラをアルバートは眺めていた。クリスタリウムの住民の頼まれごとに快く協力し、その中でお礼にどうぞ、と渡されたものだった。
「美味そうに食うな」
丁寧に淹れられた紅茶と共に大切に焼き菓子を味わっていた彼女に声をかけると一度深く頷かれた。慌てたように口内のものを咀嚼し飲み込もうとする彼女にゆっくり食べてくれたらいい、と掌を見せてアルバートは笑いかける。再度頷き返した彼女が紅茶を一口飲んで満足げに溜息を吐いた。
「好きなんだよねぇ」
こういうお菓子。幸せそうに頬を緩めて歌うようにヴィエラは言った。あぁ、と頷いてアルバートは返す。
「女子はそういうの好きだからな」
そうそう、と頷いて彼女は続ける。
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